説明

車両

【課題】部品点数の削減を図りつつ、簡単な作業で開閉蓋を開放状態に維持することができる車両を提供すること。
【解決手段】鉄道車両10によれば、切欠部22b2と係合部22b2とが離間する方向へ開閉蓋13を車体11に対しスライドさせた場合には、開閉蓋13の揺動によって車体11に形成された開口部12を開放又は閉塞することができる。一方、切欠部21b2と係合部22b2とが近接する方向へ開閉蓋13を車体11に対しスライドさせた場合には、切欠部21b2(端面E)と係合部22b2とが係合することで、開口部12を開放したまま開閉蓋13を所定の開放角度に維持することができる。よって、開閉蓋13を揺動開放した後、その開閉蓋13を車体11に沿ってスライドさせるだけの簡単な作業で、容易に開閉蓋13を開放状態に維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関し、特に、部品点数の削減を図りつつ、簡単な作業で開閉蓋を開放状態に維持することができる車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の車体には、車体内部に配設された機器のメンテナンス等を行うために、開閉蓋によって開閉可能な開口部が設けられている。また、その開口部を開閉するための開閉蓋は、鉄道車両が走行している間に不用意に開いてしまうことを避けるため、開閉蓋を持ち上げて開口部を開くように蝶番装置によって支持されている。
【0003】
しかしながら、メンテナンス等を行う場合には、開閉蓋を持ち上げつつ作業を行うことは極めて困難なため、開閉蓋を所定の開放状態に維持する機構が必要であった。
【0004】
ここで、開閉蓋を所定の開放状態に維持する機構としては、例えば、特開2003−269438号公報に開示されるヒンジ装置50が知られている。このヒンジ装置50によれば、弾性体65の弾性力によって可動ヒンジ軸60をヒンジ板50に押しつけることで、ヒンジ板51の係合凹部71と可動ヒンジ軸60の係合凸部72とを係合させて、開閉蓋40を所定の開放状態に維持する。
【0005】
ところが、かかるヒンジ装置50では、弾性体65の弾性力のみによって開閉蓋40を所定の開放状態に維持するため、比較的重量が嵩む開閉蓋には不向きであった。そこで、従来より、鉄道車両においては、開口部に設けられた支持部材によって、開閉蓋を下から持ち上げて支える機構が利用されてきた。
【特許文献1】特開2003−269438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、支持部材によって開閉蓋を支える場合には、片方の手で開閉蓋を持ち上げつつ、他方の手で支持部材を操作しなければならず、極めて作業性が悪いという問題点があった。また、支持部材と、その支持部材に付随する部品、例えば、未使用時に支持部材を固定しておくための部品等が必要となり、部品点数が増加するという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、部品点数の削減を図りつつ、簡単な作業で開閉蓋を開放状態に維持することができる車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を解決するために請求項1記載の車両は、車体と、その車体に形成された開口部と、その開口部を開閉する開閉蓋と、その開閉蓋を揺動させることで前記開口部を開閉するように前記開閉蓋を前記車体に揺動可能に支持する蝶番装置とを備え、前記蝶番装置は、前記車体に取着される第1ヒンジ部材と、前記開閉蓋に取着される第2ヒンジ部材と、その第2ヒンジ部材を前記第1ヒンジ部材に揺動かつスライド可能に軸支する軸部材と、その軸部材を保持するために前記第1ヒンジ部材または第2ヒンジ部材のいずれか一方に設けられ、前記軸部材を捲回するように形成される捲回部およびその捲回部の一部を切り欠いて形成される切欠部を有する軸保持部と、その軸保持部が設けられる前記第1ヒンジ部材または第2ヒンジ部材のいずれか他方に設けられ、前記切欠部と係合することで前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対する揺動角度を所定の揺動角度に維持する係合部とを備え、前記切欠部と前記係合部とが離間する方向へ前記第2ヒンジ部材を前記第1ヒンジ部材に対しスライドさせた場合には、前記開閉蓋によって前記開口部が開閉可能となる一方、前記切欠部と前記係合部とが近接する方向へ前記第2ヒンジ部材を前記第1ヒンジ部材に対しスライドさせた場合には、前記切欠部と前記係合部とが係合することで前記開閉蓋の前記開口部に対する開放角度を所定の開放角度に維持可能に構成されている。
