説明

車両用空調装置

【課題】リンクを取り外すための専用工具をわざわざ用意しなくても、リンクやケーシングを破損することなくリンクを取り外すことができるようにして、取り外し作業性を向上させる。
【解決手段】ケーシング30に取付孔30aが形成されている。リンク104には、取付孔30aに挿入される嵌合筒部104aと、取付孔30aの周縁部に係合する係合片104hが形成されている。リンク104の係合片104hは、取付孔30aの周縁部に係脱する方向に弾性変形するように構成されている。リンク104の嵌合筒部104aには、取り外し部材120が挿入されている。取り外し部材120には、係合片104hを取付孔30aの周縁部から離脱させる離脱方向に押圧する押圧片120bと、押圧片120bを操作する操作部120aと、リンク104に係止する係止爪120fとが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載される車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用空調装置は、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を収容するケーシングを備えており、このケーシング内には、各熱交換器が配置される空気流路が形成されている。空気流路には、各熱交換器を通過する空気量を調節するための温度調節ダンパや、調和空気の吹出方向を切り替えるための吹出方向切替ダンパが配置されている。また、ケーシングの外部には、ダンパを駆動するためのリンクが配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、ケーシングの側壁にリンクの取付孔が貫通形成されている。一方、リンクには、取付孔に挿入される軸部が設けられている。この軸部には、ケーシングの取付孔の周縁部に対し該ケーシングの内側から係合する係合爪が形成されている。また、ケーシングの側壁には、リンクの回動範囲内にリブが突設されている。空調装置の修理時等のようにリンクを取り外す必要が生じた場合には、リンクを回動させてリブに乗り上げさせることで、リンクに対し軸部を取付孔から抜く方向に力を作用させ、係合爪を取付孔の周縁部から無理に離脱させて軸部を取付孔から抜くことができるようになっている。
【特許文献1】特開11−321288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1では、リンクを取り外すときに軸部を取付孔から無理に抜くことになるので、リンクやケーシングが破損して再利用できなくなる虞れがある。このことを回避するために、係合爪を離脱させる専用工具を設定することが考えられるが、そのようにした場合には、専用工具の準備及び管理が必要になり、取り外し作業性が悪化する。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リンクを取り外すための専用工具をわざわざ用意しなくても、リンクやケーシングを破損することなくリンクを取り外すことができるようにして、取り外し作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、リンクをケーシングから取り外すための取り外し部材をリンクに予め取り付けておき、必要時に取り外し部材を操作することによりリンクを取り外すことができるようにした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、空調用機器を収容するケーシングにリンク取付用の取付孔が形成され、上記リンクには、上記取付孔に回動可能に挿入される嵌合筒部と、上記取付孔の周縁部に係合する係合片とが形成され、上記リンクの嵌合筒部が上記ケーシングの取付孔に挿入された状態で上記係合片が上記取付孔の周縁部に係合するように構成された車両用空調装置において、上記リンクの係合片は、上記取付孔の周縁部に係脱する方向に弾性変形するように構成され、上記リンクの嵌合筒部には、該リンクを上記ケーシングから取り外すための取り外し部材が挿入され、上記取り外し部材には、上記係合片を上記取付孔の周縁部から離脱させる離脱方向に押圧する押圧部と、上記係合片を離脱方向に押圧するように上記押圧部を操作する操作部と、上記リンクに係止する係止部とが設けられている構成とする。
【0008】
この構成によれば、リンクがケーシングに取り付けられている状態では、取り外し部材がリンクの嵌合筒部に挿入され、該取り外し部材の係止部がリンクに係止して取り外し部材がリンクとともにケーシングに取り付けられる。そして、リンクをケーシングから取り外す必要が生じた際には、取り外し部材の操作部を操作することで、リンクの係合片が取り外し部材の押圧部により離脱方向に押圧される。これにより、係合片が弾性変形して取付孔の周縁部から離脱し、リンクの取り外しが可能となる。
【0009】
このように、リンクの係合片を取り外し部材により弾性変形させて取付孔の周縁部から離脱させるようにしたので、リンクやケーシングに無理な力が作用しない。また、取り外し部材は、リンクに予め取り付けられているので、必要なときにすぐに使用可能であり、管理や準備は不要である。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、取り外し部材のリンクへの係止部は、押圧部に一体成形されている構成とする。
【0011】
この構成によれば、リンクへの係止部を押圧部とは別に設けなくて済み、部品点数が削減されるとともに、取り外し部材をコンパクトにまとめることが可能になる。
【0012】
第3の発明では、第1または2の発明において、リンクには、複数の係合片が嵌合筒部の周方向に間隔をあけて設けられ、取り外し部材には、複数の押圧部が上記係合片に対応して設けられている構成とする。
【0013】
