説明

車両用空調装置

【課題】車室内の快適性、及びフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波数の笛吹音を確実に防止することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】配風口(24)に向けて空気を導くガイド部(34)と、配風口を微小開度に調節可能なドア(16)と、配風口の閉塞時にドアが当接されるシート部(40)とで空気流路(4)を形成するケーシング(2)を備え、ケーシングは、ガイド部の空気流路側に突設される第1突条部(48)と、シート部の空気流路側に突設され、配風口の閉塞時にドアが押圧される先端部(52a)、及び、先端部からシート部の背面(40b)に亘って円弧状の曲面で連なる湾曲部(52b)からなる第2突条部(52)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関し、特に配風口の開口面積を調節する板状のドアによって空気流路を形成するケーシングを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用空調装置は、配風口の開口面積を調節する板状のドアによって空気流路を形成するケーシングを備えている。上記空気流路は上記ドアの他、配風口に向けて空気を導くガイド部と、上記ドアが閉時に当接するシート部とにより形成される。そして、特許文献1には、上記ドアが当接するシート部を上記空気流路内に突設し、その上流側又は下流側の少なくとも何れか一方の上記空気流路内に突起部を突設した自動車用空調装置が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
当該従来技術では、ドア全開時に上記配風口が全開となった状態で上記空気流路を高速空気が流れるとき、上記シート部及び上記突起部によって、これらを有する面にて発生する空気の剥離流や剥離流により発生する空気の渦流に起因した低周波数を主とした広帯域の騒音が低減されると想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−151316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記空調装置では、暖房時に乗員の足下に温風を配風するフット吹出モードが選択された場合、デフロスタ吹出口に連通する配風口が微小開度となるようにドアを調節し、フロントガラスに向けてデフロスタ吹出口から温風を少量配風する、いわゆるデフ漏らしを行うことによりフロントガラスの曇りを防止している。このときには配風口が微小開度となるため、配風口を高速空気が通過することにより空気の圧力変動やこれに伴う剥離流、ひいては渦流の発生によって空気が振動し、この空気振動によってドアが共振して高周波数の笛吹音が発生するおそれがある。
【0006】
しかしながら、上記従来技術では配風口が微小開度となるときを想定していないため、上記デフ漏らしによって生じる高周波数の笛吹音につき格別な配慮がなされておらず、車両用空調装置における騒音抑制には依然として課題が残されている。
本発明は、車室内の快適性、及びフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波数の笛吹音を確実に防止することができる車両用空調装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配風口に向けて空気を導くガイド部と、配風口を微小開度に調節可能なドアと、配風口の閉塞時にドアが当接されるシート部とで空気流路を形成するケーシングを備え、ケーシングは、ガイド部の空気流路側に突設される第1突条部と、シート部の空気流路側に突設され、配風口の閉塞時にドアが押圧される先端部、及び、先端部からシート部の背面に亘って円弧状の曲面で連なる湾曲部からなる第2突条部とを有する車両用空調装置である(請求項1)。
【0008】
好ましくは、ケーシングは、ガイド部、シート部及びドアによって空気が一時滞留する空間を区画し、第1突条部は、空気流路の空気流方向で空間の入口に位置するガイド部の外端縁部に突設される(請求項2)。
好ましくは、空気流路は車両用空調装置のデフロスタ吹出口に連通される(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1突条部を形成することにより、ガイド部で導かれる空気を第1突条部に衝突させて減速させることができるため、高速空気が微小開度となる配風口を通過することで発生する空気の圧力変動を抑制することができる。
