車両用空気調和装置及びこれを備えた鉄道車両
【課題】車両の両側に設けた機器を接続する電線を、配線作業が容易で、電線の長さを短縮することができ、配線固定部品が削減されてコストを低減することのできる車両用空気調和装置及びこれを備えた鉄道車両を提供する。
【解決手段】車両1の幅方向の両側に設けられた機器8a,8bを接続する電線40を、車両1の屋根2に設けた一方の屋根吸込み口9a及び室内送風機35、室内熱交換器36等が収容されて車両1の屋根2上に設けたケーシング21の吸込み口26aからケーシング21内を通り、ケーシング21の他方の吸込み口26b及び車両の屋根吸込み口9bに至る経路で配線し、又は一方の屋根吸込み口9aを通してケーシング21の下面から他方の屋根吸込み口9bに至る経路で配線した。
【解決手段】車両1の幅方向の両側に設けられた機器8a,8bを接続する電線40を、車両1の屋根2に設けた一方の屋根吸込み口9a及び室内送風機35、室内熱交換器36等が収容されて車両1の屋根2上に設けたケーシング21の吸込み口26aからケーシング21内を通り、ケーシング21の他方の吸込み口26b及び車両の屋根吸込み口9bに至る経路で配線し、又は一方の屋根吸込み口9aを通してケーシング21の下面から他方の屋根吸込み口9bに至る経路で配線した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置及びこの車両用空気調和装置を備えた鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は従来の車両用空気調和装置を搭載した鉄道車両の模式的側面図、図14は図13の上面図、図15は図14のD−D断面図である。
図13〜図15において、鉄道車両1(以下、単に車両という)の屋根2の上にはケーシング21に覆れた車両用空気調和装置20が設けられている。3は客室4の天井である。
【0003】
車両用空気調和装置20は、室外送風機室と室内送風機室24とによって構成されており、室外送風機室には室外送風機、室外熱交換器、圧縮機などが設置され、ケーシング21には外気導入口が設けられている。また、室内送風機室24には、図15に示すように、幅方向の中央部に室内送風機35が設けられており、室内送風機35の両側には室内熱交換器36a,36bが配設されている。26a,26bはケーシング21の底部22の幅方向の両側に設けられた吸込み口である。
【0004】
また、車両1の天井3と屋根2との間には、幅方向の中央部に前後方向に長いダクト5が設けられており、車両1の天井3のダクト5の両側には、車両用空気調和装置20の室内送風機35による調和空気の吹出し口6a,6bが設けられている。7a,7bはダクト5の両側において天井3に設けられたリターン空気吹込み口で、その下流側には、機器である例えば自動巻取りフィルタ8が設けられており、この自動巻取りフィルタ8は親機8aと子機8bとからなっている。
【0005】
自動巻取りフィルタ8を構成する親機8aと子機8bとは、車両1の幅方向の両側に配設されており、両者は電線40で接続され、親機8aに内蔵されたタイマーなどにより、両者が同じ動作を行うようになっている。
9a,9bは車両1の屋根2に設けられて、車両用空気調和装置20の吸込み口26a,26bに連通する屋根吸込み口、10は車両1の屋根2と車両用空気調和装置20との間に介装されたシールパッキンである。
【0006】
上記のように構成した車両用空気調和装置20を設けた車両1において、室内送風機35が駆動されると客室4内の空気は、天井3に設けたリターン空気吸込み口7a,7bから吸込まれ、自動巻取りフィルタ8a,8bによって清浄化されて室内送風機室24内に流入し、室内熱交換器36a,36bによって熱交換され、熱交換された調和空気は室内送風機35によりダクト5へ送られ、吹出し口6a,6bから客室4内に吹出される。以後この作用を繰り返す(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−98010号公報(第1−3頁、第3−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の自動巻取りフィルタ8の親機8aと子機8bを接続する電線40は、図14に示すように、車両1の天井3の幅方向の中央部において前後方向に長いダクト5が設けられているため、親機8aと子機8bを迂回せずに直接接続することができず、ダクト5を避けて配線しなければならなかった。
車両1の長さは、例えば通勤電車の場合20mであり、配線ルートの確保や配線の固定などに多くの工数を要するばかりでなく、長い電線40を必要とするためコストアップになっていた。
【0009】
この場合、電線40の長さを短縮するために、ダクト5を貫通させることも考えられるが、ダクト5の空気漏れを防止するために電線貫通穴をシールするなどの作業が必要になり、また、ダクト5内に電線40を固定するため、ダクト5内に通風抵抗が大きくなるなど、好ましくなかった。
【0010】
