説明

車載用二次電池

【課題】 安定かつ十分な起電力を発揮でき、簡易な構成で充放電が可能な車載用二次電池を提供する。
【解決手段】 発電部と充電部とを具備する車載用二次電池であって、
前記発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、前記充電部が、前記発電部における発電により生成した発電生成物から、前記反応物質を再生する反応物質再生手段を備え、さらに、前記反応物質再生手段を作動させるための電力を供給する電力供給手段を備えることを特徴とする車載用二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載用の二次電池に関し、さらに詳しくは、簡易な構成で電解質構成成分の再利用を図りながら充放電が可能な車載用二次電池を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の高まりにより、自動車技術においても二酸化炭素の削減に向けて、電気モーターとエンジンとを組み合わせたハイブリッド技術や、燃料電池自動車の研究開発が活発に行われている。しかし、現在使われている二次電池は鉛等有害な化合物を使っている場合が多く、廃棄上の問題となっている。また、体積当たりの蓄電容量も充分ではないことから、積載する電池の重量が自動車全体の重量増加を招き、燃費の低下を招くという問題がある。
【0003】
一方、制御の分野においては、エンジンだけでなく、ミッションや全ての駆動輪、人間によるハンドルやアクセル・ブレーキ操作の全てをモニターし、最適に制御することにより燃費の改善や、乗員の安全が図られようとしている。さらに、快適な移動空間を実現するためにエアコンやオーディオは必需品となっており、自動車内で必要とする電力は大幅に増加し、電池容量の増加が求められている。
【0004】
ここで、電池とは、物質が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。また、その化学エネルギーを使い切るまで電力を提供する一次電池、使い切った後に充電操作によって化学エネルギーを再び蓄えて再使用が可能な二次電池、更に、外部から化学エネルギーを有する物質を継続的に供給することで電気エネルギーを得る燃料電池に分類できる。現在、多種類の電池が開発されているが、各電池はそれぞれ、環境安全性、経済性、供給できる電気エネルギー量、携帯性や貯蔵性、使用環境対応性、リサイクル性等の各項目について長所と短所が異なるので、使用目的に合わせて電池が選択され、実用に供されている。いずれの電池においても共通の重要な技術要素は、どのような化学物質の反応を利用するのか、その反応をどのようにして促進するのか、また、その化学物質をどのような形態で貯蔵・供給・回収するのかという点にある。
【0005】
電池では、還元反応(相手に電子を与えるか、若しくは酸素を引き抜く)を引き起こす還元剤と、酸化反応(相手から電子を引き抜くか、若しくは酸素を与える)を引き起こす酸化剤と、の2種の化学物質を使用する。その化学反応を、相対する2つの電極で別々に引き起こすことによって、発生した電子のエネルギーを外部に取り出す(電子の発生に伴って両極で生成したイオンは電池内部で中和される)。それらの反応効率は、使用する化学物質の種類と反応様式、電極材質や活性度、また、電解質を含めた反応場の環境に依存する。更に、どのような物質を選択して電池を構成するかは、前述した使用時のみならず、製造時・廃棄時も含めた電池システム全体の良否に関わるポイントである。
【0006】
例えば、リチウムイオン二次電池は、電気エネルギー量に優れ、また、充電による再利用が可能である。しかし、リチウムが空気中の水分や酸素に対して非常に不安定な発火物であるため、その危険性を回避するためには電池のパッケージングや使用環境に十分な安全対策を払わねばならない。更に、電池寿命後の回収や再資源化が必須であり、電池の製造から使用・廃棄までの全体コストを引き上げてしまう。この問題は鉛系蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池といった二次電池の場合でも同様である。また、充放電を繰り返した際には、メモリー効果や電解質の劣化といったことが起こり、性能が低下するといった問題もある。
【0007】
一方で、上記のような二次電池は、貯蔵できる電力に制限がある上、充電に時間がかかるため、連続的に装置を駆動させる場合には不適当である。そのような中、水素燃料電池で発生した水を電気分解して、燃料の水素を再生し、連続的に電力を供給できる二次電池として使用する例が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、水素は可燃性の気体であるため、その貯蔵や取り扱いは容易でない。
【特許文献1】特開平7−99707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上から、本発明は、従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、電極反応を促進することで安定かつ十分な起電力を発揮することが可能であり、簡易な構成で電解質構成成分の再利用を図りながら充放電が可能な車載用二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は下記の本発明により達成される。
すなわち、本発明の第1の車載用二次電池は、発電部と充電部とを具備する車載用二次電池であって、
前記発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、
前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、
前記充電部が、前記発電部における発電により生成した発電生成物から、前記反応物質を再生する反応物質再生手段を備え、さらに、前記反応物質再生手段を作動させるための電力を供給する電力供給手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の車載用二次電池は、発電部と充電部とを具備する車載用二次電池であって、
前記発電部が、複数の単位発電セルを順次直列接続して構成されており、
前記単位発電セルが、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、
前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、
前記充電部が、前記発電部における発電により生成した発電生成物から、前記反応物質を再生する反応物質再生手段を備えることを特徴とする車載用二次電池である。
【0011】
本発明の第1および第2の車載用二次電池においては、下記第1〜第18の態様を少なくとも1つ適用することが好ましい。
(1)第1の態様は、前記充電部が、前記発電生成物から、前記酸性媒体および/または前記塩基性媒体を再生する媒体再生手段をさらに備える態様である。
(2)第2の態様は、前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなる態様である。
(3)第3の態様は、前記反応物質が、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる態様である。
(4)第4の態様は、前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質である態様である。
(5)第5の態様は、前記反応物質が、過酸化水素である態様である。
【0012】
(6)第6の態様は、前記反応物質再生手段が、陽極と陰極とを有し、前記陰極に前記発電生成物である酸素および水を供給して、前記過酸化水素を再生する手段である態様である。
