説明

車両用空調装置

【課題】熱交換器の外周面に設けられたシール材とケーシング内面との間に隙間が形成される構成であっても、コスト高を招くことなく、熱交換器とケーシングとの間からの空気漏れを抑制する。
【解決手段】空調用空気が導入されるケーシング27aと、コア21aを有するエバポレータ21と、シール材65とを備えた車両用空調装置1において、ケーシング27aは、上側及び下側ケーシング構成部材27e,27fを備え、上側ケーシング構成部材27eには、ケーシング構成部材27eとエバポレータ21との間に隙間Sを設けるための膨出部60aを備え、シール材65は、コア21a側を覆うように形成され、ケーシング構成部材27eの内面には、シール材65に当接して空調用空気の洩れを抑制するシール部60dが一体成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内に熱交換器が収容された車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ケーシング内に熱交換器を収容し、このケーシング内に導入した空調用空気を、熱交換器を通過させて温度調節した後、車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、熱交換器を収容するケーシングが上下方向に2分割されており、熱交換器は上側ケーシング構成部材と下側ケーシング構成部材とで挟まれている。
【0003】
また、特許文献1の熱交換器の外周面にはシール材が配設されている。このシール材により、上流側の空気が熱交換器の外周面とケーシング内面との間からの下流側へ漏れるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−69207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、熱交換器に接続される配管の取り回し等によっては、上側ケーシング構成部材の側壁を外方へ膨出させなければならない場合がある。こうなると、上側ケーシング構成部材の内面と熱交換器のシール材との間に隙間ができ、シール性を確保できないことが考えられる。
【0006】
このことに対し、上側ケーシング構成部材の内面と熱交換器のシール材との隙間を塞ぐ閉塞部材を別部材として設けることが考えられるが、そのようにすると部品点数の増加によるコスト高を招く。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換器の外周面に設けられたシール材とケーシング内面との間に隙間が形成される構成であっても、コスト高を招くことなく、熱交換器とケーシングとの間からの空気漏れを抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記目的を達成するために、熱交換器のコア側の一部をシール材で被覆し、このシール材に当接するシール部をケーシング構成部材に設けてシール性を確保するようにした。
【0009】
第1の発明は、空調用空気が導入されるケーシングと、上記ケーシング内に収容され、導入された空気が通過して該空気を加熱又は冷却するように構成されたコアを有する熱交換器と、上記熱交換器に設けられ、該熱交換器の外周面と上記ケーシングの内面との間をシールするためのシール材とを備えた車両用空調装置において、上記ケーシングは、上記熱交換器を空気通過方向と交差する方向から挟むように分割された第1及び第2ケーシング構成部材を備え、上記第1ケーシング構成部材における熱交換器の外周面を囲む部位は、該熱交換器の外周面から上記ケーシング外方へ離れるように形成されて該ケーシング構成部材と熱交換器との間に隙間を設けるための隙間形成部を備え、上記シール材は、上記熱交換器の外周面を覆うように配設されるとともに、該シール材における第1ケーシング構成部材の隙間形成部に対応する部位は、上記熱交換器のコア側を覆うように形成され、上記第1ケーシング構成部材の内面には、上記シール材における隙間形成部に対応する部位に対して空気流れ方向から当接して空調用空気の洩れを抑制するシール部が一体成形されていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、第1ケーシング構成部材に隙間形成部を設けて熱交換器の外周面と第1ケーシング構成部材との間に部分的に隙間を形成する場合に、シール材によって熱交換器のコア側を覆うようにし、第1ケーシング構成部材に一体成形したシール部を空気流れ方向からシール材に当接させてシール性を確保することが可能になる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記熱交換器には、該熱交換器に熱交換媒体を給排するための配管が該熱交換器の外周面から突出するように接続され、上記第1ケーシング構成部材の隙間形成部のケーシング内方には、上記配管が配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、熱交換器に接続される配管を第1ケーシング構成部材の隙間形成部に収容することが可能になり、この場合に、隙間形成部と熱交換器の外周面との間からの空調用空気の洩れが抑制される。