また、電線40の長さを短縮するために、車両1の屋根2上に配線することも考えられるが、屋根2に配線挿通穴を設けるために、車内への水の浸入を防ぐために防水処理を施す必要があり、その上電線が風雨に曝されるのを防止するため、屋根2に電線管や電線ダクトを設ける必要があり、やはり作業が面倒でコストアップになった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、車両の両側に設けた機器を接続する電線を屋根上に設けた車両用空気調和装置のケーシング内を通し、又はケーシングの下面に沿って配線することにより、配線作業が容易で、電線の長さを短縮することができ、配線固定部品が削減されてコストを低減することのできる車両用空気調和装置及びこれを備えた鉄道車両を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る車両用空気調和装置は、車両の幅方向の両側に設けられた機器を接続する電線を、前記車両の屋根に設けた一方の屋根吸込み口及び室内送風機、室内熱交換器等が収容されて前記車両の屋根上に設けたケーシングの吸込み口から該ケーシング内を通り、前記ケーシングの他方の吸込み口及び車両の屋根吸込み口に至る経路で配線し、又は前記一方の屋根吸込み口を通して前記ケーシングの下面から前記他方の屋根吸込み口に至る経路で配線したものである。
【0013】
また、本発明に係る鉄道車両は、上記の車両用空気調和装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線が容易で、電線の長さが短縮され配線固定部品が削減されてコストを低減することのできる車両用空気調和装置及びこれを備えた鉄道車両を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置を備えた車両の模式的側面図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置の要部の説明図である。
【図6】図5(a)のC−C断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置の要部の説明図である。
【図8】図7の他の例の要部の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る車両用空気調和装置の要部の分解説明図である。
【図10】図9の断面図である。
【図11】図9の他の例の要部の分解説明図である。
【図12】図11の他の例の要部の分解説明図である。
【図13】従来の車両用空気調和装置を備えた車両の模式的説明図である。
【図14】図13の上面図である。
【図15】図14のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置を備えた車両の模式的側面図、図2は図1の上面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図3のB−B断面図である。なお、図13〜図15で説明した従来技術と同一又は同じ機能の部分には、これと同じ符号を付してある。
【0017】
本実施の形態は、車両1の天井3に設けたリターン空気吸込み口7a,7bの下流側の設置された自動巻取りフィルタ8の親機8aと子機8bを接続する電線40を、車両1の屋根2に設けた一方の屋根吸込み口9a、車両用空気調和装置20の吸込み口26aから、ケーシング21の天井と室内熱交換器36a,36bとの間を通り、吸込み口26b、他方の屋根吸込み口9bに至る配線ルートにより配線し、室内送風機室24内に固定したものである。
【0018】
本実施の形態によれば、自動巻取りフィルタ8の親機8aと子機8bを接続する電線40の長さが短縮されるため、配線作業が容易であり、また、これにより配線40の長さや配線固定部品が削減されるので、コストを低減することができる。
【0019】
[実施の形態2]
図5は本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置の要部の説明図、図6は図5(a)のC−C断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号を付してある。
【0020】
本実施の形態は、図5(a)に示すように、車両用空気調和装置20の室内送風機室24の底部22に、一方の吸込み口26aから底部22上を後方(室外送風機室23側)に向って延設され、室外送風機室23との間に設けられた隔壁25に沿って横方向に導かれ、ついで底部22上を前方に向って延設されて他方の吸込み口26bに至る上面が開口したほぼコ字状に配線用ダクト28を設け、一端が自動巻取りフィルタ8の親機8aに接続された電線40を、屋根吸込み口9a、吸込み口26aを介して配線用ダクト28に挿入して配線し、他端を吸込み口26b、屋根吸込み口9bを介して子機8bに接続して、図5(b)、図6に示すように、配線用ダクト28の上面開口部をダクトカバー29により閉塞したものである。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができ、さらにケーシング21の天板を開けるようにすれば、電線40の取付、交換、追加等を容易に行うことができ、その上電線40の長さをより短縮することができる。
