説明

車載機器制御システム及び車載機器制御システムにおける識別子設定方法

【課題】汎用性が高く且つ誤ったスレーブ装置の取付けの防止を図ることができる車載機器制御システムを提供する。
【解決手段】バス10にスレーブ装置200をディージーチェーン接続する。スレーブ装置200は、バス10の信号線13を短絡又は開放するスイッチ201を備え、通信制御部203は識別子設定モード時にはスイッチ201を開放し、マスタ装置100が送出した通信電文から識別子を取得し、該識別子を自身の識別子として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター装置とスレーブ装置がバス接続された車載機器制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載機器制御システムにおいては車内に車載LANが設置され、該車載LANに多数の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が接続されている。ここでECUは、車載LANに接続されたノードに該当し、制御対象となる車載機器が接続されているノードも含む。車載LANの規格には例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などがある。LIN規格においてはシングルマスタ方式が採用されており、1つのECUがマスタ装置として動作し、他のECUはスレーブ装置として動作する。通常、マスタ装置として動作するECU(以下、単に「マスタ装置」と言う。)は、バスとの通信インタフェイス回路と、マイクロコンピュータやメモリ等からなる制御回路とを備えている。スレーブ装置として動作するECU(以下、単に「スレーブ装置」と言う。)は、バスとの通信インタフェイス回路と、車載機器の制御回路及び該車載機器やセンサとのインタフェイス回路とを備えている。
【0003】
各スレーブ装置には予め識別子が定められており、マスタ装置からスレーブ装置への通信電文のヘッダ部にはスレーブ装置の識別子が含まれる。なお、識別子と各スレーブ装置とは必ずしも1対1の関係である必要はなく、1つのスレーブ装置に対して複数の識別子を割り当てることにより、識別子を一種のコマンドとして用いる場合もある。
【0004】
マスタ装置のメモリには、スレーブ装置に接続された車載機器の制御に必要なパラメータや各スレーブ装置の識別子が記憶されている。マスタ装置の制御回路は、該識別子及びパラメータに基づき車載機器の制御を行う(特許文献1参照)。例えば、エアコンのダンパを開閉するアクチュエータを制御する場合について説明する。該アクチュエータには回転角度を検出するセンサとしてポテンションメータが付設されている。マスタ装置のメモリには、ダンパの開放時及び閉鎖時のポテンションメータの値が記憶されている。マスタ装置はスレーブ装置に対してポテンションメータの値を送信することによりアクチュエータの動作を指示する。スレーブ装置は、ポテンションメータの検出値がマスタ装置から受信した値となるようにアクチュエータをフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−335607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで前述のLINのような規格ではコスト等の観点からシステムが簡便化されており各スレーブ装置の識別子は予め割り当てられたものが固定的に設定されている。同様にマスタ装置においても各スレーブ装置の識別子は固定的に設定されている。このため、同種のスレーブ装置を複数個バス接続する場合や、複数のシステム間で同種のスレーブ装置を用いる場合などには、スレーブ装置のハードウェア的構成は共通であるにもかかわらず識別子が異なるため、それぞれ異なるスレーブ装置として製造・管理する必要があった。これにより、スレーブ装置は汎用性に欠けたものとなり、組立て作業時に誤ったスレーブ装置を取り付けてしまう恐れがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汎用性が高く且つ誤ったスレーブ装置の取付けの防止を図ることができる車載機器制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明は、車両内に設置されるマスタ装置と該マスタ装置に接続された一又は複数のスレーブ装置とを備え、マスタ装置とスレーブ装置との間でシングルマスタ方式の通信を行う車載機器制御システムにおいて、バスの一方の端部にマスタ装置を接続するとともにバスにスレーブ装置をディージーチェーン接続し、スレーブ装置は、一対のバス間を電気的に短絡又は開放するスイッチ手段と、通信制御手段とを備え、スレーブ装置の通信制御手段は、識別子設定モード時にはスイッチ手段を開放状態に制御するとともに、バスから受信した通信電文に含まれる識別子を自身の識別子として設定するとともにマスタ装置に対して応答を返し、返答後にスイッチ手段を短絡状態に制御して通常モードに移行することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、バスに複数のスレーブ装置が接続されている状態において、識別子設定モード時には各スレーブ装置のバスが開放状態となるので、まず最もマスタ装置に近いスレーブ装置のみがマスタ装置の送出した通信電文を物理的に受信可能な状態となる。