説明

車両空調用蓄冷システム及びこれに用いる蓄冷器

【課題】装置を小型化できるとともに、蓄冷材との熱交換効率が高く、空調装置始動時等においても、十分な冷気を得ることができる車両空調用蓄冷システム及びこれに用いる蓄冷器を提供する。
【解決手段】蓄冷器107を備える車両空調用蓄冷システム101であって、空調システムの定常運転時に、エバポレータ7で生じた冷熱を、熱媒体を介して上記蓄冷器に蓄冷する蓄冷行程と、送風路8を流動する空調用空気を上記蓄冷器に導いて冷却する空気冷却行程とを含み、上記蓄冷器を、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄冷物質が保持されているとともに通気性を有する蓄冷構造体を備えて構成し、上記蓄冷構造体内に上記空調用空気を流動させることにより上記空気冷却行程が行われるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両空調用蓄冷システム及びこれに用いる蓄冷器に関する。詳しくは、空調システムの定常運転時において、上記蓄冷器に冷熱を蓄冷するとともに、エンジン停止時や空調システム始動時等において、蓄冷した冷熱を空調用空気に作用させて空調を行う、車両空調用蓄冷システム及びこれに用いる蓄冷器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車室の冷房を行うために、ヒートポンプ式の空調装置が用いられることが多い。一般的な車両用のヒートポンプ式空調装置は、エンジンの回転を取り出してコンプレッサを作動させ、室内から外気へ熱を移動させるように構成されている。このため、エンジンが稼働していなければ、空調装置を利用できない。
【0003】
特に、トラック等では、夏場において冷房機能を作動させるためにエンジンを稼働させたままで、仮眠をとる場合が多い。しかし、エンジン音や振動が発生するため、ドライバーが十分に休息できないという問題もある。
【0004】
しかも、エンジンを駆動し続けることになるため、燃費が悪化する。また、排気ガスを排出し続けるため、環境に悪影響を与えることにもなる。上記問題を緩和するために、蓄冷器を備えた車両用冷房装置が提供されている。
【0005】
また、夏期等において空調装置を始動させた場合等において、温風が吹き出すとともに、車室温度が低下するまでに相当の時間がかかる。しかも、空調装置にも大きな負荷がかかることになる。特に電気自動車等において、バッテリによってコンプレッサを駆動する場合、蓄電池の電力が大きく低下して走行に支障が出る恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−94255号公報
【0007】
上記特許文献に記載されている車両用冷房装置は、蓄冷材と一体的に構成された蓄冷式熱交換器を備えて構成されている。冷房用の冷凍サイクルが定常運転されているときに、上記冷凍サイクルによって冷却された空調用の空気を上記蓄冷式熱交換器に導入して蓄冷を行う。一方、上記冷凍サイクルが停止状態にあって冷房が必要なときには、上記蓄冷式熱交換器に空調用空気を導入して冷却し、車室に吹き出して冷房を行うように構成されている。
【0008】
上記特許文献に記載されている車両用冷房装置では、パラフィン系の蓄冷材が採用されている。上記蓄冷材は、14℃〜18℃の融点を備え、冷風を作用させることにより液層から固層へ層変化することにより、潜熱を蓄積できるように構成されている。上記蓄冷材を保持するために、上記蓄冷器は、アルミ製の枠体にアルミ製偏平チューブとアルミコルゲートフィンとを交互に多数積層して一体に結合した構造を備える。そして、上記偏平チューブ内に上記蓄冷材が密封されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載されている蓄冷器では、固体と液体との間の層変化による潜熱を利用している。このため、蓄冷材が液体状態にある場合にも、熱交換機能を発揮できる構造を維持する必要がある。上記特許文献に記載されている発明では、上記構造を維持するため、偏平チューブに蓄冷材を封止する構造を採用している。ところが、上記構造を採用すると、蓄冷器の構造が非常に複雑になるとともに、製造コストが増大する。
【0010】
また、上記蓄冷器においては、上記蓄冷材を上記偏平チューブ内に封止する必要があるため、蓄冷材の上記封止構造と空気を流動させる空間とを交互に多数積層して多層構造に構成している。このため、装置が大型化するという問題がある。
【0011】
しかも、上記偏平チューブと上記蓄冷材との間の熱交換面積が限られるため、熱交換効率が低い。このため、夏期の空調装置始動時等において、十分な冷気を得ることができない恐れがある。
【0012】
また、電気自動車等において、コンプレッサをモータで駆動する自動車においては、空調装置に大きな電力を供給すると、始動の際のバッテリ消耗量が大きくなり、走行に支障をきたす恐れもある。
【0013】
