車両用空調装置
【課題】FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空気通路を備えたケーシングと、揺動によって前記空気通路内に形成された側縁に一方の面を当接、離反させることにより前記空気通路を開閉可能な板状ドアとを有する車両用空調装置において、前記板状ドアの前記一方の面の端部に、前記板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【解決手段】空気通路を備えたケーシングと、揺動によって前記空気通路内に形成された側縁に一方の面を当接、離反させることにより前記空気通路を開閉可能な板状ドアとを有する車両用空調装置において、前記板状ドアの前記一方の面の端部に、前記板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、とくに空気通路を開閉し配風や風量を調節する板状ドアの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングの空気通路を開閉し、配風や風量を調節する揺動式の板状ドアを有する車両用空調装置としては、図10に示すようなものが知られている。図10において、100は車両用空調装置としての自動車用空調装置を示している。自動車用空調装置100のケーシング101には、空気通路としてのDEF(デフロスター)吹き出し口(図示略)に通じる空気通路102が設けられている。空気通路102には、板状ドア103が設けられている。板状ドア103は、揺動軸104とドア本体105と、該ドア本体105の表面に接合されたパッキン106とからなっている。板状ドア103は、揺動軸104を中心にドア本体105が矢印方向に揺動することにより、DEF吹き出し口102の開度が調節され、DEF吹き出し口102からの風量等が調節されるようになっている。
【0003】
上記のような自動車用空調装置においては、たとえば足下に温風を配風するFOOTモードにおいては、フロントガラスの防曇を目的として、図11に示すよう板状ドア103を全閉状態から揺動させ、空気通路102の側縁108と板状ドア103との間に微小の隙間107を形成しフロントガラスに微量の温風を配風する(いわゆる、DEF漏らし)制御が行われることがある(たとえば、特許文献1)。
【0004】
しかし、上記のように僅かな隙間107を介して温風を配風する場合には、図11に示すように微小な渦流が発生するおそれがある。このような渦流が発生すると、3kHzから20kHzの高周波騒音が発生するおそれがある。FOOTモードにおいては、足下へ暖房に足る十分な風量を与えるための風と音は機能的関係にあり、風量の増大に伴って音が増大したとしても搭乗者に違和感を与えることは稀であるが、フロントガラスの曇りを防止するDEF漏らしに関しては、風量が微量であるため、風と音の関係が必ずしも機能的な関係にはなく搭乗者に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
上記のような高周波騒音を低減するために、たとえば板状ドア103の開度を大きくし渦流の発生を防止する方法も考えられるが、このような方法においてはDEF吹き出し口102からの温風の吹き出し量が増加するため搭乗者の快適性が損なわれるおそれがある。また、板状ドア103の開度を最小限に抑え隙間107をより小さくすれば、空気流の速度低下により渦流の発生は抑制されるので、高周波騒音も同時に低減されるが、このような方法においては、DEF吹き出し口からの温風の吹き出し量が不足しフロントガラスの防曇効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【特許文献1】実開平5−76815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、とくにFOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減可能な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両車用空調装置は、空気通路を備えたケーシングと、揺動によって前記空気通路内に形成された側縁に一方の面を当接、離反させることにより前記空気通路を開閉可能な板状ドアとを有する車両用空調装置において、前記板状ドアの前記一方の面の端部に、前記板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段を設けたことを特徴とするものからなる。このような構成においては、板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段が設けられており、たとえば発生した微小な渦流を徐々に成長させ、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができる。したがって、FOOTモードにおいては、搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0008】
上記渦流制御手段は、板状ドアの一方の面の空気流れ方向に空気通路の側縁よりも下流側の位置にて、前記側縁に沿って延びる凸部から構成することができる。また、上記凸部は、さらに空気流れ方向下流側に向けて前記一方の面上において部分的に延びていることが好ましい。このように凸部を設ければ、簡素な構造において渦流制御手段を構成することができる。
【0009】
上記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなる場合においては、上記凸部は実質的にパッキンから形成することが可能である。このような構成においては、既存の板状ドアの構成部品により凸部を形成することができるので、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。なお後述のように、凸部はドア本体に一体に形成することも可能である。
【0010】
上記凸部を形成するパッキンは、ドア本体表面に形成された突設部に接合されることが好ましい。このような構成によれば、その他の部分(つまり、凸部形成部以外の部分)と同一の厚みのパッキンを使用し凸部を形成することができるので、部品点数の増加を防止でき、コストアップを防止することができる。
【0011】
