車両用衝突検知装置
【課題】軟質樹脂製のチャンバ部材に圧力センサを簡単な構造で確実に取り付けることができる車両用衝突検知装置を提供することを目的とする。
【解決手段】チャンバ空間7aが内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材7は、チャンバ部材7よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部72aを有するインサート部材72が開口部71bの近傍にインサート成形されている。よって、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサ8を、軟質樹脂製であるため他の部材を直接取り付けることが困難なチャンバ部材7に対し、インサート部材72の固定部72aを介して簡単且つ確実に固定することができる。
【解決手段】チャンバ空間7aが内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材7は、チャンバ部材7よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部72aを有するインサート部材72が開口部71bの近傍にインサート成形されている。よって、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサ8を、軟質樹脂製であるため他の部材を直接取り付けることが困難なチャンバ部材7に対し、インサート部材72の固定部72aを介して簡単且つ確実に固定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両への歩行者等の衝突を検知する車両用衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の安全性に関して、事故時に車両の搭乗者の安全性を確保するだけでなく、車両に歩行者が衝突したときに歩行者へのダメージを軽減することも求められている。そこで、歩行者の車両への衝突を検知して、例えばアクティブフードやカウルエアバッグ等の歩行者保護装置を作動させて、車両に衝突してボンネットに倒れ込んできた歩行者が受ける傷害値(歩行者が受ける衝撃)を低減するシステムが提案されている。
【0003】
例えば特開2006−117157号公報(特許文献1)には、衝突を検知するために車両バンパ内でバンパレインフォースメントの前面にチャンバ部材が配設され、チャンバ空間内の圧力変化を圧力センサで検出することにより車両バンパへの歩行者などの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−117157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したチャンバ部材と圧力センサとを用いた車両用衝突検知装置において、チャンバ部材を軟質樹脂により形成した場合は、チャンバ部材のチャンバ空間に通じる差し込み孔へ圧力センサの圧力導入管を差し込み、圧力センサの本体部を剛体であるバンパレインフォースメントに金属製のブラケットを介して固定する構成が考えられる。
【0006】
しかしながら、かかる構成では、圧力センサの取付け構造が複雑となり、部品点数が多くなると共に、取付け工数が掛かるという問題がある。また、圧力センサがチャンバ部材とバンパレインフォースメントとに跨って取り付けられる構成であるため、チャンバ部材とバンパレインフォースメントとの線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材の収縮によって圧力センサにテンションがかかる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、軟質樹脂製のチャンバ部材に圧力センサを簡単な構造で確実に取り付けることができる車両用衝突検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、車両バンパ内でバンパレインフォースメントの前面に配設され且つチャンバ空間が内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材と、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサとを備え、前記チャンバ空間内の圧力を前記チャンバ部材に設けられた開口部を介して前記センサ本体の内部へ導入して前記センサ素子により圧力検出を行い、その圧力検出結果に基づいて前記車両バンパへの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置において、
前記チャンバ部材は、前記チャンバ部材よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部を有するインサート部材が前記開口部の近傍にインサート成形され、
前記圧力センサは、前記インサート部材の前記固定部を介して前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、チャンバ空間が内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材は、チャンバ部材よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部を有するインサート部材が開口部の近傍にインサート成形されている。よって、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサを、軟質樹脂製であるため他の部材を直接取り付けることが困難なチャンバ部材に対し、インサート部材の固定部を介して簡単且つ確実に固定することができる。また、ブラケット等の固定部材を介してバンパレインフォースメントへ固定する必要がないので、圧力センサをチャンバ部材に取り付ける際の取り付け工数を低減することができる。さらに、圧力センサがチャンバ部材のみに対して固定されるので、圧力センサがチャンバ部材とバンパレインフォースメントとに跨って取り付けられる構成のように、チャンバ部材とバンパレインフォースメントとの線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材の収縮によって圧力センサにテンションがかかるという欠点が無い。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出する雄ネジ部であり、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雄ネジ部に雌ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、インサート部材の固定部は、チャンバ部材の外側へ突出する雄ネジ部であるので、圧力センサは、その取り付け部を介して雄ネジ部に雌ネジ部材を締結することによって、チャンバ部材に対して簡単且つ確実に固定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記インサート部材の前記固定部は、雌ネジ部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雌ネジ部に雄ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、インサート部材の固定部は、雌ネジ部を有しているので、圧力センサは、その取り付け部を介して雌ネジ部に雄ネジ部材を締結することによって、チャンバ部材に対して簡単かつ確実に固定することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を前記固定部の前記係止部により係止させることによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、インサート部材の固定部は、チャンバ部材の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有しているので、圧力センサの取り付け部を固定部の係止部により係止させることによって、圧力センサをチャンバ部材に簡単且つ確実に固定することができる。また、雌ネジ部材や雄ネジ部材等を別途取り付ける必要がないため、より一層、部品点数を削減し、コストの低減を図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記インサート部材は、前記固定部と一体的に形成されたフランジ部を有し、前記フランジ部が前記チャンバ部材に埋設されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、インサート部材は、固定部と一体的に形成されたフランジ部を有し、フランジ部がチャンバ部材に埋設されているので、フランジ部がチャンバ部材を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材と確実に一体化され、チャンバ部材からの脱落が防止される。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記インサート部材の前記フランジ部は、非円形の回り止め形状を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、インサート部材のフランジ部は、非円形である回り止め形状を有するので、インサート部材に圧力センサを取り付ける際にインサート部材がチャンバ部材に対して空回りせず、確実に固定作業を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記インサート部材は、複数の前記固定部が板状部を介して一体的に設けられたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、インサート部材は、複数の固定部が板状部を介して一体的に設けられているので、チャンバ部材における圧力センサ取り付け部分の剛性が増し、圧力センサをチャンバ部材に固定する際に変形が生じにくくなる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記インサート部材は、前記板状部に前記チャンバ部材の前記開口部と連通する貫通孔が設けられたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、インサート部材は、板状部にチャンバ部材の開口部と連通する貫通孔を有しているので、板状部が邪魔になることなく、チャンバ空間内の圧力をチャンバ部材の開口部及びインサート部材の貫通孔を介してセンサ本体の内部へ導入することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、前記インサート部材は、前記貫通孔の断面形状がテーパ形状となっていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、軟質樹脂が、チャンバ部材の成形の際に、貫通孔の内側に入り込み、系合するような形状となり、インサート部材がチャンバ部材より脱落を防止することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、前記チャンバ部材は、その一部が前記バンパレインフォースメント前面よりも車両後方側且つ前記バンパレインフォースメント上面よりも上方側に延設されて前記チャンバ空間の一部分を形成すると共に前記開口部が設けられる延設部を備え、
