説明

車両用空調ダクト

【課題】管状のダクト本体の外面に添わせて発泡体を設けることによりダクト外面の結露発生を抑えると共に、ダクト外部の音に対する吸音性を発揮させる。
【解決手段】ポリウレタンフォーム等からなる発泡体21には、厚み方向におけるダクト本体11への貼着側22とは反対側23に二方向に交差する切り込み24,25を複数の形成し、貼着側22については切断することなく残し、前記二方向に交差する切り込み24,25が複数形成された発泡体21を、プラスチック製のダクト本体11の外面に貼着し、ダクト本体11外面の発泡体21によって結露の発生を抑え、吸音性を発揮するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両天井部の裏側やインストルメントパネルの裏側等に設けられる車両用空調ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネルの裏側やワンボックスカーなどの天井部の裏側に空調ダクトを配設し、車両用エアコンから吹き出された温調空気を空調ダクトによって車室内の吹き出し口に誘導するように構成されている。
【0003】
車両用空調ダクトは、車両用エアコンから吹き出された温調空気が内部を通過するため、ダクトの内面と外面とで温度差を生じ易く、その温度差でダクトの外面に結露が発生し、その結露による水滴がダクトの外面から垂れてダクト下方の部品等を濡らしたりするおそれがあった。
【0004】
従来、前記結露の発生を防ぐ方法として、ダクトの外面において結露防止が必要な部分の全面に断熱材としてシート状ポリウレタンフォームを両面接着テープ等で貼り付けることが行われている(特許文献1〜3)。しかし、両面接着テープ付きポリウレタンフォームは可撓性を有するものの、伸び易さについては十分とは言い難いため、ポリウレタンフォームをダクトの外面に貼る際にダクト外面のコーナー部等においてポリウレタンフォームの伸び不足等に起因する皺や位置ずれを生じ易く、貼り直しが必要になることがある。
【0005】
また、車両天井部やインストルメントパネルなどの車両用内装部材の裏側に設けられる車両用ダクトは、車外の音やエンジンルームの音がダクトを介して車室内に伝わるのを防ぐため、ダクト外面の吸音性を高めることが求められる。
【0006】
ダクト外面の吸音性を高める方法として、結露防止用にダクトの外面に設けられるポリウレタンフォームの厚みを大にする方法が考えられる。ポリウレタンフォームは、多孔質体からなるため、吸音材としても作用し、ダクト外面に設けた場合には車外の音やエンジンルームの音を吸収してダクトに伝わるのを防ぐことができる。しかし、ポリウレタンフォームの厚みを大にすると、曲げに対する反発力が大きくなってポリウレタンフォームの可撓性が減少し、ポリウレタンフォームをダクトの外面に添わせることが難しくなり、ダクトのコーナー部等においてポリウレタンフォームの皺がより発生し易くなったり、ポリウレタンフォームの位置ずれを生じ易くなったりして何度も貼り直しが必要になる問題や、ダクトのコーナー部付近の外面とポリウレタンフォームとの間に部分的に隙間を生じて結露防止効果及び吸音効果が低下する問題がある。
【0007】
なお、結露防止用のダクトとして、シート状の発泡体に複数のスリットを形成し、前記スリット部分を拡開させて網状とした吸水部材を管状のダクト本体の外面に設けることが提案されている(特許文献4)。
【0008】
網状の吸水部材をダクト本体の外面に設けたダクトにあっては、吸水部材が存在する部分で断熱性が高まり、ダクト本体の外面に発生する結露量を抑えることができ、また、吸水部材が存在しない網目部分で結露が発生しても、結露による水滴がダクト本体の外面を伝わって流れる際に、網状の吸水部材と接触して吸水部材に吸収されるため、水滴がダクトの外面から垂れるのを防ぐことができる。
【0009】
しかしながら、網状の吸水部材をダクト本体の外面に設けたダクトは、吸水部材の網目部分でダクト本体が露出するため、吸音性については十分とは言い難いかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平6−75742号公報
【特許文献2】特開平7−257149号公報
【特許文献3】特開2005−47421号公報