【0009】
請求項2記載の車両は、請求項1記載の車両において、前記切欠部は、前記捲回部における前記開閉蓋の開放側の一部を切り欠いて形成されており、前記開閉蓋の前記開口部に対する開放角度が前記所定の開放角度以下の場合には、前記切欠部と前記係合部とが近接する方向への前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対するスライドを、前記切欠部と前記係合部とが当接することで禁止する。
【0010】
請求項3記載の車両は、請求項1又は2に記載の車両において、前記切欠部に設けられるストッパ部と、前記係合部に設けられ、前記切欠部と前記係合部とが係合した場合に、前記ストッパ部に係止されることで前記切欠部と前記係合部とが離間する方向への前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対するスライドを禁止する係止部とを備えている。
【0011】
請求項4記載の車両は、請求項3記載の車両において、前記切欠部または係合部は、それら切欠部と係合部とが近接する方向への前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対するスライドに伴って前記開閉蓋が開放側へ揺動するように傾斜して形成されている。
【0012】
請求項5記載の車両は、請求項1から4のいずれかに記載の車両において、前記蝶番装置により前記車体に揺動可能に支持される開閉蓋は、反重力方向へ揺動することで前記開口部を開放する一方、重力方向へ揺動することで前記開口部を閉塞するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の車両によれば、蝶番装置は、軸部材によって第1ヒンジ部材と第2ヒンジ部材とが相対的に揺動かつスライド可能に軸支され、その蝶番装置の第1ヒンジ部材が車体に取着されると共に第2ヒンジ部材が開閉蓋に取着される。また、第1ヒンジ部材および第2ヒンジ部材には、係合部または捲回部と切欠部とを有する軸保持部のいずれかがそれぞれ設けられる。従って、蝶番装置に設けられた切欠部と係合部とが離間する方向へ開閉蓋を車体に対しスライドさせた場合には、開閉蓋の揺動によって車体に形成された開口部を開放又は閉塞することができる。一方、切欠部と係合部とが近接する方向へ開閉蓋を車体に対しスライドさせた場合には、切欠部と係合部とが係合することで、開口部を開放したまま開閉蓋を所定の開放角度に維持することができる。よって、開閉蓋を揺動開放した後、その開閉蓋を車体に沿ってスライドさせるだけの簡単な作業で、容易に開閉蓋を開放状態に維持することができるという効果がある。
【0014】
また、蝶番装置が、開閉蓋を車体に支持する役割と、開閉蓋を開放状態に維持する役割とを兼ね備える構成としたので、それぞれの役割を別々の部品で構成する場合と比較して、部品点数の削減を図ることができるという効果がある。更に、部品点数の削減を図ることができれば、その分、車両の軽量化を図ることができるので、例えば、新幹線車両のような高速化を図るべく軽量化が望まれる車両に対しても有利となる。
【0015】
請求項2記載の車両によれば、請求項1記載の車両の奏する効果に加え、切欠部は、軸部材を捲回するように形成された捲回部における開閉蓋の開放側の一部を切り欠いて形成されているので、開閉蓋が所定の開放角度に揺動開放されるまでは、切欠部と係合部との側端部が当接し合うことで、切欠部と係合部とが近接する方向への開閉蓋の車体に対するスライドが禁止される。よって、例えば、車両が走行している場合でも、閉塞状態にある開閉蓋を安定した状態で車体に支持しておくことができるという効果がある。
【0016】
また、開閉蓋が所定の開放角度に揺動開放されるまでは、切欠部と係合部とが近接する方向への開閉蓋の車体に対するスライドが禁止されるので、開閉蓋の車体に対するスライドの可否によって、切欠部と係合部とが係合しているか否かを判断することができる。よって、切欠部と係合部との係合状態を、その都度、目視確認する必要がなく、作業性の向上を図ることができるという効果がある。
【0017】
請求項3記載の車両によれば、請求項1又は2に記載の車両の奏する効果に加え、切欠部と係合部とが係合した場合には、ストッパ部に係止部が係止され、切欠部と係合部とが離間する方向への開閉蓋の車体に対するスライドが禁止される。よって、開放状態にある開閉蓋が、不注意でスライドし、閉塞してしまうことを防止することができるという効果がある。これにより、作業者への安全性を確保することができる。
