説明

車両用空調装置

【課題】 蓄冷器に冷熱を効率的に蓄えることができ、かつ蓄冷器に蓄えた冷熱を有効に利用することができる車両用空調装置を得る。
【解決手段】 車両用空調装置10では、エンジン26にて駆動されるコンプレッサ12の作動によって、該コンプレッサ12、コンデンサ14、膨張弁16、蓄冷器330、エバポレータ18を連通する冷媒循環路20を冷媒が循環し、冷凍サイクル及び蓄冷器30への蓄冷が行なわれる。冷媒循環路20は、バイパス流路42によって蓄冷器30がバイパスされており、コンプレッサ12の作動中に、バイパス用電磁弁46が開放されると、冷媒の循環経路が冷媒循環路20からバイパス流路42を含むバイパス循環路44に切り替えられ、蓄冷器30への冷媒流れすなわち蓄冷が停止する。コンプレッサ12が停止して液ポンプ38が作動すると、冷媒は冷媒戻し流路34を含む副循環路35にて連通される蓄冷器30、蒸発器18間で循環する。このとき電磁弁40が冷媒循環路20における副循環路の外側を閉止し、全冷媒が副循環路35を循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に適用される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用空調装置として、冷凍サイクルを行なう冷媒と蓄冷剤との熱交換によって、冷熱を蓄える蓄冷器を備えたものが知られている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0003】
また、自動車等の車両としては、例えば信号待ちによる停車時に自動的にエンジンを停止させる機能を有し、燃費向上や排出ガス量の低減を図る所謂エコラン車が実用化されている。そして、このようなエコラン車の空調装置に蓄冷器を設け、エンジン停止中(エコラン期間中)の空調装置の冷房動作を維持するようにした技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
この特許文献4には、エンジンによって駆動される圧縮機の動作によって、冷媒が圧縮機、凝縮器、膨張弁、蓄冷器、蒸発器をこの順に循環する冷媒循環路と、該冷媒循環路における蒸発器の出口側と蓄冷器の入口側とを連通する冷媒戻し流路とを有し、電動ポンプの動作によって冷媒を蓄冷器と蒸発器との間(副循環路)で循環させる空調装置が記載されている。この空調装置では、車両走行中には、圧縮機が作動して冷媒が冷媒循環路を循環することで冷凍サイクルにて冷房を行ない、圧縮機が停止するエコラン期間中には、電動ポンプを作動して冷媒が副循環路を循環することで蓄冷器の冷熱によって冷房を維持するようになっている。
【0005】
そして、この空調装置では、蓄冷器が冷媒循環路上で蒸発器に対し直列に接続されているため、冷媒流れを切り替える特別な操作をすることなく、蓄冷器に常に冷媒の全流量を通過させて最大冷却能力を発揮することができるとされている。また、この空調装置では、膨張弁が蒸発器の出口冷媒の感温機構を一体化した温度式膨張弁とされており、この膨張弁によって蒸発器を通過する冷媒流量を調節するようになっている。
【特許文献1】特開2000−62450号公報
【特許文献2】特開平6−211036号公報
【特許文献3】特開2002−337538号公報
【特許文献4】特開2003−285634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の如き従来の空調装置では、蓄冷器と蒸発器とが直列に接続されているため、換言すれば、冷媒が常に蓄冷器を通過するため、冷媒の冷熱エネルギが蓄冷剤に奪われて冷凍サイクルの効率が低下する。このため、上記従来の空調装置は、蓄冷器を備えない空調装置と比較して通常運転時の消費動力が大きくなり、車両の実用燃費を悪化させる原因となる。一方、蓄冷器に十分な冷熱が蓄えられた後は、本来蓄冷器にさらに冷媒を通過させる必要はないが、上記従来の空調装置では、蓄冷器への冷媒流入を止めることができないため、結果として圧縮機(エンジン)の消費動力が増してしまう。
【0007】
また、上記従来の空調装置では、膨張弁によって流量調整を行なう構成であるため、圧縮機を停止すると共に電動ポンプを作動した場合に、冷媒の一部が蒸発器の出口側から圧縮機側に流れてしまうことを完全に防止することができないという問題があった。すなわち、従来の空調装置では、全冷媒が副循環路を循環する状態を創出することができず、圧縮機停止時のサイクルの効率が低下してしまう。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮して、蓄冷器に冷熱を効率的に蓄えることができ、かつ蓄冷器に蓄えた冷熱を有効に利用することができる車両用空調装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車両用空調装置は、車両のエンジンに駆動される圧縮機の作動によって、該圧縮機、凝縮器、減圧手段、蒸発器、及び蓄冷器に冷媒を循環させて冷凍サイクル及び前記蓄冷器への蓄冷を行なうための冷媒循環路と、両端が前記冷媒循環路に連通した冷媒戻し流路及び液送装置を含み、該液送装置の作動によって前記蓄冷器と前記蒸発器との間で冷媒を循環させる副循環路と、前記冷媒循環路における前記副循環路を構成しない部分に設けられ、前記圧縮機の停止中でかつ前記液送装置の作動中には前記冷媒循環路を閉塞する開閉弁と、前記蓄冷器をバイパスするように前記冷媒循環路に連通されたバイパス流路を含み、前記圧縮機の作動によって該圧縮機、前記凝縮器、前記減圧手段、前記蒸発器に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行なうためのバイパス循環路と、前記圧縮機の動作時に、冷媒が前記冷媒循環路を循環する状態と冷媒が前記バイパス循環路を循環する状態とを選択的に切り替える流路切替装置と、を備えている。
【0010】
請求項1記載の車両用空調装置では、圧縮機が作動しているときには、冷媒が圧縮機、凝縮器、減圧手段、蒸発器の順に循環して冷凍サイクルを行なう。このとき、流路切替装置が冷媒循環経路を冷媒循環路に切り替えていれば、冷媒は蓄冷器を通過して蓄冷剤と熱交換を行ない、蓄冷器には冷熱が蓄えられる。冷媒循環路上に配置された蓄冷器は、蒸発器に対し直列に設けられているが、この蒸発器の上流側に設けられても下流側に設けられても良い。一方、流路切替装置が冷媒循環経路をバイパス循環路に切り替えていれば、冷媒は蓄冷器と並列のバイパス流路を主に通過して蓄冷剤との熱交換を行なうことなく単純な冷凍サイクルを行なう。そして、蓄冷器が蒸発器に対しに直列に配置(接続)されると共にバイパス流路が蒸発器をバイパスしないため、流路切替装置による切替状態によらず、全冷媒が蒸発器を通過する。
【0011】
また、この車両用空調装置では、液送装置が作動しているときには、冷媒が副循環路を蒸発器、蓄冷器の順に流れ、蒸発器出口の気相冷媒が蓄冷剤と熱交換を行なって(蓄冷器に蓄えられた冷熱によって)凝縮して再度蒸発器に導入されるサイクルが行なわれる。これにより、仮に圧縮機すなわち車両のエンジンが停止しても、冷房が維持される。このとき、開閉弁が閉止することで、副循環路から圧縮機への冷媒の流入が防止される。
【0012】
ここで、本車両用空調装置では、上記の如く流路切替装置が冷媒循環経路を冷媒循環路またはバイパス循環路に切り替えるため、圧縮機が作動する車両走行中に冷凍サイクルを維持しつつ適当時期に蓄冷器への蓄冷を行なうことができ、蓄冷を行なわないときには蓄冷器を備えない空調装置と同等の効率を得ることが可能となる。また、本車両用空調装置では、圧縮機が停止すると共に液送装置が作動している状態では、開閉弁が閉止することで、副循環路から圧縮機への冷媒の流入が防止される。このため、全冷媒が副循環路を循環し、一部の冷媒が圧縮機側に流れる場合のように蓄冷器の冷熱を利用した冷房維持サイクルの効率が低下してしまうことがない。特に、開閉弁を、冷媒循環路における副循環路の外側でかつ圧縮機の上流に配置すれば、この開閉弁が圧縮機への冷媒流入を直接的に防止し、好適である。