上記突設部には、パッキン位置決め用のガイド部が設けられることが好ましい。このようなガイド部を設ければ、パッキンの貼着作業を容易化することができるので、コストアップを防止することができる。また、このようなガイド部は、たとえば突設部の先端面に形成した、段差や溝等から簡単に形成できる。
【0012】
また、上記突設部が設けられる一方の面とは反対側の面の突設部に対応する位置には、肉盗み部が設けられることが好ましい。このような構成によれば、突設部設置による板状ドアの重量増加を防止できる。また、肉盗み部の分だけ材料を低減でき、コストアップを防止できる。また、肉盗み部を設ければ、突設部のみが他の部分に比べて極端に肉厚化する不具合を防止できるので、ドア本体成形時のひけ等の不良の発生を防止することも可能である。
【0013】
上記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなる場合においては、凸部をドア本体に一体に形成することができる。このような構成においては、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。
【0014】
上記凸部の先端面は、空気流れ方向下流側に向かって凸部の高さが減少する傾斜面に形成されることが好ましい。このような構成によれば、微小な渦流の成長が促進されるので、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0015】
上記凸部は、空気流れ方向に向かって複数配列することも可能である。また、このように複数配列された凸部は、空気流れ方向下流側に配列されるもの程高さが大きく形成されることが好ましい。このような構成によれば、微小な渦流の成長が一層促進されるので、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音を確実にしかも効果的に低減することができる。
【0016】
また、上記複数の凸部のうち空気流れ方向最下流側に配置された凸部は、横断面形状波形に形成することも可能である。
【0017】
上記空気通路は、とくに限定されるものではないが、車両用空調装置のDEF吹き出し口に通じる空気通路であることが好ましい。このような構成によれば、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記のような本発明に係る車両用空調装置によれば、板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段が設けられているので、たとえば発生した微小な渦流を徐々に成長させ、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音を効果的に低減することができる。また、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0019】
また、上記渦流制御手段は、板状ドアの一方の面の空気流れ方向に空気通路の側縁よりも下流側の位置にて、前記側縁に沿って延びる凸部から構成することができるので、簡素な構造において渦流制御手段を構成することができる。
【0020】
上記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなる場合においては、上記凸部は実質的にパッキンから形成することが可能であり、また、ドア本体に一体に形成することも可能である。このような構成においては、既存の板状ドアの構成部品により凸部を形成することができるので、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。
【0021】
上記凸部がパッキンにより形成される場合において、パッキンが接合される突設部を設ければ、その他の部分(つまり、凸部形成部以外の部分)と同一の厚みのパッキンを使用し凸部を形成することができるので、部品点数の増加を防止でき、コストアップを防止することができる。さらに、突設部にパッキン位置決め用のガイド部を設ければ、パッキンの貼着作業を容易化することができる。
【0022】
また、上記突設部が設けられる一方の面とは反対側の面の突設部に対応する位置に肉盗み部を設ければ、板状ドアの重量増加を防止できる。また、肉盗み部の分だけ材料を低減でき、コストアップを防止できる。また、肉盗み部を設ければ、突設部のみが他の部分に比べて極端に肉厚化する不具合を防止できるので、ドア本体成形時のひけ等の不良の発生を防止することも可能である。
【0023】
上記凸部の先端面を傾斜面に形成し、さらに、凸部を空気流れ方向に向かって複数配列し、複数配列された凸部を空気流れ方向下流側に配列されるもの程高さが大きくなるように形成すれば、微小な渦流の成長が一層促進されるので、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音をより効果的に低減することができる。
【0024】
車両用空調装置のDEF吹き出し口に通じる空気通路を開閉する板状ドアに渦流制御手段を設ければ、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る車両用空調装置の望ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施態様に係る車両用空調装置を示している。図において、1は車両用空調装置としての自動車用空調装置を示している。自動車用空調装置1は、ケーシング2を有しており、ケーシング2内には空気通路3が形成されている。本実施態様においては、空気通路3はDEF吹き出し口(図示略)へと通じている。空気通路3は、揺動式の板状ドア4により開閉されるようになっている。
【0026】
板状ドア4は、図2に示すように揺動軸5とドア本体6とを有しており、ドア本体6の表面はパッキン7により覆われている。そして、板状ドア4は揺動軸5が正逆回転し、板状ドア4の一方の面4aが空気通路3内に形成された側縁8に当接、離反することにより空気通路3を通過する空気量が調節されるようになっている。
【0027】
板状ドア4の一方の面4aの端部には、板状ドア4が空気通路3を少量開いた際に形成される隙間9を通過する空気流に伴い発生する渦流を制御可能な渦流制御手段10が設けられている。制御手段10は、一方の面4aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びる凸部11からなっている。凸部11は、一方の面4a上において空気流れ方向下流側に向けて部分的に延びている。
【0028】