【特許文献4】特開2007−216849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、管状のダクト本体の外面に設けた発泡体によって結露の発生を抑えることができると共に良好な吸音性を有し、さらには管状のダクト本体の外面に発泡体を貼る際に発泡体をダクト本体の外面に添わせ易くして、正しく貼着できるようにすると共に発泡体とダクト本体の外面との間に隙間を生じ難くして、結露防止効果及び吸音効果を高めることができるダクトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、管状のダクト本体と、前記ダクト本体の外面に設けられたシート状の可撓性の発泡体とからなり、前記発泡体はダクト本体への貼着側とは反対側に、複数の切り込みが前記貼着側を残して形成され、前記切り込みの形成された発泡体が前記ダクト本体の外面に貼着されていることを特徴とする車両用ダクトに係る。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記切り込みは、交差して形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記切り込みは、該切り込みの延在方向に断続的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダクト本体の外面に貼着されたシート状の発泡体によって断熱性が高まり、ダクトの外面に発生する結露を抑えることができる。また、ダクト本体の外面に貼着された発泡体は多孔質体であるため、ダクトの外面における吸音性が良好なものとなる。
【0016】
また、本発明によれば、ダクト本体の外面に貼着された発泡体は、ダクト本体への貼着側とは反対側に、複数の切り込みが前記貼着側を残して形成されたものであるため、切り込みが開く方向に対して発泡体の変形性が高まり、伸び易くなる。そのため、発泡体をダクト本体の外面に貼着する際に、発泡体をダクト本体の外面に添わせ易くなってダクト本体の外面に密着させることができ、発泡体とダクト本体の外面との間に隙間を生じ難くできる。しかも、発泡体のダクト本体への貼着側とは反対側に形成された切り込みは、ダクト本体への貼着側を残して形成されたものであり、発泡体の貼着側まで貫通していないため、発泡体の切り込み部分においてもダクト本体外面が発泡体で覆われた状態となる。そのため、ダクトの外面の断熱性が発泡体により良好になって結露防止効果が高まり、また吸音性についても向上する。さらに、発泡体のダクト本体への貼着側とは反対側に形成された切り込みは、発泡体をダクト本体の外面形状に沿わせてダクト本体の外面に貼着する際に、発泡体が伸ばされることによって拡開した状態となるため、切り込み部分で発泡体の表面積が増大し、これによってもダクト外面での吸音性が向上する。
【0017】
さらに、結露防止効果及び吸音性を一層向上させるために、前記発泡体の厚みを大にしても、発泡体に形成された切り込みによって発泡体の可撓性、変形性及び伸び易さが確保されるため、発泡体はダクト本体の外面への貼着時にダクト本体の外面に添い易く、ダクト本体の外面と密着して該外面との間に隙間を生じ難くなり、結露防止効果及び吸音性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明において、前記切り込みを交差するように形成することによって、より発泡体の変形性が確保されるので、複雑に曲がるダクト本体の外面に発泡体が追従し易くなる。さらに、ダクト本体に発泡体を貼着後、発泡体のダクト本体への貼着側とは反対側が、切り込みの交差部の開きによって大きな凹凸形状となるので吸音性が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における第1実施形態のダクトの斜視図及びその一部の拡大図である。
【図2】第1実施形態のダクト本体と発泡体の斜視図である。
【図3】第2実施形態のダクトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示す車両用ダクト10は、車両用エアコンと一端側15が接続され、他端側17が車室内の空気吹き出し口と接続されるものであり、前記車両用エアコンから吹き出される温調空気を空気吹き出し口へ誘導する。前記車両用ダクト10は、ダクト本体11とシート状の発泡体21とからなる。
【0021】
前記ダクト本体11は、図2にも示すように、プラスチック製の管状体からなり、内部が空気の流通路12とされる。前記ダクト本体11は、設置場所等に応じて所定のサイズ、断面形状(円形、楕円、四角形等)及び屈曲形状とされている。また、前記ダクト本体11は、ブロー成形で管状に形成されたもの、あるいは射出成形等で形成された管状半体同士を組み合わせて管状にされたもの等の何れでもよい。
【0022】
前記発泡体21は、前記ダクト本体11の外面に貼着され、ダクト本体11の外面に発生する結露を抑えると共にダクト10の外部からダクト本体11に伝わる音を吸音する。前記発泡体21は、前記ダクト本体11の外面の所定部位、例えば結露を生じやすい部位、あるいはダクト本体11の外面全体に設けられ、両面接着テープや接着剤等でダクト本体11の外面に固定される。
【0023】
前記発泡体21は多孔質体からなって可撓性を有するものであれば特に限定されず、ポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム等の発泡体を挙げることができる。それらの中でも軟質ポリウレタンフォームあるいはポリオレフィンフォームは、良好な可撓性を有し、軽量で断熱性及び吸音性が良好なため、好ましいものである。前記発泡体21の厚みは適宜の値とされるが、断熱性、吸音性、前記ダクト本体11の外面への貼着時の可撓性などの点から、2〜10mm程度が好ましい。