【0018】
請求項4記載の車両によれば、請求項3記載の車両の奏する効果に加え、切欠部または係合部は、それら切欠部と係合部とが近接する方向への開閉蓋の車体に対するスライドに伴って、開閉蓋が開放側へ揺動するように傾斜して形成されているので、開閉蓋を車体に対しスライドさせるだけで、必然的にストッパ部に係止部を係止させることができるという効果がある。
【0019】
請求項5記載の車両によれば、請求項1から4のいずれかに記載の車両の奏する効果に加え、開閉蓋は、反重力方向へ揺動することで開口部を開放する一方、重力方向へ揺動することで開口部を閉塞するので、車両が走行している間に開閉蓋が開いてしまう恐れを回避することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施の形態における鉄道車両10の側面図である。また、図1(b)は、図1(a)のAで示した部分を拡大した鉄道車両10の拡大図であり、図1(c)は、図1(b)のIc−Ic線における鉄道車両10の拡大断面図である。なお、図1(c)では、閉塞状態にある開閉蓋13が実線を用いて図示され、開放状態にある開閉蓋13が2点鎖線を用いて図示されている。
【0021】
まず、図1を参照して、鉄道車両10の概略構成について説明する。鉄道車両10は、電力等を駆動源として軌道上を走行する電車であり、図1に示すように、車体11と、その車体11に形成された開口部12と、その開口部12に配設される開閉蓋13とを主に備えて構成されている。
【0022】
開口部12は、車体11の内部に配設された床下機器(図示せず)のメンテナンスを行うための作業窓であり、図1に示すように、車体11の内部と外部とを貫通する側面視矩形状の貫通孔として車体11の側面に複数形成されている。
【0023】
開閉蓋13は、開口部12を開放または閉塞するための部材であり、図1に示すように、開口部12と側面視略同一形状の板状体で構成され、蝶番装置20によって車体11に支持されている。蝶番装置20は、開閉蓋13を車体11に揺動可能に支持すると共に開閉蓋13を開放状態に維持するための装置であり、図1(c)に示すように、開閉蓋13の上縁部(図1(c)上側)に配設されている。つまり、開閉蓋13を反重力方向(図1(c)の矢印B方向)へ揺動させる(持ち上げる)ことで開口部12が開放される(図1(c)参照)。このように、開閉蓋13を反重力方向へ揺動させて開口部12を開放する一方、開閉蓋13を重力方向へ揺動させて開口部12を閉塞するように構成することで、鉄道車両10が走行している間に開閉蓋13が開いてしまう恐れを回避することができる。なお、車体11には、蓋固定部材14が配設されており、その蓋固定部材14によって開閉蓋13を閉塞状態のまま揺動不能に固定することができる。蓋固定部材14は、その軸部14a回りに固定部14bを回動させて開閉蓋13を固定するものである。
【0024】
次に、図2を参照して、蝶番装置20の詳細構成について説明する。図2(a)は、蝶番装置20の正面図であり、図2(b)は、蝶番装置20の側面図である。また、図2では、車体11及び開閉蓋13が2点鎖線を用いて図示されている。なお、理解を容易とするために、図1に示す車体11及び開閉蓋13とは異なる位置状態で図示されている。
【0025】
蝶番装置20は、上述したように、開閉蓋13を車体11に揺動可能に支持すると共に開閉蓋13を開放状態に維持するための装置であり、図2に示すように、第1ヒンジ部材21と、第2ヒンジ部材22と、それら第1ヒンジ部材21及び第2ヒンジ部材22を連結する軸部材23とを主に備えて構成されている。
【0026】
第1ヒンジ部材21は、車体11に取着される部材であり、図2に示すように、板状部21aと、軸部材23を保持する軸保持部21bとを主に備えて構成されている。なお、第1ヒンジ部材21の詳細構成については、図3を参照して、後に説明する。
【0027】
第2ヒンジ部材22は、開閉蓋13に取着される部材であり、図2に示すように、板状部22aと、軸部材23を保持する軸保持部22bとを主に備えて構成されている。なお、第2ヒンジ部材22の詳細構成については、図4を参照して、後に説明する。
【0028】
軸部材23は、図2に示すように、金属材料からなる軸状体で構成され、第1ヒンジ部材21の軸保持部21bと、第2ヒンジ部材22の軸保持部22bとにそれぞれ保持されている。軸部材23が、第1ヒンジ部材21の軸保持部21b及び第2ヒンジ部材22の軸保持部22bにそれぞれ保持されることで、第1ヒンジ部材21と第2ヒンジ部材22とを連結することができる。また、この軸部材23によって、第1ヒンジ部材21と第2ヒンジ部材22とを、軸部材23の軸心回りに相対的に揺動させることができると共に、軸部材23の軸心に沿って相対的にスライドさせることができる。
