説明

車両表面の洗浄装置

【解決手段】 本発明はヘッドランプの洗浄装置であって、洗浄液供給管4a、4bに実装される少なくとも1つのノズルキャリア7を有し、該ノズルキャリア7は高圧洗浄液のための少なくとも1つの洗浄液供給路8を定め且つ少なくとも1つの洗浄液分配チャンバー13を具備しており、前記チャンバーは前記洗浄液供給路8及び前記ノズルキャリア7に実装される少なくとも1つのノズルスプレイ9に連通し、前記分配チャンバー13は非圧力状態で流体弁によって閉じられる少なくとも1つの入口ポート20を有し、前記流体弁はスプリングレス弁からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドランプのような車両表面を洗浄する装置にあてはまるものである。
【背景技術】
【0002】
フロントガラスやヘッドランプの洗浄装置は、当技術で一般的に知られている。今日、洗浄すべき表面は洗浄液の噴射によって洗浄されるのみで設計され、その洗浄液は1つ若しくは複数のスプレイノズルからの圧力を伴って放出される。スプレイノズルから放出される洗浄液の噴射は適切な洗浄作用をもたらすように十分に力が与えられる。満足できる洗浄結果を得るために、ワイパーのような機械的に作動する洗浄手段の追加は不要である。
【0003】
隠された様式で配設される洗浄装置は、通常洗浄液の圧力をノズルの伸長動作のために使用し、該ノズルはしばしば振り出しシリンダー構造体に固定され、該振り出しシリンダー構造体はリターンスプリングにより収納位置に保持される。前記シリンダー構造物は、洗浄液の圧力により水圧で作動し、その場合には、シリンダーに作用しているリターンスプリングの圧力は初めに洗浄液の圧力によるスプレイノズルの伸長よりも小さくなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルの伸長動作のために洗浄液の圧力を使用する振り出し式ヘッドランプ洗浄装置の従来の設計では、ノズルがフルに伸長した位置にくれば、スプレイノズルとの流路を確立するための流体弁が必要となる。この目的のために既知の技術のヘッドランプの洗浄装置の設計においては、液圧で作動する逆止弁によって偏奇されるバネを利用する。
【0005】
従って、ノズルの伸長動作を制御するために必要な作動部品の数によって、いわゆるポップアップノズルを利用する洗浄装置は高価となる。
【0006】
しかしながら、たとえば、幾つかのノズルが直列若しくは並列に配設されるときでは、外見上隠れないノズル構造物もまたしばしばリターン弁を必要とする。
【0007】
それ故、本発明の目的は、製造するのが簡単で安価とされる車両表面の洗浄装置、特にヘッドランプの洗浄装置を提供することを目的する。
【0008】
さらに、本発明の目的は、作動部品の点数を抑えた車両表面の洗浄装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これら及びその他の目的は、ヘッドランプの如き車両表面の洗浄装置であって、洗浄液供給管に実装される少なくとも1つのノズルキャリアを有し、該ノズルキャリアは高圧洗浄液のための少なくとも1つの洗浄液供給路を定め且つ少なくとも1つの洗浄液分配チャンバーを具備しており、前記チャンバーは前記洗浄液供給路及び前記ノズルキャリアに実装される少なくとも1つのノズルスプレイに連通し、前記分配チャンバーは非圧力状態で流体弁によって閉じられる少なくとも1つの入口ポートを有し、前記流体弁はスプリングレス弁からなることを特徴とする車両表面の洗浄装置によって達成される。
【0010】
本出願の意味においてスプリングレスとは、弁が、追加のバネ部材例えばコイルスプリングとしてのリターンスプリングがもういらない設計とされていることを意味する。本発明に従う弁の開成は、その入口側に当てられる正の流圧によってのみ得られ、元の位置に戻ることを意味する閉成は、流体弁の作動部品の材料の中に蓄積された合成張力からのみ得られる。
【0011】
よって、流体弁の設計に必要な作動部品の数は削減される。
【0012】
1つの利便な実施形態においては、弁は弾性隔壁式の密閉部材を備える。
【0013】
このような密閉部材は、弁体を定め、該弁体は非圧力状態で弁座に密閉して当接し、前記洗浄液の圧力により前記弁座から離れ得る。
【0014】
本発明によるスプリングレス弁は、例えば、ノズルの伸長動作用に洗浄液の圧力を利用するため、ある度合いまで洗浄装置内で圧力を高めることができるように使用することができる。本発明によるノズルキャリアは、振り出しシリンダー構造に取り付けられると共に、液圧が回動アームをずらせたり回転させたりするのに使用されるところでは回動アームに取り付けられていても良いと理解されるものである。