(7)第7の態様は、前記媒体再生手段が、陽イオン交換膜、バイポーラ膜及び陰イオン交換膜を配置して、塩室、酸室及び塩基室を形成させ、前記塩室に前記発電生成物である中和塩水溶液を供給して電気透析を行い、前記酸室及び前記塩基室のそれぞれから、前記酸性水溶液及び前記塩基性水溶液を排出させる3室セル方式のセルを具備する態様である。
【0013】
(8)第8の態様は、前記発電部において、前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造が設けられている態様である。
(9)第9の態様は、前記単位発電セルにおいて、前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造が設けられている態様である。
【0014】
(10)第10の態様は、前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む態様である。
(11)第11の態様は、前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む態様である。
【0015】
(12)第12の態様は、前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成される態様である。
(13)第13の態様は、前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、寒天、又はその塩類によりゲル化してなる態様である。
(14)第14の態様は、前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化してなる態様である。
【0016】
(15)第15の態様は、前記第1の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成される態様である。
(16)第16の態様は、前記第2の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成される態様である。
【0017】
(17)第17の態様は、前記第1の電極及び第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状である態様である。
(18)第18の態様は、前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれ配置されてなる態様である
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極反応を促進することで、安定して十分な起電力を発揮させることが可能であり、かつ、簡易な構成で電解質構成成分(反応物質等)の再利用を図りながら充放電が可能な車載用二次電池を提供することができる。
また、電極に有害な金属を用いない場合は、パッケージングの簡素化と共に、小型・軽量化が可能で、かつ、廃棄が簡単な点で、自動車用等の用途に最適な車載用二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1および第2の車載用二次電池およびそれらの発電方法(発電機構)について詳細に説明する。
【0020】
<第1の車載用二次電池>
本発明の第1の車載用二次電池は、大きく分けて(1)発電部と(2)充電部との2部から構成される。
【0021】
(1)発電部:
発電部は、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備えてなる。そして、酸性媒体及び塩基性媒体は互いに隣接もしくは近設してなり、酸性媒体及び塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなる。
本発明の電池は、上述の各部材を備える構成を有するバイポーラー型の電池である。そして、後述する充電部の再生手段と組み合わせることで、二次電池とすることが可能となる。なお、本発明において、バイポーラー型の電池とは、酸性媒体と塩基性媒体とが隣接もしくは近設し、これらの中に電気エネルギーを取り出すための物質(反応物質)と電極が含まれる構成を有するものである。
【0022】
酸性媒体または塩基性媒体に含有される反応物質は、下記のような作用により正極側及び/または負極側での電極反応を促進し、効率のよい電気エネルギーの発生を可能とする。すなわち、かかる反応物質が、酸性媒体または塩基性媒体に存在しないと、電池としての十分な起電力が得られないことになる。
【0023】
例えば、上記反応物質が、酸性媒体及び塩基性媒体のそれぞれに含有されてなる場合、酸性媒体中の反応物質である第1の物質は、その酸性媒体中に含まれる水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせる。一方、塩基性媒体中の反応物質である第2の物質は、その塩基性媒体中に含まれる水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせる。
【0024】
特に、本発明における車載用二次電池は、まず、(1)上記の酸性媒体中またはこれに接触する電極近傍で第1の物質及び水素イオンが共存し、共に反応系物質として第1の電極から電子を奪う(酸化する)反応を引き起こす。また、(2)上記塩基性媒体中或いはこれに接触する電極近傍で第2の物質及び水酸化物イオンが共存し、共に反応系物質として電極に電子を与える(還元する)反応を引き起こす。このような(1)及び(2)の反応が同時に進行して、外部回路を駆動する電気エネルギーを発生する。
【0025】
なお、本発明の車載用二次電池は、バイポーラー型反応場において、酸性媒体中の水素イオンは、第1の物質による第1の電極から電子を奪う反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する(化学平衡を生成系方向にずらす)作用を有する。一方、塩基性媒体を構成する水酸化物イオンは、第2の物質による第2の電極へと電子を供与する反応に加わり、また、その濃度増加は反応を促進する作用を有する。このため、水素イオン濃度或いは水酸化物イオン濃度を高くする、即ち、酸性媒体中ではpHを低くし、塩基性媒体ではpHを高くすることで反応を増強させることが可能となり、出力を高めることが可能な構成を有している点でも有効である。
以下、発電部を構成する各部材について、詳細に説明する。
【0026】
(酸性媒体及び塩基性媒体)
本発明において、酸性媒体は、pH7未満(好ましくは、pHが3以下)である媒体を指し、水素イオンが存在する酸性反応場を形成し得ることが好ましい。また、塩基性媒体はpH7を超える(好ましくは、pHが11以上)媒体を指し、水酸化物イオンが存在する塩基性反応場を形成し得ることが好ましい。
【0027】
これらの酸性媒体及び塩基性媒体としては、それぞれが独立に、液体状態、ゲル状態、固体状態のいずれの態様であってもよいが、両媒体が同じ態様であることが好ましい。また、酸性媒体及び塩基性媒体としては、有機化合物、無機化合物の種類に関らず用いることができる。
【0028】
酸性媒体と塩基性媒体との好ましい組み合わせは、例えば、硫酸や塩酸、リン酸等の酸性水溶液と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アンモニウム化合物等の塩基性水溶液と、の水溶液の組み合わせ;それらの水溶液をゲル化剤によってゲル化したイオン伝導性ゲルの組み合わせ;などが挙げられる。
【0029】