【0021】
[実施の形態3]
図7、図8は本発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置の要部の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号を付してある。
図7において、30は室外送風機室23から隔壁25を貫通して、室内送風機室24の室内熱交換器36a,36bに接続された配管、31は配管30の上方において隔壁25に設けた電線支持部材である。
【0022】
図7の例においては、一端が自動巻取りフィルタ8の親機8aに接続された電線40を、車両用空気調和装置20の一方の吸込み口26aから引き出して、室内送風機室24の底部22に沿って隔壁25側に導き、ついで隔壁25に沿って立ち上らせ、電線支持部材31に固定したのち下降させ、再び室内送風機室24の底部22に沿って吸込み口26b側に導き、他端を他方の吸込み口26bを介して子機8bに接続したものである。
本例においても実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができるが、さらに、配管30の上方に配線したので、配管30に結露した水滴が電線40にかかるのを防止することができる。
【0023】
図8の例の場合は、例えば、室外送風機室23から隔壁25を貫通して室内送風機35に接続された電線41など、親機8aと子機8bを接続する電線40とは別の電線を、電線40と共に隔壁25に設けた電線支持部材31に結束バンド32などにより固定したものである。
本例においても図7の例の場合と同様の効果が得られるが、1本又は複数の電線を親機8aと子機8bを接続する電線40と共に電線支持部材31に一括して固定するようにしたので、配線処理が容易でその上結束バンド32などの配線固定材料を減らすことができる。
【0024】
[実施の形態4]
図9〜図12は本発明の実施の形態4に係る車両用空気調和装置の要部の分解説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号を付してある。
図9及び図10の例は、車両用空気調和装置20のケーシング21の底部22の下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部27a,27bを、室内送風機35の後部側で一部切除して切除部33a,33bを設け、一端が親機8aに接続された電線40を、屋根吸込み口9aからケーシング21の下面に沿って切除部33a,33bを通して配線し、他端を屋根吸込み口9bを介して子機8bに接続したものである。
【0025】
本例によれば、親機8aと子機8bを接続する電線40を、ケーシング21の底部22の下面に沿って配線したので、電線40の長さをより短かくすることができる。
【0026】
図11の例は、ケーシング21の底部22の下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部27a,27bの室内送風機35の後部側において、シールパッキン受け部27a,27bを幅方向に貫通する電線挿通穴34a,34bを設け、一端が親機8aに接続された電線40を、屋根吸込み口9aからケーシング21の下面に沿って電線挿通穴34a,34bに挿通して配線し、他端を屋根吸込み口9bを介して子機8bに接続したものである。
本実施の形態においても親機8aと子機8bを接続する電線40の長さを短かくできるばかりでなく、シールパッキン受け部27a,27bからの空気漏れを防止することができる。
【0027】
図12の例は、図11の車両用空気調和装置20において、シールパッキン受け部27a,27bの間に電線挿通穴34a,34bと連通する金属製の配線ダクト37を設け、シールパッキン受け部27aの電線挿通穴34aに挿通した電線40を、配線ダクト37内に通し、シールパッキン受け部27bの電線挿通穴34bから引き出して配線したものである。
本例においても、図11の例の場合と同様の効果が得られるが、さらに、シールパッキン受け部27a,27bの間に設けた金属製の配線ダクト37に電線40を挿通することによりシールドされて、ノイズを抑制することができる。
【0028】
上記の各実施の形態においては、機器として車両1の天井3に設けたリターン空気吹込み口7a,7bの下流側に配設した、自動巻取りフィルタ8を構成する親機8aと子機8bを接続する電線40の配線について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、車両1に設けられた行先表示器やドア制御器を構成する機器の親機と子機を接続する電線の配線についても本発明を実施することができる。
【0029】
[実施の形態5]
本実施の形態は、上述した各実施の形態に係る車両用空気調和装置20のいずれかを、鉄道車両1に搭載したものである。