【0013】
このように、請求項1記載の車両用空調装置では、蓄冷器に冷熱を効率的に蓄えることができる。
【0014】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係る車両用空調装置は、車両のエンジンに駆動される圧縮機の作動によって、該圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器に冷媒を循環させて冷凍サイクル行なうための冷媒循環路と、前記冷媒循環路における前記減圧手段と前記蒸発器との間に直列に設けられ、内蔵する蓄冷剤が冷媒と熱交換を行なう蓄冷器と、前記冷媒循環路における前記蒸発器の下流と前記蓄冷器の上流とを連通する冷媒戻し流路及び液送装置を含み、前記蒸発器と前記蓄冷器との間で冷媒を循環させる副循環路と、前記冷媒循環路における前記副循環路を構成しない部分に設けられ、前記圧縮機の停止中でかつ前記液送装置の作動中には前記冷媒循環路を閉塞する開閉弁と、前記冷媒循環路における前記減圧手段の下流と前記蒸発器の上流とを、前記蓄冷器をバイパスして連通するバイパス流路と、前記バイパス流路を冷媒が流れる状態と、該バイパス流路を冷媒が流れない状態とを選択的に切替可能な流路切替装置と、を備えている。
【0015】
請求項2記載の車両用空調装置では、圧縮機が作動しているときには、冷媒が圧縮機、凝縮器、減圧手段、蒸発器の順に循環して冷凍サイクルを行なう。このとき、流路切替装置がバイパス流路に冷媒が流れない状態に切り替えられていると、冷媒は蓄冷器を通過して蓄冷剤と熱交換を行ない、蓄冷器には冷熱が蓄えられる。そして、蓄冷器が蒸発器の冷媒入口側に直列に接続されているため、減圧手段下流の低圧液相冷媒によって蓄冷剤が効果的に冷却される。一方、流路開閉手段がバイパス流路に冷媒が流れる状態に切り替えられていると、冷媒は主にバイパス流路を通過して蓄冷剤との熱交換を行なうことなく単純な冷凍サイクルを行なう。蓄冷器が蒸発器の上流に直列に配置(接続)されると共にバイパス流路が蒸発器をバイパスしないため、流路切替装置の開閉状態によらず、全冷媒が蒸発器を通過する。
【0016】
また、この車両用空調装置では、液送装置が作動しているときには、冷媒が副循環路を蒸発器、蓄冷器の順に流れ、蒸発器出口の気相冷媒が蓄冷剤と熱交換を行なって(蓄冷器に蓄えられた冷熱によって)凝縮して再度蒸発器に導入されるサイクルが行なわれる。これにより、仮に圧縮機すなわち車両のエンジンが停止しても、冷房が維持される。このとき、開閉弁が閉止することで、副循環路から圧縮機への冷媒の流入が防止される。
【0017】
ここで、本車両用空調装置では、上記の如く流路切替装置がバイパス流路を冷媒が流れる状態と流れない状態とを選択的に切り替えるため、圧縮機が作動する車両走行中に冷凍サイクルを維持しつつ適当時期に蓄冷器への蓄冷を行なうことができ、蓄冷を行なわないときには蓄冷器を備えない空調装置と同等の効率を得ることが可能となる。また、本車両用空調装置では、圧縮機が停止すると共に液送装置が作動している状態では、開閉弁が閉止することで、副循環路から圧縮機への冷媒の流入が防止される。このため、全冷媒が副循環路を循環し、一部の冷媒が圧縮機側に流れる場合のように蓄冷器の冷熱を利用した冷房維持サイクルの効率が低下してしまうことがない。特に、開閉弁を、冷媒循環路における副循環路の外側でかつ圧縮機の上流に配置すれば、この開閉弁が圧縮機への冷媒流入を直接的に防止し、好適である。
【0018】
このように、請求項2記載の車両用空調装置では、蓄冷器に冷熱を効率的に蓄えることができる。
【0019】
請求項3記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項1または請求項2記載の発明に係る車両用空調装置において、前記流路切替装置は、前記バイパス流路上に設けられ、制御装置によって開閉制御される電磁弁である。
【0020】
請求項3記載の車両用空調装置では、電磁弁が制御装置に制御されることで、各種制御パラメータに応じて自動的に冷媒流路、すなわち車両走行中に蓄冷を行なうか否かを切り替えることができる。
【0021】
請求項4記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項3記載の車両用空調装置において、前記制御装置は、前記蓄冷器への蓄冷量に応じて前記電磁弁を開閉する。
【0022】
請求項4記載の車両用空調装置では、制御手段が蓄冷器への蓄冷量に応じて電磁弁を開閉することで、冷媒が蓄冷器を通過する状態と蓄冷器をバイパスする状態とが選択的に切り替えられる。これにより、例えば、蓄冷器への蓄冷量が小さい場合には電磁弁を閉塞して冷媒が蓄冷器側を通過するようにし、蓄冷器が十分な蓄冷量を有している場合には電磁弁を開放して冷媒が蓄冷器をバイパスするようにすることができる。すなわち、蓄冷量に応じて蓄冷器に蓄冷を行なうか否かが判断され、蓄冷器に冷熱を効率的に蓄えることができる。なお、制御手段は、例えば各種情報から蓄冷量に応じた量を具体的に検知しても良く、また例えば蓄冷量に関係する物理量が所定の蓄冷量に応じた値に対し大小何れであるかを検知しても良い。
【0023】
請求項5記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項4記載の車両用空調装置において、前記制御装置は、少なくとも前記蓄冷剤の温度に対応する信号、前記蓄冷器の出入口における冷媒温度にそれぞれ対応する信号、及び冷媒流量に対応する信号に基づいて算出した蓄冷量が、そのときの冷房負荷に基づき算出した必要蓄冷量よりも小さい場合に、前記電磁弁を閉じ、前記蓄冷量が必要蓄冷量以上である場合には前記電磁弁を開放する。
【0024】
請求項5記載の車両用空調装置では、制御手段は、蓄冷剤温度、蓄冷器出入口の各冷媒温度、冷媒流量から蓄冷器への蓄冷量を算出し、これを冷房負荷に基づき算出した冷房を維持するために必要な必要蓄熱量と比較する。制御装置は、蓄冷器への蓄冷量が必要蓄冷量を下回れば流路切替装置(電磁弁)を閉じ、この蓄冷量が必要蓄冷量以上である場合には前記電磁弁を開放する。これにより、冷房維持に必要な蓄冷量を確保しつつ、蓄冷器に冷媒を必要以上に流してしまうことが確実に防止され、最適制御が可能となる。
【0025】
請求項6記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項3乃至請求項5の何れか1項記載の車両用空調装置において、前記制御装置は、車両が減速中であることに対応する情報が入力された場合に前記電磁弁を閉じる。
【0026】
請求項6記載の車両用空調装置では、制御装置が入力信号に基づいて車両減速中であることを検知(判断)すると、または車両が減速状態であることに直接的に対応する信号が制御装置に入力されると、この制御装置は電磁弁を閉じて積極的に冷媒が蓄熱器を通過するようにする。車両減速中には、エンジンへの燃料供給がカットされて燃料消費しないため、燃費を悪化することなく蓄冷器への蓄冷を行なうことができる。
【0027】
請求項7記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項4乃至請求項6の何れか1項記載の車両用空調装置において、前記制御装置は、急速冷房動作が必要なときに前記電磁弁を開放する。
【0028】