しかも、第2突条部を先端部と湾曲部とから形成することにより、配風口が微小開度となるとき、先端部を超えた空気を湾曲部の一部に沿わせて円滑に流すことができるため、配風口が微小開度となるときに先端部の下流側に発生する空気の剥離流を抑制し、配風口を通過した空気が渦流となるのを抑制することができる。従って、配風口が微小開度となるときに空気が圧力変動及び渦流によって振動し、この空気振動によってドアが共振するのを効果的に抑制することができるため、ドアの共振に起因して発生する高周波数の笛吹音を確実に防止することができる(請求項1)。
【0010】
また、本発明によれば、第1突条部は、空気流路の空気流方向において空気が一時滞留する空間の入口に位置するガイド部の外端縁部に突設されることにより、空間の入口の手前で空気を減速させることができるため、高速空気が流入することによって空間の空気の圧力が上昇し、これにより先端部に衝突する空気の流速が上昇するのを効果的に抑制することができる。従って、高速空気が先端部に衝突することによって発生する先端部の下流側の空気の圧力変動を効果的に抑制することができ、空気の圧力変動、これに起因して発生する高周波数の笛吹音を更に確実に防止することができる(請求項2)。
【0011】
また、本発明によれば、空気流路は車両用空調装置のデフロスタ吹出口に連通されることにより、フロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波数の笛吹音を確実に防止することができる(請求項3)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空調装置の要部断面図である。
【図2】図1の状態のデフロスタ吹出用配風口を拡大して示した図である。
【図3】図2の状態における空気流を示した図である。
【図4】図2の状態において第1及び第2突条部を有しない従来構造の場合の空気流を示した図である。
【図5】図3の構造の場合と図4の構造の場合との騒音レベルの大小を騒音の周波数の大きさに応じて比較したグラフである。
【図6】図1の状態において、エアミックス用ドアのみを冷房時(全開)の位置に変えたときの空気流路全体における空気流を示した図である。
【図7】図1の状態のエアミックス用ドアが中間位置(約50%開度)となるときの空気流路全体における空気流を示した図である。
【図8】図1の状態において、エアミックス用ドアのみを暖房時(全閉)の位置に変えたときの空気流路全体における空気流を示した図である。
【図9】図6(冷房時)、図7(中間位置)、図8(暖房時)におけるそれぞれの笛吹音ピークレベルの大小を図3の構造の場合、図4の構造の場合で比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施形態に係る車両用空調装置1について図面を参照して説明する。
図1は空調装置1の要部断面図を示している。空調装置1は、図示しない冷凍サイクル等を構成する冷媒回路に組み込まれた熱交換器における熱交換等により、空気を乗員の所望の車室温度に冷却又は加熱して吹出口から車室に送風する。
【0014】
空調装置1はケーシング2を備え、ケーシング2内には空気流路4が形成されている。空気流路4には、図示しない送風機、当該送風機から送られた空気を冷却する冷却用熱交換器であるエバポレータ6、エバポレータ6で冷却された空気を加熱する加熱機器であるヒータ8、ヒータ8とエバポレータ6との間に配置されてヒータ8に送る空気とヒータ8をバイパスする空気との混合率を調整するエアミックス用ドア10が配置されている。
【0015】
更に、空気流路4にはフット吹出用ドア12、フェイス吹出用ドア14、デフロスタ吹出用ドア(ドア)16が配置され、これら各ドア10,12,14,16を開にすることによって空気流路4の一部をなすフット吹出用配風口18、フェイス吹出用配風口20,22、デフロスタ吹出用配風口(配風口)24が形成される。これら各配風口18,20,22,24は、ケーシング2のフット吹出用開口部(図示しない)、フェイス吹出用開口部26、デフロスタ吹出用開口部28に連通され、これら各開口部26,28等は車室に開口された、何れも図示しないフット吹出口、フェイス吹出口、デフロスタ吹出口にそれぞれ連通されている。
【0016】
そして、エアミックス用ドア10の開度を調整することにより空気を乗員の所望の車室温度に調整することができ、フット吹出用ドア12、フェイス吹出用ドア14、デフロスタ吹出用ドア16の開度を調整することにより上記温度調整された空気が所望の上記吹出口から送風される。
【0017】
図1に示す状態では、エアミックス用ドア10は中間位置である約50%開度、フット吹出用ドア12は全開、フェイス吹出用ドア14は全閉、デフロスタ吹出用ドア16は全閉位置から1〜2°程度の傾斜をなして微開された状態となっている。即ち、この状態においては、暖房時にエアミックス用ドア10が中間位置となる空調温度の温風を乗員の足下に配風するフット吹出モードが選択されており、デフロスタ吹出口に連通するデフロスタ吹出用配風口24が微小開度となるようにデフロスタ吹出用ドア16が調節されている。これにより、車両の図示しないフロントガラスの内面に向けてデフロスタ吹出口から温風を少量配風する、いわゆるデフ漏らしが行われ、暖房時におけるフロントガラスの曇りが効果的に防止される。
【0018】
各ドア10,12,14,16は、それぞれ回転軸10a,12a,14a,16aと、これらの各回転軸に枢支される板状のドア本体10b,12b,14b,16bとから構成され、それぞれの回転軸10a,12a,14a,16aの駆動によってドア本体10b,12b,14b,16bの傾斜を調整することにより開閉される揺動式のドアである。また、各ドア本体10b,12b,14b,16bの全閉時におけるシール面をなす表面はスポンジ状のシール部材で被覆されている。
【0019】
ケーシング2の内方に向かう外縁部には、空気流路4において、エバポレータ6を通過した後にヒータ6を通過した空気をケーシング2の内方に導いた後にフット吹出用配風口18に向け導くフット吹出用ガイド部30、フット吹出用配風口18の閉塞時にフット吹出用ドア12が当接されるフット吹出用シート部32、フェイス吹出用配風口22とデフロスタ吹出用配風口24とに分流して空気を導くフット吹出用兼デフロスタ吹出用ガイド部(ガイド部)34、フェイス吹出用配風口20,22の閉塞時にフェイス吹出用ドア14がそれぞれ当接されるフェイス吹出用シート部36,38、デフロスタ吹出用配風口24の閉塞時にデフロスタ吹出用ドア16が当接されるデフロスタ吹出用シート部(シート部)40、エバポレータ6を通過した空気をそのままケーシング2の内方に導くエバポレータ用ガイド部42、エバポレータ6を通過した後エアミックス用ドア10で分流された空気をヒータ8に導くヒータ用ガイド部44、エアミックス用ドア10が当接されるエアミックス用シート部46が延設され、これら各ガイド部及び各シート部が各ドアと共に各配風口から各開口部を経て各吹出口に連通する空気流路4の内壁を形成している。
【0020】
図2は、図1の状態のデフロスタ吹出用配風口24を拡大して示す。この配風口24におけるガイド部34とシート部40とは断面視で約120°程度の交差する位置にケーシング2の内方に向けて延設され、ガイド部34の外端縁部には配風口24側のガイド面34aに略垂直に第1突条部48が突設されている。第1突条部48は、図2に示すように例えば高さHは2〜3mm、外縁端部の端面からの距離Lは0〜2mm、厚みTは1〜3mmの板状に形成される。
【0021】
ケーシング2は、ガイド部34、シート部40及びドア16によって空気が一時滞留する空間50を区画しており、第1突条部48はガイド部34の外端縁部に突設されていることにより、配風口24への空気流方向でみて空間50の入口に位置付けられ、空気流路4における空気流を乱して減速させるいわば偏流板の役割を担っている。
【0022】
また、シート部40の外端縁部には配風口24側のシート面40aに第2突条部52が突設されている。第2突条部52は、配風口24の閉塞時、シート面40aから隆起した先端部52aがドア16に押圧されることでドア本体16のシール面16cを覆うシール部材に埋没され、ドア16との間にシール部を形成する。また、第2突条部52には、先端部52aからシート面40aと表裏をなす背面40bに亘って湾曲部52bが形成され、湾曲部52bは円弧状の所定の曲率をなす連続した継ぎ目のない滑らかな曲面で形成されている。
【0023】
図3は、図2の状態における空気流を示し、図4は、図2の状態において第1及び第2突条部48,52を有しない従来構成の場合の空気流を示す。図3の場合には矢印で示すように、空気がガイド部34で導かれる手前で第1突条部48に衝突して減速された後に空間50に流入される。空間50に流入された低速空気は、先端部52aを超えた後、湾曲部52bの一部に沿って剥離流や渦流を発生することなく円滑に流れる。
【0024】
一方、図4の場合には、空気は第1突条部48を有しないガイド部54に導かれ、そのまま空間50に流入し、鋭角をなす突条部56の先端部56aに衝突する。この際、先端部56の前後において空気の圧力が大きく変動する。先端部56を超えた空気は衝突により減速されるものの、先端部56に連なる外縁部の平端面56bから剥離し、複数の渦流を発生している。上記空気の圧力変動及び剥離流に起因する渦流の発生は配風口24周辺に空気振動を引き起こし、この空気振動によって主としてドア16が共振し、高周波数の笛吹音が発生する。
【0025】
図5は、図3の場合と図4の場合との騒音レベルの大小を騒音の周波数の大きさに応じて比較したグラフである。この図から明らかなように、図4の場合には、比較的高周波数となる領域で大きな騒音が発生し、換言すると、矢印で示す高周波数の笛吹音が発生する。これに対し、図3の場合には、矢印で示すように、図4の場合のような笛吹音が発生しないことが実験により判明している。
【0026】
図6〜図8は、図1の状態において、それぞれエアミックス用ドア10のみを冷房時(全開)、中間位置(約50%開度)、暖房時(全閉)の位置に変えたときの空気流路4全体における空気流を示した図である。
図6の場合には、エバポレータ6を通過した低温空気58(破線で示す)がフット吹出用配風口18に流入すると共に、比較的高速で第1突条部48に衝突する。
【0027】
図7は、図1〜図5で説明したエアミックス用ドア10の開度と同じ状態を示す。この場合には、エバポレータ6を通過した低温空気58のうちの約50%の量の低温空気60はヒータ8を更に通過して高温空気62(実線で示す)となる一方、エバポレータ6を通過した空気のうちの残りの約50%の量の空気はそのまま低温空気58としてケーシング2の内方に流入する。この際、エアミックス用ドア10は、図6の場合に比して空気流路4の流路を狭めると共に低温空気58にとってのガイド部としても機能するため、図6の場合に比してエバポレータ6を通過した後の低温空気58が高速となる。これにより、低温空気58は極めて高速で第1突条部に衝突する一方、高温空気62は高速となる低温空気58の空気流によって流れを変えられ、低温空気58と混合しながらフット吹出用配風口18に流入される。
【0028】
図8の場合には、エバポレータ6を通過した低温空気58は全量がヒータ8を通過して高温空気62となる。この高温空気62はヒータ8から近くの開口部であるフット吹出用配風口18にほぼ全量がそのまま流入すると共に、残りの若干量の高温空気62がヒータ8通過後に流れてくる過程で減速され、図6及び図7の場合に比して比較的低速で第1突条部48に衝突する。このように、エアミックス用ドア10の開度によって空気流路4全体における空気流が変化し、第1突条部48に衝突する空気の速度も変化する。
【0029】
図9は、図6(冷房時)、図7(中間位置)、図8(暖房時)におけるそれぞれの笛吹音ピークレベルの大小を図3の場合、図4の場合で比較したグラフである。
先ず従来の図4の構造の場合について説明すると、冷房時においてエアミックス用ドア10の開度が50%を超えて100%に近づいていく開度領域では、上述したように比較的高速となる空気がそのまま空間50に流入し、鋭角の先端部56aに直接に衝突し、先端部56aを超えた後に渦流を発生することから、比較的大きな笛吹音ピークレベルが維持されている。また、エアミックス用ドア10が約50%開度の中間位置となる領域では、上述したように空気は極めて高速でそのまま空間50に流入し、先端部56aに直接に衝突し、先端部56aを超えた後に渦流を発生することから、最も大きな笛吹音ピークレベル(AdB)となっている。また、暖房時においてエアミックス用ドア10の開度が50%を下回って0%に近づいていく開度領域では、上述したように空気が比較的低速で空間50にそのまま流入する。従って、この低速空気が先端部56aに衝突しても先端部56aの前後で生じる圧力変動は小さいことから、エアミックス用ドア10の開度が0%に近づくにつれて笛吹音ピークレベルも徐々に小さくなり、乗員に聴こえない程度の最低の笛吹音ピークレベル(BdB)となる。
【0030】
これに対し本実施形態の図3の構造の場合には、エアミックス用ドア10が図6〜図8の何れの開度状態のときであっても、空気がガイド部34で導かれる手前で第1突条部48に衝突して十分に減速された後に空間50に流入されることから、この低速空気が先端部52aに衝突しても、先端部52aの前後で生じる圧力変動は小さい。また、空気は先端部52aを超えた後も湾曲部52bの一部に沿って剥離流や渦流を発生することなく円滑に流れることから、笛吹音ピークレベルは、エアミックス用ドア10の開度にかかわらず、図4の暖房時における場合とほぼ同じの最低の笛吹音ピークレベル(BdB)近傍に維持されることが実験により判明している。尚、図3の場合において、第1突条部48のみを排除し、第2突条部52のみを設けた構成では、エアミックス用ドア10の中間位置において、最大の笛吹音ピークレベル(AdB)よりも小さいが最小の笛吹音ピークレベル(BdB)よりも大きい中間の笛吹音ピークレベル(CdB)となることが実験により判明している。
【0031】
以上のように本実施形態の車両用空調装置1は、第1突条部48を形成することにより、ガイド部34で導かれる空気を第1突条部48に衝突させて減速させることができるため、高速空気が微小開度となる配風口24を通過することで発生する空気の圧力変動を抑制することができる。
【0032】
しかも、第2突条部52を先端部52aと湾曲部52bとから形成することにより、配風口24が微小開度となるとき、先端部52aを超えた空気を湾曲部52bの一部に沿わせて円滑に流すことができるため、配風口24が微小開度となるときに先端部52aの下流側に発生する空気の剥離流を抑制し、配風口24を通過した空気が渦流となるのを抑制することができる。従って、配風口24が微小開度となるときに空気が圧力変動及び渦流によって振動し、この空気振動によってドア16が共振するのを効果的に抑制することができるため、ドア14の共振に起因して発生する高周波数の笛吹音を確実に防止することができる。
【0033】
また、第1突条部48は空間50の入口に位置するガイド部34の外端縁部に突設されることにより、空間50の入口の手前で空気を減速させることができるため、高速空気が流入することによって空間50の空気の圧力が上昇し、これにより先端部52aに衝突する空気の流速が上昇するのを効果的に抑制することができる。従って、高速空気が先端部52aに衝突することによって発生する先端部52aの下流側の空気の圧力変動を効果的に抑制することができ、空気の圧力変動、これに起因して発生する高周波数の笛吹音を更に確実に防止することができる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に制約されるものではなく種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、空気流路4が車両用空調装置1のデフロスタ吹出口に微小開度となる配風口24で連通されるデフ漏らし時を想定しており、この場合にはフロントガラスの防曇効果を確保しつつ、高周波数の笛吹音を確実に防止することができる。しかし、デフ漏らし時に限定されず、上記デフ漏らし時と同様の運転モードや空気流となる場合においても同様のガイド部34及びシート部40をケーシング2に形成することで、高周波数の笛吹音を防止可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用空調装置
2 ケーシング
4 空気流路
16 デフロスタ吹出用ドア(ドア)
24 デフロスタ吹出用配風口(配風口)
34 フット吹出用兼デフロスタ吹出用ガイド部(ガイド部)
40 デフロスタ吹出用シート部(シート部)
40b 背面
48 第1突条部
50 空間
52 第2突条部
52a 先端部
52b 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配風口に向けて空気を導くガイド部と、前記配風口を微小開度に調節可能なドアと、前記配風口の閉塞時に前記ドアが当接されるシート部とで空気流路を形成するケーシングを備え、
前記ケーシングは、
前記ガイド部の前記空気流路側に突設される第1突条部と、
前記シート部の前記空気流路側に突設され、前記配風口の閉塞時に前記ドアが押圧される先端部、及び、前記先端部から前記シート部の背面に亘って円弧状の曲面で連なる湾曲部からなる第2突条部と
を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記ガイド部、前記シート部及び前記ドアによって空気が一時滞留する空間を区画し、
前記第1突条部は、前記空気流路の空気流方向で前記空間の入口に位置する前記ガイド部の外端縁部に突設されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空気流路は前記車両用空調装置のデフロスタ吹出口に連通されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−254764(P2012−254764A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130163(P2011−130163)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】