説明

車室内空気状態報知装置

【課題】車室内の空気汚染状態をいち早く報知することができる車室内空気状態報知装置を提供する。
【解決手段】車室内二酸化炭素の濃度を検出するガスセンサ16を設ける。そのガスセンサ16による検出値が所定レベルに達したときに点灯する表示ランプ17を、特に運転者以外の乗員に認識可能なように車室内天井部11等の箇所に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用車等の車両において、車室内の空気の汚染状態を検出して報知する車室内空気状態報知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の車室内空気状態報知装置としては、例えば、特許文献1に開示されるような構成のものが提案されている。すなわち、この従来装置においては、センサにより車室内の酸素濃度や二酸化炭素濃度が検出され、その検出値が所定レベルに達したときに、音響式アラーム装置または光学式アラーム装置が作動されて、車室内の空気状態が音または光で報知されるように構成されている。
【特許文献1】特開平4−228316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1の従来装置において、アラーム装置が音響式である場合には、エンジンノイズ,ロードノイズ等の各種のノイズ、あるいは車内ステレオの音響等により、アラーム報知音がかき消されて、その報知が乗員には認識されないおそれがある。
【0004】
一方、アラーム装置が光学式である場合には、アラーム用のランプがインストルメントパネルのメータ周辺に組み込まれるのが普通である。しかしながら、車室内の例えば酸素濃度の低下は、特に運転者以外に乗員が存在する多人数乗車の際に発生しやすい。この場合、運転者は運転に専念して、前方を凝視しているため、ランプの点灯に気付きにくくなる。また、運転者以外の乗員は、メータ周辺のランプの点灯を認識するのが困難である。このため、車室内の空気の汚染が長時間放置されるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、運転者以外の乗員が車室内の空気の汚染状態をいち早く認識することができる車室内空気状態報知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車室内の空気の汚染状態を検出する検出手段と、少なくとも運転者以外の乗員が視認可能な箇所に設けられ、前記検出手段が車室内空気の汚染を検出した場合に点灯または点滅する視覚表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
従って、この発明の車室内空気状態報知装置においは、車室内の空気の汚染が検出されたとき、少なくとも運転者以外の乗員が認識可能な箇所において、視覚表示手段が点灯または点滅される。よって、車室内の空気汚染状態を認識することができて、換気等の対応をいち早く行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、検出手段は、酸素濃度の低下及び二酸化炭素濃度の上昇のうちの少なくとも一方を検出することを特徴とする。従って、車室内の空気の酸素濃度あるいは二酸化炭素濃度を正常に保つことができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記視覚表示手段は表示ランプよりなり、車室の天井部に設けられたことを特徴とする。従って、表示ランプは、特に後部座席等に着座している乗員によって容易に認識することができ、その乗員は車室内の空気の汚染を適切に認識できる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記視覚表示手段は室内ランプとは異なる色に発光することを特徴とする。従って、乗員は表示ランプの点灯を室内ランプの点灯と誤ることなく認識でき、車室内の汚染状態を適切に認識できる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記視覚表示手段は、汚染濃度が所定のハイレベルまたはローレベルに達したときに点灯または点滅され、汚染濃度が前記ハイレベルまたはローレベルから離れた所定のローレベルまたはハイレベルに達したときに点灯または点滅が停止されることを特徴とする。従って、このように構成すれば、視覚表示手段のチャタリングを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、少なくとも運転以外の乗員が車室内の空気状態を適切に認識することができて、車室内の空気の汚染に対して対応できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態では、乗用車における車室内の天井部11の前部にオーバーヘッドコンソール12が配置され、そのオーバーヘッドコンソール12には運転席及び助手席の乗員の手許等を白色系の光で照明するための室内灯としてのマップランプ13が設けられている。オーバーヘッドコンソール12の前方位置には、ルームミラー14が配置されている。
