説明

車両用空調装置、車両用空調装置に装着する閉塞部材および車両用空調装置の清掃方法

【課題】通風ダクト内から塵埃を容易に排出することが可能な車両用空調装置、塵埃排出のために車両用空調装置に装着する閉塞部材、および通風ダクト内から塵埃を排出する車両用空調装置の清掃方法を提供すること。
【解決手段】通風ダクトの一部である空調ケース11のフィルタ搭載領域100に閉塞プレート120を装着して、排出口18を開放し送風ファン22を作動させて、空調ケース11内のエアフィルタよりも上流側の屈曲部17内に滞留した塵埃を、送風ファン22からの送風とともに排出口18から空調ケース11外に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風ダクト内の送風手段と熱交換器との間に空気を浄化するフィルタ部材を備える車両用空調装置、その車両用空調装置に装着して通風ダクト内を閉塞する閉塞部材、および、車両用空調装置の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車室内に吹き出す空気を流通する通風ダクト内において、送風機の空気流れ下流側かつ冷却用熱交換器であるエバポレータの空気流れ上流側に、通風ダクト内を流通する空気を浄化するエアフィルタを備えた車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−177359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の車両用空調装置では、エアフィルタに捕捉されなかったり、捕捉された後に脱落したりして、エアフィルタの空気流れ上流側に滞留した塵埃は、通風ダクト内から排出し難いという問題がある。この滞留した塵埃は、通風ダクトから車室内へ吹き出される空気の異臭の原因となるという不具合を発生する場合がある。
【0004】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、通風ダクト内から塵埃を容易に排出することが可能な車両用空調装置、塵埃排出のために車両用空調装置に装着する閉塞部材、および通風ダクト内から塵埃を排出する車両用空調装置の清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
内部に、車室内に吹き出す空気を流通する通風ダクト(2)と、
通風ダクト(2)内に設けられ、通風ダクト(2)内に空気を送風する送風手段(22)と、
通風ダクト(2)内の送風手段(22)より空気流れ下流側に設けられ、熱交換により流通する空気を温度調節する熱交換器(40)と、
通風ダクト(2)内の送風手段(22)より空気流れ下流側かつ熱交換器(40)より空気流れ上流側に設けられ、通風ダクト(2)内を流通する空気を浄化するフィルタ部材(110)と、を備える車両用空調装置において、
通風ダクト(2)の送風手段(22)より空気流れ下流側かつフィルタ部材(110)より空気流れ上流側となる部位に設けられ、通風ダクト(2)内の塵埃を送風手段(22)からの送風とともに排出するための排出口(18)と、
排出口(18)を開閉する開閉部材(19)と、を具備することを特徴としている。
【0006】
これによると、開閉部材(19)を操作して排出口(18)を開放し送風手段(22)を作動させることで、通風ダクト(2)内のフィルタ部材(110)上流側に滞留した塵埃を、送風手段(22)からの送風とともに排出口(18)から通風ダクト(2)外に容易に排出することができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明では、通風ダクト(2)は、フィルタ部材(110)の空気流れ上流側の直近で屈曲する屈曲部(17)を有し、排出口(18)は、屈曲部(17)の外側壁(17a)のうち、送風手段(22)から送風された空気が屈曲部(17)内に流入する流入口(14)と対向する壁面部に形成されていることを特徴としている。
【0008】
これによると、通風ダクト(2)内のフィルタ部材(110)上流側となる屈曲部(17)内に滞留した塵埃を、送風手段(22)から送風され流入口(14)から屈曲部(17)内に流入する送風とともに、排出口(18)からスムーズに排出することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、通風ダクト(2)は、通風ダクト(2)内にフィルタ部材(110)を挿設するための挿設口(15)を備えており、この挿設口(15)を排出口とすることを特徴としている。