そしてスレーブ装置ではマスタ装置が送出した通信電文から識別子を取得し、自身の識別子として設定される。そして識別子の設定後のスレーブ装置ではバスが短絡されるので、識別子の設定されたスレーブ装置に対してマスタ装置とは反対側に位置する識別子未設定のスレーブ装置が、マスタ装置と通信可能となる。そして上記処理を繰り返すことによりバスに接続された全てのスレーブ装置において識別の設定が完了する。このように各スレーブ装置では、識別子設定モード時に識別子が自動的に設定されるので、組み付け前のスレーブ装置を汎用化することができるとともに組み付け作業性も向上する。
【0010】
本発明の好適な態様においては、マスタ装置の通信制御手段が、識別子設定モード時には、設定しようとするスレーブ装置の識別子を宛先とする通信電文をバスに送出し、該通信電文に対する応答を受信すると通常モードに移行する。このような処理により、識別子設定用の通信電文は識別子が未設定のスレーブ装置のみ確実に受信される。
【0011】
なお、マスタ装置・スレーブ装置間の通信規格としては例えばLIN(Local Interconnect Network)が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、各スレーブ装置では、識別子設定モード時に識別子が自動的に設定されるので、組み付け前のスレーブ装置を汎用化することができるとともに組み付け作業性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車載機器制御システムの構成図
【図2】マスタ装置の構成図
【図3】スレーブ層装置の構成図
【図4】車内空調システムの構成図
【図5】識別子リストの一例を説明する図
【図6】マスタ装置の動作を説明するフローチャート
【図7】スレーブ装置の動作を説明するフローチャート
【図8】スレーブ装置の動作を説明するフローチャート
【図9】車載機器制御システムの初期動作を説明するシーケンスチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車載機器制御システムについて図面を参照して説明する。図1は車載機器制御システムの構成図である。なお本実施の形態では、車内空調システムの制御システムを例にとって説明する。
【0015】
この車載機器制御システムは、図1に示すように、複数のECUが車載LANにバス10に接続している。本実施の形態では車載LANの規格としてLINを採用する。したがって、1つのECUのみマスタとして動作し、他のECUはスレーブとして動作する。本実施の形態では、マスタ装置100と、複数のスレーブ装置200とが車載LANのバス10に接続している。スレーブ装置200には、後述するように、例えばダンパを開閉するためのアクチュエータが接続されている。マスタ装置100は、各スレーブ装置200に接続されたアクチュエータの動作を制御する。
【0016】
本実施の形態では上述のように車載LANの規格としてLINを採用しているため、バス10は、電源線11,グランド線12,信号線13からなる。本発明の特徴的な点は、図1に示すように、各スレーブ装置200と信号線13との物理的な接続形態をバス接続ではなくディージーチェーン接続している点にある。なお、後述するようにスレーブ装置200の内部においては、信号線13との接続は状況によってバス接続とディージーチェーン接続が切り替えられる。また、図1に示すように、各スレーブ装置200と電源線11及びグランド線12との物理的な接続形態はバス接続としているがディージーチェーン接続としてもよい。バス10の一方の端部はマスタ装置100に接続している。
【0017】
マスタ装置100は、図2に示すように、車載LANのバス10の信号線13との接続用のトランシーバ101と、各スレーブ装置200に接続されたアクチュエータを制御するための制御回路110とを備えている。制御回路110は、主演算装置111と、不揮発性の記憶手段であるROM112と、揮発性の記憶手段であるRAM115とを備えている。ROM112には制御プログラム113と各スレーブ装置200の識別子のリスト114とが記憶されている。制御回路110は、ROM112に記憶されている制御プログラム113を実行することにより動作する。識別子リスト114の詳細について後述する。また、マスタ装置100は、バス10の電源線11・グランド線12間に直流電源120を印加している。なお、図2では説明の簡単のためマスタ装置100に電源を内蔵した例を図示したが、車両から供給される電源をバス10に供給する形態であってもよい。
【0018】
スレーブ装置200は、図3に示すように、バス10の信号線13に直列に接続したリレースイッチ201と、リレースイッチ201のマスタ装置100側の接点に接続された通信用のトランシーバ202と、マスタ装置100との通信を制御する通信制御部203と、アクチュエータ制御回路204と、前述のアクチュエータ205と、アクチュエータ205の回転角度を検出するポテンションメータ206とを備えている。リレースイッチ201は、通信制御部203により制御可能となっている。
