説明

車椅子のリフト装置

【課題】ワンボックスカー等の車両には、車椅子での乗降を楽に行うためのリフト装置を装備した福祉車両が提供されている。従来、リフト装置は、プラットホームを昇降させるリンク機構と水平に移動させるスライド機構を備えていたため、部品点数が嵩んで重量化及び高コスト化していた。本発明では、この種のリフト装置の軽量化及び低コスト化を図ることを目的とする。
【解決手段】2組のリンク機構20,30を連接して、それぞれを個別の駆動源29,35を動作させることによりプラットフォーム11について従来のスライド機構と同等の水平移動量を確保する。これにより、従来のスライド機構を省略して部品点数を少なくし、これによりリフト装置10の軽量化及び低コスト化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として車両に装備され、車椅子の車両への乗降を楽に行うためのリフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばワンボックスカーやミニバンと称されるタイプの車両において、車両の後部開口部付近にこの種のリフト装置を搭載して車椅子に着座した人の乗降を楽に行えるようにした福祉車両が提供されている。この種のリフト装置には、人が着座していない折り畳んだ状態の車椅子のみを車室内外間で移動させるものと、人が着座した状態のままで車椅子を車室内外間で移動させるものが提供されている。下記の特許文献1,2には前者のタイプのリフト装置に関する技術が開示されている。
一方、後者のタイプのリフト装置によれば、人は車椅子に着座したまま車両への乗降を行うことができるので、前者のリフト装置の場合のように車室外において車椅子へ着座したり車椅子から降りる必要がない点でより楽に車両への乗降を行うことができる。以下、後者のリフト装置について説明する。
通常この種のリフト装置は、人が着座したまま車椅子を搭載可能な面積の平板形状を有するプラットフォームを、油圧シリンダや電動モータを駆動源として上下に傾動するリンク機構を用いて車室内のフロア高さと車室外の路面高さとの間で昇降させる機能を有している。
また、この種のリフト装置では、人が着座した状態の車椅子を乗り上げる必要上プラットフォームが大型化し、その結果上記前者のリフト装置とは異なってこの大型のプラットフォームを車室内外間で移動させるためにはリンク機構による水平方向の移動量が不足するため、別途スライド機構を併設して水平方向の大きな移動量を確保するようにしていた。
なお、下記の特許文献3には、人が着座したまま車椅子をプラットフォーム上へ移動して昇降させる後者のタイプのリフト装置が記載されているが、このリフト装置の場合は車室内のフロア高さまで上昇したプラットフォーム上から車椅子を車室内に移動させた後に、プラットフォームを起立させて車室内に格納する構成となっており、車室フロアに沿って水平姿勢で格納する構成とはなっていない。このため、特許文献3に記載されたリフト装置の場合、スライド機構ではなく旋回機構によりプラットフォームを車室内に格納する構成となっている。
プラットフォームをスライドさせる機構は、人が着座した状態の車椅子を車室内においてそのままプラットフォーム上に保持しておく場合、あるいは開口部の高さ寸法に比してプラットフォームの起立寸法(長さ)が大きいために上記のように起立状態でプラットフォームを格納することが困難な場合等に必要となる。このスライド機構によってプラットフォームの車室フロアあるいは車室外路面に沿った水平方向の十分な移動量を確保することができるので、路面上に取り出したプラットフォーム上に車椅子を乗り上げて固定すれば、特許文献3に記載されたリフト装置のようにプラットフォーム上から車室内への移動を行うことなく、従って一旦車椅子のプラットフォーム上での固定を解除し、車室内に移動させた後再度固定するといった手間を掛けることなくそのまま車室内への乗降を完了することができる。この利便性のために、例えばワンボックスカー等の車両についてスライド機構を併設したタイプのリフト装置が多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3595952号公報
【特許文献2】特許第3602464号公報
【特許文献3】特開平8−175382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにリンク機構に加えてスライド機構を併設したリフト装置の場合には、その分だけ部品点数が多くなってコストが嵩むばかりでなく、重量化するため車両への負担が大きくなって燃費悪化の原因になる等の問題があった。
本発明は、係る従来の問題に鑑みなされたもので、プラットフォームを車室フロアに沿って水平姿勢に格納するタイプのリフト装置において、従来のスライド機構を省略することにより部品点数を削減し、これによりこのタイプのリフト装置の軽量化及び低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成のリフト装置とした。
請求項1記載のリフト装置によれば、第1回動部材と第2回動部材を介してプラットフォームが車室フロアに支持されており、両回動部材の上下方向の回動動作が合成されてプラットフォームが車室フロアに沿った格納位置と車室外の取り出し位置との間を移動する。第1及び第2回動部材の動作が合成されることにより大型のプラットフォームの水平方向の移動量を確保することができるので、従来のスライド機構を省略してプラットフォームを車室内の格納位置と車室外の取り出し位置との間で移動させることができる。また、第1及び第2回動部材の動作量及び動作のタイミング等を適切に制御することにより、プラットフォームを水平方向に平行移動させることができる。
この明細書において、プラットフォームの姿勢あるいは移動方向について水平という場合には、精確に水平である場合の他、車椅子に着座した人が不安を感ずることがない程度に水平方向に対して僅かに傾いた姿勢若しくは方向をも含むものとする。
また、請求項1記載のリフト装置によれば、第1及び第2回動部材の動作を合成してプラットフォームを移動させる構成であるので、従来のリンク機構とスライド機構との動作切り換わり時等に発生していた衝撃を低減することができる。
請求項2記載のリフト装置によれば、第2回動部材が四節リンク機構であるので、この第2回動部材とプラットフォームとの間に介在した第2駆動源の動作を制御することにより間接的に第1回動部材に対する第2回動部材の回動位置を制御することができる。このように第2回動部材とプラットフォームの回動動作を制御する第2駆動源を、第2回動部材におけるリンク間ではなくプラットフォームの例えば下面側に沿って配置することにより当該第2回動部材周辺の構成を簡略化することができる。
請求項3記載のリフト装置によれば、第2駆動源としてのシリンダが伸縮作動することにより第2回動部材に対するプラットフォームの回動角度が変化して、当該プラットフォームの姿勢が水平姿勢若しくは僅かに傾いた昇降姿勢に保持される。
請求項4記載のリフト装置によれば、それぞれ四節リンク機構である第1回動部材の回動基端側と第2回動部材の回動先端側の支点を共用することにより、プラットフォームの姿勢制御を容易に行うことができるようになる。
請求項5記載のリフト装置によれば、プラットフォームの水平姿勢若しくは昇降時の姿勢を確実に制御することができる。また、プラットフォームの姿勢を修正することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態のリフト装置の斜視図である。
【図2】第1実施形態のリフト装置を簡略化して示した側面図である。
【図3】第1実施形態のリフト装置の側面図である。本図では、格納位置のリフト装置が実線で示され、取り出し位置のリフト装置が二点鎖線で示されている。
【図4】第1実施形態のリフト装置の側面図である。本図では、プラットフォームが格納位置と取り出し位置の中途位置を移動する段階を示している。
【図5】第1実施形態のリフト装置の側面図である。本図では、プラットフォームが取り出し位置に取り出された状態を示している。
【図6】第2実施形態のリフト装置を簡略化して示した側面図である。本図では、格納位置のリフト装置が実線で示され、中途位置及び取り出し位置のリフト装置が二点鎖線で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1は、第1実施形態のリフト装置10を備えた車両1を示している。この車両1は、いわゆるワンボックス形の福祉車両で、その後部に開口部2(乗降口)を備えている。この後部開口部2は、跳ね上げ式のバックドアによって開閉される。この後部開口部2に以下説明する本実施形態のリフト装置10が搭載されている。このリフト装置10を利用することによって人が着座したままの車椅子5を車室外路面上から車室内へ、あるいはその逆に楽に乗降させることができる。
このリフト装置10は、人が着座したままの車椅子5を載せることができる面積のプラットフォーム11と、このプラットフォーム11を車室フロアFLに沿った格納位置と、車室外路面R上の取り出し位置と間を移動させる左右一対の第1回動部材20,20と同じく左右一対の第2回動部材30,30を備えている。本実施形態では、第1回動部材20,20及び第2回動部材30,30にそれぞれ四節リンク機構が用いられている。第1及び第2回動部材20,30は、それぞれ左右対称に対をなして構成されているので、以下の説明では片側についてのみ説明する。図2には、片側の第1及び第2回動部材20,30が示されている。
プラットフォーム11の後端部には、スロープ板12が設けられている。図1に示すようにこのスロープ板12を後方へ張り出した取り出し位置に固定すると、当該プラットフォーム11と路面R上との間の移動を楽に行うことができる。図3〜図5に示すようにこのスロープ板12は上方へ起立した位置に固定することができる。スロープ板12を起立させておくことにより、乗り上げた車椅子5がプラットフォーム11から脱輪することが防止されるので、当該スロープ板12を後ろ側のストッパとして機能させることができる。
また、図示は省略したが、このプラットフォーム11には、乗り上げた車椅子5を固定しておくためのフックやベルト類が装備されている。これらの固定手段を用いることにより、車椅子5を車室内と路面上との間で移動させる際及び車両走行中における車椅子5の不用意な位置ずれや傾き等を防止することができ、これにより着座者は安心して車椅子に着座していられる。
後部開口部2付近には、当該リフト装置10を遠隔操作するためのリモコンが装備されている。また、プラットフォーム11の側部には操作タワーが設けられており、この操作タワーの上部にも同じリモコンが装備されている。車椅子5の着座者若しくは介護者がいずれかのリモコンの乗車ボタン若しくは降車ボタンを操作することによって、当該リフト装置10を動作させることができる。
【0008】
第1回動部材20は、2本のリンクアーム21,22を備えている。両リンクアーム21,22の回動基端側は、車室フロアFLに取り付けたフロアブラケット23にそれぞれ支軸24,25を介して上下方向に回動可能に支持されている。両リンクアーム21,22の回動先端側は、それぞれ支軸27,28を介して結合プレート26に回動可能に結合されている。両リンクアーム21,22とフロアブラケット23と結合プレート26によって四節平行リンク機構が構成されており、その連結支点は支軸24,25,27,28となっている。
両リンクアーム21,22間には、当該第1回動部材20の駆動源としての第1駆動源29が介装されている。本実施形態では、この第1駆動源29として油圧シリンダが用いられている。この第1駆動源29のヘッド側は、支軸29aを介してリンクアーム22に上下に回動可能に支持されており、ロッドの先端側は支軸29bを介してリンクアーム21に上下に回動可能に連結されている。この第1駆動源29が図示省略した油圧源により供給される圧油によって作動すると、当該第1回動部材20が上下に一定の角度範囲で回動する。この第1駆動源29の起動、停止のタイミングは、上記油圧源を含む油圧制御回路によって制御される。また、第1駆動源29の作動速度は、可変流量弁が油圧制御回路で動作制御されることによって適切に制御される。
第2回動部材30は、2本のリンクアーム31,32を備えている。両リンクアーム31,32の回動基端側は、それぞれ上記結合プレート26の支軸27,28を介して上下に回動可能に支持されている。両リンクアーム31,32の回動先端側は、それぞれ支軸33,34を介してプラットフォーム11の側部に上下に回動可能に結合されている。第2回動部材30の場合、両リンクアーム31,32と結合プレート26とプラットフォーム11によって四節平行リンク機構が構成されており、その連結支点は支軸27,28,33,34となっている。
【0009】
リンクアーム32とプラットフォーム11との間に、当該第2回動部材30の駆動源としての第2駆動源35が介装されている。この第2駆動源35としても油圧シリンダが用いられている。この第2駆動源35のヘッド側は、支軸36を介してプラットフォーム11の側部に上下に回動可能に支持されており、ロッド先端側は支軸37を介してリンクアーム32に上下に回動可能に連結されている。この第2駆動源35の伸縮動作は上記第1駆動源29とは独立して制御される。この第2駆動源35の伸縮動作によってリンクアーム32に対するプラットフォーム11の回動位置が制御されて当該第2回動部材30に対するプラットフォーム11の回動位置(姿勢)が制御される。第2駆動源35によってプラットフォーム11の第2回動部材30に対する姿勢が制御されることにより、当該第2回動部材30の第1回動部材20に対する上下の回動位置が制御される。
第2駆動源35の起動、停止のタイミング及び作動速度等についても、第1駆動源29と同様可変流量弁を含む油圧制御回路によって制御される。なお、図1、図3〜5では第1及び第2駆動源29,35の図示が省略されている。
また、第1回動部材20の支軸25には、リンクアーム22の回動位置(回動角度)を検知するための第1角度検知器(エンコーダ)20Rが組み込まれている。この第1角度検知器20Rによって第1回動部材20の初期位置(格納位置)からの回動角度が精確に検知される。さらに、第2回動部材30の支軸34には、リンクアーム32の回動位置(回動角度)を検知するための第2角度検知器(エンコーダ)30Rが組み込まれている。この第2角度検知器30Rによって第2回動部材30に対するプラットホーム11の回動位置(回動角度)が精確に検知され、ひいては第1回動部材20に対する第2回動部材30の回動角度が間接的に検知される。この第1及び第2角度検知器20R、30Rによって検知される第1及び第2回動部材20,30の回動角度及びプラットフォーム11の角度位置に基づいて、第1及び第2駆動源29,35の起動、停止及び作動速度等が制御される。
【0010】
図3には、当該リフト装置10の格納状態が示されている。この格納状態では、プラットフォーム11が車室フロアFL上に沿って乗せ掛けられた状態となっている。このプラットフォーム11上に人が着座した状態のまま車椅子5を固定しておくことができる。プラットフォーム11上には、車椅子5を固定しておくための固定具等が配備されている。この格納状態において、第1回動部材20は、その両リンクアーム21,22をフロアブラケット23から前側斜め上方へ延びる状態に傾斜させた位置に格納されている。この第1回動部材20の回動先端側から前側斜め下方に傾斜した状態に第2回動部材30が格納されている。この格納状態で、後部開口部2をバックドアで閉じることができる。
この格納状態から図示省略した遠隔操作用のリモコンの降車スイッチをオン操作すると、当該リフト装置10が降車側に起動する。リフト装置10が降車側に起動すると、先ず第1駆動源29が降車側に作動して第1回動部材20が後ろ側(降車側)に回動し始める。第1回動部材20が後ろ側に回動し始めると、その回動先端側(上部)が上向きに凸の円弧軌跡に沿って変位する結果、プラットフォーム11が車室フロアFL上から上方への変位を伴って後ろ側(後部開口部側)へ変位する。
第1回動部材20が降車側に回動し始めた後、僅かな時間経過後に第2回動部材30が降車側に起動する。第2回動部材30が降車側に動作すると、その回動先端部(下部)が下向きに凸の円弧軌跡に沿って変位するため、プラットフォーム11の第1回動部材20の回動による上方への変位が相殺され、結果としてプラットフォーム11は車室フロア11から離脱した後ほぼ水平姿勢を維持しながら後ろ側へ平行移動する。
このようにプラットフォーム11が車室内と同様水平姿勢を維持したまま後ろ側へ平行移動することから、車椅子5に着座した人は何ら不安感を感ずることがない。
図3に示すように第1回動部材20に対して前側に位置する第2回動部材30がより速い速度で後ろ側へ回動し、その結果図4に示すように第2回動部材30が第1回動部材20の側方を通過して後ろ側へ回動することにより、プラットフォーム11が水平姿勢を保持しつつその高さ方向の変位をほぼ伴うことなく後ろ側へ平行移動する。これにより従来のスライド機構による場合と同様のスライド動作をプラットフォーム11に持たせることができる。
図4に示すように第2回動部材30が後ろ側へ大きく回動してプラットフォーム11が車室外へ水平移動した後、第1駆動源29の動作速度が速くなって、プラットフォーム11が車室フロア高さから下降して路面Rにほぼ接地した取り出し位置に至る。この間、プラットフォーム11はその後部側を前側よりも低くした方向に僅かに傾斜した昇降姿勢に保持される。この昇降姿勢によって車椅子5の後ろ側への移動がスロープ板12によって規制された状態となる。この昇降姿勢によれば、プラットフォーム11の前側のストッパを省略して後ろ側のストッパ(スロープ板12)のみで車椅子5がプラットフォーム11上の一定の位置に保持される。
こうしてプラットフォーム11を路面R上に接地させた後、スロープ板12を下方へ回動させて路面Rに接地させ、さらに車椅子5の固定具を外すことにより着座者は車椅子5に着座したままプラットフォーム11上から路面R上に移動することができる。
【0011】
逆に、車椅子5に着座したまま車両1へ乗車する場合には、車椅子5を路面R上からプラットフォーム11上に移動させ、車椅子5を固定具で固定するとともにスロープ板12を起立させた位置にロックする。その後、リモコンの乗車ボタンをオン操作してリフト装置10を乗車側へ起動させる。リフト装置10の乗車側への動作は、上記降車側とは逆の動作(図5→図4→図3)になる。