本願発明は、装置を小型化できるとともに、蓄冷材との熱交換効率が高く、空調装置始動時等においても、十分な冷気を得ることができる車両空調用蓄冷システム及びこれに用いる蓄冷器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の請求項1に記載した発明は、蓄冷器を備える車両空調用蓄冷システムであって、空調システムの定常運転時に、エバポレータで生じた冷熱を、熱媒体を介して上記蓄冷器に蓄冷する蓄冷行程と、送風路を流動する空調用空気を上記蓄冷器に導いて冷却する空気冷却行程とを含み、上記蓄冷器を、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄冷物質が保持されているとともに通気性を有する蓄冷構造体を備えて構成し、上記蓄冷構造体内に上記空調用空気を流動させることにより上記空気冷却行程が行われるように構成したものである。
【0015】
本願発明では、蓄冷器を、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄冷物質が保持されているとともに通気性を有する蓄冷構造体を備えて構成している。
【0016】
固体蓄冷物質を採用しているため、蓄冷材の層変化がない。このため、熱伝導性構造体の空隙に蓄冷物質を直接保持させることができる。これにより、蓄冷物質を保持するための密閉構造が不要となり、装置を小型軽量化できる。
【0017】
また、上記熱伝導性構造体は、上記固体蓄冷物質に比べて熱伝導率が高い。しかも、上記熱伝導性構造体に、固体蓄冷物質が直接保持される。このため、蓄冷物質だけの場合に比べて蓄冷構造体内部の熱伝導率は格段に大きくなる。したがって、蓄冷行程及び空気冷却行程において、蓄冷構造体内部の熱移動が格段に速くなり、蓄冷構造体内部の温度差も小さくなる。この構造を採用することにより、蓄冷行程において短時間に大量の冷熱を蓄積し、また、空気冷却行程において、大量の空気を冷却することができる。また、電気自動車等において、コンプレッサをモータによって駆動する場合においても、上記モータの消費電力を増大させることなく、空調装置の始動初期において空気を十分に冷却することが可能となる。
【0018】
上記熱伝導性構造体として、金属等で形成された熱伝導性のハニカム構造体、複数のフィン構造体を採用することができる。これら蓄冷構造体の空隙の一部に上記固体蓄冷物質を保持させることにより、通気性を有する蓄冷構造体を構成できる。
【0019】
また、請求項2に記載した発明のように、上記蓄冷構造体を、連続気孔を有する多孔質熱伝導性構造体に上記固体蓄冷物質を保持させて構成するのが好ましい。
【0020】
上記固体蓄冷物質を保持できれば、種々の多孔質熱伝導性構造体を採用できる。たとえば、銅、ニッケルやクロム合金等の金属多孔質体を採用できる。これら金属多孔質体は、固体蓄冷物質に比べて熱伝導率が高く、また固体蓄冷物質と接触する面積が大きいため、蓄冷構造体内部において熱移動が迅速に行われる。
【0021】
上記多孔質熱伝導性構造体の形態及び製造手法も特に限定されることはない。たとえば、発泡により内部に連続気孔を形成した金属多孔質体を採用できる。また、特許第268600号公報に記載されているような、3次元網状構造を備える金属多孔質体の空隙部に固体蓄冷物質を保持させることにより、上記蓄冷構造体を形成することができる。
【0022】
上記多孔質体として、70%以上の空隙率を備えるものを採用するのが好ましい。さらに、90%以上の空隙率を備えるものを採用するのがより好ましい。空隙率が大きくなるほど、上記多孔質体に保持させることができる固体蓄冷物質の量が増加し、蓄冷構造体の蓄冷熱容量が大きくなる。
【0023】
上記固体蓄冷物質として、請求項4に記載したように、固体形状を保持したまま潜熱を蓄冷できる樹脂蓄冷物質を採用するのが好ましい。また、上記樹脂蓄冷物質として、蓄冷温度−5℃〜15℃の所定の温度において、蓄冷できるものを採用するのが好ましい。
【0024】
上記固体蓄冷物質として、たとえば、三菱電線工業株式会社製の潜熱蓄冷材(登録商標MHSシリーズ)を採用することができる。この潜熱蓄冷材は、固体のままで175〜180kJ/kgの潜熱量を有している。このため、少ないスペースに、大量の冷熱を蓄積することが可能となる。
【0025】
熱伝導性構造体の空隙に上記固体蓄冷物質を充填する手法として、種々の手法を採用することができる。たとえば、重力や遠心力を利用した手法を採用できる。
【0026】
上記固体蓄冷物質を採用することにより、上記蓄冷構造体に蓄冷物質を簡単に保持させることができる。また、蓄冷できる熱容量が大きくなり、冷却工程において大量の空気を冷却することができる。また、長時間冷却効果を維持することができる。
【0027】
請求項3に記載した発明のように、上記蓄冷構造体を、連続気孔を有する多孔質状に形成するとともに、上記空調用空気を、上記連続気孔内に流動させて熱交換が行われるように構成するのが好ましい
【0028】
上記連続気孔を有する蓄冷構造体は、連続気孔を有する多孔質熱伝導性構造体の一部に、固体蓄冷物質を保持させることにより形成することができる。たとえば、上記連続気孔の表面を覆うように記固体蓄冷物質を積層保持させることにより、全体が多孔質状の蓄冷構造体を構成できる。また、多孔質熱伝導性構造体の一部の領域に、上記固体蓄冷物質を隙間なく充填して蓄冷部とするとともに、他の領域に上記空気を流動させるように構成することもできる。
【0029】
上記構成を採用することにより、非常に大きな熱交換面積を確保することができる。このため、大量の空気を流動させて熱交換を行わせることが可能となる。また、上記固体蓄冷物質と直接熱交換させることができるため、熱交換効率が格段に高くなる。