請求項7記載の車両用空調装置では、例えば夏場の高外気温時におけるエンジン始動直後等、制御装置が車室内を急速に冷却する急速冷房(クールダウン)動作が必要であると判断すると、または急速冷房動作を要求する信号が制御装置に入力されると、この制御装置は電磁弁を開放して蓄冷器への蓄冷を伴わない冷凍サイクルを行なう。これにより、急速冷房中には冷媒の冷熱が蓄冷器に奪われることが防止され、蓄冷剤を設けることにより急速冷房性能が損なわれることがない。
【0029】
請求項8記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項1または請求項2記載の車両用空調装置において、前記流路切替装置は、機械弁である。
【0030】
請求項8記載の車両用空調装置では、流路切替装置が機械弁であるため、構造が簡単である。また、制御装置によって制御される必要もないため、外制御装置を不要としたり、構造を簡素化することが可能となる。
【0031】
請求項9記載の発明に係る車両用空調装置は、請求項8記載の車両用空調装置において、前記機械弁は、蓄冷剤の温度変化によって前記バイパス流路を開放する開放位置と該バイパス流路を閉止する閉止位置との間で移動する弁体を有する。
【0032】
請求項9記載の車両用空調装置では、機械弁の弁体が蓄冷剤の温度に応じて自律的に開放位置と閉止位置との間で変位することで、冷媒が蓄冷器を通過する状態と蓄冷器をバイパスする状態とが選択的に切り替えられる。すなわち、機械弁によって、制御を行なうことなく、冷媒が蓄冷器を通過する状態と蓄冷器をバイパスする状態とを自動的に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明に係る車両用空調装置は、蓄冷器に冷熱を効率的に蓄えることができ、かつ蓄冷器に蓄えた冷熱を有効に利用することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る車両用空調装置10について図1乃至図5に基づいて説明する。図1には、自動車に適用された車両用空調装置10の概略全体構成がブロック図にて示されている。この図に示される如く、車両用空調装置10は、圧縮機としてのコンプレッサ12と、凝縮器としてのコンデンサ14と、減圧手段としての膨張弁16と、蒸発器としてのエバポレータ18とが冷媒循環路20にて連通しており、冷媒を循環させて冷凍サイクルを行なうようになっている。
【0035】
コンプレッサ12は、電磁クラッチ22、駆動ベルト24を介して自動車のエンジン26に連結されている。これにより、エンジン26の回転期間中でかつ電磁クラッチ22が結合状態のときに、コンプレッサ12が作動するようになっている。このコンプレッサ12は、低圧気相冷媒を圧縮して高温高圧の過熱気相冷媒にするようになっている。電磁クラッチ22は、後述するエアコンECU50に断続制御されることで、コンプレッサ12による冷媒循環量(流量)、すなわち冷却能力を調節するようになっている。電磁クラッチ22が断続制御されるコンプレッサ12に代えて、可変容量式のコンプレッサ12を採用しても良い。
【0036】
コンデンサ14は、コンプレッサ12の下流に配置された冷媒と外気との熱交換器であり、コンプレッサ12から吐出された過熱気相冷媒を冷却して凝縮させて液相冷媒にするようになっている。コンデンサ14から流出した液相冷媒は、膨張弁16にて減圧され、低圧液相(または気液二層状態)とされるようになっている。
【0037】
エバポレータ18は、冷凍サイクル(冷媒循環路20)上は膨張弁16の下流に配置されると共に自動車内では図示しない空調ケース内に配置され、冷媒と空調機吹出し空気との熱交換を行なう熱交換器である。エバポレータ18は、低圧液相冷媒を蒸発させて低圧気相冷媒にすることで空調機吹出し空気を冷却する構成である。
【0038】
そして、車両用空調装置10は、冷媒循環路20上における膨張弁16とエバポレータ18との間に配置された蓄冷器30を備えている。すなわち、蓄冷器30は、上流に位置する膨張弁16の冷媒出口側が冷媒入口とされると共に、下流に位置するエバポレータ18の冷媒入口側が冷媒出口とされ、冷媒循環路20上、エバポレータ18に対し直列に接続されている。このように蓄冷器30がエバポレータ18と直列に接続されることで、これらを並列に配置した場合のように冷媒の一部がエバポレータ18をバイパスしてしまうことがなく、全冷媒がエバポレータ18を通過する構成とされている。また、冷媒循環路における蓄冷器30出口とエバポレータ18入口との間には、冷媒流れ方向に順方向となるように逆止弁32が配設されている。
【0039】
この蓄冷器30は、内蔵する多数の蓄冷剤30Aが、これらの間を通過する低圧液相冷媒によって冷却されて液相から固相へ相変化することで冷熱を蓄える(蓄冷する)構成とされている。また、蓄冷器30は、その固相とされた蓄冷剤30A間を通過する低圧気相の冷媒を、冷却・凝縮させるようになっている。このとき蓄冷剤30Aは固相から液相へと変化するようになっている。このときの冷媒の流れについては後述する。なお、蓄冷剤30Aは、膨張弁16から流入する低圧液相の冷媒温度(例えば、3〜4℃)よりも高温で凝固するものが採用される。
【0040】
また、車両用空調装置10は、冷媒循環路20におけるエバポレータ18出口とコンプレッサ12入口との間の分岐部20Aから分岐すると共に、膨張弁16出口と蓄冷器30入口との間の合流部20Bに合流する冷媒戻し流路34を備えている。すなわち、冷媒戻し流路34は、冷媒循環路20における合流部20Bの下流から分岐部20Aの上流までの部分とで環状の副循環路35(図2(C)参照)を成し、冷媒(エバポレータ18出口の低圧気相冷媒)を、分岐部20Aから合流部20Bへと戻してエバポレータ18と蓄冷器30との間を循環させることを可能とする構成とされている。この冷媒戻し流路34には、該冷媒戻し方向に順方向となるように、逆止弁36が配設されている。
【0041】
さらに、車両用空調装置10は、液送装置としての液ポンプ38を備えている。液ポンプ38は、逆止弁32と並列に配設されており、非作動時に冷媒の流動抵抗とならない配置とされている。液ポンプ38は、蓄冷器30出口の低圧液相冷媒を吸い込み、エバポレータ18側に吐出しすることで、この冷媒を、副循環路35すなわちエバポレータ18と蓄冷器30との間で循環させるようになっている。この液ポンプ38は、電動ポンプである電磁ポンプとされており、後述するエアコンECU50にて制御される構成である。
【0042】
なお、逆止弁32は、液ポンプ38の作動状態では、上流側の圧力よりも高い下流側の圧力によって弁体を閉じ付勢し、液ポンプ38の吐出冷媒が蓄冷器30に向けて逆流することを防止するようになっている。また、逆止弁36は、液ポンプ38の非作動時には、分岐部20A側の圧力よりも高い合流部20B側の圧力によって弁体を閉じ付勢し、冷媒が冷媒戻し流路34を逆流することを防止するようになっている。
【0043】
また、車両用空調装置10は、冷媒循環路20における分岐部20Aとコンプレッサ12入口との間(副循環路35の外側)に配置された弁としての電磁弁40を備えている。電磁弁40は、エアコンECU50からの信号に基づいて冷媒循環路20を開放する状態と閉塞(遮断)する状態とを選択的に切り替える開閉弁とされている。
【0044】
さらに、車両用空調装置10は、冷媒循環路20における膨張弁16出口と蓄冷器30入口との間の分岐部20C(図1では合流部20Bと同じ点として図示)から分岐すると共に、逆止弁32及び液ポンプ38の各出口(蓄冷器30出口)とエバポレータ18入口との間の合流部20Dに合流するバイパス流路42を備えている。すなわち、バイパス流路42は、冷媒循環路20において蓄冷器30(液ポンプ38)をバイパスするバイパス循環路44(図2(B)参照)を形成可能としている。これにより、全冷媒がバイパス循環路44を循環する状態では、冷媒が蓄冷器30を通過することなく冷凍サイクルが維持される構成である。