【0029】
次に、図3を参照して、第1ヒンジ部材21の詳細構成について説明する。図3(a)は、第1ヒンジ部材21の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のCで示した部分における第1ヒンジ部材21の拡大斜視図である。また、図3(c)は、図3(a)のIIIc−IIIc線における第1ヒンジ部材21の断面図であり、図3(d)は、図3(a)のIIId−IIId線における第1ヒンジ部材21の断面図である。
【0030】
第1ヒンジ部材21は、図3に示すように、金属材料から構成され、正面視矩形状の板状体に形成される板状部21aと、その板状部21aの長手方向一端側(図3下側)に板状部21aと一体形成される軸保持部21bとを主に備えて構成されている。
【0031】
板状部21aは、車体11に取着される部位であり、図3(a)及び図3(b)に示すように、複数(本実施の形態では、3個)の貫通孔21a1が穿設されている。この貫通孔21a1にボルト(図示せず)等を挿通して、第1ヒンジ部材21を車体11に固定する。
【0032】
軸保持部21bは、上述したように、軸部材23を保持するための部位であり、図3に示すように、軸部材23を捲回するように形成される捲回部21b1と、その捲回部21b1に連接して捲回部21b1の一部を切り欠いて形成される切欠部21b2とを備えている。切欠部21b2は、図3(c)に示すように、捲回部21b1を切り欠くことで形成される端面Eが板状部21a対して所定の角度αとなるように、第1ヒンジ部材21が車体11に取着された状態において、開閉蓋13の開放側となる捲回部21b1の一部が切り欠いて形成されている。
【0033】
次に、図4を参照して、第2ヒンジ部材22の詳細構成について説明する。図4(a)は、第2ヒンジ部材22の正面図であり、図4(b)は、図4(a)のDで示した部分における第2ヒンジ部材22の拡大斜視図である。また、図4(c)は、図4(a)のIVc−IVc線における第2ヒンジ部材22の断面図であり、図4(d)は、図4(a)のIVd−IVd線における第2ヒンジ部材22の断面図である。
【0034】
第2ヒンジ部材22は、図4に示すように、金属材料から構成され、正面視略矩形状の板状体に形成される板状部22aと、その板状部22aの長手方向一端側(図4上側)に板状部22aと一体形成される軸保持部22bとを主に備えて構成されている。
【0035】
板状部22aは、開閉蓋13に取着される部位であり、図4(a)及び図4(b)に示すように、複数(本実施の形態では、3個)の貫通孔22a1が穿設されている。この貫通孔22a1にボルト(図示せず)等を挿通して、第2ヒンジ部材22を開閉蓋13に固定する。
【0036】
軸保持部22bは、上述したように、軸部材23を保持するための部位であり、図4に示すように、軸部材23を捲回するように形成される捲回部22b1と、その捲回部22b1に連接して捲回部22b1の一部を切り欠いて形成される係合部22b2とを備えている。係合部22b2は、図4に示すように、捲回部22b1を切り欠くことで、板状部22aから突出した状態に形成されている。
【0037】
次に、図5を参照して、蝶番装置20によって開閉蓋13を開放状態に維持する方法について説明する。図5(a)から図5(c)は、蝶番装置20の正面図であり、第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対し所定の揺動角度で固定する様子が時系列的に図示されている。また、図5(d)から図5(f)は、図5(a)から図5(c)のVd−Vd線からVf−Vf線における蝶番装置20の断面図である。また、図5(d)から図5(f)では、車体11及び開閉蓋13が2点鎖線を用いて図示されていると共に、図1に示す車体11及び開閉蓋13に対応した位置状態で図示されている。なお、図5では、主要な構成のみに符号を付している。
【0038】