【0030】
上記蓄冷工程を行う熱媒体は、特に限定されるとはない。請求項5に記載した発明のように、上記蓄冷行程を、空調システムの定常運転時に、上記エバポレータによって冷却された空調用空気を、蓄冷用熱媒体として上記蓄冷構造体内に流動させることにより行うように構成することができる。
【0031】
空調システムが定常運転されているときは、上記エバポレータによって空気が冷却されている。この冷却された空気の一部を上記蓄冷器に導いて、冷熱を上記蓄冷構造体に蓄積し、空調システム始動時や停止時に上記蓄冷器を用いて空調用の空気を調製するのである。
【0032】
上記構成を採用する場合、蓄冷用の低温空気と空調用の空気とを同じ熱交換流路に流動させことができる。このため、蓄冷構造体の構造が簡単になる。
【0033】
一方、上記蓄冷構造体内に、冷凍回路を流れる熱媒体を流動させて蓄冷工程を行うこともできる。この場合、請求項6に記載した発明のように、上記蓄冷構造体を、上記空調用空気を流動させる冷却用流路と、上記エバポレータによって蒸発させられた熱媒体を流動させる蓄冷用流路を備えて構成することができる。上記冷却用流路に空調用空気を流動させることにより、上記空気冷却行程が行われる。一方、上記蓄冷用流路に上記熱媒体を流動させることにより、上記蓄冷行程が行われる。
【0034】
本願発明に係る蓄冷器によって調製された冷却空気の利用方法は特に限定されることはない。たとえば、請求項7に記載した発明のように、上記空気冷却行程において冷却された空気を上記送風路に戻して空調を行うように構成できる。また、請求項8に記載した発明のように、冷却工程において冷却された空気を車室に直接吹き出すように構成することもできる。
【0035】
請求項9に記載した発明は、空調用空気を冷却する車両空調用蓄冷器であって、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄冷物質が保持されているとともに通気性を有する蓄冷構造体を備えるとともに、上記蓄冷構造体の内部に、気体状態の蓄冷用熱媒体と上記空調用空気とを流動させて上記固体蓄冷物質と熱交換を行わせる熱交換流路を設けたものである。
【0036】
上記蓄冷構造体の構成は、上記固体蓄冷物質を保持できるとともに、この固体蓄冷物質と、蓄冷用熱媒体及び空調用空気とが熱交換できるように構成されていれば、特に限定されることはない。たとえば、銅、鉄、アルミ、アルミ合金等の熱伝導率の高い板状の金属材料から構成される熱伝導部材によって、蓄冷容器内の空間を区画して通気性のある蓄冷構造体を構成できる。この蓄冷構造体の所定の空隙に固体蓄冷物質を保持させることにより、上記蓄冷構造体を構成できる。この構造を採用することにより、上記各区画に保持された固体蓄冷物質に対して、上記熱伝導部材を介して冷熱を移動させることができる。このため、蓄冷構造体内部において熱移動が迅速に行われ、蓄冷行程において、短時間に大量の冷熱を蓄積することができる。また、空気冷却行程において、大量の空調用空気を冷却することができる。なお、上記区画された各領域に、蓄冷物質を保持させた多孔質熱伝導性構造体を配置することにより、空調用空気との熱交換効率をさらに高めることができる。
【0037】
上記熱交換流路の構成も、特に限定されることはない。たとえば、上記蓄冷構造体に熱伝導性のパイプを貫通させ、このパイプ内を上記蓄冷用熱媒体や上記空気が流動するように構成することができる。
【0038】
上記蓄冷構造体と熱媒体等との熱交換効率を高めるために、上記熱伝導性構造体を、上記パイプ等の外周に接合するのが好ましい。上記接合方法も特に限定されることはなく、溶接、ロウ付け、圧接等を採用することができる。
【0039】
上記パイプの形態も特に限定されることはない。円筒状のものに限定されることはなく、断面矩形状や断面星型等の熱交換面積の大きなパイプを採用できる。
【0040】
さらに、熱交換流路や固体蓄冷物質を保持した空間に、上記熱伝導部材や上記パイプからフィン状の熱交換部材を延出させることにより、蓄冷器内部での熱移動をさらに迅速に行うことが可能となり、熱交換効率をさらに高めることができる。
【0041】
上記蓄冷用熱媒体として、エバポレータで冷却された空気を利用することができる。この場合、請求項13に記載した発明のように、上記蓄冷構造体内に、上記蓄冷用熱媒体と上記空調用空気の双方を流動させる一つの熱交換路を設けて構成することができる。
【0042】
一方、上記蓄冷用熱媒体として、エバポレータで気化された熱媒体を利用することもできる。この場合、請求項14に記載した発明のように、エバポレータにおいて蒸発させられた熱媒体を流動させる第1の熱交換流路と、上記空調用空気を流動させる第2の熱交換流路とを設けることができる。
【0043】
請求項10に記載した発明は、上記蓄冷構造体を、連続気孔を有する多孔質熱伝導性構造体の空隙に、上記固体蓄冷物質を保持して構成したものである。
【0044】
請求項11に記載した発明は、上記蓄冷構造体を、連続気孔を有する多孔質状に形成するとともに、上記連続気孔が、上記蓄冷用熱媒体及び/又は上記空調用空気を流動させる熱交換流路を構成するものである。
器。
【0045】
