説明

車軸作業型の管理機

【課題】容易に作業速度や耕耘深さを調節可能とし、オペレータの疲労を低減させ、作業性を向上させた車軸作業型の管理機を提供する。
【解決手段】ロータリ軸7の両端に車輪10を設けたロータリ耕耘装置6を機体の前部下方に備え、機体の後部に上下位置調節可能な接地輪24を設けるとともに、接地輪24に回転抵抗を付与する抵抗付与手段27を設け、かつ、この抵抗付与手段27は、回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段32を備える。そして、接地輪24を、左右一対に備え、調節手段32を、機体後方に向けて延設したハンドル2の把持部2a近傍に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ軸の両端に車輪を設けたロータリ耕耘装置を機体の前部下方に備える車軸作業型の管理機に関し、より詳細には、機体の後部に上下位置調節可能な接地輪を設けるとともに、接地輪に回転抵抗を付与する抵抗付与手段を設け、かつ、この抵抗付与手段は、回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段を備えることに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車軸作業型の管理機には、機体上部にエンジンが設置されるとともに、機体後方に向けてハンドルが延設され、さらに機体前部下方に備えられるロータリ耕耘装置であって、複数のロータリ爪を植設したロータリ軸の両端にロータリディスクが設けられ、このロータリディスクの外側に移動用の車輪が配備されるものがある。(特許文献1)
【0003】
【特許文献1】特開平5−193530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の車軸作業型の管理機では、機体の前進動に抵抗を付与してダッシュ現象の防止や、作業速度を調整したり、あるいはロータリ爪での耕耘深さを好適な状態に保持するために、機体後部に設けられた抵抗棒を地中に突き刺すなど、抵抗棒の上下操作を行うが、機体の駆動に伴う運転作業時や、圃場などの硬い地面に、この抵抗棒を、地中に突き刺すあるいは引き抜くなどの上下調節操作を行うことが難かしいため、安定した作業ができず、オペレータに過大な負担をかけるとともに、作業性が低下するという問題があった。
そこで、この発明の目的は、容易に作業速度や耕耘深さを調節可能とし、オペレータの疲労を低減させ、作業性を向上させた車軸作業型の管理機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、ロータリ軸の両端に車輪を設けたロータリ耕耘装置を機体の前部下方に備える車軸作業型の管理機において、前記機体の後部に上下位置調節可能な接地輪を設けるとともに、前記接地輪に回転抵抗を付与する抵抗付与手段を設け、かつ該抵抗付与手段は、前記回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車軸作業型の管理機において、前記接地輪を、左右一対に備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車軸作業型の管理機において、前記調節手段を、機体後方に向けて延設したハンドルの把持部近傍に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ロータリ軸の両端に車輪を設けたロータリ耕耘装置を機体の前部下方に備える車軸作業型の管理機において、機体の後部に上下位置調節可能な接地輪を設けるとともに、接地輪に回転抵抗を付与する抵抗付与手段を設け、かつ、この抵抗付与手段は、回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段を備えるので、従来のように抵抗棒を地中に突き刺したり引き抜くなど上下に調節操作することなく、オペレータは本機による稼動作業中に、接地輪により楽に作業速度や耕耘深さを調節することができる。従って、オペレータの疲労を低減させ、作業性を向上させた車軸作業型の管理機を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、接地輪を、左右一対に備えるので、機体の作業速度や耕耘深さを、オペレータは大きな力を必要とせず、かつ機体を安定させて調節することができる。従って、オペレータの疲労を低減させ、作業性を向上させた車軸作業型の管理機を提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、調節手段を、機体後方に向けて延設したハンドルの把持部近傍に設けるので、機体の駆動作業中にオペレータが手元で容易に機体の作業速度や耕耘深さを調節することができる。従って、オペレータの疲労を低減させ、作業精度の向上可能な車軸作業型の管理機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、この発明の一例としての車軸作業型の管理機の側面図であり、図2は同管理機の正面図である。
