説明

車両走行支援装置

【課題】分岐路の判定を誤って行った場合でも、誤りを早期に認識して訂正することができ、実際の左右の境界線に基づく走行支援制御を行う。
【解決手段】カメラにより取得された車両の進行方向の路面の画像に基いて、路面の「左側境界線及び右側境界線」を検出する。本線から分岐する分岐路が存在している場合に「車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値BRH」を前記検出された「左側境界線及び右側境界線」に基いて取得するとともに、その分岐路指標値の大きさが第1閾値A1以上であるとき分岐路が存在していると判定する(ステップ520及びステップ530)。更に、分岐路が存在していると判定した後に取得される分岐路指標値BRHの大きさが「第1閾値A1以下である分岐判定終了閾値(第2閾値A2)」よりも小さくなった場合、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成されている(ステップ550及びステップ570)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進行方向の路面(車両前方の走路)を撮像する撮像手段からの画像(画像信号)に基いて道路上に描かれた白線等の道路の境界線(車線境界線)を検出し、且つ、検出した境界線に基いて車両の走行支援制御を行う車両走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる車両走行支援装置(以下、「従来装置」とも称呼する。)は、車両に搭載されたカメラにより所定時間(例えば、0.1秒)の経過毎に車両前方の路面の画像(フレーム)を取得する。更に、従来装置は、その画像に基いて道路の境界線(例えば、白線)を検出する。従来装置は、例えば、車両が「検出された境界線」から逸脱する可能性があるか又は逸脱するとその旨の情報を運転者に提供する車線逸脱警報制御、或いは、車両が「検出された境界線」に沿って走行するように操舵装置等を制御する車線維持制御を実行する。このような制御は「車両の走行支援制御」とも称呼される。
【0003】
ところで、高速道路のインターチェンジ及びサービスエリアへの進入箇所等において、例えば、図2に示したように、本線Hから分岐する分岐路Bが設けられ、且つ、本線の右側境界線が破線等により示されていない道路が存在する(例えば、米国及び欧州等)。この場合、分岐路Bの白線B1が検出され、その白線B1が本線Hを表す境界線であると誤認識される。そこで、従来装置は、一方(例えば、左側)の境界線L1と他方(例えば、右側)の境界線B1との角度差が所定値(第1閾値に相当する値)以上となると、分岐路が存在する(分岐路が存在している地点又はその近傍を車両V1が走行している)と判定するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−164636号公報(段落0037)
【発明の概要】
【0005】
従来装置は、分岐路が存在すると判定した場合、車両の走行支援制御を「通常時走行支援制御」から「分岐時走行支援制御」へと変更する。通常時走行支援制御は少なくとも「最新の画像から検出された左右一対の境界線」に基いた走行支援制御である。これに対し、分岐時走行支援制御は、少なくとも「分岐路の境界線B1であると判断される側(分岐路側)の境界線(図2において右側の本線の境界線)」として「過去の画像に基いて検出された境界線R1を仮想的に延長して得られる境界線R2」を用いるとともに、分岐路側でない側の本線の境界線として「最新の画像から検出された分岐路側でない側の境界線」を用いて実行される走行支援制御である。
【0006】
更に、従来装置は、分岐時走行支援制御の開始後、第1所定数(例えば、5個)のフレーム取得期間に対応する時間(例えば、0.5秒)が経過し、且つ、その後に連続する第2所定数(例えば、5個)のフレームの総てにおいて「分岐路があると判定された側の境界線」が検出されると、その境界線を本線であると判定し(即ち、分岐路を通過したと判定し)、車両走行支援制御を「分岐時走行支援制御」から「通常時走行支援制御」へと変更する(図2の点P5を参照。)。
【0007】
しかしながら、例えば、図7に示したように、破線の白線により本線Hを示す場合において他の白線に対して傾斜して描かれた白線71が存在すると、従来装置はその白線71を分岐路の境界線であると誤判定することがある。この場合、従来装置は、少なくとも「第1所定数と第2所定数の和(例えば、10個)のフレーム取得期間に対応する時間」に渡り分岐時走行支援制御を行う。即ち、従来装置は、実際の左右の境界線に基く通常時走行支援制御を実行することができる場合であっても、分岐時走行支援制御を実行する。
【0008】
加えて、例えば、白線71に続く白線72及び白線73等が不鮮明であると、第1所定数(例えば、5個)のフレーム取得期間に対応する時間が経過した後に第2所定数(例えば、5個)の連続するフレームの総てにおいて分岐側の境界線が検出できない場合が生じ、その結果、通常時走行支援制御の再開が一層遅れてしまう。また、分岐時走行支援制御が所定時間継続する間に第2所定数の連続するフレームの総てにおいて分岐側の境界線が検出できない場合、従来装置は、分岐側の境界線を見失ったと判定し、実際には通常時走行支援制御が実行できるのにも関らず、少なくとも分岐側の境界線についての走行支援制御を実質的に行わないロスト時走行支援制御を実行する。
【0009】
本発明は、上述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、分岐路である(分岐路が存在している)との判定を誤って行ってしまった場合であっても、その判定が誤りであることを早期に認識して訂正することができ、以って、本線の実際の左右の境界線に基く「通常時走行支援制御」を実行することができる車両走行支援装置を提供することにある。
【0010】
本発明による車両走行支援装置は、撮像手段と、境界線検出手段と、分岐路判定手段と、走行支援手段と、を備える。
【0011】
前記撮像手段は、車両に搭載されるとともに、その車両の進行方向の路面を所定時間が経過する毎に撮像する。前記撮像手段は、例えば、車両前方に固定されたCCDカメラ等を含む。
前記境界線検出手段は、前記撮像手段により撮像された画像(画像信号)に基いて、エッジ点抽出等の周知の方法を用いることによって前記路面の「左側境界線及び右側境界線」を検出する。
【0012】
前記分岐路判定手段は、本線から分岐する分岐路が存在している場合に「前記車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値」を「前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線」に基いて取得する。この分岐路指標値は後述するように種々の手法により取得・算出することができる。更に、前記分岐路判定手段は、その取得した分岐路指標値の大きさが第1閾値(分岐路判定閾値)以上であるとき、分岐路が存在していると判定する。
【0013】
前記走行支援手段は、「前記検出される左側境界線及び前記検出される右側境界線」の少なくとも一方に基いて実行される車両の走行を支援するための走行支援制御を、前記分岐路が存在していると判定された場合には「前記分岐路が存在していないと判定された場合に行われる通常時走行支援制御」から分岐時走行支援制御へと変更する。分岐時走行支援制御は通常時走行支援制御とは相違する制御である。即ち、例えば、通常時走行支援制御は、新たに検出された左右の境界線に基づく車線逸脱警報制御或いは車線維持制御である。これに対し、分岐時走行支援制御は、例えば、分岐側でない境界線としては新たに検出された境界線を用いるとともに、分岐側の境界線としては過去の画像に基づいて検出された境界線を用いて実施される車線逸脱警報制御或いは車線維持制御である。