前記インサート部材は、前記延設部の前記開口部近傍にインサート成形されたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、チャンバ部材は、その一部がバンパレインフォースメント前面よりも車両後方側且つバンパレインフォースメント上面よりも上方側に延設されてチャンバ空間の一部分を形成すると共に開口部が設けられる延設部を備え、延設部の開口部近傍にインサート部材がインサート成形されているので、圧力センサがバンパレインフォースメントの上側に配設され、圧力センサのチャンバ部材への取り付けが容易となり、取り付け工数をより一層低減することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、前記インサート部材は、前記チャンバ部材のブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、インサート部材は、ブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されたことにより、インサート部材に周りこんで包む軟質樹脂の肉厚が厚く形成されて強度が高くなる。よって、インサート部材のチャンバ部材からの抜け強度が向上し、インサート部材の脱落を防止することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、前記インサート部材は、前記チャンバ部材の前記パーティングラインと同一面に配設されたことを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、チャンバ部材においてパーティングラインと同一面は、軟質樹脂が肉厚となっており強度が高いので、インサート部材のチャンバ部材からの抜け強度を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態の車両用衝突検知装置を平面視にて示す全体構成図である。
【図2】第一実施形態の車両用衝突検知装置を横から見た要部断面図である。
【図3】第一実施形態において圧力センサ8をインサート部材72に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図4】第一実施形態において圧力センサ8をインサート部材72に取り付ける様子を後方から見た斜視図である。
【図5】第二実施形態において圧力センサ8をインサート部材74に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図6】第二実施形態において圧力センサ8をインサート部材74に取り付けた状態を斜めから見た斜視図である。
【図7】第二実施形態におけるインサート部材74を示す斜視図である。
【図8】第二実施形態におけるインサート部材74の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【図9】第三実施形態において圧力センサ8をインサート部材75に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図10】第三実施形態におけるインサート部材75を示す斜視図である。
【図11】第三実施形態におけるインサート部材75の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【図12】他の変形例において圧力センサ8をインサート部材76を介してチャンバ部材7に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図13】パーティングライン近傍にインサート部材を配設した変形例の車両用衝突検知装置を横から見た要部断面図である。
【図14】チャンバ部材7の成形方法を説明する図であって、チャンバ部材7成形用の金型を示す断面図である。
【図15】(a)は変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図であり、(b)は他の変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の車両用衝突検知装置を具体化した各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第一実施形態である車両用衝突検知装置1を平面視にて示す全体構成図である。図2は、車両用衝突検知装置1を横から見た要部断面図である。図3は、圧力センサ8をインサート部材72に取り付けた状態を後方から見た断面図である。図4は、圧力センサ8をインサート部材72に取り付ける様子を後方から見た斜視図である。
【0034】
車両用衝突検知装置1は、図1に示すように、車両バンパ2内に配設されたチャンバ部材7と、圧力センサ8と、歩行者保護装置ECU10とを主体として構成されている。
【0035】
車両バンパ2は、図1、図2に示すように、バンパカバー3、バンパレインフォースメント4、サイドメンバ5、アブソーバ6、及びチャンバ部材7を主体として構成されている。尚、図2では、バンパカバー3、バンパレインフォースメント4、アブソーバ6及びチャンバ部材7をそれぞれ断面で示している。
【0036】
バンパカバー3は、車両前端にて車幅方向(左右方向)に延び、バンパレインフォースメント4、サイドメンバ5、アブソーバ6、及びチャンバ部材7を覆うように車体に取り付けられる樹脂(例えば、ポリプロピレン)製カバー部材である。
【0037】
バンパレインフォースメント4は、バンパカバー3内に配設されて車幅方向に延びる金属製の構造部材であって、図2に示すように、内部中央に梁が設けられた日の字状断面を有する中空部材である。
【0038】
サイドメンバ5は、車両の左右両側面近傍に位置して車両前後方向に延びる一対の金属製部材であり、その前端に上述したバンパレインフォースメント4が取り付けられる。
【0039】
アブソーバ6は、バンパカバー3内でバンパレインフォースメント前面4aの下方側に取り付けられる車幅方向に延びる発泡樹脂製部材であり、車両バンパ2における衝撃吸収作用を発揮する。
【0040】
チャンバ部材7は、バンパカバー3内でバンパレインフォースメント前面4aの上方側に配置され、ポリエチレンなどの軟質樹脂からなる車幅方向に延びる略箱状の中空部材である。チャンバ部材7の後端部には下方へ延設された舌状片11が設けられ、チャンバ部材7は、その舌状片11を介してリベット止め等によってバンパレインフォースメント前面4aに対して固定される。より詳細には、チャンバ部材7は、チャンバ本体71と、延設部71aとを備えている。
【0041】
チャンバ本体71は、チャンバ部材7の大部分を占めており、車幅方向に延びて内部に厚さ数mmの軟質樹脂の壁面によって囲まれた略密閉状のチャンバ空間7aを形成している。
【0042】
延設部71aは、軟質樹脂によってチャンバ本体71と一体的に成形され、チャンバ本体71の車幅方向の略中央部分からバンパレインフォースメント正面4bの上方に延び、車体前方側から車体後方側へ延設された部位である。延設部71aの内部空間は、チャンバ本体71の内部空間と連通しており、チャンバ空間7aの一部分を形成している。また、延設部71aの上部には、内部空間(すなわち、チャンバ空間7a)を外部に連通させる開口部71bが設けられている。
【0043】
ここで、チャンバ本体71の延設部71a上部における開口部71b近傍には、図3に示すように、インサート部材72がインサート成形されている。インサート成形は、射出成形法の一つであり、インサート部材72を金型内に設置し、軟質性樹脂を注入することによりチャンバ部材7と一体化される。インサート部材72は、チャンバ部材7の材質である軟質性樹脂よりも硬質の材質、例えば、鉄等の金属や、ナイロン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の硬質樹脂から成る。
【0044】
インサート部材72は、図3、4に示すように、インサート部材本体720と、二つの固定部72aと、フランジ部72cと、開口部71bと連通した貫通孔721とを有している。
【0045】
インサート部材本体720は、板状の全体形状を呈し、中央の貫通孔721を挟む両側に固定部72aが2箇所に設けられると共に、両側面にフランジ部72cが形成されている。インサート部材本体720の固定部72aが設けられている面は、延設部71aの外側から目視できるようになっている。固定部72aは、後述する圧力センサ8を固定させるための上方へ突出する雄ネジ部であって、一方の固定部72aと他方の固定部72aとの間隔は、圧力センサ8を取り付けられる間隔で、延設部71aの外側から目視できるように配設されている。そして、インサート部材本体720の側面に設けられ、フランジ部72cは、延設部71aの内側に埋設され軟質性樹脂で覆われている。貫通孔721は、インサート部材本体720のほぼ中央に貫穿されて開口部71bと連通しており、圧力センサ8の圧力導入管82を挿入することができるようになっている。
【0046】
圧力センサ8は、気体圧力を検出可能なセンサ装置であり、図4に示すように、センサ本体81と、取り付け部81aと、圧力導入管82とを有している。センサ本体81は、圧力検出用のセンサ素子が設けられ、圧力に比例した電圧信号を出力し、信号線10aを介して歩行者保護装置ECU10へ信号を送信する。センサ本体81の左右の側面に設けられた取り付け部81aは、インサート部材72の固定部72aを挿通するための取り付け孔81bが配設されている。圧力センサ8をインサート部材72に取り付ける際は、取り付け孔81bにインサート部材72の固定部72aを挿入すると共に、圧力センサ8の圧力導入管82を開口部71bに挿入し、圧力センサ8の取り付け孔81bから突出したインサート部材72の固定部72aに雌ネジ部材72bを締結する。このようにして、圧力センサ8は、インサート部材72を介してチャンバ部材7に対して取り付けられる。
【0047】
歩行者保護装置ECU10は、圧力センサ8と接続され、車両本体に配置されている。図示しない歩行者保護装置(たとえば公知の歩行者保護用のエアバッグやフード跳ね上げ装置など)の起動制御を行うための電子制御装置であり、圧力センサ8から出力される信号が信号線10aを介して入力されるように構成されている。歩行者保護装置ECU10は、圧力センサ8における圧力検出結果に基づいて、車両バンパ2へ歩行者(すなわち、人体)が衝突したか否かを判別する処理を実行する。
【0048】
次に、本実施形態の車両用衝突検知装置1による衝突の検知について説明する。本実施例の衝突検知装置が組み付けられた車両バンパ2は、図1に示したように、バンパカバー3がチャンバ部材7とアブソーバ6を被覆し、車両バンパ2の外表面を形成している。
【0049】
この車両のバンパに歩行者が衝突すると、歩行者が車両バンパ2を押圧することとなり、そしてバンパカバー3を介してチャンバ部材7を押圧し、チャンバ部材7の押圧された部分は変形し潰れる。チャンバ部材7の変形によりチャンバ空間7aにおける気体圧力が増大する。この圧力の増大が圧力導入管82を経て圧力センサ8により検出され、出力される信号が信号線10aを介して歩行者保護装置ECU10に送られて圧力検出結果に基づいて、車両バンパ2へ歩行者(すなわち、人体)が衝突したか否かを判別する処理を実行することになる。
【0050】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、チャンバ空間7aが内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材7は、チャンバ部材7よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つ(本実施形態では2つ)の固定部72aを有するインサート部材72が開口部71bの近傍にインサート成形されている。よって、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサ8を、軟質樹脂製であるため他の部材を直接取り付けることが困難なチャンバ部材7に対し、インサート部材72の固定部72aを介して簡単且つ確実に固定することができる。また、ブラケット等の固定部材を介してバンパレインフォースメント4へ固定する必要がないので、圧力センサ8をチャンバ部材7に取り付ける際の取り付け工数を低減することができる。さらに、圧力センサ8がチャンバ部材7のみに対して固定されるので、圧力センサ8がチャンバ部材7とバンパレインフォースメント4とに跨って取り付けられる構成のように、軟質樹脂製のチャンバ部材7と金属製のバンパレインフォースメント4との線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材7の収縮によって圧力センサ8にテンションがかかるという欠点が無い。