【0012】
この例の管理機1は、図1に示すように、ハンドル2を設けた機体フレーム3に原動機部であるエンジン4およびミッションケース5を搭載し、エンジン4の下方にはロータリ耕耘部6が取り付けられる。このロータリ耕耘部6は、ミッションケース5の下部から機体の左右に突出したロータリ軸7に、エンジン4より伝達された駆動力で回転する複数のロータリ爪8が等間隔に植設されており、このロータリ爪8によって耕作面を耕耘することができる。また、ロータリ軸7の両端部に設けられたロータリディスク9の外周部には、機体を移動させるための車輪10が取付けられる。なお、ロータリ耕耘部6の後方には、後述する本願発明の要部である接地輪24が機体の左右に備えられる。また、符号11はバンパーである。
【0013】
そして、図1〜2に示すように、機体フレーム3の後部には、把持部2aと、回動軸13を中心として機体前後方向に回動可能に設けられた杆部2bとから構成されるハンドル2が機体後方へ向けて延設されており、把持部2aの左右両側の下部などに設けられたクラッチレバー13の操作により、ミッションケース5内に設けられた図示しないクラッチの接断操作がなされる。なお、把持部2aは、ゴムや合成樹脂などの滑り止めを覆設してもよい。
【0014】
また、クラッチレバー13の前端部は、把持部2a内に設けられたロッド14に連結され、連結片15を介して、他端部がミッションケース5内に有する前記クラッチに接続されるワイヤー16の一端部に接続されるため、左右いずれか一方(両方であってもよい)のクラッチレバー13を操作することで前記クラッチを接断できる構成とされる。
【0015】
そして、把持部2aの一側には、エンジン4の回転数を調節し、ロータリ耕耘部6におけるロータリ爪8の回転数を調整するアクセルレバー17が設けられる。さらには、把持部2aの後端部中央近傍には、緊急時などに、前方に押すもしくはオペレータの体の一部が接触して前方に押されることでエンジン4を停止させるストップボタン18が設けられる。
【0016】
次に、本願発明の特徴である接地輪について、その具体的構成を説明する。図3は、接地輪の回動を示す管理機の左側面図、図4は管理機における右側部の背面模式図、図5は抵抗付与手段の動作を示す背面模式図である。
【0017】
再び図1〜2に示すように、ミッションケース5上部の左右両側部には、それぞれにベルト21を内設する伝動ケース22の上部が連設されるとともに、この左右伝動ケース22は前高後低に傾斜させて備えられる。そして、ベルト21の上端部は、ミッションケース5から突設される駆動軸23に掛着される。なお、図3に示すように、この駆動軸23を軸芯として左右伝動ケース22が上下方向に回動可能に備えられる。
【0018】
また、左右伝動ケース22の下端部であって、ベルト21の下端部は、それぞれロータリ軸7と水平方向に、接地輪24を回転させるための左右の回転軸25に掛着される。そして、左右回転軸25のそれぞれ両端部には、外周に凹凸部を有する内側接地輪24aと、外側接地輪24bとからなり、車輪10よりもやや小さな直径を有する接地輪24が取付けられる。なお、接地輪24の材質は、全て金属製であっても、凹凸部のみゴムや樹脂製であってもよい。また、接地輪24の直径は上述に限定されない。
【0019】
さらに、左右伝動ケース22のそれぞれ中途部には、上方に向けて設けられるステー20aの下端部が取付けられるとともに、このステー20aの上端部は、機体後部から突設されたレバー20bに連結される。
【0020】
次に、左右それぞれの接地輪24の、内側接地輪24aと、外側接地輪24bとの間であって、回転軸25の中央近傍には、図4に示すように、回転軸25の回転に同調して回転される金属製のディスク板26が取付けられる。そして、このディスク板26の上部には、ハサミ形状を有する抵抗アームなどの抵抗付与手段27が設けられる。
【0021】
この抵抗付与手段27は、図5に示すように、中央近傍の、伝動ケース22などに支持させた支点軸28を中心に、上部の開閉部29と、下部の接触部30とからなり、ディスク板26が接触部30のアーム間に挟まれる位置に備えられる。そして、開閉部29の上部であって、開閉部29のアームの一側には、ワイヤー31の一端部が固着されるとともに、ワイヤー31は、開閉部29のアームの他側を貫通して、ハンドル15に沿って把持部2aまで延設される。