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明において、上記第1ケーシング構成部材のシール部は、該第1ケーシング構成部材の内面から上記ケーシング内方へ突出するリブで構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、第1ケーシング構成部材の剛性がシール部によって高まる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、第1ケーシング構成部材が、熱交換器との間に隙間を設けるための隙間形成部を備えており、シール材を、熱交換器のコア側を覆うように形成し、第1ケーシング構成部材の内面に、シール材における隙間形成部に対応する部位に空気流れ方向から当接して空調用空気の洩れを抑制するシール部を一体成形したので、第1ケーシング構成部材と熱交換器との隙間を閉塞するための閉塞部材を別途設けることなく、シール性を確保することができ、低コスト化を図ることができる。
【0016】
第2の発明によれば、第1ケーシング構成部材の隙間形成部のケーシング内方に、熱交換器に接続される配管を配置することによって隙間形成部を利用する場合に空調用空気の洩れを抑制することができる。
【0017】
第3の発明によれば、第1ケーシング構成部材のシール部をリブで構成したので、第1ケーシング構成部材のシール部周りの剛性を高めることができ、これにより、シール部によるシール性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1にかかる車両用空調装置の斜視図である。
【図2】車両用空調装置の右側面図である。
【図3】車両用空調装置の平面図である。
【図4】車両用空調装置の断面図である。
【図5】前側ケーシングの分解斜視図である。
【図6】エバポレータを空気流れ方向下流側から見た図である。
【図7】エバポレータの右側面図である。
【図8】下側ケーシング構成部材の背面図である。
【図9】下側ケーシング構成部材の右側面図である。
【図10】上側ケーシング構成部材の背面図である。
【図11】上側ケーシング構成部材の右側面図である。
【図12】図10におけるXII−XII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1〜図3は、本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置1の空調ユニット20を示すものである。この車両用空調装置1は、自動車の車室前端部に配設されているインストルメントパネル(図示せず)内に搭載されている。
【0021】
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットと、空調ユニット20とを備えている。送風ユニットは、車両の助手席側に配置され、空調ユニット20は車幅方向中央部に配置されている。送風ユニットと空調ユニット20とは接続されている。
【0022】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両右側を単に「右」といい、車両左側を単に「左」というものとする。
【0023】
送風ユニットは、送風機を内蔵するとともに、内外気切替部を備えている。内外気切替部は、車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して導入するためのものであり、送風ユニットは、車室内の空気又は車室外の空気を空調ユニット20に送ることができるようになっている。
【0024】
図4に示すように、空調ユニット20は、冷却用熱交換器としてのエバポレータ21と、加熱用熱交換器としてのヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26と、これらを収容する樹脂製のケーシング27とを備えている。
【0025】
図1及び図2に示すように、ケーシング27は、前後方向の中間部で分割された前側ケーシング27aと、後側ケーシング27bとを備えている。図5にも示すように、前側ケーシング27aには、エバポレータ21が収容され、一方、図4に示すように、後側ケーシング27bには、ヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26が収容されるようになっている。前側ケーシング27a及び後側ケーシング27bは、ファスナやビス等を用いて結合されている。
【0026】
さらに、図1に示すように後側ケーシング27bは、左右方向の中間部で分割された左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dを備えている。左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dは、ファスナやビス等を用いて結合されている。
【0027】
前側ケーシング27aは、図5に示すように上下方向の中間部で分割された上側ケーシング構成部材27e及び下側ケーシング構成部材27fを備えている。上側ケーシング構成部材27e及び下側ケーシング構成部材27fもファスナやビス等を用いて結合されている。
