説明

車両用電源装置

【課題】本発明は、電力供給に関する制御が適切に実行可能となる、車両用電源装置の提供を目的とする。
【解決手段】車両に搭載される電気負荷と、電気負荷に給電するオルタネータ60と、オルタネータ60から電気負荷に電力を送るための電源ライン70と、を有する車両用電源装置であって、配線70上に所定の高周波を送出し、その高周波の送出により電源ライン70上に生じた信号波を検知するファンクションジェネレータ40と、ファンクションジェネレータ40によって検知された信号波の状態とファンクションジェネレータ40によって信号波の状態として検知されるべき所定の基準状態とを比較し、その比較結果に基づいて、電源ライン70を介して給電される電気負荷として想定されていない基準外負荷が車両に搭載されているか否かを判断する、電源マネジメントECU50と、を備えることを特徴とする車両用電源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電源装置に関し、より詳細には、車両に搭載される電気負荷に配線を介して給電する、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキへの電力供給を行うためのバッテリと、このバッテリの異常時にブレーキへの電力供給を行うためのキャパシタユニットとを有する車両用電源装置であって、バッテリの正常時にもキャパシタユニットからの電力供給を可能にする電力供給部と、この電力供給部を作動させるための強制作動部とを有し、正常時に電力供給部の動作状態を確認することを特徴とする車両用電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用電源装置は、正常時に電力供給部を所定時間作動させ、そのときの電力供給部の出力側の出力電圧又は出力電流とあらかじめ設定された基準電圧又は基準電流とを比較することにより、電力供給部の故障判断を行うものである。
【特許文献1】特開2005−14754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば車両の購入後に、ユーザが独自に電子機器等の電気負荷を新たに車両に追加するという実態が見受けられる。この場合、電力供給に関する制御が適切に行われないおそれがある。例えば、上述の従来技術であれば、新たな電気負荷が追加されると、電力供給部の出力側の出力電圧等が変化してしまう結果、その電気負荷の追加を想定しないであらかじめ設定された基準電圧等との関係に想定外の誤差が生じ、基準電圧等からは故障判断が適切にできないおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、電力供給に関する制御が適切に実行可能となる、車両用電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、
車両に搭載される電気負荷と、
前記電気負荷に給電する給電手段と、
前記給電手段から前記電気負荷に電力を送るための配線と、を有する車両用電源装置であって、
前記配線上に所定の高周波を送出する高周波送出手段と、
前記高周波の送出により前記配線上に生じた信号波を検知する信号波検知手段と、
前記信号波検知手段によって検知された信号波の状態と前記信号波検知手段によって前記信号波の状態として検知されるべき所定の基準状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記配線を介して給電される電気負荷として想定されていない基準外負荷が前記車両に搭載されているか否かを判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。これにより、車両に新たな電気負荷が追加されたことの検出が可能となる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る車両用電源装置であって、
前記判断手段によって前記基準外負荷が搭載されていると判断された場合に、前記給電手段の給電量が増量される及び/又は前記配線を介して給電される電気負荷の消費電流が制限されることを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る車両用電源装置であって、
前記配線を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記車両の所定の走行状態において前記電流検出手段によって検出された電流値が所定の電流閾値以上の場合に、前記給電手段の給電量が増量される及び/又は前記配線を介して給電される電気負荷の消費電流が制限されることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第3の発明に係る車両用電源装置であって、
前記所定の電流閾値は、前記判断手段によって前記基準外負荷が搭載されていないと判断された場合に前記電流検出手段によって前記所定の走行状態毎に検出された電流値に基づく学習値であることを特徴とする。
【0009】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に係る車両用電源装置であって、
前記判断手段の判断結果の報知をする報知手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力供給に関する制御が適切に実行可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である車両用電源装置100の構成図を示す。車両用電源装置100を備える車両は、複数の電気負荷を搭載しており、電圧系の異なる電気負荷が混在する。図1の場合、高圧系(例えば、42V系)の電気負荷(以下、「高圧系負荷」という)として符号1,2,3が例示され、低圧系(例えば、14V系)の電気負荷(以下、「低圧系負荷」という)として符号12,13が例示されている。図1の高圧系負荷1,2,3は、低圧系負荷12,13に比べ所定時間に(例えば、50msの短期間に)大きな電力量を消費する電気負荷である。
【0012】
図2は、高圧系負荷の起動とともに流れる電流の変化を示した一例である。高圧系負荷(特に、インダクタを有するモータ等の電気負荷)にはその過渡特性に従って定常時の電流値より大きい突入電流が起動とともに流れる。図2に示されるように、高圧系負荷に流れる電流値は、起動後に一時的に大きなピーク電流値Iに到達後に定常電流まで低下する。TAは、起動時からピーク電流値Iに到達後にピーク電流値Iの半分の電流値に低減するまでの時間である。
【0013】
高圧系負荷の具体例として、1を電動スタビリティコントロール装置、2を電動パワーステアリング装置、3を電動ブレーキ装置とする。
【0014】
電動スタビリティコントロール装置1(以下、「電動スタビ1」という)は、走破性や乗降性などの向上のため、車両のロールを抑えるスタビライザを電動で制御し、車両の横方向の加速度に応じて適切なロール角となるように車両の姿勢を制御する。電動スタビ1は、ロール角調整用モータとロール角調整用コンピュータ(電動スタビECU)とを備える。ロール角調整用モータは、例えば、トーションバーをねじるロータリアクチュエータである。電動スタビECUは、例えば、横加速度センサなどからのセンサ信号に基づいてロール角調整用モータの起動が必要と判断した場合、ロール角調整用モータの起動要求発生フラグを立てて、ロール角調整用モータを駆動する駆動信号を出力する。その駆動信号に従ってロール角調整用モータは動作する。ロール角調整用モータの動作によって、車両のロール角が調整され得る。
【0015】
電動パワーステアリング装置2(以下、「電動パワステ2」という)は、操舵状態に応じてモータにより操舵力を発生させてドライバーのステアリング操作を支援する。電動パワステ2は、操舵力調整用モータと操舵力調整用コンピュータ(電動パワステECU)とを備える。操舵力調整用モータは、例えば、ステアリング機構のラックのストロークを調整するモータである。電動パワステECUは、例えば、トルクセンサや操舵角センサなどからのセンサ信号に基づいて操舵力調整用モータの起動が必要と判断した場合、操舵力調整用モータの起動要求発生フラグを立てて、操舵力調整用モータを駆動する駆動信号を出力する。その駆動信号に従って操舵力調整用モータは動作する。操舵力調整用モータの動作によって、ドライバーのステアリング操作がアシストされ得る。
【0016】
電動ブレーキ装置3(以下、「電動ブレーキ3」という)は、車両の挙動の安定性などの向上のため、横方向の加速度、ヨーレート、舵角などの車両の状態に応じて、車両の左右の制動力を自動的に調整する。電動ブレーキ3は、制動力調整用モータ(VSCモータ)と制動力調整用コンピュータ(VSC−ECU)とを備える。VSCモータは、制動力を調整するための油圧を調整するポンプを駆動するモータである。VSC−ECUは、例えば、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサなどからのセンサ信号に基づいてVSCモータの起動が必要と判断した場合、VSCモータの起動要求発生フラグを立てて、VSCモータを駆動する駆動信号を出力する。その駆動信号に従ってVSCモータは動作する。VSCモータの動作によって、制動力が調整され得る結果、車両の挙動の安定化を可能にする。また、電動ブレーキ装置3として、エンジンの吸気による負圧ではなく電動油圧ポンプによってドライバーの制動操作力をアシストする倍力装置(ハイドロブースタ)が挙げられる。
【0017】
一方、低圧系負荷12の具体例として、例えば、エアコン、ヘッドライト、リヤデフォッガ、リヤワイパー、ミラーヒータ、シートヒータ、オーディオ、ランプ、シガーソケット、各種ECU、などが挙げられる。
【0018】