【0022】
そして、ワイヤー31の上部は分岐され、この分岐した一方の他端部は、把持部2a後端の両側部に設けられた調節レバーなど左右の調節手段32に接続される。なお、ワイヤー31は、露出しないようにカバーなどで覆設してもよい。
【0023】
また、ワイヤー31の上部を分岐した他方の他端部は、図2に示すようにクラッチレバー13に連係されるワイヤー16の適宜位置に接続される。
【0024】
ここで、このような車軸作業型の管理機1を用い、圃場などで耕耘作業を行う場合、オペレータはエンジン4をかけるとともに、把持部2aを握る。このとき、接地輪24が機体の休止状態時に機体を支持させるスタンドの役割を担い、接地輪24は、圃場に接地されているが、オペレータが把持部2aを上方に上げて作業体勢になることで、接地輪24は圃場面から離れる。そこで、オペレータが、図3に示すように、レバー26を下方の適宜位置に引き下げると、ステー25のリンク動作により伝動ケース22を介して接地輪24が下方に回動されるとともに、圃場中の適宜深さに押し込まれる。
【0025】
次いで、オペレータは、左右もしくは一方のクラッチレバー13を把持部2aとともに握り、例えば、クラッチレバー13を把持部2a側に摺動させるなどの操作によって、不図示のクラッチを接続し、エンジン4からの駆動力を、ミッションケース5を介してロータリ耕耘部6に伝達して、ロータリ軸7を回転させることにより、ロータリ爪8および車輪10が、機体を前進させる場合には左側面視反時計方向に回転される。なお、クラッチレバー13の操作方法(摺動方向)は上述に限定されない。
【0026】
また、エンジン4の駆動力は、ミッションケース5から左右伝動ケース22内のベルト21を介して、接地輪24が、機体を前進させる場合には車輪10と同方向である左側面視反時計方向に回転し、耕耘作業が行われる。なお、機体後進時には、不図示のリバーサレバーなどによりロータリ爪8や車輪10、および接地輪24などは左側面視時計方向に回転される。
【0027】
そして、圃場の状態や作業状況などにより、管理機1の作業速度を変えて耕耘作業を行う場合には、オペレータは、左右もしくは左右いずれかのクラッチレバー13を把持部2a側に摺動させたまま、左右もしくは左右いずれかの調節手段32を、例えば、調節手段32の回動支点34を中心として把持部2a側に引き上げるように摺動させると、ワイヤー31が把持部2aの方向へ引っ張られ、抵抗付与手段27の開閉部29が閉じられる。なお、調節手段32の操作方法(摺動方向)は上述に限定されない。
【0028】
その結果、抵抗付与手段27の支点軸28を中心として、接触部30がディスク板26に接触し、接地輪24における回転軸25の回転速度が減少するに伴い、接地輪24の回転速度が減少される。
【0029】
そして、オペレータは、調節手段32を任意の操作位置に加減することで、ワイヤー31の引っ張り度合いを変化させて、抵抗付与手段27の開閉部29の開閉度を調整し、抵抗付与手段27の接触部30がディスク板26を挟む力を増減できるため、例えば、耕耘速度を遅くして作業を行う場合には、調節手段32を適宜中途位置に摺動させることで、接触部30が、調節手段32の摺動位置に対応した力(接触部30のアーム間隔)でディスク板26を挟むようにしてディスク板26に接触し、このディスク板26の回転速度を減少させる。
【0030】
この結果、回転速度が落ちた接地輪24が、車輪10の回転による機体前進の抵抗となり、耕耘速度が減少するため、圃場の状態や作業状況などに応じた耕耘作業を行うことが可能となり、作業精度を向上することができる。
【0031】
また、例えば、より耕耘深さを深くして耕耘作業を行う場合には、調節手段32を最も多く摺動させて、接触部30がディスク板26を挟む力を最大として、ディスク板26の回転を停止させることにより、接地輪24の回転を停止させるとともに、オペレータは片手でレバー26を引き下げ、ステー25を介して左右伝動ケース22の後部を、駆動軸23を軸芯として下降させて、接地輪24を圃場などの地中に適宜深さで押し込むことで機体の地上高を下げ、前輪10の回転による前進に対する抵抗を最大として、耕耘深さを増すことができる。
【0032】
なお、開閉部29とディスク板26との接触を解除し離間させる場合には、オペレータが、調節手段32の握りを緩めて、調節手段32の位置を元の位置に摺動させて戻すことにより、ワイヤー31が接地輪24の方向に引っ張られて、開閉部29が開口されて、ディスク板26の回転抵抗がなくなり、車輪10とともに接地輪24も回転するため、管理機1の耕耘速度が上昇する構成とされる。
