説明

車両用空調装置

【課題】能力の異なる複数の車両用空調装置に対して、部品の共用化率を高め、量産効果によるコスト低減や金型費、開発費の低減を図ることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ユニットケース10内の空気流路11にエバポレータ12,12A、エアミックスダンパ15,15A、ヒータコア16,16A等が配設されている車両用空調装置1A,1Bにおいて、ユニットケース10は、ロアケース30と、アッパケース40とを備え、アッパケース40は、アッパケース(A)40Aと、該アッパケース(A)40Aに対して着脱可能とされているアッパケース(B1,B2)40B,40Cとに左右に2分割され、ロアケース30は、ロアケース(A)30Aと、該ロアケース(A)30Aに対して着脱可能とされているロアケース(B1,B2)30B,30Cとに左右に2分割されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、能力の異なる複数の車両用空調装置間において、ユニットケースの一部成形部品を共用化することができる車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される車両用空調装置(HVACユニット;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)は、大きさの異なる複数の車種に対して、車種毎に個別に設計されるのが通常である。一般にHVACユニットは、ユニットケース内に形成される空気流路に、上流側からエバポレータ、エアミックスダンパ、ヒータコアが順次配設され、これらで温調された空気をその下流側に形成されているデフ吹出し流路、フェース吹出し流路およびフット吹出し流路のいずれかから吹出しダンパを介して選択的に車室内に吹出すように構成されている。
【0003】
また、HVACユニットは、車の大きさにより能力を変える必要がある。従って、例えば軽自動車と小型車(リッターカー)との場合でも、それぞれ異なる大きさのエバポレータ、ヒータコア、アミックスダンパ等が用いられる。このため、エバポレータやヒータコアの大きさに合せたダンパ類やユニットケースが必要となり、その結果、例えば特許文献1に示されているように、アッパケースとロアケースとに分割され、更にアッパケースが左右に2分割されているような分割構造のユニットケースであっても、その部品が共用化されることはなく、車種毎に個別に設計され、別々に製造されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−63341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、HVACユニットは、能力の異なる複数の車種毎に別個に設計、製造されており、異なる複数の車種間で共通部品が用いられることは少なく、部品の共用化率が低かった。このため、部品の共用化による量産効果、コスト低減効果を期待することはできなかった。また、車種毎にHVACユニットの開発が必要となることから、膨大な開発費が費やされていた。更に、成形部品等については、個別に金型が必要となるため、金型費が膨大となる等、多くの問題点が内在されており、その解決が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、能力の異なる複数の車両用空調装置に対して、部品の共用化率を高め、量産効果によるコスト低減や金型費、開発費の低減を図ることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明の車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる車両用空調装置は、ユニットケース内に形成された空気流路の上流部位にエバポレータが設置され、その下流に温調用のエアミックスダンパにより調整された流量割合の空気流が流通されるバイパス流路とヒータコアが配設された加熱流路とが形成されるとともに、前記バイパス流路および前記加熱流路を経た空気流が前記エアミックスダンパの下流域で混合された後、デフ吹出し流路、フェース吹出し流路、およびフット吹出し流路のいずれかから選択的に車室内に吹出されるように構成されている車両用空気調和装置において、前記ユニットケースは、前記エバポレータが設置されるとともに、ドレン排出部が設けられているロアケースと、前記エバポレータの上部を覆うとともに、前記ヒータコアおよび前記エアミックスダンパが設置され、その下流側に前記デフ吹出し流路、前記フェース吹出し流路および前記フット吹出し流路が設けられているアッパケースとを備え、前記アッパケースは、アッパケース(A)と、該アッパケース(A)に対して着脱可能とされているアッパケース(B1,B2)とに左右に2分割され、前記ロアケースは、ロアケース(A)と、該ロアケース(A)に対して着脱可能とされているロアケース(B1,B2)とに左右に2分割されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ユニットケースが、ロアケースとアッパケースとを備え、アッパケースが、アッパケース(A)と、該アッパケース(A)に対して着脱可能とされているアッパケース(B1,B2)とに左右に2分割され、ロアケースが、ロアケース(A)と、該ロアケース(A)に対して着脱可能とされているロアケース(B1,B2)とに左右に2分割されているため、左右方向幅寸法が異なるエバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスダンパ等を用いて能力が異なる複数の車両用空調装置(HVACユニット;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)を製造する際、それに対応した左右方向幅寸法を有するアッパケース(B1,B2)およびロアケース(B1,B2)を、アッパケース(A)およびロアケース(A)に組み付けることにより、少なくともアッパケース(A)およびロアケース(A)を共用化して能力の異なる複数のHVACを製造することができる。従って、ユニットケース等の樹脂成形部品の共用化率を高め、量産効果によりコスト低減を図ることができるとともに、金型費や開発費を大幅に低減することができる。
【0009】
また、本発明の車両用空調装置は、上記の車両用空調装置において、前記アッパケース(B1,B2)および前記ロアケース(B1,B2)は、左右方向の幅寸法が小さい小能力空調装置用の前記アッパケース(B1)および前記ロアケース(B1)と、左右方向の幅寸法が大きい大能力空調装置用の前記アッパケース(B2)および前記ロアケース(B2)とが前記アッパケース(A)および前記ロアケース(A)に対してそれぞれ着脱可能とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、左右方向の幅寸法が小さい小能力空調装置用のアッパケース(B1)およびロアケース(B1)と、左右方向の幅寸法が大きい大能力空調装置用のアッパケース(B2)およびロアケース(B2)とがアッパケース(A)およびロアケース(A)に対して着脱可能とされているため、アッパケース(A)およびロアケース(A)に対して左右方向幅寸法が小さいアッパケース(B1)およびロアケース(B1)を組み付け、これに左右方向幅寸法が小さいエバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスダンパ等を組み込むことによって、能力の小さいHVACを製造することができ、また、左右方向の幅寸法が大きいアッパケース(B2)およびロアケース(B2)を組み付け、これに左右方向幅寸法が大きいエバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスダンパ等を組み込むことによって、能力の大きいHVACを製造することができる。従って、アッパケース(A)およびロアケース(A)を共用化し、アッパケース(B1,B2)およびロアケース(B1,B2)と、エバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスダンパ等とを組み換えることによって、能力の異なる複数のHVACを容易に製造することができる。
【0011】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上記の車両用空調装置において、前記アッパケース(B1)および(B2)は、その左右方向幅寸法をそれぞれL1およびL2とし、前記アッパケース(A)の左右方向幅寸法をLとしたとき、L1<L<L2とされ、前記アッパケース(A)に対して前記アッパケース(B1)および(B2)のいずれが組み付けられた場合も、左右方向のセンターからオフセットされた位置で2分割されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、アッパケース(B1)および(B2)の左右方向幅寸法をそれぞれL1およびL2とし、アッパケース(A)の左右方向幅寸法をLとしたとき、L1<L<L2とされ、アッパケース(A)に対してアッパケース(B1)および(B2)のいずれが組み付けられる場合も、左右方向のセンターからオフセットされた位置で2分割されることになるため、アッパケース(A)およびアッパケース(B1),(B2)の3ケースのいずれに対しても、成形時の抜き勾配を適正範囲に設定することができる。一般にケースを左右に2分割する場合、左右方向幅寸法のセンター位置で分割し、各ケースに対して同一の抜き勾配を設け、空気流路を左右対称に形成するのが通常である。しかし、アッパケース(A)に組み付けられるアッパケース(B1),(B2)の左右方向幅寸法がL1<L2とされているため、アッパケース(B1)または(B2)が組み付けられる一方のケースのセンターで分割すると、他方のケースのアッパケース(A)とアッパケース(B1)または(B2)との左右方向幅寸法比がアンバランスとなり、ケースの抜き勾配に大きな違いが発生して空気流路が左右非対称となってしまう。しかるに、本発明では、このようなアンバランスを是正し、各ケースに対して適正範囲の抜き勾配を設定することが可能となり、空気流路を略左右対称に形成することができる。従って、能力の異なる複数のHVACのいずれにおいてもHVAC中心に対して左右均等でバランスの取れた空調を行うことができる。