【0014】
更に、前記分岐路判定手段は、
前記分岐路が存在していると判定した後に前記取得される分岐路指標値の大きさが「前記第1閾値以下である分岐判定終了閾値」よりも小さくなった場合、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成されている。前記分岐路が存在しているとの判定が取り消されると、走行支援制御は、分岐時走行支援制御から通常時走行支援制御へと戻る。
【0015】
この車両走行支援装置によれば、一旦、分岐路指標値が第1閾値以上となって分岐路が存在していると判定された場合(分岐路判定がなされた場合)であっても、その後において分岐路指標値が「第1閾値以下である分岐判定終了閾値」よりも小さくなった場合、そのこと単独で、或いは、他の条件(通常の分岐路終了判定条件よりは緩和された分岐路終了条件)が更に成立したとき、先の分岐路判定が取り消される。従って、例えば、図7に示した場合のように分岐路判定が誤ってなされる状況であったとしても、分岐時走行支援制御が長い期間に渡って行われない。その結果、より精度の高い走行支援制御(通常支援制御)が行われ得る。
【0016】
この場合、
前記分岐路判定手段は、前記分岐路が本線に対して左右のどちら側に存在しているかを前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて決定するように構成され、
前記走行支援手段は、
前記分岐路が存在していると判定された第1時点から第1所定時間(例えば、正しい分岐判定がなされた後において分岐路の境界線が撮像される領域から外れる時間)が経過した後の時点であって前記決定された分岐路が存在する側の境界線が前記境界線検出手段により第2所定時間以上に渡り連続して検出される第2時点にて前記分岐路指標値に関らず前記分岐路が終了したと判定し、前記走行支援制御を前記分岐時走行支援制御から前記通常時走行支援制御へと移行させるように構成されることが好適である。
【0017】
これによれば、分岐路判定が正しい判定である場合、分岐路通過後において分岐路側の本線を示す境界線が確実に検出できた時点にて、走行支援制御を分岐時走行支援制御から通常時走行支援制御へと切り替えることができる。換言すると、本発明による車両走行支援装置は、分岐路判定が正しい判定である場合には前記第2時点まで分岐時走行支援制御が行うが、分岐路判定が誤った判定である場合には前記第2時点よりも前の時点にて分岐時走行支援制御から通常時走行支援制御へと制御を移行させることができる。
【0018】
より具体的には、本発明による車両走行支援装置は、
前記撮像手段と、前記境界線検出手段と、以下に述べる「分岐路判定手段及び走行支援手段」と、を備える。
【0019】
即ち、分岐路判定手段は、
(1)本線から分岐する分岐路が存在している場合に前記車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値を前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて取得し、
(2)同取得した分岐路指標値の大きさが第1閾値以上であるとき前記分岐路が存在していると判定し、
(3)前記分岐路が本線に対して左右のどちら側に存在しているかを前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて決定し、
(4)前記分岐路が存在していると判定された第1時点から第1所定時間が経過した後の時点であって前記決定された分岐路が存在している側の境界線が前記境界線検出手段により第2所定時間以上に渡り連続して検出される第2時点にて、前記分岐路指標値に関らず前記分岐路が存在していないと判定する。
【0020】
走行支援手段は、
(1)前記分岐路が存在していないと判定されている場合には、前記車両の走行を支援するための走行支援制御として、前記撮像手段により取得された最新の画像である最新画像に基づいて検出される左側境界線及び右側境界線に基く通常時走行支援制御を実行し、
(2)前記分岐路が存在していると判定されている場合には、前記走行支援制御として、「前記最新画像に基づいて検出された左側境界線及び右側境界線のうちの前記決定された分岐路が存在している側とは反対側の境界線」と「前記撮像手段により過去に取得された画像である過去画像に基づいて検出された左側境界線及び右側境界線のうちの前記決定された分岐路が存在している側の境界線」とに基く分岐時走行支援制御を実行する。
【0021】
加えて、前記分岐路判定手段は、
前記分岐路が存在していると判定した後に前記取得される分岐路指標値の大きさが前記第1閾値以下である分岐判定終了閾値よりも小さくなった場合、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成される。
【0022】
これによれば、前述したように、分岐路判定が正しい判定である場合には分岐路通過後において分岐路側の本線を示す境界線が確実に検出できた時点(第2時点)にて、走行支援制御が分岐時走行支援制御から通常時走行支援制御へと切り替えられる。更に、分岐路判定が誤った判定である場合には前記第2時点よりも前の時点にて、走行支援制御が分岐時走行支援制御から通常時走行支援制御へと切り替えられる。従って、分岐路判定が誤って行われた場合であっても、速やかに通常時走行支援制御を再開することができる。
【0023】
この場合、前記分岐路判定手段は、
前記分岐判定終了閾値として前記第1閾値よりも小さい第2閾値を使用し、前記第1時点から第1所定時間が経過するまでの間において前記取得された分岐路指標値の大きさが前記第2閾値よりも小さくなったとき(即ち、前記分岐路指標値の大きさが前記第2閾値よりも小さくなったことのみを条件として)、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成され得る。
【0024】
分岐路指標値に基づく分岐路判定が誤判定であれば、分岐路指標値はその後において直ちに小さくなる場合が多い。従って、上記構成によれば、分岐路判定が誤判定であって分岐路指標値が小さくなったとき、分岐路判定が取り消される。その結果、分岐路判定が誤判定であった場合に分岐時走行支援制御が無用に継続することがなく、通常時走行支援制御による正確な走行支援制御を直ちに再開することができる。
【0025】
更に、前記分岐路判定手段は、
前記分岐判定終了閾値として前記第1閾値以下である第3閾値を使用し、前記第1時点から前記第1所定時間が経過した時点以降において、前記取得された分岐路指標値の大きさが前記第3閾値よりも小さく且つ前記決定された分岐路が存在している側の境界線が前記境界線検出手段により前記第2所定時間よりも短い第3所定時間以上に渡り連続して検出されたとき前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成され得る。
【0026】
これによれば、例えば、図7に示した白線72及び白線73等が不鮮明であるような場合においても、換言すると、分岐路が存在していると判定された側の境界線が第2所定時間以上に渡り連続して検出され難い場合であっても、分岐路指標値の大きさが前記第3閾値よりも小さければ、第2所定時間よりも短い第3所定時間以上に渡り「分岐路が存在していると決定された側の境界線」が検出されたときに分岐路であるとの判定が取り消される。よって、分岐路判定が誤判定であった場合に分岐時走行支援制御が無用に継続されることがなく、通常時走行支援制御による正確な走行支援制御を早期に再開することができる。更に、前述したロスト時走行支援制御が開始されてしまう可能性を低減することができる。
