説明

車両用路車間通信装置

【課題】自車両の後から他車両が光ビーコン100の通信領域に進入した場合、その後続車両の路車間通信装置11から送信されるアップリンク信号に応答して光ビーコン100から送信されるDSSS情報信号を、自車両の路車間通信装置11が受信してしまう可能性がある。
【解決手段】路車間通信装置11は、車線通知情報信号の受信個数が、光ビーコン100から車線通知情報信号が始めに送信される予め決められた個数の2倍個数である20個になるまでは、DSSS情報信号を受信する。しかし、車線通知情報信号の受信個数が20個以上になると、光ビーコン100から送信されるDSSS情報信号を受信することを停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路車間通信を介して各種情報を提供する安全運転支援システム等のサービスを適切に受けるために車両に搭載される車両用路車間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行中の車両に各種交通情報を提供するサービスとして、渋滞や交通規制等の道路交通情報を車両に送信する道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication Systems、登録商標)が存在していた。近年では、これに加えて、安全運転支援システム(DSSS:Driving Safety Support Systems)が実用化されている(例えば、特許文献1)。DSSSでは、車両に対して情報を送信する路上機(以下、ビーコン)の通信領域に進入した車両からビーコンに対して送信される車両ID情報、及び、車両の速度等の走行状態を認識することにより、車両の個体と状態を特定し、個々の車両毎にその車両向けの情報を送信する。これにより、例えば、複数の車両が同時にビーコンの通信領域を通過する場合においても、速度が速い車両に対してのみに減速を促す注意喚起の情報を送信することができる。
【0003】
ところで、DSSSにおいては、車両側の通信装置とビーコンとの間の路車間通信は、図5に示すような通信シーケンスにて実行される。図5において、縦軸は上方向から下方向に向かって時間の経過を示している。ビーコンは、図6に示すような通信領域(この例においては、ビーコンの設置位置からその手前6mの道路幅上の領域が通信領域である。)に向けて間欠的に(例えば、10ms毎に)ダウンリンク信号を送信している。車両がビーコンの通信領域に進入すると、車両側の路車間通信装置がそのダウンリンク信号を受信することにより、路車間通信が開始される。図5に示すように、車両側の路車間通信装置は、ビーコンから送信されるダウンリンク信号を受信すると、そのダウンリンク信号に応答してアップリンク信号をビーコンに対して送信する。アップリンク信号は、車両毎に全て異なる個体情報である自車ID情報から構成され、ビーコンの通信領域に新規に進入した車両の存在をビーコンに通知する。図5に示すように、ビーコンは、ある車両からアップリンク信号を受信すると、そのアップリンク信号に応答して、車線通知情報信号及びDSSS情報信号を、ビーコンの通信領域に存在する走行中の全ての車両に対して周期的かつ交互に送信する。
【0004】
車線通知情報信号は、図7に示すように、アップリンク信号に応答して周期的にビーコンから送信される信号であり、始めの1回目の送信時には、予め定められた複数個(例えば、10個)が車両側の通信装置に対して送信される。これは、1回目だけ複数個送信される理由は、ビーコンから複数個の車線通知情報信号を送信することにより、車両側の通信装置が車線通知情報信号を確実に受信できるようにするためである。また、車線通知情報信号は、図示されないが、自車IDと現在走行中の車線とが関連付けられた情報を含み、車両に対して走行中の車線を通知する。これにより、車両側の通信装置は、自車のIDに相当する車線通知情報信号を受信すると、自車が走行中の車線を認識する。また、車両側通信装置は、車線通知情報信号に自車ID情報が含まれているかどうかにより、自車が送信したアップリンク信号をビーコンが正常に受信できたかどうかを判定する。
【0005】
次に、DSSS情報信号は、図7に示されるように、アップリンク信号を受信してから250msの期間内に、複数個の車線通知情報信号の後に続けてビーコンから送信される信号であり、車線通知情報信号と交互に送信される。DSSS情報信号は、個々の車両に対する車線通知情報信号に続けて送信されるが、その内容は、個々の車両に対する特有の情報ではなく、ビーコンの通信領域を通過する車両の全てに共通する最新の情報である。具体的には、DSSS情報信号は、ビーコンの前方に存在する交差点の状況(例えば、信号の状態、歩行者や対向車の有無等)を通知するための情報、ドライバに対して速度警告、停止指示等の注意喚起を促す情報等を含む信号であり、車両側の通信装置は、そのDSSS情報を受けて表示装置、スピーカー等を介してドライバに情報の放置、注意喚起等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−98892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ビーコンは、通信領域に進入した車両から送信されるアップリンク信号に応答してDSSS情報信号の送信を開始する。