【0013】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記ロアケース(A)には、前記ドレン排出部が一体成形されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ロアケース(A)にドレン排出部が一体成形されているため、能力の異なる複数のHVACのいずれにおいても共用化されるロアケース(A)側にドレン排出部が設けられることになる。従って、ドレン排出部がロアケース(A)および(B1,B2)間に跨って設けられたり、あるいは着脱可能とされたロアケース(B1,B2)側に設けられたりすることによるドレン排出機能の低下や不安定化を解消し、複数のHVACのいずれにおいても確実なドレン排出機能を確保することができる。
【0015】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記ロアケースは、共用化される部分の左右方向幅寸法が最大となるように、前記ロアケース(A)と前記ロアケース(B1)との左右方向幅寸法の関係が、(A)>>(B1)とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、左右に2分割されるロアケースで、共用化される部分の左右方向幅寸法が最大となるように、ロアケース(A)とロアケース(B1)との左右方向幅寸法の関係が、(A)>>(B1)とされているため、左右に2分割されるロアケースを出来るだけ側面に近い位置で分割することにより、能力の異なる複数のHVACにて共用化される側のロアケース(A)の左右方向幅寸法を最大化することができる。これによって、コスト低減効果を得ることができる。
【0017】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記ロアケース(B2)の底面は、前記ロアケース(A)に向って漸次低くなるように傾斜面とされていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ロアケース(B2)の底面が、ロアケース(A)に向って漸次低くなるように傾斜面とされているため、ロアケース(B2)の左右方向幅寸法が長くなったとしても、傾斜面とされている底面に沿ってエバポレータから流下されたドレン水を速やかにロアケース(A)側に導き、ドレン排出部から排水することができる。従って、ロアケース(B2)内にドレン水が滞留することがなく、ドレン水が車室内に飛び出す要因を確実に解消することができる。
【0019】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記アッパケース(A)には、フェース吹出し流路の側部にサイドフェース吹出し流路を区画する仕切り部材を設置する仕切り部材設置部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、アッパケース(A)に、フェース吹出し流路の側部にサイドフェース吹出し流路を区画する仕切り部材を設置する仕切り部材設置部が設けられているため、サイドフェース吹出し流路が必要な車両用のHVACに対しては、仕切り部材設置部に仕切り部材を設置することにより対応でき、サイドフェース吹出し流路を必要としない車両用のHVACに対しては、仕切り部材無しのまま対応することができる。従って、サイドフェース吹出し流路の有無にかかわらず、アッパケース(A)に対する追加部品を最小限に止めて共用化することができる。
【0021】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上記の車両用空調装置において、前記仕切り部材設置部は、前記仕切り部材を左右方向の複数箇所に位置を変えて設置できるように構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、仕切り部材設置部が、仕切り部材を左右方向の複数箇所に位置を変えて設置できるように構成されているため、能力の異なる複数のHVACに対して、仕切り部材を左右方向に位置を変えて設置することができる。従って、仕切り部材の設置位置が異なる複数のHVACに対しても、それぞれ適正位置に仕切り部材を設置することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記アッパケース(B1,B2)には、フェース吹出し流路の側部にサイドフェース吹出し流路を区画する仕切り部材が一体に成形されていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、アッパケース(B1,B2)に、フェース吹出し流路の側部にサイドフェース吹出し流路を区画する仕切り部材が一体に成形されているため、サイドフェース吹出し流路が必要な車両用のHVACに対しては、仕切り部材が一体に成形されたアッパケース(B1,B2)を使用することができる。