本実施の形態においても、上記各実施の形態による効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 車両、2 屋根、3 天井、4 客室、5 ダクト、6a,6b 吹出し口、7a,7b リターン空気吸込み口、8 自動巻取りフィルタ(機器)、8a 親機、8b 子機、9a,9b 屋根吸込み口、10 シールパッキン、20 車両用空気調和装置、21 ケーシング、22 底部、23 室外送風機室、24 室内送風機室、25 隔壁、26a,26b 吸込み口、27a,27b シールパッキン受け部、28 配線用ダクト、29 ダクトカバー、30 配管、31 電線支持部材、32 結束バンド、33a,33b 切除部、34a,34b 電線挿通穴、35 室内送風機、36a,36b 室内熱交換器、37 配線ダクト、40 電線、41 他の電線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置及びこの車両用空気調和装置を備えた鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図13は従来の車両用空気調和装置を搭載した鉄道車両の模式的側面図、図14は図13の上面図、図15は図14のD−D断面図である。
図13〜図15において、鉄道車両1(以下、単に車両という)の屋根2の上にはケーシング21に覆れた車両用空気調和装置20が設けられている。3は客室4の天井である。
【0003】
車両用空気調和装置20は、室外送風機室と室内送風機室24とによって構成されており、室外送風機室には室外送風機、室外熱交換器、圧縮機などが設置され、ケーシング21には外気導入口が設けられている。また、室内送風機室24には、図15に示すように、幅方向の中央部に室内送風機35が設けられており、室内送風機35の両側には室内熱交換器36a,36bが配設されている。26a,26bはケーシング21の底部22の幅方向の両側に設けられた吸込み口である。
【0004】
また、車両1の天井3と屋根2との間には、幅方向の中央部に前後方向に長いダクト5が設けられており、車両1の天井3のダクト5の両側には、車両用空気調和装置20の室内送風機35による調和空気の吹出し口6a,6bが設けられている。7a,7bはダクト5の両側において天井3に設けられたリターン空気吹込み口で、その下流側には、機器である例えば自動巻取りフィルタ8が設けられており、この自動巻取りフィルタ8は親機8aと子機8bとからなっている。
【0005】
自動巻取りフィルタ8を構成する親機8aと子機8bとは、車両1の幅方向の両側に配設されており、両者は電線40で接続され、親機8aに内蔵されたタイマーなどにより、両者が同じ動作を行うようになっている。
9a,9bは車両1の屋根2に設けられて、車両用空気調和装置20の吸込み口26a,26bに連通する屋根吸込み口、10は車両1の屋根2と車両用空気調和装置20との間に介装されたシールパッキンである。
【0006】
上記のように構成した車両用空気調和装置20を設けた車両1において、室内送風機35が駆動されると客室4内の空気は、天井3に設けたリターン空気吸込み口7a,7bから吸込まれ、自動巻取りフィルタ8a,8bによって清浄化されて室内送風機室24内に流入し、室内熱交換器36a,36bによって熱交換され、熱交換された調和空気は室内送風機35によりダクト5へ送られ、吹出し口6a,6bから客室4内に吹出される。以後この作用を繰り返す(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1−98010号公報(第1−3頁、第3−4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の自動巻取りフィルタ8の親機8aと子機8bを接続する電線40は、図14に示すように、車両1の天井3の幅方向の中央部において前後方向に長いダクト5が設けられているため、親機8aと子機8bを迂回せずに直接接続することができず、ダクト5を避けて配線しなければならなかった。
車両1の長さは、例えば通勤電車の場合20mであり、配線ルートの確保や配線の固定などに多くの工数を要するばかりでなく、長い電線40を必要とするためコストアップになっていた。
【0009】
この場合、電線40の長さを短縮するために、ダクト5を貫通させることも考えられるが、ダクト5の空気漏れを防止するために電線貫通穴をシールするなどの作業が必要になり、また、ダクト5内に電線40を固定するため、ダクト5内に通風抵抗が大きくなるなど、好ましくなかった。
【0010】
また、電線40の長さを短縮するために、車両1の屋根2上に配線することも考えられるが、屋根2に配線挿通穴を設けるために、車内への水の浸入を防ぐために防水処理を施す必要があり、その上電線が風雨に曝されるのを防止するため、屋根2に電線管や電線ダクトを設ける必要があり、やはり作業が面倒でコストアップになった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、車両の両側に設けた機器を接続する電線を屋根上に設けた車両用空気調和装置のケーシング内を通し、又はケーシングの下面に沿って配線することにより、配線作業が容易で、電線の長さを短縮することができ、配線固定部品が削減されてコストを低減することのできる車両用空気調和装置及びこれを備えた鉄道車両を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る車両用空気調和装置は、車両の幅方向の両側に設けられた機器を接続する電線を、前記車両の屋根に設けた一方の屋根吸込み口及び室内送風機、室内熱交換器等が収容されて前記車両の屋根上に設けたケーシングの吸込み口から該ケーシング内を通り、前記ケーシングの他方の吸込み口及び車両の屋根吸込み口に至る経路で配線し、又は前記一方の屋根吸込み口を通して前記ケーシングの下面から前記他方の屋根吸込み口に至る経路で配線したものである。