【0014】
前記オーバーヘッドコンソール12においてマップランプ13の近傍には、車室内空気状態報知装置15が組み込まれている。この車室内空気状態報知装置15には検出手段としてのガスセンサ16が設けられ、このガスセンサ16は車室内の二酸化炭素濃度を検出する。車室内空気状態報知装置15には視覚表示手段としての表示ランプ17が設けられ、ガスセンサ16の検出値が予め設定された所定レベルに達したとき、マップランプ13の白色系の光とは異なった赤色系の光で点灯して空気汚染状態を報知する。車室内空気状態報知装置15にはブザー18が設けられ、ガスセンサ16の検出値が予め設定された所定レベルに達したとき、報知音を発生して空気汚染状態を報知する。この実施形態においては、後述するように、二酸化炭素濃度が1%のハイレベルまで上昇した場合に表示ランプ17が点灯するとともに、ブザー18が報知音を発生し、0.5%のローレベルまで下降した場合に表示ランプ17が消灯するとともに、ブザー18の報知音が停止する。
【0015】
次に、前記車室内空気状態報知装置15の回路構成について説明する。図2に示すように、制御装置21は制御手段を構成し、車室内空気状態報知装置15全体の動作を制御する。記憶装置22は、前記ハイレベル及びローレベルの二酸化炭素濃度値等の各種のデータを記憶している。
【0016】
前記制御装置21は、車両の運転時にガスセンサ16に対して車室内の二酸化炭素濃度を検出させて、その検出値を受け入れる。そして、制御装置21は、ガスセンサ16からの検出値が記憶装置22に記憶されたハイレベルの二酸化炭素濃度値に達したとき、表示ランプ17を点灯させるとともにブザー18を動作させて、車室内の空気汚染状態を光及び音で報知する。また、制御装置21は、表示ランプ17及びブザー18の動作中に、ガスセンサ16からの検出値が記憶装置22に記憶されたローレベルの二酸化炭素濃度値になったとき、表示ランプ17の点灯及びブザー18の動作を停止させる。
【0017】
従って、制御装置21は、多人数乗車等により、車室内の空気が汚染されて、ガスセンサ16からの二酸化炭素濃度の検出値が1%まで上昇したときに、表示ランプ17及びブザー18を動作させ、二酸化炭素濃度の検出値が0.5%まで低下したときに、表示ランプ17及びブザー18の動作を停止させる。
【0018】
以上のように構成した第1実施形態は以下の効果を発揮する。
(1) ガスセンサ16、表示ランプ17及びブザー18よりなる車室内空気状態報知装置15が車室内天井部11のオーバーヘッドコンソール12に設けられている。そして、車室内の二酸化炭素濃度が所定レベルに達したとき、表示ランプ17が点灯されるとともにブザー18が動作される。よって、助手席や後部座席の乗員は、車室内の空気汚染状態をただちに認識することができる。従って、車室内の空気の汚染状態の認識を運転者に依存する必要がなく、換気等の対応をいち早く行うことができる。なお、表示ランプ17は運転者の頭上で点灯するとともに、ブザー18も報知動作を行うため、運転者も車室内空気の汚染状態を容易に認識できる。
【0019】
(2) 車室内空気の汚染状態が表示ランプ17の点灯によって報知されるため、エンジンノイズやロードノイズ等が大きくても、汚染状態を容易に認識できる。
(3) 表示ランプ17は赤系に点灯するため、白系に点灯するマップランプ13との混同を避けて誤認識を防止できる。
【0020】
(4) 表示ランプ17がオーバーヘッドコンソール12上に設けられているため、乗員、特に後部座席に着座している乗員は、表示ランプ17の点灯を自然にいちはやく確認することができ、室内汚染を適切に認識できる。従って、換気等の処置を好適に講じることができる。
【0021】
(5) 二酸化炭素濃度の検出値が1%まで上昇したときに、表示ランプ17及びブザー18が動作され、検出値が0.5%まで低下したときに、表示ランプ17及びブザー18の動作が停止されるようになっている。つまり表示動作開始の検出値と表示動作停止の検出値との間が離れているため、表示ランプ17及びブザー18が短い間隔で動作・停止を繰り返すチャタリングを防止できる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態においては、第1実施形態と異なる構成、作用及び効果を中心に説明する。
【0023】
この第2実施形態においては、ガスセンサ16として、酸素濃度を検出するセンサ(酸素センサ)が用いられている。そして、制御装置21は、ガスセンサ16からの酸素濃度の検出値が19.5%のローレベルまで低下したときに、表示ランプ17及びブザー18を動作させ、酸素濃度の検出値が20.0%のハイレベルまで上昇したときに、表示ランプ17及びブザー18の動作が停止させる。また、この第2実施形態においては、図3に示すように、車室内空気状態報知装置15の表示ランプ17がルームミラー14の外周に設けられている。従って、表示ランプ17として、環状の発光体が用いられ、この環状の発光体としては、例えばエレクトロルミネッセンスを環状に形成したものが用いられる。