従って、アッパケース(B1,B2)に対して仕切り部材を追加設置する必要がなく、アッパケース(B1,B2)を安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、左右方向幅寸法が異なるエバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスダンパ等を用いて能力が異なる複数の車両用空調装置(HVACユニット)を製造する際、それに対応した左右方向幅寸法を有するアッパケース(B1,B2)およびロアケース(B1,B2)を、アッパケース(A)およびロアケース(A)に組み付けることにより、少なくともアッパケース(A)およびロアケース(A)を共用化して能力の異なる複数のHVACを製造することができる。このため、ユニットケース等の樹脂成形部品の共用化率を高め、量産効果によりコスト低減を図ることができるとともに、金型費や開発費を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る能力の小さい車両用空調装置を車両前方側から見た側面図である。
【図2】図1に示す車両用空調装置の空気流方向に沿った略中央位置での縦断面図である。
【図3】図1に示す車両用空調装置を車室内側から見た分解斜視図である。
【図4】図1に示す車両用空調装置におけるロアケースの左右方向に沿った縦断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る能力の大きい車両用空調装置の一部を車室内側から見た分解斜視図である。
【図6】図5に示す車両用空調装置におけるロアケースの左右方向に沿った縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る能力の大きい車両用空調装置を車室内側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図6を用いて説明する。
能力の小さい、例えば軽自動車用の車両用空調装置(HVACユニット;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)1Aは、一側にブロアユニット2が設けられている。ブロアユニット2は、内気と外気とが切替え導入可能な内外気切替えボックス3と、羽根車4およびその駆動モータ5が設置されているファンケーシング6とを備えており、HVACユニット1Aに対して右ハンドル車の場合には、車両前方側から見ての右側(助手席側)に配置され、左ハンドル車の場合には、車両前方側から見て左側(助手席側)に配置されている。
【0028】
HVACユニット1Aは、後述の如く分割構造のユニットケース10を備え、該ユニットケース10内にブロアユニット2から送られてくる空気流を前後方向に変換し、下流側へと流通させる空気流路11が形成されている。空気流路11の上流部位には、図示省略の冷凍サイクルを構成するエバポレータ12が略鉛直に配設されており、その下流側において、空気流路11はバイパス流路13と加熱流路14とに分けられている。バイパス流路13と加熱流路14との分岐部には、エアミックスダンパ15が配設され、バイパス流路13と加熱流路14とに流通される空気流の流量割合が調整可能とされている。加熱流路14には、図示省略のエンジン等からの冷却水が循環されるヒータコア16が略鉛直に配設されている。
【0029】
バイパス流路13と加熱流路14とは、エアミックスダンパ15下流のエアミックス域17で合流され、エアミックス域17の下流側に形成されているデフ吹出し流路18、フェース吹出し流路19およびフット吹出し流路20に連なっている。デフ吹出し流路18とフェース吹出し流路19との間には、デフ/フェースダンパ21が設けられ、また、フット吹出し流路20の入り口には、フットダンパ22が設けられており、これらデフ/フェースダンパ21およびフットダンパ22の開閉によって、空調風の吹出しモードがフェースモード、フットモード、デフモード、デフ/フットモード、バイレベルモード等に選択的に切替え可能とされている。
【0030】
分割構造のユニットケース10は、ロアケース30とアッパケース40とに上下に2分割されている。ロアケース30は、ファンケーシング6と一体成形またはファンケーシング6と一体に結合された構成とされており、上部が開放され、アッパケース40が結合可能とされている。ロアケース30のファンケーシング6側の上部には、アッパケーシング31が組み付けられている。また、ロアケース30には、エバポレータ12が設置されるようになっており、その底面の一部はエバポレータ12から流下するドレン水を集めるために傾斜面32とされ、該傾斜面32の最下位部位にはドレン水を外部に排出するためのドレン排出部33が設けられている。
【0031】
さらに、ロアケース30は、ドレン排出部33が設けられているロアケース(A)30Aと、その端部に対して着脱可能に組み付けられるロアケース(B1)30Bとに左右に2分割されている。この左右に2分割されているロアケース(A)30Aおよびロアケース(B1)30Bは、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bに対して共用化されるロアケース(A)30側の左右方向幅寸法が最大となるように、左右方向幅寸法の関係が、(A)>>(B1)とされている。つまり、ロアケース(B1)30Bは、図3および図4に示されるように、両側面と底面を有するロアケース30の出来るだけ側面に近い位置で左右に分割されるようにしている。
【0032】
ロアケース(A)30Aの分割ラインに沿う端面には、複数個のピン孔34と、連続した溝35が設けられている。このピン孔34および溝35に対してロアケース(B1)30B側に設けられているピン36Aおよび突起37Aが嵌合され、溝35内に嵌装される図示省略のゴムパッキンを介してロアケース(A)30Aとロアケース(B1)30Bとの分割面が水密にシールされるようになっている。また、ロアケース30の空気流の下流側には、ドレン水が下流側へと流出するのを防止する堰部38が形成されている。
【0033】
一方、アッパケース40は、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bに対して共用化されるアッパケース(A)40Aと、その端部に対して着脱可能に組み付けられるアッパケース(B1)40Bとに左右に2分割されている。このアッパケース(A)40Aおよびアッパケース(B1)40Bは、エバポレータ12の上部を覆うようにロアケース30に組み付けられており、両ケース40A,40B間に跨るようにエアミックスダンパ15およびヒータコア16が設置されている。
【0034】
同様に、アッパケース(A)40Aおよびアッパケース(B1)40B間に跨るようにデフ吹出し流路18、フェース吹出し流路19、およびフット吹出し流路20が形成されているとともに、該デフ吹出し流路18とフェース吹出し流路19間に、デフ/フェースダンパ21が設置され、フット吹出し流路20にフットダンパ22が設置されている。ここで、左右に2分割されるアッパケース(A)40Aおよびアッパケース(B1)40Bの左右方向の幅寸法は、アッパケース(A)40Aの左右方向幅寸法をL、アッパケース(B1)40Bの左右方向幅寸法をL1としたとき、L1<Lとされ、共用化されるアッパケース(A)40Aの幅寸法Lの方が大きくされている。従って、両ケース40A,40Bは、左右方向のセンターからオフセットされた位置で2分割されるようになる。
【0035】
また、上記した能力の小さい軽自動車用HVACユニット1Aの構成部品の一部を共用化して能力の大きい、所謂リッターカー用HVACユニット1Bを製造するために、ブロアユニット2については、巻線数が異なる駆動モータ5が用いられる以外、内外気切替えボックス3、羽根車4およびファンケーシング6が共用化されるとともに、分割構造のユニットケース10については、ロアケース(A)30Aおよびアッパケース(A)40Aが共用化されている。
【0036】
加えて、HVACとしての能力を大きくするため、図5に示されるように、HVACユニット1Aに比べて左右方向幅寸法が所定長さだけ長くされたエバポレータ12A、エアミックスダンパ15A、ヒータコア16A、デフ/フェースダンパ21A、フットダンパ22Aが組み込まれるとともに、これらの幅寸法に合せて左右方向幅寸法が大きくされたロアケース(B2)30Cおよびアッパケース(B2)40Cが組み付けられるように構成されている。
【0037】
上記ロアケース(B2)30Cには、ロアケース(A)30Aの分割ラインに沿う端面に設けられている複数個のピン孔34および溝35に対して嵌合されるピン36Bおよび突起37Bが設けられ、溝35内に嵌装される図示省略のゴムパッキンを介してロアケース(A)30Aとロアケース(B2)30Cとの分割面が水密にシールされるようになっている。また、ロアケース(B2)30Cの底面には、エバポレータ12Aから流下するドレン水を、ロアケース(A)30Aに設けられているドレン排出部33に導くロアケース(A)30Aに向って漸次低くなるように傾斜された傾斜面39が形成されている。
【0038】
さらに、アッパケース(B2)40Cの左右方向幅寸法L2は、アッパケース(A)40Aの左右方向幅寸法Lに対して、L<L2とされている。これによって、アッパケース(A)40A、アッパケース(B1)40B、およびアッパケース(B2)40Cの各々の左右方向幅寸法L,L1,L2の関係は、L1<L<L2とされ、アッパケース(A)40Aに対して、アッパケース(B1)40Bおよびアッパケース(B2)40Cのいずれが組み付けられた場合にも、左右方向のセンターからオフセットされた位置で2分割されるように構成されている。
【0039】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
ブロアユニット2を介して側方から送られてくる外気または内気は、ユニットケース10の入り口で前後方向の流れに変換され、空気流路11内を下流側へと流通される。この空気流は、エバポレータ12,12Aを通過する過程で冷却された後、エアミックスダンパ15,15Aの開度に応じてバイパス流路13および加熱流路14への流量割合が調整され、一部がヒータコア16,16Aによって加熱される。
【0040】
バイパス流路13および加熱流路14を経た空気流は、エアミックス域17で混合されて温度調整された後、その下流側に連なっているデフ吹出し流路18、フェース吹出し流路19、およびフット吹出し流路20のいずれかから、デフ/フェースダンパ21,21Aおよびフットダンパ22,22Aの開閉によって選択されるフェースモード、フットモード、デフモード、デフ/フットモード、バイレベルモード等の吹出しモードに従い車室内へと吹出され、車室内の空調に供される。
【0041】
上記の如く機能するHVACユニット1A,1Bにおいて、能力の小さい軽自動車用のHVACユニット1Aを製造する場合は、共用化されるブロアユニット2、アッパケース(A)40Aおよびロアケース(A)30Aに対して、左右方向幅寸法の小さいエバポレータ12、エアミックスダンパ15、ヒータコア16、デフ/フェースダンパ21およびフットダンパ22が組み込まれるとともに、これらの幅寸法に合せて左右方向幅寸法が小さくされているロアケース(B1)30Bおよびアッパケース(B1)40Bが組み付けられる。これによって、能力の小さいHVACユニット1Aを製造することができる。
【0042】
また、能力の大きいリッターカー用のHVACユニット1Bを製造する場合は、共用化されるブロアユニット2、アッパケース(A)40Aおよびロアケース(A)30Aに対して、左右方向幅寸法の大きいエバポレータ12A、エアミックスダンパ15A、ヒータコア16A、デフ/フェースダンパ21Aおよびフットダンパ22Aが組み込まれるとともに、これらの幅寸法に合せて左右方向幅寸法が小さくされているロアケース(B2)30Cおよびアッパケース(B2)40Cが組み付けられる。これによって、能力の大きいHVACユニット1Bを製造することができる。
【0043】
このように、左右方向幅寸法が異なるエバポレータ12,12A、エアミックスダンパ15,15A、ヒータコア16,16A、デフ/フェースダンパ21,21Aおよびフットダンパ22,22A等を用いて能力が異なる複数のHVACユニット1A,1Bを製造する際、それらの寸法に対応した左右方向幅寸法を有するアッパケース(B1,B2)40B,40Cおよびロアケース(B1,B2)30B,30Cを、アッパケース(A)40Aおよびロアケース(A)30Aに組み付けることによって、少なくともアッパケース(A)40Aおよびロアケース(A)30Aを共用化し、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bを製造することができる。
【0044】
従って、ユニットケース10の一部を構成する樹脂成形部品の共用化率を高め、その量産効果によりコスト低減を図ることができるとともに、金型費や開発費を大幅に低減することが可能となる。また、アッパケース(A)40Aとロアケース(A)30Aとを共用化し、アッパケース(B1,B2)およびロアケース(B1,B2)と、エバポレータ12,12A、エアミックスダンパ15,15A、ヒータコア16,16A、デフ/フェースダンパ21,21Aおよびフットダンパ22,22A等とを組み換えることにより、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bを容易に製造することができる。
【0045】
更に、アッパケース(B1,B2)40B,40Cの左右方向幅寸法を各々L1およびL2とし、アッパケース(A)40Aの左右方向幅寸法をLとしたとき、L1<L、L<L2(すなわちL1<L<L2)とされており、アッパケース(A)40Aに対してアッパケース(B1,B2)40B,40Cのいずれが組み付けられる場合にも、左右方向のセンターからオフセットされた位置で2分割されることになる。このため、アッパケース(A)40Aおよびアッパケース(B1,B2)40B,40Cの3ケースのいずれに対しても、成形時の抜き勾配を適正範囲に設定することが可能となる。従って、空気流路11を略左右対称に形成することができ、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1BのいずれにおいてもHVAC中心に対して左右均等でバランスの取れた空調を行うことができる。
【0046】
また、ロアケース(A)30Aにドレン排出部33が一体に成形されているため、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bのいずれにおいても共用化されるロアケース(A)30A側にドレン排出部33が設けられることになる。従って、ドレン排出部33がロアケース(A)30Aおよびロアケース(B1,B2)30B,30C間に跨って設けられたり、あるいは着脱可能とされたロアケース(B1,B2)30B,30C側に設けられたりすることによるドレン排出機能の低下や不安定化を解消し、複数のHVACユニット1A,1Bのいずれにおいても確実なドレン排出機能を確保することができる。
【0047】