【0013】
また、本発明に係る鉄道車両は、上記の車両用空気調和装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線が容易で、電線の長さが短縮され配線固定部品が削減されてコストを低減することのできる車両用空気調和装置及びこれを備えた鉄道車両を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置を備えた車両の模式的側面図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置の要部の説明図である。
【図6】図5(a)のC−C断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置の要部の説明図である。
【図8】図7の他の例の要部の説明図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る車両用空気調和装置の要部の分解説明図である。
【図10】図9の断面図である。
【図11】図9の他の例の要部の分解説明図である。
【図12】図11の他の例の要部の分解説明図である。
【図13】従来の車両用空気調和装置を備えた車両の模式的説明図である。
【図14】図13の上面図である。
【図15】図14のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る車両用空気調和装置を備えた車両の模式的側面図、図2は図1の上面図、図3は図2のA−A断面図、図4は図3のB−B断面図である。なお、図13〜図15で説明した従来技術と同一又は同じ機能の部分には、これと同じ符号を付してある。
【0017】
本実施の形態は、車両1の天井3に設けたリターン空気吸込み口7a,7bの下流側の設置された自動巻取りフィルタ8の親機8aと子機8bを接続する電線40を、車両1の屋根2に設けた一方の屋根吸込み口9a、車両用空気調和装置20の吸込み口26aから、ケーシング21の天井と室内熱交換器36a,36bとの間を通り、吸込み口26b、他方の屋根吸込み口9bに至る配線ルートにより配線し、室内送風機室24内に固定したものである。
【0018】
本実施の形態によれば、自動巻取りフィルタ8の親機8aと子機8bを接続する電線40の長さが短縮されるため、配線作業が容易であり、また、これにより配線40の長さや配線固定部品が削減されるので、コストを低減することができる。
【0019】
[実施の形態2]
図5は本発明の実施の形態2に係る車両用空気調和装置の要部の説明図、図6は図5(a)のC−C断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号を付してある。
【0020】
本実施の形態は、図5(a)に示すように、車両用空気調和装置20の室内送風機室24の底部22に、一方の吸込み口26aから底部22上を後方(室外送風機室23側)に向って延設され、室外送風機室23との間に設けられた隔壁25に沿って横方向に導かれ、ついで底部22上を前方に向って延設されて他方の吸込み口26bに至る上面が開口したほぼコ字状に配線用ダクト28を設け、一端が自動巻取りフィルタ8の親機8aに接続された電線40を、屋根吸込み口9a、吸込み口26aを介して配線用ダクト28に挿入して配線し、他端を吸込み口26b、屋根吸込み口9bを介して子機8bに接続して、図5(b)、図6に示すように、配線用ダクト28の上面開口部をダクトカバー29により閉塞したものである。
本実施の形態によれば、実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができ、さらにケーシング21の天板を開けるようにすれば、電線40の取付、交換、追加等を容易に行うことができ、その上電線40の長さをより短縮することができる。
【0021】
[実施の形態3]
図7、図8は本発明の実施の形態3に係る車両用空気調和装置の要部の説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号を付してある。
図7において、30は室外送風機室23から隔壁25を貫通して、室内送風機室24の室内熱交換器36a,36bに接続された配管、31は配管30の上方において隔壁25に設けた電線支持部材である。
【0022】