より具体的には、酸性水溶液としては、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含む水溶液を用いることが好ましく、中でも、強酸である、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸を含むことがより好ましい。
【0030】
また、塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び、水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含む水溶液を用いることができ、中でも、強塩基である、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを含むことがより好ましい。
【0031】
さらに、酸性媒体としての酸性のイオン伝導性ゲルは、上記のような酸性水溶液を、水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、寒天、又はその塩類などのゲル化剤を用いて、ゲル化したものが好ましい。
一方、塩基性媒体としての塩基性のイオン伝導性ゲルは、上記のような塩基性水溶液を、例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸やその塩類、をゲル化剤として用いて、ゲル化したものが好ましい。
なお、上記の酸や塩基は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、ゲル化剤の使用方法も同様である。
【0032】
発電部において、酸性媒体及び塩基性媒体は、互いに隣接もしくは近設することを必須とするが、これは、酸性媒体中で水素イオンを放出することにより生成した対陰イオンと、塩基性媒体中で水酸化物イオンを放出したことにより生成した対陽イオンと、により塩を形成させて電荷のバランスをとることを可能とするためである。そのため、例えば、上述のように、両媒体が、酸性水溶液と塩基性水溶液とからなる場合、生成した陽イオン及び/又は陰イオンを透過可能な特性を有している膜、あるいは、生成した陽イオン及び/又は陰イオンが移動可能な塩橋を用いれば、酸性媒体と塩基性媒体との間が分離される態様であってもかまわない。また、それぞれの全体が隣接している必要はなく、その一部が隣接していればよい。
【0033】
(反応物質)
反応物質は、酸性媒体中に含有させる場合は、当該酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させる物質(酸化剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。一方、塩基性媒体中に含有させる場合は、当該塩基性媒体中で、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を生成させる物質(還元剤)であれば、如何なるものをも用いることができる。
ここでは、好ましい態様として、酸性媒体に含有される反応物質としての第1の物質、及び、塩基性媒体に含有される反応物質としての第2の物質を例に、以下詳細に説明する。
【0034】
第1の物質としては、水素イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、酸素、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸等を用いることができる。また、これらの物質を含有する液体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体、の状態で第1の物質を供給するようにしてもよい。
【0035】
また、第2の物質としては、水酸化物イオン濃度が高い場合に反応が促進される物質であることが好ましい。具体的には、過酸化水素、水素、ヒドラジン等を用いることができる。また、これらの物質を含有する液体、あるいは、化学変化によってこれらの物質を放出する液体、の状態で第2の物質を供給するようにしてもよい。
【0036】
第1の物質または第2の物質としては、鉄、マンガン、クロム、バナジウムといった酸化・還元反応によって価数を変化できる金属イオンや、それらの金属錯体を用いることができ、やはりこれらを含有する液体等を用いてこれらの物質を供給することもできる。
【0037】
上記の中でも、第1の物質及び第2の物質が、同一成分からなることが好ましい。このような物質は、酸性媒体中で、水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生成させ、塩基性媒体中では、水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する還元反応を起こさせる性質を有する。この場合には、電池の構成が容易になり、従来の電池で大きな課題であった正極側と負極側の化学物質の分離膜の選択の自由度が拡がるとともに、酸性媒体と塩基性媒体が混合されない状態に保てる場合には必ずしも分離膜を必要としない。
【0038】
酸化剤及び還元剤のどちらにも使用できる物質としては、特に過酸化水素が好ましい。この理由については後で詳細に説明する。なお、過酸化水素を含有する液体、あるいは、化学変化によって過酸化水素を放出する液体を用いて、過酸化水素を供給することが、取り扱いがより簡易になる点で好ましい。過酸化水素の供給手段である「液体」は、溶液(溶媒として、水、有機溶媒等を含む)、分散液、ゲルの形態のいずれであってもよい。また、これらの使用形態は、上述した酸性媒体及び塩基性媒体の形態との好ましい組み合わせにより選択されることが望ましい。
また、過酸化水素は、反応開始以前から媒体中に混合若しくは分散されるか、電極の近傍に設置された流路を通して、或いは、毛細管への染込みを利用して、或いは直接的に媒体へ添加される方式としてもよい。
【0039】
第1の物質及び第2の物質が過酸化水素の場合は、それぞれ、酸性媒体および塩基性媒体中に、水素イオン、水酸化物イオンに対してそれぞれ、mol比で2(水素イオン、水酸化物イオン):1(過酸化水素)になるように含有されるのが最も好ましい。なぜなら、後述する発電反応から、上記比率で含有された場合が、過酸化水素が過不足無く反応するからである。
【0040】
以上のような構成によれば、電極での反応に水素イオンH+と水酸化物イオンOH-が関与する場合、酸性媒体中で第1の物質が水素イオンH+を伴って第1の電極から電子を奪う酸化反応を生じさせ、塩基性媒体中で第2の物質が水酸化物イオンOH-を伴って電極へと電子を供与する還元反応を生じさせる。このとき、酸性媒体中での酸化反応による起電力は、塩基性媒体中で酸化反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水素イオンH+が反応系の物質であるため、水素イオン濃度の高い酸性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を高くするためである。また、塩基性媒体中での還元反応による起電力は、酸性媒体中で還元反応させるよりも、原理的に大きくなる。これは、水酸化物イオンOH-が反応系の物質であるため、水酸化物イオン濃度の高い塩基性媒体中では化学平衡が生成系に傾き、結果として酸化電位を低くするためである。
このため、本発明のバイポーラー型電池の構成では、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源であり、電池内部の中和反応の発生箇所が変動する性質を有する領域での起電力が主体的となるバイポーラー型の電池と比べて、安定に電力を発生させることができる。
【0041】
(第1の電極及び第2の電極)