リフト装置10は、乗車側へ起動すると、第1駆動源29が作動して第1回動部材20が上方(乗車側)へ回動し始めることにより、プラットフォーム11が円弧軌跡に沿って上昇する。降車時と同様、プラットフォーム11はその上昇動作中、後ろ側を前側よりも低くした方向に僅かに傾斜した昇降姿勢に保持され、この間起立状態のスロープ板12を後ろ側のストッパとして機能させることができる。
図4に示すようにプラットフォーム11が車室フロア高さまで上昇した段階で、第2駆動源35が作動して第2回動部材30が第1回動部材20の側方を通過して車室内側へ回動する。この間、第1駆動源29の作動によって第1回動部材20も前側へ回動してプラットフォーム11が水平姿勢に保持される。こうして第1及び第2回動部材20,30がそれぞれの速度で前側へ回動することにより、プラットフォーム11が水平姿勢に保持されつつ車室フロアFL上の格納位置に至る。プラットフォーム11が格納位置に至ると、車椅子5及び着座者の乗車が完了する。
【0012】
以上のように構成した本実施形態のリフト装置10によれば、車室フロアFLに対して上下に回動支持された第1回動部材20と、この第1回動部材20に上下に回動可能に連結された第2回動部材30によってプラットフォーム11を車室フロアFL上の格納位置と路面R上の取り出し位置との間で移動させることができるので、従来のスライド機構を省略してプラットフォーム11に同等の動作を与えることができる。このため、従来のリフト装置よりも部品点数を低減してその軽量化及び低コスト化を図ることができる。
また、従来リンク機構による昇降動作とスライド機構によるスライド動作が時間的に独立してなされるため、その動作切り換え時において駆動源の切り換えに伴う衝撃がプラットフォームに伝わる問題があったが、本実施形態のリフト装置10によれば、第1駆動源29と第2駆動源35が格納位置と取り出し位置との間で時間的に重複して作動し、これによりプラットホーム11の昇降動作と水平方向の変位動作が滑らかに連続した動作としてなされるため、従来のようなプラットホームの衝撃を大幅に低減することができ、この点で車椅子5の着座者の安心感を高めることができ、当該リフト装置10の使い勝手を一層よくすることができる。
【0013】
以上説明した第1実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、第1駆動源29をそれぞれ支軸29a,29bを介してリンクアーム21,22間に介装する構成を例示したが、支軸25,27若しくは支軸24,28を介して両リンクアーム21,22間に介装する構成としてもよい。
また、第2駆動源35を、リンクアーム32とプラットフォーム11との間に介装する構成を例示したが、第2回動部材30の両リンクアーム31,32間に介装する構成としてもよい。
さらに、第1回動部材20と第2回動部材30としてそれぞれ四節平行リンク機構を用いる構成を例示したが、それぞれ回動先端側が平行に変位しない四節リンク機構を用いる構成としてもよい。係る場合であっても、第1及び第2駆動源を適切に動作制御することによって、プラットフォームを平行移動させて車椅子の水平姿勢を保持することができる。また、第1及び第2回動部材を5節以上のリンク機構で構成することもできる。
さらに、図6には第2実施形態のリフト装置40が例示されている。前記した第1実施形態のリフト装置10では、第1及び第2回動部材20,30としてリンク機構を用いる構成となっていたが、この第2実施形態では第1及び第2回動部材41,42についてそれぞれリンク機構ではなく1本の回動アームを用いる構成となっている。
第1回動部材41は、フロアブラケット43を介して車室フロアFLに支持されている。この第1回動部材41は、支軸44を介して上下に回動可能に支持されている。この第1回動部材41とフロアブラケット43との間に、第1駆動源45が介装されている。第1駆動源45のヘッド側は支軸45aを介してフロアブラケット43に回動可能に支持され、ロッド側は支軸45bを介して第1回動部材41に回動可能に結合されている。
【0014】
第1回動部材41の回動先端側に支軸46を介して第2回動部材42が相互に回動可能に連結されている。第2回動部材42は、第1回動部材41との間に介装した第2駆動源47によって相対的に回動する。第2駆動源47のヘッド側は支軸47aを介して第1回動部材41に回転可能に支持されている。第2駆動源47のロッド先端側は第2回動部材42に支軸47bを介して回転可能に結合されている。
第2回動部材42の回動先端側は支軸48を介してプラットホーム50の側部に回動可能に連結されている。第2回動部材42とプラットホーム50との間に第3駆動源51が介装されている。第3駆動源51のヘッド側は支軸51aを介して第2回動部材42に回転可能に支持されている。第3駆動源51のロッド先端側は支軸51bを介してプラットホーム50の側部に回転可能に結合されている。第1〜第3駆動源45,47,51にはそれぞれ油圧シリンダが用いられている。
