説明

車載用情報処理装置、及び車両制御装置

【課題】車載された複数EUC間での機能連携のためのデータを、各ECUが保持する車両制御用のアプリケーションが使用するよりも事前に共有できる車載用情報処理装置を提供する。
【解決手段】車載用情報処理装置100は、他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付データ記憶部101と、車両の状況情報に応じて機能連携タグ付きデータ記憶部101に記憶されているタグデータを参照して、他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御部103aと、機能連携メモリ制御部103aにおいて機能連携の実行局面と特定された場合、他のECUとの機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携のため送受信される機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御部102と、機能連携用パケットデータを送受信する機能連携パケット送受信部103bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された複数のECU(electronic control unit)間で機能連携するための情報を共有するための車載用情報処理装置、及び当該情報を用いてリアルタイムでの車両制御を行う車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン制御などのパワートレーン系、カーナビケーション等の情報処理系、エアコン制御などのボディ系等、車両における制御システムの増加に伴い車両に搭載されるECUが飛躍的に増加しており、且つ車両制御の内容が高度化している。
【0003】
このような背景下において、複数のECU間で情報を共有して機能連携処理を行う必要性が高まっている。例えば、カーナビ連携車両制御システムは、カーナビゲーションシステムが持つ地図情報と変速機等とを連携させた車両制御システムであり、地図情報に基づいてカーブを予測して、カーブの手前では自動的にシフトダウンしてエンジンブレーキを使用することで運転操作が快適になり、安全性が高まる。
【0004】
また、上記カーナビ連携制御システムでは、専用アプリケーションプログラムを用いてカーブ情報と勾配情報を基に道路形状を3次元で判断し、道路を走行する上で最適なギア比に変速を制御することも可能となる。
【0005】
そして、特に近年のブレーキ制御、ステアリング制御やエンジン制御といった各種の車両制御システムにおいては、ドライバの安全性をより向上させるため、機能連携した情報を用いてリアルタイムでの正確な車両制御が望まれている。
【0006】
ところで、分散メモリ方式の並列計算機において、主記憶内容の共有機構を低コストで実現して、要素プロセッサ間の連携処理の効率向上等を可能とする並列計算機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この並列計算機においては、ミラーテーブルの各要素プロセッサに同じ主記憶内容を持つページを存在させ、主記憶内容の共有を擬似的に実現する。
【0007】
また、複数コンピュータ間でデータ連携を行う際、管理テーブルによってデータ更新を管理するコンピュータ間自動データ転送方法が開示され(例えば、特許文献2参照)、さらに、構造化メッセージによってオブジェクト間の連携を行い、構造記述にマッチングする因数をバインディングする構造記述された構造化メッセージを用いたオブジェクト連携システムも開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−214259号公報
【特許文献2】特開平07−334472号公報
【特許文献3】特開2001−209619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の車載環境での複数のECU間で機能連携した情報を用いて車両制御を行うシステムにおいては、異なるECUが保持する複数のアプリケーション間でのデータ(プログラムも含む)を共有する必要があるが、実行環境の接続形態により、データを保持する他のECUへのアクセスに長いパスを要する場合がある。
【0010】
すなわち、現状では、所定のECUで機能連携のための共有データが必要になった時点で、他のECU上のソフトウェアに対して車内LAN経由でデータ転送の要求を行うが、その際の要求先のECU及びLANの負荷状況によっては待ち時間が発生してしまう。例えば、CAN(Controller Area Network)を用いて接続されているECU間で地図データを共有する場合には、512Kバイトの地形データなら、CANでの信号の伝達速度を512Kbpsとすると、地形データの通信だけで8秒の待ち時間が発生してしまう。
【0011】
このような場合、従来の車両制御システムにおいては、実行時間の長大化と共に実行時間の見積もりができず、車両制御のリアルタイム性と実行性能を向上させることが困難であるという問題がある。
【0012】
また、車載ECU上のアプリケーションプログラムが他のECU上でのデータを利用する場合、その取得したデータへのアクセス方法に統一的な方法が存在していない。このため、特にコンテキストとは全く無関係なアクセスするための明示的なコードは、ソフトウェアの可搬性、可読性を損なうと共に、実行効率の最適化が困難であるという問題もある。
【0013】
例えば、ECUから他ECU上のデータにアクセスする場合には、メッセージ通信機能等の複雑なOS(Operating System)機能を用いて、明示的にデータのロードとストアの繰り返しを実現する必要がある。これには、例えばシステムコールと呼ばれるソフトウェア関数コールを記述する必要があるために、機能連携を行う他のECUの接続形態によって、ソフトウェアのソースコードの変更は避けられない。
【0014】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、車載された複数EUC間で機能連携のためのデータを、ECUが実行するアプリケーションが使用するよりも事前に共有できる車載用情報処理装置を提供する。
【0015】
また、機能連携する他のECUのデータを利用する場合においても、機能連携用データへの統一的なアクセス方法を可能として、車両制御に使用されるソフトウェアの可搬性や可読性を確保できる車載用情報処理装置を提供することをも目的とする。
【0016】