この構成によれば、複数の係合片が取付孔の周縁部に係合することでリンクがケーシングに安定した状態で取り付けられる。一方、リンクを取り外す際には、これら係合片を一度に離脱させることが可能になる。
【0014】
第4の発明では、第1から3のいずれか1つの発明において、取り外し部材には、リンクの嵌合筒部の軸方向一側及び他側からそれぞれ係止する第1係止部及び第2係止部が設けられている構成とする。
【0015】
この構成によれば、取り外し部材がリンクの嵌合筒部の軸方向両側から係合するので、取り外し部材を所定位置に位置決めすることが可能になる。
【0016】
第5の発明では、第1から4のいずれか1つの発明において、取り外し部材は、リンクの係合片を取付孔の周縁部から離脱させる離脱位置と、該係合片を該取付孔の周縁部に係合させた状態とする係合位置とに切り替えられるとともに、該取り外し部材が係合位置となるように付勢する付勢部を備えている構成とする。
【0017】
この構成によれば、取り外し部材が常に係合位置となるので、通常時には、リンクの係合片を取付孔の周縁部に係合させておき、必要時にのみ、離脱位置にして係合片を取付孔の周縁部から離脱させることが可能になる。
【0018】
第6の発明では、第5の発明において、付勢部は、取り外し部材に弾性変形可能に一体成形された弾性片で構成されている。
【0019】
この構成によれば、取り外し部材を係合位置から離脱位置に切り替える動作が付勢部の弾性変形により許容されることになる。
【0020】
第7の発明では、第5または6の発明において、リンクには、取り外し部材を係合位置から離脱位置まで案内する案内部が設けられている構成とする。
【0021】
この構成によれば、係合位置にある取り外し部材が離脱位置までスムーズに移動するようになる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、リンクの嵌合筒部に挿入した取り外し部材をリンクに取り付けておき、必要時に取り外し部材によりリンクの係合片を弾性変形させて取付孔の周縁部から離脱させることができるので、リンクを取り外すための専用工具をわざわざ用意しなくても、リンクを取り外すことができ、よって、取り外し作業性が向上し、また、リンクやケーシングが破損しないので再利用できる。
【0023】
第2の発明によれば、取り外し部材の係止部を押圧部に一体成形したので、部品点数を削減してコストを低減できるとともに、取り外し部材をコンパクトにまとめて配設するのに要するスペースを小さくできる。
【0024】
第3の発明によれば、リンクに複数の係合片を嵌合筒部の周方向に間隔をあけて設けたので、リンクを安定した状態で取り付けることができる。そして、取り外し作業時には、取り外し部材の押圧部により複数の係合片を取付孔の周縁部から一度に離脱させてリンクを容易に取り外すことができる。
【0025】
第4の発明によれば、取り外し部材に第1及び第2係止部を設け、これら係止部をリンクの嵌合筒部の軸方向一側及び他側からそれぞれ係止させたので、取り外し部材を所定位置に位置決め保持して操作性を良好にできる。
【0026】
第5の発明によれば、取り外し部材を、通常時には、係合片を取付孔の周縁部に係合させた状態とする係合位置としておき、必要時にのみ、係合片を取付孔の周縁部から離脱させる離脱位置にすることができるので、リンクが誤って取り外されてしまうのを防止できる。
【0027】
第6の発明によれば、取り外し部材に弾性変形可能に一体成形された弾性片で付勢部を構成したので、取り外し部材の動きをシンプルな構造で許容させることができる。
【0028】
第7の発明によれば、取り外し部材を係合位置から離脱位置まで案内する案内部を設けたので、取り外し部材をスムーズに移動させて離脱位置に切り替えることができ、操作性を良好にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を自動車の車室内前部に設けたインストルメントパネル2内に配設した状態を示す。この自動車は、運転席及び助手席がそれぞれ車両右側及び左側に設けられた、いわゆる右ハンドル車である。この実施形態の説明では、説明の便宜を図るため、車幅方向左側を単に「左」といい、また、車幅方向右側を単に「右」というものとする。
【0031】
上記空調装置1は、図2にも示すように、空調用空気を送風する送風ユニット3と、この送風ユニット3から送風された空気を導入して調和空気とする空調ユニット4と、この空調ユニット4に送風ユニット3から送風された空調用空気を送るための中間ダクト5とを備えている。
【0032】
上記空調ユニット4は、上記インストルメントパネル2内の左右方向略中央部に配置されている一方、上記送風ユニット3は空調ユニット4に対して左側へ離間して助手席の前方に配置されている。
【0033】
上記送風ユニット3は、その左右方向の略中央部において左右方向に2つに分割されたケーシング6を備えており、それらはファスナ等を用いて一体化されている。このケーシング6の上側約半分は、送風ユニット3へ空調用空気を取り入れるための空気取入部7とされている一方、残りの部分は、その取り入れた空気を上記空調ユニット4へ送風するための送風部8とされている。ケーシング6内には、空気取入部7から送風部8へ延びる空気流路Sが設けられており、空気取入部7から導入された空調用空気が空気流路Sを流通するようになっている。
【0034】
空気取入部7の上部の車両前側には、車室外の空気を取り入れるための外気取入口10が形成され、車両後側には、車室内の空気を取り入れるための内気取入口11が形成されている。これら両取入口10、11は、空気流路Sの上流端に接続され、内外気切替ダンパ9によって選択的に開閉されるようになっている。内外気切替ダンパ9は、空気流路Sに配設されており、車幅方向に延びる回動軸12と、該回動軸12から径方向の一方向に延出する閉塞部13とを備えている。回動軸12は、ケーシング6の右側壁部を貫通している。ケーシング6の右側壁部には、内外気切替用モータアクチュエータ15及び内外気切替用リンク構造16が配設されている。