蓄冷構造体自体を多孔質状に形成し、熱媒体を上記蓄冷構造体の連続気孔内に直接流動させることにより、蓄冷行程及び空気冷却行程を行うことができるように構成したものである。すなわち、パイプ等を介することなく、熱媒体や空気と固体蓄冷物質との間で直接熱交換を行わせるのである。この構成を採用することにより、非常に大きな熱交換面積を確保できるとともに、蓄冷物質と直接熱交換させることができるため、熱交換効率を格段に高めることが可能となる。したがって、空気冷却行程において、大量の空気を冷却することが可能となる。
【0046】
請求項12に記載した発明は、上記固体蓄冷物質として、固体形状を保持したまま潜熱を蓄冷できる蓄冷物質を採用したものである。
【発明の効果】
【0047】
装置を小型化できるとともに、蓄冷材との熱交換効率が高く、空調装置始動時等においても、十分な冷気を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本願発明に係る蓄冷システムの第1の実施形態を示す概略回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る蓄冷器の構造を示す軸に沿う断面図である。
【図3】図2におけるIII −III 線に沿う断面図である。
【図4】本願発明に係る蓄冷構造体の製造方法の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る蓄冷構造体の構造を模式的に示す断面図である。
【図6】本願発明に係る蓄冷システムの第2の実施形態を示す概略回路図である。
【図7】第2の実施形態に係る蓄冷器の構造を示す軸に沿う断面図である。
【図8】図7における VIII −VIII線に沿う断面図である。
【図9】第3の実施形態に係る蓄冷器の構造を示す図であり、図2に相当する断面図である。
【図10】図9におけるX−X線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本願発明に係る実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0050】
図1に、本願発明に係る車両空調用蓄冷システムの第1の実施形態に係る概略図を示す。
【0051】
図1に示すように、車両用空調システム1は、冷房用の冷凍サイクルSを備えて構成される。上記冷凍サイクルSは、エンジン2によって駆動されるコンプレッサ3と、コンデンサ4と、レシーバ5と、エキスパンションパルブ6と、エバポレータ7とを備えて構成される。なお、上記コンプレッサ3は、電動コンプレッサであってもよい。
【0052】
上記コンプレッサ3は、気体状の熱媒体(エアコンガス)を圧縮して高温高圧の半液体の状態とする。上記熱媒体は、上記コンデンサ4において冷却されて液化される。上記コンデンサ4において液化された熱媒体は、上記レシーバ5に送られ、液化されなかった部分が分離されるとともに、乾燥材やストレーナによって水分や不純物が除去されて高圧の液状熱媒体が生成される。上記液状熱媒体は、上記エキスパンションバルブ6に送られて微小なノズルからエバポレータ7内に霧状に噴出されて気化させられる。上記熱媒体の気化によって、潜熱が吸収されて上記エバポレータ7が冷却される。上記エバポレータ7の外側には多数のフィンが設けられるとともに、空調用空気が流動させられる送風路8に配置されている。上記送風路8には、空気を流動させるファン9が設けられており、空気取り入れ口8a,8bから空調用空気が流入させられるとともに、上記エバポレータ7を通過させられて冷却される。これにより、空調用の冷却空気が調製される。上記気化された熱媒体は、冷凍サイクルSを構成する管路13を通って上記コンプレッサ2に戻される。上記熱媒体は上記管路を循環させられるとともに、上記各行程が繰り返される。
【0053】
オートエアコンにおいては、上記送風路8内にヒータユニット9が設けられている。上記ヒータユニット9は、上記送風路8を流動する空気を所望の温度に加温調節できるように構成されている。上記ヒータユニット9の上流側には、上記ヒータユニットに作用する上記空調用空気の送風量を調節するミックスダンパ13が設けられており、図示しない温度調節装置等によって、上記送風路8を流動する空気を所定の温度に調節できるように構成されている。
【0054】
また、上記所定の温度に調節された空気は、複数の吹き出し口10,11,12から車室内へ供給できるように構成されている。上記各吹き出し口10,11,12には、これら吹き出し口を開閉できるダンパ10a,11a,12aが設けられており、所望の吹き出し口を選択できるように構成されている。
【0055】
第1の実施形態に係る車両空調用蓄冷システム101は、上記送風路8のエバポレータ7の下流側から延出する空気導入路122と、上記吹き出し口10,11,12近傍に接続される空気排出路123とを備える空気バイパス回路108を設け、この空気バイパス回路108に蓄冷器107を設けて構成される。
【0056】
上記空気導入路122及び上記空気排出路123には、保冷時等に上記蓄冷器107から冷熱が逃げるのを阻止する閉止バルブ114,115がそれぞれ設けられている。また、上記空気排出路123には、上記蓄冷器117内に空気を流動させるためのファン111が設けられている。
【0057】