【0024】
従って、この第2実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(6) 表示ランプ17がルームミラー14に設けられているため、運転者以外の乗員だけではなく、運転者も表示ランプ17の表示状態を容易に認識できる。
【0025】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を説明する。
この第3実施形態においては、図4に示すように、車室内天井部11の中央部に、車室内を白色系の光で照明するためのルームランプ25のユニット25Aが配置されている。ルームランプユニット25Aには車室内空気状態報知装置15が組み込まれ、その車室内空気状態報知装置15には、前記第1実施形態と同様なガスセンサ16、表示ランプ17及びブザー18が設けられている。
【0026】
従って、この第3実施形態においては、以下の効果がある。
(7) 表示ランプ17及びブザー18が天井部11の中央部に設けられているため、後部座席の乗員は同表示ランプ17及びブザー18の動作及び停止をより確実に認識できる。
【0027】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を説明する。
この第4実施形態においては、図5に示すように、前記第1実施形態におけるマップランプ13または第3実施形態におけるルームランプ25が、シアン、マゼンタ、イエローの3色の発光部26,27,28を備えた発光ダイオードから構成されている。そして、通常時には3色の発光部26,27,28が同時に点灯されて、マップランプ13またはルームランプ25として白色系の光が発生され、ガスセンサ16の検出値が所定レベルに達したときには、シアンの発光部26のみが点灯されて、車室内空気状態報知装置15の表示ランプ17として赤色系の光が発生される。
【0028】
従って、この第4実施形態においては以下の効果がある。
(8) マップランプ13またはルームランプ25が車室内空気状態報知装置15の表示ランプ17の機能を兼備するため、車室内空気状態報知装置15の構成を簡略化することができる。
【0029】
(第5実施形態)
次に、この発明の第5実施形態を説明する。
この第5実施形態においては、前記第1実施形態のブザー18に代えて、図2に鎖線で示すように、助手席及び後部座席に、乗員の着座を検出するための着座センサ29と、乗員に振動を体感させるためのバイブレータ30とが組み込まれている。そして、ガスセンサ16からの酸素濃度や二酸化炭素濃度の検出値が所定レベルに達したとき、表示ランプ17が点灯表示される。これと同時に、着座センサ29がオンされている座席のバイブレータ30が動作されて、車室内の空気汚染状態が光と座席の振動とで報知される。
【0030】
従って、この第5実施形態においては、以下の効果がある。
(9) 車室内の空気汚染状態が光学的表示のほかに体感的にも報知されるため、空気汚染状態をより確実に認識することができる。
【0031】
(第6実施形態)
次に、この発明の第6実施形態を説明する。
この第6実施形態においては、図2に鎖線で示すように、ガスセンサ16からの酸素濃度または二酸化炭素濃度の検出値が所定レベルに達したとき、制御装置21により表示ランプ17が点灯表示されるとともに、ベンチレーションシステムのダンパ用モータ31が動作される。このダンパ用モータ31は、車両のベンチレーションシステムのダンパ(図示しない)を切替え動作させて、ベンチレーションシステムを外気導入状態あるいは内気循環状態に切り替えるものである。そして、車室内の汚染濃度が所定レベルに達するとともに、ベンチレーションシステムのダンパが内気循環状態にあるときに、ダンパ用モータ31の駆動により同ダンパが外気導入側に切替え動作される。車室内の汚染濃度が所定レベルまでに低下した場合には、ダンパ用モータ31の駆動によりダンパが内気循環状態に復帰される。
【0032】
従って、この第6実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(10) 車室内の空気が所定レベルの汚染状態になったとき、車室内の換気が自動的に行われるため、乗員が換気を行う必要がなく、その手間を省くことができる。
【0033】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 車室内空気状態報知装置15のガスセンサ16として、酸素濃度及び二酸化炭素濃度を同時に検出する2種類のセンサを設けること。このように構成すれば、車室内の空気状態をより正常に保つことができる。