【0051】
また、インサート部材7の固定部72aは、チャンバ部材7の外側へ突出する雄ネジ部であるので、圧力センサ8は、取り付け孔81bを介して雄ネジ部である固定部72aに雌ネジ部材72bを締結することによって、チャンバ部材7に対して簡単且つ確実に固定することができる。
【0052】
また、インサート部材72は、固定部72aと一体的に形成されたフランジ部72cを有し、フランジ部72cがチャンバ部材7に埋設されているので、フランジ部72cがチャンバ部材7を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材7と確実に一体化され、チャンバ部材7からの脱落が防止される。
【0053】
また、インサート部材72は、複数(本実施形態では2つ)の固定部72aが板状部を介して一体的に設けられているので、チャンバ部材7における圧力センサ8取り付け部分の剛性が増し、圧力センサ8をチャンバ部材7に固定する際に変形が生じにくくなる。
【0054】
また、インサート部材72は、板状部にチャンバ部材7の開口部71bと連通する貫通孔721を有しているので、板状部が邪魔になることなく、チャンバ空間7a内の圧力をチャンバ部材7の開口部71b及びインサート部材72の貫通孔721を介してセンサ本体81の内部へ導入することができる。
【0055】
さらに、チャンバ部材7は、その一部がバンパレインフォースメント4前面よりも車両後方側且つバンパレインフォースメント4上面よりも上方側に延設されてチャンバ空間7aの一部分を形成すると共に開口部71bが設けられる延設部71aを備え、延設部71aの開口部71b近傍にインサート部材72がインサート成形されているので、圧力センサ8がバンパレインフォースメント4の上側に配設され、圧力センサ8のチャンバ部材7への取り付けが容易となり、取り付け工数をより一層低減することができる。
【0056】
次に、第二実施形態について、図5〜図7を参照しつつ説明する。図5は、第二実施形態における圧力センサ8をインサート部材74に取り付けた状態を後方から見た断面図である。図6は、圧力センサ8をインサート部材74に取り付け状態を後方から見た斜視図である。図7は、インサート部材74を示す斜視図である。尚、上述した実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、それらについての詳細な説明を省略する(以下の実施形態及び変形例においても同様)。
【0057】
上記第一実施形態では、インサート部材72において2つの固定部72aを板状部を介して一体化する構成としたが、本実施形態では、図5に示すように、それぞれ1つの固定部74aを有するインサート部材74が延設部71aの開口部71bの両側の2箇所にインサート成形されている。
【0058】
具体的には、インサート部材74は、インサート部材本体740と、固定部74aと、フランジ部74cとを備えている。インサート部材本体740は、円柱状の形状で、上面に固定部74aが設けられ、側面にフランジ部74cが配設されている。雄ネジ部を有する固定部74aは、図6に示すように延設部71aの外側から目視でき、一方の固定部74aと他方の固定部74aとの間隔は、圧力センサ8を取り付けられる間隔に配設される。そして、フランジ部74cは、延設部71aの内側に樹脂で覆われて配設されている。
【0059】
また、インサート部材74のフランジ部74cは、図7に示すように、鋭角状の突起が外周に複数設けられた非円形の回り止め形状を有している。
【0060】
そして、圧力センサ8をインサート部材74に取り付ける際は、インサート部材74の固定部74aを圧力センサ8の取り付け孔81bに挿入し、圧力センサ8の圧力導入管82を開口部71bに挿入し、圧力センサ8の取り付け孔81bから突出したインサート部材74の固定部74aに雌ネジ部材72bで締結する。
【0061】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、インサート部材74の固定部74aが、チャンバ部材7の外側へ突出する雄ネジ部であるので、圧力センサ8は、取り付け孔81bを介して雄ネジ部である固定部74aに雌ネジ部材72bを締結することによって、チャンバ部材7に対して簡単且つ確実に固定することができる。
【0062】
また、インサート部材74は、固定部74aと一体的に形成されたフランジ部74cを有し、フランジ部74cがチャンバ部材7に埋設されているので、フランジ部74cがチャンバ部材7を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材7と確実に一体化され、チャンバ部材7からの脱落が防止される。
【0063】
特に、インサート部材74のフランジ部74cは、非円形である回り止め形状を有するので、インサート部材7に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材74がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雌ネジ部材72bの締結)を行うことができる。
【0064】
尚、インサート部材74は、延設部71aに1箇所のみ配設して、圧力センサ8を取り付ける構成としてもよい。
【0065】
次に、上述した第二実施形態の各変形例について説明する。図8は、インサート部材74の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【0066】
第1変形例のインサート部材74は、図8(a)に示すように、三角形状のフランジ部74cを有している。また、第2変形例のインサート部材74は、図8(b)に示すように、四角形状のフランジ部74cを有している。また、第3変形例のインサート部材74は、図8(c)に示すように、歯車形状のフランジ部74cを有している。
【0067】
第1〜第3変形例においても、インサート部材74のフランジ部74cは、非円形である回り止め形状を有するので、上記第二実施形態と同様に、インサート部材74に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材74がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雌ネジ部材72bの締結)を行うことができる。
【0068】
次に、第三実施形態について図9〜10を参照しつつ説明する。図9は、第三実施形態において圧力センサ8をインサート部材75に取り付けた状態を後方から見た断面図である。図10は、インサート部材75を示す斜視図である。
【0069】
上記第二実施形態では、インサート部材74の固定部74aが雄ネジ部から成る構成としたが、本実施形態では、図9に示すように、インサート部材75の固定部75aが雌ネジ部で構成されていることを特徴とする。
【0070】
具体的には、インサート部材75は、インサート部材本体750と、固定部75aと、フランジ部75cとを備え、延設部71aの開口部71bの両側に2箇所、インサート成形されている。インサート部材本体750は、円柱状の全体形状を呈し、本体内に雌ネジ部である固定部75aが設けられ、側面にフランジ部75cが配設されている。インサート部材75の固定部75aの雌ネジ穴は、延設部71aの外側から目視でき、一方の固定部75aと他方の固定部75aとの間隔は、圧力センサ8を取り付けられる間隔に配設されている。
【0071】
また、インサート部材75のフランジ部75cは、図10に示すように、鋭角状の突起が外周に複数設けられた非円形の回り止め形状を有している。
【0072】
そして、圧力センサ8をインサート部材75に取り付ける際は、圧力センサ8の取り付け部81aの取り付け孔81bを固定部75aの雌ネジ孔と合わせ、雄ネジ部材75dを取り付け孔81bに挿入し、固定部75aの雌ネジ孔に締結する。
【0073】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、インサート部材75の固定部75aは、雌ネジ部を有しているので、圧力センサ8は、取り付け部81aを介して雌ネジ部である固定部75aに雄ネジ部材75dを締結することによって、チャンバ部材7に対して簡単かつ確実に固定することができる。
【0074】
また、インサート部材75は、固定部75aと一体的に形成されたフランジ部75cを有し、フランジ部75cがチャンバ部材7に埋設されているので、フランジ部75cがチャンバ部材7を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材7と確実に一体化され、チャンバ部材7からの脱落が防止される。
【0075】
特に、インサート部材75のフランジ部75cは、非円形である回り止め形状を有するので、チャンバ部材7に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材75がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雄ネジ部材75dの締結)を行うことができる。
【0076】
次に、上述した第三実施形態の各変形例について説明する。図11は、インサート部材75の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【0077】
第1変形例のインサート部材75は、図11(a)に示すように、三角形状のフランジ部75cを有している。また、第2変形例のインサート部材75は、図11(b)に示すように、四角形状のフランジ部75cを有している。また、第3変形例のインサート部材75は、図11(c)に示すように、歯車形状のフランジ部75cを有している。
【0078】
第1〜第3変形例においても、インサート部材75のフランジ部75cは、非円形である回り止め形状を有するので、上記第三実施形態と同様に、チャンバ部材7に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材75がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雄ネジ部材75dの締結)を行うことができる。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。
【0080】
例えば、上記第1、第2実施形態において、インサート部材72、74の固定部72a、74aが、チャンバ部材7の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有する構成としてもよい。図12は、他の変形例において圧力センサ8をインサート部材76を介してチャンバ部材7に取り付けた状態を後方から見た断面図である。本変形例では、インサート部材76の先端に鉤状の係止部76aが設けられている。インサート部材76の固定部76aを圧力センサ8の取り付け部81aの取り付け孔81bに挿入し、圧力センサ8の取り付け孔81bから突出した鉤部分で取り付け孔81bを係止することで圧力センサ8が抜けなくなる。固定部76aの上側部分を鉤状とすることで、圧力センサ8の脱落を防ぎ、チャンバ部材7に固定することができる。
【0081】
すなわち、本変形例によれば、圧力センサ8の取り付け部81aを係止部である固定部76aにより係止させることによって、圧力センサ8をチャンバ部材7に簡単且つ確実に固定することができる。また、雌ネジ部材や雄ネジ部材等を別途取り付ける必要がないため、より一層、部品点数を削減し、コストの低減を図ることができる。
【0082】