【0015】
流体弁の隔壁式密閉部材は、圧力をためたところでその密閉位置から離れて曲がるような設計の弾性材料(例えば、EPDMやゴム)によって造られることが好ましい。圧力を解放すると、密閉部材は弁座に密閉するように係合するところのその初期密閉位置に曲がって戻ることができ、該弁座は流体ポートの周縁部のみで構成できる。
【0016】
1つの設計の変形例として、密閉部材は周縁実装フランジを備えたカップ形状の隔壁を有し、前記隔壁は密閉座部に柔軟に係合する実質的に平坦な密閉表面を定め、該隔壁は液圧の作用によって実装フランジに対して変位できる。
【0017】
特に密閉部材が単体のデザインを有するときに有益であり、周縁実装フランジとカップ形状の隔壁は弾性材料の周囲が比較的に薄い壁のウエブ(桁腹)を介して接続される。
【0018】
1つの利便な実施形態においては、前記分配チャンバーは少なくとも2つの洗浄液放出ポートを有し、それぞれは少なくとも1つのスプレイノズルに連通する。
【0019】
本発明では、分配チャンバーはまた1つの入口ポートと1つの放出ポートを有するように明確に理解できるものに過ぎない。この場合において、分配チャンバーは隔壁式密閉部材についてのハウジングとして用いられるのみである。
【0020】
少なくとも1つのスプレイノズル、好ましくは全てのスプレイノズルは、眼球(eye-ball)デザインを有する。"眼球"デザインは良く認知された用語であって、球状のノズル筺体にその中で延長された流体放出路を伴い、ノズルの放出開口部が球の周縁切り欠き部のような設計とされたものである。
【0021】
好ましくは、スプレイノズルはノズルキャリアに掛け留めされて嵌合される。
【0022】
本発明による装置の1つの好ましい実施形態は、収納可能な中空の洗浄液供給管が、高圧洗浄液の供給源に接続可能であって伸長された筺体内に摺動可能に配され且つ収納位置に偏るようにされ、ノズルキャリアは洗浄液供給管の先端に取り付けられていることを特徴とする。
【0023】
もちろん、この振り出しシリンダー構造は2以上のシリンダーを具備することができ、各シリンダーは伸長量を増大させるようにスプリングコイルにより収納位置に変位される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の洗浄装置の1つの有益な実施形態は、添付図面への参照と共に例示によって以下に説明される。
【図1】本発明による洗浄装置の側縦面図であって、長手方向に部分的に切断されている。
【図2】図1の矢IIの方向に見たノズルキャリアの上面図である。
【図3】流体弁が閉じた位置での図2のIII-III線で切断したノズルキャリアの長手方向断面図である。
【図4】流体弁が閉じた位置における、図3に示したものに従った長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による洗浄装置1は、伸長された円筒状のハウジング2を有し、高圧洗浄液(図示せず。)の供給源に接続可能とされた流体供給部3とハウジング2内で摺動可能とされた2つの収納可能な中空洗浄液供給管4a、4bを具備する。流体供給部3はその中に嵌合されるホースを受ける接続部として設計される。一方ホースは図示しない電気的に作動される洗浄液供給ポンプに接続できる。
【0026】
以下に説明されるように、洗浄装置1は、ヘッドランプ洗浄装置として設計されるが、洗浄装置はフロントガラスや洗浄すべき他の車両表面の洗浄装置としても使用できるものである。
【0027】
中空の樹脂管として設計される洗浄液供給管4a、4bは、ハウジング2の中で互いに摺動する構造とされ、第1の(先端の)洗浄液供給管4aの外径は洗浄液供給管4bの内径よりも小さくされ、一方洗浄液供給管4b(後続する管)の外径は円筒状ハウジング2の内径よりも小さくされる。
【0028】
図1は収納位置でのハウジング2と洗浄液供給管4a、4bで形成される振り出しシリンダー構造を示す。洗浄液供給管4aは、洗浄液供給管4bの内部においてその後側の端部(基端部)で周縁フランジ5aによって案内され、一方洗浄液供給管4bは、ハウジング2の内部においてその後側の端部(基端部)で周縁フランジ5bによって案内される。同時に、周縁フランジ5a、5bは洗浄液供給管4a、4bをそれぞれ収納位置に変位させる2つのコイルスプリング6a、6bへの支持を行う。簡単のため、伸長した位置は図示していない。