【0034】
・ 車室内空気状態報知装置15のガスセンサ16として、酸素や二酸化炭素以外のガス、例えばホルムアルデヒドガスを検出するセンサを設けること。このように構成すれば、車室内の空気状態をより正常に保つことができる。
【0035】
・ ガスセンサ16からの検出値が所定レベルに達したとき、表示ランプ17が点滅表示されるように構成すること。このように構成すれば、汚染状態の認識がより確実になる。
【0036】
・ ガスセンサ16から検出信号が出力されない場合等のように、ガスセンサ16が故障した場合に、故障を報知するために、表示ランプ17が点滅表示されるように構成すること。従って、乗員はシステム異常状態をただちに認識できる。
【0037】
・ 車室内空気状態報知装置15の表示ランプ17を、各座席と対応して設けられたパワーウィンドウ用スイッチのノブに組み込むこと。この場合、ガスセンサ16からの検出値が所定レベルに達したとき、表示ランプ17が点滅表示されるように構成することが好ましい。このように構成すれば、車室内の空気が汚染されたとき、乗員に対してウィンドウガラスの開放が促される。
【0038】
・ 車室内空気状態報知装置15の視覚表示手段として液晶表示装置を設け、車室内の汚染濃度が所定レベルに達したとき、文字や記号表示により空気汚染状態を報知して換気を促すように構成すること。
【0039】
・ ブザー18に代えて音声発生装置を設け、車室内の汚染濃度が所定レベルに達したとき、合成音声等により空気汚染状態を報知して換気を促すように構成すること。
・ 表示ランプ17は、それ自身が点灯または点滅するだけではなく、周囲を赤色によって明るく照らす程度の光量を有するように構成すること。従って、乗員は空気汚染状態をより確実に認識できる。
【0040】
・ 車室内の汚染濃度が所定レベルに達したとき、パワーウィンドウのモータが動作されて、少なくとも1箇所のウィンドウガラスが開放されるように構成すること。従って、車室内空気の汚染がただちに解消される。
【0041】
・ 車室内の空気の汚染濃度が所定レベルに達したときに、酸素を放出したり、二酸化炭素を吸着したりする装置を車両に搭載すること。
・ 空気の汚染を表示する表示ランプ17をリヤドア等のドアトリムに設けること。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の車室内空気状態報知装置を備えた車両の室内天井部を示す部分斜視図。
【図2】図1の車室内空気状態報知装置の回路構成を示すブロック図。
【図3】第2実施形態の車室内空気状態報知装置を備えた車両の室内天井部を示す部分斜視図。
【図4】第3実施形態の車室内空気状態報知装置を備えた車両の室内天井部を示す部分斜視図。
【図5】第4実施形態の車室内空気状態報知装置のランプを示すブロック図。
【符号の説明】
【0043】
11…車室内天井部、12…マップランプ装置、13…マップランプ、14…ルームミラー、15…車室内空気状態報知装置、16…ガスセンサ、17…視覚表示手段としての表示ランプ、18…ブザー、21…制御装置、22…記憶装置、25…ルームランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空気の汚染状態を検出する検出手段と、
少なくとも運転者以外の乗員が視認可能な箇所に設けられ、前記検出手段が車室内空気の汚染を検出した場合に点灯または点滅する視覚表示手段とを備えたことを特徴とする車室内空気状態報知装置。
【請求項2】
前記検出手段は、酸素濃度の低下及び二酸化炭素濃度の上昇のうちの少なくとも一方を検出することを特徴とする請求項1に記載の車室内空気状態報知装置。
【請求項3】
前記視覚表示手段は表示ランプよりなり、車室の天井部に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の車室内空気状態報知装置。
【請求項4】
前記視覚表示手段は室内ランプとは異なる色に発光することを特徴とする請求項3に記載の車室内空気状態報知装置。
【請求項5】
前記視覚表示手段は、汚染濃度が所定のハイレベルまたはローレベルに達したときに点灯または点滅され、汚染濃度が前記ハイレベルまたはローレベルから離れた所定のローレベルまたはハイレベルに達したときに点灯または点滅が停止されることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の車室内空気状態報知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−132814(P2008−132814A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318643(P2006−318643)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】