尚、本変形例において、固定部76aをリベットにより構成してもよい。すなわち、固定部72a又は固定部74aの先端を圧力センサ8の取り付け孔81bに挿入し、取り付け孔81bから突出した固定部72a又は固定部74aの先端部分を潰して傘状に変形させることで、取り付け孔81bを先端部分によって係止し、圧力センサ8をインサート部材72、74を介してチャンバ部材7に取り付けることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、チャンバ部材7の延設部71aを車幅方向の中央に1個のみ配設する構成としたが、延設部71aを複数配設するとともに、圧力センサ8を複数配置しても良い(例えばチャンバ部材の車幅方向に2箇所)。圧力センサ8を複数配設することによって、歩行者保護装置ECU10が複数の圧力センサからの情報を総合的に判断することができるため、誤作動を防ぐことができる。この場合、圧力センサ8のチャンバ部材7への配設位置が車幅方向の中央から離隔するため、チャンバ部材7の収縮の影響で圧力センサ8が車幅方向へ僅かに移動する場合があるが、圧力センサ8がチャンバ部材7のみに対して固定されるので、圧力センサ8がチャンバ部材7とバンパレインフォースメント4とに跨って取り付けられる構成のように、軟質樹脂製のチャンバ部材7と金属製のバンパレインフォースメント4との線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材7の収縮によって圧力センサ8にテンションがかかるという欠点が無い。
【0084】
また、上記各実施形態において、インサート部材(72、74、75、76)は、チャンバ部材7のブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されてもよい。尚、パーティングラインとは、型と型との分割線であり、ブロー成形される樹脂の肉厚はパーティングラインに近づくほど厚くなり、遠ざかるほど薄くなることが知られている。ここで、図13は、パーティングライン近傍にインサート部材を配設した変形例の車両用衝突検知装置を横から見た要部断面図である。図14は、チャンバ部材7の成形方法を説明する図であって、チャンバ部材7成形用の金型を示す断面図である。図15(a)は変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図であり、(b)は他の変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図である。
【0085】
本変形例では、図13に示すように、インサート部材72は、チャンバ部材7のブロー成形型のパーティングラインPL1近傍に配設されている。より詳細には、インサート部材72は、パーティングラインPL1と同一面である延設部71aの上面の上壁714に配設されている。
【0086】
ここで、チャンバ部材7の成形方法について、図14を参照しつつ説明する。チャンバ部材7は、複数個からなる成形用金型を用いてブロー成形によって形成される。すなわち、チャンバ部材7は、3種類の金型を用いて形成される。金型は、図14に示すように、車両前方側の側壁を形成する前方金型Aと、インサート部材付近の延設部71aの上壁の一部を形成する上方金型Bと、車両後方側の側壁を形成する後方金型Cで構成される。
【0087】
前方金型Aは、後方金型Cの前面に配置され、チャンバ本体71の前壁711、上壁712、下壁713、左右壁(図示せず)及びチャンバ本体71の中央付近から延びた延設部71aの上壁714のインサート部材72前までの一部と、延設部71aの左右壁(図示せず)とを形成する。そして、上方金型Bは、前方金型Aと後方金型Cとに挟まれ延設部71aのインサート部材72の上面に配置され、延設部71aのインサート部材72を含み、延設部71aの後壁までの上壁714の残り部分を形成する。尚、インサート部材72の上面側は、上型金型Bが覆うため軟質樹脂が包み込まないので、ブロー成形後は、インサート部材72の上面側が外側から目視できるようになっている。そして、後方金型Cは、上述した上方金型Bを前方金型Aとで挟むように前方金型Aの後面に配置され、チャンバ本体71の後壁715、チャンバ本体71から延びた延設部71aの下壁716、後壁717を形成する。
【0088】
本変形例では、前方金型Aと上方金型Bと後方金型Cとによる分割線として、2本のパーティングラインPL1、PL2が形成される。すなわち、パーティングラインPL1は、チャンバ部材7の延設部71aの上壁714と後壁717との境界部位に位置し車幅方向に延びている。また、パーティングラインPL2は、チャンバ部材7のチャンバ本体71の下壁713と後壁715との境界部位に位置し車幅方向に延びている。
【0089】
そして、チャンバ部材7を成形するために、インサート部材72をパーティングラインPL1と同一面である延設部71aの上壁714のパーティングラインPL1近傍に配置し、上述した各金型を合わせる。次に、ブロー成形後、前方金型Aは前方へ、上方金型Bは上方へ、後方金型Cは後方へ移動させる。その結果、チャンバ部材7が完成する。
【0090】
次に、インサート部材72のフランジ部72cについて説明する。インサート部材72は、図15(a)に示すように、延設部71aの車両前後方向に対して後方側で、チャンバ部材7のパーティングラインPL1近傍であって、パーティングラインPL1を含む延設部71aの上面に配設されている。インサート部材72は、フランジ部72cがチャンバ部材7の延設部71aの上面の上壁714の軟質樹脂に埋設されている。そして、インサート部材72の車両後方側のフランジ部72cを周りこんで包むチャンバ部材7の軟質樹脂の肉厚が厚く形成され(矢印W1)、パーティングラインPL1から遠ざかる車両前方側へ向かうほどフランジ部72cを周りこんで包む肉厚が薄くなる(矢印D)。
【0091】
尚、図15(b)に示す他の変形例のように、インサート部材72の車両後方側のフランジ部72cを包むチャンバ部材7の軟質樹脂の厚みを、インサート部材72の埋設部分の上下高さ以上に形成し、車両後方側のフランジ部72cと後壁717との間が軟質樹脂で完全に埋まるように形成してもよい(矢印W1)。
【0092】
このように、インサート部材72がパーティングラインPL1近傍に配設されたことにより、フランジ部72cに周りこんで包むチャンバ部材7の軟質樹脂の肉厚が厚く形成されるために、軟質樹脂の強度が上がり、インサート部材72の延設部71aからの抜け強度が高くなり、脱落を防止することができる。さらに、インサート部材72は、パーティングラインPL1と同一面である延設部71aの上面の上壁714に配設されることにより、延設部71aの上面の上壁714は、パーティングラインPL1近傍において軟質樹脂の強度が増すので、インサート部材72のチャンバ部材7からの抜け強度を高くすることができる。
【0093】
さらに、インサート部材72は、貫通孔721の断面形状を、テーパ形状としてもよい。貫通孔721の断面形状は、インサート部材72の外側から目視できる上面側(チャンバ空間7a外部側)の貫通孔721の上面穴が大径であり、インサート部材72の下面側(ブロー成形後の延設部71aのチャンバ空間7a内部側)の貫通孔721の下面穴に向かって徐々に小径となるテーパ形状となっている。そのため、インサート部材72は、ブロー成形時に軟質樹脂が貫通孔721に入り込んでテーパ面を介して係合するため、インサート部材72の延設部71aからの脱落をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0094】
1:車両用衝突検知装置 2:車両バンパ 3:バンパカバー
4:バンパレインフォースメント 4a:バンパレインフォースメント前面 4b:バンパレインフォースメント上面 5:サイドメンバ 6:アブソーバ
7:チャンバ部材 7a:チャンバ空間 71:チャンバ本体 71a:延設部
71b:開口部 72、74、75、76:インサート部材 720、740、750、760:インサート部材本体
72a、74a、75a、76a:固定部 72c、74c、75c、76c:フランジ部 721:貫通孔 72b:雌ネジ部材 75d:雄ネジ部材
8:圧力センサ 81:センサ本体 81a:取り付け部 81b:取り付け口 82:圧力導入管 10:歩行者保護装置ECU 10a:信号線 11:舌状片
PL:パーティングライン a:前方金型 b:上方金型 c:後方金型
711:前壁 712、714:上壁 713、716:下壁 715、717:後壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両への歩行者等の衝突を検知する車両用衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の安全性に関して、事故時に車両の搭乗者の安全性を確保するだけでなく、車両に歩行者が衝突したときに歩行者へのダメージを軽減することも求められている。そこで、歩行者の車両への衝突を検知して、例えばアクティブフードやカウルエアバッグ等の歩行者保護装置を作動させて、車両に衝突してボンネットに倒れ込んできた歩行者が受ける傷害値(歩行者が受ける衝撃)を低減するシステムが提案されている。
【0003】
例えば特開2006−117157号公報(特許文献1)には、衝突を検知するために車両バンパ内でバンパレインフォースメントの前面にチャンバ部材が配設され、チャンバ空間内の圧力変化を圧力センサで検出することにより車両バンパへの歩行者などの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−117157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述したチャンバ部材と圧力センサとを用いた車両用衝突検知装置において、チャンバ部材を軟質樹脂により形成した場合は、チャンバ部材のチャンバ空間に通じる差し込み孔へ圧力センサの圧力導入管を差し込み、圧力センサの本体部を剛体であるバンパレインフォースメントに金属製のブラケットを介して固定する構成が考えられる。
【0006】
しかしながら、かかる構成では、圧力センサの取付け構造が複雑となり、部品点数が多くなると共に、取付け工数が掛かるという問題がある。また、圧力センサがチャンバ部材とバンパレインフォースメントとに跨って取り付けられる構成であるため、チャンバ部材とバンパレインフォースメントとの線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材の収縮によって圧力センサにテンションがかかる可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、軟質樹脂製のチャンバ部材に圧力センサを簡単な構造で確実に取り付けることができる車両用衝突検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、車両バンパ内でバンパレインフォースメントの前面に配設され且つチャンバ空間が内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材と、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサとを備え、前記チャンバ空間内の圧力を前記チャンバ部材に設けられた開口部を介して前記センサ本体の内部へ導入して前記センサ素子により圧力検出を行い、その圧力検出結果に基づいて前記車両バンパへの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置において、
前記チャンバ部材は、前記チャンバ部材よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部を有するインサート部材が前記開口部の近傍にインサート成形され、