【0028】
図4に示すように、ケーシング27の内部には、空調用空気が流通する空気通路Rが形成されている。エバポレータ21は、前側ケーシング27aの内部において空気通路R内に収容されている。
【0029】
このエバポレータ21の構造について説明すると、このエバポレータ21は、多数のチューブ及びフィン(共に図示せず)を有するチューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、冷凍サイクルの一要素である蒸発器を構成している。
【0030】
エバポレータ21は、全体として略直方体状をなしている。エバポレータ21のチューブ及びフィンは上下方向に延び、左右方向に交互に並ぶように配置され、従って、図4に示すように、エバポレータ21は空気通路Rの一部を構成している冷却通路R1を横切っている。チューブは、エバポレータ21の空気通過方向(前後方向)に2列配列されている。チューブ及びフィンによってコア21aが構成されている。
【0031】
図6や図7にも示すように、エバポレータ21の上部及び下部には、それぞれ上側及び下側ヘッダタンク21b,21cが設けられ、上側及び下側ヘッダタンク21b,21cにチューブの上端部及び下端部がそれぞれ接続されている。上側及び下側ヘッダタンク21b,21cの内部には仕切板(図示せず)が配設されており、この仕切板によってエバポレータ21には複数のパスが構成されている。
【0032】
図5〜図7に示すように、エバポレータ21の上側ヘッダタンク21bの右側面には、熱交換媒体としての冷媒を供給するための供給側クーラパイプ47と、エバポレータ21内を循環した後の冷媒を排出するための排出側クーラパイプ48とが接続されており、エバポレータ21の内部には熱交換媒体としての冷媒が循環するようになっている。供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48は、エバポレータ21の右側面から突出している。
【0033】
冷却通路R1内を流れる空調用空気がエバポレータ21を通過することによって冷媒と空調用空気とが熱交換し、空調用空気が冷却され、この時にエバポレータ21の表面に結露した結露水は、チューブやフィンを伝って下方へ流れる。
【0034】
エバポレータ21は、前側ケーシング27a内に収容された状態で、コア21aの空気流入面が前方に向き、また、空気流出面が後方に向き、これら空気流入面及び空気流出面は略上下方向に延びる姿勢となる。さらに、エバポレータ21の右側面及び左側面は、上下方向に延びており、また、上面及び下面は、左右方向に延びている。
【0035】
エバポレータ21の右側面(外周面)には、右側シール材65が配設されている。この右側シール材65は、例えば発泡ウレタン等の弾性を有するシート材で構成されており、接着剤等を用いてエバポレータ21に貼り付けられている。右側シール材65の上側には、コア21aの空気流出面側に廻り込むように延び、該コア21aの一部を覆うコア側被覆部65aが一体成形されている。コア側被覆部65aはコア21aに接着されている。
【0036】
コア側被覆部65aが設けられた部位は、右側シール材65における上側ケーシング構成部材27eの側壁膨出部60a(後述する)に対応する部位である。
【0037】
尚、コア21aにおけるコア側被覆部65aによって覆われる面積は、空気流出面全体に比べて極めて小さいため、コア側被覆部65aを設けたことによる性能低下は殆ど無い。また、コア側被覆部65aは、右側シール材65の本体部分(エバポレータ21の右側面に接着される部分)とは別体としてもよい。
【0038】
エバポレータ21の左側面には、右側と同様な左側シール材66が貼り付けられている。この左側シール材66には、コア側被覆部が設けられていない。
【0039】
また、エバポレータ21の下面には、下側シール材67が貼り付けられている。この下側シール材67は、各側面のものと同様な材質からなり、図6に示すように部分的に下側ヘッダタンク21cの側面まで廻り込むように形成されている。
【0040】
供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48の基端部には、パイプ用シール材68が巻き付けられている。
【0041】
次に、前側ケーシング27aの構造について説明する。図1に示すように、前側ケーシング27aの右側壁部には、送風ユニット側(右側)へ向けて延びる導入ダクト30が一体成形されている。導入ダクト30は、前側ケーシング27aの分割面によって上下方向に2分割されており、上側ダクト構成部30aが上側ケーシング構成部材27eに一体成形され、下側ダクト構成部30bが下側ケーシング構成部材27fに一体成形されている。この導入ダクト30内の通路は空気通路Rの上流部分で構成されている。
【0042】
前側ケーシング27aには、ヒータパイプ44,45及びクーラパイプ47,48を支持するブラケット46が設けられている。上側ブラケット構成部46aが上側ケーシング構成部材27eに一体成形され、下側ブラケット構成部46bが下側ケーシング構成部材27fに一体成形されている。
【0043】
図5に示すように、下側ケーシング構成部材27fは、全体として上方に開放するように形成されている。図8にも示すように、下側ケーシング構成部材27fの後壁部には、空調用空気を後側ケーシング27bへ流通させるための切欠部50が形成されている。下側ケーシング構成部材27fの右側壁部51は、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の右側面に沿うように延びている。下側ケーシング構成部材27fの左側壁部52も、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の左側面に沿うように延びている。右側壁部51の内面は、エバポレータ21の右側シール材65におけるコア側被覆部65aよりも下側の部位に圧接し、また、左側壁部52の内面は左側シール材66の下側の部位に圧接するようになっている。
【0044】
また、下側ケーシング構成部材27fの底壁部53は、基本的にはエバポレータ21の下面に沿って延び、下側シール材67に圧接するように形成されており、その一部には、エバポレータ21に結露して滴下した結露水を収集して排出するための結露水排水部49が設けられている。結露水排水部49は、底壁部53を、その左右方向中央部近傍が最も低くなるように傾斜させることによって構成されている。図9にも示すように、結露水排水部49には、結露水を前側ケーシング27aの外部へ排出するためのドレン部Dが設けられている。ドレン部Dには、ドレンホースHが接続されている。
【0045】
上側ケーシング構成部材27eは、全体として下方に開放するように形成されている。図5及び図10に示すように、上側ケーシング構成部材27eの後壁部には、空調用空気を後側ケーシング27bへ流通させるための切欠部56が上記下側ケーシング構成部材27fの切欠部50と一致するように形成されている。
【0046】
上側ケーシング構成部材27eの左側壁部57、上壁部58及び右側壁部60は、エバポレータ21の外周面を囲む部位である。そして、左側壁部57は、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の左側面に沿うように延びている。左側壁部57は、エバポレータ21の左側シール材66の上側の部位に圧接するようになっている。
【0047】
この左側壁部57の下端と、下側ケーシング構成部材27fの左側壁部52の上端とは、両ケーシング構成部材27e,27fを組み合わせた際に連続するようになっている。
【0048】
また、上側ケーシング構成部材27eの上壁部58は、左右方向に略水平に、エバポレータ21の上面に沿うように延びている。
【0049】
上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60は、エバポレータ21の外周面(右側面)から前側ケーシング27aの外方(右側)へ離れるように膨出する側壁膨出部60aを備えており、図12に示すように、この側壁膨出部60aにより、上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60とエバポレータ21の右側面との間に隙間Sが形成されることになる。つまり、側壁膨出部60aは、本発明の隙間形成部に相当する。そして、側壁膨出部60aの内部空間である隙間Sには、同図に仮想線で示すように、供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48が配置されている。
【0050】
側壁膨出部60aを構成する前壁部60c内面には、シール部60dが一体成形されている。シール部60dの形成位置は、エバポレータ21の右側シール材65のコア側被覆部65aの形成位置に対応しており、また、形成範囲は、コア側被覆部65aの形成範囲に対応している。従って、シール部60dは上下方向に延びることになる。
【0051】
このシール部60dは、右側シール材65のコア側被覆部65aの形成部位に対して空気流れ方向下流側から当接することにより、エバポレータ21の右側面の上側と上側ケーシング構成部材27eの内面との間からの空調用空気の洩れを抑制するためのものである。また、シール部60dが上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60の内面に一体成形されていて上下方向に延びているので、リブとして機能することになり、上側ケーシング構成部材27eのシール部60d近傍の剛性が高まる。
【0052】
図5に示すように、上側ケーシング構成部材27eの上側ダクト構成部30aには、上方へ膨出するように形成されたダクト膨出部30cが形成されている。このダクト膨出部30cの内部と上記側壁膨出部60aの内部とは連通している。
【0053】
また、上側ブラケット構成部46aの内部は中空であり、上記ダクト膨出部30cの内部と連通している(図12参照)。
【0054】
供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48は、ダクト膨出部30c及び上側ブラケット構成部46aの内部を通ってブラケット46に達している。
【0055】