本実施形態では、冷却行程を行う場合に、上記送風路8内の空気の流動を阻止する閉止ダンパ112が設けられている。
【0058】
本実施形態では、上記空調システム1及び冷凍サイクルSが定常運転されているときに、上記エバポレータ7によって冷却された空調用の冷却空気を上記蓄冷器107に導入して冷熱を蓄積する蓄冷行程が行われる。
【0059】
上記蓄冷行程においては、上記空調システム1の定常運転を妨げないように上記閉止ダンパ112が開状態に設定される。一方、上記エバポレータ7で冷却された空調用空気を上記蓄冷器107内に取り入れるため、上記閉止弁114及び115を開状態に制御するとともに、上記ファン111を作動させる。上記ファン111の強度及び上記弁114及び115の開度は、空調システム1の運転状況に応じて変化させられ、定常運転を妨げないように調節される。これにより、上記送風路8を流動する冷却空気の一部を上記蓄冷器107内に取り入れて蓄冷行程を行うことができる。
【0060】
上記冷凍サイクルSが定常運転されているとき、上記空調用空気は、約0℃〜10℃に設定されている。本実施形態では、冷却された上記空調用空気を蓄冷用の熱媒体として利用することにより、上記蓄冷器107に冷熱を蓄積する。
【0061】
一方、上記エンジン2が停止して上記冷凍サイクルSが運転されない場合や、エンジン始動時等において、上記冷凍サイクルSやエバポレータ7の性能が十分に発揮できない場合に、上記蓄冷器107に空気を導入して空気冷却行程が行われる。
【0062】
上記空気冷却行程においては、上記閉止弁114及び115を開状態に制御するとともに、上記ファン111を作動させることにより、上記送風路8内から上記空気導入路122を介して、空気を上記蓄冷器107内に導入する。このとき、上記閉止ダンパ112を閉状態に制御して、上記送風路8内で空気が流動しないように設定される。なお、上記送風路8の入口のファン9は作動状態に設定することもできる。
【0063】
上記空気冷却行程によって、上記送風路8の途中から導入された空気が、上記蓄冷器107内を流動させられて冷却され、上記送風路8の吹き出し口10,11,12の近傍に傍に排出される。そして、上記各吹き出し口10,11,12を介して車室内に供給される。これにより、エンジン停止時や、始動時における冷房能力を補助することが可能となる。
【0064】
上記構成を採用することにより、空調用の空気を熱媒体として利用し、蓄冷器107に冷熱を蓄積することができる。また、エンジン始動時等に、上記蓄冷器107に蓄積した冷熱を利用して、空調運転、特に冷房運転を行うことができる。しかも、本実施形態では、従来の空調システム1の一部を利用して、本願発明に係る蓄冷システム101を構成することができる。したがって、蓄冷システム101をコンパクトに構成することができる。また、蓄冷システムの配管等を容易に設けることができる。
【0065】
図2から図5に、第1の実施形態に係る上記蓄冷器107の構造を示す。上記蓄冷器107は、断熱性を有する円筒状の蓄冷容器116内に蓄冷構造体117が充填されている。また、上記蓄冷容器116の左右の壁部に、上記空気バイパス回路108を構成する上記空気導入路122と上記空気排出路123が接続されている。
【0066】
本実施形態における上記蓄冷構造体117は、連続気孔を備える多孔質熱伝導性構造体119の空隙に、固体状の樹脂蓄冷物質102を保持させて構成されている。
【0067】
図4に、上記蓄冷構造体117を構成する多孔質熱伝導性構造体119の外観形態及び、上記蓄冷構造体117の製造手法の一例を示す。本実施形態では、樹脂蓄冷物質102を、容器120内で融点以上に加熱して溶融させ、これに上記多孔質熱伝導性構造体119を浸漬する。これにより、溶融状態にある上記樹脂蓄冷物質102が、上記多孔質熱伝導性構造体119の空隙部に充填される。
【0068】
上記多孔質熱伝導性構造体119は、通気性を有する3次元網状構造を備える。本実施形態では、空隙率が90%以上のニッケルの金属多孔質体を採用している。
【0069】
上記多孔質熱伝導性構造体119は、種々の手法を用いて製造されたものを採用することができる。たとえば、発泡させた多孔質樹脂支持体に、無電解メッキ、真空蒸着、スパッタリング等の方法で、カーボンや金属を被覆して導電性を付与する。この導電性を付与した多孔質樹脂支持体をメッキ浴中で給電ブスバーを兼ねた回転軸の周りに回転する陰極体の表面に密着させることにより、陽極から金属を上記多孔質体に電気メッキする。その後、上記多孔質樹脂支持体を除去することにより、図4に示すような、三角柱状の骨格が3次元に連なった連続気孔をもつ金属多孔質体119を得ることができる。
【0070】
本実施形態に係る樹脂蓄冷物質102は、パラフィン、樹脂、その他添加剤を含んで構成される固体状の樹脂蓄冷物質である。蓄冷温度は、約−5℃〜15℃であり、約2.5kJ/kg・Kの比熱、0.21〜0.22W/mKの熱伝導率を有している。また、固体形状を保持したまま、175〜180kJ/kgの潜熱量を有している。また、融点は100℃以上である。たとえば、三菱電線工業に係る潜熱蓄冷材(登録商標MHSシリーズ)を採用することができる。
【0071】