また、ロアケース30において、共用化されるロアケース(A)30A側の左右方向幅寸法が最大となるように、ロアケース(A)30Aとロアケース(B1)30Bとの左右方向幅寸法の関係が、(A)>>(B1)とされているため、左右に2分割されるロアケース30を出来るだけ側面に近い位置において分割することにより、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bにて共用化される側のロアケース(A)30Aの左右方向幅寸法を最大化することができる。これによって、コスト低減効果を得ることができる。
【0048】
さらに、ロアケース(B2)30Cの底面は、ドレン排出部33が設けられているロアケース(A)30Aに向って漸次低くなるように傾斜面39とされているため、ロアケース(B2)30Cの左右方向幅寸法が長くなったとしても、傾斜面39とされている底面に沿ってエバポレータ12Aから流下されたドレン水を速やかにロアケース(A)30A側に導き、ドレン排出部33から外部に排出することができる。従って、ロアケース(B2)30C内にドレン水が滞留することがなく、ドレン水が車室内側へと飛び出す要因を確実に解消することができる。
【0049】
なお、上記実施形態において、共用化されるロアケース(A)30Aと着脱可能なアッパケース(B1,B2)40B,40Cとの間に、エバポレータ12,12Aに対して冷媒を減圧して供給する膨張弁の配設部45(図1参照)を設けた構成としてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、フェース吹出し流路19にサイドフェース吹出し流路19A,19Bを区画する仕切り部材50A,50Bが設けられている点が異なる。その他の点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
能力の大きいリッターカー用のHVACユニット1Bの場合、インストルメントパネルの両側に設けられているサイドフェース吹出し口(図示省略)から温調風が吹出されるようにするため、フェース吹出し流路19の両サイドに、図7に示されるように、サイドフェース吹出し流路19A,19Bを区画する必要がある。
【0051】
このサイドフェース吹出し流路19A,19Bを区画するため、複数のHVACユニット1A,1Bにおいて共用化されるアッパケース(A)40Aには、フェース吹出し流路19の側部にサイドフェース吹出し流路19Aを区画する仕切り部材50Aの設置部51が形成されている。この仕切り部材設置部51は、別部品とされている仕切り部材50Aが嵌め込み可能な凹部により形成され、凹部に嵌め込まれた仕切り部材50Aの両端をビスにより固定できるように構成されている。また、仕切り部材設置部51は、仕切り部材50Aを左右方向の複数箇所に位置をずらして設置できるように構成されている。
【0052】
一方、アッパケース(A)40Aに組み付けられるアッパケース(B2)40C(またはアッパケース(B1)40B)には、サイドフェース吹出し流路19Bを区画するための仕切り部材50Bが一体に成形されている。このため、HVACユニット1Bを製造する場合、アッパケース(A)40Aに対してアッパケース(B2)40Cを組み付けることにより、フェース吹出し流路19の両サイドにサイドフェース吹出し流路19A,19Bを区画することができる。
【0053】
このように、本実施形態によれば、サイドフェース吹出し流路19A,19Bが必要な車両用のHVACユニット1Bに対しては、仕切り部材設置部51に仕切り部材50Aを追加設置することにより対応でき、サイドフェース吹出し流路が必要な車両用のHVACユニット1Aに対しては、仕切り部材無しのまま対応することができる。従って、サイドフェース吹出し流路19A,19Bの有無にかかわらず、アッパケース(A)40Aに対する追加部品を最小限に止めて共用化することができる。
【0054】
また、仕切り部材設置部51は、仕切り部材50Aを左右方向の複数箇所に位置を変更して設置できるように構成されている。このため、能力の異なる複数のHVACユニット1A,1Bに対しては、左右方向の設置位置を変えて仕切り部材50Aを設置することができる。従って、仕切り部材50A,50Bの設置位置が異なる複数のHVACユニット1A,1Bに対しても、それぞれ適正位置に仕切り部材50A,50Bを設置することが可能となる。
【0055】
さらに、アッパケース(B1,B2)40B,40Cに、フェース吹出し流路19の側部にサイドフェース吹出し流路19Bを区画する仕切り部材50Bが一体成形されているので、サイドフェース吹出し流路19A,19Bを設ける必要がある車両用のHVACユニット1A,1Bに対しては、仕切り部材50Bが一体成形されているアッパケース(B1,B2)40B,40Cを用いることができる。従って、アッパケース(B1,B2)40B,40Cに対して仕切り部材50Bを追加設置する必要がなく、アッパケース(B1,B2)40B,40Cを安価に製造することができる。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、軽自動車用HVACユニット1Aと小型車(リッターカー)用HVACユニット1Bとの間でユニットケース10の構成部品の一部を共用化した例について説明したが、これとは異なるクラスのHVACユニット間において、同様に構成部品の一部を共用化してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B 車両用空調装置(HVACユニット)