【0045】
そして、バイパス流路42には、流路切替装置としてのバイパス用電磁弁46が配設されている。バイパス用電磁弁46は、エアコンECU50からの信号に基づいてバイパス流路42を開放する状態と閉止(遮断)する状態とを選択的に切り替える開閉弁とされている。バイパス用電磁弁46の開放時における冷媒通過に伴う流動抵抗(圧力損失)は、蓄冷器30を同流量の冷媒が通過する場合の流動抵抗に対し著しく小さく、バイパス用電磁弁46の開放時には、冷媒は殆ど全てのバイパス流路42を通過する(蓄冷器30を殆ど通過しない)ようになっている。
【0046】
以上により、車両用空調装置10は、図2(A)乃至図2(C)に示す各運転状態を含む複数の運転状態を選択的に切り替えることができる構成とされている。図2(A)に示す状態は、コンプレッサ12を作動すると共に液ポンプ38を停止し、かつバイパス用電磁弁46を閉止して冷媒を冷媒循環路20を循環させて冷凍サイクルを行ないつつ蓄冷器30に冷熱を蓄える運転状態であり、図2(B)に示す状態は、コンプレッサ12を作動すると共に液ポンプ38を停止し、かつバイパス用電磁弁46を開放して冷媒を主にバイパス循環路44を循環させて冷凍サイクルを行なう運転状態であり、図2(C)に示す状態は、コンプレッサ12を停止すると共に液ポンプ38を作動し、かつバイパス用電磁弁46を閉止して冷媒を副循環路35を循環させて蓄冷器30に蓄えた冷熱にてエバポレータ18出口の低圧気相冷媒を凝縮して冷房を維持する運転状態である。
【0047】
そして、車両用空調装置10は、本発明における制御装置としての蓄冷量推定装置48、エアコンECU50を備えている。蓄冷量推定装置48は、蓄冷器30の蓄冷量Qを後述する各種情報に基づき推定する装置であって、本第1の実施形態では、図3に示される如く、通常(周知)のエアコン制御を行なうエアコンECU50と一体的に構成(エアコンECU50に統合)されている。
【0048】
この図3に示される如く、蓄冷器30の冷媒入口、出口にはそれぞれ温度センサ52、54が設けられており、これらの温度センサ52、54はそれぞれエアコンECU50に電気的に接続されている。温度センサ52は、蓄冷器30に流入する前の冷媒の温度、すなわち入口冷媒温度Tinに対応する信号をエアコンECU50に出力するようになっており、温度センサ54は、蓄冷器30を通過した後の冷媒の温度、すなわち出口冷媒温度Toutに対応する信号をエアコンECU50に出力するようになっている。また、蓄冷器30には、蓄冷剤30Aの温度を検出する温度センサ56が設けられており、温度センサ56はエアコンECU50に電気的に接続されている。温度センサ56は、蓄冷剤温度Tpに対応する信号をエアコンECU50に出力するようになっている。
【0049】
さらに、エアコンECU50には、図示しないセンサ、他の制御装置(ECU)等から各種の車両情報が入力されるようになっている。本第1の実施形態では、車両情報として、少なくとも外気温、車室内気温、ユーザによるエアコン設定温度(冷房目標温度)、日射量、車速、エンジン回転数がエアコンECU50に入力される構成である。エアコンECU50は、エンジン回転数と電磁クラッチ22の断続状況に基づいて得られるコンプレッサ12の回転数Ncと、コンプレッサ12の吐出容量とから、冷媒循環路20を循環する冷媒の流量Vを算出可能とされている。
【0050】
また、エアコンECU50は、エンジン26を制御する図示しないエンジンECUと電気的に接続されている。このエンジンECUは、例えば信号待ちなどの車両停車時であって所定のエコラン条件が整ったときに、エンジン26の作動を停止してエコランを開始し、別途所定のエコラン終了条件が整ったときにエンジン26を再起動するようになっている。そして、エンジンECUは、エアコンECU50に対し、エコラン開始時に車両情報としてエンジン停止信号を出力し、エコラン終了時に車両情報としてエンジン始動信号を出力する構成である。エンジン停止信号が入力されたエアコンECU50は、液ポンプ38を作動すると共に電磁弁40を閉止し、この状態からエンジン始動信号が入力されたエアコンECU50は、液ポンプ38を停止すると共に電磁弁40を開放する構成とされている。
【0051】
また、エアコンECU50は、自動車の走行中には、上記車両情報のうち、主に外気温、車室内気温、ユーザによるエアコン設定温度、日射量に基づいて、そのときの冷房負荷を推定し、この冷房負荷に基づいて、そのときに冷房を維持するのに必要な必要蓄冷量QTHを算出するようになっている。この冷房負荷の推定方法、の必要蓄冷量QTH算出方法については、従来公知の各種方法を用いることができるので、その説明を省略する。そして、エアコンECU50は、自動車の運転中にあっては、後述するように蓄冷器30への蓄冷量Qを算出し、この蓄冷量Qが上記必要蓄冷量QTHよりも小さいときにはバイパス用電磁弁46を閉弁し、蓄冷量Qが上記必要蓄冷量QTH以上であるときにはバイパス用電磁弁46を開弁する構成とされている。
【0052】
ここで、エアコンECU50(蓄冷量推定装置48)による蓄冷量Qの算出方法を説明する。図4には、蓄冷剤30Aの温度Tpと蓄冷量Qとの関係を表す線図が示されている。この図に示す温度T0は、蓄冷剤30Aの融点(凝固点)である。この線図から、蓄冷剤30Aは、凝固潜熱だけを蓄冷すると仮定すると、凝固を開始した時点の蓄冷量が0であり、完全に凝固した場合の蓄冷量がQ1であるという特性を有する。この蓄冷量Q1は、想定される最大の必要蓄冷量QTHとして設定される(蓄冷材30Aの量に基づく蓄冷器30の容量として決められる)。
【0053】
そして、エアコンECU50は、冷媒が冷媒循環路20を循環することで蓄冷剤30Aの温度Tpが下がっていき、温度Tpが融点T0に達したところで、蓄冷量QをQ=0にセットする。その後、エアコンECU50は、温度センサ52、54から入力される入口冷媒温度Tin、出口冷媒温度Tout、及びエンジン回転数等に基づき算出する冷媒の流量Vから冷媒の吸熱(放熱)量Qrを算出する。冷媒の比熱をCrとすれば、吸熱量Qrは、Qr=∫Cr×V×(Tout−Tin)dtとして算出可能である。この時間積分は、温度Tpが融点T0に達した後、冷媒が冷媒循環路20を循環している期間中に亘り行なう。したがって、バイパス用電磁弁46を開弁して蓄冷器30への蓄冷を終了した直後の蓄冷量Qは、冷媒の吸熱量Qrとほぼ一致する。
【0054】
一方、冷媒がバイパス循環路44を循環して蓄冷器30を通過しないときには、自然放熱によって蓄冷剤30Aの冷熱エネルギが流出し、蓄冷量Qは減少する。この自然放熱量Qnは、蓄冷剤30Aを収容する容器、蓄冷器30内で停滞している冷媒、蓄冷器30自体の外郭構造等から決まるトータルの伝熱係数と、蓄冷器30の周囲温度と、蓄冷終了時点からの経過時間とから推定可能であり、上記伝熱係数、及び該伝熱係数と周囲温度と経過時間との関係を予め記憶してあるエアコンECU50が算出する。
【0055】
そして、エアコンECU50は、冷媒が冷媒循環路20を循環する蓄冷期間中は、Q=Qrとし、冷媒がバイパス循環路44を循環する蓄冷停止期間中は、Q=Qr−Qnとして蓄冷量Qを算出する。
【0056】
なお、自動車走行中に蓄冷量Qが必要蓄冷量QTHに対し不足して冷媒の循環経路がバイパス循環路44から冷媒循環路20に切り替えられる場合には、残存する蓄冷量Q(=Qr−Qn)にその後の冷媒の吸熱量を付加してQrを得るようしても良い。この場合、蓄冷剤30Aの温度Tpが融点T0を上回っている場合には、蓄冷量Q=0にリセットして温度Tpが融点T0に達した後に冷媒吸熱量Qrを算出することで、誤差が生じることを防止することができる。また、冷媒の吸熱量Qrの計算において、温度Tpが融点T0を下回った時点で、常にQr=Q1にリセットするか、またはQrとQ1との差が所定値よりも大きい場合にQr=Q1にリセットするようにしても良い。