また、低圧系負荷12として、車両用電源装置100は、ナビゲーション装置(以下、「ナビ」という)13を備えている。ナビ13は、GPS装置と地図DB(データベース)を有している。GPS装置は、GPS受信機によるGPS衛星からの受信情報に基づいて、自車の位置を2次元若しくは3次元の座標データによって特定する装置である。一方、地図DBは、高精度の地図情報を記憶している。高精度の地図情報には、直線路、カーブ、分岐路、路面傾斜及びカント等の道路形状や地形に関する情報や、交差点、踏切、駐車場、有料道路の料金所(ETCレーン)などの施設の存在地点の情報がその地点の座標データとともに含まれている。地図DB内の地図情報は、車車間通信や路車間通信や所定の管理センターなどの外部との通信を介して、あるいは、CDやDVDなどの媒体を介して、更新可能にしてもよい。したがって、ナビ13は、GPS装置により検出された車両位置と地図DB内の地図情報に基づいて、自車が地図上のどのような地点に位置しているのかを把握することができる。
【0019】
また、車両用電源装置100は、高圧系の蓄電手段である高圧系蓄電池61と、低圧系の蓄電手段である低圧系蓄電池11と、高圧系の電圧を低圧系の電圧に降圧変換して高圧系から低圧系への電力供給を行う降圧モードを少なくとも有する直流/直流電圧変換器20(DC−DCコンバータ20)とを備えている。なお、DC−DCコンバータ20は、低圧系の電圧を高圧系の電圧に昇圧変換して低圧系から高圧系への電力供給を行う昇圧モードを有してもよい。
【0020】
高圧系蓄電池61は高圧系の電圧で作動する高圧系負荷への電力供給に主に対応し、低圧系蓄電池11は低圧系の電圧で作動する低圧系負荷への電力供給に主に対応する。高圧系蓄電池61の具体例としてリチウムイオンバッテリがあり、低圧系蓄電池11の具体例として鉛バッテリがある。なお、高圧系蓄電池61や低圧系蓄電池11は、ニッケル水素電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンバッテリ、鉛バッテリ、又はそれらのいずれかの組み合わせでもよい。
【0021】
また、高圧系蓄電池61には、電源ライン70を介して、運動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行うオルタネータ60が接続されていてもよい。オルタネータ60は、エンジンを動力源とする発電機であって、車両を走行させるためのエンジンの出力によって発電を行う。オルタネータ60で発生した電力によって、高圧系負荷が動作したり、高圧系蓄電池61が充電されたりする。オルタネータ60が停止している状態では、高圧系蓄電池61から各高圧系負荷に電力を供給し得る。例えば、エンジンが停止してオルタネータ60の不作動状態である駐車状態で必要とされる電力は、高圧系蓄電池61から供給することができる。
【0022】
DC−DCコンバータ20は、高圧系蓄電池61と低圧系蓄電池11との間に設けられ、高圧系の電力を降圧変換して低圧系の電力として供給する。なお、DC−DCコンバータ20は、高圧系蓄電池61及び高圧系負荷の電圧仕様や低圧系蓄電装置11及び低圧系負荷の電圧仕様などに合わせて、昇圧変換や同圧変換等の変換動作をするものであってもよい。
【0023】
DC/DCコンバータ20は、その内部にあるトランスやスイッチングレギュレータやシリーズレギュレータ等の電圧変換手段によって、要求される電圧変換に応じて、高圧系蓄電池61及び高圧系負荷が接続される電源ライン70の電圧を降圧変換して低圧系蓄電池11及び低圧系負荷が接続される電源ライン71側に出力する。
【0024】
また、車両用電源装置100は、電源ライン70上に所定の高周波を送出する高周波送出手段及びその高周波の送出により電源ライン70上に生じた信号波を検知する信号波検知手段として、ファンクションジェネレータ40を備えている。
【0025】
ファンクションジェネレータ40は、発振回路とインピーダンス測定回路とを備える。発振回路は、電源ライン70の送電端Aから一定の高周波を内部抵抗を介して送出する。電源ライン70の送電端Aから送出された高周波とその反射波との合成波(定在波)が、送電端Aにおいて検知され得る。電源ライン70の送電端Aから送出された高周波の反射波は、電源ライン70における負荷インピーダンスによって起こる。インピーダンス測定回路は、発振回路の発振中において送電端Aにおいて検知される定在波の変化に基づき電源ライン70における負荷インピーダンスの変化を検知する。インピーダンス測定回路は、例えば、送電端Aにおける定在波の波高値(電圧値)を測定する。送電端Aにおける定在波の電流値や周波数などを測定してもよい。また、電源ライン70における負荷インピーダンスの変化を精度よく検知するため、ファンクションジェネレータ40は、電源ライン70における負荷インピーダンスに作用する高圧系負荷や低圧系負荷や蓄電池などの電気負荷と共通グランド(接地)とする。ファンクションジェネレータ40は、測定結果を電源マネジメントECU50に送信する。
【0026】
電源マネジメントECU50は、後述の協調制御等の制御プログラムや制御データを記憶するROM、その制御プログラムの処理データを一時的に記憶するRAM及びその制御プログラムを処理するCPUなどを構成するマイクロコンピュータ50aと、記憶装置50b(例えば、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性メモリやハードディスク)とを備える電子制御装置である。
【0027】
電源マネジメントECU50は、例えば、電力の安定供給を図るための協調制御を実行する。電源ライン70や71を介して電力供給を受ける電気負荷の数やその消費電流が増加するにつれて、高圧系蓄電池61や低圧系蓄電池11の電圧は降下しやすくなる。例えば、電動スタビ1のロール角調整用モータと電動パワステ2の操舵力調整用モータの起動要求がほぼ同時に発生した場合には、両者の動作電流(特に、定常時の動作電流より一時的に大きな電流である突入電流)はオーディオ等の電気負荷に比べて大きいため、操舵力調整用モータとロール角調整用モータが動作することにより大電力が消費され、高圧系蓄電池61やオルタネータ60の給電能力を一時的に超えることがある。その結果、電源ライン70や71の電位の低下が発生し、その電位低下の誘因である電動スタビ1や電動パワステ2も含め各電源ラインに接続される電気負荷がその電位低下によって機能不良(例えば、コンピュータのリセットや誤動作、モータ類の出力低下)を起こすおそれがある。したがって、このようなほぼ同時に電源を利用することによる電源電圧の降下を防ぐため、電源マネジメントECU50は、例えば、各高圧系負荷の起動要求を収集し、高圧系負荷同士が同時に動作しないように各高圧系負荷の動作タイミングを調整する協調制御や各高圧系負荷の動作制限を行う出力制限制御を実行する。なお、本出願人はこの協調制御や出力制限制御に関連する発明を出願済みである。
【0028】
また、電源マネジメントECU50は、ファンクションジェネレータ40による測定結果に基づいて、電源ライン70を介して給電される電気負荷として想定外の基準外負荷が車両に搭載されているか否かを判断する。基準外負荷が電源ライン70を介して給電を受けていれば、基準外負荷が電源ライン70を介して給電を受けていない場合に対して電源ライン70における負荷インピーダンスは変化するため、ファンクションジェネレータ40によって測定され得るその変化に基づいて基準外負荷が車両に搭載されているか否かを判断することができる。電源マネジメントECU50は、その判断結果を表示装置51や車載通信装置52に送信する。
【0029】
表示装置51は、電源マネジメントECU50の判断結果をユーザに対して報知する手段である。表示装置51は、例えば、その判断結果を表示するディスプレイや、その判断結果を点灯状態によって知らせるウォーニングランプであればよい。表示装置51は、電源マネジメントECU50によって基準外負荷が車両に搭載されていると判断された場合、例えば、基準外負荷が車両に搭載されている旨や基準外負荷の取り外しをお願いする旨をユーザに知らせる。
【0030】
また、車載通信装置52は、電源マネジメントECU50の判断結果を車外に対して報知する手段である。車載通信装置52は、例えばインターネット通信網や専用回線を介して、ディーラーや所定の情報管理センターなどに備えられた車外通信装置53と通信する。これによって、ディーラー等は、各車両の電源マネジメントECU50の判断結果を容易に収集することができ、その収集情報を例えばトラブルシュートに利用することができるようになる。
【0031】
続いて、電源マネジメントECU50の動作例について説明する。図3は電源マネジメントECU50の動作フローである。電源マネジメントECU50は、エンジンを始動させるためのイグニッションスイッチがオフの状態において、カーテシスイッチ30によって検出される車両の乗降ドアの開閉状態を示すカーテシ信号を監視する(ステップ10)。乗降ドアの開状態を示すオン状態を検知した電源マネジメントECU50は、電源ライン70上への高周波の送出を開始するようにファンクションジェネレータ40に指令する(ステップ20)。当該指令を受けたファンクションジェネレータ40は、電源ライン70上に高周波を送出し、その送出により生じた定在波を検出する(ステップ14)。
【0032】
電源マネジメントECU50は、ファンクションジェネレータ40によって測定された定在波の状態が所定の基準状態と相違があるか否かを判断する(ステップ16)。所定の基準状態は、例えば、ファンクションジェネレータ40から新車状態において同一の高周波が送出された場合に生じた定在波の状態で決められる。すなわち、同一の高周波を送出した場合において送電端Aにおいて検知される、新車時の定在波の状態と現時点の定在波の状態が比較される。新車時の定在波の状態は、例えば、記憶装置50bに記憶されている。また、新車時の定在波の状態と現時点の定在波の状態を比較するには、例えば、ピークホールド回路によって測定され得る定在波の波高値(電圧値)同士を比較すればよい。
【0033】
電源マネジメントECU50は、現時点の定在波の状態が所定の基準状態と相違がないと判断した場合には、想定されていない基準外電気負荷が車両に搭載されていないと判断する(ステップ20)。そして、イグニッションスイッチのオンへの変化によりエンジンの始動を検知した電源マネジメントECU50は(ステップ22)、高圧系負荷等の負荷電流の通電パターン(電力の消費パターン)の学習を開始する。電源マネジメントECU50は、基準外負荷が搭載されていない状態での負荷電流の通電パターンを学習することによって、基準外負荷の搭載による影響を判断することができる。すなわち、電源マネジメントECU50は、基準外負荷が搭載されていると判断した場合に検出される負荷電流が基準外負荷の搭載されていないと判断した場合に検出される負荷電流の学習結果に基づき設定される基準値以上の場合には、当該基準外負荷の車両への搭載が電力供給に関する制御に影響があると判断して、基準外負荷の搭載に対する所定の影響排除制御を実行することができる。
【0034】
負荷電流の学習対象となる電気負荷の上流側に設置された電流センサによって、その負荷電流は検出される。また、学習すべき負荷電流には、高圧系負荷の負荷電流と低圧系負荷の負荷電流の両方が含まれることが好ましい。したがって、図1に示されるように、オルタネータ60の下流側であって高圧系負荷及び低圧系負荷の上流側に設置された電流センサ80によって、それらの合計の負荷電流は検出される。なお、高圧系負荷単独の負荷電流を電流センサ81によって検出してもよいし、低圧系負荷単独の負荷電流を電流センサ82によって検出してもよい。
【0035】
また、負荷電流の通電パターンの学習にあたり、負荷電流のパターンは道路形状やドライバーの運転の癖などに依存するため一意に定義することが難しい。そこで、ナビ13が有する位置情報や地図情報などを用いて、所定の走行状態における負荷電流の通電パターンが随時学習される。
【0036】
所定の走行状態として、電動スタビ1、電動パワステ2及び電動ブレーキ3等に含まれる高圧系負荷の作動期間が挙げられる。高圧系負荷の作動期間に、車載負荷の給電に与える影響が一番大きくなると考えられる。そこで、高圧系負荷の作動地点における負荷電流の通電パターンを学習した結果を、基準外負荷の車両への搭載が電力供給に関する制御に影響があるか否かを判断するための基準値に反映すれば、その判断を効果的に行うことができる。高圧系負荷は、例えば、車両の旋回時に作動する。
【0037】
そこで、図3に戻り、例えばカーブの進入地点において車両が極低速走行していない限り高圧系負荷が作動するという条件の場合、電源マネジメントECU50は、位置情報と地図情報に基づき車両の現在地点がカーブの進入地点であることがナビ13によって検出され(ステップ24,yes)、且つ、VICS情報に基づき車両の現在地点が渋滞地点に該当していないとナビ13によって検出されたときには(ステップ26,yes)、現在地点に係る位置情報とともに電流センサ80によって検出された負荷電流値を記憶装置50bに記録する(ステップ28)。一方、電源マネジメントECU50は、車両の現在地点がカーブの進入地点ではない又は渋滞地点に該当していると検出されたときには(ステップ24又は26,no)、学習要素として不適であるとして、位置情報と負荷電流値を記憶装置50bには記録しない(ステップ34)。
【0038】
電源マネジメントECU50は、記憶装置50bに現在と同一地点の負荷電流値が記憶されていた場合には、すでに記憶された負荷電流値を現在検出された負荷電流値とすでに記憶された負荷電流値との平均値に更新する。すなわち、その平均値が、その地点における負荷電流値の基準値に相当する。これにより、記憶装置50bの使用容量を抑えるとともに負荷電流値のばらつきを抑えたその地点における基準値を設定することができる。電源マネジメントECU50は、イグニッションスイッチのオフへの変化によりエンジンの停止を検知するまで、負荷電流値と位置情報を記憶装置50bに記録する学習を継続する(ステップ32)。
【0039】
一方、電源マネジメントECU50は、現時点の定在波の状態が所定の基準状態と相違があると判断した場合には、想定されていない基準外電気負荷が車両に搭載されていると判断する(ステップ40)。そして、イグニッションスイッチのオンへの変化によりエンジンの始動を検知した電源マネジメントECU50は(ステップ42)、基準外負荷の車両搭載を検出したことをユーザに知らせるために表示装置51に相当するウォーニングランプを点灯させるとともに(ステップ44)、基準外負荷の車両搭載を検出したことをディーラー等に車載通信装置52を介して通知する(ステップ46)。
【0040】
そして、電源マネジメントECU50は、位置情報と地図情報に基づき車両の現在地点がカーブの進入地点であることがナビ13によって検出され(ステップ48,yes)、且つ、VICS情報に基づき車両の現在地点が渋滞地点に該当していないとナビ13によって検出されたときには(ステップ50,yes)、電流センサ80によって現在地点における負荷電流値を検出する(ステップ52)。そして、電源マネジメントECU50は、電流センサ80によって検出された現在地点における負荷電流値が記憶装置50bに記憶された現在地点における負荷電流値の基準値との差が所定値以上の場合、基準外負荷の車両への搭載が電力供給に関する制御に与える影響を抑えるために、その影響排除制御として、オルタネータ60の発電電圧の目標値を上げることによってその発電量を上昇させるとともに(ステップ56)、電動スタビ1等の高圧系負荷の出力を絞ることによってその消費電流を制限する(ステップ58)。
【0041】
したがって、車両用電源装置100によれば、電力供給に関する制御が適切に実行可能となる。すなわち、電源マネジメントECU50による協調制御等が適切に実施可能になり、車両電源が不安定になることを防止することができる。また、メーカーが推奨する純正部品以外の部品等の基準外部品の取り付けが電力供給に関する制御に影響がある場合には、基準外負荷の車両搭載の情報を得たディーラー等から連絡やウォーニングランプの点灯によって、ユーザに対し注意を促すことができるようになる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0043】
例えば、高圧系負荷を備えるシステムの具体例として、電動スタビ1と電動パワステ2と電動ブレーキ3とを示したが、当該システムはこれらの装置に限られない。例えば、車高制御装置(車高調整用モータと車高調整用コンピュータとを備え、ユーザからの指令や車両の状態に応じて車両の高さを制御する装置)、二次空気供給装置(エアクリーナからの空気を排気ポートに送り込むポンプモータとポンプモータを制御するコンピュータとを備え、エアクリーナからの空気を排気ポートに送り込む装置)、カムバイワイヤ(エンジンカムを動かすカム用モータとカム用モータを制御するコンピュータとを備え、エンジンカムをベルトレスで制御する装置)などが挙げられる。
【0044】
また、DC−DCコンバータ20と電源マネジメントECU50については、両者を別体構成にしてもよいし一体構成にしてもよい。
【0045】
また、電源マネジメントECU50の判断結果をユーザに知らせる手段として、音声によって知らせることが可能なスピーカでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態である車両用電源装置100の構成図を示す。
【図2】高圧系負荷の起動とともに流れる電流の変化を示した一例である。
【図3】電源マネジメントECU50の動作フローである。
【符号の説明】
【0047】
1 電動スタビ(高圧系負荷)
2 電動パワステ(高圧系負荷)
3 電動ブレーキ(高圧系負荷)
11 低圧系蓄電装置
12 低圧系負荷
13 ナビゲーション装置(低圧系負荷)
20 DC−DCコンバータ
40 ファンクションジェネレータ
50 電源マネジメントECU
51 表示装置
52,53 通信装置
60 オルタネータ
61 高圧系蓄電装置
70、71 電源ライン
80,81,82 電流センサ
100 車両用電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電気負荷と、
前記電気負荷に給電する給電手段と、
前記給電手段から前記電気負荷に電力を送るための配線と、を有する車両用電源装置であって、
前記配線上に所定の高周波を送出する高周波送出手段と、
前記高周波の送出により前記配線上に生じた信号波を検知する信号波検知手段と、
前記信号波検知手段によって検知された信号波の状態と前記信号波検知手段によって前記信号波の状態として検知されるべき所定の基準状態とを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記配線を介して給電される電気負荷として想定されていない基準外負荷が前記車両に搭載されているか否かを判断する判断手段と、を備えることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記判断手段によって前記基準外負荷が搭載されていると判断された場合に、前記給電手段の給電量が増量される及び/又は前記配線を介して給電される電気負荷の消費電流が制限される、請求項1に記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記配線を流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記車両の所定の走行状態において前記電流検出手段によって検出された電流値が所定の電流閾値以上の場合に、前記給電手段の給電量が増量される及び/又は前記配線を介して給電される電気負荷の消費電流が制限される、請求項1又は2に記載の車両用電源装置。
【請求項4】
前記所定の電流閾値は、前記判断手段によって前記基準外負荷が搭載されていないと判断された場合に前記電流検出手段によって前記所定の走行状態毎に検出された電流値に基づく学習値である、請求項3に記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記判断手段の判断結果の報知をする報知手段を備える、請求項1から4のいずれかに記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253109(P2008−253109A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94613(P2007−94613)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】