【0033】
さらには、オペレータが、クラッチレバー13を操作してミッションケース5内の図示しないクラッチを切断して、車輪10およびロータリ耕耘部6の回転を停止させた場合は、このクラッチレバー13の操作に連動して、調節手段32のワイヤー31が、クラッチレバー13のワイヤー16とともに把持部2aの方向に引っ張られ、上述同様に抵抗付与手段27の接触部30がディスク板26を挟んで接触し、ディスク板26の回転を停止させることにより、接地輪24の回転も停止されるため、オペレータは、クラッチレバー13の操作だけで、別途接地輪24を停止させるための調節手段32の操作を必要とせず、操作性が向上される。
【0034】
なお、機体を再び稼動させる場合には、クラッチレバー13を操作するのみで、前記クラッチが接続され、車輪10およびロータリ耕耘部6が回転するとともに、このクラッチレバー13の操作に連動して、ワイヤー31が接地輪24の方向に引っ張られ、上述同様に抵抗付与手段27の開閉部29が開口され、開閉部29とディスク板26との接触が解除されるため、ディスク板26の回転抵抗がなくなり、車輪10とともに接地輪24も回転して管理機1が稼動される。
【0035】
以上のような構成にすることで、機体の後部に上下位置調節可能な接地輪24を設けるとともに、接地輪24に回転抵抗を付与する抵抗付与手段27を設け、かつ、この抵抗付与手段27は、回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段32を備えるので、従来のように抵抗棒を地中に突き刺したり引き抜くなど上下に調節操作することなく、オペレータは本機による稼動作業中に、接地輪24により楽に作業速度や耕耘深さを調節でき、オペレータの疲労を低減させ、作業性を向上させることができる。
【0036】
また、接地輪24を、左右一対に備えるので、機体の作業速度や耕耘深さを、オペレータは大きな力を必要とせず、かつ機体を安定させて調節でき、オペレータの疲労を低減させ、作業性を向上させることができる。さらには、調節手段32を、機体後方に向けて延設したハンドル15の把持部2a近傍に設けるので、機体の駆動作業中にオペレータが手元で容易に機体の作業速度や耕耘深さを調節でき、オペレータの疲労を低減させ、作業精度の向上させることができる。
【0037】
以上詳述したように、この例の車軸作業型の管理機1は、ロータリ軸7の両端に車輪10を設けたロータリ耕耘装置6を機体の前部下方に備え、機体の後部に上下位置調節可能な接地輪24を設けるとともに、接地輪24に回転抵抗を付与する抵抗付与手段27を設け、かつ、この抵抗付与手段27は、回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段32を備えるものである。加えて、接地輪24を、左右一対に備え、調節手段32を、機体後方に向けて延設したハンドル2の把持部2a近傍に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の車軸作業型の管理機の側面図である。
【図2】車軸作業型の管理機の正面図である。
【図3】接地輪の回動を示す管理機の左側面図である。
【図4】管理機における右側部の背面模式図である。
【図5】抵抗付与手段の動作を示す背面模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1 管理機
2 ハンドル
2a 把持部
5 ミッションケース
6 ロータリ耕耘装置
13 クラッチレバー
20a ステー
20b レバー
21 ベルト
22 伝動ケース
23 駆動軸
24 接地輪
24a 内側接地輪
24b 外側接地輪
25 回転軸
26 ディスク板
27 抵抗付与手段
28 支点軸
29 開閉部
30 接触部
31 ワイヤー
32 調節手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ軸の両端に車輪を設けたロータリ耕耘装置を機体の前部下方に備える車軸作業型の管理機において、
前記機体の後部に上下位置調節可能な接地輪を設けるとともに、前記接地輪に回転抵抗を付与する抵抗付与手段を設け、かつ該抵抗付与手段は、前記回転抵抗の大きさを調節可能とする調節手段を備えることを特徴とする車軸作業型の管理機。
【請求項2】
前記接地輪を、左右一対に備えることを特徴とする、請求項1に記載の車軸作業型の管理機。
【請求項3】
前記調節手段を、機体後方に向けて延設したハンドルの把持部近傍に設けることを特徴とする、請求項1に記載の車軸作業型の管理機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate