説明

車体のバンパ構造

【課題】
金型作製費を低く抑えることにより、コスト低減に寄与することができ、さらには、エネルギー吸収体を破損した部分のみを交換することができ、加えて補修作業に要する時間も短縮することができる車体のバンパ構造を提供する。
【解決手段】
車体側のバンパービーム4と、このバンパービーム4に着脱自在に取り付けられるバンパーフェイシア8との間に、長さ方向に介在されるエネルギー吸収体6を、複数のブロック片20により構成するとともに、これらのブロック片20を長さ方向に並べたときに、1つのブロック片20と他の隣接するブロック片20との間が、孔28とピン30などか
ら構成される締結手段により一体化されることことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のバンパ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の前後には、ボディを小さな衝突から保護する目的でバンパが取り付けられている。
このバンパは、通常、車両側に固定されたバンパービーム(バンパーブラケット)と、このバンパービームに取り付けられたエネルギー吸収体と、このエネルギー吸収体の外方を覆うように装着されるバンパーフェイシア(バンパーカバー)とから構成されている。
【0003】
上記エネルギー吸収体は、回転角度、加速度、せん断力によるズレに対して、夫々基準を満たすことにより、より効果的なエネルギー吸収を行うことができ、歩行者の安全に寄与することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記エネルギー吸収体は、一体成形された発泡体もしくは射出成形品により構成されている。また、例えば、自動車のバンパは、搭載される車種により形状が異なることが多く、車種ごとに、金型を変えなければならないという問題もあった。
ところが、このようなエネルギー吸収体は長尺物であるため、金型により一体成形するには、金型自体が非常に大きくなり、金型作製費用が高くなるという問題があった。また、金型設計から完成に至るまでに多くの工期が必要になるという問題もあった。
また、射出成形による一体型のものは、機械的特性などが一義的に決められてしまうため、部分的に他の特性を付与したりすることができなかった。
【0005】
さらに、衝突などにより、バンパを一部修理しようとした場合に、表面のバンパーフェイシアは溶接などで修理することがあるとしても、これまで内部のエネルギー吸収体は、新たに取り寄せたエネルギー吸収体と交換してしまうのが一般的で、その場合には、壊れていない部分のエネルギー吸収体が無駄になり、また交換に要する時間も長くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑み、金型作製費を低く抑えることにより、コスト低減に寄与することができ、さらには、部分的に他の特性を付与することもでき、しかもエネルギー吸収体を破損した部分のみを交換することができ、加えて補修作業に要する時間を短縮することができる車体のバンパ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車体のバンパ構造は、
車体側のバンパービームと、このバンパービームに着脱自在に取り付けられるバンパーフェイシアとの間に、長さ方向略全長に渡って介在されるエネルギー吸収体を、複数のブロック片により構成するとともに、これらのブロック片を長さ方向に並べたときに、1つの
ブロック片と他の隣接するブロック片との間が、これらの間に構成される締結手段により一体化されることを特徴としている。
係る構成による本発明によれば、長尺物のエネルギー吸収体が分割されているため、金型の小型化を図ることができ、金型作製費用を大幅に削減することができる。
ここで、前記ブロック片は、内部に凹所を備えた殻状に形成されていること好ましい。
このような構成であれば、それ自体の形状から軽量化および材料費の低減を図ることがで
きるとともに、所定の強度を維持することができる。
ここで、前記ブロック片には、多数の窓が形成されていることが好ましい。
このような構成であれば、窓を構成する部分が、軽量化を促進しながら十分な強度を発揮することができる。
【0008】
また、前記締結手段は、前記ブロック片の一端部に形成された係合凹部と、この係合凹部に装着される被係合凹部とのスナップフィットで構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、隣接するブロック片同士の連結が容易であるとともに、交換作業なども容易に行うことができる。
また、本発明は、前記ブロック片には、前記バンパービームに着脱自在に取り付けるための取り付け部が設けられていることが好ましい。
【0009】
このような構成であれば、車体側への取り付けも容易である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車体のバンパ構造によれば、エネルギー吸収体が、長尺物ではなく、複数のブロック片の連結体により構成されているので、エネルギー吸収体を形成するための金型が大型になることがない。したがって、金型費用を大幅に削減することができる。さらに、金型を作製するための工期も短縮することができる。また、連結体のつなぎ部での変形に自由度があるため、車体のR形状への対応が良好である。これにより、様々な車種に対応することができる。さらに、ある部位に、他の特性を持たせたりすることも容易である。
【0011】
また、本発明のバンパ構造では、ブロック片が内部に凹所を備えた殻状に形成されていることから、軽量であることは勿論のこと、衝突した場合の衝撃力を効果的に吸収することができる。
さらに、本発明によれば、エネルギー吸収体を部分的に交換することができるので、交換に伴う材料コストを削減することができるのは、勿論のこと、補修時間なども短縮することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る車体のバンパ構造ついて説明する。
図1および図2は本発明に係る車体のバンパ構造が採用された自動車を示したもので、図1は車両の前側を、図2は車両の後側を示している。図3は車体前部のバンパ構造を示した断面図で、図4は車体後部のバンパ構造を示した断面図である。
【0013】
すなわち、自動車2の基本骨格であるボディには、車両に傷がつくことを防ぐ目的で、バンパが設置されているが、最近のバンパは、金属製に代えてボディに一体化したデザインのポリプロピレンなどの樹脂によるものが主流となっている。そして、このようなバンパは、例えば、射出成形により成形されている。
【0014】
ところで、バンパは、一般に三層構造になっている。すなわち、図3に示したように、自動車の前部側では、車体側に固定されているバンパービーム4と、このバンパービーム4に着脱自在に取り付けられるエネルギー吸収体6と、このエネルギー吸収体6の外面を覆うバンパーフェイシア8とを備えている。また、車体の後部側では、図4に示したように、車体側に固定されているリアバンパービーム40と、このリアバンパービーム40に着脱自在に取り付けられるエネルギー吸収体42と、このエネルギー吸収体42の外面を覆うバンパーフェイシア44とから構成されている。そして、バンパーフェイシア8、44が、ボディと一体化したデザインのポリプロピレンなどの樹脂により形成されている。
【0015】
一方、内部に収容されるエネルギー吸収体6あるいはエネルギー吸収体42は、車体の前後部に、1つ設置されるものもあれば、図3に示したように、アッパーエネルギー吸収体6とロアーエネルギー吸収体6aのように、上側に一個、下側に一個と分割して配置される場合もある。図1および図3のロアーエネルギー吸収体6aは、そのうちの下側部分を示したもので、このロアーエネルギー吸収体6aは、車体側に固定されたリテーナ10に着脱自在に取り付けられている。
【0016】
ところで、これまでのエネルギー吸収体は、長尺物で一体に成形されていた。しかしながら、本発明では、エネルギー吸収体が、多数のブロック片に分割して構成されている。すなわち、図5(A)、(B)は、長尺物のエネルギー吸収体を構成する単位構成要素として、1つのブロック片20を示したものである。このブロック片20のように、本実施例では、エネルギー吸収体が水平方向に長い一体成型品ではなく、小型のブロック片20の連結体により構成されている。
【0017】
本実施例では、小型のブロック片20を多数用いて、例えば、アッパーエネルギー吸収体6、ロアーエネルギー吸収体6aあるいはリアエネルギー吸収体42などを構成している。
【0018】
以下、ブロック片20の構成について説明する。
このブロック片20は、上記したように、これまで長尺物であったエネルギー吸収体を複数の分割体から構成する一の構成単位を示したものであり、これらのブロック片20を長さ方向に並べたときに、長尺物のエネルギー吸収体6あるいは6aなどが構成される。
【0019】
ブロック片20は、図3、図4および図5などに示したように、内部に凹所20aを備えた殻状で、しかもその表面には、多数の窓22が並んで形成されている。この窓22の形状は、どのような形状であっても良いが、略均等に設けられていることが好ましい。さらに、図5(A),(B)に示したように、ブロック片20の前端部および後端部には、それぞれ水平方向に鍔部24、26が形成されている。そして、前端側の鍔部24には、一対の孔28が、後端側の鍔部26には、一対のピン30が、それぞれ形成されることにより、複数のブロック片20、20を一列に並べた場合に、両者の間にスナップフィットが構成されるようになっている。また、ピン30には、縦方向にすり割32が形成され、このすり割32が形成されることにより、ピン30を孔28内に挿入した場合に、ピン30が両側に拡開されることにより、ピン30の孔28からの抜けが防止される。
【0020】
本実施例では、このようなブロック片20を車体の幅方向に連結することにより、所定長さのエネルギー吸収体が構成されている。
ここで、自動車の車体側、すなわちプラットホーム側には、図3に示したように車体幅方向にバンパービーム4が延出され、バンパービーム4の下方に同じくリテーナ10が延出されている。そして、アッパーエネルギー吸収体6およびその下方のロアーエネルギー吸収体6aの外面が、バンパーフェイシア8により覆われている。
【0021】
また、アッパーエネルギー吸収体6あるいはロアーエネルギー吸収体6aを車体側に着脱自在に取り付けるには、ブロック片20に適宜な形状の取り付け部を設け、この取り付け部をバンパービーム4、リテーナ10に設けた係合部に着脱自在に取り付ければよい。なお、この取り付け部は、例えば、棒状の脚部であり、この棒状の脚部をバンパービーム4側に設けた係合部としての孔に差し込めば良い。このようにして、エネルギー吸収体を車体側に取り付けることができる。
【0022】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、一対のピン30と一対の孔28とによりスナップフィットが構成されているが、本発明は、これに限定されない。
【0023】
例えば、図6は本発明の他の実施例により構成されるブロック片50を示したもので、このブロック片50では、他の構成要素からなるスナップフィットが採用されている。
このブロック片50の前端部には、縦方向の溝52が形成された突起体54が両端部に形成されている。そして、この突起体54には、外方に向かって孔56が形成されている。
【0024】
一方、ブロック片50の後端部には、上記した突起体54の縦方向の溝52内に挿入することのできる突条58が両端部に形成され、この突条58には、外面に向かって突部60がそれぞれ形成されている。
【0025】
このようなブロック片50を一列に並べて連結すれば、突条58が溝52内に挿入されたときに、突条58の突部60が水平方向に突出される。したがって、この実施例では、複数個のブロック片50を両サイドで係止することにより一体化することができる。このような構成のスナップフィットであっても、長尺物のバンパを構成することができる。
【0026】
また、上記実施例では、車体の前部側において、エネルギー吸収体が高さ方向に2つに分けて配置されているが、勿論、一個だけで構成されるものであっても有効である。
さらに、上記実施例では、ブロック片20、あるいは50を横一列に並べる例について説明したが、ブロック片をさらに分割して格子状に配列することもできる。
【0027】
このように複数個のブロック片20,50により、長尺物のエネルギー吸収体を構成すれば、例えば、自動車の前部が他の部材に衝突して、部分的に破損してしまったような場合には、その部分のみを交換すれば良い。これにより、材料費を削減することができるとともに、交換に要する時間を短縮することができ、ひいては補修費を低減することができる。
【0028】
また、コーナ部や車体の幅方向中央部など、特に、衝突し易い箇所のエネルギー吸収を得たい場合には、その部分のブロック片に、所定の特性を備えたブロック片を組み込めばよい。これにより、射出成形による一体型では得られなかった特性や要求を付与することができる。
【0029】
さらに、本発明によれば、これまでのように、長尺一体型ではないので、金型を小型化することができる。したがって、コストの低減に寄与する。また、連結体は、自由度があるため、バンパーフェイシアへの形状対応性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は本発明の一実施例によるバンパ構造を備えた車体の正面図である。
【図2】図2は同実施例によるバンパ構造を備えた車体の背面図である。
【図3】図3は図1に示した車体前部の断面図である。
【図4】図4は図2に示した車体後部の断面図である。
【図5】図5(A)は本発明の一実施例に係るバンパ構造を構成するブロック片の一端部側の斜視図、図5(B)は同ブロック片の他端側の斜視図である。
【図6】図6は本発明の他の実施例に係るバンパ構造を構成するブロック片の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
2 自動車
4 バンパービーム
6,6a エネルギー吸収体
8 バンパーフェイシア
10 リテーナ
20 ブロック片
20a 凹所
22 窓
24 鍔部
26 鍔部
28 孔
30 ピン
32 すり割
40 リアバンパービーム
42 エネルギー吸収体
44 バンパーフェイシア
50 ブロック片
52 溝
54 突起体
56 孔
58 突条
60 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側のバンパービームと、このバンパービームに着脱自在に取り付けられるバンパーフェイシアとの間に、長さ方向に介在されるエネルギー吸収体を、複数のブロック片により構成するとともに、これらのブロック片を長さ方向に並べたときに、1つのブロック片
と他の隣接するブロック片との間が、これらの間に構成される締結手段により一体化されることを特徴とする車体のバンパ構造。
【請求項2】
前記ブロック片は、内部に凹所を備えた殻状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体のバンパ構造。
【請求項3】
前記ブロック片には、多数の窓が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体のバンパ構造。
【請求項4】
前記締結手段は、前記ブロック片の一端部に形成された係合凹部と、この係合凹部に装着される被係合凹部とのスナップフィットで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車体のバンパ構造。
【請求項5】
前記ブロック片には、前記バンパービームに着脱自在に取り付けるための取り付け部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車体のバンパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−82712(P2006−82712A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270012(P2004−270012)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(390000103)日本ジーイープラスチックス株式会社 (36)