【0027】
前述したように、分岐路指標値は種々の算出方法により求めることができる。
例えば、分岐路指標値は、
(A)前記左側境界線及び前記右側境界線の何れか一方に対する他方の広がり度合いが大きいほど大きくなる値、
(B)「前記撮像手段により過去に取得された画像である過去画像に基いて検出された左側車線の位置と前記撮像手段により取得された最新の画像である最新画像に基いて検出された左側車線の位置との差」の大きさを基準とした値であって「前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置との差」に応じて変化する値であり、且つ、前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置が前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置に対してより右側に乖離しているほど絶対値が大きくなる値、及び、
(C)「前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置との差」の大きさを基準とした値であって「前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置との差」に応じた値であり、且つ、前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置が前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置に対してより左側に乖離しているほど絶対値が大きくなる値、
の何れか一つであってもよい。
【0028】
なお、上記(B)の値は「本線から右側に分岐する分岐路」を検出するための分岐路指標値であり、上記(C)の値は「本線から左側に分岐する分岐路」を検出するための分岐路指標値である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の走行支援装置の概略構成図である。
【図2】右側分岐路のある本線道路の平面図である。
【図3】図1に示した処理部のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図4】図1に示した処理部のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】図1に示した処理部のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図6】図1に示した処理部のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】右側分岐判定を誤る可能性がある本線道路の平面図である。
【図8】分岐路指標値の他の例を説明するための道路の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る車両走行支援装置(以下、単に「走行支援装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。この走行支援装置は、道路の境界線を検出する道路境界線検出装置(境界線認識装置)を含む。
【0031】
(構成)
図1は、車両(自動車)に搭載された走行支援装置10の概略構成を示している。走行支援装置10は、道路境界線検出装置20、車線維持制御装置30及び警報装置(車線逸脱警報装置)40を含んでいる。
【0032】
道路境界線検出装置20は、カメラ(撮像手段)21及び処理部(画像処理手段)22を含んでいる。
【0033】
カメラ21は、車体前部のインナーリアビューミラー(所謂、ルームミラー)のステイ等に固定されている。カメラ21は、「その光軸が、カメラ21が車体に固定された状態において、所定の俯角を有し且つ車体前後方向(車両進行方向)に一致するように」固定されている。従って、カメラ21は車両進行方向(車両前方)の路面を撮像(撮影)することができるようになっている。より具体的に述べると、カメラ21は、処理部22からの指示に従って、車両から前方に所定距離だけ離間した位置から遠方の位置までの路面を撮像することができる。撮像された画像は、例えば、図3のブロックB0に示したような画像に応じた画像(実際には、輝度に応じて変化する信号からなる画像信号)である。カメラ21は例えばCCDカメラである。
【0034】
処理部22は周知のマイクロコンピュータを含む電子回路装置である。処理部22は、後に詳述するように、カメラ21によって取得(撮像)された画像(画像信号)を処理することにより、道路に描かれた白線等による車線境界線(車線区画線とも称呼され、以下、単に、「境界線」とも称呼する。)を検出する。更に、処理部22は、その検出した境界線に対する車両(自車両)の車両左右方向の位置(相対位置)を推定するようになっている。処理部22は、その推定した相対位置に基いて、車線維持制御装置30及び/又は警報装置40に制御信号を送出するようになっている。
【0035】
車線維持制御装置30は、操舵制御装置31、パワーステアリング装置32及び車速センサ33を含んでいる。
【0036】
操舵制御装置31は周知のマイクロコンピュータを含む電子回路装置である。操舵制御装置31は車速センサ33からの入力信号である車速SPDと、処理部22からの制御信号と、に基きパワーステアリング装置32に駆動信号を送出するようになっている。なお、操舵制御装置31は、図示しないセンサ(例えば、操舵角センサ及びヨーレイトセンサ等)からの信号に基いてパワーステアリング装置32に駆動信号を送出し、運転者による操舵操作をアシストするようになっている。
【0037】
パワーステアリング装置32は周知の電動式パワーステアリング装置である。パワーステアリング装置32は操舵制御装置31からの駆動信号に基いて車両の舵角を変更することができるようになっている。
【0038】
警報装置40は車室内に設けられた周知の警報装置であり、インストルメントパネルに配設された警告ランプ及び/又は警告音発生装置(ブザー)を含んでいる。警報装置40は、処理部22からの制御信号に応答して乗員(運転者)に「自車両が車線を逸脱したか又は逸脱する可能性が高い旨」の情報を提供するようになっている。
【0039】
(作動)
次に、上述したように構成された走行支援装置10の作動について説明する。この作動は、実際には処理部22が備えるCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)が次に述べる処理を実行することによって実現される。
【0040】
CPUは、図3乃至図6にフローチャートにより示したルーチンをそれぞれ所定時間(例えば、0.1秒、即ち、100m秒)が経過する毎に繰り返し実行するようになっている。
【0041】
<境界線選択処理>
従って、所定のタイミングになると、CPUは図3のステップ300から処理を開始し、以下に述べるステップ310乃至ステップ340の処理を順に行い、ステップ395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0042】