尚、図2や図3に示すように、供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48の先端側には、膨張弁を内蔵した膨張弁ブロックCが取り付けられている。
【0056】
クーラパイプ47,48の先端側は、車両のダッシュパネルの貫通孔からエンジンルームへ突出するようになっている。クーラパイプ47,48の先端側には、膨張弁ブロックCを介してエンジンルーム内のパイプが接続される。
【0057】
次に、後側ケーシング27bの構造について説明する。図1及び図3に示すように、後側ケーシング27bの上壁部の前後方向中央部には、デフロスタ吹出口32が形成されている。このデフロスタ吹出口32には、図示しないがインストルメントパネルのデフロスタノズルまで延びるデフロスタダクトが接続されている。
【0058】
後側ケーシング27bの上壁部の後側には、ベント吹出口34が形成されている。このベント吹出口34には、図示しないがインストルメントパネルのベントノズルまで延びるベントダクトが接続されている。
【0059】
図2に示すように、後側ケーシング27bの後側には、ヒート吹出口36が形成されている。このヒート吹出口36には、図示しないが乗員の足下まで延びるフットダクトが接続されている。
【0060】
図4に示すように、空気通路Rの冷却通路R1の下流部は、後側ケーシング27b内において上下に分岐しており、後側ケーシング27b内の隔壁38の上側に形成された上側開口部40と、隔壁38の下側に形成された下側開口部41とに連通している。
【0061】
下側開口部41には、空調用空気を加熱する加熱通路R2が接続されている。上側開口部40には、エアミックス空間R3が接続されている。加熱通路R2の下流側は、エアミックス空間R3に接続されている。
【0062】
エアミックスダンパ23は、上側開口部40及び下側開口部41を開閉するとともに、加熱通路R2の下流端開口43も開閉するように構成されており、図4に実線で示すように上側開口部40を全開にした状態で下側開口部41及び加熱通路R2の下流端開口43を全閉にし、一方、同図に仮想線で示すように下側開口部41を全開にした状態で上側開口部40及び加熱通路R2の下流端開口43を全開にする。尚、エアミックスダンパ23による各開口部40,41,43の開度は任意に設定できるようになっている。
【0063】
デフロスタダンパ24は、デフロスタ吹出口32を開閉し、ベントダンパ25は、ベント吹出口34を開閉し、ヒートダンパ26は、ヒート吹出口36を開閉する。
【0064】
ヒータコア22は、加熱通路R2に配設されている。図1に示すように、ヒータコア22には、熱交換媒体としてのエンジン冷却水を供給するための供給側ヒータパイプ44と、ヒータコア22を循環した後のエンジン冷却水を排出するための排出側ヒータパイプ45とが接続されており、ヒータコア22の内部にはエンジン冷却水が循環するようになっている。このエンジン冷却水と加熱通路R2内を流れる空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。
【0065】
ヒータパイプ44,45は、後側ケーシング27bの右側壁部を貫通してケーシング27の外方を前側へ向かって延びている。ヒータパイプ44,45の前端側(先端側)は、前側ケーシング27aに設けられたブラケット46に保持されている。ヒータパイプ44,45の先端側は、車両のダッシュパネル(図示せず)に形成された貫通孔からエンジンルームへ突出するようになっている。ヒータパイプ44,45の先端側には、エンジンルーム内のパイプが接続される。
【0066】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の運転時について説明する。送風ユニットから送風された空調用空気は導入ダクト30内を流れて冷却通路R1に流入し、エバポレータ21を通過して冷却される。このときエバポレータ21で発生した結露水はケーシング27の結露水排水部49に滴下して収集される。
【0067】
また、エバポレータ21には、右側シール材65、左側シール材66及び下側シール材67が配設されており、それらが前側ケーシング27aの内面に圧接している。また、上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60に側壁膨出部60aを形成してエバポレータ21の右側面との間に配管用の隙間Sを形成しているが、この実施形態では、上側ケーシング構成部材27eにおける側壁膨出部60aに対応する部位にシール部60dを形成して右側シール材65に対して空気流れ方向から当接させているので、シール性を十分に確保することができる。これにより、ケーシング27に導入した空調用空気の殆どをエバポレータ21に導入して効率良く冷却を行うことができる。
【0068】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1によれば、上側ケーシング構成部材27eに、エバポレータ21との間に隙間Sを設けるための側壁膨出部60aを設け、右側シール材65をエバポレータ21のコア21a側を覆うように形成し、上側ケーシング構成部材27eの内面に、右側シール材65における側壁膨出部60cに対応する部位に対し空気流れ方向から当接して空調用空気の洩れを抑制するシール部60dを一体成形したので、上側ケーシング構成部材27eとエバポレータ21との隙間Sを閉塞するための閉塞部材を別途設けることなく、シール性を確保することができ、低コスト化を図ることができる。