【0019】
通信制御部203は、自己の識別子を記憶する自己識別子記憶部207を備えている。自己識別子記憶部207は、組み付け前には自己の識別子は記憶されておらず、識別子設定モードにおける処理により識別子が登録される。該識別子設定モードではマスタ装置100からの通信電文を受信する必要がある。このため、トランシーバ202及び通信制御部203は、識別子設定モードにおいては、バス10から検出したマスタ装置100からの通信電文を、該通信電文の宛先識別子に関係なく受信する。また該通信電文は識別子の自己識別子記憶部207への登録処理に関するものである。一方、トランシーバ202及び通信制御部203は、通常モードにおいては、自己識別子記憶部207に記憶された識別子宛のマスタ装置100から通信電文を処理する。該通信電文はアクチュエータ205の制御に関するものである。
【0020】
アクチュエータ制御回路204は、ポテンションメータ206の抵抗値(検出値)がマスタ装置100からの動作指示に含まれる目標値となるようにアクチュエータ205を駆動制御する。
【0021】
次に、スレーブ装置200により制御される車載機器の構成の一例について図4を参照して説明する。本実施の形態では、図4に示すように、空調装置本体300は、外気取入口301と内気取入口302とが形成されており、外気取入口301と内気取入口302の合流部には外気と内気の流入割合を調節するための取入口ダンパ303が回動自在に付設されている。該ダンパ303の下流にはファン304が配置されている。該ファン304により外気取入口301又は内気取入口302から外気又は内気が吸引される。ファン304の下流には蒸発器305が設けられている。該蒸発器305は冷凍サイクルを構成する装置であり図示しない圧縮機等に接続されている。さらに、蒸発器305の下流にはヒータ306が設けられており、該ヒータ306の蒸発器305側にはヒータへの空気の流入量を調節するヒータ用ダンパ307が回動自在に設けられている。さらに、空調装置本体300には、デフ吹出口308,ベント吹出口309,フット吹出口310が形成されている。各吹出口308,309,310には、デフ吹出口ダンパ311,ベント吹出口ダンパ312,フット吹出口ダンパ313がそれぞれ回動自在に設けられている。
【0022】
スレーブ装置200は、それぞれ1つのダンパの駆動制御を行う。すなわち各ダンパに対して1つのスレーブ装置200が対応して設けられている。上記各ダンパ303,307,311,312,313は、それぞれ図示しないリンク機構を介してスレーブ装置200のアクチュエータ205に接続している。
【0023】
次に、図5を参照して前記マスタ装置100に記憶されている識別子リスト114について説明する。なお、図5における識別子リスト114の「説明」の欄は各識別子の意味を解説するものであり、実際にROM112に記憶される識別子リスト114は「識別子」のみである。
【0024】
図5に示すように、各スレーブ装置200にはそれぞれ動作要求送信用の識別子とステータス要求送信用の識別子が割り当てられている。ステータス要求送信用の識別子は、動作要求送信用の識別子の次の値となっている。また、識別子リスト114は、バス10に接続されるスレーブ装置200のマスタ装置100から近い順序で、各スレーブ装置200の識別子が保持されている。図5の例では、取入口ダンパ制御用のスレーブ装置、デフ吹出口ダンパ制御用のスレーブ装置、ベント吹出口ダンパ制御用のスレーブ装置…、となっている。
【0025】
次に、本実施の形態に係る車載機器制御システムの組み付け処理について説明する。当該処理はマスタ装置100及び全てのスレーブ装置200をバス10に接続した状態で、マスタ装置100に電源が投入されることにより開始される。
【0026】
まずマスタ装置100の動作について図6を参照して説明する。図6はマスタ装置の動作を説明するフローチャートである。マスタ装置100の制御回路110は、車載機器制御システムの最初の起動時(電源投入時)には、識別子設定モードとして動作する。具体的にはマスタ装置100の制御回路110は、全てのスレーブ装置200に対するステータス要求をバス10に順次送出して、該ステータス要求に対する応答を確認する(ステップSM1〜4)。ここで、ステータス要求は識別子リスト114に記憶されているスレーブ装置200の識別子を宛先として指定する。また、ステータス要求の送出は識別子リスト114に記憶されている順序に従う。そして、マスタ装置100の制御回路110は、全てのスレーブ装置200からの応答を確認すると、通常モードに移行してスレーブ装置200の制御処理を開始する(ステップSM5,SM6)。一方、1つでもスレーブ装置200からの応答がなかった場合には、前記ステップSM1に処理を戻して再試行する。なお、前記ステップSM6の制御処理は従来周知の処理であり、スレーブ装置200に割り当てられた動作要求送信用の識別子及びステータス要求送信用の識別子を用いてスレーブ装置200と通信を行う。
【0027】
次にスレーブ装置の動作について図7及び図8を参照して説明する。図7は識別子設定モードにおけるスレーブ装置の動作を説明するフローチャート、図8は通常モードにおけるスレーブ装置の動作を説明するフローチャートである。