さらに、当該車載用情報処理装置が取得したデータを用いて、トランスミッション制御やブレーキ制御等の各種車両制御をリアルタイムで実現できる車両制御装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る車載用情報処理装置は、複数のECU間での機能連携に用いるデータを共有するためにECUに設けられる車載用情報処理装置であって、他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付きデータ記憶手段と、車両の状況情報に応じて、上記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されている上記タグデータを参照して、上記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御手段と、上記機能連携メモリ制御手段において上記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面と特定された場合には、機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携に用いる機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御手段と、上記機能連携用パケットデータを機能連携する上記他のECUに送信する機能連携パケット送受信手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
この構成により、本発明に係る車載用情報処理装置の上記機能連携メモリ制御手段は、上記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されている上記タグデータを参照して他のECUとの機能連携局面を特定できる。また、上記機能連携OS制御手段は、上記機能連携用OSを立ちあげて機能連携用パケットデータを作成して上記機能連携パケット送受信手段を介して事前に他のECUにデータを送信若しくは他のECUからデータを取得できる。このため、本発明に係る車載用情報処理装置は、車載された複数EUC間で機能連携のためのデータをECUが保持するアプリケーションが使用するよりも事前に共有できる。
【0019】
また、本発明に係る車載用情報処理装置の上記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶される上記データにはプログラムデータ以外の実体データも含まれ、上記機能連携メモリ制御手段は、上記実体データに付与されている上記タグデータを参照して、上記他のECUとの機能連携用の実体データを特定し、上記機能連携OS制御手段は、当該実体データを用いて上記他のECUに送信する上記機能連携用パケットデータを生成し、上記機能連携パケット送受信手段は、当該機能連携用パケットデータを機能連携する上記他のECUに送信することを特徴とする。
【0020】
この構成により、本発明に係る車載用情報処理装置の上記機能連携メモリ制御手段は、上記タグデータを参照することにより、機能連携に用いるプログラムデータのみでなく、機能連携に用いる実体データを特定することができ、この実体データを含む機能連携用パケットデータを他の機能連携するECU側に事前に送信することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る車載用情報処理装置において上記タグデータには、上記他のECUとの機能連携の実行局面に対応する情報であるシーン識別情報と、当該タグデータが付与されたデータが自らのECUで用いる機能連携用のデータであるか否かを示す機能連携用メモリビットとが含まれることを特徴とする。
【0022】
この構成により、上記機能連携メモリ制御手段は、上記機能連携用メモリビットを用いて機能連携用のアプリケーションプログラムを特定し、上記シーン識別情報を用いて他のECUと実際に機能連携するシーンに関連したデータを特定することができる。
【0023】
また、本発明に係る車載用情報処理装置の上記タグデータには、さらに、該当アドレスのデータを共有データとして使用するCPUを示すCPU有効ビット、機能連携するECUの識別番号を示すECU ID、機能連携するECUにおけるターゲットとなるCPUの識別番号を示すCPU ID、及びアプリケーションの識別番号であるアプリケーションIDの少なくとも1つが含まれることを特徴とする。
【0024】
この構成により、上記機能連携メモリ制御手段は、上記CPU有効ビット、上記ECU ID、上記CPU ID、上記アプリケーションIDを用いて機能連携をする際に実行動作をするCPUやECU、アプリケーションプログラムを特定することができる。
【0025】
また、本発明に係る車載用情報処理装置の上記機能連携OS制御手段は、上記機能連携パケット送受信手段が機能連携した上記他のECUから機能連携用パケットデータを受信した場合には、受信した当該機能連携用パケットデータを所定の記憶部に記憶することを特徴とする。
【0026】
この構成により、本発明は、受信した機能連携用パケットデータを所定の記憶部に保持することで、機能連携する際に必要なデータを事前に記憶部に記録しておくことができる。また、車両制御システムにおいては、ネットワーク通信による遅延を生じさせること無くリアルタイムでの車両制御に上記記憶部に記録されたデータを用いることができる。
【0027】
また、本発明に係る車載用情報処理装置において上記状況情報には、車両の環境情報、位置情報、及び道路情報の少なくとも1つが含まれることを特徴とする。
【0028】
この構成により、本発明に係る車載用情報処理装置は、車両の環境情報、位置情報、及び道路情報の少なくとも1つに基づいて、他のECUとの機能連携をする場面を特定して、当該場面に応じたデータを上記タグデータのシーン識別情報を用いて特定して、他のECUとの機能連携の実行局面を特定できる。
【0029】
また、本発明に係る車載用情報処理装置は、さらに、CPUが上記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されているデータからフェッチしたプログラムデータの上記タグデータに付与されている上記シーン識別情報と、前回フェッチしたプログラムデータの上記タグデータに付与されている上記シーン識別情報とを比較する比較手段と、上記比較手段において上記シーン識別情報に新規なビットが立っていると判定される場合に、上記他のECUとの機能連携のためCPUへの割込み処理を発生させる割込み発生手段とを備え、上記割込み発生手段において割込みが発生した場合、上記機能連携メモリ制御手段は、上記機能連携OS制御手段により上記機能連携用OSを起動させると共に、上記機能連携用パケットデータを作成し、上記機能連携パケット送受信手段は、当該機能連携用パケットデータを機能連携するECUに送信することを特徴とする。
【0030】
この構成により、上記比較手段はフェッチしたデータの今回のシーン識別情報と前回のシーン識別情報とを比較して、上記機能連携メモリ制御手段は、シーン識別情報の新たなビットが立っている場合に機能連携の実行局面と特定できる。また、上記割込み発生手段は、機能連携の実行局面においてのみCPUに機能連携の処理をするための割り込み処理を発生させることができるため、CPU資源の有効利用を図ることができる。
【0031】