第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対し所定の揺動角度(角度α)で固定する場合には、まず、第1ヒンジ部材21及び第2ヒンジ部材22を図5(a)及び図5(d)に示す状態から、図5(b)及び図5(e)に示す状態となるように、第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対して軸部材23の軸心回りに矢印F方向(図5(e)参照)へ揺動させる。つまり、第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対し揺動させて、第1ヒンジ部材21の切欠部21b2(端面E)と、第2ヒンジ部材22の係合部22b2とが係合できるように、切欠部21b2(端面E)の位置と係合部22b2の位置とを一致させる。
【0039】
次いで、図5(c)及び図5(f)に示すように、第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対して軸部材23の軸心に沿って矢印G方向(図5(c)参照)へスライドさせる。即ち、第1ヒンジ部材21の切欠部21b2と、第2ヒンジ部材22の係合部22b2とが近接する方向へ第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対してスライドさせる。かかる第2ヒンジ部材22の第1ヒンジ部材21に対するスライドによって、第1ヒンジ部材21の切欠部21b2(端面E)と、第2ヒンジ部材22の係合部22b2とが係合し、第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対し所定の揺動角度で固定することができる。その結果、開閉蓋13が車体11に対し所定の開放角度で固定され、開閉蓋13を開放状態に維持することができる。一方、切欠部21b2と係合部22b2とが離間する方向へ第2ヒンジ部材22を第1ヒンジ部材21に対してスライドさせた場合には、切欠部21b2(端面E)と係合部22b2との係合が解放され、開閉蓋13を揺動させることができる。よって、開閉蓋13により開口部12を開閉することができる。
【0040】
上述したように、本実施の形態における鉄道車両10によれば、蝶番装置20は、軸部材23によって第1ヒンジ部材21と第2ヒンジ部材22とが相対的に揺動かつスライド可能に軸支され、その蝶番装置20の第1ヒンジ部材21が車体11に取着されると共に第2ヒンジ部材22が開閉蓋13に取着される。また、第1ヒンジ部材21には切欠部21b2が、第2ヒンジ部材22には係合部22b2が、それぞれ設けられる。従って、切欠部22b2と係合部22b2とが離間する方向へ開閉蓋13を車体11に対しスライドさせた場合には、開閉蓋13の揺動によって車体11に形成された開口部12を開放又は閉塞することができる。一方、切欠部21b2と係合部22b2とが近接する方向へ開閉蓋13を車体11に対しスライドさせた場合には、切欠部21b2(端面E)と係合部22b2とが係合することで、開口部12を開放したまま開閉蓋13を所定の開放角度に維持することができる。よって、開閉蓋13を揺動開放した後、その開閉蓋13を車体11に沿ってスライドさせるだけの簡単な作業で、容易に開閉蓋13を開放状態に維持することができる。
【0041】
また、蝶番装置20が、開閉蓋13を車体11に支持する役割と、開閉蓋13を開放状態に維持する役割とを兼ね備える構成としたので、それぞれの役割を別々の部品で構成する場合と比較して、部品点数の削減を図ることができる。部品点数の削減を図ることができれば、その分、鉄道車両10の軽量化を図ることができるので、例えば、新幹線車両のような高速化を図るべく軽量化が望まれる車両に対しても有利となる。
【0042】
また、切欠部21b2は、捲回部21b1における開閉蓋13の開放側の一部を切り欠いて形成されているので、開閉蓋13が所定の開放角度(角度α)に揺動開放されるまでは、切欠部21b2と係合部22b2との側端部が当接し合うことで、切欠部21b2と係合部22b2とが近接する方向への開閉蓋13の車体11に対するスライドが禁止される。よって、例えば、鉄道車両10が走行している場合でも、閉塞状態にある開閉蓋13を安定した状態で車体11に支持しておくことができる。
【0043】
また、開閉蓋13が所定の開放角度(角度α)に揺動開放されるまでは、切欠部21b2と係合部22b2とが近接する方向への開閉蓋13の車体11に対するスライドが禁止されるので、開閉蓋13の車体11に対するスライドの可否によって、切欠部21b2と係合部22b2とが係合しているか否かを判断することができる。よって、切欠部21b2と係合部22b2との係合状態を、その都度、目視確認する必要がなく、作業性の向上を図ることができる。
【0044】
なお、図3(c)に示す角度αを変更することで、開閉蓋13の車体11に対する開放角度を所望の開放角度に設定することができる。