【0057】
次に、エアコンECU50の動作を示す図5のフローチャート参照しつつ、本第1の実施形態の作用を説明する。
【0058】
上記構成の車両用空調装置10では、自動車の走行中には電磁クラッチ22が結合されてエンジン26の動力によってコンプレッサ12が作動しており、電磁弁40が開放されると共に液ポンプ38が停止している。このとき、エアコンECU50は、ステップS10で、車室内外の気温、エアコン設定温度、日射量等から冷房負荷を推定し、この冷房負荷時においてコンプレッサ12が停止した場合に冷房を維持するの必要な蓄冷量QTHを算出する。次いでステップS12へ進み、上記の如くして蓄冷量Qを算出する。
【0059】
蓄冷量Qを算出するとステップS14へ進み、蓄冷量Qが必要蓄冷量QTH未満(Q<QTH)であるか否かが判断される。蓄冷量Qが必要蓄冷量QTH未満であると判断された場合には、ステップS16へ進み、バイパス用電磁弁46を閉止する。すると、冷媒は図2(A)に示される如く冷媒循環路20を循環し、冷凍サイクルを行ないながら蓄冷器30への蓄冷が行なわれる。
【0060】
一方、ステップS14で蓄冷量Qが必要蓄冷量QTH未満ではないと判断された場合、すなわち蓄冷量Qが必要蓄冷量QTH以上(Q≧QTH)であると判断された場合には、ステップS18へ進み、バイパス用電磁弁46を開放する。すると、冷媒は図2(B)に示される如くバイパス循環路44を循環し、蓄冷器30への蓄冷を行なうことなく冷凍サイクルを行なう。
【0061】
エアコンECU50は、以上のフローを、自動車の走行中は常時、或いは所定時間の経過毎に繰り返す。これにより、蓄冷器30には、ほぼ必要蓄冷量QTH以上の冷熱が蓄えられる。
【0062】
また、車両用空調装置10では、自動車がエコラン状態に至り、エアコンECU50にエンジンECUからエンジン停止信号が入力されると、このエアコンECU50は、液ポンプ38を作動すると共に電磁弁40を閉止する。すると、図2(C)に示される如く、冷媒は副循環路35を循環し、エバポレータ18による冷媒の蒸発と蓄冷器30による冷媒の凝縮とを繰り返すサイクルが行なわれることによって、エンジン26の停止中の冷房が維持される。
【0063】
ここで、車両用空調装置10では、バイパス流路42及びバイパス用電磁弁46を設けたため、冷媒が冷凍サイクルを行なう循環路を冷媒循環路20とバイパス循環路44との間で選択的に切り替えることができる。これにより、蓄冷器30が十分な蓄冷量を有していると判断した場合には、バイパス循環路44を選択して蓄冷を伴わない通常の冷凍サイクルを行なうことで、この冷凍サイクルの効率を、蓄冷器30を備えないクーラシステムの冷凍サイクルの効率と同等程度まで改善することができた。なお、バイパス用電磁弁46の開放時には、蓄冷器30に殆ど冷媒が流入することがないため、換言すれば、殆ど全ての冷媒がバイパス循環路44を循環するため、上記蓄冷器30を備えることによる冷凍サイクルの効率悪化をが生じることがない。
【0064】
このように、本第1の実施形態に係る車両用空調装置10では、蓄冷器30に冷熱を効率的に蓄えることができる。
【0065】
また、蓄冷器30が冷媒循環路20上でエバポレータ18に対し直列に接続されているため、蓄冷器30への蓄冷中でも全冷媒がエバポレータ18を通過し、循環冷媒の不足により冷凍サイクルの効率が低下することが抑制される。特に、蓄冷器30がエバポレータ18の冷媒入口側に直列に接続されているため、膨張弁16下流の低圧液相冷媒によって蓄冷剤30Aが効果的に冷却される。
【0066】
さらに、車両用空調装置10では、蓄冷器30が冷房負荷に基づく必要蓄冷量QTHに対し十分な蓄冷量Qを有するときにはバイパス循環路44を選択して冷凍サイクル効率を向上し、蓄冷器30の蓄冷量Qが必要蓄冷量QTHに対し不足する場合には冷媒循環路20を選択するため、換言すれば、蓄冷器30に冷熱を蓄えることが冷凍サイクルの効率向上に対し優先されるため、基本的に蓄冷器30は常に十分な蓄冷量Qを有することとなる。このため、次に蓄冷器30の冷熱を必要とする場合(エコラン時)に蓄冷量Qが不足して快適性が阻害されたり、快適性維持のためにエコランを中止してエンジンを始動することで自動車としてのトータルの効率を悪化させてしまうことが防止される。
【0067】
特に、蓄冷量の推定に入口冷媒温度Tin、出口冷媒温度Tout、蓄冷剤温度Tp、及び冷媒流量Vに基づき蓄冷量Qを具体的に算出し、この蓄冷量Qをその時点の外気温や日射量の変化に応じて算出された必要蓄冷量QTHと比較して蓄冷器30への蓄冷要否が判断されるため、冷房維持に必要な蓄冷量を確保しながらも蓄冷器30に必要以上に冷媒を流すことのない最適制御が実現されている。すなわち、一層効果的に蓄熱を行なうことが可能となる。
【0068】
さらに、冷媒循環路20における副循環路35を構成しない部分には、停止しているコンプレッサ12への冷媒流入を防止する電磁弁40を設けたため、このコンプレッサ12停止時には、エバポレータ18と蓄冷器30との間を全冷媒が循環し、蓄冷器30の冷熱を利用した冷房サイクルの効率が良好である(効率が低下することがない)。特に、電磁弁40が分岐部20Aとコンプレッサ12入口との間に設けられているため、停止しているコンプレッサ12に冷媒が流れ込むことが電磁弁40によって直接的にかつ確実に防止される。このように、車両用空調装置10では、蓄冷器30に冷熱を効率的に蓄えるだけではなく、蓄冷器30に蓄えた冷熱を有効に利用することができる。
【0069】
(他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態または前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態または前出の構成と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
(第2の実施形態)
図6には、本発明の第2の実施形態に係る車両用空調装置60がブロック図にて示されている。この図に示される如く、車両用空調装置60は、冷凍サイクル、蓄冷器30への蓄冷、及び蓄冷器30からの放冷、各種冷媒循環路の切替を行なうための機械部分の構成は車両用空調装置10と全く同様とされているが、エアコンECU50に代えてエアコンECU62を備えている点で車両用空調装置10とは異なる。
【0071】
エアコンECU62は、蓄冷器30への蓄冷量が十分であるか否かの判断方法を簡素化したものであり、温度センサ56の蓄冷剤温度Tpが入力されるようになっている。そして、エアコンECU62は、蓄冷剤30Aの温度Tpと蓄冷量Qとの上記図4に示す関係から、温度Tpが蓄冷剤30Aの融点T0よりも低ければ、蓄冷器30が蓄冷量Q1以上の十分な蓄冷量を有していると判断するようになっている。このエアコンECU62は、冷房負荷を推定したり、この冷房負荷に基づき必要蓄冷量を算出したりすることのない簡単な構成とされている。
【0072】
以下、図7に示すフローチャートを参照しつつ、本第2の実施形態の作用を説明する。
【0073】
上記構成の車両用空調装置60では、自動車の走行中には電磁クラッチ22が結合されてエンジン26の動力によってコンプレッサ12が作動しており、電磁弁40が開放されると共に液ポンプ38が停止している。このとき、エアコンECU62は、ステップS20で、蓄冷剤30Aの温度Tpが該蓄冷剤30Aの融点T0以上であるか(Tp≧T0)否かを判断する。蓄冷剤30Aの温度Tpが該蓄冷剤30Aの融点T0以上であると判断した場合には、ステップS22へ進み、バイパス用電磁弁46を閉止する。すると、冷媒は図2(A)に示される如く冷媒循環路20を循環し、冷凍サイクルを行ないながら蓄冷器30への蓄冷が行なわれる。