【0035】
上記モータアクチュエータ15は、ケーシング6の右側壁部に突設されたボス(図示せず)に締結固定されている。また、上記内外気切替用リンク構造16は、モータアクチュエータ15の出力軸が連結される駆動リンク17と、内外気切替用ダンパ9の回動軸12が連結される従動リンク18とで構成されている。これら駆動リンク17及び従動リンク18は、例えばポリプロピレン等の樹脂材を成形してなるものである。
【0036】
上記モータアクチュエータ15による操作力が駆動リンク17及び従動リンク18を介して内外気切替ダンパ9に伝達されると、内外気切替ダンパ9が回動軸12周りに回動し、上記外気取入口10と内気取入口11との一方は、上記内外気切替ダンパ9により閉状態とされる一方、他方は開状態とされるようになっている。すなわち、内外気切替ダンパ9により外気取入口10が全開状態とされると内気取入口10が全閉状態となって、車室外の空気のみを取り入れる外気取入モードとなる。一方、外気取入口10が全閉状態とされると内気取入口11が全開状態となって、車室内の空気のみを取り入れる内気循環モードとなる。尚、内気取入口11には格子状のグリル14が設けられている。
【0037】
一方、空気取入部7の下部には、上記外気取入口10又は内気取入口11より取り入れられた空気を濾過するためのフィルタ20が配設されたフィルタ配設部21が設けられている。フィルタ配設部21の下方には、遠心式多翼ファン(空調用機器)23が、その回転軸を上下方向に向けて配設されており、さらに、このファン23の下方には、該ファン23を駆動するためのファン駆動モータ24が配設されている。尚、図2における矢印は空気の流れを示している。
【0038】
送風部8におけるケーシング6の右側壁部には、上記中間ダクト5の左端部が固定され、この中間ダクト5の左端部はケーシング6の右側壁部に形成された開口(図示せず)を介してケーシング6内の空気流路Sと連通している。中間ダクト5は、その左端部から空調ユニット4の下端部へ向かって斜め下方へ延びるように形成されている。中間ダクト5の右端部は、空調ユニット4のケーシング6の下端部に開口されかつ該ケーシング6内に空調用空気を導入するための導入口25(図3に仮想線で示す)に接続されている。中間ダクト5の上壁には、上記ファン駆動モータ24の回転数を制御するための制御回路26が配設されている。
【0039】
上記空調ユニット4のケーシング30は、全体として上下方向に長く、送風ユニット3のケーシング6よりも大型に形成されている。空調ユニット4のケーシング30は、送風ユニット3のケーシング6と同様に左右方向に2つに分割されている。
【0040】
上記ケーシング30内には、上記導入口25から上方へ延びる空気流路Rが設けられている。図3に示すように、空気流路Rの上流側は、上記導入口25からケーシング30の上下方向略中央部まで延びる冷却通路33で構成されている。上記導入口25から導入された空調用空気は、冷却通路33内で上方へ向きを変えて流れるようになる。
【0041】
上記冷却通路33の上下方向中途部には、該冷却通路33を流れる空調用空気を通過させて冷却する冷却用熱交換器としてのエバポレータ(空調用機器)34が該冷却通路33を横切るように配設されている。エバポレータ34は、冷凍サイクルの一要素を構成するものであり、通過する空気を冷却するようになっている。尚、符号35は、エバポレータ34から滴下する凝縮水を排水するためのドレン部である。
【0042】
上記冷却通路33の下流端は車両前後方向に2つに分岐している。冷却通路33の車両前側の下流端に前側冷風吹出口37が形成され、車両後側の下流端に後側冷風吹出口38が形成されている。これら前側冷風吹出口37及び後側冷風吹出口38の間には、ケーシング30内を上記冷却通路33とその上方空間とに区画する中央隔壁40が設けられている。
【0043】
上記前側冷風吹出口37には、空気流路Rの空気流れ方向中間部を構成する加熱通路41が接続されている。該加熱通路41は、中央隔壁40の上方において全体として車両後側へ向かって斜め上方に延びている。加熱通路41の中途部には、該加熱通路41を流れる冷風を通過させて加熱する加熱用熱交換器としてのヒータコア(空調用機器)43が該加熱通路41を横切るように配設されている。ヒータコア43には、エンジンの冷却水が常時循環しており、この冷却水によってヒータコア43を通過する空気が加熱されるようになっている。
【0044】
上記ヒータコア43の上方には、ケーシング30内の上半部を上記加熱通路41とその上方空間とに区画する上部隔壁45が設けられている。該上部隔壁45の車両後端部と上記中央隔壁40の車両後端部との間には、温風吹出口46が車両後方に向けて開口している。
【0045】
また、ケーシング30内の車両後側における後側冷風吹出口38の上方には、空気流路Rの下流側を構成するエアミックス空間65が設けられている。該エアミックス空間65には、上記後側冷風吹出口38及び温風吹出口46が接続され、これら後側冷風吹出口38及び温風吹出口46から冷風及び温風がそれぞれ流入するようになっている。このエアミックス空間65に流入した冷風及び温風は該エアミックス空間65で混合されて調和空気となる。
【0046】
エアミックス空間65の略真上部におけるケーシング30の上壁部には、図2にも示すように、該エアミックス空間65に接続されるフェイス吹出口66が形成されている。
【0047】
上記フェイス吹出口66は、エアミックス空間65で生成された調和空気を、インストルメントパネル2の左右方向略中央部及び左右両端部にそれぞれ設けたセンタベンチレータ81及びサイドベンチレータ82(図1に示す)にそれぞれ導出させるためのセンタ吹出部66a及びサイド吹出部66bに区画されている。
【0048】