前記圧力センサは、前記インサート部材の前記固定部を介して前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、チャンバ空間が内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材は、チャンバ部材よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部を有するインサート部材が開口部の近傍にインサート成形されている。よって、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサを、軟質樹脂製であるため他の部材を直接取り付けることが困難なチャンバ部材に対し、インサート部材の固定部を介して簡単且つ確実に固定することができる。また、ブラケット等の固定部材を介してバンパレインフォースメントへ固定する必要がないので、圧力センサをチャンバ部材に取り付ける際の取り付け工数を低減することができる。さらに、圧力センサがチャンバ部材のみに対して固定されるので、圧力センサがチャンバ部材とバンパレインフォースメントとに跨って取り付けられる構成のように、チャンバ部材とバンパレインフォースメントとの線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材の収縮によって圧力センサにテンションがかかるという欠点が無い。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出する雄ネジ部であり、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雄ネジ部に雌ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、インサート部材の固定部は、チャンバ部材の外側へ突出する雄ネジ部であるので、圧力センサは、その取り付け部を介して雄ネジ部に雌ネジ部材を締結することによって、チャンバ部材に対して簡単且つ確実に固定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記インサート部材の前記固定部は、雌ネジ部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雌ネジ部に雄ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、インサート部材の固定部は、雌ネジ部を有しているので、圧力センサは、その取り付け部を介して雌ネジ部に雄ネジ部材を締結することによって、チャンバ部材に対して簡単かつ確実に固定することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を前記固定部の前記係止部により係止させることによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、インサート部材の固定部は、チャンバ部材の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有しているので、圧力センサの取り付け部を固定部の係止部により係止させることによって、圧力センサをチャンバ部材に簡単且つ確実に固定することができる。また、雌ネジ部材や雄ネジ部材等を別途取り付ける必要がないため、より一層、部品点数を削減し、コストの低減を図ることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記インサート部材は、前記固定部と一体的に形成されたフランジ部を有し、前記フランジ部が前記チャンバ部材に埋設されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、インサート部材は、固定部と一体的に形成されたフランジ部を有し、フランジ部がチャンバ部材に埋設されているので、フランジ部がチャンバ部材を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材と確実に一体化され、チャンバ部材からの脱落が防止される。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記インサート部材の前記フランジ部は、非円形の回り止め形状を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、インサート部材のフランジ部は、非円形である回り止め形状を有するので、インサート部材に圧力センサを取り付ける際にインサート部材がチャンバ部材に対して空回りせず、確実に固定作業を行うことができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記インサート部材は、複数の前記固定部が板状部を介して一体的に設けられたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、インサート部材は、複数の固定部が板状部を介して一体的に設けられているので、チャンバ部材における圧力センサ取り付け部分の剛性が増し、圧力センサをチャンバ部材に固定する際に変形が生じにくくなる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記インサート部材は、前記板状部に前記チャンバ部材の前記開口部と連通する貫通孔が設けられたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、インサート部材は、板状部にチャンバ部材の開口部と連通する貫通孔を有しているので、板状部が邪魔になることなく、チャンバ空間内の圧力をチャンバ部材の開口部及びインサート部材の貫通孔を介してセンサ本体の内部へ導入することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、前記インサート部材は、前記貫通孔の断面形状がテーパ形状となっていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、軟質樹脂が、チャンバ部材の成形の際に、貫通孔の内側に入り込み、系合するような形状となり、インサート部材がチャンバ部材より脱落を防止することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、前記チャンバ部材は、その一部が前記バンパレインフォースメント前面よりも車両後方側且つ前記バンパレインフォースメント上面よりも上方側に延設されて前記チャンバ空間の一部分を形成すると共に前記開口部が設けられる延設部を備え、
前記インサート部材は、前記延設部の前記開口部近傍にインサート成形されたことを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、チャンバ部材は、その一部がバンパレインフォースメント前面よりも車両後方側且つバンパレインフォースメント上面よりも上方側に延設されてチャンバ空間の一部分を形成すると共に開口部が設けられる延設部を備え、延設部の開口部近傍にインサート部材がインサート成形されているので、圧力センサがバンパレインフォースメントの上側に配設され、圧力センサのチャンバ部材への取り付けが容易となり、取り付け工数をより一層低減することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、前記インサート部材は、前記チャンバ部材のブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、インサート部材は、ブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されたことにより、インサート部材に周りこんで包む軟質樹脂の肉厚が厚く形成されて強度が高くなる。よって、インサート部材のチャンバ部材からの抜け強度が向上し、インサート部材の脱落を防止することができる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、前記インサート部材は、前記チャンバ部材の前記パーティングラインと同一面に配設されたことを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、チャンバ部材においてパーティングラインと同一面は、軟質樹脂が肉厚となっており強度が高いので、インサート部材のチャンバ部材からの抜け強度を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一実施形態の車両用衝突検知装置を平面視にて示す全体構成図である。
【図2】第一実施形態の車両用衝突検知装置を横から見た要部断面図である。
【図3】第一実施形態において圧力センサ8をインサート部材72に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図4】第一実施形態において圧力センサ8をインサート部材72に取り付ける様子を後方から見た斜視図である。
【図5】第二実施形態において圧力センサ8をインサート部材74に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図6】第二実施形態において圧力センサ8をインサート部材74に取り付けた状態を斜めから見た斜視図である。
【図7】第二実施形態におけるインサート部材74を示す斜視図である。
【図8】第二実施形態におけるインサート部材74の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【図9】第三実施形態において圧力センサ8をインサート部材75に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図10】第三実施形態におけるインサート部材75を示す斜視図である。
【図11】第三実施形態におけるインサート部材75の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【図12】他の変形例において圧力センサ8をインサート部材76を介してチャンバ部材7に取り付けた状態を後方から見た断面図である。
【図13】パーティングライン近傍にインサート部材を配設した変形例の車両用衝突検知装置を横から見た要部断面図である。
【図14】チャンバ部材7の成形方法を説明する図であって、チャンバ部材7成形用の金型を示す断面図である。
【図15】(a)は変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図であり、(b)は他の変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の車両用衝突検知装置を具体化した各実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の第一実施形態である車両用衝突検知装置1を平面視にて示す全体構成図である。図2は、車両用衝突検知装置1を横から見た要部断面図である。図3は、圧力センサ8をインサート部材72に取り付けた状態を後方から見た断面図である。図4は、圧力センサ8をインサート部材72に取り付ける様子を後方から見た斜視図である。
【0034】
車両用衝突検知装置1は、図1に示すように、車両バンパ2内に配設されたチャンバ部材7と、圧力センサ8と、歩行者保護装置ECU10とを主体として構成されている。
【0035】
車両バンパ2は、図1、図2に示すように、バンパカバー3、バンパレインフォースメント4、サイドメンバ5、アブソーバ6、及びチャンバ部材7を主体として構成されている。尚、図2では、バンパカバー3、バンパレインフォースメント4、アブソーバ6及びチャンバ部材7をそれぞれ断面で示している。
【0036】
バンパカバー3は、車両前端にて車幅方向(左右方向)に延び、バンパレインフォースメント4、サイドメンバ5、アブソーバ6、及びチャンバ部材7を覆うように車体に取り付けられる樹脂(例えば、ポリプロピレン)製カバー部材である。
【0037】
バンパレインフォースメント4は、バンパカバー3内に配設されて車幅方向に延びる金属製の構造部材であって、図2に示すように、内部中央に梁が設けられた日の字状断面を有する中空部材である。
【0038】
サイドメンバ5は、車両の左右両側面近傍に位置して車両前後方向に延びる一対の金属製部材であり、その前端に上述したバンパレインフォースメント4が取り付けられる。
【0039】
アブソーバ6は、バンパカバー3内でバンパレインフォースメント前面4aの下方側に取り付けられる車幅方向に延びる発泡樹脂製部材であり、車両バンパ2における衝撃吸収作用を発揮する。
【0040】
チャンバ部材7は、バンパカバー3内でバンパレインフォースメント前面4aの上方側に配置され、ポリエチレンなどの軟質樹脂からなる車幅方向に延びる略箱状の中空部材である。チャンバ部材7の後端部には下方へ延設された舌状片11が設けられ、チャンバ部材7は、その舌状片11を介してリベット止め等によってバンパレインフォースメント前面4aに対して固定される。より詳細には、チャンバ部材7は、チャンバ本体71と、延設部71aとを備えている。
【0041】
チャンバ本体71は、チャンバ部材7の大部分を占めており、車幅方向に延びて内部に厚さ数mmの軟質樹脂の壁面によって囲まれた略密閉状のチャンバ空間7aを形成している。
【0042】
延設部71aは、軟質樹脂によってチャンバ本体71と一体的に成形され、チャンバ本体71の車幅方向の略中央部分からバンパレインフォースメント正面4bの上方に延び、車体前方側から車体後方側へ延設された部位である。延設部71aの内部空間は、チャンバ本体71の内部空間と連通しており、チャンバ空間7aの一部分を形成している。また、延設部71aの上部には、内部空間(すなわち、チャンバ空間7a)を外部に連通させる開口部71bが設けられている。
【0043】
ここで、チャンバ本体71の延設部71a上部における開口部71b近傍には、図3に示すように、インサート部材72がインサート成形されている。インサート成形は、射出成形法の一つであり、インサート部材72を金型内に設置し、軟質性樹脂を注入することによりチャンバ部材7と一体化される。インサート部材72は、チャンバ部材7の材質である軟質性樹脂よりも硬質の材質、例えば、鉄等の金属や、ナイロン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の硬質樹脂から成る。
【0044】
インサート部材72は、図3、4に示すように、インサート部材本体720と、二つの固定部72aと、フランジ部72cと、開口部71bと連通した貫通孔721とを有している。
【0045】
インサート部材本体720は、板状の全体形状を呈し、中央の貫通孔721を挟む両側に固定部72aが2箇所に設けられると共に、両側面にフランジ部72cが形成されている。インサート部材本体720の固定部72aが設けられている面は、延設部71aの外側から目視できるようになっている。固定部72aは、後述する圧力センサ8を固定させるための上方へ突出する雄ネジ部であって、一方の固定部72aと他方の固定部72aとの間隔は、圧力センサ8を取り付けられる間隔で、延設部71aの外側から目視できるように配設されている。そして、インサート部材本体720の側面に設けられ、フランジ部72cは、延設部71aの内側に埋設され軟質性樹脂で覆われている。貫通孔721は、インサート部材本体720のほぼ中央に貫穿されて開口部71bと連通しており、圧力センサ8の圧力導入管82を挿入することができるようになっている。
【0046】
圧力センサ8は、気体圧力を検出可能なセンサ装置であり、図4に示すように、センサ本体81と、取り付け部81aと、圧力導入管82とを有している。センサ本体81は、圧力検出用のセンサ素子が設けられ、圧力に比例した電圧信号を出力し、信号線10aを介して歩行者保護装置ECU10へ信号を送信する。センサ本体81の左右の側面に設けられた取り付け部81aは、インサート部材72の固定部72aを挿通するための取り付け孔81bが配設されている。圧力センサ8をインサート部材72に取り付ける際は、取り付け孔81bにインサート部材72の固定部72aを挿入すると共に、圧力センサ8の圧力導入管82を開口部71bに挿入し、圧力センサ8の取り付け孔81bから突出したインサート部材72の固定部72aに雌ネジ部材72bを締結する。このようにして、圧力センサ8は、インサート部材72を介してチャンバ部材7に対して取り付けられる。
【0047】
歩行者保護装置ECU10は、圧力センサ8と接続され、車両本体に配置されている。図示しない歩行者保護装置(たとえば公知の歩行者保護用のエアバッグやフード跳ね上げ装置など)の起動制御を行うための電子制御装置であり、圧力センサ8から出力される信号が信号線10aを介して入力されるように構成されている。歩行者保護装置ECU10は、圧力センサ8における圧力検出結果に基づいて、車両バンパ2へ歩行者(すなわち、人体)が衝突したか否かを判別する処理を実行する。
【0048】
次に、本実施形態の車両用衝突検知装置1による衝突の検知について説明する。本実施例の衝突検知装置が組み付けられた車両バンパ2は、図1に示したように、バンパカバー3がチャンバ部材7とアブソーバ6を被覆し、車両バンパ2の外表面を形成している。
【0049】
この車両のバンパに歩行者が衝突すると、歩行者が車両バンパ2を押圧することとなり、そしてバンパカバー3を介してチャンバ部材7を押圧し、チャンバ部材7の押圧された部分は変形し潰れる。チャンバ部材7の変形によりチャンバ空間7aにおける気体圧力が増大する。この圧力の増大が圧力導入管82を経て圧力センサ8により検出され、出力される信号が信号線10aを介して歩行者保護装置ECU10に送られて圧力検出結果に基づいて、車両バンパ2へ歩行者(すなわち、人体)が衝突したか否かを判別する処理を実行することになる。
【0050】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、チャンバ空間7aが内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材7は、チャンバ部材7よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つ(本実施形態では2つ)の固定部72aを有するインサート部材72が開口部71bの近傍にインサート成形されている。よって、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサ8を、軟質樹脂製であるため他の部材を直接取り付けることが困難なチャンバ部材7に対し、インサート部材72の固定部72aを介して簡単且つ確実に固定することができる。また、ブラケット等の固定部材を介してバンパレインフォースメント4へ固定する必要がないので、圧力センサ8をチャンバ部材7に取り付ける際の取り付け工数を低減することができる。さらに、圧力センサ8がチャンバ部材7のみに対して固定されるので、圧力センサ8がチャンバ部材7とバンパレインフォースメント4とに跨って取り付けられる構成のように、軟質樹脂製のチャンバ部材7と金属製のバンパレインフォースメント4との線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材7の収縮によって圧力センサ8にテンションがかかるという欠点が無い。
【0051】
また、インサート部材7の固定部72aは、チャンバ部材7の外側へ突出する雄ネジ部であるので、圧力センサ8は、取り付け孔81bを介して雄ネジ部である固定部72aに雌ネジ部材72bを締結することによって、チャンバ部材7に対して簡単且つ確実に固定することができる。
【0052】
また、インサート部材72は、固定部72aと一体的に形成されたフランジ部72cを有し、フランジ部72cがチャンバ部材7に埋設されているので、フランジ部72cがチャンバ部材7を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材7と確実に一体化され、チャンバ部材7からの脱落が防止される。
【0053】
また、インサート部材72は、複数(本実施形態では2つ)の固定部72aが板状部を介して一体的に設けられているので、チャンバ部材7における圧力センサ8取り付け部分の剛性が増し、圧力センサ8をチャンバ部材7に固定する際に変形が生じにくくなる。
【0054】
また、インサート部材72は、板状部にチャンバ部材7の開口部71bと連通する貫通孔721を有しているので、板状部が邪魔になることなく、チャンバ空間7a内の圧力をチャンバ部材7の開口部71b及びインサート部材72の貫通孔721を介してセンサ本体81の内部へ導入することができる。
【0055】
さらに、チャンバ部材7は、その一部がバンパレインフォースメント4前面よりも車両後方側且つバンパレインフォースメント4上面よりも上方側に延設されてチャンバ空間7aの一部分を形成すると共に開口部71bが設けられる延設部71aを備え、延設部71aの開口部71b近傍にインサート部材72がインサート成形されているので、圧力センサ8がバンパレインフォースメント4の上側に配設され、圧力センサ8のチャンバ部材7への取り付けが容易となり、取り付け工数をより一層低減することができる。
【0056】
次に、第二実施形態について、図5〜図7を参照しつつ説明する。図5は、第二実施形態における圧力センサ8をインサート部材74に取り付けた状態を後方から見た断面図である。図6は、圧力センサ8をインサート部材74に取り付け状態を後方から見た斜視図である。図7は、インサート部材74を示す斜視図である。尚、上述した実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、それらについての詳細な説明を省略する(以下の実施形態及び変形例においても同様)。
【0057】
上記第一実施形態では、インサート部材72において2つの固定部72aを板状部を介して一体化する構成としたが、本実施形態では、図5に示すように、それぞれ1つの固定部74aを有するインサート部材74が延設部71aの開口部71bの両側の2箇所にインサート成形されている。
【0058】
具体的には、インサート部材74は、インサート部材本体740と、固定部74aと、フランジ部74cとを備えている。インサート部材本体740は、円柱状の形状で、上面に固定部74aが設けられ、側面にフランジ部74cが配設されている。雄ネジ部を有する固定部74aは、図6に示すように延設部71aの外側から目視でき、一方の固定部74aと他方の固定部74aとの間隔は、圧力センサ8を取り付けられる間隔に配設される。そして、フランジ部74cは、延設部71aの内側に樹脂で覆われて配設されている。
【0059】
また、インサート部材74のフランジ部74cは、図7に示すように、鋭角状の突起が外周に複数設けられた非円形の回り止め形状を有している。
【0060】
そして、圧力センサ8をインサート部材74に取り付ける際は、インサート部材74の固定部74aを圧力センサ8の取り付け孔81bに挿入し、圧力センサ8の圧力導入管82を開口部71bに挿入し、圧力センサ8の取り付け孔81bから突出したインサート部材74の固定部74aに雌ネジ部材72bで締結する。
【0061】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、インサート部材74の固定部74aが、チャンバ部材7の外側へ突出する雄ネジ部であるので、圧力センサ8は、取り付け孔81bを介して雄ネジ部である固定部74aに雌ネジ部材72bを締結することによって、チャンバ部材7に対して簡単且つ確実に固定することができる。
【0062】
また、インサート部材74は、固定部74aと一体的に形成されたフランジ部74cを有し、フランジ部74cがチャンバ部材7に埋設されているので、フランジ部74cがチャンバ部材7を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材7と確実に一体化され、チャンバ部材7からの脱落が防止される。
【0063】
特に、インサート部材74のフランジ部74cは、非円形である回り止め形状を有するので、インサート部材7に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材74がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雌ネジ部材72bの締結)を行うことができる。
【0064】
尚、インサート部材74は、延設部71aに1箇所のみ配設して、圧力センサ8を取り付ける構成としてもよい。
【0065】
次に、上述した第二実施形態の各変形例について説明する。図8は、インサート部材74の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【0066】
第1変形例のインサート部材74は、図8(a)に示すように、三角形状のフランジ部74cを有している。また、第2変形例のインサート部材74は、図8(b)に示すように、四角形状のフランジ部74cを有している。また、第3変形例のインサート部材74は、図8(c)に示すように、歯車形状のフランジ部74cを有している。
【0067】
第1〜第3変形例においても、インサート部材74のフランジ部74cは、非円形である回り止め形状を有するので、上記第二実施形態と同様に、インサート部材74に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材74がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雌ネジ部材72bの締結)を行うことができる。
【0068】
次に、第三実施形態について図9〜10を参照しつつ説明する。図9は、第三実施形態において圧力センサ8をインサート部材75に取り付けた状態を後方から見た断面図である。図10は、インサート部材75を示す斜視図である。
【0069】
上記第二実施形態では、インサート部材74の固定部74aが雄ネジ部から成る構成としたが、本実施形態では、図9に示すように、インサート部材75の固定部75aが雌ネジ部で構成されていることを特徴とする。
【0070】
具体的には、インサート部材75は、インサート部材本体750と、固定部75aと、フランジ部75cとを備え、延設部71aの開口部71bの両側に2箇所、インサート成形されている。インサート部材本体750は、円柱状の全体形状を呈し、本体内に雌ネジ部である固定部75aが設けられ、側面にフランジ部75cが配設されている。インサート部材75の固定部75aの雌ネジ穴は、延設部71aの外側から目視でき、一方の固定部75aと他方の固定部75aとの間隔は、圧力センサ8を取り付けられる間隔に配設されている。
【0071】
また、インサート部材75のフランジ部75cは、図10に示すように、鋭角状の突起が外周に複数設けられた非円形の回り止め形状を有している。
【0072】
そして、圧力センサ8をインサート部材75に取り付ける際は、圧力センサ8の取り付け部81aの取り付け孔81bを固定部75aの雌ネジ孔と合わせ、雄ネジ部材75dを取り付け孔81bに挿入し、固定部75aの雌ネジ孔に締結する。
【0073】
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態によれば、インサート部材75の固定部75aは、雌ネジ部を有しているので、圧力センサ8は、取り付け部81aを介して雌ネジ部である固定部75aに雄ネジ部材75dを締結することによって、チャンバ部材7に対して簡単かつ確実に固定することができる。
【0074】
また、インサート部材75は、固定部75aと一体的に形成されたフランジ部75cを有し、フランジ部75cがチャンバ部材7に埋設されているので、フランジ部75cがチャンバ部材7を構成する軟質性樹脂によって覆われるため、チャンバ部材7と確実に一体化され、チャンバ部材7からの脱落が防止される。
【0075】
特に、インサート部材75のフランジ部75cは、非円形である回り止め形状を有するので、チャンバ部材7に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材75がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雄ネジ部材75dの締結)を行うことができる。
【0076】
次に、上述した第三実施形態の各変形例について説明する。図11は、インサート部材75の各種変形例を示す斜視図であり、(a)は第1変形例を、(b)は第2変形例を、(c)は第3変形例をそれぞれ示している。
【0077】
第1変形例のインサート部材75は、図11(a)に示すように、三角形状のフランジ部75cを有している。また、第2変形例のインサート部材75は、図11(b)に示すように、四角形状のフランジ部75cを有している。また、第3変形例のインサート部材75は、図11(c)に示すように、歯車形状のフランジ部75cを有している。
【0078】
第1〜第3変形例においても、インサート部材75のフランジ部75cは、非円形である回り止め形状を有するので、上記第三実施形態と同様に、チャンバ部材7に圧力センサ8を取り付ける際にインサート部材75がチャンバ部材7に対して空回りせず、確実に固定作業(雄ネジ部材75dの締結)を行うことができる。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能であることは云うまでもない。
【0080】
例えば、上記第1、第2実施形態において、インサート部材72、74の固定部72a、74aが、チャンバ部材7の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有する構成としてもよい。図12は、他の変形例において圧力センサ8をインサート部材76を介してチャンバ部材7に取り付けた状態を後方から見た断面図である。本変形例では、インサート部材76の先端に鉤状の係止部76aが設けられている。インサート部材76の固定部76aを圧力センサ8の取り付け部81aの取り付け孔81bに挿入し、圧力センサ8の取り付け孔81bから突出した鉤部分で取り付け孔81bを係止することで圧力センサ8が抜けなくなる。固定部76aの上側部分を鉤状とすることで、圧力センサ8の脱落を防ぎ、チャンバ部材7に固定することができる。
【0081】
すなわち、本変形例によれば、圧力センサ8の取り付け部81aを係止部である固定部76aにより係止させることによって、圧力センサ8をチャンバ部材7に簡単且つ確実に固定することができる。また、雌ネジ部材や雄ネジ部材等を別途取り付ける必要がないため、より一層、部品点数を削減し、コストの低減を図ることができる。
【0082】
尚、本変形例において、固定部76aをリベットにより構成してもよい。すなわち、固定部72a又は固定部74aの先端を圧力センサ8の取り付け孔81bに挿入し、取り付け孔81bから突出した固定部72a又は固定部74aの先端部分を潰して傘状に変形させることで、取り付け孔81bを先端部分によって係止し、圧力センサ8をインサート部材72、74を介してチャンバ部材7に取り付けることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、チャンバ部材7の延設部71aを車幅方向の中央に1個のみ配設する構成としたが、延設部71aを複数配設するとともに、圧力センサ8を複数配置しても良い(例えばチャンバ部材の車幅方向に2箇所)。圧力センサ8を複数配設することによって、歩行者保護装置ECU10が複数の圧力センサからの情報を総合的に判断することができるため、誤作動を防ぐことができる。この場合、圧力センサ8のチャンバ部材7への配設位置が車幅方向の中央から離隔するため、チャンバ部材7の収縮の影響で圧力センサ8が車幅方向へ僅かに移動する場合があるが、圧力センサ8がチャンバ部材7のみに対して固定されるので、圧力センサ8がチャンバ部材7とバンパレインフォースメント4とに跨って取り付けられる構成のように、軟質樹脂製のチャンバ部材7と金属製のバンパレインフォースメント4との線膨張係数の違いに起因して、チャンバ部材7の収縮によって圧力センサ8にテンションがかかるという欠点が無い。
【0084】
また、上記各実施形態において、インサート部材(72、74、75、76)は、チャンバ部材7のブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されてもよい。尚、パーティングラインとは、型と型との分割線であり、ブロー成形される樹脂の肉厚はパーティングラインに近づくほど厚くなり、遠ざかるほど薄くなることが知られている。ここで、図13は、パーティングライン近傍にインサート部材を配設した変形例の車両用衝突検知装置を横から見た要部断面図である。図14は、チャンバ部材7の成形方法を説明する図であって、チャンバ部材7成形用の金型を示す断面図である。図15(a)は変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図であり、(b)は他の変形例におけるチャンバ部材7に埋設されたインサート部材72周辺を示す断面図である。
【0085】
本変形例では、図13に示すように、インサート部材72は、チャンバ部材7のブロー成形型のパーティングラインPL1近傍に配設されている。より詳細には、インサート部材72は、パーティングラインPL1と同一面である延設部71aの上面の上壁714に配設されている。
【0086】
ここで、チャンバ部材7の成形方法について、図14を参照しつつ説明する。チャンバ部材7は、複数個からなる成形用金型を用いてブロー成形によって形成される。すなわち、チャンバ部材7は、3種類の金型を用いて形成される。金型は、図14に示すように、車両前方側の側壁を形成する前方金型Aと、インサート部材付近の延設部71aの上壁の一部を形成する上方金型Bと、車両後方側の側壁を形成する後方金型Cで構成される。
【0087】
前方金型Aは、後方金型Cの前面に配置され、チャンバ本体71の前壁711、上壁712、下壁713、左右壁(図示せず)及びチャンバ本体71の中央付近から延びた延設部71aの上壁714のインサート部材72前までの一部と、延設部71aの左右壁(図示せず)とを形成する。そして、上方金型Bは、前方金型Aと後方金型Cとに挟まれ延設部71aのインサート部材72の上面に配置され、延設部71aのインサート部材72を含み、延設部71aの後壁までの上壁714の残り部分を形成する。尚、インサート部材72の上面側は、上型金型Bが覆うため軟質樹脂が包み込まないので、ブロー成形後は、インサート部材72の上面側が外側から目視できるようになっている。そして、後方金型Cは、上述した上方金型Bを前方金型Aとで挟むように前方金型Aの後面に配置され、チャンバ本体71の後壁715、チャンバ本体71から延びた延設部71aの下壁716、後壁717を形成する。
【0088】
本変形例では、前方金型Aと上方金型Bと後方金型Cとによる分割線として、2本のパーティングラインPL1、PL2が形成される。すなわち、パーティングラインPL1は、チャンバ部材7の延設部71aの上壁714と後壁717との境界部位に位置し車幅方向に延びている。また、パーティングラインPL2は、チャンバ部材7のチャンバ本体71の下壁713と後壁715との境界部位に位置し車幅方向に延びている。
【0089】
そして、チャンバ部材7を成形するために、インサート部材72をパーティングラインPL1と同一面である延設部71aの上壁714のパーティングラインPL1近傍に配置し、上述した各金型を合わせる。次に、ブロー成形後、前方金型Aは前方へ、上方金型Bは上方へ、後方金型Cは後方へ移動させる。その結果、チャンバ部材7が完成する。
【0090】