図5に、本実施形態係る蓄冷構造体117の断面を模式的に示す。この図に示すように、多孔質熱伝導性構造体119の空隙に樹脂蓄冷物質120が充填保持されている。本実施形態では、蓄冷構造体117全体を、連続気孔を有する多孔質構造に構成し、上記連続気孔が、空気を流動させる熱交換流路124を構成するようにしている。
【0072】
図5に示すように、多孔質熱伝導性構造体119の連続気孔内の表面に、上記樹脂蓄冷物質102が均等に積層されて保持されるとともに、蓄冷構造体117の全体が通気性を備えるように構成されている。本実施形態では、上記蓄冷構造体107の空隙率が20%となるように、上記樹脂蓄冷物質102が充填されている。
【0073】
上記多孔質熱伝導性構造体119の熱伝導率は、上記樹脂蓄冷物質102より大きい。このため、上記蓄冷構造体117の内部では、主として上記多孔質熱伝導性構造体119を介して熱が移動させられ、上記蓄冷構造体117内部における熱移動の速度が速い。したがって、上記空気バイパス流路108を流動させられる蓄冷用熱媒体としての空気から入熱された冷熱を、上記蓄冷構造体117の全域に、迅速に移動させることができる。このため、短時間に蓄冷行程を行うことが可能となり、空調装置の定常運転に支障を与えることはない。
【0074】
図2に示すように、上記蓄冷構造体117と上記蓄冷容器116の左右軸方向壁の間には、上記蓄冷構造体117の連続気孔に連通する隙間131及び132が設けられており、上記空気導入口122から導入された冷却熱媒体としての空気は、上記隙間131を介して上記蓄冷構造体117内部の熱交換路124内を流動させられる。また、蓄冷構造体117から出た熱媒体は、上記隙間132を介して集合させられ、空気排出路123から送風路8に排出される。
【0075】
本実施形態では、蓄冷用の空気が流動する上記熱交換路124が、冷却対象である空調用の空気を流動させる熱交換路を兼用している。すなわち、蓄冷用の冷却空気から上記樹脂蓄冷物質102に直接冷熱を移動させることにより冷熱を蓄積し、また、上記樹脂蓄冷熱物質102から空調用空気を直接冷却する。
【0076】
しかも、上記蓄冷構造体117の熱交換路124の内部表面積は極めて大きい。したがって、蓄冷用空気と蓄冷構造体117とを非常に大きな熱交換面を介して熱交換させることが可能となる。これにより、連続気孔からなる上記熱交換路124を通過する大量の空調用空気に冷熱を移動させ、車室内の空調に利用することができる。
【0077】
上記構成により、上記エンジン等が停止した状態において、上記蓄冷器107に蓄積した冷熱を利用して空調を行うことが可能となる。これにより、エンジンのアイドリング運転が不要となり、燃費を向上させることができるばかりでなく、排気ガスを低減させることも可能となる。
【0078】
また、本実施形態は、従来の送風路8を利用して蓄冷システム101を構成できるため、装置をコンパクトに構成できる。
【0079】
図6に、本願発明に係る蓄冷システムの第2の実施形態を示す。なお、空調システム1の構成は、上記第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0080】
第2の実施形態に係る蓄冷システム201は、冷凍サイクルSを構成する熱媒体を利用して蓄冷行程を行うものである。なお、本実施形態における蓄冷構造体の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0081】
図6に示すように、本実施形態では、冷凍サイクルSにおけるエバポレータ7の下流側に接続されるとともに、上記冷凍サイクルを流れる熱媒体を導入する熱媒体導入路222と、上記熱媒体導入路222より下流側に接続されて上記熱媒体を戻す熱媒体排出路223を備える熱媒体パイパス回路208を設け、この熱媒体パイパス回路208中に蓄冷器207を設ける。
【0082】
上記蓄冷器207内には、上記熱媒体を流動させるパイプ218設けられている。そして、上記パイプ218内に上記熱媒体を流動させることにより、蓄冷行程が行われる。
【0083】
一方、上記蓄冷器207内に充填された蓄冷構造体217は、第1の実施形態と同様の連続気孔を有する多孔質状に形成されており、この連続気孔から構成される熱交換路224に空調用空気を流動させることにより、空気冷却行程を行うことができるように構成している。
【0084】
本実施形態では、上記蓄冷器207内に外気を直接導入することにより、上記空気冷却行程を行う。上記蓄冷容器207に接続された外気導入路232と、上記蓄冷器207から上記送風路8に接続された空気排出路233が設けられている。
【0085】
上記外気導入路232と上記空気排出路233には、閉止バルブ234,235が設けられており、上記蓄冷行程時や保温時に蓄冷器内の冷熱が逃げないように構成している。また、上記空気排出路233にファン211が設けられており、上記蓄冷器207内に外気を導入するとともに、上記送風路8に供給できるように構成している。
【0086】
本実施形態では、上記空気排出路233を、上記エバポレータ7の下流側に接続し、上記蓄冷器207で冷却された冷却空気によって、通常の空調制御を行えるように構成している。なお、第1の実施形態と同様に、上記空気排出路233を、吹き出し口10、11,12の近傍に設けて、上記蓄冷器207によって冷却された空気を車室に直接吹き出すように構成することもできる。
【0087】