本発明において、第1の電極は正極であり、第2の電極は負極として機能する。これら第1の電極及び第2の電極の材質としては、従来の電池における電極と同様のものを用いることができる。より具体的には、第1の電極(正極)として、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。さらに、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
【0042】
第2の電極(負極)としては、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金等が挙げられる。また、表面を不動態化したチタン、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。さらに、グラファイトやカーボンナノチューブ等の炭素構造体、アモルファスカーボン、グラッシーカーボン等が挙げられる。ただし、耐久性の点から、白金、白金黒、酸化白金被覆白金がより好ましい。
【0043】
本発明において、第1の電極及び第2の電極のいずれもが、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることが好ましい。特に、本発明の実施形態の場合は、電池内で発生した気体の排出流路となるべく、網目状であることが好ましい。ここで、「網目状」とは、少なくとも、排出しようとする気体が通り抜けられる貫通路が存在する多孔質状態であることを指す。
【0044】
網目状の電極として、具体的には、金属製のメッシュやパンチングメタル板、発泡金属シートに、上記の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法によって付着させてもよいし、また、セルロースや合成高分子製の紙類に、同様の方法或いはその組合せを用いて上記の電極用材質を付着させてもよい。
また、第1の電極及び第2の電極が、イオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルのような形状保持性の高い両媒体に配置される場合、かかるイオン交換樹脂やイオン伝導性ゲルの表面に、所望の電極用材料を、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法を用いて配置することも好ましい態様である。
【0045】
(2)充電部:
充電部は、既述の発電部における発電により生成した発電生成物から、反応物質を再生する反応物質再生手段を有する。すなわち、反応物質として過酸化水素を使用する場合は、発電生成物には酸素および水が含まれ、反応物質再生手段により、この発電生成物から過酸化水素を再生することになる。
【0046】
過酸化水素を始めとした反応物質の再生は、公知の技術(例えば、Journal of Applied Electrochemistry Vol.25 613−(1995))を用いることができる。例えば、反応物質が過酸化水素である場合、陽極と陰極とを有し、陰極に発電生成物である酸素および水を供給して、過酸化水素を再生する電解セルのような手段を適用することが好ましい。このようにして過酸化水素を、発電反応によって生成した水と酸素とから合成(再生)することにより、外部から新たに物質を補給する必要がない。
【0047】
また、充電部は、発電生成物から、酸性媒体および/または塩基性媒体を再生する媒体再生手段をさらに備えることが好ましい。
酸性媒体・塩基性媒体の再生も、電気的に酸・塩基を合成する公知の技術(例えば、特開平7−178319号公報)を用いることができる。例えば、酸性媒体に硫酸水溶液、塩基性媒体に水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合には、反応後に生成した硫酸ナトリウム水溶液から、陽イオン交換膜、バイポーラー膜、陰イオン交換膜を使用した三室セル(塩室、酸室及び塩基室)方式のセルを用いて電気透析により硫酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を合成すればよい。
【0048】
このように、充電部において、反応物質、酸性媒体および塩基性媒体を再生することにより、充電後に再度使用(再放電)しても、起電力が回復しやすく、常に、フレッシュな状態の反応場を提供できる。このような効果が発揮されるのは、リチウム系の二次電池に比べ、本発明の車載用二次電池(特に、反応物質に過酸化水素を使用した場合)が簡単な構成だからである。従って、本発明の車載用二次電池は、種々の二次電池に比べ、繰り返し使用しても、起電力の降下が生じることがない。
【0049】
充電部には、反応物質再生手段を作動させるための電力を供給する電力供給手段を備える。反応物質再生手段を作動させるための電力供給手段としては、走行時の自動車のエンジン回転、あるいは制動時の自動車の車輪の回転を利用して発電を行う発電機、あるいは太陽電池を使用することができる。具体的には、発電機は好ましくは、エンジン回転の伝達経路上のエンジンと車輪の間に位置し、さらにエンジンと発電機の間にクラッチを設ける。このような構成にすると、走行時は前記クラッチが繋がっているためエンジンの回転を用いて発電を行う事ができ、また制動時は前記クラッチによりエンジンと発電機を切り離すことにより、車輪の回転だけを用いて発電を行う事ができる。さらに日中は、太陽電池からの電力を使用することによりアイドリングストップ時にも発電を行う事ができる。このような発電機からの電力を用いることにより、充電を行いながら発電することが可能となり、連続的に安定した電力を供給することができる電池となる。その結果、ヘッドライトやカーエアコンおよびカーステレオのように連続使用を前提とした車載機器の電源として使用可能な、過酸化水素を反応物質とした車載用二次電池を提供することができる。
【0050】
また、酸性媒体および塩基性媒体としてゲル状の媒体を使用する場合のこれらの再生方法は、反応によって生成した中和塩水溶液をゲルから排出させ、新たに酸性水溶液、塩基性水溶液をゲル中に供給してやればよい。その際に排出された中和塩水溶液から、上記の手段によって、新たにゲルに供給する酸性水溶液、塩基性水溶液を再生してやればよい。
【0051】
(3)本発明の車載用二次電池の好ましい実施形態:
以下、本発明の二次電池の好ましい実施形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、説明の便宜上、反応物質に過酸化水素を用いた例により、本発明の車載用二次電池を説明する。
【0052】
図2に示す車載用二次電池は、発電部100および充電部200の2部から構成され、その他に、充電するための充電用車載発電機300が設けられている。充電部200は、過酸化水素を再生するための反応物質再生手段210と、酸性媒体および/または塩基性媒体を再生するための媒体再生手段220を備える。
【0053】
この車載用二次電池の発電部100は、既述のように、酸性媒体として硫酸水溶液などの液体を、塩基性媒体として水酸化ナトリウム水溶液などの液体を用いた、酸−塩基バイポーラー反応場を有する。後述するように、発電に伴って、過酸化水素、硫酸水溶液および水酸化ナトリウムから、酸素および水と硫酸ナトリウムとが発電生成物として生成する。これらの発電生成物の増大に伴い起電力が低下すると、充電部200にて、充電が行われる。
【0054】
充電に際しては、まず、酸素および水を反応物質再生手段210に供給し、充電用車載発電機300を使用して過酸化水素に再生し、これを再び発電部の酸性媒体および/または塩基性媒体中へ供給する。一方、中和塩である硫酸ナトリウムは、媒体再生手段に供給され、充電用車載発電機300を使用して硫酸および水酸化ナトリウムに再生され、これらを再び酸性媒体および塩基性媒体中へそれぞれ供給する。このようにして、本発明の車載用二次電池の発電および充電が行われる。