また、本発明に係る車載用情報処理装置における上記機能連携用パケットデータには、機能連携する上記他のECUが保持するデータを要求する機能連携データリクエスト用パケット、及び自らのECUが保持するデータを機能連携する上記他のECUに送信する機能連携データ送信用パケットが含まれ、上記機能連携パケット送受信手段は、上記車両の状況情報に応じて、上記機能連携用データリクエスト用パケット、又は機能連携データ送信用パケットを機能連携する上記他のECUに送信することを特徴とする。
【0032】
この構成により、上記機能連携OS制御手段は、他のECUからのデータを事前に要求する場合には機能連携データリクエスト用パケット、他のECUに車両の状況情報に応じて事前に機能連携用データを送信する場合には機能連携データ送信用パケットを作成できる。また、上記機能連携パケット送受信手段は、車両の状況情報に応じて機能連携用データリクエスト用パケット、又は機能連携データ送信用パケットを機能連携する他のECUに送信できる。
【0033】
また、本発明に係る車載用情報処理装置における上記機能連携データリクエスト用パケットには、機能連携するECUのアドレス情報を含むヘッダ情報、上記機能連携用パケットデータの種別を示すパケット種別情報、使用しているアプリケーションのアプリケーションID、上記シーン識別情報、自らのECU ID、及び自らのCPU IDのうち少なくとも1つが含まれ、上記機能連携データ送信用パケットには、機能連携する上記他のECUのアドレス情報を含むヘッダ情報、上記パケット種別情報、及び機能連携用データ本体のうち少なくとも1つが含まれることを特徴とする。
【0034】
この構成により、上記機能連携用データリクエスト用パケット、又は上記機能連携データ送信用パケットを受信した車載用情報処理装置では、機能連携する他のECU、CPU、アプリケーション等を特定できる。
【0035】
また、本発明に係る車両制御装置は、複数のECU間で機能連携用データを共有して、当該機能連携用データを用いて車両制御を行う車両制御装置であって、上記他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付きデータ記憶手段と、車両の状況情報に応じて、上記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されている上記タグデータを参照して、上記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御手段と、上記機能連携メモリ制御手段において上記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面と特定された場合には、機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携に用いる機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御手段と、上記機能連携用パケットデータを機能連携する上記他のECUに送信する機能連携パケット送受信手段と、上記機能連携パケット送受信手段が機能連携する上記他のECUから上記機能連携用パケットデータを受信した場合、当該機能連携用パケットデータを保持する記憶手段と、当該記憶手段に格納されている機能連携用データを参照して車両制御を実行可能な車両制御手段とを備えることを特徴とする。
【0036】
この構成により、本発明に係る車両制御装置では、上記記憶部に記録され、事前に取得した機能連携用のデータを用いて、トランスミッション制御やブレーキ制御等の各種車両制御をリアルタイムで実現できる。
【0037】
また、本発明に係るプログラムは、複数のECU間での機能連携に用いるデータを当該複数のECUが共有するためにECUに設けられる車載用情報処理装置に用いるプログラムであって、上記他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付きデータ記憶ステップと、車両の状況情報に応じて、上記機能連携タグ付きデータ記憶ステップにおいて記憶されている上記タグデータを参照して、上記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御ステップと、上記機能連携メモリ制御ステップにおいて上記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面と特定された場合には、機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携に用いる機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御ステップと、上記機能連携用パケットデータを機能連携する上記他のECUに送信する機能連携パケット送受信ステップとを含むことを特徴とする。
【0038】
また、上記機能連携OS制御ステップにおいては、上記機能連携パケット送受信ステップにおいて送受信される機能連携用データを、上記機能連携用OSによって管理されるユーザアドレス空間上の機能連携用アドレス空間に展開し、上記プログラムは、さらに、専用のAPIを介して上記機能連携用アドレス空間に記録された上記機能連携用データにアクセスするステップを含むことを特徴とする。
【0039】
この構成により、本発明に係るプログラムでは、機能連携する他のECUのデータを利用する場合においても、アプリケーションは機能連携用データへの統一的なAPIを用いて機能連携用アドレス空間に展開された機能連携用データへアクセスでき、車両制御に使用されるソフトウェアの可搬性や可読性を確保できる。
【0040】
なお、本発明に係る車載用情報処理装置を構成する処理手段をステップとする車載用情報処理方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、当該プログラムをDVD、CD−ROM等の記録媒体や通信ネットワーク等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る車載用情報処理装置では、事前に各データに付与された機能連携用メモリタグデータを参照することで、車載された複数EUC間での機能連携のためのデータを、各ECUが保持する車両制御用のアプリケーションが使用するよりも事前に共有できる。
【0042】
また、本発明に係る車載用情報処理装置では、アプリケーションプログラムが共通のAPIを用いて機能連携用のデータにアクセスできるために、機能連携する他のECUのデータを利用する場合においても、機能連携用データへの統一的なアクセス方法を可能として、車両制御に使用されるソフトウェアの可搬性や可読性を確保できる。
【0043】
さらに、本発明に係る車両制御装置においては、車載用情報処理装置が事前に取得したデータを用いて、トランスミッション制御やブレーキ制御等の各種車両制御をリアルタイムで実現できるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態に係る車載用情報処理装置の全体構成図
【図2】実施の形態に係る車載用情報処理装置の実行環境例を示す図
【図3】実施の形態に係る車載用情報処理装置の機能連携タグ付きデータ記憶部に記憶されるデータの構造例を示す図