本実施形態における蓄冷行程は、上記バルブ224,225を開状態に制御して冷凍サイクルSの熱媒体の一部を上記蓄冷器207内に導入することにより行われる。上記エバポレータ7によって気化された熱媒体は、約0℃〜10℃程度の温度を有し、上記第1の実施形態と同様に、蓄冷器207内に導入されて蓄冷行程が行われる。
【0088】
一方、空気冷却行程は、上記閉止バルブ234,235を開状態に制御するとともに、上記ファン211を作動させることにより行われる。これにより、外気が上記蓄冷器207内を流動させられとともに冷却され、上記送風路8に供給される。
【0089】
図7及び図8に第2の実施形態に係る蓄冷器207の構造を示す。第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、断熱性を有する円筒状の蓄冷容器216内に蓄冷構造体217が充填されている。
【0090】
上記蓄冷容器216には、外気を導入する上記外気導入路232が接続されているとともに、空気排出路233が接続されており、第1の実施形態と同様に、上記蓄冷構造体207の連続気孔が外気を流動させる熱交換路224を構成している。
【0091】
一方、本実施形態では、上記冷凍サイクルSの熱媒体を上記蓄冷構造体内に流動させるために、パイプ218が、上記蓄冷器207内を貫通するように設けられている。上記パイプ218は、銅等の熱伝導率の高い金属材料から形成されている。これにより、上記冷凍サイクルS内を循環する熱媒体を、上記蓄冷器207内に導入して蓄冷行程が行われる。
【0092】
上記構成を採用することにより、冷凍サイクルSを循環する熱媒体を利用して蓄冷行程を行うことができる。一方、多孔質状の上記蓄冷構造体217内を空気が流動させられて冷却されるため、上記第1の実施形態と同様の効果を期待できる。
【0093】
図9及び図10に本願発明の第3の実施形態に係る蓄冷器307を示す。この実施形態は、第2の実施形態と同様に、熱媒体導入路322及び熱媒体排出路323に接続されるとともに、熱媒体を蓄冷構造体317内で流動させるパイプ318を、上記蓄冷構造体317を貫通するように設けて構成されている。
【0094】
一方、上記蓄冷構造体317は、図4に示すのと同様の連続気孔を備える多孔質熱伝導性構造体319の空隙に、固体状の樹脂蓄冷物質302を充填して形成された蓄冷部341と、熱媒体が流動させられる熱交換流路342とを備えて構成されている。なお、多孔質熱伝導性構造体319に固体蓄冷物質302を充填する手法は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0095】
図10に示すように、上記蓄冷容器316の中心軸から放射状に延びるように配置された複数の熱伝導部材306が設けられている。上記熱伝導部材306は、上記蓄冷容器316の内周壁まで延出させられており、蓄冷容器316内の円筒状の空間を、8つの領域に区画している。上記熱伝導部材306は、銅、アルミ、鉄等の高い熱伝導率を備える材料から形成されている。
【0096】
上記熱伝導部材306によって区画された8の領域のうち、一つおきに形成された領域に、上記樹脂蓄冷物質302を充填した多孔質熱伝導性構造体319が配置されて蓄冷部341が形成されている。上記蓄冷物質を充填した多孔質熱伝導性構造体319が配置されていない領域は、空調用空気が流れる熱交換流路342としている。上記熱交換流路342に、上記外気導入路322を介して外気が導入されるとともに、上記排出口323から排出されて空気冷却行程が行われる。
【0097】
上記蓄冷構造体317と上記蓄冷容器316の左右軸方向壁の間には、上記各熱交換流路322に連通する隙間330及び331が設けられており、外気導入口322から導入された空気は、上記外気導入路322側の隙間330を介して、上記4つの熱交換流路342に分かれて軸方向に流動させられる。また、上記空気排出口323側の隙間331を介して熱交換を終えた空気が集合させられ、上記排出口323から送風路8に供給される。
【0098】
図10に示すように、上記蓄冷部341と上記熱交換流路342には、上記熱伝導部材306から延出するフィン状の熱交換部材344,345がそれぞれ設けられている。上記熱交換部材344,345も、上記熱伝導部材306と同様に、銅、アルミ、アルミ合金等の高い熱伝導率を備える板状部材から形成されている。このため、空気と樹脂蓄冷物質との間の熱交換効率をさらに高めることができる。また、本実施形態に係る上記熱交換部材345は、空気の流れに沿うように配置されているため抵抗が少なく、空気の流動を阻害することはなく、大量の空気との間で熱交換を行うことができる。
【0099】
本実施形態では、上記パイプ318を流れる熱媒体から、上記熱伝導部材306の壁部、上記熱交換部材344及び上記多孔質熱伝導性構造体319を介して上記樹脂蓄冷物質に冷熱が蓄積される。したがって、上記熱伝導部材306及び上記パイプ318から離れた部分に充填された樹脂蓄冷物質にも効率よく冷熱を移動させて蓄積させることができる。また、上記熱交換流路342から離れた部位に蓄積された冷熱を、上記熱交換流路342を流動する空調用空気に迅速に移動させて熱交換を行うことができる。このため、短時間に大量の熱を、上記蓄冷構造体317に蓄冷できるとともに、大量の空気に冷熱を移動させて空気冷却行程を行うことができる。