【0028】
スレーブ装置200の通信制御部203は、バス10を介してマスタ装置100から直流電源が供給されると動作を開始する。まず通信制御部203は、図7に示すように、自己識別子記憶部207に自身の識別子が既に登録されているかを判定し(ステップSS1)、既登録の場合には通常モードの待機状態に移行する。一方、未登録の場合には識別子設定モードとして動作する。該識別子設定モードでは、まず通信制御部203は、リレースイッチ201をオフに制御する(ステップSS2)。次に通信制御部203は、マスタ装置100がバス10に送出した通信電文(図6のステップSM2)を検出すると、該通信電文の宛先となっている識別子を自身の識別子として、該識別子を自己識別子記憶部207に記憶する(ステップSS3,SS4)。なお、本実施の形態では、各スレーブ装置200は自身の識別子を2つ用いるものとし、2つの識別子はそれぞれ連続した値となっている。そこで、通信制御部203は通信電文から取得した識別子と、該識別子に連続する値を他方の識別子として自己識別子記憶部207に記憶する。次に通信制御部203はマスタ装置100に対して応答を返す(ステップSS5)。以上の処理によりスレーブ装置200には自己の識別子が設定されたので、通信制御部203は、リレースイッチ201をオンに制御し(ステップSS6)、識別子設定モードから通常モードの待機状態に移行する。
【0029】
スレーブ装置200の通信制御部203は、図8に示すように、通常モードの待機状態においてマスタ装置100から通信電文を受信すると、当該通信電文が自己識別子記憶部207に記憶された自身の識別子宛の場合、それぞれの処理を行う。具体的には、通信制御部203は、動作要求送信用の識別子宛の通信電文の場合には、該動作要求をアクチュエータ制御回路204に送りアクチュエータ205を駆動制御する(ステップSS11)。アクチュエータ制御回路204は、ポテンションメータ206の検出値がマスタ装置100から受信した目標値となるようにアクチュエータ205をフィードバック制御する。他方、通信制御部203は、ステータス要求送信用の識別子宛の通信電文の場合には、アクチュエータ制御回路204がアクチュエータ205の駆動制御中の場合には「駆動中」である旨をマスタ装置100に応答し、アクチュエータ205が停止中の場合には「停止中」である旨をマスタ装置100に応答する(ステップSS21,S22,S23)。
【0030】
次に、本実施の形態に係る車載機器制御システム全体の初期動作について図9を参照して説明する。図9は車載機器制御システムの初期動作を説明するシーケンスチャートである。ここでは初めて車載機器制御システムを起動する場合について説明する。また、初期状態では、マスタ装置100及びスレーブ装置200が車載LANのバス10に接続されているものとする。ここでは、マスタ装置100から近い順に、第1のスレーブ装置200aと第2のスレーブ装置200bとがバス10に接続されているものとする。また、第1のスレーブ装置200aには識別子0x01を割り当てるものとし、第2のスレーブ装置200bには識別子0x03を割り当てるものとする。
【0031】
マスタ装置100の起動によりスレーブ装置200には電源線11及びグランド線12を介して電源が供給され、各スレーブ装置200は動作を開始する。各スレーブ装置200は、それぞれリレースイッチ201をオフに制御する(ステップSA1,SA2)。これによりマスタ装置100に最も近い第1のスレーブ装置200aはマスタ装置100と通信可能であるが、第2のスレーブ装置200bは通信不可能な状態となる。次にマスタ装置100は、識別子リスト114の順番にしたがって第1のスレーブ装置200aに対するステータス要求をバス10に送出する(ステップSA3)。ここで、ステータス要求の通信電文の宛先識別子は第1のスレーブ装置200aに割り当てる予定の0x01である。第1のスレーブ装置200aは、該通信電文の宛先識別子を取り出して自身の識別子として登録するとともに、マスタ装置100に対して応答する(ステップSA4,SA5)。次に、第1のスレーブ装置200aは、リレースイッチ201をオンに制御し、通常モードに移行する(ステップSA6)。これにより、第2のスレーブ装置200bもマスタ装置100と通信可能な状態となる。
【0032】
次に、マスタ装置100は、識別子リスト114の順番にしたがって第2のスレーブ装置200bに対するステータス要求をバス10に送出する(ステップSA7)。ここで、ステータス要求の通信電文の宛先識別子は第2のスレーブ装置200bに割り当てる予定の0x03である。したがって、該通信電文は第1のスレーブ装置200aにも到達するが、第1のスレーブ装置200aは既に通常モードとして動作しているので、該通信電文に対する処理は行わない。一方、第2のスレーブ装置200bは、該通信電文の宛先識別子を取り出して自身の識別子として登録するとともに、マスタ装置100に対して応答する(ステップSA8,SA9)。最後に、第2のスレーブ装置200bは、リレースイッチ201をオンに制御し、通常モードに移行する(ステップSA10)。
【0033】
