説明

車内環境設定装置及びプログラム

【課題】車に乗る人の好みに応じて車内環境の設定を自動的に行えるようにする。
【解決手段】車内の座席毎の環境を設定する車内環境設定装置であって、乗車員を特定する情報を検知する検知手段(11)と、座席毎に車内環境条件を設定する設定手段(12)と、前記検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、当該乗車員が設定した座席毎の車内環境条件とを対応付けて記憶する記憶手段(14)と、前記検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とを比較し、比較結果に応じて設定手段を制御する制御手段(13)とを備え、前記制御手段は、検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とが一致したとき、記憶手段に記憶された当該乗車員が設定した車内環境条件に基づいて設定手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアコンの温度等車内環境を乗車員に応じて設定する車内環境設定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の各シート毎にエアコンの温度設定、シートの角度、シートベルトの高さを設定できる車両が普及しており、また、車に乗る人の好みに応じて個別にカーシートの温度調節をできるようにしたものも提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−199058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
各シート毎にエアコンの温度設定、シートの角度、シートベルトの高さを設定できる車両の場合でも、人によって温度設定等の好みが異なるため、ドライブインなどでの休憩の後、別の座席に移動した場合は再度設定をしなおさなければならい。このことは、特許文献1のように個別にカーシートの温度調整をできるようにした場合も同様である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、車に乗る人の好みに応じてエアコンの温度設定、シートの角度、シートベルトの高さ等の車内環境の設定を自動的に行えるようにすることを目的とする。
本発明は、車内の座席毎の環境を設定する車内環境設定装置であって、乗車員を特定する情報を検知する検知手段と、座席毎に車内環境条件を設定する設定手段と、前記検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、当該乗車員が設定した座席毎の車内環境条件とを対応付けて記憶する記憶手段と、前記検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とを比較し、比較結果に応じて設定手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とが一致したとき、記憶手段に記憶された当該乗車員が設定した車内環境条件に基づいて設定手段を制御することを特徴とする。
また、本発明は、車内の座席毎の環境を設定する車内環境設定装置を制御するプログラムであって、検知手段で乗車員を特定する情報を検知するステップ、検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、当該乗車員が設定した座席毎の車内環境条件とを対応付けて記憶するステップ、検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とを比較するステップ、検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とが一致したとき、記憶手段に記憶された当該乗車員が設定した車内環境条件に基づいて車内環境を設定するステップをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、乗車員を特定する情報と当該乗車員が設定した座席毎の車内環境条件を記憶しておくことにより、乗車員を特定する情報が記憶されている人が乗車したとき、記憶されている車内環境条件に基づいて車内環境を自動的に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態に係る車内環境設定装置の例を示すブロック図である。車両1には、エアコンの温度、シートの角度、シートベルトの高さ、オーディオの音量等の車内環境の条件を自動で設定する車内環境設定装置10が設けられている。
車内環境設定装置10は、乗車員(乗車した人)を特定するための検知手段11を備えている。検知手段11としては、例えば、各シートの下に組み込み、乗車した人がシートに座ったときの体重を測定する体重計、フロントピラー、ルームミラー、ヘッドレストなどに組み込みんで人の顔を撮影するカメラや角膜を撮影する高精度カメラ、人の体温や体温分布を測定するためのサーモグラフィー、シートの背もたれ部分に組み込んで腰や肩の位置(距離)、肩幅などを計測するための体形センサ、シートのへこみ具合を検出するセンサ、ドアノブやシートベルトの金具部分に組み込んで指紋を検出する指紋センサ等からなり、これらの複数の検知手段によって乗車した人を特定する情報を検知する。
【0007】
なお、体重は、ひざの上に載せた荷物や休憩時におけるトイレや食事などで変化する可能性が高いので、数キログラムの誤差を考慮する必要があるとともに、誤差があることを考慮して、体重差が少ない人が複数いる場合は認識に使用しない。また、人の体温は車を降りて休憩などすると著しく変化する可能性が高いので、体温の値ではなく体温分布の面積により体格を認識して識別に利用することが望ましい。
また、ドアノブやシートベルトの金属部分から指紋を検出する場合、状況によってはシートに座る本人の指紋が採取できるとは限らないので、以下の条件の場合に使用する。
・内側のドアノブを使って閉めた場合、内側の指紋センサで採取された人は、最寄りのシートの席に座ったとする。
・ドアが閉まっている場合に、シートベルトの金具から採取された指紋は、そのシートベルトの対象のシートの人とする。
【0008】
設定手段12はエアコンの温度設定、オーディオの音量設定、電動シートの角度や高さの設定、シートベルトの高さの設定等の車内環境の条件を設定するためのものである。
【0009】
制御手段13はコンピュータ等からなり、検知手段11、設定手段12を制御するとともに、検知手段11で検知した乗車員を特定する情報、乗車員が設定手段12を操作して設定した車内環境条件を取り込み、これらを対応付けて記憶手段14に格納する。例えば、図2に示すように、体重計、カメラ、サーモグラフィー、体形センサ、指紋センサ等の複数の手段で検知した情報a1、a2、a3、a4……から車に乗ったAさんが特定できた場合には、A(a1、a2、a3、a4……)をAさん特定情報とし、これにAさんが設定したエアコンの温度、オーディオの音量、電動シートの角度や高さ、シートベルトの高さ等の車内環境条件(a11、a12、a13、a14……)を対応付けて記憶手段14に格納する。同様に、新たに、Bさん、……Nさんが特定できた場合には、Bさん、……Nさんの特定情報と、Bさん、……Nさんにより設定された車内環境条件を対応つけて記憶手段14に格納する。なお、乗車員が設定しなかった条件については、デフォルト値に設定される。
【0010】
このように、乗車員特定情報と、乗車員が設定した車内環境条件を対応付けて記憶することで、ある人が乗車し、検知手段11でその人を特定する情報が検知されると、制御手段13は検知した人を特定する情報と、記憶手段14に記憶されている乗車員を特定するる情報とを比較し、例えば、Aさんを特定する情報が一致すると、乗車した人がAさんであると認識する。同時に、制御手段13はAさんに対応付けて記憶されている車内環境条件を読み出し、この条件に基づいて設定手段12を制御し、Aさんが操作しなくても自動でAさんに応じた車内環境条件に設定される。なお、乗車員が特定されて車内環境条件を自動設定したとき、乗車員が自動設定された条件を設定し直した場合には、設定し直した条件により記憶手段のデータを上書きすることで、最新の設定条件のデータを記憶するようにする。また、同一人であっても前部座席と後部座席のように座席が異なったとき、異なる条件に車内環境を設定する場合もあるので、車内環境条件を座席毎に持つようにすれば一層きめ細かな車内環境の設定を行うことができる。また、エアコンの温度のように季節によって変化するものについては、同一乗車員に対して季節ごとに異なる車内環境条件を持つようにしてもよい。
【0011】
次に、ドライブの途中に休憩して下車し、再度車に乗ったとき座席が入れ替わった場合に、座席の変更に対応して車内環境の設定を自動的に変更する例について図3〜図6により説明する。
図3に示すような4つの座席のある車の場合を例にとると、例えば、前部左席に座っていた人と、後部左席に座っていた人が席替えをした場合、前部左席のエアコンの温度設定と、後部左席のエアコンの温度設定とを自動的に入れ替える。
【0012】
図4は3人乗車の場合であり、図4(a)に示すように、前部右席にAさん、前部左席にBさん、後部左席にCさんが座っていることが検知した乗車員特定情報から把握され、各人が設定した車内環境の条件は記憶手段に格納されているものとする。
図4(b)は、検知した乗車員特定情報から後部左席にいたCさんが前部左席に移動し、前部左席にいたBさんが後部左席に移動したことが認識され、それに伴って、前部左席の車内環境を後部左席にいたCさんの設定条件に変更し、後部左席の車内環境を前部左席にいたBさんの設定条件に変更する。
図4(c)は、検知した乗車員特定情報から後部左席にいたCさんが前部左席に移動し、前部左席にいたBさんがいなくなっていることが認識され、それに伴って、前部左席の車内環境を後部左席にいたCさんの設定条件に変更する。
【0013】
図5は図4の場合と同様3人乗車の場合で、人の区別がつく場合とつかない場合の例を示している。
図5(a)は、前部右席にAさん、前部左席にBさん、後部左席にCさんが座っていることが検知した乗車員特定情報から把握され、各人が設定した車内環境の条件は記憶手段に格納されているものとする。
図5(b)は検知した乗車員特定情報から後部左席にいたCさんが、前部左席に移動したことは認識されたが、Cさんと区別がつかないDさんが後部左席に乗ってきた場合であり、CさんとDさんの区別が付けられないため、車内環境の設定条件は変更しない。
図5(c)は検知した乗車員特定情報から後部左席にいたCさんが、前部左席に移動し、Cさんとは区別がつくEさんが後部左席に乗ってきた場合であり、人の区別が付けられてCさんが特定できるので、前部左席の車内環境を後部左席にいたCさんの設定条件に変更する。
【0014】
図6は同様に3人の乗車の場合で、人の移動前の時点で2人の区別がつかない例を示している。
図6(a)は前部左席にAさん、前部右席にDさん、後部左席にCさんが座っているが、検知した乗車員特定情報からはAさんのみ区別して把握され、DさんとCさんの区別がつかないことを示している。
図6(b)は検知した乗車員特定情報から前部左席にいたAさんが、前部右席へ移動したことは認識されたが、CさんとDさんの区別が付けられないため、前部右席の車内環境を前部左席にいたAさんの設定条件に変更するのみで、CさんとDさんについては設定の変更はしない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車内環境設定装置の例を示すブロック図である。
【図2】乗車員特定情報と車内環境条件との対応付けを示す図である。
【図3】4座席のある車を示す図である。
【図4】3人乗車の場合の人の移動と設定変更を説明する図である。
【図5】3人乗車の場合の人の移動と設定変更を説明する他の例を示す図である。
【図6】3人乗車の場合の人の移動と設定変更を説明する他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1…車両、10…車内環境設定装置、11…検知手段、12…設定手段、13…制御手段、14…記憶手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の座席毎の環境を設定する車内環境設定装置であって、
乗車員を特定する情報を検知する検知手段と、
座席毎に車内環境条件を設定する設定手段と、
前記検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、当該乗車員が設定した座席毎の車内環境条件とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とを比較し、比較結果に応じて設定手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とが一致したとき、記憶手段に記憶された当該乗車員が設定した車内環境条件に基づいて設定手段を制御することを特徴とする車内環境設定装置。
【請求項2】
車内の座席毎の環境を設定する車内環境設定装置を制御するプログラムであって、
検知手段で乗車員を特定する情報を検知するステップ、
検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、当該乗車員が設定した座席毎の車内環境条件とを対応付けて記憶するステップ、
検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とを比較するステップ、
検知手段で検知した乗車員を特定する情報と、記憶手段に記憶された乗車員を特定する情報とが一致したとき、記憶手段に記憶された当該乗車員が設定した車内環境条件に基づいて車内環境を設定するステップ、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−262654(P2009−262654A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112083(P2008−112083)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】