【0069】
また、上側ケーシング構成部材27eの側壁膨出部60a内方に、エバポレータ21に接続される供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48を配置することによって側壁膨出部60aを利用する場合に空調用空気の洩れを抑制することができる。
【0070】
また、上側ケーシング構成部材27eのシール部60dをリブで構成したので、上側ケーシング構成部材27eのシール部60d周りの剛性を高めることができ、これにより、シール部60dによるシール性をより一層高めることができる。
【0071】
尚、上記実施形態では、エバポレータ21とケーシング27内面との間のシール構造として本発明を適用したが、これに限らず、例えば、ヒータコア22を前側ケーシング27aと同様な構成のケーシングに収容する場合に、ヒータコア22とケーシング内面との間のシール構造に本発明を適用することもできる。
【0072】
また、前側ケーシング27aの上側ケーシング構成部材27eの左側壁部57に膨出部を設けてエバポレータ21との間に隙間を形成する場合にも本発明を適用することが可能である。
【0073】
また、前側ケーシング27aの下側ケーシング構成部材27fの左又は右側壁に膨出部を設けてエバポレータ21との間に配管用の隙間を形成する場合にも本発明を適用することが可能である。
【0074】
また、シール部60dは、複数設けてもよい。シール部60dは、上下方向に直線状に延びる形状であってもよいし、屈曲しながら延びる形状であってもよい。また、シール部60dを断続的に設けてもよい。
【0075】
また、車両用空調装置1としては、上記したような空調ユニット20と送風ユニットとが左右方向に並んで配設されたセミセンタタイプの他、熱交換器及び送風機が車幅方向の中央部に配設されたフルセンタタイプのいずれであっても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、例えばエバポレータの外周面とケーシング内面との間に隙間を形成する場合に適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用空調装置
20 空調ユニット
21 エバポレータ(冷却用熱交換器)
22 ヒータコア(加熱用熱交換器)
27 ケーシング
27e 上側ケーシング構成部材(第1ケーシング構成部材)
27f 下側ケーシング構成部材(第2ケーシング構成部材)
47 供給側クーラパイプ(配管)
48 排出側クーラパイプ(配管)
60a 側壁膨出部
60d シール部
65 右側シール部材
65a コア側被覆部
S 隙間
R 空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気が導入されるケーシングと、
上記ケーシング内に収容され、導入された空気が通過して該空気を加熱又は冷却するように構成されたコアを有する熱交換器と、
上記熱交換器に設けられ、該熱交換器の外周面と上記ケーシングの内面との間をシールするためのシール材とを備えた車両用空調装置において、
上記ケーシングは、上記熱交換器を空気通過方向と交差する方向から挟むように分割された第1及び第2ケーシング構成部材を備え、
上記第1ケーシング構成部材における熱交換器の外周面を囲む部位は、該熱交換器の外周面から上記ケーシング外方へ離れるように形成されて該ケーシング構成部材と熱交換器との間に隙間を設けるための隙間形成部を備え、
上記シール材は、上記熱交換器の外周面を覆うように配設されるとともに、該シール材における第1ケーシング構成部材の隙間形成部に対応する部位は、上記熱交換器のコア側を覆うように形成され、
上記第1ケーシング構成部材の内面には、上記シール材における隙間形成部に対応する部位に対して空気流れ方向から当接して空調用空気の洩れを抑制するシール部が一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
上記熱交換器には、該熱交換器に熱交換媒体を給排するための配管が該熱交換器の外周面から突出するように接続され、
上記第1ケーシング構成部材の隙間形成部のケーシング内方には、上記配管が配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用空調装置において、
上記第1ケーシング構成部材のシール部は、該第1ケーシング構成部材の内面から上記ケーシング内方へ突出するリブで構成されていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−86753(P2013−86753A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231724(P2011−231724)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】