【図4】実施の形態に係る車載用情報処理装置に備わる機能連携メモリ制御部の動作の説明図
【図5】実施の形態に係る車載用情報処理装置の機能連携OS制御部において生成される機能連携通信用パケットの例を示す図
【図6】実施の形態に係る車載用情報処理装置の機能連携パケット送受信部の機能ブロック図
【図7】機能連携用データが記憶されるアドレス空間を示す図
【図8】トランスミッション側のECUが機能連携データリクエスト用パケットを生成してナビゲーション側のECU側に送信するまでの動作手順を示すフローチャート
【図9】トランスミッション側のECUから機能連携データリクエスト用パケットを受信したナビゲーション側のECUの動作手順を示すフローチャート
【図10】ナビゲーション側のECUから機能連携用データを受信したトランスミッション側のECUの動作手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る車載用情報処理装置の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る車載用情報処理装置100の全体構成図であり、車載用情報処理装置100は、機能連携タグ付きデータ記憶部101、機能連携OS制御部102、及びマイコン103を備える。なお、この車載用情報処理装置100は、他のECUと機能連携して情報を共有する各ECUに備えられている。
【0047】
機能連携タグ付きデータ記憶部101は、プログラミングデータや地形データ等の実体データに対して、ECU間のアプリケーション連携動作に必要な情報を保持する拡張領域を持つメモリ部である。当該拡張領域は、後述する図3におけるタグデータに相当するものであり、機能連携タグ付きデータ記憶部101に記憶される各データに事前に若しくはコンパイル時等に付与されており、機能連携を行う相手のECUに関する情報、アプリケーションの実行コンテキスト下において機能連携が必要な場面であることを示す情報等が記述されている。なお、タグデータは実行するアプリケーションソフトウェアから直接参照することができなくても構わない。
【0048】
機能連携OS制御部102は、他のECUから機能連携用データの転送要求を受信した場合、機能連携パケット送受信部103bから受信割込みや送信割込みにより、機能連携用OSを起動し、必要なデータを機能連携タグ付きデータ記憶部101に展開する。また、機能連携OS制御部102は、機能連携用データとして後述の図5において説明する機能連携データリクエスト用パケットや機能連携データ送信パケットデータを生成する。
【0049】
マイコン103は、他のECU間との機能連携処理を制御するために組み込まれているコンピュータであり、本実施の形態においては機能連携メモリ制御部103a及び機能連携パケット送受信部103bを備えている。
【0050】
機能連携メモリ制御部103aは、機能連携処理が必要な状況であることを検知し、連携先のECUに対して機能連携用データの要求を行う。また、機能連携メモリ制御部103aは、機能連携タグ付きデータ記憶部101に記憶されているデータの拡張領域の情報を分析し、機能連携動作が必要な場合には機能連携OS制御部102に対して割込み等の機構で通知を行う。
【0051】
機能連携パケット送受信部103bは、機能連携を行う相手のECUに対して機能連携用データ要求を行うためのパケットデータを送信する。また、相手のECUから機能連携用リクエストデータが届いた場合には、受信したデータから機能連携用データを取り出し、機能連携OS制御部102に渡す。
【0052】
次に、本発明に係る車載用情報処理装置100における機能連携の実現例について説明する。
【0053】
図2は、本実施の形態に係る車載用情報処理装置100の実行環境例を示す図であり、例えば、車載LANを介してECU200とECU210が接続され、これら2つのECU間で機能連携を行うためのデータを共有する処理を行う。なお、本実施の形態においては、ECU200では情報処理系であるナビゲーション用のアプリケーションプログラムが実行されており、ECU210では制御系であるトランスミッション制御用のアプリケーションプログラムが実行されているものとして説明を行う。
【0054】
ECU200は、地図探索用のプログラムである地図探索用アプリケーション201、データベースに記憶されている地図情報を用いてナビゲーションに表示する地図データを描画する描画アプリケーション202、ECU200においてハードウェアに対応するインターフェースをアプリケーションソフトウェアに提供するOS203、CPU204、CPU204がデータや命令などの情報を取得/更新する際に使用するキャッシュメモリ204a、主メモリ204b、CPU205、CPU205がデータや命令などの情報を取得/更新する際に使用するキャッシュメモリ205a、及び主メモリ205bを備えている。
【0055】
そして、例えばECU200において実行される地図検索アプリケーション201は、CPU205が主メモリ205b上の命令を逐次読み取り、命令を処理することで実行を行う。
【0056】
ECU210は、速度やエンジン回転数に応じて変速比を切り替えるための変速機(トランスミッション)を制御するトランスミッション制御部211、ブレーキを制御するブレーキ制御部212、CPU214、CPU214がデータや命令などの情報を取得/更新する際に使用するキャッシュメモリ214a、主メモリ214b、CPU215、CPU215がデータや命令などの情報を取得/更新する際に使用するキャッシュメモリ215a、及び主メモリ215bを備えている。
【0057】
ECU200で地図探索用アプリケーション201が実行されている場合において、車両の前方に険しく曲がりくねった坂道があることが検出されたとする。燃費向上のためには、道路の勾配、カーブに従って自動的にトランスミッションのシフト変更を適切に行うことが効果的となる。このためにECU210は機能連携のためにECU200とデータを共有する。
【0058】
なお、地図探索用アプリケーション201において、例えばカーブの曲率は、カーナビゲーションのデジタル地図情報(座標点データ)から算出することができ、勾配は、車両への加速度の強さで推測したり、地図データ上の等高線も参考にできる。
【0059】
車載用情報処理装置100では、ECU200で管理する道路の勾配、カーブ曲率等の地図情報を、ECU210が車両制御を実行する前に予め送信しておくことによってトランスミッション制御を行うECU210が即座に詳細な地図情報を参照することが可能となる。そして、ECU210は、トランスミッションのきめ細かい制御を行おうとした場合に、事前にECU210上のメモリに必要なデータが展開されているために車両状況に応じた適切な車両制御を行うことが可能となる。
【0060】
なお、本発明に係る車載用情報処理装置100において用いられる車両制御のための機能連携は、例えば、ハイブリッドカー等の効率運転にも有効である。すなわち、モータや回生ブレーキを使うタイミングを道路情報に合わせて精密に予測できれば燃費を改善できる。例えば、数km先から長い下り坂が続くときには、回生ブレーキで充電できるので、その前はモータ走行でバッテリを放電しておく、というような制御が可能となる。また、本発明に係る車載用情報処理装置100を用いれば、通勤路など毎日通る道での走行パターンをデータベース化して、走行パターンに合った、発電、放電等の制御を行い、燃費向上につなげることが可能となる。
【0061】
図3は、本実施の形態に係る車載用情報処理装置100の機能連携タグ付きデータ記憶部101(図2における主メモリ204bに対応)に記憶されるデータ300の構造例を示す図である。このデータ300にはプログラム命令を含むデータ部308(例えば32ビット)の他に「機能連携メモリタグ310(特許請求の範囲におけるタグデータに該当)」が付与されている。この機能連携メモリタグ310は、本図に示すような例えば7ビットの追加情報であり、それぞれはアプリケーションソフトウェアからは直接参照できないものである。
【0062】
そして、機能連携メモリタグ310における各ビットの意味は次の通りとなる。
連携メモリビット301は、他のECU間との機能連携用にロードされたデータかどうかを示すビットであり、例えば機能連携用にロードしたデータの場合「1」となる。
CPU(204)有効ビット302は、該当アドレスのデータを共有データとしてCPU204がロードしているかを示し、例えばCPU204がメモリ内容を保持する場合「1」となる。
【0063】
CPU(205)有効ビット303は、該当アドレスのデータを共有データとしてCPU205がロードしているかを示し、例えばCPU205がメモリ内容を保持する場合「1」となる。
ECU ID304は、機能連携するECUのIDを示し、アプリケーション実行ECU識別に使用する。
【0064】
CPU ID305は、機能連携するECUのターゲットCPUのIDを示し、アプリケーション実行CPU識別に使用する。
アプリケーションID306は、連携メモリビット301がオンの場合、自らのアプリケーションの識別番号を示し、アプリケーションの識別に使用するものであり、連携メモリビット301がオフ(例えば「0」)の時、機能連携するECU上でのアプリケーションの識別番号を示す。
【0065】
シーンID307(特許請求の範囲のシーン識別情報に対応)は、アプリケーションの実行局面を示し、アプリケーション中の連続するコードの識別に使用する。このシーンID307は、連携メモリビット301がオン(例えば「1」)の場合、自らのアプリケーションのシーンを示す。一方、連携メモリビット301がオフの場合、機能連携するECU上でのアプリケーションのシーンを示す。なお、本実施の形態においてシーンID307は1ビットで説明しているが、区別すべきシーンの数が多い場合にはビット数を増加させることにより様々なシーンに対応することが可能となる。
【0066】
以下、実際の機能連携場面における車載用情報処理装置100の動作に関して説明を行う。
【0067】
図4は、本実施の形態に係る車載用情報処理装置100に備わる機能連携メモリ制御部103aの動作を説明する図である。
【0068】
例えば、ECU200において地図探索用アプリケーション201の実行中に、勾配、カーブが厳しい地形が続くことが予測された場合に実行するプログラムコードを格納するメモリ領域の機能連携メモリタグ310のシーンID307に予めビットを立てておく。そして、CPU204の機能連携メモリフェッチ・デコードコントローラ403が機能連携メモリ制御部103aを介して機能連携タグ付きデータ記憶部101からシーンID307のビットが立っているデータをフェッチすると、前回のビットと内容が変わっているときにCPUに割込みを発生させることとなる。
【0069】
具体的には、ECU200上で地図検索用アプリケーション201を実行する際、車がこのまま直進すれば勾配の急な道路に突入することが地図データから明らかな場合に、プログラムは機能連携メモリタグ310の機能連携メモリビット301を参照してトランスミッション制御と機能連携をするメモリ上のコード部分に飛ぶ。このとき、機能連携メモリタグ310のシーンID307のビットが立っていることがCPU204において発見される。
【0070】
すなわち、機能連携メモリ制御部103aの比較部401は、機能連携タグ付きデータ記憶部101に記憶されているプログラムコードをフェッチする際、機能連携メモリタグ310をチェックし、シーンID307のビットが立っていることを発見すると、前回の状態と比較することで、新規にシーンID307のビットが立ったか否かを判定する。
【0071】
そして、シーンID307に、新規にビットが立っている場合には、割込み発生部402は、CPU204における現在の処理を中断して、別の処理(割込み処理)を行わせるために割込みを発生させる。なお、割込み発生部402におけるCPU204への割込みは、割込みハンドラあるいはISR(Interrupt Service Routine)といったプログラムにより実行する。
【0072】
また、同時に機能連携メモリタグの情報を機能連携メモリ制御部103a中のタグデータ用レジスタ401aにコピーして、CPU204上のプログラムから参照できるようにする。
【0073】
そして、機能連携メモリ制御部103aの割込み発生部402から発生された割込みがCPU204に入ると、機能連携OS制御部102のサブシステムとして存在する機能連携用OSが起動される。
また、機能連携OS制御部102は、機能連携タグ付きデータ記憶部101から読み取った機能連携メモリタグ情報を、機能連携先のECUに伝達するためのデータをパケット化する。
【0074】
図5は、本実施の形態に係る車載用情報処理装置100の機能連携OS制御部102においてパケット化して生成される機能連携通信用パケットの例を示す図であり、図5(a)は他のECUから機能連携用データを要求する「機能連携データリクエスト用パケット500」、図5(b)は他のECUからリクエストされた機能連携用データを返信する「機能連携データ送信用パケット510」を示している。なお、これらの2種類のパケットデータは、各パケット内に付与されたパケット種別データにより区別される。
【0075】
本図に示す機能連携データリクエスト用パケット500には、通信先ECUのアドレス情報等を含むヘッダ情報501、上記2種類のパケットデータの種別を示すパケット種別(例えば、「0」ならば機能連携データリクエスト用パケット500、「1」ならば機能連携データ送信用パケット510)502、実行するアプリケーションのアプリケーションID503、シーンID504、自らのECU ID505、自らのCPU ID506、及びパケット終端情報507が含まれる。なお、点線508で囲まれたデータ503〜506は、機能連携メモリタグ310から取得したデータとなる。
【0076】
ここで、ヘッダ情報501に含まれる通信先のECUのアドレス情報は、図3に示す機能連携メモリタグ310中のECU ID304からネットワークアドレスを割り出し、使用しているLANのプロトコルに従ってヘッダ情報501に含まれる。
【0077】
なお、この機能連携データリクエスト用パケット500は、例えばエンジンECUとトランスミッションECUとが機能連携している場合に、トランスミッションECU側から事前にエンジンECU側に送信される。このことにより、トランスミッションECUは、エンジンECU側にその都度エンジン回転数等の取得要求を送信しなくても自らのメモリ上にエンジン回転数等を格納できることとなる。
【0078】
機能連携データ送信用パケット510には、通信先ECUのアドレス情報を含むヘッダ情報511、パケット種別512、地図データ等の機能連携用データ513、及びパケット終端情報514が含まれる。
【0079】
機能連携OS制御部102は、機能連携データリクエスト用パケット500や機能連携データ送信用パケット510を作成した後、後述の図6に示すように、これらパケット500,510をマイコン103に組み込まれる機能連携パケット送受信部103bにセットして、当該機能連携パケット送受信部103bがヘッダ情報を参照して送信先ECUに送信する。
【0080】
図6は、本実施の形態に係る車載用情報処理装置100に備わる機能連携パケット送受信部103bの機能ブロック図を示す。
【0081】
本図に示すように、機能連携パケット送受信部103bは、マイコン103のメモリのアドレス上にマッピングされた機能連携送信レジスタ601及び機能連携受信レジスタ602と通信コントローラ603とを備える。
【0082】
通信コントローラ603は、送信時には機能連携送信レジスタ601にセットされたデータを内部バッファ604に取り込み、プロトコル解釈部605によって車載LAN用のプロトコルに変換した後、通信を開始する。なお、機能連携送信レジスタ601にデータがセットされた場合、送信完了割込みが発生し、機能連携OS制御部102が起動されることになる。機能連携のための通信データが続く場合、この機構によって再びデータをセットして通信を行うことができる。
【0083】
一方、機能連携データの受信時には、プロトコル解釈部605によってデータ部分が内部バッファ604に取り出された後、機能連携受信レジスタ602にセットされる。この場合にも受信完了割込みが発生し、機能連携OS制御部102が起動される。
【0084】
そして、機能連携OS制御部102は、機能連携メモリ制御部103a内の内部レジスタ(機能連携タグ情報、データ)にデータを書き込んだ後、機能連携メモリデータコントローラに機能連携タグ付きデータ記憶部101への書き込み指示を出す。このとき、機能連携メモリタグ310中の連携メモリビット301には、当該データが機能連携用にロードしたデータであることを示すため「1」が立てられる。
【0085】
図7は、アプリケーションと機能連携用データとのソフトウェア上での関係を説明するための図であり、図7(a)は、アプリケーション701とAPI(Application Program Interface)702とOS703との関係を示し、図7(b)は、機能連携用データが記憶されるアドレス空間を示している。本図に示すように、ソフトウェア的には、本発明に係る車載用情報処理装置100を備える各ECU間で送受信される機能連携用データは機能連携用のOS703によって管理される専用のメモリ領域である「機能連携アドレス空間704d」に割り当てられる。
【0086】
この機能連携アドレス空間704dは、ユーザアドレス空間704内のテキスト領域704aやカーネルアドレス空間705内でなく、ユーザアドレス空間704内のデータ領域704b、bss領域704c(未初期化変数領域)、スタック領域704eのように動的に増加するデータの中間位置に確保され、動的に物理メモリを割り当てるようにすることで、メモリ領域を有効に使えるようにされている。
【0087】
そして、機能連携アドレス空間704dへのアプリケーション701からのアクセスは、OS703の機能を呼び出す専用のAPI702を使用してアクセスして制御を行うこととなる。
【0088】
API702が用いる関数の例としては、機能連携アドレス空間704dへの読み込み時や書き込み時に使用する「Co_func_read(*data,tag)」、「Co_func_write(*data,tag)」、機能連携アドレス空間704dへのアクセス時に用いる「Co_func_open(ID)」、「Co_func_close(ID)」等が挙げられる。
【0089】
従って、アプリケーション701では、機能連携が必要なシーンの実行時、専用のAPI702を用いてユーザアドレス空間704に位置する機能連携アドレス空間704dを参照することができる。このため、本発明では、他のECU上に記憶されている機能連携に必要なデータ取得のためのネットワークアクセス時間を排除することができ、実行速度を大幅に向上させることができるようになる。
【0090】
また同時に、アプリケーション701は、通常は異なるデータフォーマットである機能連携先のデータを統一されたAPI702でアクセスすることが可能となるため、ソフトウェアの開発効率が向上するばかりでなく、ソフトウェアの可搬性や可読性の向上が期待できる。
【0091】
このように、本発明では、ECU200から取得したECU210上で必要となるデータが、ECU210のアプリケーション701からアクセス可能な形で機能連携アドレス空間704dに用意できる。CPUは、これらの動作の間、他の動作を実行することが可能であり、また、ECU210がECU200上の機能連携用データを使う時点では、すでに必要なデータはCPUの主メモリやキャッシュメモリに展開されている状況となるためにアプリケーション実行の遅延を発生させないようにすることができる。
【0092】
次に、図8から図10を用いて本発明に係る車載用情報処理装置100の動作手順を説明する。なお、図8から図10においては、本発明に係る車載用情報処理装置100の機能連携によりトランスミッション側のECU210が車両制御を実行する事前にナビゲーション側のECU200から地図データを取得する場合の動作手順について記載する。
【0093】
図8は、トランスミッション側のECU210が機能連携データリクエスト用パケットを生成してナビゲーション側のECU200に送信するまでの動作手順を示すフローチャートである。
【0094】
最初に、ECU210は、トランスミッションプログラム実行時、機能連携タグ付きデータ記憶部101上の機能連携メモリタグの機能連携メモリビットを参照することにより機能連携が必要になることを検知したか否かを判定する(ステップS801)。
【0095】
次に、ECU200との機能連携が必要になることが検知された場合には(ステップS801でYES)、機能連携メモリ制御部103aから割込みが発生して、機能連携OS制御部102が起動される(ステップS802)。
【0096】
そして、機能連携OS制御部102は、機能連携先のECU200に対してデータのリクエスト情報である機能連携データリクエスト用パケットを生成する(ステップS803)。この場合には、ナビゲーション側のECU200に対して地図データを要求するためのリクエスト用パケットを用意する。
【0097】
また、機能連携OS制御部102は、機能連携パケット送受信部103bに生成した機能連携データリクエスト用パケットをセットして(ステップS804)、機能連携パケット送受信部103bは機能連携先となるECU200に機能連携データリクエスト用パケットを送信する(ステップS805)。
【0098】
図9は、トランスミッション側のECU210から機能連携データリクエスト用パケットを受信したナビゲーション側のECU200の動作手順を示すフローチャートである。
【0099】
最初に、機能連携パケット送受信部103bは、ECU210から機能連携データリクエスト用パケットを受信したか否かを判定する(ステップS901)。
【0100】
そして、機能連携データリクエスト用パケットを受信した場合には(ステップS901でYES)、機能連携パケット送受信部103bは、受信完了割込みにより、機能連携OS制御部102を起動する(ステップS902)。
【0101】
次に、機能連携OS制御部102は、機能連携データリクエスト用パケットに応じたデータを機能連携アドレス空間上から抽出して機能連携データ送信用パケットを作成する(ステップS903)。
【0102】
また、機能連携メモリ制御部103aは、機能連携タグ付きデータ記憶部101から機能連携データ送信用パケットを機能連携パケット送受信部103bにセットして(ステップS904)、機能連携パケット送受信部103bは、リクエスト元のECU210に機能連携データ送信用パケットを送信する(ステップS905)。
【0103】
図10は、図9に示すECU200から機能連携用の地図データを受信したECU210の動作手順を示すフローチャートである。
【0104】
最初に、ECU210は、ECU200からの返信を受信するまで、CPU資源を有効利用するためにディスパッチにより他の処理を行うことができる(ステップS1001)。そして、機能連携パケット送受信部103bは、機能連携先のECU200からデータ受信したか否かを判定する(ステップ1002)。
【0105】
そして、データ受信した場合には(ステップS1002YES)、機能連携パケット送受信部103bは、受信完了割込みをして機能連携OS制御部102を起動する(ステップS1003)。
【0106】
次に、機能連携OS制御部102は、受信したデータ(本実施の形態においては地図データ)を図7に示したようにユーザアドレス空間704にある機能連携アドレス空間704d上に展開する(ステップS1004)。
【0107】
また、機能連携メモリ制御部103aは、機能連携アドレス空間704d上の地図データを機能連携タグ付きデータ記憶部101に転送する(ステップS1005)。
【0108】
そして、ECU210の車両制御用の専用のアプリケーションは、機能連携用APIを使用してユーザアドレス空間704にある機能連携用アドレス空間704dにアクセスする(ステップS1006)。
【0109】
以上の説明のように、本発明に係る車載用情報処理装置100は、異なるECUにおける車載システムの連携動作の実行効率を向上させるために、機能連携タグ付きデータ記憶部101に記憶されているデータ300に付与される機能連携メモリタグ310を参照する。そして、車両の状況情報に応じて、アプリケーションの実行状況から機能連携が必要になることを事前に通知し、他のECUの記憶部に記憶されている機能連携用データをECU上で動作するOSの管理領域に展開して、自らのECUの主メモリやキャッシュメモリ上に展開しておくことが可能となる。
【0110】
従って、各ECUは、車両状況に応じて事前に機能連携用データを受信若しくは送信しておくことができるため、車両制御用のアプリケーションの使用時における車両制御に遅延を生じさせずにリアルタイムに車両制御を行うことを可能とする。
【0111】
また、各ECUに備わる車両制御用のアプリケーションは専用の機能連携アドレス空間に記録更新される機能連携用データを統一されたAPIでアクセスすることが可能となり、車両制御時での他のECUへのネットワークアクセス時間を排除でき、車両制御の実行速度を大幅に向上でき、且つソフトウェアの開発効率を向上させることが可能となる。
【0112】
尚、上記の実施の形態の説明において、ナビゲーション用ECU200とトランスミッションECU210間の機能連携として説明を行ったが、車載された複数のECU間での機能連携には、例えば情報処理系ECU、ブレーキ制御用ECUやステアリング制御用ECU等、他の様々なECU間の情報共有に本発明に係る車載用情報処理装置を用いることができるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る車載用情報処理装置は、例えば、複数のECUの機能連携を用いて車両制御を行う車両に適用できる。
【符号の説明】
【0114】
100 車載用情報処理装置
101 機能連携タグ付きデータ記憶部
102 機能連携OS制御部
103 マイコン
103a 機能連携メモリ制御部
103b 機能連携パケット送受信部
200,210 ECU
201 地図探索用アプリケーション
202 描画アプリケーション
203,213 OS
204,205,214,215 CPU
204a,205a,214a,215a キャッシュメモリ
204b,205b,214b,215b 主メモリ
211 トランスミッション制御部
212 ブレーキ制御部
401 比較部
401a レジスタ
402 割込み発生部
403 機能連携メモリフェッチ・デコードコントローラ
601 機能連携送信レジスタ
602 機能連携受信レジスタ
603 通信コントローラ
604 内部バッファ
605 プロトコル解釈部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のECU間での機能連携に用いるデータを共有するためにECUに設けられる車載用情報処理装置であって、
他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付きデータ記憶手段と、
車両の状況情報に応じて、前記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されている前記タグデータを参照して、前記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御手段と、
前記機能連携メモリ制御手段において前記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面と特定された場合には、機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携に用いる機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御手段と、
前記機能連携用パケットデータを機能連携する前記他のECUに送信する機能連携パケット送受信手段とを備える
ことを特徴とする車載用情報処理装置。
【請求項2】
前記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶される前記データにはプログラムデータ以外の実体データも含まれ、