【0055】
発電部の具体的な構成に関して、図3を用いて説明する。
図3(a)は、発電部の概略上面透視図である。ここに示されるように、当該発電部は、スライドガラス11とカバーガラス10との間にスペーサ(図3(b)における部材12)を介し、毛管流路1(深さ50μm、幅1000μm)が形成されている。この毛管流路1は、液体の酸性媒体と、液体の塩基性媒体と、を供給するための入口2及び入口3と、排出するための出口4及び出口5とを有する。例えば、入口2から酸性水溶液aを、入口3から塩基性水溶液bを、毛管流路1に流した時、両液体の粘度やその流速が適当である場合には毛管流路1の合流部分において層流(レイノルズ流)が形成される。
【0056】
この層流について、図3(b)を参照して説明する。図3(b)は、図3(a)の発電部をA−A’で切断した際に、両媒体の流れの方向からみた断面図である。これに示すように、酸性水溶液a及び塩基性水溶液bは、毛管流路1の合流部分であっても、それぞれ、層流a及び層流bを形成し、各々が互いに接しながらも、交じり合うことなく、毛管流路1内を流れることになる。そして、層流a及び層流bを形成したまま、合流部分を通過して、分岐部分で再び分離し、出口4から酸性水溶液aが、出口5から塩基性水溶液bが排出され、それぞれが独立して回収される。
このような層流を形成している毛管流路1の合流部分の底部には、2つの電極6及び8が設けられており、それぞれの接続端子7及び9を通じて、外部へと電力を取り出すことができる。
【0057】
このように、層流を形成し、2つの液体が接触しているにも関らず、混合しない状態を形成するためには、毛細管流路における粘性流体の特性を応用することで実現できる。これは、液体の粘性、流速、また、流路形状(管径或いは流路幅や深さ)に依存した定数のレイノルズ数(Re)が約2000以下の場合に起きる現象(レイノルズ流現象)である。この現象を用いると、毛細管中で、適当な粘度と移動速度とを有する2液は、層流となって、非常に混合し難くなる特性が付与される。そのため、両層流に、第1の物質と第2の物質とをそれぞれ共存させた状態で、それぞれの層流中に電極を置くと、酸性媒体中における酸化反応と、塩基性媒体中における還元反応が生じ、起電力が発現して、電池となる。
【0058】
この発電部を1つの単位セルとすると、複数の単位セルを並列若しくは直列に配列することで、それぞれ電流量及び電圧の増加が達成される。このような毛細管流路の複雑な構造は、ガラス、石英、シリコン、高分子フィルム、プラスチック樹脂、セラミック、グラファイト、金属等の基板(チップ)に対して、超音波研削や半導体フォトリソグラィー、また、サンドブラストや射出形成、シリコン樹脂モールディング等の既存加工技術を適用することで容易に作製できる。したがって、単位セルの集積化及び複数のチップを重ねる積層化を行うことで、所望の性能(電流及び電圧)を有する発電部が構築可能になる。
【0059】
車載用二次電池の出力電圧としては通常12Vが用いられるため、本発明における単位セルを車載用二次電池として利用するためには、必要な電圧が得られる数だけ単位セルを直列に繋ぐ事が必要となる。具体的には12Vを、単位セルの最大出力時の起電力で割って少数点以下を切り上げた数だけ直列に繋ぐ必要がある。また、必要な電流値を得るためには、さらにこの12V単位を必要数だけ並列に接続して使用すればよい。この際、全ての単位セルの液体の酸性媒体と、液体の塩基性媒体と、を供給するための入口2及び入口3と、排出するための出口4及び出口5は、その単位セルの直列・並列接続に関係なく、各々並列に接合する方が出力を安定させるためには好ましい。
【0060】
充電部のうちの反応物質再生手段は、例えば、陽極と陰極とを有し、陰極に発電反応によって生じた酸素と水とを供給して過酸化水素を製造する電解セルである。
また、媒体再生手段は、例えば、陽イオン交換膜、バイポーラー膜、及び陰イオン交換膜を順に複数配列させ、塩室、酸室、及び塩基室を形成させ、塩室に発電反応によって生じた中和塩水溶液(硫酸ナトリウム水溶液)を供給して電気透析を行い、酸室及び塩基室から酸性水溶液及び塩基性水溶液を排出させる三室セル方式のセルである。
【0061】
充電部としては、既述のように、走行時の自動車のエンジン回転、あるいは制動時の自動車の車輪の回転を利用して発電を行う発電機からの電力、あるいは、太陽電池からの電力を用いればよい。発電部と充電部とを組み合わせることによって、車載用二次電池が構成される。
【0062】
酸性媒体として硫酸水溶液、塩基性媒体として水酸化ナトリウム水溶液を使用した場合、発電反応によって、酸素ガス及び硫酸ナトリウム水溶液が生成される。充電部ではこれらの生成物から反応物である過酸化水素、硫酸水溶液、及び水酸化ナトリウム水溶液を再生する操作を行う。
【0063】
充電部の具体的な構成について、図4〜図6を用いて説明する。
図4は、充電部の全体構成を概略的に示した説明図である。まず、硫酸ナトリウム水溶液を電気透析槽20に供給する。電気透析槽20は、陽イオン交換膜や陰イオン交換膜を場合によっては交互に組み合わせて、脱塩室22と濃縮室24とからなる構造を有している。そして、その両端に陽極及び陰極が配置され、直流電流を印加させて透析操作が行われる。その結果、脱塩室22からは淡塩水化された水が、濃縮室24からは濃縮された硫酸ナトリウム水溶液が生成する。淡塩水化された水は、適宜、反応物質再生手段30の陰極室34、陽極室32や、媒体再生手段40の塩室42、酸室44、塩基室46に供給される。また、硫酸ナトリウム水溶液は、媒体再生手段40の塩室42に供給される。
【0064】
過酸化水素の再生に用いる反応物質再生手段(図4の符号30)は、図5に示すように、陽極32aを配した陽極室32と陰極34aを配した陰極室34とが隔膜36によって仕切られた電解セル構造をとる。脱塩室22から供給される水を陽極室32および陰極室34に、発電によって生じた酸素を陰極室34に供給し、陽極32aと陰極34aとの間に直流電圧を印加することにより、陰極34aで過酸化水素が生成し、過酸化水素水溶液が再生される。そして、陰極室34で生成したこの過酸化水素水溶液を発電部へ供給する。一方、陽極室32の液(水)は再び、反応物質再生手段30に循環供給される。なお、過酸化水素水溶液の再生には、前述した淡塩水化された水(正確には、薄い硫酸ナトリウム水溶液)を用いても実際の工程ではほとんど問題になることはない。
【0065】
酸性媒体や塩基性媒体の再生に用いる媒体再生手段(図4の符号40)は、図6に示すように、電気透析槽となっており、陽イオン交換膜47、陰イオン交換膜、及び、48バイポーラー膜49を交互に組み合わせることによって、塩室42、酸室44及び塩基室46が形成されている。濃縮室3から供給される硫酸ナトリウム水溶液は、バイポーラー膜を利用した電気透析槽である媒体再生手段40のうち、塩室42に供給される。端部に配置された陽極及び陰極に直流が印加され、水の分解を伴う電気透析が行われる。その結果、酸室44にはバイポーラー膜49での水分裂現象によって生じた水素イオンと、塩室42から透過してきた硫酸イオンとから硫酸が再生し、塩基室46にはバイポーラー膜49での水分裂現象によって生じた水酸化物イオンと、塩室42から透過してきたナトリウムイオンとから水酸化ナトリウムが再生する。酸室44及び塩基室46には、脱塩室22から排出された水の一部を供給し、酸・塩基の濃度を調整し、発電部へ供給する。塩室42に供給された液は淡塩水化され、再び、媒体再生手段40に供給される。
【0066】
以上のような充電部を設けることで、簡易な構成で電解質構成成分(反応物質や酸性媒体および塩基性媒体)の再利用を図りながら充放電を可能とすることができる。
なお、反応物質を2種使用する場合は、それぞれについて反応物質再生手段を設ければよい。