上記センタ吹出部66aは、インストルメントパネル2内に設けたセンタフェイスダクト(図示せず)により上記センタベンチレータ81と接続されている。サイド吹出部66bは、同じくインストルメントパネル2内に設けたサイドフェイスダクト(図示せず)により上記サイドベンチレータ82と接続されている。上記センタベンチレータ81及びサイドベンチレータ82から調和空気が乗員の上半身へ向けて吹き出すようになっている。
【0049】
ケーシング30内の上部隔壁45の上方には、空気流路Rの下流側を構成するデフロスタ導出室68が設けられている。上部隔壁45の車両後端部とケーシング30の上壁部との間には、エアミックス空間65で生成された調和空気をデフロスタ導出室68に流入させるための第1開口部69が設けられている。デフロスタ導出室68上側の車両前側寄りの位置におけるケーシング30の上壁部には、デフロスタ導出室68に流入した調和空気を上記インストルメントパネル2に設けたデフロスタ85及びデミスタ85a(図1に示す)に導出させるためのデフロスタ吹出口70が形成されている。
【0050】
上記デフロスタ吹出口70は、インストルメントパネル2内に設けたデフロスタダクト(図示せず)によりデフロスタ85及びデミスタ85aと接続されており、これらデフロスタ85及びデミスタ85aから調和空気がフロントウインドガラス及びサイドドアのウインドガラスの内面に向かって吹き出すようになっている。
【0051】
ケーシング30内におけるデフロスタ導出室68の車両前側には、空気流路Rの下流側を構成するフット導出室71が形成され、このフット導出室71とデフロスタ導出室68との間の壁部には、デフロスタ導出室68の調和空気をフット導出室71に流入させるための第2開口部72が形成されている。そして、ケーシング30の左側壁部及び右側壁部の上部には上記フット導出室71の調和空気を運転席及び助手席の各乗員の足元に導出させるための左右フット吹出口73がそれぞれ形成されている。すなわち、これら左右フット吹出口73には、各々、ケーシング30の左側壁部及び右側壁部に沿って車両後側かつ下方へ延びる左右フットダクト(図示せず)が接続され、これら両フットダクト74は、運転席及び助手席の各乗員の足元でそれぞれ開口している。これら両フットダクト74の開口から、フット導出室73の調和空気が各乗員の足元に向かって吹き出すようになっている。
【0052】
上記空気流路Rの下流端近傍には、乗員により設定される吹出モードに応じてセンタ吹出部66a及びサイド吹出部66bを同時に開閉する第1吹出方向切替ダンパ76が設けられている。この第1吹出方向切替ダンパ76は、左右方向に延びる回動軸86と、該回動軸86から径方向の一方向に延出する板状の閉塞部87と、該閉塞部87の両面にそれぞれ設けられたシール部材88とを備えている。回動軸86の左右両端部がケーシング30の左右両側壁に支持されている。図4に示すように、回動軸86の左端部は、ケーシング30の左側壁部を貫通している。
【0053】
第1吹出方向切替ダンパ76は、センタ吹出部66a及びサイド吹出部66bを全開状態とする位置と全閉状態にする位置との間で回動軸86周りに回動するようになっている。図3に示すように、第1吹出方向切替ダンパ76が、上記センタ吹出部66a及びサイド吹出部66bを全開状態にすると、上記第1開口部69が全閉状態とされ、一方、図示しないが、第1吹出方向切替ダンパ76が、上記センタ吹出部66a及びサイド吹出部66bを全閉状態とすると、上記第1開口部69が全開状態とされる。
【0054】
上記空気流路Rの下流端近傍には、上記吹出モードに応じてデフロスタ吹出口70を開閉する第2吹出方向切替ダンパ77が設けられている。この第2吹出方向切替ダンパ77は、上記第1吹出方向切替ダンパ76と同様に、左右方向に延びる回動軸92と閉塞部93とシール部材94とを備えている。回動軸92の左右両端部がケーシング30の左右両側壁に支持されている。図4に示すように、回動軸92の左端部は、ケーシング30の左側壁部を貫通している。
【0055】
第2吹出方向切替ダンパ77は、デフロスタ吹出口70を全開状態とする位置と全閉状態とする位置との間で回動軸92周りに回動するようになっている。図3に示すように、第2吹出方向切替ダンパ77がデフロスタ吹出口70を全閉状態とすると、第2開口部72が全開状態とされ、一方、図示しないが、第2吹出方向切替ダンパ77がデフロスタ吹出口70を全開状態とすると、第2開口部72が全閉状態とされる。
【0056】
ケーシング30の左側壁部の上部には、図2に示すように、吹出方向切替用モータアクチュエータ100と吹出方向切替用リンク構造101とが配設されている。このモータアクチュエータ100は、左側壁部から突出するボス(図示せず)に締結固定されていて、該左側壁部から左側へ離れている。このモータアクチュエータ100とケーシング30の左側壁部との間に、上記吹出方向切替用リンク構造101が配設されている。尚、図4ではモータアクチュエータ100を省略している。
【0057】
このリンク構造101は、図4に示すように、モータアクチュエータ100の出力軸(図示せず)が連結される駆動板102と、第1吹出方向切替ダンパ76の回動軸86に固定された第1従動リンク103と、第1従動リンク103に係合する第1駆動リンク104と、第2吹出方向切替ダンパ77の回動軸92に固定された第2従動リンク105と、第2従動リンク105に係合する第2駆動リンク106とを備えている。
【0058】
上記駆動板102、第1従動リンク103、第1駆動リンク104、第2従動リンク105及び第2駆動リンク106は、例えばポリプロピレン等の樹脂材を成形してなるものである。駆動板102が最も左側に位置付けられ、この駆動板102の右側に第1駆動リンク104及び第2駆動リンク106が位置付けられ、これら駆動リンク104、106の右側に第1従動リンク103及び第2従動リンク105が位置付けられている。
【0059】