【0045】
次に、図6を参照して、第2実施の形態について説明する。第2実施の形態では、第1実施の形態における蝶番装置20に対して、第1ヒンジ部材21にストッパ部121cが、第2ヒンジ部材22に係止部122cが、それぞれ追加され構成されている。なお、第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0046】
図6(a)は、第2実施の形態における第1ヒンジ部材121の部分斜視図であり、図6(b)は、第2実施の形態における第2ヒンジ部材122の部分斜視図である。なお、図6(a)では、第1ヒンジ部材121の長手方向の図示が省略されていると共に、図6(b)では、第2ヒンジ部材122の長手方向の図示が省略されている。
【0047】
第1ヒンジ部材121は、図6(a)に示すように、切欠部21b2の端面Eが、切欠部21b2の側端部から捲回部21b1方向へ向けて上昇傾斜して形成されている。また、その切欠部21b2の端面Eには、図6(a)に示すように、ストッパ部121cが凹設されている。
【0048】
第2ヒンジ部材122は、図6(b)に示すように、係合部22b2が、係合部22b2の側端部から捲回部22b1方向へ向けて上昇傾斜して形成されている。また、その係合部22b2には、図6(b)に示すように、係止部122cが凸設されている。
【0049】
上述したように、本実施の形態によれば、ストッパ部121c及び係止部122cが設けられているので、第1ヒンジ部材121の切欠部21b2と、第2ヒンジ部材122の係合部22b2とが近接する方向へ第2ヒンジ部材122を第1ヒンジ部材121に対してスライドさせた場合には、ストッパ部121cに係止部122cが係止され、切欠部21b2と係合部22b2とが離間する方向への第2ヒンジ部材122の第1ヒンジ部材121に対するスライドを禁止することができる。よって、開放状態にある開閉蓋13が、不注意でスライドし、閉塞してしまうことを防止することができる。これにより、作業者への安全性を確保することができる。
【0050】
また、切欠部21b2の端面Eが、切欠部21b2の側端部から捲回部21b1方向へ向けて上昇傾斜して形成されると共に、係合部22b2が、切欠部22b2の側端部から捲回部22b1方向へ向けて上昇傾斜して形成されているので、第2ヒンジ部材122の第1ヒンジ部材121に対するスライドに伴って開閉蓋13が開放側へ揺動される。よって、開閉蓋13を車体11に対しスライドさせるだけで、必然的にストッパ部121cに係止部122cを係止させることができる。
【0051】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0052】
例えば、上記各実施の形態では、開口部12を開放または閉塞する開閉蓋13を備えた鉄道車両10の場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、自動車等の各種車両に本発明を採用することは当然可能である。
【0053】
また、上記各実施の形態では、第1ヒンジ部材21,121に切欠部21b2を、第2ヒンジ部材22,122に係合部22b2を、それぞれ備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1ヒンジ部材21,121に係合部22b2を、第2ヒンジ部材22,122に切欠部21b2を、それぞれ備えて構成しても良い。
【0054】
また、上記第2実施の形態では、ストッパ部121cが凹設され係止部122cが凸設されて形成される場合を説明したが、ストッパ部121c及び係止部122cの形状は必ずしもこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態における鉄道車両の側面図であり、(b)は、(a)のAで示した部分を拡大した鉄道車両の拡大図であり、(c)は、(b)のIc−Ic線における鉄道車両の拡大断面図である。
【図2】(a)は蝶番装置の正面図であり、(b)は蝶番装置の側面図である。
【図3】(a)は第1ヒンジ部材の正面図であり、(b)は、(a)のCで示した部分における第1ヒンジ部材の斜視図である。また、(c)は、(a)のIIIc−IIIc線における第1ヒンジ部材の断面図であり、(d)は、(a)のIIId−IIId線における第1ヒンジ部材の断面図である。
【図4】(a)は第2ヒンジ部材の正面図であり、(b)は、(a)のDで示した部分における第2ヒンジ部材の斜視図である。また、(c)は、(a)のIVc−IVc線における第2ヒンジ部材の断面図であり、(d)は、(a)のIVd−IVd線における第2ヒンジ部材の断面図である。