【0067】
<第2の車載用二次電池>
本発明の第2の車載用二次電池は、発電部と充電部とを具備し、
前記発電部が、複数の単位発電セルを順次直列接続して構成されていること以外は、第1の車載用二次電池と同様である。
【0068】
複数の単位発電セルが順次直列接続して構成されている態様としては、図3に示すような発電部を単位発電セルとし、これを複数用意して、これらを直列に接続した構成が挙げられる。具体例を図9に示す。
【0069】
すなわち、図9(a)のA−A’断面図である図9(b)に示すように、単位発電セルとしては、層流bが形成される側の電極8をスライドガラス11上ではなく、カバーガラス10上に設け、さらに、カバーガラス10の側面から裏面(カバーガラス10が層流bと接触しない面)にかけて当該電極8(符号8aに相当)を設ける。同様に、スライドガラス11上の電極6も、その側面から裏面(スライドガラス11が層流aと接触しない面)にかけて当該電極6(符号6aに相当)を設ける。その結果、図9(a)に示すように、単位発電セルの上下面に電極が設けられた構成となり、このような単位発電セルの電極8aおよび電極6aに、他の単位発電セルを順次重ねるようにして、直列に接続することが可能となる。
【0070】
第2の車載用二次電池によれば、複数の単位発電セルを配線等を介して接続する必要がなくなるため、小型化および軽量化を図ることが可能となる。また、簡易な構成であるため、所望の電圧に応じた組み合わせが可能となり、種々の用途への適用性を広げることができる。
【0071】
<発電方法(発電機構)>
本発明の発電方法(発電機構)は、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを互いに隣接もしくは近設させた状態で、酸性媒体及び塩基性媒体の少なくともいずれかに含有されてなる反応物質により、酸性媒体中での酸化反応及び/または塩基性媒体中での還元反応を促進させて、発電を行う発電方法である。そして、反応物質が、発電により生成する発電生成物から、再び反応物質を再生して酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに供給されるものである。
本発明の発電方法は、例えば、本発明の車載用二次電池を使用することで実施することができる。
【0072】
本発明の発電方法によれば、電極における酸化・還元反応により生ずる起電力が、電池から得られる電圧の主体的な源となり、その結果、安定に電力を発生させることができる。また、簡易な構成で電解質構成成分(反応物質や酸性媒体および塩基性媒体)の再利用を図りながら充放電が可能となる。
【0073】
本発明の車載用二次電池を用いた場合、本発明の発電方法における発電機構は、以下に説明する通りになると考えられる。
すなわち、酸性媒体に含有される第1の物質が水素イオンを伴って第1の電極から電子を奪う反応を生じさせ、かつ、塩基性媒体に含有される第2の物質が水酸化物イオンを伴って第2の電極へと電子を供与する反応を生じさせて発電が起こると考えられる。
この反応により、第1物質及び第2の物質が内部エネルギーの低い複数の物質に化学変化することによって、その分のエネルギーを外部に電気エネルギーとして放出して電力を得ることができる。
【0074】
特に、酸性媒体が酸性水溶液、塩基性媒体が塩基性水溶液からなり、第1の物質及び第2の物質が、いずれも過酸化水素である場合、過酸化水素は、分解反応によって水と酸素を生成する。この化学反応を、本発明の電池のように、別々の電極で酸化反応と還元反応に分離して行うと、起電力を生じる。即ち、過酸化水素は、酸性反応場では酸化作用を有し、一方で、塩基性反応場では還元作用を有するため、起電力が発生する。このような、酸−塩基バイポーラー反応場を利用することで、本発明の発電方法が実現される。
【0075】
より具体的に、本発明の発電方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、正極(第1の電極)が配置されている酸性反応場(酸性媒体)では、過酸化水素が酸化剤として働き、下記(式1)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極から電子を受け取り、水を生成する。また、負極(第2の電極)が配置されている塩基性反応場(塩基性媒体)では、過酸化水素が還元剤として働き、下記(式2)に示されるように、過酸化水素の酸素原子が電極に電子を供与して、酸素と水を生成する。これら反応により、起電力が発生し、発電が行われる。
【0076】
22(aq)+2H++2e- → 2H2O ・・・(式1)
22(aq)+2OH- → O2+2H2O+2e- ・・・(式2)
上記式中、「(aq)」とは水和状態を示す(下記(式3)も同様)。
【0077】
なお、反応場内においては、酸性媒体中に存在する水素イオンの対アニオン(図1中では、硫酸イオンSO42-に相当する)と、塩基性媒体中に存在する水酸化物イオンの対カチオン(図1中では、ナトリウムイオンNa+)と、が両媒体の界面で塩を形成することで、電荷のバランスを取ることができる。このとき、形成される塩は、水溶液中では通常イオン化する方が安定であるため、塩の形成による起電力への効果は、電極における酸化或いは還元反応における起電力と比べるとはるかに小さい。この結果、電極反応が主体的となる本発明のバイポーラー型電池は、酸性・塩基性媒体界面における中和反応を主体としたバイポーラー型電池と比べ、安定した発電を行える性質を有することとなる。
【0078】
上記(式1)と(式2)の半反応式をまとめたイオン反応式(電荷のバランスが、酸性・塩基性媒体界面での水のイオン分解によって取られる場合)を下記(式3)に示す。
【0079】
22(aq) → H2O+1/2O2 ・・・(式3)
【0080】
熱力学計算によると、この反応のエンタルピー変化(ΔH)、エントロピー変化(ΔS)、ギブスの自由エネルギー変化(ΔG、温度T:単位はケルビン(K))は、それぞれ、ΔH=−94.7kJ/mol、ΔS=28J/Kmol、ΔG=ΔH−TΔS=−103.1kJ/molとなる。
【0081】
また、理論起電力(nは反応に関る電子数、Fはファラデー定数)と理論最大効率(η)は、それぞれ、E=−ΔG/nF=1.07V、η=ΔG/ΔH×100=109%と計算される。この反応の理論的特徴は、過酸化水素分解反応でエントロピーが増加してΔSの符号が正になることである。そのため、ΔGの絶対値がΔHより大きくなり、理論最大効率が100%を超える。これとは異なり、水素−酸素系やダイレクトメタノール系等、他の燃料電池反応では、ΔSの符号は負である。
【0082】
これらのことから、本発明の発電方法において、第1の物質及び第2の物質に過酸化水素を用いた場合の理論的特徴を以下に挙げる。
従来より知られている他の燃料電池では、原理的に、エントロピー変化量TΔSを発電に利用できず熱として放出する。一方、本機構では、外界から熱を吸収して得たエントロピーの増加分を発電に利用することができる。そして、反応温度Tが高い場合の方が、ΔGの絶対値が大きくなり起電力が高くなる。
【0083】
実用電池では、イオン反応式の理論起電力だけで出力電圧が決まるのではなく、過電圧等によって電圧が低下し同時に熱を発生する。例えば、単位電池をスタックして集積化する場合、或いは、電池を製品内部に組み込む場合に、この熱が大きな問題になる。しかし、上述のように、本発明の発電方法によれば、理論的にはその熱を発電に再利用することができ、全体的な熱発生が少なくなる可能性がある。また、発電に利用できるエネルギー総量に相当するΔGは水素・酸素燃料電池に比較して半分程度であるが、n=1(水素−酸素系の燃料電池の場合はn=2)であるために理論起電力は同程度となる。