駆動板102は、大略半円盤状に形成されている。駆動板102の中央部近傍には、モータアクチュエータ100の出力軸(図示せず)が挿入されて回転一体に連結される連結孔102aが形成されている。駆動板102の周縁部には、周方向一側に第1スリット102bが形成され、周方向他側に第2スリット102cが形成されている。第1スリット102b及び第2スリット102cは、各々の長手方向の中途部で駆動板102の半径方向に屈曲している。
【0060】
上記第1従動リンク103は、略直線状に形成されている。第1従動リンク103の一端部には、第1吹出方向切替ダンパ76の回動軸86が嵌入する第1嵌入孔103aが形成されており、回動軸86と第1従動リンク103とは回転一体とされている。第1従動リンク103の他端側には、該リンク103の長手方向に長く延びるスリット状の第1孔部103bが形成されている。尚、第1孔部103bは、スリット状でなくてもよく、例えば、溝であってもよい。
【0061】
第1駆動リンク104は、大略L字状に形成されており、ケーシング30の側壁部に取り付けられている。図5及び図6に示すように、ケーシング30の側壁部には、第1駆動リンク104を取り付けるための取付孔30aが形成されている。取付孔30aの周縁部には、ケーシング30の外方へ突出する円筒部30bが形成されている。円筒部30bの内周面には、円筒部30bの内方へ突出して環状に延びる第1円環部30cが形成されている。第1円環部30cの内縁部には、ケーシング30の内方へ突出して環状に延びる第2円環部30dが形成されている。第2円環部30dの内周面は、ケーシング30の内方へ行くほど径が小さくなるテーパー面で構成されている。
【0062】
図5及び図7に示すように、第1駆動リンク104の中間部には、ケーシング30の円筒部30bに挿入される円筒からなる嵌合筒部104aが形成されている。この嵌合筒部104a内には、詳細は後述するが、第1駆動リンク104を取り外す際に使用される取り外し部材120が収容されるようになっている。
【0063】
嵌合筒部104aは、第1駆動リンク104の右側面(ケーシング30側の面)から突出しており、その外径は、取付孔30aの内径よりも若干小さめに設定されている。従って、嵌合筒部104aは、取付孔30aに挿入された状態で該円筒部30bの軸線周りに回動可能となっている。嵌合筒部104aの外周面の基端側には、段部104eが全周に亘って形成されている。この段部104eにケーシング30の円筒部30bの先端部が嵌るようになっている。
【0064】
また、第1駆動リンク104の中間部の左側面には、突条部104dが形成されている。突条部104dは、嵌合筒部104aの軸線と同心上に位置する円環状となっている。突条部104dの内径は、嵌合筒部104aの内径よりも大きく設定されている。
【0065】
第1駆動リンク104の嵌合筒部104aの先端部には、該嵌合筒部104aの軸線と直交する方向に延びる端壁部104fが形成されている。端壁部104aには、図7に示すように、3つの貫通孔104g,104g,104gが形成されている。これら貫通孔104gは、嵌合筒部104aの周方向に等間隔に配置されており、嵌合筒部104aの内周面に沿って延びるように湾曲したスリットで構成されている。各貫通孔104gの周縁部のうち、嵌合筒部104aの軸線に近い側の縁部には、図5に示すように、ケーシング30の取付孔30aの周縁部に係合する係合片104hが設けられている。係合片104hは、嵌合筒部104aの軸方向において端壁部104fよりも嵌合筒部104aの外方へ突出しており、全体として、突出方向先端に近づくほど嵌合筒部104aの径方向外方に位置するように傾斜している。係合片104hは、嵌合筒部104aの径方向(取付孔30aの周縁部への係脱方向)に弾性変形するように肉厚が設定されている。係合片104hの先端部には、取付孔30aの周縁部を構成する第2円環部30dの先端面に引っ掛かった状態で係合する爪104iが形成されている。また、係合片104hの先端面には、傾斜面104jが形成されている。傾斜面104jは、係合片104hの先端に近づくほど嵌合筒部104aの径方向内方に位置するように傾斜している。
【0066】
端壁部104fには、小筒部(案内部)104kが形成されている。この小筒部104kは、端壁部104fから嵌合筒部104aの軸線方向で、かつ、該嵌合筒部104aの内方へ向けて延びており、先端部は開放されるとともに、基端部は閉塞されている。この小筒部104kにより、取り外し部材120が案内されるようになっている。
【0067】
図8に示すように、取り外し部材120は、略円形板状の操作部120aと、係合片104hを押圧するための3つの押圧片(押圧部)120b、120b、120bとを備えている。操作部120aは、第1駆動リンク104を取り外す際に作業者が操作するためのものであり、図5に示すように、第1駆動リンク104の突条部104d内に完全に挿入されるような肉厚に設定されている。図8及び図9に示すように、操作部120aには、一対の切欠部120c、120cが3組ほど周方向に等間隔に設けられている。一対の切欠部120c、120cの間には、操作部120aの板厚方向に弾性変形する弾性片(付勢部)120dが形成されている。この弾性片120dは第1係止部である。
【0068】
弾性片120dは、操作部120aの周縁部から径方向外方へ突出している。図5に示すように、弾性片120dは、第1駆動リンク104の突条部104dの内側に位置するとともに、嵌合筒部104aの基端部に当接した状態で該嵌合筒部104aに係止するようになっている。この弾性片120dは第1係止部である。操作部120aの中心部には、第1駆動リンク104の嵌合筒部104a内への挿入方向に突出する円柱部120eが設けられている。この円柱部120eは、リンク104の小筒部104k内に挿入されて軸線方向に案内されるものである。
【0069】