【図5】(a)から(c)は蝶番装置の正面図であり、第2ヒンジ部材を第1ヒンジ部材に対し所定の揺動角度で固定する様子を時系列に示す図である。また、(d)から(f)は、(a)から(c)のVd−Vd線からVf−Vf線における蝶番装置の断面図である。
【図6】(a)は第2実施の形態における第1ヒンジ部材の部分斜視図であり、(b)は第2実施の形態における第2ヒンジ部材の部分斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10 鉄道車両(車両)
11 車体
12 開口部
13 開閉蓋
20 蝶番装置
21,121 第1ヒンジ部材
21b 軸保持部
21b1 捲回部
21b2 切欠部
22,122 第2ヒンジ部材
22b 軸保持部
22b1 捲回部
22b2 係合部
23 軸部材
121c ストッパ部
122c 係止部
E 端面(切欠部の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、その車体に形成された開口部と、その開口部を開閉する開閉蓋と、その開閉蓋を揺動させることで前記開口部を開閉するように前記開閉蓋を前記車体に揺動可能に支持する蝶番装置とを備えた車両において、
前記蝶番装置は、
前記車体に取着される第1ヒンジ部材と、
前記開閉蓋に取着される第2ヒンジ部材と、
その第2ヒンジ部材を前記第1ヒンジ部材に揺動かつスライド可能に軸支する軸部材と、
その軸部材を保持するために前記第1ヒンジ部材または第2ヒンジ部材のいずれか一方に設けられ、前記軸部材を捲回するように形成される捲回部およびその捲回部の一部を切り欠いて形成される切欠部を有する軸保持部と、
その軸保持部が設けられる前記第1ヒンジ部材または第2ヒンジ部材のいずれか他方に設けられ、前記切欠部と係合することで前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対する揺動角度を所定の揺動角度に維持する係合部とを備え、
前記切欠部と前記係合部とが離間する方向へ前記第2ヒンジ部材を前記第1ヒンジ部材に対しスライドさせた場合には、前記開閉蓋によって前記開口部が開閉可能となる一方、前記切欠部と前記係合部とが近接する方向へ前記第2ヒンジ部材を前記第1ヒンジ部材に対しスライドさせた場合には、前記切欠部と前記係合部とが係合することで前記開閉蓋の前記開口部に対する開放角度を所定の開放角度に維持可能に構成されていることを特徴とする車両。
【請求項2】
前記切欠部は、前記捲回部における前記開閉蓋の開放側の一部を切り欠いて形成されており、
前記開閉蓋の前記開口部に対する開放角度が前記所定の開放角度以下の場合には、前記切欠部と前記係合部とが近接する方向への前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対するスライドを、前記切欠部と前記係合部とが当接することで禁止することを特徴とする請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記切欠部に設けられるストッパ部と、
前記係合部に設けられ、前記切欠部と前記係合部とが係合した場合に、前記ストッパ部に係止されることで前記切欠部と前記係合部とが離間する方向への前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対するスライドを禁止する係止部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記切欠部または係合部は、それら切欠部と係合部とが近接する方向への前記第2ヒンジ部材の前記第1ヒンジ部材に対するスライドに伴って前記開閉蓋が開放側へ揺動するように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項3記載の車両。
【請求項5】
前記蝶番装置により前記車体に揺動可能に支持される開閉蓋は、反重力方向へ揺動することで前記開口部を開放する一方、重力方向へ揺動することで前記開口部を閉塞するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−38953(P2008−38953A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210903(P2006−210903)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】