【0084】
発電生成物から、再び反応物質を再生して酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに供給するシステムについては、既述の二次電池の場合と同様である。
【0085】
また、上記のことから、本発明の車載用二次電池における発電方法において、第1の物質及び第2の物質に過酸化水素を用いた場合には、既述のような効果の他に、下記のような効果が得られる。
【0086】
(1)過酸化水素は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する反応に伴って二酸化炭素を放出せず、その代わりに酸素を放出する。また、電池内の構造要素に、発火物・可燃物や有害な重金属類等を使用しないため、容易な外装で電池を構成できる。それ故、製造・使用・廃棄の製品サイクル全体に渡って環境安全性に優れる。
(2)過酸化水素は、常温常圧で液体であるため、貯蔵のために重い金属ボンベ等を必要としないし、水と自由に混合できるためゲル化が容易であり、貯蔵性・携帯性が優れている。
(3)酸化剤として酸素を使用する必要が無いため、空気量の限られた閉鎖環境下、また空気中に塵やゴミ等が多く含まれる過酷環境下でも、その使用に支障がない。
(4)過酸化水素は、その工業的製造方法として有機法(アントラキノンを中間体(何度も再利用するので消費しない)として、触媒による水素の接触還元と空気酸化とによって合成する方法)等がすでに確立されており、現状でも安定的に安価で供給されている。これに加え、周辺部品が少なくシンプルな構造で電池を構成し得るため、電池システム全体の重量及び体積を小さくでき、かつ低コスト化や高耐久性を図れる。
【0087】
以上、本発明の車載用二次電池及び発電方法について説明したが、本発明の構成は、既述のような構成に限定されるものではない。
例えば、上記構成の電池と、従来の水素燃料やメタノール燃料による電池を組み合せて複合発電機として使用することも可能である。
【実施例】
【0088】
以下に本発明の効果を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0089】
[実施例1]
図2に示す車載用二次電池であって、図3に示す発電部と、図4〜図6に示す充電部とを備える車載用二次電池について、下記条件にて発電実験を行い、電流−電圧特性を求め、電池の評価を行った。なお、発電部および充電部の詳細は、下記の通りである。
【0090】
(発電部)
まず、市販の3質量%過酸化水素水溶液(日本薬局方オキシドール、健栄製薬株式会社)に、硫酸(特級96%、関東化学株式会社)及び蒸留水を混合して、試料液A(過酸化水素9.1mmol/l、硫酸0.1N(0.05mol/l))を調製した。
また、試料液Aと同じ過酸化水素水溶液に水酸化ナトリウム(特級97%、関東化学株式会社)及び蒸留水を混合して、試料液B(過酸化水素9.1mmol/l、水酸化ナトリウム0.1N(0.05mol/l))を調製した。
【0091】
そして、単位セルとして図3に示す入口2から試料液Aを、入口3から試料液Bをそれぞれ外部ポンプにより注入した。試料液A,Bの流速は、いずれも、流路中央部分で24μl/sec(レイノルズ数Re:約670)とし、実験温度は室温(約20℃)であった。なお、材料や流路構造等のその他の条件は、図3の説明で示したとおりのものを適用した。
【0092】
試料液Aと接触する流路底面の第1の電極(白金薄膜、面積:0.026cm2)8表面ではガス発生が見られなかったのに対して、試料液Bと接触する流路底面の第2の電極(白金薄膜、面積:0.026cm2)6表面で酸素ガスの発生が観測された。これは、第1の電極8は、既述の(式1)の反応によって水が生成して正極の働きをし、第2の電極6は、既述の(式2)の反応によって酸素と水が生成して負極の働きをしたためである。
【0093】
当該電池の単位セルで得られた電流−電圧特性を図7に示す。本実施例の場合、開放電圧650mV、また、最大出力160μW/cm2(起電圧:230mV、電流0.7mA/cm2の時)が得られた。
【0094】
図8に示すように、この単位セル400の接続電極7と別の単位セル410の接続電極9を接続し、別の単位セル410の接続電極7と、さらに別の単位セル420の接続電極9を接続する。このように順次繰り返すことにより、53個の単位セルを直列に接続した。このとき、各単位発電部の入口2、入口3、出口4、出口5は各々並列に接続されている。このように53個の単位セルを接続して発電部を形成した。発電部からは最大出力8.3mW/cm2(起電圧:12.2V、電流0.7mA/cm2の時)が得られた。単位セルの直列接続による各単位発電部の性能劣化は、ほとんど観測されなかった。
【0095】
(充電部)
上記発電を行った後、図4〜図6(但し、電気透析槽20は除く構成とした)に示すようにして充電を行った。すなわち、まず、3室型バイポーラー膜電気透析槽(媒体再生手段40)の塩室42に発電後に生成した硫酸ナトリウム水溶液を供給した。酸室44および塩基室46には発電後に生成した水を連続供給しながら、陽極−陰極間に直流電圧(充電用電源(電力供給手段)には、商用電源(100V)で駆動するバッテリーチャージャー(ユアサ・オートバイ用充電器・MB−2012)を使用(反応物質再生手段30も同様)、15V)をかけた。その結果、酸室44および塩基室46のそれぞれからは、一定濃度の硫酸及び水酸化ナトリウムが連続的に再生されたことが確認された。
【0096】
また、反応物質再生手段30としての過酸化水素セル(ペルメレック電極株式会社製、1.25dm2隔膜型)に、陽極32a−陰極34a間に直流電圧(5V)をかけながら、陽極室32および陰極室34のそれぞれ5ml/minの速度で、発電後に生成した硫酸ナトリウム水溶液を0.02mol/lに調整して供給し、陰極室34は大気開放として発電後に生成した酸素も同時に供給したところ、0.1mol/lの過酸化水素水溶液が連続的に再生できたことが確認された。
【0097】
充電部で再生された過酸化水素および硫酸、水酸化ナトリウムをそれぞれ、反応物質および酸性媒体、塩基性媒体として再使用し発電を行ったところ、最初の発電と同等の特性が得られた。
【0098】
[比較例1]
試料液に過酸化水素を含有させなかった以外は、実施例1の単位セルと同様の二次電池について、実施例1と同様の評価を行った。発電部の入口2及び入口3から注入した試料液A及びBの硫酸及び水酸化ナトリウム濃度は、いずれも0.1Nであった。なお、流速及び実験温度は実施例1と同一である。
電流−電圧特性を図7に示す。比較例1では、液間電圧による開放電力(200mV)は測定されたものの、有意な電流は得られなかった。
【0099】
以上、本実施例によれば、図7に示すように有効な電圧及び電流が得られており、発電部として、安定して十分な電気エネルギーを供給できることが判明した。また、簡易な構成で電解質構成成分の再利用を図りながら充放電が可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の電池における発電機構を示す図である。
【図2】本発明の車載用二次電池の構成を示す説明図である。
【図3】(a)は、本発明の電池における発電部の1実施態様の概略上面透視図であり、(b)は、(a)に示す発電部をA−A’で切断した際に、両媒体の流れの方向からみた断面図である。
【図4】充電部の全体構成を概略的に示した説明図である。
【図5】反応物質再生手段の構成を概略的に示した説明図である。
【図6】媒体再生手段の構成を概略的に示した説明図である。
【図7】実施例および比較例における電流−電圧特性を示す図である。
【図8】実施例における単位セルの接続例を示す模式図である。