図10にも示すように、取り外し部材120の押圧片120bは、円柱部120eと同方向に突出しており、第1駆動リンク104の係止片104hに対応するように、操作部120aの周方向に等間隔に配置されている。押圧片120bの幅は、第1駆動リンク104の貫通孔104gに挿入可能な寸法に設定されている。図5に示すように、押圧片120bの長さは、その先端側が貫通孔104gへ挿入されて端壁部104fよりも嵌合筒部104aの外方へ突出するように設定されている。押圧片120bの先端部が係止片104hの側面に当接して該係止片104hを嵌合筒部104aの軸線に接近する方向(取付孔30aの周縁部から離脱する方向)へ向けて押圧するようになっている。押圧片120bの先端部には、嵌合筒部104aの端部に係止する係止突起(第2係止部)120fが形成されている。押圧片120bの先端面には、傾斜面120gが形成されている。傾斜面120gは、先端に近づくほど押圧片120bの肉厚が薄くなるように傾斜している。
【0070】
上記取り外し部材120は、通常使用時において第1駆動リンク104の係合片104hを取付孔30aの周縁部に係合させた状態とする係合位置(図5に示す)と、リンク104を取り外す際に係合片104hを取付孔30aの周縁部から離脱させた離脱位置(図11に示す)とに切り替えられるようになっている。取り外し部材120を係合位置から離脱位置に切り替える際には、操作部120aをケーシング30内側へ押すことで、弾性片120dが弾性変形して取り外し部材120の変位が許容されるとともに、小筒部104kにより嵌合筒部104aの軸線方向に案内される。さらに、3つの押圧片120b、120b、120bがそれぞれ係合片104hを押圧し、これにより、係合片104hが取付孔30aの周縁部から離脱してリンク104の取り外しが可能となる。
【0071】
第1駆動リンク104の一端部には、上記第1従動リンク103の第1孔部103bに挿入された状態で係合する一側ピン104bが突設され、他端部には、第1スリット102bに挿入された状態で係合する他側ピン104cが突設されている。
【0072】
また、図4に示すように、上記第2従動リンク105は、第1従動リンク103と略同じ形状に形成されており、第2嵌入孔105aと第2孔部105bとを有している。
【0073】
第2駆動リンク106は、略直線状に形成されている。第2駆動リンク106の一端部には、第1駆動リンク106と同様にケーシング30に取り付けられるようになっており、同じ構造の取り外し部材120が設けられている。
【0074】
第2駆動リンク106の他端部には、第2孔部105bに挿入された状態で係合する一側ピン106bが突設されている。第2駆動リンク106の孔部106aよりも一側ピン106b寄りの部位には、第2スリット102cに挿入された状態で係合する他側ピン106cが突設されている。符号106dは、第1駆動リンク104の突条部104dと同様な突条部である。
【0075】
上記モータアクチュエータ100が作動することにより駆動板102に操作力が付与され、該駆動板102が回動する。この駆動板102の回動により、第1スリット102b及び第2スリット102cが回動方向に変位する。第1スリット102bの変位により、第1駆動リンク104の他側ピン104cが第1スリット102bの周縁部に係合して変位し、第1駆動リンク104が第1スリット102bの形状に対応した軌跡を描いて動くことになる。この第1駆動リンク104の動きにより、一側ピン104bが第1孔部103bの周縁部に係合して第1従動リンク103が動き、これにより、第1吹出方向切替ダンパ76が回動する。
【0076】
また、第2スリット102cの変位により、第2駆動リンク106の他側ピン106cが第2スリット102cの周縁部に係合して変位し、第2駆動リンク106が第2スリット102cの形状に対応した軌跡を描いて動くことになる。この第2駆動リンク106の動きにより、一側ピン106bが第2従動リンク105の第2孔部105bの周縁部に係合して第2従動リンク105が動き、これにより、第2吹出方向切替ダンパ77が回動する。
【0077】
上記のように駆動板102の第1スリット102b及び第2スリット102cに、第1駆動リンク104の他側ピン104c及び第2駆動リンク106の他側ピン106cをそれぞれ挿入して操作力を伝達するようにしているので、スリット102b、102cの形状により第1駆動リンク104及び第2駆動リンク106の動きを容易に設定することが可能になっている。
【0078】
第1吹出方向切替ダンパ76及び第2吹出方向切替ダンパ77の回動により、センタ吹出部66a、サイド吹出部66b、デフロスタ吹出口70及び第2開口部72がそれぞれ開閉されて、空調装置1がフェイスモード、デフロスタモード、フットモード等の任意の吹出モードになる。
【0079】
図2に示すように、上記ケーシング30の空気流路Rにおける前側冷風吹出口37及び後側冷風吹出口38近傍には、乗員により設定される室内温度に応じて各吹出口37、38をそれぞれ開閉する第1温度調節ダンパ48及び第2温度調節ダンパ49が配置されている。
【0080】
上記第1温度調節ダンパ48は、回動軸58と、該回動軸58の径方向両側に延出する2つの閉塞部59とを備えたバタフライダンパである。閉塞部59の周縁部には、シール部材61がそれぞれ配設されている。第1温度調節ダンパ48の回動軸58の左右両端部がケーシング30の左右両側壁に支持されている。回動軸58の左端部は、ケーシング30の左側壁部を貫通している。
【0081】
上記第2温度調節ダンパ49は、回動軸50と、該回動軸50の径方向両側に延出する閉塞部51とを備えたバタフライダンパである。閉塞部51の周縁部には、互いに反対側の面にシール部材56がそれぞれ配設されている。第2温度調節ダンパ49の回動軸50の左右両端部がケーシング30の左右両側壁に支持されている。回動軸50の左端部は、ケーシング30の左側壁部を貫通している。