以上の処理により車載LANのバス10にマスタ装置100及びスレーブ装置200を接続してシステムを起動させるとマスタ装置100から近い順に自動的に各スレーブ装置200に識別子が順次設定される。
【0034】
このように本実施の形態に係る車載機器制御システムによれば、各スレーブ装置200の識別子は組み付け作業時に自動的に付与されるので、組み付け前のスレーブ装置200を汎用化することができる。
【0035】
以上本発明の一実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施の形態では、バス10の信号線13を開放・短絡させるスイッチ手段としてリレースイッチを用いたが、他の手段を用いてもよい。例えば、バイポーラトランジスタ・電界効果トランジスタ・ダイオードなどの半導体素子を用いてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態では、スレーブ装置200に割り当てる識別子を識別子リスト114としてマスタ装置100のROM112に記憶していたが、該識別子は制御プログラム113に埋め込む形態で記憶するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態では、各スレーブ装置200に割り当てる識別子はそれぞれ2つとしたが、スレーブ装置200の種類によっては1つ或いは3つ以上であってもよい。
【0038】
また、上記の実施の形態では回動運動を行うアクチュエータ205の駆動制御について例示したが他の機器であっても本発明を実施できる。
【0039】
また、上記実施の形態では車内空調システムにおける適用例について説明したが、例えばパワーウィンドウやミラーの制御システムなど他のシステムにおいても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0040】
10…バス、11…電源線、12…グランド線、13…信号線、100…マスタ装置、110…制御回路、112…ROM、113…制御プログラム、114…識別子リスト、200…スレーブ装置、201…リレースイッチ、203…通信制御部、204…アクチュエータ制御回路、205…アクチュエータ、206…ポテンションメータ、207…自己識別子記憶部、300…空調装置本体、301…外気取入口、302…内気取入口、303…取入口ダンパ、304…ファン、305…蒸発器、306…ヒータ、307…ヒータ用ダンパ、308…デフ吹出口、309…ベント吹出口、310…フット吹出口、311…デフ吹出口ダンパ、312…ベント吹出口ダンパ、313…フット吹出口ダンパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内に設置されるマスタ装置と該マスタ装置に接続された一又は複数のスレーブ装置とを備え、マスタ装置とスレーブ装置との間でシングルマスタ方式の通信を行う車載機器制御システムにおいて、
バスの一方の端部にマスタ装置を接続するとともにバスにスレーブ装置をディージーチェーン接続し、
スレーブ装置は、一対のバス間を電気的に短絡又は開放するスイッチ手段と、通信制御手段とを備え、
スレーブ装置の通信制御手段は、識別子設定モード時にはスイッチ手段を開放状態に制御するとともに、バスから受信した通信電文に含まれる識別子を自身の識別子として設定するとともにマスタ装置に対して応答を返し、返答後にスイッチ手段を短絡状態に制御して通常モードに移行する
ことを特徴とする車載機器制御システム。
【請求項2】
マスタ装置は、識別子設定モード時には、設定しようとするスレーブ装置の識別子を宛先とする通信電文をバスに送出し、該通信電文に対する応答を受信すると通常モードに移行する通信制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の車載機器制御システム。
【請求項3】
マスタ装置・スレーブ装置間の通信規格としてLIN(Local Interconnect Network)を用いた
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載機器制御システム。
【請求項4】
車両内に設置されるマスタ装置と該マスタ装置に接続された一又は複数のスレーブ装置とを備え、マスタ装置とスレーブ装置との間でシングルマスタ方式の通信を行う車載機器制御システムにおけるスレーブ装置の識別子を設定する方法であって、
バスの一方の端部にマスタ装置を接続するとともにバスにスレーブ装置をディージーチェーン接続し、
スレーブ装置は、一対のバス間を電気的に短絡又は開放するスイッチ手段と、通信制御手段とを備え、
スレーブ装置の通信制御手段は、識別子設定モード時にはスイッチ手段を開放状態に制御するとともに、バスから受信した通信電文に含まれる識別子を自身の識別子として設定するとともにマスタ装置に対して応答を返し、返答後にスイッチ手段を短絡状態に制御して通常モードに移行する
ことを特徴とする車載機器制御システムにおける識別子設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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