【0029】
内側の液供給管4aの前側の端部(先端部)には、ノズルキャリア7が搭載されている。ノズルキャリア7は内側の液供給管4aの先端に密閉して嵌合され、そこと流体が流れるようにされ、洗浄液供給管4a、4bと共にノズルキャリア7は洗浄液をノズルキャリア7の終端部に配設された2つのスプレイノズル9に排出するための洗浄液路8を定める。
【0030】
スプレイノズル9は眼球タイプのノズルとして設計され、それはノズルキャリア7の受付孔10に掛け留めされて嵌合する。受付孔10は円形の断面を有し、スプレイノズル9は受付孔10の内部で調整可能に配設される。
【0031】
図2に見ることができるように、受付孔10とスプレイノズル9は弁ハウジング11の上に(位置を図に示すように)設けられている。弁ハウジング11は、洗浄液分配チャンバー13の底部を形成する弾性変形可能な密閉部材12を受けるように設けられている。
【0032】
弁ハウジング11は、周回周縁壁14を有し、周回周縁壁14は円形に延長されている。密閉部材12は弁ハウジング11に嵌合され、弁ハウジング11はよって円盤状の外形を有する。
【0033】
前述のように、密閉部材12はゴム、EPDM、その他のような弾性材料から構成され、単体からなる構成とされる。
【0034】
図3、4から見ることができるように、密閉部材12は、カップ状のカバー16によって弁ハウジング11に保持される非周縁の周回実装フランジ15を有し、カップ状のカバー16はノズルキャリア7の受付開口部17に掛け留めされて嵌合する。密閉部材12とカバー16の間の空間は以下に詳述するように密閉部材12の変位を可能とさせる補正容量18を定める。この目的のため、図3、4から見ることができるように、補正容量18はエア抜き孔19を有する。
【0035】
洗浄液路8は、円形で中央の入口ポート20を介して分配チャンバー13と連通する。スプレイノズル9はまた排出ポート21を介して分配チャンバー13と接続し、排出ポート21は図2の上面を参照すると入口ポート20について径方向外側に配されている。
【0036】
密閉部材12の設計について再び参照すると、密閉部材は中央隔壁タイプの部品であり、該部品は断面カップ形状とされ、円筒弁体22を形成する。洗浄装置の閉じた且つ非圧力状態においては、弁体22は平坦で円盤状の密閉表面を形成し、入口ポート20の周辺リム23と密着して係合する。入口ポート20の周辺リム23は弁体22と係合するための弁座を定める。材料の弾性のおかげで、弁体22は柔軟に閉じる位置に支持される。弁体22は、周縁凹凸ウエブ24を介してその周回実装フランジ15に接続され、該ウエブの材料は弁体22の領域の材料よりも顕著に薄くされる。
【0037】
一旦、圧力下の洗浄液が供給されると、洗浄液の圧力は図4の矢示方向への弁体22の変位をもたらす。それによって、隔壁タイプの密閉部材12のカップ状部品は補正容量18に、すなわち図4で下方向に、曲がり込み、それによって入口ポート20を開かせ、分配チャンバー13への洗浄液の流入を可能とさせる。分配チャンバー13がスプレイノズル9と排出ポート21を介して連通すると、洗浄液は洗浄すべき表面に放出される。
【0038】
洗浄液供給部3を介した洗浄液供給管4a、4bへの洗浄液の流入により。図3に示すように当初弁体22が閉じた位置であることから内部圧力が高まることになる。洗浄液の圧力が高まったとき、第1で内側の洗浄液供給管4aがコイルスプリング6aの力に抗して延長される。一旦、洗浄液供給管4aが洗浄液管4bに当接すると、第2で外側の洗浄液管4bがハウジング2の先端部に当接するまで洗浄液管4bも前方に伸長する動作をする。弁体22に作用する静的圧力のさらなる増加は補正容量18への弁体22への変位、すなわち曲がる動作をもたらし、それによって補正容量18に捕われていた空気をエア抜き孔19を介して放出させ、入口ポート20を開かせる。圧力解放により、弁体22は密閉部材11の材料内に蓄積された張力によって初期位置に柔軟に戻される。
【0039】
本構成は簡単に製造することができ、作動する部品の量を最小にすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 洗浄装置
2 ハウジング
3 流体供給部
4a 第1、内側の洗浄液供給管
4b、第2、外側の洗浄液供給管
5a、5b フランジ
6a、6b コイルスプリング
7 ノズルキャリア
8 洗浄液路
9 スプレイノズル
10 受付孔
11 弁ハウジング
12 密閉部材
13 分配チャンバー