次に、インサート部材72のフランジ部72cについて説明する。インサート部材72は、図15(a)に示すように、延設部71aの車両前後方向に対して後方側で、チャンバ部材7のパーティングラインPL1近傍であって、パーティングラインPL1を含む延設部71aの上面に配設されている。インサート部材72は、フランジ部72cがチャンバ部材7の延設部71aの上面の上壁714の軟質樹脂に埋設されている。そして、インサート部材72の車両後方側のフランジ部72cを周りこんで包むチャンバ部材7の軟質樹脂の肉厚が厚く形成され(矢印W1)、パーティングラインPL1から遠ざかる車両前方側へ向かうほどフランジ部72cを周りこんで包む肉厚が薄くなる(矢印D)。
【0091】
尚、図15(b)に示す他の変形例のように、インサート部材72の車両後方側のフランジ部72cを包むチャンバ部材7の軟質樹脂の厚みを、インサート部材72の埋設部分の上下高さ以上に形成し、車両後方側のフランジ部72cと後壁717との間が軟質樹脂で完全に埋まるように形成してもよい(矢印W1)。
【0092】
このように、インサート部材72がパーティングラインPL1近傍に配設されたことにより、フランジ部72cに周りこんで包むチャンバ部材7の軟質樹脂の肉厚が厚く形成されるために、軟質樹脂の強度が上がり、インサート部材72の延設部71aからの抜け強度が高くなり、脱落を防止することができる。さらに、インサート部材72は、パーティングラインPL1と同一面である延設部71aの上面の上壁714に配設されることにより、延設部71aの上面の上壁714は、パーティングラインPL1近傍において軟質樹脂の強度が増すので、インサート部材72のチャンバ部材7からの抜け強度を高くすることができる。
【0093】
さらに、インサート部材72は、貫通孔721の断面形状を、テーパ形状としてもよい。貫通孔721の断面形状は、インサート部材72の外側から目視できる上面側(チャンバ空間7a外部側)の貫通孔721の上面穴が大径であり、インサート部材72の下面側(ブロー成形後の延設部71aのチャンバ空間7a内部側)の貫通孔721の下面穴に向かって徐々に小径となるテーパ形状となっている。そのため、インサート部材72は、ブロー成形時に軟質樹脂が貫通孔721に入り込んでテーパ面を介して係合するため、インサート部材72の延設部71aからの脱落をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0094】
1:車両用衝突検知装置 2:車両バンパ 3:バンパカバー
4:バンパレインフォースメント 4a:バンパレインフォースメント前面 4b:バンパレインフォースメント上面 5:サイドメンバ 6:アブソーバ
7:チャンバ部材 7a:チャンバ空間 71:チャンバ本体 71a:延設部
71b:開口部 72、74、75、76:インサート部材 720、740、750、760:インサート部材本体
72a、74a、75a、76a:固定部 72c、74c、75c、76c:フランジ部 721:貫通孔 72b:雌ネジ部材 75d:雄ネジ部材
8:圧力センサ 81:センサ本体 81a:取り付け部 81b:取り付け口 82:圧力導入管 10:歩行者保護装置ECU 10a:信号線 11:舌状片
PL:パーティングライン a:前方金型 b:上方金型 c:後方金型
711:前壁 712、714:上壁 713、716:下壁 715、717:後壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両バンパ内でバンパレインフォースメントの前面に配設され且つチャンバ空間が内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材と、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサとを備え、前記チャンバ空間内の圧力を前記チャンバ部材に設けられた開口部を介して前記センサ本体の内部へ導入して前記センサ素子により圧力検出を行い、その圧力検出結果に基づいて前記車両バンパへの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置において、
前記チャンバ部材は、前記チャンバ部材よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部を有するインサート部材が前記開口部の近傍にインサート成形され、
前記圧力センサは、前記インサート部材の前記固定部を介して前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする車両用衝突検知装置。
【請求項2】
前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出する雄ネジ部であり、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雄ネジ部に雌ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項3】
前記インサート部材の前記固定部は、雌ネジ部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雌ネジ部に雄ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項4】
前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を前記固定部の前記係止部により係止させることによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項5】
前記インサート部材は、前記固定部と一体的に形成されたフランジ部を有し、前記フランジ部が前記チャンバ部材に埋設されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項6】
前記インサート部材の前記フランジ部は、非円形の回り止め形状を有することを特徴とする請求項5に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項7】
前記インサート部材は、複数の前記固定部が板状部を介して一体的に設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項8】
前記インサート部材は、前記板状部に前記チャンバ部材の前記開口部と連通する貫通孔が設けられたことを特徴とする請求項7に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項9】
前記インサート部材は、前記貫通孔の断面形状がテーパ形状となっていることを特徴とする請求項8に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項10】
前記チャンバ部材は、その一部が前記バンパレインフォースメント前面よりも車両後方側且つ前記バンパレインフォースメント上面よりも上方側に延設されて前記チャンバ空間の一部分を形成すると共に前記開口部が設けられる延設部を備え、
前記インサート部材は、前記延設部の前記開口部近傍にインサート成形されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項11】
前記インサート部材は、前記チャンバ部材のブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項12】
前記インサート部材は、前記チャンバ部材の前記パーティングラインと同一面に配設されたことを特徴とする請求項11に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項1】
車両バンパ内でバンパレインフォースメントの前面に配設され且つチャンバ空間が内部に形成される軟質樹脂製のチャンバ部材と、圧力検出用のセンサ素子を内部に収容してなる圧力センサとを備え、前記チャンバ空間内の圧力を前記チャンバ部材に設けられた開口部を介して前記センサ本体の内部へ導入して前記センサ素子により圧力検出を行い、その圧力検出結果に基づいて前記車両バンパへの衝突を検知するように構成された車両用衝突検知装置において、
前記チャンバ部材は、前記チャンバ部材よりも硬質の材質からなり且つ少なくとも一つの固定部を有するインサート部材が前記開口部の近傍にインサート成形され、
前記圧力センサは、前記インサート部材の前記固定部を介して前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする車両用衝突検知装置。
【請求項2】
前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出する雄ネジ部であり、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雄ネジ部に雌ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項3】
前記インサート部材の前記固定部は、雌ネジ部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を介して前記雌ネジ部に雄ネジ部材を締結することによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項4】
前記インサート部材の前記固定部は、前記チャンバ部材の外側へ突出し且つ先端に鉤状又は傘状の係止部を有し、
前記圧力センサの取り付け部を前記固定部の前記係止部により係止させることによって、前記圧力センサが前記チャンバ部材に固定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項5】
前記インサート部材は、前記固定部と一体的に形成されたフランジ部を有し、前記フランジ部が前記チャンバ部材に埋設されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項6】
前記インサート部材の前記フランジ部は、非円形の回り止め形状を有することを特徴とする請求項5に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項7】
前記インサート部材は、複数の前記固定部が板状部を介して一体的に設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項8】
前記インサート部材は、前記板状部に前記チャンバ部材の前記開口部と連通する貫通孔が設けられたことを特徴とする請求項7に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項9】
前記インサート部材は、前記貫通孔の断面形状がテーパ形状となっていることを特徴とする請求項8に記載の車両用衝突検知装置。
【請求項10】
前記チャンバ部材は、その一部が前記バンパレインフォースメント前面よりも車両後方側且つ前記バンパレインフォースメント上面よりも上方側に延設されて前記チャンバ空間の一部分を形成すると共に前記開口部が設けられる延設部を備え、
前記インサート部材は、前記延設部の前記開口部近傍にインサート成形されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項11】
前記インサート部材は、前記チャンバ部材のブロー成形型のパーティングライン近傍に配設されたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1つに記載の車両用衝突検知装置。
【請求項12】
前記インサート部材は、前記チャンバ部材の前記パーティングラインと同一面に配設されたことを特徴とする請求項11に記載の車両用衝突検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−155603(P2010−155603A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216595(P2009−216595)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
[ Back to top ]