第1〜第3駆動源45,47,51は、車室フロアFLに対する第1回動部材41の回動角度を検知する第1角度検知器、第1回動部材41に対する第2回動部材42の回動角度を検知する第2角度検知器、第2回動部材42に対するプラットフォーム50の回動角度を検知する第3角度検知器により検知されるそれぞれの回動角度に基づいて動作制御され、これによりプラットフォーム40の水平姿勢が常時保持され、またその位置が検知される。
このように構成した第2実施形態のリフト装置40によれば、第1回動部材41と第2回動部材42の回動動作が合成されることによってプラットフォーム50を車室フロアFLに沿った格納位置と路面Rに沿った取り出し位置との間で車両前後方向に大きな距離を移動させることができる。このため、従来のスライド機構を省略して部品点数を削減し、これにより当該リフト装置40の軽量化及び低コスト化を図ることができる。特に、第2実施形態のリフト装置40によれば、第1回動部材41と第2回動部材42として第1実施形態のようなリンク機構ではなくそれぞれ1本の回動アームを用いる構成であるので、この点でさらに部材数を低減することができる。
【符号の説明】
【0015】
1…車両
FL…車室フロア
R…路面
2…後部開口部
5…車椅子
10…リフト装置(第1実施形態)
11…プラットフォーム
12…スロープ板
20…第1回動部材
20R…第1角度検知器
21,22…リンクアーム
23…フロアブラケット
24,25…支軸
26…結合プレート
27,28…支軸
29…第1駆動源、29a,29b…支軸
30…第2回動部材
30R…第2角度検知器
31,32…リンクアーム
33,34…支軸
35…第2駆動源
36,37…支軸
40…リフト装置(第2実施形態)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子を搭載可能なプラットフォームを車両フロアに沿った格納位置と車室外の路面に沿った取り出し位置との間を移動させるリフト装置であって、
前記車両フロアに上下に回動可能に支持された第1回動部材と、該第1回動部材を上下に回動させる第1駆動源と、該第1回動部材の回動先端側に上下に回動可能に支持された第2回動部材と、該第2回動部材を前記第1回動部材に対して上下に回動させる第2駆動源を備え、該第2回動部材の回動先端側に前記プラットフォームが回動支持されており、該両回動部材の回動動作を合成して前記プラットフォームを前記格納位置と前記取り出し位置との間で、前記第2回動部材に対する該プラットフォームの相対角度を変化させつつ移動させる構成としたリフト装置。
【請求項2】
請求項1記載のリフト装置であって、前記第2回動部材として四節リンク機構を用い、該第2回動部材と前記プラットフォームとの間に前記第2駆動源を介在させて、前記第2回動部材に対する前記プラットフォームの回動動作を経て前記第1回動部材に対する前記第2回動部材の回動動作を制御する構成としたリフト装置。
【請求項3】
請求項2記載のリフト装置であって、前記第2駆動源としてシリンダが用いられており、そのヘッド側が前記プラットフォームの側部に、そのロッド側が前記第2回動部材にそれぞれ支軸を介して回動可能に支持されて、該第2駆動源の伸縮作動により前記プラットフォームの前記第2回動部材に対する回動角度を変化させる構成としたリフト装置。
【請求項4】
請求項1記載のリフト装置であって、前記第1回動部材と前記第2回動部材のそれぞれに四節リンク機構を用い、前記第1回動部材の回動先端側の2支点間距離を固定して前記第2回動部材の回動基端側の2支点として共用させた構成としたリフト装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載したリフト装置であって、前記第1回動部材の前記車両フロアに対する回動角度θ1と、前記第2回動部材の前記第1回動部材に対する回動角度θ2と、前記プラットフォームの前記第2回動部材に対する回動角度θ3の少なくとも2つの回動角度を検出し、該検出される回動角度に基づいて前記第1及び第2駆動源の動作を制御する構成としたリフト装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−167444(P2011−167444A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35852(P2010−35852)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)