凸部11は、ドア本体5の表面に突設された突設部12に接合されており、突設部12にはパッキン7の位置決め用のガイド部13が設けられている。ガイド部13は、突設部12の先端面に形成された段差により形成されている。本実施態様においては、突設部12にパッキン7が接合され、凸部11は実質的にパッキン7から形成されるようになっている。
【0029】
突設部12が設けられる一方の面4aとは反対側の面4bの突設部12に対応する位置には、肉盗み部14が設けられている。このような構成によれば、突設部設置による板状ドア4の重量増加を防止できる。また、肉盗み部14の分だけ材料を低減でき、コストアップを防止できる。また、肉盗み部14を設ければ、ドア本体5において突設部12のみが他の部分に比べて極端に肉厚化する不具合を防止できるので、ドア本体成形時のひけ等の不良の発生を防止することも可能である。
【0030】
本実施態様においては、板状ドア4が空気通路3を少量開いた際に、その隙間9を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段10が設けられている。また、渦流制御手段10は、凸部11から形成され、該凸部11は、一方の面4aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びているので、空気流が隙間9を通過する際に発生した微小な渦流は図1に示すように、徐々に大きな渦流に成長する。したがって、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0031】
また、本実施態様において、渦流制御手段10は、板状ドア4の一方の面4aの空気流れ方向に空気通路3の側縁8よりも下流側の位置にて、前記側縁8に沿って延びる凸部11から構成されているので、簡素な構造において渦流制御手段10を構成することができ、コストアップを防止することができる。
【0032】
凸部11は実質的にパッキン7から形成されており、該パッキン7は、凸部11以外の一方の面4aに接合されたパッキン7と同一である。また、板状ドア4の反対側の面4bに接合されるパッキン7とも同一である。したがって、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。
【0033】
また、凸部11は、ガイド部13を有する突設部12に接合されているので、パッキン7の接合作業を容易化することができる。
【0034】
図3、図4は、本実施態様の自動車用空調装置1と従来の自動車用空調装置のFOOTモード時の空気通路3における騒音レベルと周波数の関係を示している。図3から明らかなように、本実施態様の自動車用空調装置1においては、3kHz〜20kHzの範囲において騒音レベルが低下し高周波騒音が抑制されていることが分かる。また、図4に示す3kHz〜20kHzの周波数区間におけるオーバーオールレベルの周波数を示すグラフにおいては、3kHz〜20kHzの高周波騒音が約6dB(A)低減されている。なお、渦流調整手段10を上記のような凸部11で形成すると、板状ドア4の全開時において通気抵抗が上昇するおそれもあるが、本発明者による実験により、渦流調整手段10を形成する凸部11の高さh1を3mm以上、5mm以下に設定し、FOOTモード時における空気通路の側縁8から凸部11の側縁8側の端部までの距離d1を1mm以上、3mm以下に設定すれば、ドア4の全開時における通気抵抗の増加を防止しつつ、FOOTモード時における高周波騒音を効果的に低減できることが見出されている。
【0035】
図5は、本発明の第2実施態様に係る自動車用空調装置を示している。なお、上記第1実施態様と同一の部材には同一の番号を付し説明を省略することとする。図5において、15は板状ドアを示している。板状ドア15は、図6に示すように揺動軸16とドア本体17とを有しており、ドア本体17の表面はパッキン18により覆われている。そして、板状ドア15は揺動軸16が正逆回転し、板状ドア15の一方の面15aが空気通路3内に形成された側縁8に当接、離反することにより空気通路3を通過する空気量が調節されるようになっている。
【0036】
板状ドア15の一方の面15aの端部には、板状ドア15が空気通路3を少量開いた際に形成される隙間9を通過する空気流に伴い発生する渦流を制御可能な渦流制御手段19が設けられている。渦流制御手段19は、一方の面15aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びる凸部20からなっている。凸部20は、一方の面15a上において空気流れ方向下流側に向けて部分的に延びている。凸部20は、ドア本体17に一体に形成されている。また、凸部20の先端面20aは、空気流れ方向に向かって凸部20の高さが減少する傾斜面に形成されている。
【0037】
本実施態様においても、渦流制御手段19が設けられているので、空気流が隙間9を通過する際に発生した微小な渦流を図5に示すように、徐々に大きな渦流に成長させることができる。したがって、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができ、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減できる。また、本実施態様においては、凸部20の先端面20aは、空気流れ方向に向かって凸部20の高さが減少する傾斜面に形成されているので、渦流の成長を効果的に促進することができる。また、渦流制御手段19を形成する凸部20は、ドア本体17に一体に形成されているので、該ドア本体17を成形する際に同時に成形できる。したがって、製造工数および部品点数の増加を防止することができ、コストアップを抑制することができる。
【0038】
図7は、本発明の第3実施態様に係る自動車用空調装置を示している。図9において、21は板状ドアを示している。板状ドア21は、図8に示すように揺動軸22とドア本体23とを有しており。ドア本体23の表面はパッキン24により覆われている。そして、板状ドア23は揺動軸22が正逆回転し、板状ドア21の一方の面21aが空気通路3内に形成された側縁8に当接、離反することにより空気通路3を通過する空気量が調節されるようになっている。
【0039】