14 弁ハウジングの周回周縁壁
15 密閉部材の実装フランジ
16 カバー
17 受付開口部
18 補正容量
19 エア抜き孔
20 入口ポート
21 排出ポート
22 弁体
23 リム
24 ウエブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプの如き車両表面の洗浄装置であって、洗浄液供給管に実装される少なくとも1つのノズルキャリアを有し、該ノズルキャリアは高圧洗浄液のための少なくとも1つの洗浄液供給路を定め且つ少なくとも1つの洗浄液分配チャンバーを具備しており、前記チャンバーは前記洗浄液供給路及び前記ノズルキャリアに実装される少なくとも1つのノズルスプレイに連通し、前記分配チャンバーは非圧力状態で流体弁によって閉じられる少なくとも1つの入口ポートを有し、前記流体弁はスプリングレス弁からなることを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両表面の洗浄装置であって、前記弁は弾性隔壁式の密閉部材を備えることを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項3】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、前記密閉部材は弁体を定め、該弁体は非圧力状態で弁座に密閉して当接し、前記洗浄液の圧力により前記弁座から離れ得ることを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項4】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、前記密閉部材は、圧力の解放の際にその材料内に蓄積された合成張力によって閉じた位置に戻されるように設計されていることを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項5】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、前記密閉部材は周縁実装フランジと共にカップ形状の隔壁を有し、前記隔壁は密閉座部に柔軟に係合する実質的に平坦な密閉表面を定め、該隔壁は液圧の作用によって実装フランジに対して変位できることを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項6】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、前記分配チャンバーは少なくとも2つの洗浄液放出ポートを有し、それぞれは少なくとも1つのスプレイノズルに連通することを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項7】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、少なくとも1つのスプレイノズルは眼球構造を有することを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項8】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、前記スプレイノズルは前記ノズルキャリアに掛け留めされて嵌合されることを特徴とする車両表面の洗浄装置。
【請求項9】
先行するいずれかの請求項記載の車両表面の洗浄装置であって、少なくとも1つの収納可能な中空の洗浄液供給管は、高圧洗浄液の供給源に接続可能であって伸長された筺体内に摺動可能に配され且つ収納位置に偏るようにされ、ノズルキャリアは洗浄液供給管の先端に取り付けられていることを特徴とする車両表面の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−501890(P2012−501890A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525410(P2011−525410)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007368
【国際公開番号】WO2010/028661
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511059368)コーテックス テクストロン シーブイエス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】