そのため、例えば図8に示すように、車両Aの数メートル後に後続する車両Bがビーコンの通信領域に進入した場合、ビーコンは、車両Aからのアップリンク信号に応答してDSSS情報信号を送信した後に、後続車両Bからのアップリンク信号に応答してDSSS情報信号を送信することになる。しかしながら、このとき車両Aがビーコンの通信領域内に存在する場合には、後続車両Bからのアップリンク信号に応答してビーコンから送信されるDSSS情報信号をも受信してしまう可能性がある。後続車両Bからのアップリンク信号に応答して送信されるDSSS情報信号には、後続車両Bがビーコンの通信領域に進入したタイミングにおけるDSSS情報が含まれるので、車両Aが受信すると不都合が生じることがある。
【0008】
例えば、車両Aがビーコンの通信領域に進入したタイミングでは前方の信号機が赤信号であり、DSSS情報信号には「止まれ」の注意喚起する情報が含まれていたが、後から後続車両Bが通信領域に進入したタイミングでは前方の信号機が青信号であり、DSSS情報信号には「進め」の情報が含まれている場合等である。この場合、車両Aは、後続車両Bよりも数メートル先に進んだ状態であり、後続車両Bが通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を受信しない方がよいが、車両Aは、後続車両Bが通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を受信してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両側の通信装置において、光ビーコンの通信領域に進入した後続車両から送信されたアップリンク信号に応答して光ビーコンから送信されるDSSS情報信号を無効化することで、その車両に対して適切なDSSSのサービスを受けることができる車両用路車間通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用路車間通信装置は、自車両が路側機の通信領域内に進入した際に、通信領域に進入したことを示すアップリンク信号を路側機に送信するアップリンク信号送信手段と、アップリンク信号に応答し、路側機から通信領域内に存在する車両に対して送信される、通信領域内に存在する個々の車両毎に特有な走行情報を通知するための第1の情報信号を受信する第1の情報信号受信手段と、第1の情報信号に連続して路側機から通信領域内に存在する車両に対して送信される、路側機周辺の走行環境を示す第2の情報信号を受信する第2の情報信号受信手段と、第1の情報信号受信手段により受信した第1の情報信号を監視することにより、自車両に後続する他車両の通信領域への進入を検出する検出手段と、検出手段により他車両の進入が検出された場合には、自車両において、以後に更新される第2の情報信号を無効化する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、受信した第1の情報信号を監視することにより、自車両に後続する他車両の通信領域への進入を検出した場合には、自車両において、以後に更新される第2の情報信号を無効化する。このため、他車両が路側機の通信領域に進入したタイミングで路側機から送信される第2の情報信号を無効化することができる。従って、適切なタイミングで路側機から送信される第2の情報信号を受信でき、ユーザは適切に自車両に見合った走行環境の情報サービスを受けることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の車両用路車間通信装置は、第1の情報信号受信手段にて、路側機から、アップリンク信号に応答して、始めに予め定められた複数個数連続して送信される第1の情報信号を受信し、検出手段にて、第1の情報信号受信手段により受信した第1の情報信号の個数をカウントし、このカウントされた個数が、予め定められた複数個数の2倍以上となった場合に、自車両に後続する他車両の通信領域への進入を検出することを特徴とする。路側機は、車両から送信されるアップリンク信号に応答して、始めに予め定められた複数個数の第1の情報信号を送信するため、予め定められた複数個数の2倍以上の第1の情報信号を受信した場合に、自車両に後続する他車両が路側機の通信領域への進入を検出する。予め定められた複数個数の2倍以上の第1の情報信号を受信するまでは、適切なタイミングで路側機から送信される第2の情報信号を受信でき、ユーザは適切に自車両に見合った走行環境の情報サービスを受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例におけるカーナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例において、光ビーコンの通信領域に車両Aの後に車両Bが進入する場合の各車両の路車間通信装置及び光ビーコン間の通信シーケンスを示した図である。
【図3】本実施例において、光ビーコンの通信領域に車両Aの後に車両Bが進入する場合に、光ビーコンが送信する信号を示した説明図である。
【図4】本実施例におけるカーナビゲーション装置の制御部にて実行される路車間通信処理を示すフローチャートである。
【図5】車両側の通信装置及び光ビーコン間の通信シーケンスを示した図である。
【図6】光ビーコンの通信領域を示した説明図である。
【図7】光ビーコンが送信する信号を示した説明図である。
【図8】光ビーコンの通信領域に2台目の車両が進入する場合を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施例について図面を用いて説明する。本実施例では、本発明の車両用路車間通信装置をカーナビゲーション装置に内蔵したものとして説明するが、カーナビゲーション装置とは別体に外付けしたものでもよい。また、本実施例では、路側機は光ビーコンであるとして説明するが、例えば電波ビーコンや、その他の通信媒体を利用して車両と通信する路側機であってもよい。本発明は、下記の実施例に限定されることなく、本発明の技術的範囲に存在する限り様々な形態を取り得る。
【0015】
(実施例)
図1は本実施例のカーナビゲーション装置10の全体構成を示すブロック図である。本実施例のカーナビゲーション装置10は、路車間通信装置11と、地図データ記憶部12と、自車位置検出部13と、操作スイッチ14と、表示装置15と、音声出力装置16と制御部17とから構成される。また、カーナビゲーション装置10は路車間通信装置11を介してDSSS専用の光ビーコン100と路車間通信を行う。
【0016】
路車間通信装置11は、赤外線を通信媒体として光ビーコン100と各種信号を送受信し合う。光ビーコン100から送信される各種信号には、光ビーコンの通信領域内に存在する全ての車両を対象として間欠的に送信される信号と、光ビーコンの通信領域内に存在す車両を特定し、その特定された車両を対象として送信される信号等がある。光ビーコン100の通信領域は、図6に示すように、光ビーコン100の設置地点からその前方約6メートルの道路上の範囲である。また、路車間通信装置11は、データ変換部111を有する。このデータ変換部111は、各種情報を含む電気的な信号を光ビーコン100に対して送信するための赤外線信号に変換し、また、受信した赤外線信号を電気的な信号に逆変換するものである。データ変換部111にて逆変換された各種情報を含む電気的な信号は制御部17に入力され、表示装置15や音声出力装置16を介してユーザに対して報知される。
【0017】
地図データ記憶部12には、目的地に至る経路を探索するために必要な経路データ121と、表示装置15に地図を描画するために必要な描画データ122と、図示しなかったが、案内用の画像や音声データ等が記憶されている。なお、記憶媒体としては、ROM(Read Only Memoly)、若しくは、読み書き可能なハードディスク、メモリ等を用いることができる。
【0018】
経路データ121には、目的地に至る経路を探索するために、道路地図情報が、接続地点を示すノードと、このノード間を接続するリンクからなるネットワーク情報として記憶されている。各道路及び交差点に該当するリンク及びノードには、例えば、各リンクやノードに付与された識別番号、道路種別、車線数の多寡数等の情報が付与されている。そして、これらの情報に基づいたコストが、各リンク及びノードに設定されている。この経路データ121に記憶されるネットワーク情報及びコストに基づいて、制御部17がコストの積和値が最小となるように周知のダイクストラ法等を用いて目的地までの最適な経路計算を行う。
【0019】
描画データ122には、道路や線路、建造物、私有地等といった施設のポリゴンデータや、海や河川等の地形を描画するための背景データ、及び、地図上に存在する各種施設に対するそれぞれの位置情報等を記憶する施設データが記憶されている。
【0020】
自車位置検出部13は、GPS(Global Positioning System)からの送信電波を、GPSアンテナを介して受信することで自車位置と現在時刻を検知するGPS受信機131と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ132と、車両の速度を検出するための車速度センサ133とを備えている。自車位置検出部13は、これらの各検出信号に基づき位置座標及び進行方向の組として車両の現在の自車位置を算出する。そして、これらセンサ等131乃至133は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら自車位置の検出を行うように構成されている。なお、自車位置検出部13は、上述した内の一部のセンサで構成してもよい。また、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサや、ステアリングの回転角センサ等を加えて構成されてもよい。
【0021】
操作スイッチ14には、表示装置15の周囲に設けられた複数の釦スイッチ等が用いられる。ユーザは操作スイッチ14を介して各種設定を行い、制御部17に出力することができる。
【0022】
表示装置15は、カラー表示可能な液晶ディスプレイからなる。ユーザにより操作スイッチ14を介して入力された情報、及び、路車間通信装置11を介して受信した情報等、様々な情報を表示する。
【0023】
音声出力装置16は、スピーカーからなり、地図データ記憶部12に記憶されている案内用の音声データに基づいて各種案内、及び、路車間通信装置11を介して受信した情報等、様々な情報を音声にて出力する。
【0024】
制御部17は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、ROM等に記憶されたプログラムに基づいて、ユーザにより入力された情報及び路車間通信装置11を介して受信した情報等を表示装置15に表示させる情報表示処理、路車間通信装置11において各光ビーコンと情報の送受信を実行させる路車間通信処理等を行う。
【0025】
なお、上記実施例における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、路車間通信装置11がアップリンク信号送信手段、第1の情報信号受信手段、及び第2の情報信号手段に相当し、検出手段、及び制御手段は、制御部17に相当する。
【0026】
続いて、光ビーコンの通信領域に2台目の車両が進入した場合における各路車間通信装置11及び光ビーコン100間における通信シーケンスを、図2を参照して説明する。ここでは、例えば、図8に示したように第2車線を走行中の車両Aが光ビーコンの通信領域に既に進入し路車間通信開始し、その後に第1車線を走行中の車両Bが通信領域に進入した場合について説明を行う。まず、車両Aの路車間通信装置11は、図5に示した光ビーコン100の通信領域に車両Aが進入すると、図2に示すように、光ビーコン100からその通信領域の範囲に間欠的に(例えば、10ms毎に)送信されるダウンリンク信号を受信する。ダウンリンク信号には、各光ビーコンの位置を示す位置情報、各光ビーコンを特定するためのID情報等が含まれる。車両Aの路車間通信装置11は、図2に示すように、ダウンリンク信号を受信すると、そのダウンリンク信号に応答してアップリンク信号を光ビーコン100に対して送信する。アップリンク信号には、各車両を個別に判断するためのID番号等が含まれる。また、光ビーコン100は、複数のアップリンク信号受信装置を備えており、どのアップリンク信号受信装置が走行中の車両から送信されるアップリンク信号を受信したかに基づいて、車両が何番目の車線を走行しているかを判定する。なお、車両の走行車線判定は、光ビーコン100に取り付けられたビデオカメラ等により撮像された画像を画像認識することにより判定するようにしてもよい。
【0027】
光ビーコン100はアップリンク信号を受信すると、そのアップリンク信号に応答して始めに予め定められた複数個(例えば、10個)の車線通知情報信号を送信し、続いてDSSS情報信号と車線通知情報信号とを、通信領域内に存在する車両に対して周期的に送信する。車線通知情報信号には、走行中の車両に対して、どの車線を走行しているかを通知する情報が含まれる。例えば、光ビーコンは、車両Aが第2車線を走行していると判定した場合は、受信したアップリンク信号に含まれる車両Aの車両IDと、第2車線とを組み付けた情報を含む車線通知情報信号を車両側に送信する。DSSS情報信号には、事故を軽減するために、ビーコンの前方に存在する交差点の信号の状態、交差点内に存在する歩行者、対向車の有無等の情報、また、ドライバへの注意喚起するための情報等が含まれている。ドライバへの注意喚起するための情報とは、例えば、制限速度を超過して走行している車両に対しては減速を促すような情報である。また、それらの情報は、表示装置15若しくは音声出力装置16を介してドライバに報知される。
【0028】
また、ここで、車両Bが車両Aの後から光ビーコンの通信領域に進入した場合、車両Bの路車間通信装置11は、図2に示すように、光ビーコン100からその通信領域の範囲に間欠的に送信されるダウンリンク信号を受信する。車両Bの路車間通信装置11は、ダウンリンク信号を受信すると、そのダウンリンク信号に応答してアップリンク信号を光ビーコン100に対して送信する。ここで、光ビーコン100は、図2に示すように、車両Bからのアップリンク信号を受信すると、そのアップリンク信号に応答して車線通知情報信号及びDSSS情報信号を通信領域内に存在する車両に対して周期的に送信する。そのとき、光ビーコン100は、図3に示すように、送信中であった信号の送信を中断し、車線通知情報信号及びDSSS情報信号を更新して新たに送信を開始する。このとき、始めに送信される更新された車線通知情報信号は、図3に示すように、予め定められた複数個(例えば、10個)送信される。なお、更新された車線通知情報には、車両Aが第2車線を走行しているという情報に加え、車両Bが第1車線を走行しているという情報が含まれる。
【0029】
車両Aの路車間通信装置11は、予め定められた個数の2倍の車線通知情報信号を受信した時点で路車間通信を終了し、それ以降の情報を受信することはない。従って、図2に示すように、車両Aの路車間通信装置11は、光ビーコン100の通信領域内であってもDSSS情報信号を受信し続けることはない。一方、車両Bの路車間通信装置11は、光ビーコン100から250ミリ秒間、周期的に送信される車線通知情報信号及びDSSS情報信号を受信する。なお、信号を最後に受信してから1秒以上信号を受信しなかった場合に路車間通信が終了したと判定する。
【0030】
次に、図4のフローチャートを参照して、カーナビゲーション装置10における制御部17にて実行される路車間通信処理を説明する。なお、本フローチャートに示す処理は、制御部17に記憶されているコンピュータプログラムに従って実行される。
【0031】
本処理は、車両が光ビーコン100の通信領域に進入すると開始する。まず、図4におけるステップS401にて、光ビーコン100の通信領域内にてダウンリンク信号を受信したかどうかを判定する。ダウンリンク信号を受信した場合は(ステップS401:YES)、ステップS403に移行する。ステップS401はダウンリンク信号を受信するまで自己遷移を繰り返す。ステップS403では、アップリンク信号を光ビーコン100に対して送信する。
【0032】
ステップS405では、光ビーコン100から送信される車線通知情報信号を受信したかどうかを判定する。車線通知情報信号を受信した場合は(ステップS405:YES)、ステップS407に移行する。車線通知情報信号を受信しない場合は(ステップS405:NO)、アップリンク信号を光ビーコン100が受信できなかった可能性があるため、ステップS403に戻り、再度アップリンク信号を送信する。
【0033】
ステップS407では、受信した車線通知情報に自車IDが含まれているかどうかを判定する。車線通知情報に自車IDが含まれている場合は(ステップS407:YES)、ステップS409に移行する。車線通知情報に自車IDが含まれていない場合は(ステップS407:NO)、アップリンク信号を光ビーコン100が受信できなかった可能性があるため、ステップS403に戻り、再度アップリンク信号を送信する。
【0034】
ステップS409では、ステップS405にて受信した車線通知情報信号のうち、車線通知情報に自車IDを含む車線通知情報信号の個数をカウントする。ステップS411では、ステップS409にてカウントされた車線通知情報信号の個数が、光ビーコン100から通信の始めに送信される車線通知情報信号の予め定められた個数の2倍である20個以上になったかどうかを判定する。車線通知情報信号の受信個数が20個以上になった場合は、(ステップS411:YES)ステップS417に移行する。車線通知情報信号の受信個数が20個未満である場合は、(ステップS411:NO)、ステップS413に移行する。
【0035】
ステップS413では、DSSS情報信号を受信したかどうかを判定する。DSSS情報信号を受信した場合は(ステップS413:YES)、ステップS405に戻る。光ビーコン100からは車線通知情報信号に次いでDSSS情報信号が送信されるため、DSSS情報信号を受信しない場合は(ステップS413:NO)、通信が終了している可能性があるため、ステップS415に移行する。ステップS415では、光ビーコン100から送信される信号を最後に受信してから、1秒以上信号を受信せずに経過したかどうかを判定する。信号を最後に受信してから1秒以上経過した場合は(ステップS415:YES)、光ビーコン100の通信領域から自車両が退出した可能性があるため、ステップS417に移行する。一方、信号を最後に受信してから1秒以上経過していない場合、光ビーコン100から送信される信号を受信し続けている場合は(ステップS415:NO)、路車間通信は継続中であるとしてステップS405に戻る。
【0036】
ステップS417では、光ビーコン100から送信される信号の受信を、路車間通信処理を終了することで停止する。なお、受信したDSSS情報は、表示装置15や音声出力装置16を介してユーザに対して報知される。
【0037】
以上のように、本実施例によれば、路車間通信装置11は、車線通知情報信号の受信個数が、光ビーコン100から車線通知情報信号が始めに送信される予め定められた複数個の2倍個である20個になるまではDSSS情報信号を受信する。しかし、車線通知情報信号の受信個数が20個以上になると、光ビーコン100から送信される信号の受信を停止する。従って、後から他車両が光ビーコン100の通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を受信することはない。これにより、路車間通信装置11は、適切なタイミングで送信されたDSSS情報信号を受信するため、ユーザは適切なDSSSのサービスを受けることが可能になる。
【0038】
(変形例1)
次に、本実施例における変形例1を説明する。本変形例では、車線通知情報信号を15個受信したと判定した場合に、光ビーコン100から送信される信号の受信を停止する。なお、本変形例では15個と設定したが、11個〜19個の個数で設定してもよい。これは、光ビーコンから車線通知情報信号が始めに送信される予め定められた複数個(10個)より大きく、その2倍の数より小さい値で設定される値である。予め定められた複数個(10個)よりも大きな値で設定されるため、必ず1つ以上のDSSS情報信号を受信することができる。一方、予め定められた複数個(10個)の2倍よりも小さな値で設定されるので、自車両の後から他車両が光ビーコン100の通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を受信することはない。これにより、路車間通信装置11は、適切なタイミングで送信されたDSSS情報信号を受信するため、ユーザは適切なDSSSのサービスを受けることが可能になる。
【0039】
(変形例2)
次に、本実施例における変形例2を説明する。本変形例では、制御部17は、車線通知情報信号を20個以上受信した場合、それ以降に受信したDSSS情報信号は消去する、若しくは、それ以降に受信したDSSS情報はユーザに対して報知を行わない。制御部17のRAM等に一時的に記憶されるDSSS情報信号をユーザに報知する前に消去する、若しくは、図示しなかったが、制御部17にて、DSSS情報信号をユーザに報知する処理を行わないことで、自車両の後から他車両が光ビーコン100の通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を無効化する。これにより、路車間通信装置11は、適切なタイミングで送信されたDSSS情報信号を受信するため、ユーザは適切なDSSSのサービスを受けることが可能になる。
【0040】
(変形例3)
次に、本実施例における変形例2を説明する。本変形例では、制御部17は、車線通知情報信号を、例えば15個以上受信した場合、それ以降に受信したDSSS情報信号は消去する、若しくは、それ以降に受信したDSSS情報はユーザに対して報知を行わない。制御部17のRAM等に一時的に記憶されるDSSS情報信号をユーザに報知する前に消去する、若しくは、図示しなかったが、制御部17にて、DSSS情報信号をユーザに報知する処理を行わないことで、自車両の後から他車両が光ビーコン100の通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を無効化する。なお、本変形例では15個と設定したが、11個〜19個の個数で設定してもよい。これは、光ビーコンから車線通知情報信号が始めに送信される予め定められた複数個(10個)より大きく、その2倍の数より小さい値で設定される値である。予め定められた複数個(10個)よりも大きな値で設定されるため、必ず1つ以上のDSSS情報信号を受信することができる。一方、予め定められた複数個(10個)の2倍よりも小さな値で設定されるので、自車両の後から他車両が光ビーコン100の通信領域に進入したタイミングで送信されるDSSS情報信号を無効化することができる。これにより、路車間通信装置11は、適切なタイミングで送信されたDSSS情報信号を受信するため、ユーザは適切なDSSSのサービスを受けることが可能になる。
【符号の説明】
【0041】
10 カーナビゲーション装置
11 路車間通信装置
17 制御部
100 光ビーコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が路側機の通信領域内に進入した際に、前記通信領域に進入したことを示すアップリンク信号を前記路側機に送信するアップリンク信号送信手段と、
前記アップリンク信号に応答し、前記路側機から前記通信領域内に存在する車両に対して送信される、前記通信領域内に存在する個々の車両毎に特有な走行情報を通知するための第1の情報信号を受信する第1の情報信号受信手段と、
前記第1の情報信号に連続して前記路側機から前記通信領域内に存在する車両に対して送信される、前記路側機周辺の走行環境を示す第2の情報信号を受信する第2の情報信号受信手段と、
前記第1の情報信号受信手段により受信した第1の情報信号を監視することにより、前記自車両に後続する他車両の前記通信領域への進入を検出する検出手段と、
前記検出手段により他車両の進入が検出された場合には、前記自車両において、以後に更新される第2の情報信号を無効化する制御手段とを備えることを特徴とする車両用路車間通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用路車間通信装置において、
前記第1の情報信号受信手段は、前記路側機から、前記アップリンク信号に応答して、始めに予め定められた複数個数連続して送信される前記第1の情報信号を受信し、
前記検出手段は、前記第1の情報信号受信手段により受信した第1の情報信号の個数をカウントし、該カウントされた個数が、前記予め定められた複数個数の2倍以上となった場合に、前記自車両に後続する他車両の前記通信領域への進入を検出することを特徴とする車両用路車間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−128690(P2011−128690A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283988(P2009−283988)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】