図7の例においては、一端が自動巻取りフィルタ8の親機8aに接続された電線40を、車両用空気調和装置20の一方の吸込み口26aから引き出して、室内送風機室24の底部22に沿って隔壁25側に導き、ついで隔壁25に沿って立ち上らせ、電線支持部材31に固定したのち下降させ、再び室内送風機室24の底部22に沿って吸込み口26b側に導き、他端を他方の吸込み口26bを介して子機8bに接続したものである。
本例においても実施の形態1の場合とほぼ同様の効果を得ることができるが、さらに、配管30の上方に配線したので、配管30に結露した水滴が電線40にかかるのを防止することができる。
【0023】
図8の例の場合は、例えば、室外送風機室23から隔壁25を貫通して室内送風機35に接続された電線41など、親機8aと子機8bを接続する電線40とは別の電線を、電線40と共に隔壁25に設けた電線支持部材31に結束バンド32などにより固定したものである。
本例においても図7の例の場合と同様の効果が得られるが、1本又は複数の電線を親機8aと子機8bを接続する電線40と共に電線支持部材31に一括して固定するようにしたので、配線処理が容易でその上結束バンド32などの配線固定材料を減らすことができる。
【0024】
[実施の形態4]
図9〜図12は本発明の実施の形態4に係る車両用空気調和装置の要部の分解説明図である。なお、実施の形態1と同じ部分には、これと同じ符号を付してある。
図9及び図10の例は、車両用空気調和装置20のケーシング21の底部22の下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部27a,27bを、室内送風機35の後部側で一部切除して切除部33a,33bを設け、一端が親機8aに接続された電線40を、屋根吸込み口9aからケーシング21の下面に沿って切除部33a,33bを通して配線し、他端を屋根吸込み口9bを介して子機8bに接続したものである。
【0025】
本例によれば、親機8aと子機8bを接続する電線40を、ケーシング21の底部22の下面に沿って配線したので、電線40の長さをより短かくすることができる。
【0026】
図11の例は、ケーシング21の底部22の下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部27a,27bの室内送風機35の後部側において、シールパッキン受け部27a,27bを幅方向に貫通する電線挿通穴34a,34bを設け、一端が親機8aに接続された電線40を、屋根吸込み口9aからケーシング21の下面に沿って電線挿通穴34a,34bに挿通して配線し、他端を屋根吸込み口9bを介して子機8bに接続したものである。
本実施の形態においても親機8aと子機8bを接続する電線40の長さを短かくできるばかりでなく、シールパッキン受け部27a,27bからの空気漏れを防止することができる。
【0027】
図12の例は、図11の車両用空気調和装置20において、シールパッキン受け部27a,27bの間に電線挿通穴34a,34bと連通する金属製の配線ダクト37を設け、シールパッキン受け部27aの電線挿通穴34aに挿通した電線40を、配線ダクト37内に通し、シールパッキン受け部27bの電線挿通穴34bから引き出して配線したものである。
本例においても、図11の例の場合と同様の効果が得られるが、さらに、シールパッキン受け部27a,27bの間に設けた金属製の配線ダクト37に電線40を挿通することによりシールドされて、ノイズを抑制することができる。
【0028】
上記の各実施の形態においては、機器として車両1の天井3に設けたリターン空気吹込み口7a,7bの下流側に配設した、自動巻取りフィルタ8を構成する親機8aと子機8bを接続する電線40の配線について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、車両1に設けられた行先表示器やドア制御器を構成する機器の親機と子機を接続する電線の配線についても本発明を実施することができる。
【0029】
[実施の形態5]
本実施の形態は、上述した各実施の形態に係る車両用空気調和装置20のいずれかを、鉄道車両1に搭載したものである。
本実施の形態においても、上記各実施の形態による効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 車両、2 屋根、3 天井、4 客室、5 ダクト、6a,6b 吹出し口、7a,7b リターン空気吸込み口、8 自動巻取りフィルタ(機器)、8a 親機、8b 子機、9a,9b 屋根吸込み口、10 シールパッキン、20 車両用空気調和装置、21 ケーシング、22 底部、23 室外送風機室、24 室内送風機室、25 隔壁、26a,26b 吸込み口、27a,27b シールパッキン受け部、28 配線用ダクト、29 ダクトカバー、30 配管、31 電線支持部材、32 結束バンド、33a,33b 切除部、34a,34b 電線挿通穴、35 室内送風機、36a,36b 室内熱交換器、37 配線ダクト、40 電線、41 