10 ユニットケース
11 空気流路
12,12A エバポレータ
13 バイパス流路
14 加熱流路
15,15A エアミックスダンパ
16,16A ヒータコア
17 エアミックス域
18 デフ吹出し流路
19 フェース吹出し流路
19A,19B サイドフェース吹出し流路
20 フット吹出し流路
30 ロアケース
30A ロアケース(A)
30B ロアケース(B1)
30C ロアケース(B2)
33 ドレン排出部
39 傾斜面
40 アッパケース
40A アッパケース(A)
40B アッパケース(B1)
40C アッパケース(B2)
50A,50B 仕切り部材
51 仕切り部材設置部
L アッパケース(A)の左右方向幅寸法
L1 アッパケース(B1)の左右方向幅寸法
L2 アッパケース(B2)の左右方向幅寸法


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットケース内に形成された空気流路の上流部位にエバポレータが設置され、その下流に温調用のエアミックスダンパにより調整された流量割合の空気流が流通されるバイパス流路とヒータコアが配設された加熱流路とが形成されるとともに、前記バイパス流路および前記加熱流路を経た空気流が前記エアミックスダンパの下流域で混合された後、デフ吹出し流路、フェース吹出し流路、およびフット吹出し流路のいずれかから選択的に車室内に吹出されるように構成されている車両用空気調和装置において、
前記ユニットケースは、前記エバポレータが設置されるとともに、ドレン排出部が設けられているロアケースと、前記エバポレータの上部を覆うとともに、前記ヒータコアおよび前記エアミックスダンパが設置され、その下流側に前記デフ吹出し流路、前記フェース吹出し流路および前記フット吹出し流路が設けられているアッパケースとを備え、
前記アッパケースは、アッパケース(A)と、該アッパケース(A)に対して着脱可能とされているアッパケース(B1,B2)とに左右に2分割され、
前記ロアケースは、ロアケース(A)と、該ロアケース(A)に対して着脱可能とされているロアケース(B1,B2)とに左右に2分割されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記アッパケース(B1,B2)および前記ロアケース(B1,B2)は、左右方向の幅寸法が小さい小能力空調装置用の前記アッパケース(B1)および前記ロアケース(B1)と、左右方向の幅寸法が大きい大能力空調装置用の前記アッパケース(B2)および前記ロアケース(B2)とが前記アッパケース(A)および前記ロアケース(A)に対してそれぞれ着脱可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記アッパケース(B1)および(B2)は、その左右方向幅寸法をそれぞれL1およびL2とし、前記アッパケース(A)の左右方向幅寸法をLとしたとき、L1<L<L2とされ、前記アッパケース(A)に対して前記アッパケース(B1)および(B2)のいずれが組み付けられた場合も、左右方向のセンターからオフセットされた位置で2分割されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ロアケース(A)には、前記ドレン排出部が一体成形されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記ロアケースは、共用化される部分の左右方向幅寸法が最大となるように、前記ロアケース(A)と前記ロアケース(B1)との左右方向幅寸法の関係が、(A)>>(B1)とされていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記ロアケース(B2)の底面は、前記ロアケース(A)に向って漸次低くなるように傾斜面とされていることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記アッパケース(A)には、フェース吹出し流路の側部にサイドフェース吹出し流路を区画する仕切り部材を設置する仕切り部材設置部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記仕切り部材設置部は、前記仕切り部材を左右方向の複数箇所に位置を変えて設置できるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記アッパケース(B1,B2)には、フェース吹出し流路の側部にサイドフェース吹出し流路を区画する仕切り部材が一体に成形されていることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−167993(P2010−167993A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14322(P2009−14322)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】