【0074】
一方、ステップS20で蓄冷剤30Aの温度Tpが該蓄冷剤30Aの融点T0以上ではないと判断された場合、すなわち蓄冷剤30Aの温度Tpが該蓄冷剤30Aの融点T0未満であり蓄冷量がQ1以上であると判断された場合には、ステップS24へ進み、バイパス用電磁弁46を開放する。すると、冷媒は図2(B)に示される如くバイパス循環路44を循環し、蓄冷器30への蓄冷を行なうことなく冷凍サイクルを行なう。
【0075】
エアコンECU62は、以上のフローを、自動車の走行中は常時、或いは所定時間の経過毎に繰り返す。これにより、蓄冷器30は、冷媒との熱交換によって蓄冷剤30Aの温度Tpが融点T0を下回った時点で、図4に示す蓄冷量Q1以上の蓄冷量を有する状態になっている。車両用空調装置60の他の作用(主にエコラン時の冷房維持)は、上記第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0076】
本第2の実施形態に係る車両用空調装置60によっても、蓄冷量Qを具体的に推定することによる効果を除き、基本的に上記第1の実施形態に係る車両用空調装置10と同様の効果を得ることができる。また、車両用空調装置60では、単に蓄冷剤30Aの温度Tpを検出する温度センサ56の検出結果のみに基づいて、バイパス用電磁弁46の開閉すなわち冷媒循環路20とバイパス循環路44との切り替えを制御することができるため、エアコンECU62の構成を簡素化することができると共に、センサ数すなわち部品点数を削減することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
図8には、本発明の第3の実施形態に係る車両用空調装置70がブロック図にて示されている。この図に示される如く、車両用空調装置60は、冷凍サイクル、蓄冷器30への蓄冷、及び蓄冷器30からの放冷、各種冷媒循環路の切り替えを行なうための機械部分の構成は車両用空調装置10、60と全く同様とされているが、エアコンECU50に代えてエアコンECU72を備えている点で車両用空調装置10、60とは異なる。
【0078】
エアコンECU72は、蓄冷器30の温度等に応じた信号は入力されず、車両情報に基づいてバイパス用電磁弁46の開閉すなわち冷媒循環路20とバイパス循環路44との切り替えを制御するようになっている。具体的には、エアコンECU72には、車速、ブレーキペダルの踏み込みの有無またま踏み込み量に応じた信号が入力されるようになっていおり、自動車が減速中であるか否かを判断するようになっている。そして、エアコンECU72には、自動車の走行中において、減速中にはバイパス用電磁弁46を閉弁し、減速中でない場合にはバイパス用電磁弁46を開弁する構成とされている。
【0079】
以下、図9に示すフローチャートを参照しつつ、本第3の実施形態の作用を説明する。
【0080】
上記構成の車両用空調装置70では、自動車の走行中には電磁クラッチ22が結合されてエンジン26の動力によってコンプレッサ12が作動しており、電磁弁40が開放されると共に液ポンプ38が停止している。このとき、エアコンECU72は、ステップS30で、自動車が減速中であるか否かを判断する。自動車が減速中であると判断した場合には、ステップS32へ進み、バイパス用電磁弁46を閉止する。すると、冷媒は図2(A)に示される如く冷媒循環路20を循環し、冷凍サイクルを行ないながら蓄冷器30への蓄冷が行なわれる。
【0081】
一方、ステップS30で自動車が減速中ではないと判断された場合、すなわち定常走行中であるか加速中であると判断された場合には、ステップS34へ進み、バイパス用電磁弁46を開放する。すると、冷媒は図2(B)に示される如くバイパス循環路44を循環し、蓄冷器30への蓄冷を行なうことなく冷凍サイクルを行なう。
【0082】
エアコンECU72は、以上のフローを、自動車の走行中は常時繰り返す。これにより、蓄冷器30は、自動車が減速する毎に冷媒と蓄冷材30Aとの熱交換によって蓄冷される。車両用空調装置70の他の作用(主にエコラン時の冷房維持)は、上記第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0083】
本第3の実施形態に係る車両用空調装置70によっても、蓄冷量Qに基づきバイパス用電磁弁の開閉を行なうことによる効果を除き、基本的に上記第1の実施形態に係る車両用空調装置10と同様の効果を得ることができる。
【0084】
そして、車両用空調装置70では、蓄冷器30への蓄冷量に関係なく、自動車の減速時には、図2(A)に示すようにバイパス用電磁弁を閉弁して冷媒が冷媒循環路20を循環するように切り替えるが、減速中にはエンジン26への燃料供給がカットされているため、燃費に悪影響を与えることなくコンプレッサ12を作動して蓄冷器30への蓄冷を行なうことができる。すなわち、制動力を回生して蓄冷を行なうことができる。このように、減速時に積極的に蓄冷を行ない、エンジンに燃料を供給する加速時や定常走行時には蓄冷を行なわないため、蓄冷器30を備える構成を採用しながら実用燃費の悪化を防止することができる。
【0085】
なお、本第3の実施形態では、減速時にのみ蓄冷を行なう例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1または第2の実施形態のように蓄冷量が十分であるか否かの判断を行ない、蓄冷量が不足している場合には定常走行時にもバイパス用電磁弁46を閉弁し、蓄冷器30への蓄冷を行なうようにしても良い。逆に、蓄冷量が不足しておりかつ自動車が減速中であるときにバイパス用電磁弁46を閉弁し、蓄冷器30への蓄冷を行なうようにしても良い。
【0086】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る車両用空調装置80は、上記第3の実施形態に係る車両用空調装置70と同様に構成されているため、車両用空調装置70とは異なる部分を図8において括弧付きの符号で表すこととする。この図8に示される如く、車両用空調装置80は、エアコンECU72に代えてエアコンECU82を備える点で車両用空調装置70とは異なる。
【0087】
エアコンECU82は、車室内の気温等から急速冷房(クールダウン)が必要か否かを判断し、急速冷房すなわち大きな冷房負荷が必要なときにはバイパス用電磁弁46を開弁し、急速冷房を要求する状態が解消されるとバイパス用電磁弁46を閉弁する構成とされている。
【0088】
以下、図10に示すフローチャートを参照しつつ、本第4の実施形態の作用を説明する。
【0089】
上記構成の車両用空調装置80では、自動車の走行中には電磁クラッチ22が結合されてエンジン26の動力によってコンプレッサ12が作動しており、電磁弁40が開放されると共に液ポンプ38が停止している。このとき、エアコンECU82は、ステップS40で、急速冷房が必要でないか否かを判断する。例えば、車室内気温とエアコン設定温度との差が著しく大きい場合等、急速冷房が必要であると判断した場合には、ステップS42へ進み、バイパス用電磁弁46を開放する。すると、冷媒は図2(B)に示される如くバイパス循環路44を循環し、蓄冷器30への蓄冷を行なうことなく冷凍サイクルを行なう。
【0090】
一方、ステップS40で急速冷房要求が必要ではないと判断された場合には、ステップS44へ進み、バイパス用電磁弁46を閉止する。すると、冷媒は図2(A)に示される如く冷媒循環路20を循環し、冷凍サイクルを行ないながら蓄冷器30への蓄冷が行なわれる。
【0091】
エアコンECU82は、以上のフローを、自動車の走行中は常時、或いは所定時間の経過毎に繰り返す。これにより、蓄冷器30は、急速冷房が必要な状態が解消されて車両用空調装置80が大きな冷房能力を必要としない状態に移行すると、冷媒との熱交換によって蓄冷される。車両用空調装置80の他の作用(主にエコラン時の冷房維持)は、上記第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0092】
本第4の実施形態に係る車両用空調装置80によっても、蓄冷量Qに基づきバイパス用電磁弁の開閉を行なうことによる効果を除き、基本的に上記第1の実施形態に係る車両用空調装置10と同様の効果を得ることができる。
【0093】
そして、車両用空調装置80では、蓄冷量に関係なく、急速冷房が必要な場合にはバイパス用電磁弁を開弁して冷媒がバイパス循環路44を循環するように切り替えるため、急速冷房時には低温の低圧液相冷媒がエバポレータ18に流入して蒸発することで大きな冷房能力を得ることができる。すなわち、蓄冷器30への蓄冷よりも急速冷房要求が優先されるため、急速冷房時には、冷房能力の一部を蓄冷に用いることなく、速やかに車室内を快適な温度まで冷却することができる。これにより、蓄冷器30を備えないクーラシステムと同等の急速冷房性能を得ることができる。
【0094】
(第5の実施形態)
図11には、本発明の第5の実施形態に係る車両用空調装置90がブロック図にて示されている。この図に示される如く、車両用空調装置90は、バイパス用電磁弁46に代えて、バイパス用機械弁92を備える点で、上記各実施形態とは異なる。バイパス用機械弁92は、蓄冷器30の蓄冷量に応じて自律的にバイパス流路42を開閉するようになっている。以下、具体的に説明する。
【0095】
図12に示される如く、バイパス用機械弁92は、バイパス流路42を開閉する弁体92Aと、一端側が蓄冷剤30A内または蓄冷材30A間に挿入されると共に他端側が拡径された感温管92Bと、感温管92Bの他端を閉塞すると共に感温管92Bとは反対側の面に弁体92Aが固定されたダイアフラム92Cとを備えて構成されている。ダイアフラム92Cにて密閉された感温管92B内にはガスが気密状態で封入されている。
【0096】
このバイパス用機械弁92の弁体92Aは、感温管92B内のガスの体積変化によって、バイパス流路42を完全に閉止する閉止位置と、バイパス流路42を完全に開放する開放位置とを選択的にとり得る構成とされている。また、ダイアフラム92Cは、そのばね力によって弁体92Aを開放位置側に付勢する構成とされている。したがって、バイパス用機械弁92では、ガス圧力により弁体92Aを閉止位置側に移動しようとする力Fsと、弁体92Aを開放位置側に付勢するばね力Foとの大小によってバイパス流路42の閉止状態と開放状態とを選択に切り替える構成とされている。
【0097】
そして、バイパス用機械弁92では、蓄冷剤30Aの温度が融点未満の場合にFs<Foとなるようにダイアフラム92Cのばね定数が設定されている。これにより、蓄冷剤30Aの温度が該蓄冷剤30Aの融点未満になるとバイパス流路42が開放され、蓄冷器30への冷媒流入が防止される構成である。
【0098】
また、車両用空調装置90は、エアコンECU50に代えてエアコンECU94を備えている。エアコンECU94は、エンジンECUからエンジン停止信号が入力されて液ポンプ38を作動すると共に電磁弁40を閉塞する等のエコラン時の空調維持に関する制御を除いては、蓄冷器30を備えないクーラシステムと同様の通常のエアコン制御を行なう構成とされている。
【0099】
なお、本第5の実施形態では、バイパス用機械弁92がダイアフラム92Cにて閉塞される感温管92Bにガスを封入する構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ガス封入方式に代えて、温度変化による弁体92Aの駆動力または復元力を発生するために形状記憶合金や部材の線膨張を増幅するてこ機構等を用いることも可能である。また、バイパス用機械弁92は、所定の場合に閉止位置と開放位置との間の中間位置を取るように構成されても良い。
【0100】
次に、本第5の実施形態の作用を説明する。
【0101】
上記構成の車両用空調装置90では、自動車の走行中には電磁クラッチ22が結合されてエンジン26の動力によってコンプレッサ12が作動しており、電磁弁40が開放されると共に液ポンプ38が停止している。このとき、蓄冷剤30Aの温度が該蓄冷剤30Aの融点以上であると、バイパス用機械弁92の感温管92B内のガス圧に基づく力Fsがダイアフラム92Cのばね力Foを上回り、バイパス流路42が閉止される。このため、
冷媒は図2(A)に示される如く冷媒循環路20を循環し、冷凍サイクルを行ないながら蓄冷器30への蓄冷が行なわれる。
【0102】
この蓄冷によって、蓄冷剤30Aの温度が徐々に低くなり、感温管92Bに封入されたガスの飽和圧力が下がり、弁体92Aを閉止位置側に押しつける上記力Fsが小さくなる。そして、蓄冷剤30Aの温度が該蓄冷剤30Aの融点未満になると、力Fsがダイアフラム92Cのばね力Foを下回り、弁体92Aが開放位置へ移動する。すなわち、バイパス流路42が開放される。すると、冷媒は図2(B)に示される如くバイパス循環路44を循環し、蓄冷器30への蓄冷を行なうことなく冷凍サイクルを行なう。
【0103】
車両用空調装置60の他の作用(主にエコラン時の冷房維持)は、上記第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0104】
本第5の実施形態に係る車両用空調装置90によっても、バイパス用電磁弁46を各種制御パラメータに基づき制御することでバイパス流路42を電気的に開閉することによる効果を除き、基本的に上記第1の実施形態に係る車両用空調装置10と同様の効果を得ることができる。また、車両用空調装置90では、蓄冷剤30Aの温度(蓄冷量が所定値以上であるか否か)に応じてバイパス用機械弁92が自律的にバイパス流路42を開閉するため、故障原因が少なく信頼性が高い。また、エアコンECU94は、バイパス流路42の開閉制御が不要であり、構成が簡素化される。
【0105】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更して実施することができ、例えば、上記各実施の形態の特徴を適宜組み合わせたり、一部省略して実施することもでき、これらと共にまたはこれらに代えて別の制御を採用することも可能である。したがって、例えば、エアコンECU50、62が、蓄冷量が不足している場合でも急速冷房中にはバイパス用電磁弁46を開放するようにしても良く、蓄冷量Qまたは蓄冷剤温度Tpに拘わらず自動車の減速中にバイパス用電磁弁46を閉止するようにしても良い。また、本発明における冷媒循環路20、バイパス循環路44、副循環路35の切り替え制御は、上記実施形態に限定されることはなく、例えば、自動車の加速中や登坂中等の走行負荷が大きい場合にバイパス循環路44または副循環路35を選択したり、渋滞時等のエンジン回転数が低い場合でかつ冷房負荷が大きい場合(急速冷房等)にはコンプレッサ12と共に液ポンプ38を作動して冷媒循環量(エバポレータ18の通過冷媒量)を確保したりすることも可能である。
【0106】
また、上記各実施形態では、バイパス流路42上に設けたバイパス用電磁弁46またはバイパス用機械弁92が冷媒循環路20とバイパス循環路44とを切り替える構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、合流部20Dに設けた三方弁や複数の弁類によって冷媒循環路20とバイパス循環路44とを切り替えるようにしても良い。
【0107】
さらに、上記各実施形態では、エバポレータ18の上流に蓄冷器30を直列に配置した構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、アキュムレータ式の冷凍サイクルを行なう車両用空調装置では、エバポレータ18の下流(コンプレッサ12入口との間)に蓄冷器30を設けても良い。この構成では、膨張弁16に代えて固定絞りを用いることができる。
【0108】
さらにまた、上記各実施形態では、冷媒循環路20における副循環路35を構成しない部分であるコンプレッサ12上流に電磁弁40が設けられた構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、電磁弁40を設けなくても良く、電磁弁40をコンプレッサ12の下流に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調装置の動作状態を示す図であって、(A)は冷凍サイクル及び蓄冷の実行状態のブロック図、(B)は蓄冷器による冷房維持状態を示すブロック図、(C)は液ポンプの作動により冷媒流量を確保する状態を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調装置を構成するエアコンECUの入出力信号を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調装置を構成する蓄冷材の特性を示す線図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車両用空調装置を構成するエアコンECUの制御を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車両用空調装置を構成するエアコンECUの制御を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3または第4の実施形態に係る車両用空調装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る車両用空調装置を構成するエアコンECUの制御を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る車両用空調装置を構成するエアコンECUの制御を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る車両用空調装置の概略全体構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る車両用空調装置を構成するバイパス用機械弁の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0110】
10 車両用空調装置
12 コンプレッサ(圧縮機)
14 コンデンサ(凝縮器)
16 膨張弁(減圧手段)
18 エバポレータ(蒸発器)
20 冷媒循環路
26 エンジン
30 蓄冷器
30A 蓄冷剤
34 冷媒戻し流路
35 副循環路
38 液ポンプ(液送装置)
40 電磁弁(開閉弁)
42 バイパス流路
44 バイパス循環路
46 バイパス用電磁弁(流路切替装置、電磁弁)
50 エアコンECU(制御装置)
60・70・80・90 車両用空調装置
62・72・82 エアコンECU(制御装置)
92 バイパス用機械弁(流路切替装置、機械弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンに駆動される圧縮機の作動によって、該圧縮機、凝縮器、減圧手段、蒸発器、及び蓄冷器に冷媒を循環させて冷凍サイクル及び前記蓄冷器への蓄冷を行なうための冷媒循環路と、
両端が前記冷媒循環路に連通した冷媒戻し流路及び液送装置を含み、該液送装置の作動によって前記蓄冷器と前記蒸発器との間で冷媒を循環させる副循環路と、
前記冷媒循環路における前記副循環路を構成しない部分に設けられ、前記圧縮機の停止中でかつ前記液送装置の作動中には前記冷媒循環路を閉塞する開閉弁と、
前記蓄冷器をバイパスするように前記冷媒循環路に連通されたバイパス流路を含み、前記圧縮機の作動によって該圧縮機、前記凝縮器、前記減圧手段、前記蒸発器に冷媒を循環させて冷凍サイクルを行なうためのバイパス循環路と、
前記圧縮機の動作時に、冷媒が前記冷媒循環路を循環する状態と冷媒が前記バイパス循環路を循環する状態とを選択的に切り替える流路切替装置と、
を備えた車両用空調装置。
【請求項2】
車両のエンジンに駆動される圧縮機の作動によって、該圧縮機、凝縮器、減圧手段、及び蒸発器に冷媒を循環させて冷凍サイクル行なうための冷媒循環路と、
前記冷媒循環路における前記減圧手段と前記蒸発器との間に直列に設けられ、内蔵する蓄冷剤が冷媒と熱交換を行なう蓄冷器と、
前記冷媒循環路における前記蒸発器の下流と前記蓄冷器の上流とを連通する冷媒戻し流路及び液送装置を含み、前記蒸発器と前記蓄冷器との間で冷媒を循環させる副循環路と、
前記冷媒循環路における前記副循環路を構成しない部分に設けられ、前記圧縮機の停止中でかつ前記液送装置の作動中には前記冷媒循環路を閉塞する開閉弁と、
前記冷媒循環路における前記減圧手段の下流と前記蒸発器の上流とを、前記蓄冷器をバイパスして連通するバイパス流路と、
前記バイパス流路を冷媒が流れる状態と、該バイパス流路を冷媒が流れない状態とを選択的に切替可能な流路切替装置と、
を備えた車両用空調装置。
【請求項3】
前記流路切替装置は、前記バイパス流路上に設けられ、制御装置によって開閉制御される電磁弁である、請求項1または請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記蓄冷器への蓄冷量に応じて前記電磁弁を開閉する、請求項3記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御装置は、少なくとも前記蓄冷剤の温度に対応する信号、前記蓄冷器の出入口における冷媒温度にそれぞれ対応する信号、及び冷媒流量に対応する信号に基づいて算出した蓄冷量が、そのときの冷房負荷に基づき算出した必要蓄冷量よりも小さい場合に、前記電磁弁を閉じ、前記蓄冷量が必要蓄冷量以上である場合には前記電磁弁を開放する、請求項4記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記制御装置は、車両が減速中であることに対応する情報が入力された場合に前記電磁弁を閉じる、請求項3乃至請求項5の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御装置は、急速冷房動作が必要なときに前記電磁弁を開放する、請求項3乃至請求項6の何れか1項記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記流路切替装置は、機械弁である、請求項1または請求項2記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記機械弁は、蓄冷剤の温度変化によって前記バイパス流路を開放する位置と該バイパス流路を閉止する位置との間を移動する弁体を有する、請求項8記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−21571(P2006−21571A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199533(P2004−199533)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】