他の電線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の幅方向の両側に設けられた機器を接続する電線を、前記車両の屋根に設けた一方の屋根吸込み口及び室内送風機、室内熱交換器等が収容されて前記車両の屋根上に設けたケーシングの吸込み口から該ケーシング内を通り、前記ケーシングの他方の吸込み口及び車両の屋根吸込み口に至る経路で配線し、又は前記一方の屋根吸込み口を通して前記ケーシングの下面から前記他方の屋根吸込み口に至る経路で配線したことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記ケーシングの底部に、前記両吸込み口をつなぐ配線ダクトを設け、該配線ダクト内に前記電線を配線したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記ケーシング内に設けた隔壁の室内配管より上方に電線支持部材を設け、前記ケーシング内に配線した電線を前記電線支持部材に固定したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記機器を接続する電線と共に、該電線以外の電線を前記電線支持部材に固定したことを特徴とする請求項3記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記ケーシングの下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部の一部を切除し、前記電線をこの切除部を通し前記ケーシングの下面に沿って配線したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記ケーシングの下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部に電線挿通穴を設け、前記電線をこの電線挿通穴を通し前記ケーシングの下面に沿って配線したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
前記一対のシールパッキン受け部の間に配線ダクトを設け、前記電線を電線挿通穴、配線ダクトを通して配線したことを特徴とする請求項6記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかの車両用空気調和装置を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項1】
車両の幅方向の両側に設けられた機器を接続する電線を、前記車両の屋根に設けた一方の屋根吸込み口及び室内送風機、室内熱交換器等が収容されて前記車両の屋根上に設けたケーシングの吸込み口から該ケーシング内を通り、前記ケーシングの他方の吸込み口及び車両の屋根吸込み口に至る経路で配線し、又は前記一方の屋根吸込み口を通して前記ケーシングの下面から前記他方の屋根吸込み口に至る経路で配線したことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記ケーシングの底部に、前記両吸込み口をつなぐ配線ダクトを設け、該配線ダクト内に前記電線を配線したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記ケーシング内に設けた隔壁の室内配管より上方に電線支持部材を設け、前記ケーシング内に配線した電線を前記電線支持部材に固定したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記機器を接続する電線と共に、該電線以外の電線を前記電線支持部材に固定したことを特徴とする請求項3記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記ケーシングの下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部の一部を切除し、前記電線をこの切除部を通し前記ケーシングの下面に沿って配線したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記ケーシングの下面の長手方向に設けた一対のシールパッキン受け部に電線挿通穴を設け、前記電線をこの電線挿通穴を通し前記ケーシングの下面に沿って配線したことを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
前記一対のシールパッキン受け部の間に配線ダクトを設け、前記電線を電線挿通穴、配線ダクトを通して配線したことを特徴とする請求項6記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
前記請求項1〜7のいずれかの車両用空気調和装置を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−232691(P2012−232691A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103466(P2011−103466)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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