【0024】
前記発泡体21は、前記ダクト本体11への貼着側22とは反対側23に、二方向D1,D2に交差する切り込み24,25が複数形成されている。なお、一方の切り込み24はD1方向の切り込み、他方の切り込み25はD2方向の切り込みを示す。本実施例では、前記二方向D1,D2は互いに直交する二方向とされ、さらに本実施例では、図2に示すように前記発泡体21が長方形のシート状とされ、前記発泡体21の短辺26と平行な縦方向がD1方向とされ、前記発泡体21の長辺27と平行な横方向がD2方向とされ、前記二方向の切り込み24,25は、縦方向の切り込み24と横方向の切り込み25となっている。
【0025】
前記切り込み24,25は、前記ダクト本体11への貼着側22を所定量残して形成されている。すなわち、前記切り込み24,25は、前記発泡体21におけるダクト本体11への貼着側22とは反対側23から発泡体21の厚み方向Tに沿って途中まで形成され、前記発泡体11の貼着側22が所定量、例えば0.5〜2mm程度、切断されずに残された状態となっている。各方向における切り込み24,25の間隔L1,L2は適宜の値とされるが、発泡体21の可撓性及伸びを良好とするため、L1,L2は5〜10mm程度が好ましい。
【0026】
また、前記切り込み24,25は、本実施例では破線やミシン目のように、切り込み24,25の延在方向(すなわち切り込みの延長方向)に断続的に形成されている。前記切り込み24,25を断続的に設けることによって、前記発泡体21の部分的な強度低下を抑えることができ、前記ダクト本体11の外面に沿って発泡体21を貼着する際の発泡体21の引っ張り等によって、前記発泡体21が切り込み部分24,25で破れたりするのを防ぐことができる。前記切り込み24,25を断続的に設ける場合、一方向の切り込み24と他方向の切り込み25は、図1及び図2のように互いに交差して相手側の切り込みを分断(すなわち切断)するのが好ましい。このように、二方向の切り込み24,25が交差して相手側の切り込みを分断する場合、二方向の切り込み24,25の交差部位28で発泡体21の変形がより容易になって発泡体21をダクト本体11の外面にさらに添わせ易くなる。
【0027】
図3に示す第2実施形態のダクト100は、第1実施形態における断続的な切り込み24,25に代えて連続的な切り込み240,250を発泡体210に形成したものである。前記発泡体210は、切り込み240,250が連続的に形成されている点を除き他の構成は、第1実施形態の発泡体21と同様である。符号220はダクト本体11への貼着側、230は貼着側とは反対側である。一方の切り込み240はD1方向の切り込み、他方の切り込み250はD2方向の切り込みを示す。また、第2実施形態におけるその他の構成については、第1実施形態における対応する構成と同様である。
【0028】
第2実施形態のダクト100は、前記発泡体210に形成された連続的な切り込み240,250によって、発泡体210の変形し易さが増大するため、ダクト本体11の外面が複雑な曲面形状であってもダクト本体11の外面に添わせて発泡体210を貼着することが容易になり、ダクト外面の結露防止及び吸音性を良好にすることができる。
【0029】
また、本発明において、前記切り込みは交差しない構成であってもよい。例えば、一方向に伸びる切り込みが複数平行に設けられているだけでもよいし、断続的に延在(存在)する切り込みが二方向設けられ、切り込み自体が互いに交差しないように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10,100 ダクト
11,11 ダクト本体
21,210 発泡体
22,220 ダクト本体への貼着側
23,230 貼着側とは反対側
24,25,240,250 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のダクト本体と、
前記ダクト本体の外面に設けられたシート状の可撓性の発泡体とからなり、
前記発泡体はダクト本体への貼着側とは反対側に、複数の切り込みが前記貼着側を残して形成され、
前記切り込みの形成された発泡体が前記ダクト本体の外面に貼着されていることを特徴とする車両用ダクト。
【請求項2】
前記切り込みは、交差して形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ダクト。
【請求項3】
前記切り込みは、該切り込みの延在方向に断続的に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−251638(P2011−251638A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127437(P2010−127437)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】