説明

車両用空調ユニット

【課題】エバポレータから発生したドレン水をケース本体内壁に付着させることなく、確実にドレン孔から排水してケース本体での結露発生を防止することができる車両用空調ユニットを提供する。
【解決手段】送風空気を冷却するエバポレータ2と、エバポレータ2の上流側に形成される送風空間12と、エバポレータ2の下側に形成される排水空間13と、ドレン孔5とを含むケース本体3と、エバポレータ2から発生したドレン水をドレン孔5まで導くためのインナーガイド4の下側周壁9で囲まれたドレン水流通空間8と、下側周壁9からドレン孔5まで延びて形成されたドレンガイド部6と、ドレン水流通空間8の上部でエバポレータ2を支持するエバポレータ支持部7とを備えた車両用空調ユニット1であって、下側周壁9は、ドレンガイド部6と連続して形成され、ドレンガイド部6及び下側周壁9は、ケース本体3と非接触である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用空調ユニットに関し、エバポレータを備えたHVACユニットからなる車両用空調ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置が特許文献1に記載されている。この自動車用空調装置は、冷却用熱交換器(エバポレータ)で発生する凝縮水(ドレン水)が車室内に飛水することを防止しつつ且つ水漏れ防止性を高くするものである。これを行うために、凝縮水を流すためのドレン溝と送風路とを区画する蓋部材を取り付けている。
しかしながら、上記特許文献1の自動車用空調装置では、ドレン溝が形成されたインシュレータがケース本体に当接し、また蓋部材下側であってエバポレータ上流側のケース本体側壁がドレン水に対してむき出しの状態である。したがってケース本体の底壁にはドレン溝を介してドレン水の低温が伝わってケース本体の下面が冷やされ、結露するおそれがある。また、エバポレータ上流側のケース本体側壁がドレン水に対してむきだしなので、車両の加減速時や旋回時にドレン水がはねてケース本体側壁に付着し、ここからドレン水の低温が伝わって結露するおそれがある。
【0003】
このようなケース本体における結露の発生は、大きくなった結露が車室内に落下して乗員に不快な思いをさせたり、車室内を濡らしたりするので、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−56342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、エバポレータから発生したドレン水をケース本体内壁に付着させることなく、確実にドレン孔から排水してケース本体での結露発生を防止することができる車両用空調ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明では、送風空気を冷却するエバポレータと、該エバポレータを収納するケース本体であって、前記エバポレータに流入する前記送風空気が流れる送風空間と、前記エバポレータの下側に形成される排水空間と、前記ケース本体に開口して設けられ、前記排水空間に連通するドレン孔とを含むケース本体と、前記排水空間に収容されるインナーガイドであって、前記エバポレータから発生したドレン水を前記ドレン孔まで導くための前記インナーガイドの下側周壁で囲まれたドレン水流通空間と、該ドレン水流通空間と前記ケース本体の外部空間とを前記ドレン孔を介して連通させるために前記下側周壁から前記ドレン孔まで延びるドレンガイド部と、前記ドレン水流通空間の上部で前記エバポレータを支持するエバポレータ支持部と、を含むインナーガイドとを備えた車両用空調ユニットであって、前記下側周壁は、前記ドレンガイド部と連続して形成され、前記ドレンガイド部及び前記下側周壁は、前記ケース本体と非接触であることを特徴とする車両用空調ユニットを提供する。
【0007】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記ドレンガイド部は、前記ドレン孔の内部まで延びていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、インナーガイドの下側周壁は、ドレンガイド部と連続して形成されるので、下側周壁で囲まれたドレン水流通空間に流入したドレン水を全て確実にドレンガイド部に流すことができる。さらに、ドレンガイド部及び下側周壁がケース本体と非接触であるため、インナーガイド内のドレン水流通空間を流れるドレン水の低温がケース本体に伝わることはない。したがって、ケース本体における結露を防止することができる。また、ドレン水流通空間の上部はエバポレータ支持部により支持されたエバポレータで塞がれるので、ドレン水流通空間は略密閉されることになり、車両の加減速時や旋回時にドレン水がはねてもこれが直接ケース本体に付着することはない。このような構成により、ドレン水がケース本体に付着することを確実に防止し、結露発生を確実に防止することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、ドレンガイド部が、ドレン孔の内部まで延びて形成されているため、ドレンガイド部からドレン水が排水された瞬間に車両が揺れたりしても、このドレン水がケース本体内の排水空間に飛水するようなことはなく、ドレン水を確実にドレン孔に流通させ、外部に排水することができる。したがって、ドレン水がケース本体に付着することを防止し、結露を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る車両用空調ユニットを正面から見た概略断面図である。
【図2】本発明に係る車両用空調ユニットを側面から見た概略断面図である。
【図3】エバポレータをインナーガイドに装着した状態を下流側から見たときの概略図である。
【図4】エバポレータをインナーガイドに装着した状態を側面から見たときの概略図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る車両用空調ユニットを正面から見た概略断面図であり、図2は本発明に係る車両用空調ユニットを側面から見た概略断面図である。また、図3はエバポレータをインナーガイドに装着した状態を下流側から見たときの概略図であり、図4はエバポレータをインナーガイドに装着した状態を側面から見たときの概略図である。また、図5は図3のA−A断面図であり、図6は図4のB−B断面図である。
【0012】
図示したように、本発明に係る車両用空調ユニット1は、エバポレータ2と、ケース本体3と、インナーガイド4とを含む。エバポレータ2は、インナーガイド4の上部に位置するエバポレータ支持部7に装着されて支持される。エバポレータ2には、冷媒が通過していて、この冷媒を用いて送風空気を熱交換作用により冷却する。エバポレータ2としては、種々のタイプがあるが、一般的には放熱フィンが複数枚並べて配設された積層型が用いられている。エバポレータ2に供給される冷媒は、コンプレッサー(不図示)で圧縮され、さらにコンデンサー(不図示)で液化され、これが気化したものである。すなわち、上述した熱交換作用は、この冷媒の潜熱を利用するものである。これにより冷却された送風空気が冷風となり、車両の乗員に供給される。ケース本体3には送風ファン(不図示)が備わっていて、この送風ファンにより送風空気が送風空間12を流れる。この送風空気が、エバポレータ2を上流側から下流側に通過し、具体的には放熱フィンの間を通過することにより冷却されて、冷風として車両の乗員に提供される。この圧縮空気の冷却時に、ドレン水(凝縮水)が発生する。ドレン水は、エバポレータ2内で発生した後、その重さで下方に流れ、インナーガイド4内に落下し、ケース本体3に備わるドレン孔5から車室外に排水される。なお、冷媒はエバポレータ2に備わる配管11を通じて供給、排出される。
【0013】
インナーガイド4は、上述したエバポレータ支持部7と、下側周壁9と、ドレンガイド部6とを含む。インナーガイド4内には、下側周壁9で囲まれたドレン水流通空間8が形成され、このドレン水流通空間8の上部はエバポレータ支持部7で支持されたエバポレータ2にて塞がれている。エバポレータ2の下面全体は、このドレン水流通空間8に面している。したがって、エバポレータ2から発生したドレン水は、全て確実にドレン水流通空間8内に流入する。これとともに、ドレン水流通空間8は略密閉されるため、いったんドレン水流通空間8内に流入したドレン水が、車両の揺れ等によってはねてケース本体3に付着することを抑制できる。
【0014】
ドレンガイド部6は下側周壁9と連続して管状に形成され、下側周壁9の下端に位置する。下側周壁9はこのドレンガイド部6に向けて傾斜して略漏斗状に形成されている(図4では下側周壁9の上流側はまっすぐの壁面として形成されている)。このドレンガイド部6の出口端は、ドレン孔5の入口端近傍に配設されている。したがって、ドレンガイド部6から排水されたドレン水はドレン孔5内に流入し、ここから車外に排水される。ドレンガイド部6の位置によって、下側周壁9の傾斜角度は適宜変更可能である。換言すれば、ドレン水が確実にドレンガイド部6に流入すればよいため、図4で示したような鉛直な下側周壁9であってもよい。さらにいえば、ドレン水流通空間8に流入したドレン水をいったん管状のドレンガイド部6に集水し、これをドレン孔5に通じさせて排水できればよいので、下側周壁9としては、ドレンガイド部6に向けてドレン水が自然落下して流れるような形状であればどのような形状でもよい。ドレンガイド部6についても、ドレンガイド部6内に流入したドレン水がドレン孔5に流入するための形状であれば、管状に限らず、どのような形状であってもよい。
【0015】
このドレンガイド部6の出口端を、ドレン孔5の内部に位置するように配設すれば、ドレンガイド部6から排水されたドレン水の全てが確実にドレン孔5内に流入することになる。したがって、エバポレータ2から発生したドレン水を全て確実に車外に排水することができ、ドレン水がケース本体3に付着することを防止し、ケース本体3の結露を防止することができる。
【0016】
インナーガイド4は、ケース本体3の下側に形成されている排水空間15に収容されている。具体的には、インナーガイド4の上側にてケース本体3に係止して固定されている。これにより、インナーガイド4の排水空間13における位置決めが確実に行われる。これに伴い、インナーガイド4を構成する下側周壁9,及びドレンガイド部6の排水空間13における位置も固定される。この状態で、下側周壁9とドレンガイド部6は、ケース本体3に対して非接触である。すなわち、ドレン水が流通するドレン水流通空間8を形成する下側周壁9と、ドレン水が排水されるドレンガイド部6がともにケース本体3に対して非接触であるので、ドレン水の低温がケース本体3に伝わることはない。したがって、ケース本体3における結露を確実に防止することができる。
【0017】
インナーガイド4の上部には、送風空間12と排水空間13を仕切る仕切壁10が形成されている。これにより、エバポレータ2への確実な空気の流入経路を形成しているとともに、ケース本体3内を送風空間12と排水空間13に区分けしている。
【符号の説明】
【0018】
1 車両用空調ユニット
2 エバポレータ
3 ケース本体
4 インナーガイド
5 ドレン孔
6 ドレンガイド部
7 エバポレータ支持部
8 ドレン水流通空間
9 下側周壁
10 仕切壁
11 配管
12 送風空間
13 排水空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風空気を冷却するエバポレータと、
該エバポレータを収納するケース本体であって、前記エバポレータに流入する前記送風空気が流れる送風空間と、前記エバポレータの下側に形成される排水空間と、前記ケース本体に開口して設けられ、前記排水空間に連通するドレン孔とを含むケース本体と、
前記排水空間に収容されるインナーガイドであって、前記エバポレータから発生したドレン水を前記ドレン孔まで導くための前記インナーガイドの下側周壁で囲まれたドレン水流通空間と、該ドレン水流通空間と前記ケース本体の外部空間とを前記ドレン孔を介して連通させるために前記下側周壁から前記ドレン孔まで延びるドレンガイド部と、前記ドレン水流通空間の上部で前記エバポレータを支持するエバポレータ支持部と、を含むインナーガイドとを備えた車両用空調ユニットであって、
前記下側周壁は、前記ドレンガイド部と連続して形成され、前記ドレンガイド部及び前記下側周壁は、前記ケース本体と非接触であることを特徴とする車両用空調ユニット。
【請求項2】
前記ドレンガイド部は、前記ドレン孔の内部まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−158947(P2010−158947A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1481(P2009−1481)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】