ステップ310:CPUは、カメラ21に撮像(撮影)指示信号を送出してカメラ21に撮影を行わせる。更に、CPUは、カメラ21が撮像した画像(画像信号)を取得する。従って、1フレーム(1つの画像)は0.1秒毎に取得される。
【0043】
より具体的に述べると、道路は一般にアスファルト等により舗装され、その上に白線等によって境界線が描かれている。従って、アスファルトが露呈している面の輝度は低く、アスファルトの上の白線の輝度は高い。カメラ21は、この輝度の高低に応じた画像信号を取得し、CPUへ送出する。
【0044】
ステップ320:CPUは、取得した画像信号に基いてエッジ点を抽出する(図3のブロックB1を参照。)。エッジ点とは取得した画像信号の輝度が急激に増大する点及び急激に減少する点である。輝度が急激に増大する点は便宜上「立ち上がりエッジ点」とも称呼される。輝度が急激に減少する点は便宜上「立ち下がりエッジ点」とも称呼される。
【0045】
ステップ330:CPUは、周知のハフ変換等を用いて、取得したエッジ点を平面視画像へと変換し且つその平面視画像で複数のエッジ点を通る白線(境界線)の候補線を抽出する(ブロックB2内の破線を参照。)。なお、ハフ変換等により平面視画像へと変換される領域は、ブロックB1内の破線により示されたように、撮影された画像の一部であってもよい。
【0046】
ステップ340:CPUは、白線候補線のうち、互いに平行であって短い距離を有する一対の候補線からなる組を境界線(白線)を表している線として認識する。即ち、左側において2本の境界線、右側において2本の境界線が選択される。更に、CPUは、左側の2本の境界線のうちの内側にある境界線Lを左側の境界線Lとして選択し、右側の2本の境界線のうちの内側にある境界線Rを右側の境界線Rとして選択する(ブロックB3を参照。)。なお、境界線は、車両(又は画像)の左右方向の位置及び車両進行方向に対する角度により特定される。
【0047】
<走行支援制御>
本例における走行支援制御は車線逸脱警報制御である。即ち、自車両の左右方向の端部位置が選択された一対の境界線を逸脱する可能性が高いか又は逸脱した可能性が高いとき、CPUは警報装置40から前述した警報を発生させる。以下の説明においては、自車両の右側端部の位置が右側の境界線を逸脱する可能性が高いか又は逸脱した可能性が高いときに行われる右側逸脱警報について説明する。なお、自車両の左側端部の位置が左側の境界線を逸脱する可能性が高いか又は逸脱した可能性が高いときに行われる左側逸脱警報は、以下に述べる「右側逸脱警報」と同様な処理により実行される。
【0048】
CPUは「右側の境界線に対する逸脱警報制御」を実行するために、図4に示したルーチンの処理を所定のタイミングにてステップ400から開始し、ステップ410に進んで右側ロストフラグXLostRの値が「1」であるか否かを判定する。
【0049】
この右側ロストフラグXLostRの値は、後述する図6に示したルーチンにより、右側境界線をCPUが認識できなくなったと判定されたとき「1」に設定され、右側境界線をCPUが認識していると判定されているとき「0」に設定される。通常、右側境界線はCPUにより認識されるので右側ロストフラグXLostRの値は「0」である。
【0050】
そこで、先ず、右側境界線が正しく認識され、且つ、後述する右側分岐路であるとの判定がなされていない場合(右側分岐路フラグXbnkRの値が「0」である場合)から説明する。なお、後述する図5に示したルーチンにより、右側分岐路であるとの判定がなされると右側分岐路フラグXbnkRの値は「1」に設定され、右側分岐路ではないとの判定がなされると右側分岐路フラグXbnkRの値は「0」に設定される。
【0051】
この場合、右側ロストフラグXLostRの値は「0」であるから、CPUはステップ410にて「No」と判定してステップ420に進み、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」であるか否かを判定する。この場合、右側分岐路フラグXbnkRの値も「0」であるから、CPUはステップ420にて「No」と判定してステップ430に進み、通常時走行支援制御を行う。
【0052】
通常時走行支援制御について具体的に述べると、CPUは、自車両の右側端部の位置が「最新の(今回得られた)画像に基いて選択(特定)された右側の境界線」に所定距離以内にまで近づいたか否かを判定する。更に、CPUは、自車両の右側端部の位置がその右側の境界線に所定距離以内にまで近づいたと判定した場合、警報装置40にその旨を表す警報を発生させる。その後、CPUはステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。
【0053】
次に、右側ロストフラグXLostRの値は「0」に維持されているが、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」に設定された場合(即ち、右側分岐路であるとの判定がなされた場合)について説明する。この場合、CPUはステップ410にて「No」と判定してステップ420に進み、そのステップ420にて「Yes」と判定してステップ440に進む。
【0054】
CPUはステップ440にて、分岐時走行支援制御を行う。この場合、CPUは、「最新の(今回得られた)画像に基いて選択(特定)された右側の境界線」を実際の右側の境界線(本線の右側境界線)として採用しない。
【0055】
そこで、CPUは、自車両の右側端部の位置が「過去の(前回までに得られた複数の)画像に基いて推定された右側の境界線(推定右側境界線)」に所定距離以内にまで近づいたか否かを判定する。更に、CPUは、自車両の右側端部の位置が「推定右側境界線」に所定距離以内にまで近づいたと判定した場合、警報装置40にその旨を表す警報を発生させる。その後、CPUはステップ495に進み、本ルーチンを一旦終了する。このように、右側ロストフラグXLostRの値が「0」であり、且つ、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」であるとき、CPUは推定右側境界線に基く右側逸脱警報制御を行う。
【0056】
更に、右側ロストフラグXLostRの値が「1」に設定された場合、CPUはステップ410にて「Yes」と判定してステップ450に進み、ロスト時走行支援制御を行う。より具体的に述べると、CPUは右側逸脱警報制御を停止(禁止)する。即ち、CPUは警報装置40から「右側逸脱の可能性がある旨の警報」を発することを禁止する。
【0057】
<分岐路判定(右側分岐路判定)>
CPUは、自車両が右側分岐路(本線から右側に分岐して行く分岐路)が存在する領域を走行しているか否かを判定するために図5に示したルーチンを実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUは図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、右側分岐路フラグXbnkRの値が「0」であるか否かを判定する。
【0058】
通常、右側分岐路フラグXbnkRの値は「0」である。従って、CPUはステップ510にて「Yes」と判定してステップ520に進み、右側分岐路であるか否かを判定する(右側分岐路判定を実行する。)。
【0059】
ところで、自車両が分岐路のない本線を走行している場合、図2の「点PL1と点PR1との距離W1」は「点PL2と点PR2との距離W2」と実質的に等しい。即ち、左右の境界線間の距離は変化しない。これに対し、自車両が分岐路が存在する地点を走行している場合、図2の「点PL6と点PR6との距離W6」は「点PL5と点PR5との距離W5」よりも大きく、更に、「点PL7と点PR7との距離W7」は「点PL6と点PR6との距離W6」よりも大きい。このように、分岐路においては左右の境界線間の距離が次第に大きくなる。
【0060】
更に、右側分岐路において、左側境界線の車両左右方向の位置は、過去の位置(例えば、点PL1〜点PL6)と現在の位置(例えば、点PL7)とで殆ど変化しない。これに対し、右側分岐路において、右側境界線の車両左右方向の位置は、過去の位置(例えば、点PR1〜点PR4)と現在の位置(例えば、点PR7)とで大きく変化する。換言すると、左側境界線については過去の位置と現在の位置との差が小さい(連続性が高い)のに対し、右側境界線については過去の位置と現在の位置との差が大きい(連続性が低い)。CPUはこのような事実を利用して分岐路判定を行う。
【0061】
より具体的に述べると、CPUは下記の(1)式に従って、右側分岐路が存在しているか否かを判定するための指標値(右側分岐路指標値)BRHを算出する。

BRH=(POSR(k)−AvePOSR)−|POSL(k)−AvePOSL| …(1)

【0062】
上記(1)式における各値は以下のとおりである。なお、境界線の位置は車両(又は画像)の右側を正、左側を負と定義された座標に従って表される。
【0063】
POSR(k):今回取得された(即ち、最新の)画像に基く右側境界線の位置
AvePOSR:前回以前に取得された(即ち、過去の)複数の画像に基く右側境界線の位置の平均値(POSR(k-1)〜POSR(k-n)の平均値)
POSL(k):今回取得された(即ち、最新の)画像に基く左側境界線の位置
AvePOSL:前回以前に取得された(即ち、過去の)複数の画像に基く左側境界線の位置の平均値(POSL(k-1)〜POSL(k-n)の平均値)
【0064】
なお、AvePOSRは、自車両が分岐路に差し掛かった場合であっても、過去の本線の位置を反映することができるように、r回前の画像からr+p回前の画像(但し、r、pは整数であり、r>2、p>1である。)に基づく右側境界線の位置の平均値であってもよい。即ち、AvePOSRは、POSR(k-r)〜POSR(k-(r+p))の平均値であってもよい。同様に、AvePOSLは、r回前の画像からr+p回前の画像に基づく左側境界線の位置の平均値であってもよい。即ち、AvePOSLは、POSL(k-r)〜POSL(k-(r+p))の平均値であってもよい。
【0065】
(1)式の項のうち値|POSL(k)−AvePOSL|は、左側境界線の曲がり方(即ち、本線の曲がり方)の程度を補償するための項である。一般に、本線が直線路であるとき値|POSL(k)−AvePOSL|は実質的に「0」になる。また、本線が曲線路であるとき値|POSL(k)−AvePOSL|は、その曲がり方の程度が激しい(曲率が大きい、過去の左側境界線位置と現在の左側境界線位置との不連続性が大きい)ほど大きい正の値となる。従って、値|POSL(k)−AvePOSL|は、本線の曲がり方の程度を示す値となる。更に、値(POSR(k)−AvePOSR)は、右側境界線の右方向への曲がり方が大きいほど大きくなる値である。よって、右側分岐路指標値BRHは、本線の曲がり方の程度に対して、右側境界線が右方向にどの程度曲がっているかを示す値であり、本線から分岐する右側分岐路が存在している場合に車両が(本線に沿って)進行するに連れて大きさ(絶対値)が大きくなる値である。従って、この右側分岐路指標値BRHが所定の閾値を超えたとき、本線から右側方向に分岐する分岐路が存在していると判定することができる。即ち、右側分岐路指標値BRHを用いることにより、分岐路が存在していること及びその分岐路が右側分岐路であることを知ることができる。
【0066】
また、右側分岐路指標値BRHは、「前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置との差の大きさ|POSL(k)−AvePOSL|を基準とした値であって前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置との差(POSR(k)−AvePOSR)に応じた値であり、前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置が前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置に対してより右側に乖離しているほど絶対値が大きくなる値」である。
【0067】
なお、CPUは、下記の(2)式に従って、分岐路指標値BH1を算出してもよい。

BH1=(POSR(k)−AvePOSR)−(POSL(k)−AvePOSL) …(2)

【0068】
この分岐路指標値BH1は、右側境界線が右方向へ広がるほど大きくなり、且つ、左側境界線が右方向へ広がるほど小さくなる(左側境界線が左方向へ広がるほど大きくなる)値である。即ち、分岐路指標値BH1は、左右一対の境界線の広がり度合いを示す分岐路指標値であると言うこともでき、本線から分岐する分岐路が存在している場合に車両が(本線に沿って)進行するに連れて大きさ(絶対値)が大きくなる値である。但し、分岐路指標値BH1は、右側境界線が右方向へ広がった場合及び左側境界線が左方向へ広がった場合の何れの場合においても大きくなるので、分岐路指標値BH1が所定の閾値以上となったとき分岐路が存在すると判定することはできるが、それが左右のどちら側の分岐路であるのかは判定できない。よって、分岐路指標値BH1を用いて分岐路判定を行う際には、分岐路判定がなされた場合において値(POSR(k)−AvePOSR)と値(AvePOSL−POSL(k))を比較し、値(POSR(k)−AvePOSR)が値(AvePOSL−POSL(k))よりも大きければ右側分岐路であり、値(POSR(k)−AvePOSR)が値(AvePOSL−POSL(k))よりも小さければ左側分岐路と判定する必要がある。
【0069】
再び図5を参照すると、CPUは、ステップ520にて右側分岐路指標値BRHを取得し、更に、その右側分岐路指標値BRHが第1閾値A1以上であるか否かを判定する。このとき、自車両が右側分岐路存在領域を走行していなければ、右側分岐路指標値BRHは第1閾値A1よりも小さい。この場合、CPUはステップ520にて「No」と判定し、ステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、右側分岐路フラグXbnkRの値は「0」に維持される。
【0070】
これに対し、自車両が右側分岐路存在領域を走行していると、右側分岐路指標値BRHが第1閾値A1以上となる。よって、CPUはステップ520にて「Yes」と判定してステップ530に進み、右側分岐路フラグXbnkRの値を「1」に設定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。この結果、図4のステップ440の分岐時走行支援制御が実行される。
【0071】
この状態においてCPUが再び図5のステップ500から処理を開始すると、CPUはステップ510にて「No」と判定してステップ540に進み、次に述べる第1判定条件が成立しているか否かを判定する。
【0072】
(第1判定条件)
右側分岐路フラグXbnkRの値が「0」から「1」へ変化後(即ち、右側分岐判定がなされた後)に第1所定数のフレーム(例えば、5フレーム、即ち、0.5秒)以上経過しており、且つ、
右側の車線境界線が第2所定数のフレーム(例えば、5フレーム、即ち、0.5秒)連続で検出された。
なお、右側分岐判定がなされた時点は、便宜上、「第1時点」とも称呼される。また、第1所定数のフレームを取得するのに要する時間は、便宜上、「第1所定時間」とも称呼される。加えて、第1時点から第1所定時間が経過した時点より更に第2所定数のフレームを取得するのに要する時間が経過した時点は、便宜上、「第2時点」とも称呼される。また、第2所定数のフレームを取得するのに要する時間は、便宜上、「第2所定時間」とも称呼される。更に、「所定数のフレーム以上経過」とは、「所定数のフレームを取得するのに要する時間が経過」と同義である。
【0073】
現時点は右側分岐判定がなされた直後であるので、第1判定条件は成立しない。従って、CPUはステップ540にて「No」と判定してステップ550に進み、次に述べる第2判定条件が成立しているか否かを判定する。
【0074】
(第2判定条件)
右側分岐路フラグXbnkRの値が「0」から「1」へ変化後(即ち、右側分岐判定がなされた後)から第1所定数のフレーム(例えば、5フレーム、即ち、0.5秒)以内であり、且つ、
右側分岐路指標値BRHが第2閾値A2よりも小さい。
但し、第2閾値A2は第1閾値A1よりも小さい。
【0075】
いま、自車両が実際に右側分岐路存在領域を走行していると仮定する。この場合、右側分岐路指標値BRHは第1閾値A1よりも大きい状態が続くので、第2閾値A2よりも小さくならない。よって、CPUはステップ550にて「No」と判定してステップ560に進み、次に述べる第3判定条件が成立しているか否かを判定する。
【0076】
(第3判定条件)
右側分岐路フラグXbnkRの値が「0」から「1」へ変化後(即ち、右側分岐判定がなされた後)に第1所定数のフレーム(例えば、5フレーム、即ち、0.5秒)以上経過しており、且つ、
右側分岐路指標値BRHが第3閾値A3よりも小さく、且つ、
右側の車線境界線が第3所定数のフレーム(例えば、3フレーム、即ち、0.3秒)連続で検出された。
但し、第3閾値A3は、第1閾値A1以下であり且つ第2閾値A2よりも大きい。
更に、第3所定数は第2所定数よりも小さい。
なお、第3所定数のフレームを取得するのに要する時間は、便宜上、「第3所定時間」とも称呼される。
【0077】
現時点は右側分岐判定がなされた直後であるので、第3判定条件は成立しない。従って、CPUはステップ560にて「No」と判定し、ステップ595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。よって、右側分岐路フラグXbnkRの値は「1」に維持される。
【0078】
ところで、図7に示したように、本線Hを示す右側の白線のうちの一つ71が他の白線に比べて右側に開いた状態にて描かれていると、右側分岐路指標値BRHが第1閾値A1以上となる場合が発生する。この場合、CPUはステップ520にて「Yes」と判定するから、右側分岐判定がなされ、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」に設定される。
【0079】
この場合、従来装置は、第1判定条件のみにより右側分岐判定を終了していたので、少なくとも「第1所定数と第2所定数の和(例えば、5+5=10)のフレームを取得するのに要する時間(1秒)」が経過するまで、右側分岐路存在領域でないにも関らず、分岐時走行支援制御が継続されていた。
【0080】
これに対し、本走行支援装置は、第1判定条件に加え、第2判定条件を採用している。従って、右側分岐判定がなされた直後において「第1所定数と第2所定数の和のフレームを取得するのに要する時間」が経過する前であっても、右側分岐判定が誤判定であった場合には、直ちに分岐時走行支援処理モードを終了し、通常時走行支援処理モードへと移行することができる。
【0081】
即ち、自車両が実際には右側分岐路存在領域を走行していないと、右側分岐路フラグXbnkRの値が「0」から「1」に変更された後に第1所定数のフレームが取得される時間が経過する前であっても、右側分岐路指標値BRHが第2閾値A2よりも小さくなる。よって、この場合、第2判定条件が成立するので、CPUはステップ550にて「Yes」と判定してステップ570に進み、右側分岐路フラグXbnkRの値を「0」に設定する。更に、CPUはステップ580にて右側ロストフラグXLostRの値を「0」に設定し、ステップ595に進む。この結果、本走行支援装置は、右側分岐判定が誤判定であった場合、従来装置に比較して短時間内に通常時走行支援制御を再開することができる。その結果、より正確な右側逸脱警報制御を行うことができる。
【0082】
更に、従来装置によれば、第2所定数の連続するフレームにおいて右側境界線が検出できなければ、後述するように、右側境界線ロスト状態(右側境界線を検出できない状態)となり境界線ロスト時制御が実行されて右側逸脱警報制御が停止されてしまう。なお、このような事態は、例えば、第1所定数のフレームを取得する時間が経過した後に表れる白線(例えば、図7の白線72,73)の鮮明度が良好でない場合等において発生する。
【0083】
これに対し、本走行支援装置は、第1判定条件及び第2判定条件に加え、第3判定条件を採用している。より具体的に述べると、CPUは、第3判定条件が成立すると、ステップ560にて「Yes」と判定してステップ570に進み、右側分岐路フラグXbnkRの値を「0」に設定する。更に、CPUはステップ580にて右側ロストフラグXLostRの値を「0」に設定し、ステップ595に進む。
【0084】
この結果、本走行支援装置は、右側分岐判定がなされた第1時点から第1所定数のフレームを取得するのに要する時間が経過した後に右側分岐路指標値BRHが第3閾値A3よりも小さければ、「第2所定数(例えば、5フレーム)よりも小さい第3所定数(例えば、3フレーム)」の連続するフレームにおいて右側境界線が検出されたとき、右側分岐判定を終了して通常時走行支援制御を再開することができる。従って、無用な分岐時走行支援制御が継続される可能性及び/又は境界線ロスト時制御が実行される可能性を低減することができる。
【0085】
なお、第2判定条件及び第3判定条件が成立しない状態において第1判定条件が成立すると、CPUはステップ540にて「Yes」と判定してステップ570及びステップ580に進む。これによれば、従来装置と同様のタイミングにて、通常走行支援制御が再開される。
【0086】
<右側境界線ロスト判定>
前述したように、CPUは、右側境界線を見失った状態(右側境界線ロスト状態)となったか否かを図6のルーチンを実行することにより判定している。より具体的に述べると、CPUは所定のタイミングにてステップ600から処理を開始してステップ610に進み、右側ロストフラグXLostRの値が「0」であるか否かを判定する。このとき、右側ロストフラグXLostRの値が「1」であれば、CPUはステップ610にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0087】
これに対し、右側ロストフラグXLostRの値が「0」であれば、CPUはステップ610にて「Yes」と判定してステップ620に進み、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」である状態がロスト判定時間TLost以上継続しているか否かを判定する。このロスト判定時間TLostは「第1所定数と第2所定数の和のフレームを取得するのに要する時間」に比べて十分に長い時間に設定されている。このとき、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」である状態がロスト判定時間TLost未満であれば、CPUはステップ620にて「No」と判定し、ステップ695に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
また、右側分岐路フラグXbnkRの値が「1」である状態がロスト判定時間TLost以上継続していると、CPUはステップ620にて「Yes」と判定してステップ630に進み、右側ロストフラグXLostRの値を「1」に設定する。その結果、図4のステップ450にてロスト時走行支援制御(右側境界線に対する逸脱警報制御の停止)がなされる。なお、右側ロストフラグXLostRの値は、「1」に設定された後、図5の第1判定条件(ステップ540)及び第3判定条件(ステップ560)が成立すれば、ステップ580にて「0」に設定される。
【0089】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る車両走行支援装置は、
車両に搭載されるとともに同車両の進行方向の路面を所定時間が経過する毎に撮像する撮像手段(カメラ21、図3のステップ310)と、
前記撮像手段により撮像された画像に基いて前記路面の左側境界線及び右側境界線を検出する境界線検出手段(図3のステップ320乃至ステップ340)と、
本線から分岐する分岐路が存在している場合に前記車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値(上記(1)式による分岐路指標値BRH及び上記(2)式による分岐路指標値BH1)を前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて取得し、同取得した分岐路指標値の大きさが第1閾値(A1)以上であるとき前記分岐路が存在していると判定するとともに前記分岐路が本線に対して左右のどちら側に存在しているかを前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて決定し(図5のステップ520及びステップ530)、前記分岐路が存在していると判定された第1時点から第1所定時間が経過した後の時点であって前記決定された分岐路が存在している側の境界線が前記境界線検出手段により第2所定時間以上に渡り連続して検出される第2時点にて前記分岐路指標値に関らず前記分岐路が存在していないと判定する(上記第1判定条件、図5のステップ540)分岐路判定手段と、
前記分岐路が存在していないと判定されている場合には前記車両の走行を支援するための走行支援制御として前記撮像手段により取得された最新の画像である最新画像に基づいて検出される左側境界線及び右側境界線に基く通常時走行支援制御を実行するとともに(図4のステップ420及びステップ430)、前記分岐路が存在していると判定されている場合には前記走行支援制御として前記最新画像に基づいて検出された左側境界線及び右側境界線のうちの前記決定された分岐路が存在している側とは反対側の境界線と前記撮像手段により過去に取得された画像である過去画像に基づいて検出された左側境界線及び右側境界線のうちの前記決定された分岐路が存在している側の境界線とに基く分岐時走行支援制御を実行する(図4のステップ420及びステップ440)走行支援手段と、
を備える車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、
前記分岐路が存在していると判定した後に前記取得される分岐路指標値の大きさが前記第1閾値(A1)以下である分岐判定終了閾値(第2閾値A2、第3閾値A3)よりも小さくなった場合、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成されている(上記第2判定条件、図5のステップ550及びステップ570、上記第3判定条件、図5のステップ560及びステップ570)。
【0090】
従って、分岐路指標値に基づく分岐路判定が誤ってなされた場合であっても、その分岐路判定を短時間にて取り消すことができるので、分岐時走行支援制御が継続されること或いはロスト時走行支援制御が不必要な場合に行われることを回避することができる。
【0091】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、CPUは左側分岐路指標値BLHを下記の(3)式に基づいて算出し、これを分岐判定(左側分岐判定)に使用してもよい。

BLH=−(POSL(k)−AvePOSL)−|POSR(k)−AvePOSR| …(3)

【0092】
この値BLHも、本線から分岐する分岐路(左分岐路)が存在している場合に車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値である。更に、この値BLHは、「前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置との差の大きさ|POSR(k)−AvePOSR|を基準とした値であって前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置との差(POSL(k)−AvePOSL)に応じた値であり前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置が前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置に対してより左側に乖離しているほど絶対値が大きくなる値」である。なお、CPUは、値BLHを下記の(4)式に従って求めるとともに、その値BLHが第1閾値A1の符号を逆転した値(即ち、−A1)以下であるとき左側分岐路が存在すると判定してもよい。更に、第2閾値及び第3閾値も第1閾値と同様に符号が反転された上で用いられる。

BLH=(POSL(k)−AvePOSL)−|POSR(k)−AvePOSR| …(4)

【0093】
更に、CPUは、図8に示したように、過去の複数の画像に基づいて取得された右側境界線を延長した線Raに対する最新の画像に基づいて取得された右側境界線Rbの角度φR(但し、φRは時計方向を正の向きとする)を求めるとともに、過去の複数の画像に基づいて取得された左側境界線を延長した線Laに対する最新の画像に基づいて取得された左側境界線Lbの角度φL(但し、φLは反時計方向を正の向きとする)を求め、これらの和(φR+φL)を分岐路指標値として用いてもよい。この場合、CPUは、φR及びφLうち大きい角度を有する側に分岐路があると判定するように構成されることもできる。この和(φR+φL)は、左側境界線及び右側境界線の何れか一方に対する他方の広がり度合いが大きいほど大きくなる値であり、本線から分岐する分岐路が存在している場合に車両が(本線に沿って)進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値である。加えて、CPUは、右側分岐路指標値として(φR−|φL|)を使用してもよく、左側分岐路指標値として(φL−|φR|)を使用してもよい。
【0094】
加えて、上記実施形態における走行支援制御は車線逸脱警報制御であったが、本発明は車線維持制御にも適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10…走行支援装置、20…道路境界線検出装置、21…カメラ、22…処理部、30…車線維持制御装置、31…操舵制御装置、32…パワーステアリング装置、40…警報装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるとともに同車両の進行方向の路面を所定時間が経過する毎に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基いて前記路面の左側境界線及び右側境界線を検出する境界線検出手段と、
本線から分岐する分岐路が存在している場合に前記車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値を前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて取得するとともに同取得した分岐路指標値の大きさが第1閾値以上であるとき前記分岐路が存在していると判定する分岐路判定手段と、
前記検出される左側境界線及び前記検出される右側境界線の少なくとも一方に基いて実行される車両の走行を支援するための走行支援制御を、前記分岐路が存在していると判定された場合には前記分岐路が存在していないと判定された場合に行われる通常時走行支援制御から同通常時走行支援制御と相違する分岐時走行支援制御へと変更する走行支援手段と、
を備える車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、
前記分岐路が存在していると判定した後に前記取得される分岐路指標値の大きさが前記第1閾値以下である分岐判定終了閾値よりも小さくなった場合、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成された車両走行支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、
前記分岐路が本線に対して左右のどちら側に存在しているかを前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて決定するように構成され、
前記走行支援手段は、
前記分岐路が存在していると判定された第1時点から第1所定時間が経過した後の時点であって前記決定された分岐路が存在する側の境界線が前記境界線検出手段により第2所定時間以上に渡り連続して検出される第2時点にて前記分岐路指標値に関らず前記分岐路が終了したと判定し、前記走行支援制御を前記分岐時走行支援制御から前記通常時走行支援制御へと移行させるように構成された車両走行支援装置。
【請求項3】
車両に搭載されるとともに同車両の進行方向の路面を所定時間が経過する毎に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された画像に基いて前記路面の左側境界線及び右側境界線を検出する境界線検出手段と、
本線から分岐する分岐路が存在している場合に前記車両が進行するに連れて大きさが大きくなる分岐路指標値を前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて取得し、同取得した分岐路指標値の大きさが第1閾値以上であるとき前記分岐路が存在していると判定するとともに前記分岐路が本線に対して左右のどちら側に存在しているかを前記検出された左側境界線及び前記検出された右側境界線に基いて決定し、前記分岐路が存在していると判定された第1時点から第1所定時間が経過した後の時点であって前記決定された分岐路が存在している側の境界線が前記境界線検出手段により第2所定時間以上に渡り連続して検出される第2時点にて前記分岐路指標値に関らず前記分岐路が存在していないと判定する分岐路判定手段と、
前記分岐路が存在していないと判定されている場合には前記車両の走行を支援するための走行支援制御として前記撮像手段により取得された最新の画像である最新画像に基づいて検出される左側境界線及び右側境界線に基く通常時走行支援制御を実行するとともに、前記分岐路が存在していると判定されている場合には前記走行支援制御として前記最新画像に基づいて検出された左側境界線及び右側境界線のうちの前記決定された分岐路が存在している側とは反対側の境界線と前記撮像手段により過去に取得された画像である過去画像に基づいて検出された左側境界線及び右側境界線のうちの前記決定された分岐路が存在している側の境界線とに基く分岐時走行支援制御を実行する走行支援手段と、
を備える車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、
前記分岐路が存在していると判定した後に前記取得される分岐路指標値の大きさが前記第1閾値以下である分岐判定終了閾値よりも小さくなった場合、前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成された車両走行支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、
前記分岐判定終了閾値として前記第1閾値よりも小さい第2閾値を使用し、前記第1時点から第1所定時間が経過するまでの間において前記取得された分岐路指標値の大きさが前記第2閾値よりも小さくなったとき前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成された車両走行支援装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、
前記分岐判定終了閾値として前記第1閾値以下である第3閾値を使用し、前記第1時点から前記第1所定時間が経過した時点以降において、前記取得された分岐路指標値の大きさが前記第3閾値よりも小さく且つ前記決定された分岐路が存在している側の境界線が前記境界線検出手段により前記第2所定時間よりも短い第3所定時間以上に渡り連続して検出されたとき前記分岐路が存在しているとの判定を取り消すように構成された車両走行支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の車両走行支援装置において、
前記分岐路判定手段は、前記分岐路指標値として、
前記左側境界線及び前記右側境界線の何れか一方に対する他方の広がり度合いが大きいほど大きくなる値、
前記撮像手段により過去に取得された画像である過去画像に基いて検出された左側車線の位置と前記撮像手段により取得された最新の画像である最新画像に基いて検出された左側車線の位置との差の大きさを基準とした値であって前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置との差に応じて変化する値であり前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置が前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置に対してより右側に乖離しているほど絶対値が大きくなる値、及び、
前記過去画像に基いて検出された右側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された右側車線の位置との差の大きさを基準とした値であって前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置と前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置との差に応じた値であり前記最新画像に基いて検出された左側車線の位置が前記過去画像に基いて検出された左側車線の位置に対してより左側に乖離しているほど絶対値が大きくなる値、
の少なくとも一つを取得するように構成された車両走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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