【図9】(a)は、単位発電セルの上面を示す模式図であり、(b)は、単位発電セルのA−A’断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0101】
1・・・毛管流路
2、3・・・入口
4、5・・・出口
6、6a・・・電極(第2の電極)
7・・・接続端子
8、8a・・・電極(第1の電極)
9・・・接続端子
10・・・カバーガラス
11・・・スライドガラス
12・・・スペーサ
a・・・酸性水溶液
b・・・塩基性水溶液
100・・・発電部
200・・・充電部
300・・・充電用電源
210・・・反応物質再生手段
220・・・媒体再生手段
400・・・第一の単位発電部
410・・・第二の単位発電部
420・・・第三の単位発電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部と充電部とを具備する車載用二次電池であって、
前記発電部が、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、
前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、
前記充電部が、前記発電部における発電により生成した発電生成物から、前記反応物質を再生する反応物質再生手段を備え、さらに、前記反応物質再生手段を作動させるための電力を供給する電力供給手段を備えることを特徴とする車載用二次電池。
【請求項2】
発電部と充電部とを具備する車載用二次電池であって、
前記発電部が、複数の単位発電セルを順次直列接続して構成されており、
前記単位発電セルが、少なくとも、第1の電極が配置された酸性媒体と、第2の電極が配置された塩基性媒体とを備え、
前記酸性媒体及び前記塩基性媒体が互いに隣接もしくは近設されてなり、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体の少なくともいずれかに反応物質が含有されてなり、
前記充電部が、前記発電部における発電により生成した発電生成物から、前記反応物質を再生する反応物質再生手段を備えることを特徴とする車載用二次電池。
【請求項3】
前記充電部が、前記発電生成物から、前記酸性媒体および/または前記塩基性媒体を再生する媒体再生手段をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項4】
前記酸性媒体が酸性水溶液からなり、かつ、前記塩基性媒体が塩基性水溶液からなることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項5】
前記反応物質が、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれに含有されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項6】
前記酸性媒体に含有される前記反応物質としての第1の物質と、前記塩基性媒体に含有される前記反応物質としての第2の物質とが、同一の物質であることを特徴とする請求項5に記載の車載用二次電池。
【請求項7】
前記反応物質が、過酸化水素であることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項8】
前記反応物質再生手段が、陽極と陰極とを有し、前記陰極に前記発電生成物である酸素および水を供給して、前記過酸化水素を再生する手段であることを特徴とする請求項7に記載の車載用二次電池。
【請求項9】
前記媒体再生手段が、陽イオン交換膜、バイポーラ膜及び陰イオン交換膜を配置して、塩室、酸室及び塩基室を形成させ、前記塩室に前記発電生成物である中和塩水溶液を供給して電気透析を行い、前記酸室及び前記塩基室のそれぞれから、前記酸性水溶液及び前記塩基性水溶液を排出させる3室セル方式のセルを具備することを特徴とする請求項3に記載の車載用二次電池。
【請求項10】
前記発電部において、前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車載用二次電池。
【請求項11】
前記単位発電セルにおいて、前記酸性水溶液と前記塩基性水溶液とがその内部で層流を形成する流路構造が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車載用二次電池。
【請求項12】
前記酸性水溶液が、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、オルトリン酸、ポリリン酸、硝酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロ珪酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロ砒酸、ヘキサクロロ白金酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、蓚酸、サリチル酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、及びピクリン酸からなる群より選択される酸を1以上含むことを特徴とする請求項4に記載の車載用二次電池。
【請求項13】
前記塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、及び水酸化テトラブチルアンモニウムを含む群から選択される塩基を1以上含む、又は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、及びアルミン酸カリウムを含む群から選択されるアルカリ金属塩を1以上含むことを特徴とする請求項4に記載の車載用二次電池。
【請求項14】
前記酸性媒体が酸性のイオン伝導性ゲルから構成され、かつ、前記塩基性媒体が塩基性のイオン伝導性ゲルから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項15】
前記酸性のイオン伝導性ゲルが、酸性水溶液を水ガラス、無水二酸化ケイ素、架橋ポリアクリル酸、寒天、又はその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記塩基性のイオン伝導性ゲルが、塩基性水溶液をカルボキシメチルセルロース、架橋ポリアクリル酸、又はその塩類によりゲル化してなることを特徴とする請求項14に記載の車載用二次電池。
【請求項17】
前記第1の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項18】
前記第2の電極が、白金、白金黒、酸化白金被覆白金、銀、金、表面を不動態化したチタン、表面を不動態化したステンレス、表面を不動態化したニッケル、表面を不動態化したアルミニウム、炭素構造体、アモルファスカーボン、及びグラッシーカーボンからなる群より選択される1以上の材料から構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項19】
前記第1の電極及び第2の電極が、板状、薄膜状、網目状、又は繊維状であることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。
【請求項20】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、無電解メッキ法、蒸着法、又はスパッタ法により、前記酸性媒体及び前記塩基性媒体のそれぞれ配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用二次電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate