説明

車庫入れガイド装置

【目的】 車両の自動車庫入れ時に,よりベテランに近い制御を行うことのできる車庫入れガイド装置。
【構成】 本装置1は,車庫入れ時に車両が走行可能な走行路及びベストウエイを絶対座標上で記憶しておく記憶部2と,上記絶対座標上での車両の現在位置角度を検出する距離センサ3及び方位センサ4と,上記検出された車両の現在位置角度と,上記記憶された車両の走行路及びベストウエイとに基づいて,車両がベストウエイから外れたか又はベストウエイ内にあるとの状況に応じて少なくとも相対位置角度を演算する演算部5と,この演算された車両の相対位置角度を条件部,車庫入れに必要とされる車両のステアリング操作量を結論部としてファジィ推論する推論部6とを具備している。上記構成により,車両の自動車庫入れ時に,よりベテランに近いファジィ制御が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,車庫入れガイド装置に係り,詳しくは車両をファジィ制御して車庫入れする車庫入れガイド装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来は,車両(モデルカー)をファジィ制御して車庫入れする場合,図7に示すように,車両の走行路壁からの距離と,車両の走行路壁に対する傾きとをパラメータとして前件部に持ったファジィルールにより,ある1本の線に沿って制御を行ってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記したような車庫入れガイド装置では,車両をある1本の線に沿って走行するように制御するが,車両は,図7中の走行路壁からなる距離が異なる状態A,B,Cあるいは走行路壁との傾きを持った状態Kから発進する場合もあり,人間が運転した場合,常に1本の線に沿って走行するとは考えにくい。本発明は,このような従来の技術における課題を解決するために車庫入れガイド装置を改良し,車両の自動車庫入れ時に,よりベテランに近い制御を行い得る車庫入れガイド装置を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は,少なくとも車庫入れ時に車両が走行可能な走行路及び車両が簡単に走行することのできるモデル走行領域を絶対座標上で記憶しておく記憶手段と,上記絶対座標上での車両の現在位置角度を検出する検出手段と,上記検出された車両の現在位置角度と上記記憶された車両の走行路及びモデル走行領域とに基づいて,車両がモデル走行領域から外れた位置にある時は,少なくともモデル走行領域外の走行路の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とを演算し,車両がモデル走行領域内にある時は,少なくともモデル走行領域の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とを演算する演算手段と,上記演算された車両の相対位置角度を条件部,車庫入れに必要とされる車両のステアリング操作量を結論部としてファジィ推論する推論手段とを具備した車庫入れガイド装置として構成されている。
【0005】
【作用】本発明によれば,少なくとも車庫入れ時に車両が走行可能な走行路及び車両が簡単に走行することのできるモデル走行領域が記憶手段により絶対座標上で記憶される。上記絶対座標上での車両の現在位置角度が検出手段により検出される。上記検出された車両の現在位置角度と,上記記憶された車両の走行路及びモデル走行領域に基づいて,演算手段により車両がモデル走行領域から外れた位置にある時は,少なくともモデル走行領域外の走行路の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とが演算され,車両がモデル走行領域内にある時は,少なくともモデル走行領域の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とが演算される。上記演算された車両の相対位置角度を条件部,車庫入れに必要とされる車両のステアリング操作量を結論部として推論手段によりファジィ推論される。このようにして,車両の自動車庫入れ時に,よりベテランに近い制御がなされる。
【0006】
【実施例】以下添付図面を参照して,本発明を具体化した実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここに,図1は本発明の一実施例に係る車庫入れガイド装置の概略構成を示す模式図,図2はベストウエイの決定方法を示す説明図,図3及び図4は相対位置角度の定義例を示す説明図,図5はファジィルール例を示す説明図,図6は制御例を示す説明図である。図1に示すごとく,本実施例に係る車庫入れガイド装置1は,少なくとも車庫入れ時に車両が走行可能な走行路及び車両が簡単に走行することのできるモデル走行領域を絶対座標上で記憶しておく記憶部2(記憶手段に相当)と,上記絶対座標上での車両の現在位置角度を検出する距離センサ3及び方位センサ4(いずれも検出手段に相当)と,上記検出された車両の現在位置角度と上記記憶された車両の走行路及びモデル走行領域とに基づいて,車両がモデル走行領域から外れた位置にある時は,少なくともモデル走行領域外の走行路の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とを演算し,車両がモデル走行領域内にある時は,少なくともモデル走行領域の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とを演算する演算部5(演算手段に相当)と,上記演算された車両の相対位置角度を条件部,車庫入れに必要とされる車両のステアリング操作量を結論部としてファジィ推論する推論部6(推論手段に相当)とを具備している。このうち,演算部5と推論部6とは図中の計算機内に構築される実行形式のプログラムにより具現化される。尚,オペレータは操作部7から装置1に命令等を入力し,制御結果をCRT8により確認することができる。
【0007】ところで,従来装置では,車両をある1本の線に沿ってファジィ制御するものであったが,本装置1では,次のようなモデル走行領域(ベストウエイ)を設定し,このベストウエイに沿った制御を行うようにした。先ず,図2(1)に示すように,車両をA〜Cの位置におき,5人の人間に車庫入れをしてもらい,車庫入れ開始から終了までの総操舵角(ステアリング操作量)の一番少ないものがベテランの運転であると考える。その結果,図2(2)に示すような軌跡が得られた。そこで,車庫入れには図2(3)に示すような幅を持った曲線に従うものとした。これがベストウエイであり,ベストウエイはここでは全て直線と円弧で近似した。次に,ベストウエイに対する距離dと傾きθとを図3(1),(2),(3)に示すように定義した。また,種々の現在位置における走行路壁からの位置をも考慮した相対位置d1 ′/d1 ,d2 ′/d2 ,d3 ′/d3 を図4(1)に示すように定義し,走行路壁からの距離d4 ,d5 ,d6 を図4(2)に示すように定義した。ここに,d1 は走行路の左側壁からベストウエイの左側輪郭線までの距離,d2 は走行路の右側壁からベストウエイの右側輪郭線までの距離,d3はベストウエイの左右輪郭線間の距離,d1 ′は走行路の左側壁から車両の後輪軸中央までの距離,d2 ′は走行路の右側壁から車両の後輪軸中央までの距離,d3 ′はベストウエイの右側輪郭線から車両の後輪軸中央までの距離,d4 は走行路の後壁から車両の後輪軸中央までの距離,d5 は車庫奥壁から車両の後輪軸中央までの距離,d6 は走行路の前壁から車両の後輪軸中央までの距離である。また,ファジィルールは図5(1)〜(9)に示すようなものを用意した。
【0008】以上のように定義等した上で本装置1により,以下の動作を行う。予め車庫入れ時に車両が走行可能な走行路及び上述したモデル走行領域であるベストウエイを絶対座標上で記憶部2に記憶しておく。今,車両が図4(1)に示す位置にあるものとする。この時,上記絶対座標上での車両の現在位置角度が距離センサ3及び方位センサ4により検出される。この検出された車両の現在位置角度と上記記憶された車両の走行路及びベストウエイに基づいて,車両がベストウエイから外れた位置にある時は,d1 ′/d1 又はd2 ′/d2 とθとが計算機の演算部5により演算される。一方,ベストウエイ内に車両がある時は,d3 ′/d3 とθとが計算機の演算部5により演算される。これら演算された車両の相対位置角度d1 ′/d1 〜d3 ′/d3 ,θを前件部(条件部),車庫入れに必要とされる車両のステアリング操作量SDを後件部(結論部)として計算機の推論部6によりファジィ推論する。推論結果に基づいて操舵が行われる。この操舵は自動的なものであってもよく,またCRT8をみながらオペレータが手動で行うものであってもよい。次に,車両が図6(1)に示す位置にきたとする。ここでは,例えば車両のベストウエイに対する傾き角度θ=−5°である。以下,この状態で適用される操舵制御則をさらに具体的に示す。まず適用されるルールは,図6(2)に示すように「車庫奥壁に対して車両は近く,車両のベストウエイに対する傾き角度がやや左に向いているならば,ハンドルを左に切れ」である。このルールに従えば,前件部の適合度の低い方が採用され,前件部の適合度は0.34となる。後件部の適合度が0.34となるのは,操舵角が−10.2°の時である。つまり左に10.2°の操舵が必要とされる。
【0009】次に,適用されるルールは,図6(3)に示すように「車庫奥壁に対して車両は少し遠く,奥壁に対して車両がやや遠いならば,ハンドルを左に一杯に切る」である。このルールに従えば,前件部の適合度の低い方が採用され,前件部の適合度は0.27となる。後件部の適合度が0.27となるのは,操舵角が9.5°の時である。すなわち,右に9.5°操舵が必要となる。結局,最終的な操舵角は,次の重み付き平均値により計算される。
【数1】


つまり,左に1.5°の操舵が必要となる。従来はファジィ制御のルールの前件部に走行路壁からの距離と傾きのみからなるパラメータを考慮したが,本発明ではこれ以外のパラメータすなわちモデル走行領域の輪郭をなす曲線からの距離と傾き等の相対位置角度からなる位置パラメータを加えることにより,滑らかな制御ができた。その結果,車両の自動車庫入れ時に,よりベテランに近い制御ができた。
【0010】
【発明の効果】本発明に係る車庫入れガイド装置は,上記したように構成されているため,次の効果を奏する。即ち,従来はファジィ制御のルールの前件部に走行路壁からの距離と傾きのみからなるパラメータを考慮したが,本発明ではこれ以外のパラメータすなわちモデル走行領域の輪郭をなす曲線からの距離と傾き等の相対位置角度からなる位置パラメータを加えることにより,滑らかな制御ができる。その結果,車両の自動車庫入れ時に,よりベテランに近い制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る車庫入れガイド装置の概略構成を示す模式図。
【図2】 ベストウエイの決定方法を示す説明図。
【図3】 相対位置角度の定義例を示す説明図。
【図4】 相対位置角度の定義例を示す説明図。
【図5】 ファジィルール例を示す説明図。
【図6】 制御例を示す説明図。
【図7】 従来の車庫入れガイド装置による車庫入れ操作の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1…車庫入れガイド装置
2…記憶部
3…距離センサ
4…方位センサ
5…計算機の演算部(演算手段に相当)
6…計算機の推論部(推論手段に相当)
7…操作部
8…CRT

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも車庫入れ時に車両が走行可能な走行路及び車両が簡単に走行することのできるモデル走行領域を絶対座標上で記憶しておく記憶手段と,上記絶対座標上での車両の現在位置角度を検出する検出手段と,上記検出された車両の現在位置角度と上記記憶された車両の走行路及びモデル走行領域とに基づいて,車両がモデル走行領域から外れた位置にある時は,少なくともモデル走行領域外の走行路の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とを演算し,車両がモデル走行領域内にある時は,少なくともモデル走行領域の幅方向におけるモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対位置とモデル走行領域の車両側の輪郭線に対する車両の相対角度とを演算する演算手段と,上記演算された車両の相対位置角度を条件部,車庫入れに必要とされる車両のステアリング操作量を結論部としてファジィ推論する推論手段とを具備した車庫入れガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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