【0082】
ケーシング30の左側壁部の上部には、図2に示すように、温度調節用モータアクチュエータ110と温度調節用リンク構造111とが配設されている。これらモータアクチュエータ110と温度調節用リンク構造111とは、上記吹出方向切替用モータアクチュエータ10と吹出方向切替用リンク構造101と同様に構成されている。
【0083】
次に、吹出方向切替用リンク構造101の製造要領について説明する。まず、駆動板102、各リンク103〜106を樹脂材により成形する。第1駆動リンク104を成形する際には、取り外し部材120を同じ成形型(図示せず)で一度に成形し、脱型後で、ケーシング30に組み付ける前に、取り外し部材120を第1駆動リンク104に組み付けて一体化する。このとき、図10に示すように、取り外し部材120を押圧片120b側から第1駆動リンク104の嵌合筒部104aに挿入していく。すると、押圧片120bの先端側の傾斜面120gが嵌合筒部104aの内面に摺接しながら、嵌合筒部104aに挿入されていく。そして、図5に示すように、取り外し部材120の操作部120aが突条部104d内に完全に挿入されると、弾性片120d及び係止突起120fが嵌合筒部104aに対し軸方向両側から係止する。これにより、取り外し部材20が、軸方向への移動が阻止された状態で第1駆動リンク104に固定される。このとき、押圧片120bの先端側が貫通孔104gに挿入されることで、取り外し部材120の周方向への回動も阻止されることになる。
【0084】
第1駆動リンク104に取り付けられた状態の取り外し部材120は第1駆動リンク104の突条部104dから突出せず、突条部104d内に位置しているので、取り外し部材120が、インストルメントパネル2内の他の装置や空調装置1の他の部品と干渉することはない。
【0085】
その後、第1従動リンク103及び第2従動リンク104をケーシング30に組み付ける。しかる後、第1駆動リンク104をケーシング30に組み付ける。第1駆動リンク104の嵌合筒部104aを円筒部30bに挿入していくと、係合片104hの傾斜面104jが第2円環部30dの内周面に摺接しながら、リンク104が所定の取付位置に導かれていく。このとき、係合片104hは嵌合筒部104aの内方へ向けて弾性変形する。嵌合筒部104aが完全に挿入されて、爪104iが第2円環部30dを乗り越えると、係合片104hの形状が復元して爪104iが取付孔30aの周縁部に係合する。これにより、第1駆動リンク104が取り外し部材120とともにケーシング30に取り付けられた状態となる。尚、第2駆動リンク106も同様にケーシング30に取り付ける。
【0086】
次いで、駆動板120及びモータアクチュエータ100をケーシング30に組み付ける。
【0087】
次に、空調装置1の修理時等に第1駆動リンク104を取り外す場合について説明する。第1駆動リンク104を取り外す際には、まず、作業者は、図5に示すように、係合位置にある取り外し部材120の操作部120aをケーシング30内側(右側)へ押す。すると、図11に示すように、弾性片120dが撓み、操作部120aが押圧片120bと共にケーシング30内側へ向けて移動していく。このとき、取り外し部材120が第1駆動リンク104の小筒部104kにより案内されるので、取り外し部材120はスムーズに移動する。そして、押圧片120bが係合片104hを押圧し、係合片104hが離脱方向に弾性変形し、取付孔30aの周縁部から離脱する。
【0088】
このように、第1駆動リンク104の係合片104hを取り外し部材120により弾性変形させて取付孔30aの周縁部から離脱させるようにしたので、第1駆動リンク104やケーシング30に無理な力が作用しない。また、取り外し部材120は、第1駆動リンク104に予め取り付けられているので、必要なときにすぐに使用可能であり、管理や準備は不要である。
【0089】
以上説明したように、この実施形態によれば、第1駆動リンク104の嵌合筒部104aに挿入した取り外し部材120を第1駆動リンク104に取り付けておき、必要時に取り外し部材120により第1駆動リンク104の係合片104hを弾性変形させて離脱させることができるので、第1駆動リンク104を取り外すための専用工具をわざわざ用意しなくても、リンク104を取り外すことができ、よって、取り外し作業性が向上し、また、リンク104やケーシング30が破損しないので再利用できる。尚、第2駆動リンク106も同様に取り外し可能である。
【0090】
また、取り外し部材120の係止爪120fを押圧片120bに一体成形したので、部品点数を削減してコストを低減できるとともに、取り外し部材120をコンパクトにまとめて配設するのに要するスペースを小さくできる。
【0091】
また、第1駆動リンク104には、3つの係合片104hを嵌合筒部104aの周方向に間隔をあけて設けたので、リンク104を安定した状態で取り付けることができる。そして、取り外し作業時には、取り外し部材120の押圧片120bにより3つの係合片104hを一度に離脱させてリンク104を容易に取り外すことができる。尚、係合片104h及び押圧片120bの数は、は1つや2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0092】
また、取り外し部材120に弾性片120d及び係止爪120fを設け、これら弾性片120d及び係止爪120fを第1駆動リンク104の嵌合筒部104aの軸方向一側及び他側からそれぞれ係止させたので、取り外し部材120を所定位置に位置決め保持しておくことができ、操作性を良好にできる。
【0093】
また、取り外し部材120を、通常時には、係合片120bを取付孔30aの周縁部に係合させた状態とする係合位置としておき、必要時にのみ、係合片120bを取付孔30aの周縁部から離脱させる離脱位置にすることができるので、リンク104が誤って取り外されてしまうのを防止できる。
【0094】
また、取り外し部材120に弾性変形可能に一体成形された弾性片120dで取り外し部材120を付勢するようにしたので、取り外し部材120の動きをシンプルな構造で許容させることができる。
【0095】
また、取り外し部材120を係合位置から離脱位置まで案内するための小筒部104kを設けたので、取り外し部材120をスムーズに移動させて離脱位置に切り替えることができ、操作性を良好にできる。
【0096】
尚、上記実施形態では、第1吹出方向切替ダンパ76及び第2吹出方向切替ダンパ77をモータアクチュエータ100による操作力で自動的に開閉するようにした場合について説明したが、本発明は、このモータアクチュエータ100を省略して、第1吹出方向切替ダンパ76及び第2吹出方向切替ダンパ77を、乗員が操作する操作ワイヤ(図示せず)による操作力で手動で開閉するように構成した空調装置に適用することができる。この操作ワイヤの一端部は、例えばインストルメントパネル2の操作ダイヤルや操作レバーに連結され、他端部は、駆動板102に連結されており、乗員による操作力が駆動板102に直接付与されるようになっている。
【0097】
また、本発明は、内外気切替用リンク構造16のリンクや、温度調節用リンク構造111のリンクにも適用できる。
【0098】
また、この実施形態では、本発明を送風ユニット3と空調ユニット4とが左右方向に並んで設けられた、いわゆるセミセンタタイプの空調装置1に適用した場合について説明したが、本発明は、送風ユニットと空調ユニットとが一体化された、いわゆるフルセンタタイプの空調装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明は、例えば、吹出方向切替ダンパを駆動するためのリンクを備えたもの適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】車室前部の斜視図である。
【図2】実施形態に係る車両用空調装置を車両後側から見た図である。
【図3】空調ユニットの断面図である。
【図4】空調ユニットの上部の左側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】ケーシングの取付孔近傍の左側面図である。
【図7】第1駆動リンクの嵌合筒部近傍の側面図である。
【図8】取り外し部材の斜視図である。
【図9】取り外し部材の平面図である。
【図10】第1駆動リンク及び取り外し部材の分解斜視図である。
【図11】取り外し部材が離脱位置にある状態の図5相当図である。
【符号の説明】
【0101】
1 車両用空調装置
3 送風ユニット
4 空調ユニット
30 ケーシング
30a 取付孔
34 エバポレータ(空調用機器)
43 ヒータコア(空調用機器)
104 第1駆動リンク
104a 嵌合筒部
104h 係合片
104k 小筒部(案内部)
120 取り外し部材
120a 操作部
120b 押圧片(押圧部)
120d 弾性片(付勢部、第1係止部)
120f 係止突起(第2係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用機器を収容するケーシングにリンク取付用の取付孔が形成され、
上記リンクには、上記取付孔に回動可能に挿入される嵌合筒部と、上記取付孔の周縁部に係合する係合片とが形成され、
上記リンクの嵌合筒部が上記ケーシングの取付孔に挿入された状態で上記係合片が上記取付孔の周縁部に係合するように構成された車両用空調装置において、
上記リンクの係合片は、上記取付孔の周縁部に係脱する方向に弾性変形するように構成され、
上記リンクの嵌合筒部には、該リンクを上記ケーシングから取り外すための取り外し部材が挿入され、
上記取り外し部材には、上記係合片を上記取付孔の周縁部から離脱させる離脱方向に押圧する押圧部と、上記係合片を離脱方向に押圧するように上記押圧部を操作する操作部と、上記リンクに係止する係止部とが設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
取り外し部材のリンクへの係止部は、押圧部に一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
リンクには、複数の係合片が嵌合筒部の周方向に間隔をあけて設けられ、
取り外し部材には、複数の押圧部が上記係合片に対応して設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
取り外し部材には、リンクの嵌合筒部の軸方向一側及び他側からそれぞれ係止する第1係止部及び第2係止部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
取り外し部材は、リンクの係合片を取付孔の周縁部から離脱させる離脱位置と、該係合片を該取付孔の周縁部に係合させた状態とする係合位置とに切り替えられるとともに、該取り外し部材が係合位置となるように付勢する付勢部を備えていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空調装置において、
付勢部は、取り外し部材に弾性変形可能に一体成形された弾性片で構成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車両用空調装置において、
リンクには、取り外し部材を係合位置から離脱位置まで案内する案内部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−234844(P2010−234844A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82473(P2009−82473)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】