【0100】
また、本実施形態に係る上記蓄冷器307も、小型軽量であり、装置重量が大きく増加することもない。しかも、従来の空調システムの一部を利用しているため、装置全体をコンパクトに構成することができる。
【0101】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0102】
エンジン停止時や空調システムの始動時等において、十分な冷却空気を調製して空調を行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 空調システム
7 エバポレータ
8 送風路
101 車両空調用蓄冷システム
107 蓄冷器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄冷器を備える車両空調用蓄冷システムであって、
空調システムの定常運転時に、エバポレータで生じた冷熱を、熱媒体を介して上記蓄冷器に蓄積する蓄冷行程と、
送風路を流動する空調用空気を上記蓄冷器に導いて冷却する空気冷却行程とを含み、
上記蓄冷器を、熱伝導性構造体の空隙に固体蓄冷物質が保持されているとともに通気性を有する蓄冷構造体を備えて構成し、
上記蓄冷構造体内に上記空調用空気を流動させることにより上記空気冷却行程が行われるように構成した、車両空調用蓄冷システム。
【請求項2】
上記蓄冷構造体は、連続気孔を有する熱伝導性多孔質体に上記固体蓄冷物質を保持させて構成されている、請求項1に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項3】
上記蓄冷構造体が連続気孔を有する多孔質状に形成されているとともに、上記空気冷却行程において、上記空気が上記連続気孔内を流動させられて熱交換が行われる、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項4】
上記固体蓄冷物質が、固体形状を保持したまま潜熱を蓄冷できる蓄冷物質である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項5】
上記蓄冷行程は、空調システムの定常運転時に、上記エバポレータによって冷却された空気を、蓄冷用熱媒体として上記蓄冷構造体内に流動させることにより行われる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項6】
上記蓄冷構造体は、
上記空調用空気を流動させる空気冷却用流路と、
上記エバポレータによって蒸発させられた熱媒体を流動させる蓄冷用流路とを備え、
上記空気冷却用流路に空調用空気を流動させることにより、上記空気冷却行程が行われるとともに、
上記蓄冷用流路に上記熱媒体を流動させることにより、上記蓄冷行程が行われる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項7】
上記空気冷却行程において冷却された空気を上記送風路に戻して空調を行う、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項8】
上記空気冷却行程において冷却された空気を直接車室に吹き出す、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷システム。
【請求項9】
空調用空気を冷却する車両空調用蓄冷器であって、
熱伝導性構造体の空隙に固体蓄冷物質が保持されているとともに通気性を有する蓄冷構造体を備えるとともに、
上記蓄冷構造体の内部に、気体状態の蓄冷用熱媒体と上記空調用空気とを流動させて上記固体蓄冷物質と熱交換を行わせる熱交換流路を設けた、車両空調用蓄冷器。
【請求項10】
上記蓄冷構造体は、連続気孔を有する多孔質熱伝導性構造体の空隙に、上記固体蓄冷物質を保持して構成される、請求項9に記載の車両空調用蓄冷器。
【請求項11】
上記蓄冷構造体は、連続気孔を有する多孔質状に形成されているとともに、上記連続気孔が、上記蓄冷用熱媒体及び/又は上記空調用空気を流動させる熱交換流路を構成する、請求項9又は請求項10のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷器。
【請求項12】
上記固体蓄冷物質は、固体形状を保持したまま潜熱を蓄冷できる蓄冷物質である、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷器。
【請求項13】
上記蓄冷構造体内に、上記蓄冷用熱媒体と上記空調用空気の双方を流動させる一つの熱交換路を設けた、請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷器。
【請求項14】
エバポレータにおいて蒸発させられた熱媒体を流動させる第1の熱交換流路と、
上記空調用空気を流動させる第2の熱交換流路とを備える、請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の車両空調用蓄冷器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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