板状ドア21の一方の面21aの端部には、板状ドア21が空気通路3を少量開いた際に形成される隙間9を通過する空気流に伴い発生する渦流を制御可能な渦流制御手段25が設けられている。渦流制御手段25は、一方の面21aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びる凸部26、27からなっている。凸部26、27は、ドア本体23に一体に形成されている。凸部26、27は、空気流れ方向に配列されており、空気流れ方向下流側に配置される凸部27は、上流側に配置される凸部26よりも高さが高くなるように形成されている。凸部26、27は、一方の面15a上において空気流れ方向下流側に向けて部分的に延びている。凸部26、27は、ドア本体23に一体に形成されている。また、凸部26、27の先端面26a、27aは、空気流れ方向に向かって高さが減少する傾斜面に形成されている。
【0040】
本実施態様においても、渦流制御手段25が設けられているので、空気流が隙間9を通過する際に発生した微小な渦流を図7に示すように、徐々に大きな渦流に成長させることができる。したがって、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができ、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減できる。また、本実施態様においては、凸部26、27は空気流れ方向に配列され、また、空気流れ方向下流側に配置される凸部27は、上流側に配置される凸部26よりも高さが高くなるように形成されている。さらに、凸部26、27の先端面26a、27aは、空気流れ方向に向かって高さが減少する傾斜面に形成されているので、渦流の成長を効果的に促進することができる。また、渦流制御手段25を形成する凸部26、27は、ドア本体23に一体に形成されているので、該ドア本体23を成形する際に同時に成形できる。したがって、製造工数および部品点数の増加を防止することができ、コストアップを抑制することができる。
【0041】
なお、渦流制御手段25を形成する空気流れ方向下流側に配置される凸部27は、たとえば、図9に示すように横断面波形形状に形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る車両用空調装置は、車両一般に広く適用可能であるが、とくに自動車用空調装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施態様に係る自動車用空調装置の部分断面図である。
【図2】図1の自動車用空調装置の板状ドアの斜視図である。
【図3】図1の自動車用空調装置および従来の空調装置における、周波数と騒音レベルとの関係を示す関係図である。
【図4】図1の自動車用空調装置および従来の自動車用空調装置のパーシャルOA値(3kHz〜20kHz区間OA値)の比較図である。
【図5】本発明の第2実施態様に係る自動車用空調装置の部分断面図である。
【図6】図5の自動車用空調装置の板状ドアの斜視図である。
【図7】本発明の第3実施態様に係る自動車用空調装置の部分断面図である。
【図8】図7の自動車用空調装置の板状ドアの斜視図である。
【図9】図8の板状ドアとは別の態様の板状ドアの斜視図である。
【図10】従来の車両用空調装置としての自動車用空調装置の部分断面図である。
【図11】図10のA部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用空調装置としての自動車用空調装置
2 ケーシング
3 空気通路
4、15、21 板状ドア
4a、15a、21a 一方の面
4b 反対側の面
5、16、22 揺動軸
6、17、23 ドア本体
7、18、24 パッキン
8 空気通路の側縁
9 隙間
10、19、25 渦流制御手段
11、20、26、27 凸部
12 突設部
13 ガイド部
14 肉盗み部
20a、26a、27a 先端面
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、とくに空気通路を開閉し配風や風量を調節する板状ドアの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングの空気通路を開閉し、配風や風量を調節する揺動式の板状ドアを有する車両用空調装置としては、図10に示すようなものが知られている。図10において、100は車両用空調装置としての自動車用空調装置を示している。自動車用空調装置100のケーシング101には、空気通路としてのDEF(デフロスター)吹き出し口(図示略)に通じる空気通路102が設けられている。空気通路102には、板状ドア103が設けられている。板状ドア103は、揺動軸104とドア本体105と、該ドア本体105の表面に接合されたパッキン106とからなっている。板状ドア103は、揺動軸104を中心にドア本体105が矢印方向に揺動することにより、DEF吹き出し口102の開度が調節され、DEF吹き出し口102からの風量等が調節されるようになっている。
【0003】
上記のような自動車用空調装置においては、たとえば足下に温風を配風するFOOTモードにおいては、フロントガラスの防曇を目的として、図11に示すよう板状ドア103を全閉状態から揺動させ、空気通路102の側縁108と板状ドア103との間に微小の隙間107を形成しフロントガラスに微量の温風を配風する(いわゆる、DEF漏らし)制御が行われることがある(たとえば、特許文献1)。
【0004】
しかし、上記のように僅かな隙間107を介して温風を配風する場合には、図11に示すように微小な渦流が発生するおそれがある。このような渦流が発生すると、3kHzから20kHzの高周波騒音が発生するおそれがある。FOOTモードにおいては、足下へ暖房に足る十分な風量を与えるための風と音は機能的関係にあり、風量の増大に伴って音が増大したとしても搭乗者に違和感を与えることは稀であるが、フロントガラスの曇りを防止するDEF漏らしに関しては、風量が微量であるため、風と音の関係が必ずしも機能的な関係にはなく搭乗者に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
上記のような高周波騒音を低減するために、たとえば板状ドア103の開度を大きくし渦流の発生を防止する方法も考えられるが、このような方法においてはDEF吹き出し口102からの温風の吹き出し量が増加するため搭乗者の快適性が損なわれるおそれがある。また、板状ドア103の開度を最小限に抑え隙間107をより小さくすれば、空気流の速度低下により渦流の発生は抑制されるので、高周波騒音も同時に低減されるが、このような方法においては、DEF吹き出し口からの温風の吹き出し量が不足しフロントガラスの防曇効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【特許文献1】実開平5−76815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、とくにFOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減可能な車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両車用空調装置は、空気通路を備えたケーシングと、揺動によって前記空気通路内に形成された側縁に一方の面を当接、離反させることにより前記空気通路を開閉可能な板状ドアとを有する車両用空調装置において、前記板状ドアの前記一方の面の端部に、前記板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段を設けたことを特徴とするものからなる。このような構成においては、板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段が設けられており、たとえば発生した微小な渦流を徐々に成長させ、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができる。したがって、FOOTモードにおいては、搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0008】
上記渦流制御手段は、板状ドアの一方の面の空気流れ方向に空気通路の側縁よりも下流側の位置にて、前記側縁に沿って延びる凸部から構成することができる。また、上記凸部は、さらに空気流れ方向下流側に向けて前記一方の面上において部分的に延びていることが好ましい。このように凸部を設ければ、簡素な構造において渦流制御手段を構成することができる。
【0009】
上記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなる場合においては、上記凸部は実質的にパッキンから形成することが可能である。このような構成においては、既存の板状ドアの構成部品により凸部を形成することができるので、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。なお後述のように、凸部はドア本体に一体に形成することも可能である。
【0010】
上記凸部を形成するパッキンは、ドア本体表面に形成された突設部に接合されることが好ましい。このような構成によれば、その他の部分(つまり、凸部形成部以外の部分)と同一の厚みのパッキンを使用し凸部を形成することができるので、部品点数の増加を防止でき、コストアップを防止することができる。
【0011】
上記突設部には、パッキン位置決め用のガイド部が設けられることが好ましい。このようなガイド部を設ければ、パッキンの貼着作業を容易化することができるので、コストアップを防止することができる。また、このようなガイド部は、たとえば突設部の先端面に形成した、段差や溝等から簡単に形成できる。
【0012】
また、上記突設部が設けられる一方の面とは反対側の面の突設部に対応する位置には、肉盗み部が設けられることが好ましい。このような構成によれば、突設部設置による板状ドアの重量増加を防止できる。また、肉盗み部の分だけ材料を低減でき、コストアップを防止できる。また、肉盗み部を設ければ、突設部のみが他の部分に比べて極端に肉厚化する不具合を防止できるので、ドア本体成形時のひけ等の不良の発生を防止することも可能である。
【0013】
上記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなる場合においては、凸部をドア本体に一体に形成することができる。このような構成においては、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。
【0014】
上記凸部の先端面は、空気流れ方向下流側に向かって凸部の高さが減少する傾斜面に形成されることが好ましい。このような構成によれば、微小な渦流の成長が促進されるので、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0015】
上記凸部は、空気流れ方向に向かって複数配列することも可能である。また、このように複数配列された凸部は、空気流れ方向下流側に配列されるもの程高さが大きく形成されることが好ましい。このような構成によれば、微小な渦流の成長が一層促進されるので、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音を確実にしかも効果的に低減することができる。
【0016】
また、上記複数の凸部のうち空気流れ方向最下流側に配置された凸部は、横断面形状波形に形成することも可能である。
【0017】
上記空気通路は、とくに限定されるものではないが、車両用空調装置のDEF吹き出し口に通じる空気通路であることが好ましい。このような構成によれば、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
上記のような本発明に係る車両用空調装置によれば、板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段が設けられているので、たとえば発生した微小な渦流を徐々に成長させ、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音を効果的に低減することができる。また、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0019】
また、上記渦流制御手段は、板状ドアの一方の面の空気流れ方向に空気通路の側縁よりも下流側の位置にて、前記側縁に沿って延びる凸部から構成することができるので、簡素な構造において渦流制御手段を構成することができる。
【0020】
上記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなる場合においては、上記凸部は実質的にパッキンから形成することが可能であり、また、ドア本体に一体に形成することも可能である。このような構成においては、既存の板状ドアの構成部品により凸部を形成することができるので、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。
【0021】
上記凸部がパッキンにより形成される場合において、パッキンが接合される突設部を設ければ、その他の部分(つまり、凸部形成部以外の部分)と同一の厚みのパッキンを使用し凸部を形成することができるので、部品点数の増加を防止でき、コストアップを防止することができる。さらに、突設部にパッキン位置決め用のガイド部を設ければ、パッキンの貼着作業を容易化することができる。
【0022】
また、上記突設部が設けられる一方の面とは反対側の面の突設部に対応する位置に肉盗み部を設ければ、板状ドアの重量増加を防止できる。また、肉盗み部の分だけ材料を低減でき、コストアップを防止できる。また、肉盗み部を設ければ、突設部のみが他の部分に比べて極端に肉厚化する不具合を防止できるので、ドア本体成形時のひけ等の不良の発生を防止することも可能である。
【0023】
上記凸部の先端面を傾斜面に形成し、さらに、凸部を空気流れ方向に向かって複数配列し、複数配列された凸部を空気流れ方向下流側に配列されるもの程高さが大きくなるように形成すれば、微小な渦流の成長が一層促進されるので、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動させ、高周波騒音をより効果的に低減することができる。
【0024】
車両用空調装置のDEF吹き出し口に通じる空気通路を開閉する板状ドアに渦流制御手段を設ければ、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明に係る車両用空調装置の望ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施態様に係る車両用空調装置を示している。図において、1は車両用空調装置としての自動車用空調装置を示している。自動車用空調装置1は、ケーシング2を有しており、ケーシング2内には空気通路3が形成されている。本実施態様においては、空気通路3はDEF吹き出し口(図示略)へと通じている。空気通路3は、揺動式の板状ドア4により開閉されるようになっている。
【0026】
板状ドア4は、図2に示すように揺動軸5とドア本体6とを有しており、ドア本体6の表面はパッキン7により覆われている。そして、板状ドア4は揺動軸5が正逆回転し、板状ドア4の一方の面4aが空気通路3内に形成された側縁8に当接、離反することにより空気通路3を通過する空気量が調節されるようになっている。
【0027】
板状ドア4の一方の面4aの端部には、板状ドア4が空気通路3を少量開いた際に形成される隙間9を通過する空気流に伴い発生する渦流を制御可能な渦流制御手段10が設けられている。制御手段10は、一方の面4aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びる凸部11からなっている。凸部11は、一方の面4a上において空気流れ方向下流側に向けて部分的に延びている。
【0028】
凸部11は、ドア本体5の表面に突設された突設部12に接合されており、突設部12にはパッキン7の位置決め用のガイド部13が設けられている。ガイド部13は、突設部12の先端面に形成された段差により形成されている。本実施態様においては、突設部12にパッキン7が接合され、凸部11は実質的にパッキン7から形成されるようになっている。
【0029】
突設部12が設けられる一方の面4aとは反対側の面4bの突設部12に対応する位置には、肉盗み部14が設けられている。このような構成によれば、突設部設置による板状ドア4の重量増加を防止できる。また、肉盗み部14の分だけ材料を低減でき、コストアップを防止できる。また、肉盗み部14を設ければ、ドア本体5において突設部12のみが他の部分に比べて極端に肉厚化する不具合を防止できるので、ドア本体成形時のひけ等の不良の発生を防止することも可能である。
【0030】
本実施態様においては、板状ドア4が空気通路3を少量開いた際に、その隙間9を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段10が設けられている。また、渦流制御手段10は、凸部11から形成され、該凸部11は、一方の面4aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びているので、空気流が隙間9を通過する際に発生した微小な渦流は図1に示すように、徐々に大きな渦流に成長する。したがって、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができる。
【0031】
また、本実施態様において、渦流制御手段10は、板状ドア4の一方の面4aの空気流れ方向に空気通路3の側縁8よりも下流側の位置にて、前記側縁8に沿って延びる凸部11から構成されているので、簡素な構造において渦流制御手段10を構成することができ、コストアップを防止することができる。
【0032】
凸部11は実質的にパッキン7から形成されており、該パッキン7は、凸部11以外の一方の面4aに接合されたパッキン7と同一である。また、板状ドア4の反対側の面4bに接合されるパッキン7とも同一である。したがって、部品点数、製造工数の増加を抑制でき、コストアップを防止することができる。
【0033】
また、凸部11は、ガイド部13を有する突設部12に接合されているので、パッキン7の接合作業を容易化することができる。
【0034】
図3、図4は、本実施態様の自動車用空調装置1と従来の自動車用空調装置のFOOTモード時の空気通路3における騒音レベルと周波数の関係を示している。図3から明らかなように、本実施態様の自動車用空調装置1においては、3kHz〜20kHzの範囲において騒音レベルが低下し高周波騒音が抑制されていることが分かる。また、図4に示す3kHz〜20kHzの周波数区間におけるオーバーオールレベルの周波数を示すグラフにおいては、3kHz〜20kHzの高周波騒音が約6dB(A)低減されている。なお、渦流調整手段10を上記のような凸部11で形成すると、板状ドア4の全開時において通気抵抗が上昇するおそれもあるが、本発明者による実験により、渦流調整手段10を形成する凸部11の高さh1を3mm以上、5mm以下に設定し、FOOTモード時における空気通路の側縁8から凸部11の側縁8側の端部までの距離d1を1mm以上、3mm以下に設定すれば、ドア4の全開時における通気抵抗の増加を防止しつつ、FOOTモード時における高周波騒音を効果的に低減できることが見出されている。
【0035】
図5は、本発明の第2実施態様に係る自動車用空調装置を示している。なお、上記第1実施態様と同一の部材には同一の番号を付し説明を省略することとする。図5において、15は板状ドアを示している。板状ドア15は、図6に示すように揺動軸16とドア本体17とを有しており、ドア本体17の表面はパッキン18により覆われている。そして、板状ドア15は揺動軸16が正逆回転し、板状ドア15の一方の面15aが空気通路3内に形成された側縁8に当接、離反することにより空気通路3を通過する空気量が調節されるようになっている。
【0036】
板状ドア15の一方の面15aの端部には、板状ドア15が空気通路3を少量開いた際に形成される隙間9を通過する空気流に伴い発生する渦流を制御可能な渦流制御手段19が設けられている。渦流制御手段19は、一方の面15aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びる凸部20からなっている。凸部20は、一方の面15a上において空気流れ方向下流側に向けて部分的に延びている。凸部20は、ドア本体17に一体に形成されている。また、凸部20の先端面20aは、空気流れ方向に向かって凸部20の高さが減少する傾斜面に形成されている。
【0037】
本実施態様においても、渦流制御手段19が設けられているので、空気流が隙間9を通過する際に発生した微小な渦流を図5に示すように、徐々に大きな渦流に成長させることができる。したがって、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができ、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減できる。また、本実施態様においては、凸部20の先端面20aは、空気流れ方向に向かって凸部20の高さが減少する傾斜面に形成されているので、渦流の成長を効果的に促進することができる。また、渦流制御手段19を形成する凸部20は、ドア本体17に一体に形成されているので、該ドア本体17を成形する際に同時に成形できる。したがって、製造工数および部品点数の増加を防止することができ、コストアップを抑制することができる。
【0038】
図7は、本発明の第3実施態様に係る自動車用空調装置を示している。図9において、21は板状ドアを示している。板状ドア21は、図8に示すように揺動軸22とドア本体23とを有しており。ドア本体23の表面はパッキン24により覆われている。そして、板状ドア23は揺動軸22が正逆回転し、板状ドア21の一方の面21aが空気通路3内に形成された側縁8に当接、離反することにより空気通路3を通過する空気量が調節されるようになっている。
【0039】
板状ドア21の一方の面21aの端部には、板状ドア21が空気通路3を少量開いた際に形成される隙間9を通過する空気流に伴い発生する渦流を制御可能な渦流制御手段25が設けられている。渦流制御手段25は、一方の面21aの空気流れ方向において側縁8よりも下流側の位置において、該側縁8に沿って延びる凸部26、27からなっている。凸部26、27は、ドア本体23に一体に形成されている。凸部26、27は、空気流れ方向に配列されており、空気流れ方向下流側に配置される凸部27は、上流側に配置される凸部26よりも高さが高くなるように形成されている。凸部26、27は、一方の面15a上において空気流れ方向下流側に向けて部分的に延びている。凸部26、27は、ドア本体23に一体に形成されている。また、凸部26、27の先端面26a、27aは、空気流れ方向に向かって高さが減少する傾斜面に形成されている。
【0040】
本実施態様においても、渦流制御手段25が設けられているので、空気流が隙間9を通過する際に発生した微小な渦流を図7に示すように、徐々に大きな渦流に成長させることができる。したがって、渦流に伴う騒音を高周波側から低周波側に移動することができるので、高周波騒音を効果的に低減することができ、FOOTモードにおける搭乗者の快適性やフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、渦流を制御することにより高周波騒音を効果的に低減できる。また、本実施態様においては、凸部26、27は空気流れ方向に配列され、また、空気流れ方向下流側に配置される凸部27は、上流側に配置される凸部26よりも高さが高くなるように形成されている。さらに、凸部26、27の先端面26a、27aは、空気流れ方向に向かって高さが減少する傾斜面に形成されているので、渦流の成長を効果的に促進することができる。また、渦流制御手段25を形成する凸部26、27は、ドア本体23に一体に形成されているので、該ドア本体23を成形する際に同時に成形できる。したがって、製造工数および部品点数の増加を防止することができ、コストアップを抑制することができる。
【0041】
なお、渦流制御手段25を形成する空気流れ方向下流側に配置される凸部27は、たとえば、図9に示すように横断面波形形状に形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る車両用空調装置は、車両一般に広く適用可能であるが、とくに自動車用空調装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施態様に係る自動車用空調装置の部分断面図である。
【図2】図1の自動車用空調装置の板状ドアの斜視図である。
【図3】図1の自動車用空調装置および従来の空調装置における、周波数と騒音レベルとの関係を示す関係図である。
【図4】図1の自動車用空調装置および従来の自動車用空調装置のパーシャルOA値(3kHz〜20kHz区間OA値)の比較図である。
【図5】本発明の第2実施態様に係る自動車用空調装置の部分断面図である。
【図6】図5の自動車用空調装置の板状ドアの斜視図である。
【図7】本発明の第3実施態様に係る自動車用空調装置の部分断面図である。
【図8】図7の自動車用空調装置の板状ドアの斜視図である。
【図9】図8の板状ドアとは別の態様の板状ドアの斜視図である。
【図10】従来の車両用空調装置としての自動車用空調装置の部分断面図である。
【図11】図10のA部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用空調装置としての自動車用空調装置
2 ケーシング
3 空気通路
4、15、21 板状ドア
4a、15a、21a 一方の面
4b 反対側の面
5、16、22 揺動軸
6、17、23 ドア本体
7、18、24 パッキン
8 空気通路の側縁
9 隙間
10、19、25 渦流制御手段
11、20、26、27 凸部
12 突設部
13 ガイド部
14 肉盗み部
20a、26a、27a 先端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を備えたケーシングと、揺動によって前記空気通路内に形成された側縁に一方の面を当接、離反させることにより前記空気通路を開閉可能な板状ドアとを有する車両用空調装置において、前記板状ドアの前記一方の面の端部に、前記板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記渦流制御手段が、前記一方の面の空気流れ方向に前記側縁よりも下流側の位置にて、前記側縁に沿って延びる凸部からなる、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記凸部が、さらに空気流れ方向下流側に向けて前記一方の面上において部分的に延びている、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなり、前記凸部が実質的にパッキンにより形成されている、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記凸部を形成するパッキンが、ドア本体表面に形成された突設部に接合されている、請求項4の車両用空調装置。
【請求項6】
前記突設部にパッキン位置決め用のガイド部が設けられている、請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記板状ドアの前記一方の面とは反対側の面の前記突設部に対応する位置に、肉盗み部が設けられている、請求項5または6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなり、前記凸部がドア本体に一体に形成されている、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記凸部の先端面が、空気流れ方向下流側に向かって凸部の高さが減少する傾斜面に形成されている、請求項2〜8のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記凸部が空気流れ方向に向かって複数配列されている、請求項2〜9のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記複数の凸部は、空気流れ方向下流側程高さが大きい、請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記複数の凸部のうち空気流れ方向最下流側に配置された凸部が、横断面形状波形に形成されている、請求項10または11に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記空気通路が車両用空調装置のDEF吹き出し口へと通じるものからなる、請求項1〜12のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項1】
空気通路を備えたケーシングと、揺動によって前記空気通路内に形成された側縁に一方の面を当接、離反させることにより前記空気通路を開閉可能な板状ドアとを有する車両用空調装置において、前記板状ドアの前記一方の面の端部に、前記板状ドアが空気通路を少量開いた際に、その隙間を通過する空気流に伴って発生する渦流を制御する渦流制御手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記渦流制御手段が、前記一方の面の空気流れ方向に前記側縁よりも下流側の位置にて、前記側縁に沿って延びる凸部からなる、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記凸部が、さらに空気流れ方向下流側に向けて前記一方の面上において部分的に延びている、請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなり、前記凸部が実質的にパッキンにより形成されている、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記凸部を形成するパッキンが、ドア本体表面に形成された突設部に接合されている、請求項4の車両用空調装置。
【請求項6】
前記突設部にパッキン位置決め用のガイド部が設けられている、請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記板状ドアの前記一方の面とは反対側の面の前記突設部に対応する位置に、肉盗み部が設けられている、請求項5または6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記板状ドアが、揺動軸とドア本体と、該ドア本体の表面に設けられたパッキンとからなり、前記凸部がドア本体に一体に形成されている、請求項2または3に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記凸部の先端面が、空気流れ方向下流側に向かって凸部の高さが減少する傾斜面に形成されている、請求項2〜8のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記凸部が空気流れ方向に向かって複数配列されている、請求項2〜9のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記複数の凸部は、空気流れ方向下流側程高さが大きい、請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記複数の凸部のうち空気流れ方向最下流側に配置された凸部が、横断面形状波形に形成されている、請求項10または11に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記空気通路が車両用空調装置のDEF吹き出し口へと通じるものからなる、請求項1〜12のいずれかに記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−155735(P2008−155735A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345674(P2006−345674)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】
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