【0010】
これによると、フィルタ部材挿設口(15)を排出口とすることができるので、塵埃排出のために改めて排出口を形成する必要がない。
【0011】
また、請求項4に記載の発明では、通風ダクト(2)は、通風ダクト(2)内からフィルタ部材(110)を脱離させた際に、送風手段(22)から熱交換器(40)へ向かう空気流通経路をフィルタ部材の搭載領域(100)で閉塞する閉塞部材(120)を装着するための閉塞部材装着部(104)を具備していることを特徴としている。
【0012】
これによると、送風手段(22)を作動させて、通風ダクト(2)内のフィルタ部材(110)上流側に滞留した塵埃を、送風手段(22)からの送風とともに排出口(18)から排出するときに、閉塞部材装着部(104)に装着した閉塞部材(120)により、送風を確実に排出口(18)に送ることができるとともに、送風が熱交換器(40)に流れることを防止することができる。したがって、塵埃の排出効率を向上することができるとともに、熱交換器(40)側に塵埃が流れて滞留することを抑止することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項4に記載の車両用空調装置に用いられる閉塞部材(120)は、通風ダクト(2)の閉塞部材装着部(104)に装着されて、通風ダクト(2)内の送風手段(22)から熱交換器(40)へ向かう空気流通経路をフィルタ部材の搭載領域(100)で閉塞するものとすることができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明では、フィルタ部材(110)を交換する際の交換用のフィルタ部材(110)と同梱されていることを特徴としている。
【0015】
これによると、フィルタ部材(110)交換時に通風ダクト(2)内の清掃を合わせて行う場合に用いる閉塞部材(120)を、交換用のフィルタ部材(110)とともに供給することができる。
【0016】
また、請求項7に記載の発明では、排出口(18)から排出される通風ダクト(2)内の塵埃を捕集するための捕集袋(130)と同梱されていることを特徴としている。
【0017】
これによると、フィルタ部材(110)交換時に通風ダクト(2)内の清掃を合わせて行う場合に塵埃を捕集するための捕集袋(130)を、交換用のフィルタ部材(110)とともに供給することができる。
【0018】
また、請求項8に記載の発明では、
内部に、車室内に吹き出す空気を流通する通風ダクト(2)と、
通風ダクト(2)内に設けられ、通風ダクト(2)内に空気を送風する送風手段(22)と、
通風ダクト(2)内の送風手段(22)より空気流れ下流側に設けられ、熱交換により流通する空気を温度調節する熱交換器(40)と、
通風ダクト(2)内の送風手段(22)より空気流れ下流側かつ熱交換器(40)より空気流れ上流側に設けられ、通風ダクト(2)内を流通する空気を浄化するフィルタ部材(110)と、
通風ダクト(2)の送風手段(22)より空気流れ下流側かつフィルタ部材(110)より空気流れ上流側となる部位に設けられ、通風ダクト(2)内の塵埃を送風手段(22)からの送風とともに排出するための排出口(18)と、
排出口(18)を開閉する開閉部材(19)と、を備える車両用空調装置、を清掃する車両用空調装置の清掃方法であって、
開閉部材(19)を操作して排出口(18)を開放する排出口開放工程と、
排出口開放工程の後に、送風手段(22)を作動させて、通風ダクト(2)内の塵埃を送風手段(22)からの送風とともに排出口(18)から通風ダクト(2)外に排出する塵埃排出工程と、を備えることを特徴としている。
【0019】
これによると、排出口開放工程で開閉部材(19)を操作して排出口(18)を開放し、塵埃排出工程で送風手段(22)を作動させて、通風ダクト(2)内のフィルタ部材(110)上流側に滞留した塵埃を、送風手段(22)からの送風とともに排出口(18)から通風ダクト(2)外に容易に排出することができる。
【0020】
さらに、請求項9に記載の発明では、
通風ダクト(2)は、送風手段(22)から熱交換器(40)へ向かう空気流通経路をフィルタ部材の搭載領域(100)で閉塞する閉塞部材(120)を装着するための閉塞部材装着部(104)を備えており、
塵埃排出工程の前に、通風ダクト(2)内からフィルタ部材(110)を脱離するフィルタ部材脱離工程と、
フィルタ部材脱離工程の後、かつ、塵埃排出工程の前に、閉塞部材装着部(104)に閉塞部材(120)を装着する閉塞部材装着工程と、を備えることを特徴としている。
【0021】
これによると、塵埃排出工程で送風手段(22)を作動させて通風ダクト(2)内のフィルタ部材(110)上流側に滞留した塵埃を送風手段(22)からの送風とともに排出口(18)から排出するときに、閉塞部材装着工程で閉塞部材装着部(104)に装着した閉塞部材(120)により、送風を確実に排出口(18)に送ることができるとともに、送風が熱交換器(40)に流れることを防止することができる。したがって、塵埃の排出効率を向上することができるとともに、熱交換器(40)側に塵埃が流れて滞留することを抑止することができる。
【0022】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を適用した実施の形態を図に基づいて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
本発明を適用した第1の実施形態について図1ないし図10を用いて説明する。図1は、本実施形態における車両用の空調装置の概略構成を模式的に示す断面図である。図1の上下方向は概ね車両の前後方向を表し、左右方向は概ね車両の左右方向を表している。図2は、図1のII−II線断面図である。
【0025】
図1に示すように、空調装置1は、空調ユニット10と、空調ユニット10の側方にオフセット配置された送風ユニット20とを備え、全体として略L字形状を有している。
【0026】
空調ユニット10は、車室内前部の計器盤下方のうち車幅方向中央部に配置されている。空調ユニット10は、樹脂性の空調ケース11を有している。空調ケース11内には、空気を流通させる空気通路12が形成されている。空調ケース11の送風ユニット20側の側壁13には、例えば略長方形状に開口された空気導入口14が形成されている。
【0027】
送風ユニット20は、渦巻状に形成された樹脂性のスクロールケース23を有している。スクロールケース23には、駆動用モータにより駆動される遠心式の送風ファン22が収納されている。送風ファン22により生成された空気流は、スクロールケース23により画定された渦巻状の空気通路を通り、当該空気通路の接線方向に向かって開口された吹出口21から吹き出されるようになっている。また送風ユニット20は、内気及び外気を吸込モードに基づいて切替え導入する不図示の内外気切替箱を有している。
【0028】
送風ユニット20の吹出口21と空調ケース11の空気導入口14との間は、接続ダクト部30によって接続されている。接続ダクト部30は樹脂製であり、概ね四角筒状の形状を有している。接続ダクト部30内には、空気が流通する空気通路33が形成されている。送風ユニット20の吹出口21から吹き出された空気は、空気通路33を通って空調ユニット10に流入する。
【0029】
接続ダクト部30は、空調ケース11及びスクロールケース23のいずれとも別体であってもよいし、空調ケース11及びスクロールケース23のうちいずれか一方又は双方と一体的に形成されていてもよい。スクロールケース23、空調ケース11、および接続ダクト部30により、本実施形態における通風ダクト2が構成されている。そして、送風ファン22が、本実施形態における送風手段に相当する。
【0030】
空調ユニット10の空気通路12には、送風ユニット20側から流入した空気を冷媒との熱交換により冷却するエバポレータ40が設けられている。エバポレータ40は、鉛直上下方向及び車両左右方向の双方にほぼ平行に縦置きされている。エバポレータ40は、例えばアルミニウム製の薄板を用いて作製された複数の扁平チューブをコルゲートフィンを介在させて積層し、ろう付けにより一体化させた構成を有している。
【0031】
エバポレータ40の空気流れ下流側には、例えば平板状のドア基板部とドア基板部の一端辺に設けられた回転軸とを備えたエアミックスドア50が設けられている。エアミックスドア50の下流側には、内部を流通するエンジン冷却水との熱交換により、エバポレータ40で冷却された空気を加熱するヒータコア60が設けられている。ヒータコア60の上方(図1では紙面手前側)には、ヒータコア60を迂回するバイパス通路が設けられている。エアミックスドア50は不図示のサーボモータ等の駆動機構により駆動され、ヒータコア60を通過して加熱される高温の空気と、ヒータコア60を迂回する低温の空気との流量比を調節できるようになっている。これにより、車室内に吹き出される空調空気の温度が調節される。
【0032】
ヒータコア60の空気流れ下流側には、ヒータコア60を通過した空気とヒータコア60を迂回した空気とを混合するエアミックス領域70が設けられている。
【0033】
エアミックス領域70の下流側には、車室内の互いに異なる部分に吹き出される空調空気が流出する3つの開口部80、81、82が形成されている。例えば開口部80からは車室内の乗員の下半身側に空気が吹き出され、開口部81からは乗員の上半身側に空気が吹き出され、開口部82からは車両のフロントガラス内面に空気が吹き出されるようになっている。開口部80、81、82は、吹出モードに基づいて例えば板状のモードドア90、91、92によりそれぞれ開閉される。
【0034】
空調ユニット10の空気通路12において、エバポレータ40の空気流れ上流側には、エバポレータ40に流入する空気から塵埃等を捕捉して空気を浄化するエアフィルタ110が設けられている。エアフィルタ110は、例えば波板状に成形した濾材と濾材の端部側に一体的に形成されたフェルト部材とにより構成されている。本例では、エアフィルタ110は、エバポレータ40とほぼ平行となるように配設されている。ここで、エバポレータ40が本実施形態における熱交換器に相当し、エアフィルタ110が本実施形態におけるフィルタ部材に相当する。
【0035】
空調ケース11側壁13のエアフィルタ110の側方となる部位には、空調ケース11内のフィルタ搭載領域100にエアフィルタ110を着脱するフィルタ着脱口15が設けられている。フィルタ着脱口15は、通風ダクト2内にエアフィルタ110を挿設するための挿設口である。そして、フィルタ着脱口15には、この開口を閉塞するための例えば樹脂製のフィルタカバー16が設けられている。
【0036】
空調ケース11のフィルタ搭載領域100よりも空気流れ上流側は、エアフィルタ110の上流側直前で屈曲する屈曲部17となっている。図1から明らかなように、屈曲部17は、図示左方側の空気の流入口である空気導入口14からエアフィルタ110上流側面111までの空気通路の方向をほぼ直角に曲げるように形成されている。そして、屈曲部17の屈曲外周側となる外側壁17aのうち、送風ユニット20から送風された空気が屈曲部17内に流入する空気導入口14と対向する図示右方側の壁面部には、屈曲部17内の塵埃を送風ユニット20からの送風とともに排出するための排出口18が形成されている。
【0037】
ここで、空調ケース11の空気導入口14が、本実施形態において送風手段から送風された空気が屈曲部17内に流入する流入口に相当する。そして、流入口に対向する部位に設けられた排出口18には、これを開閉するための開閉手段である例えば樹脂製のキャップ19が設けられている。
【0038】
図2に示すように、空調ケース11には、エアフィルタ搭載領域100となる内周面側に内方に向かって立設されそれぞれが周状に延びる立設壁101、102、103が形成されている。そして、立設壁102は立設壁101、103よりも高さが低く形成されており、立設壁101と立設壁103との間にエアフィルタ搭載領域100が形成されている。
【0039】
立設壁101と立設壁102との間には、エアフィルタ搭載領域100よりも外方に向かって深くなった溝構造である装着溝104が周状に延びるように形成されている。そして、フィルタ着脱口15を介して空調ケース11内からエアフィルタ110を取り外した際には、この装着溝104に、送風ユニット20からエバポレータ40へ向かう空気流通経路をフィルタ搭載領域100の上流側面(エアフィルタ100搭載時のエアフィルタ上流側面111の位置)で閉塞する後述する平板状の閉塞プレート120を装着することができるようになっている。装着溝104は、本実施形態における閉塞部材装着部に相当する。
【0040】
図3に示すように、閉塞部材である閉塞プレート120は、空調ケース11の断面形状に合わせて矩形状をなしており、4つの各辺の長さは矩形状をなすエアフィルタ110の対応する各辺の長さより若干長く、厚さはエアフィルタ110の厚さよりも薄くなっている。そして、閉塞プレート120は、例えば樹脂、ゴム、紙等により形成されている。フィルタ着脱口15を介した装着溝104への挿入性と、装着溝104への装着後の送風に耐える剛性とを両立するものであれば、閉塞プレート120の材質は限定されるものではない。
【0041】
図3に示すように、閉塞プレート120は、交換用のエアフィルタ110、捕集袋130とともに、同一の梱包部材140に梱包されて、市場に供給されるようになっている。なお、捕集袋130は、空調ケース11内から排出した塵埃を捕集するためのものであって、例えば、比較的安価な透明合成樹脂フィルム製や、塵埃の捕集を安定して行うことが可能な通気性を有する不織布製、通気性を有する紙製とすることができる。
【0042】
次に、上記構成に基づき空調装置1内の清掃方法について説明する。
【0043】
まず、図4に示すように、空調ケース11のフィルタ着脱口15に取り付けられているフィルタカバー16を取り外し、図5に示すように、空調ケース11内に装着されたエアフィルタ110をフィルタ着脱口15から撓ませながら抜き出す。
【0044】
次に、図6に示すように、閉塞プレート120をフィルタ着脱口15から撓ませつつ挿入し、空調ケース11内のフィルタ搭載領域100に閉塞プレート120を装着する。図7に示すように、装着プレート120は、周縁部が装着溝104内に挿設されて、フィルタ搭載領域100の最上流側部(エアフィルタ110搭載時のエアフィルタ上流側面111となる位置)を閉塞するように空調ケース11内に装着される。
【0045】
空調ケース11内に閉塞プレート120を装着したら、図8に示すように、空調ケース11から排出口18を閉じているキャップ19を取り外して、排出口18を開放する。その後、送風ファン22の電源スイッチをオンし、図9に示すように、送風ファン22を作動させて空調ケース11の屈曲部17内に送風する。
【0046】
屈曲部17内に滞留していた塵埃や、エアフィルタ110の上流側面111に捕捉されていたもののエアフィルタ110取り外し時にエアフィルタ110から屈曲部17内に脱落した塵埃を、送風とともに排出口18から空調ケース11外に排出する。図9では図示を省略しているが、このとき、空調ケース11外部で排出口18を覆うように捕集袋130を配設しておくことで、排出される塵埃を容易に捕集し、車室内に飛び散ることを抑制することができる。
【0047】
図9に示す塵埃の排出が完了したら、送風ファン22の作動を停止して閉塞プレート120を取り外し、図10に示すように、交換用のエアフィルタ110をフィルタ着脱口15を介して取り付けて、フィルタカバー16でフィルタ着脱口15を閉じる。
【0048】
ここで、図5に示す工程が、本実施形態において通風ダクト内からフィルタ部材を脱離するフィルタ部材脱離工程であり、図6および図7に示す工程が、本実施形態において閉塞部材装着部に閉塞部材を装着する閉塞部材装着工程である。また、図8に示す工程が、本実施形態において開閉部材を操作して排出口を開放する排出口開放工程であり、図9に示す工程が、本実施形態において送風手段を作動させて通風ダクト内の塵埃を送風手段からの送風とともに排出口から通風ダクト外に排出する塵埃排出工程である。
【0049】
上述の構成および清掃方法によれば、キャップ19を取り外して空調ケース11の排出口18を開放し送風ファン22を作動させることで、空調ケース11内のエアフィルタ110上流側に滞留した塵埃を、送風ファン22からの送風とともに排出口18から空調ケース11外に容易に排出することができる。また、塵埃の排出には空調装置1の送風ユニット20からの送風を利用するので、排出専用の送風手段を設ける必要がない。したがって、部品点数が増加することを抑制できるとともに、空調装置の大型化を抑制でき清掃作業のためのスペースも確保し易い。
【0050】
また、空調ケース11の排出口18は、屈曲部17の外側壁17aのうち、送風ファン22からの送風が流入する空気導入口14と対向する壁面部に形成されているので、屈曲部17内に滞留した塵埃を、送風ファン22から送風され空気導入口14から屈曲部17内に流入する送風とともに、排出口18からスムーズに排出することができる。
【0051】
また、このとき、閉塞プレート120がフィルタ搭載領域100の最上流側部でエバポレータ40に向かう空気通路を閉塞しているので、送風を確実に排出口18に送ることができるとともに、送風がエバポレータ40に流れることを防止することができる。したがって、塵埃の排出効率を向上することができるとともに、エバポレータ40側に塵埃が流れてエバポレータ40の熱交換部等に塵埃の付着し滞留することを抑止することができる。その結果、車室内に吹き出す空調風からの異臭を抑制することができる。
【0052】
また、閉塞プレート120は、交換用のエアフィルタ110、捕集袋130とともに、同一の梱包部材140に梱包されるようになっている。したがって、エアフィルタ交換時に空調ケース11内の清掃を行う場合に必要な部材を、一括して供給することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図11に基づいて説明する。
【0054】
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、空調ケース11に塵埃排出専用の排出口18を形成せず、フィルタ着脱口15を排出口として用いる点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。図11は、本実施形態において第1の実施形態の図7に相当する図である。
【0055】
図11に示すように、本実施形態では、空調ケース11には、エアフィルタ搭載領域100となる内周面側に内方に向かって立設されそれぞれが周状に延びる立設壁101、102B、103が形成されている。そして、立設壁102Bは立設壁101、103よりも高さが低く形成されており、立設壁102Bと立設壁103との間には、エアフィルタ搭載領域100よりも外方に向かって深くなった溝構造である装着溝104Bが周状に延びるように形成されている。
【0056】
そして、フィルタ部材脱離工程で、フィルタ着脱口15を介して空調ケース11内からエアフィルタ110を取り外した後に、閉塞部材装着工程で、この装着溝104Bに、送風ユニット20からエバポレータ40へ向かう空気流通経路をフィルタ搭載領域100の下流側面(エアフィルタ100搭載時のエアフィルタ下流側面となる位置)で閉塞するように閉塞プレート120を装着する。装着溝104Bが本実施形態における閉塞部材装着部に相当する。
【0057】
本実施形態によれば、図11に示すように、フィルタ装着口15のうち閉塞プレート120よりも上流側となる部分を、空調ケース11の屈曲部17内から塵埃を排出するための排出口とすることができる。したがって、塵埃排出のために空調ケースに改めて専用の排出口を形成する必要がない。
【0058】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、車両用空調装置1の空調ケース11内の清掃を行う場合には、フィルタ部材脱離工程、閉塞部材装着工程、排出口開放工程、塵埃排出工程を順次行うものであったが、工程順はこれに限定されず、フィルタ部材脱離工程を行った後に閉塞部材装着工程を行い、閉塞部材装着工程および排出口開放工程を行った後に塵埃排出工程を行うものであればよい。すなわち、排出口開放工程は、塵埃排出工程の前であれば、フィルタ部材脱離工程および閉塞部材装着工程のいずれかの前後もしくは同時に行うものであってもよい。
【0059】
また、エアフィルタ110を搭載したまま空調ケース11内の清掃を行う場合には、フィルタ脱離工程および閉塞部材装着工程を行わないものであってもよい。この場合には、閉塞プレート120を装着する必要がないので、装着溝104、104Bを形成する構成を省略するものであってもよい。
【0060】
また、上記各実施形態では、閉塞部材は平板状の閉塞プレート120であったが、これに限定されるものではなく、他の形状をなすものであってもよい。ただし、平板状であるほうが閉塞部材の体格を抑制することができ、供給する際に特に好ましい。また、閉塞部材装着部の構造も立設壁の間に形成される装着溝に限定されず、他の構成をなすものであってもよい。
【0061】
また、上記各実施形態では、閉塞プレート120は交換用のエアフィルタ110および捕集袋130とともに同梱して市場に供給するようになっていたが、閉塞プレート120は交換用のエアフィルタ110および捕集袋130のいずれかと同梱して供給するものであってもよく、また、いずれとも別に補給するものであってもよい。
【0062】
また、上記各実施形態では、空調ケース11の屈曲部17の空気導入口14に対向する側の壁面部に排出口18を設けていたが、これに限定されるものではなく、例えば重力方向や車両搭載後の周縁作業スペース等を考慮して他の部位に設けるものであってもよい。また、エアフィルタの空気流れ上流側直近に屈曲部を有しない場合には、屈曲部以外に排出口を設けるものであってもよい。
【0063】
また、上記各実施形態では、空調ケース11、スクロールケース23および接続ダクト部30からなる通風ダクト2のうち空調ケース11にフィルタ搭載領域100と排出口18とを設けていたが、これに限定されるものではなく、通風ダクト内に空気流れ上流側から送風ファン、エアフィルタ、エバポレータが順に配設され、通風ダクトの送風ファンより下流側かつエアフィルタより上流側に排出口を形成するものであればよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、熱交換器はエバポレータ40であったが、これに限定されるものではなく、例えば、エバポレータを備えず空調用熱交換器としてヒータコアのみを備える場合には、ヒータコアを熱交換器として本発明を適用するものであってもよい。
【0065】
また、上記各実施形態では、送風ユニット20が空調ユニット10に対して側方にオフセット配置された、所謂セミセンタ置きタイプの車両用空調装置に本発明を適用した例に付いて説明したが、空調装置のタイプはこれに限定されるものではなく、例えば前述の特許文献1に開示されているような所謂完全センタ置きタイプの空調装置であっても本発明を適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における車両用の空調装置1の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】エアフィルタ110、閉塞プレート120および捕集袋130の概略構成を示す斜視図である。
【図4】空調装置1の清掃方法におけるフィルタ部材脱離の準備工程を示す断面図である。
【図5】空調装置1の清掃方法におけるフィルタ部材脱離工程を示す断面図である。
【図6】空調装置1の清掃方法における閉塞部材装着工程を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】空調装置1の清掃方法における排出口開放工程を示す断面図である。
【図9】空調装置1の清掃方法における塵埃排出工程を示す断面図である。
【図10】空調装置1の清掃方法におけるフィルタ再装着工程を示す断面図である。
【図11】第2の実施形態における空調装置1の要部断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 空調装置
2 通風ダクト
11 空調ケース(通風ダクトの一部)
14 空気導入口(流入口)
15 フィルタ着脱口(挿設口、第2の実施形態における排出口)
17 屈曲部
17a 外側壁
18 排出口
19 キャップ(開閉部材)
22 送風ファン(送風手段)
23 スクロールケース(通風ダクトの一部)
30 接続ダクト部(通風ダクトの一部)
40 エバポレータ(熱交換器)
100 フィルタ搭載領域(フィルタ部材の搭載領域)
104、104B 装着溝(閉塞部材装着部)
110 エアフィルタ(フィルタ部材)
120 閉塞プレート(閉塞部材)
130 捕集袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に、車室内に吹き出す空気を流通する通風ダクト(2)と、
前記通風ダクト(2)内に設けられ、前記通風ダクト(2)内に前記空気を送風する送風手段(22)と、
前記通風ダクト(2)内の前記送風手段(22)より空気流れ下流側に設けられ、熱交換により流通する前記空気を温度調節する熱交換器(40)と、
前記通風ダクト(2)内の前記送風手段(22)より空気流れ下流側かつ前記熱交換器(40)より空気流れ上流側に設けられ、前記通風ダクト(2)内を流通する前記空気を浄化するフィルタ部材(110)と、を備える車両用空調装置において、
前記通風ダクト(2)の前記送風手段(22)より空気流れ下流側かつ前記フィルタ部材(110)より空気流れ上流側となる部位に設けられ、前記通風ダクト(2)内の塵埃を前記送風手段(22)からの送風とともに排出するための排出口(18)と、
前記排出口(18)を開閉する開閉部材(19)と、を具備することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記通風ダクト(2)は、前記フィルタ部材(110)の空気流れ上流側の直近で屈曲する屈曲部(17)を有し、
前記排出口(18)は、前記屈曲部(17)の外側壁(17a)のうち、前記送風手段(22)から送風された空気が前記屈曲部(17)内に流入する流入口(14)と対向する壁面部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記通風ダクト(2)は、前記通風ダクト(2)内に前記フィルタ部材(110)を挿設するための挿設口(15)を備えており、
前記挿設口(15)を前記排出口とすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記通風ダクト(2)は、前記通風ダクト(2)内から前記フィルタ部材(110)を脱離させた際に、前記送風手段(22)から前記熱交換器(40)へ向かう空気流通経路を前記フィルタ部材の搭載領域(100)で閉塞する閉塞部材(120)を装着するための閉塞部材装着部(104)を具備していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置に用いられ、
前記通風ダクト(2)の前記閉塞部材装着部(104)に装着されて、前記通風ダクト(2)内の前記送風手段(22)から前記熱交換器(40)へ向かう空気流通経路を前記フィルタ部材の搭載領域(100)で閉塞することを特徴とする車両用空調装置用の閉塞部材。
【請求項6】
前記フィルタ部材(110)を交換する際の交換用の前記フィルタ部材(110)と同梱されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置用の閉塞部材。
【請求項7】
前記排出口(18)から排出される前記通風ダクト(2)内の塵埃を捕集するための捕集袋(130)と同梱されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の車両用空調装置用の閉塞部材。
【請求項8】
内部に、車室内に吹き出す空気を流通する通風ダクト(2)と、
前記通風ダクト(2)内に設けられ、前記通風ダクト(2)内に前記空気を送風する送風手段(22)と、
前記通風ダクト(2)内の前記送風手段(22)より空気流れ下流側に設けられ、熱交換により流通する前記空気を温度調節する熱交換器(40)と、
前記通風ダクト(2)内の前記送風手段(22)より空気流れ下流側かつ前記熱交換器(40)より空気流れ上流側に設けられ、前記通風ダクト(2)内を流通する前記空気を浄化するフィルタ部材(110)と、
前記通風ダクト(2)の前記送風手段(22)より空気流れ下流側かつ前記フィルタ部材(110)より空気流れ上流側となる部位に設けられ、前記通風ダクト(2)内の塵埃を前記送風手段(22)からの送風とともに排出するための排出口(18)と、
前記排出口(18)を開閉する開閉部材(19)と、を備える車両用空調装置、を清掃する車両用空調装置の清掃方法であって、
前記開閉部材(19)を操作して前記排出口(18)を開放する排出口開放工程と、
前記排出口開放工程の後に、前記送風手段(22)を作動させて、前記通風ダクト(2)内の塵埃を前記送風手段(22)からの送風とともに前記排出口(18)から前記通風ダクト(2)外に排出する塵埃排出工程と、を備えることを特徴とする車両用空調装置の清掃方法。
【請求項9】
前記通風ダクト(2)は、前記送風手段(22)から前記熱交換器(40)へ向かう空気流通経路を前記フィルタ部材の搭載領域(100)で閉塞する閉塞部材(120)を装着するための閉塞部材装着部(104)を備えており、
前記塵埃排出工程の前に、前記通風ダクト(2)内から前記フィルタ部材(110)を脱離するフィルタ部材脱離工程と、
前記フィルタ部材脱離工程の後、かつ、前記塵埃排出工程の前に、前記閉塞部材装着部(104)に前記閉塞部材(120)を装着する閉塞部材装着工程と、を備えることを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置の清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−23746(P2010−23746A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189600(P2008−189600)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】