前記機能連携メモリ制御手段は、前記実体データに付与されている前記タグデータを参照して、前記他のECUとの機能連携用の実体データを特定し、
前記機能連携OS制御手段は、当該実体データを用いて前記他のECUに送信する前記機能連携用パケットデータを生成し、
前記機能連携パケット送受信手段は、当該機能連携用パケットデータを機能連携する前記他のECUに送信する
ことを特徴とする請求項1記載の車載用情報処理装置。
【請求項3】
前記タグデータには、前記他のECUとの機能連携の実行局面に対応する情報であるシーン識別情報と、当該タグデータが付与されたデータが自らのECUで用いる機能連携用のデータであるか否かを示す機能連携用メモリビットとが含まれる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載用情報処理装置。
【請求項4】
前記タグデータには、さらに、該当アドレスのデータを共有データとして使用するCPUを示すCPU有効ビット、機能連携するECUの識別番号を示すECU ID、機能連携するECUにおけるターゲットとなるCPUの識別番号を示すCPU ID、及びアプリケーションの識別番号であるアプリケーションIDの少なくとも1つが含まれる
ことを特徴とする請求項3記載の車載用情報処理装置。
【請求項5】
前記機能連携OS制御手段は、前記機能連携パケット送受信手段が機能連携した前記他のECUから機能連携用パケットデータを受信した場合には、受信した当該機能連携用パケットデータを所定の記憶部に記憶する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載用情報処理装置。
【請求項6】
前記状況情報には、車両の環境情報、位置情報、及び道路情報の少なくとも1つが含まれる
ことを特徴とする請求項1記載の車載用情報処理装置。
【請求項7】
前記車載用情報処理装置は、さらに、
CPUが前記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されているデータからフェッチしたプログラムデータの前記タグデータに付与されている前記シーン識別情報と、前回フェッチしたプログラムデータの前記タグデータに付与されている前記シーン識別情報とを比較する比較手段と、
前記比較手段において前記シーン識別情報に新規なビットが立っていると判定される場合に、前記他のECUとの機能連携のためCPUへの割込み処理を発生させる割込み発生手段とを備え、
前記割込み発生手段において割込みが発生した場合、前記機能連携メモリ制御手段は、前記機能連携OS制御手段により前記機能連携用OSを起動させると共に、前記機能連携用パケットデータを作成し、
前記機能連携パケット送受信手段は、当該機能連携用パケットデータを機能連携するECUに送信する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車載用情報処理装置。
【請求項8】
前記機能連携用パケットデータには、機能連携する前記他のECUが保持するデータの取得を要求する機能連携データリクエスト用パケット、及び自らのECUが保持するデータを機能連携する前記他のECUに送信する機能連携データ送信用パケットが含まれ、
前記機能連携パケット送受信手段は、前記車両の状況情報に応じて、前記機能連携用データリクエスト用パケット、又は機能連携データ送信用パケットを機能連携する前記他のECUに送信する
ことを特徴とする請求項7記載の車載用情報処理装置。
【請求項9】
前記機能連携データリクエスト用パケットには、機能連携するECUのアドレス情報を含むヘッダ情報、前記機能連携用パケットデータの種別を示すパケット種別情報、使用しているアプリケーションのアプリケーションID、前記シーン識別情報、自らのECU ID、及び自らのCPU IDのうち少なくとも1つが含まれ、
前記機能連携データ送信用パケットには、機能連携する前記他のECUのアドレス情報を含むヘッダ情報、前記パケット種別情報、及び機能連携用データ本体のうち少なくとも1つが含まれる
ことを特徴とする請求項8記載の車載用情報処理装置。
【請求項10】
複数のECU間で機能連携用データを共有して、当該機能連携用データを用いて車両制御を行う車両制御装置であって、
他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付きデータ記憶手段と、
車両の状況情報に応じて、前記機能連携タグ付きデータ記憶手段に記憶されている前記タグデータを参照して、前記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御手段と、
前記機能連携メモリ制御手段において前記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面と特定された場合には、機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携に用いる機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御手段と、
前記機能連携用パケットデータを機能連携する前記他のECUに送信する機能連携パケット送受信手段と、
前記機能連携パケット送受信手段が機能連携する前記他のECUから前記機能連携用パケットデータを受信した場合、当該機能連携用パケットデータを保持する記憶手段と、
当該記憶手段に格納されている機能連携用データを参照して車両制御を実行可能な車両制御手段とを備える
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項11】
前記タグデータには、前記他のECUとの機能連携の実行局面に対応する情報であるシーン識別情報と、当該タグデータが付与されたデータが自らのECUで用いる機能連携用のデータであるか否かを示す機能連携用メモリビットとが含まれる
ことを特徴とする請求項10記載の車両制御装置。
【請求項12】
複数のECU間での機能連携に用いるデータを共有するためにECUに設けられる車載用情報処理装置に用いるプログラムであって、
他のECUとの機能連携に関連するタグデータが付与されたデータを記憶する機能連携タグ付きデータ記憶ステップと、
車両の状況情報に応じて、前記機能連携タグ付きデータ記憶ステップにおいて記憶されている前記タグデータを参照して、前記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面を特定する機能連携メモリ制御ステップと、
前記機能連携メモリ制御ステップにおいて前記他のECUとの機能連携用のプログラムの実行局面と特定された場合には、機能連携をするため機能連携用OSを起動すると共に、機能連携に用いる機能連携用パケットデータを生成する機能連携OS制御ステップと、
前記機能連携用パケットデータを機能連携する前記他のECUに送信する機能連携パケット送受信ステップとを含む
ことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
前記機能連携OS制御ステップにおいては、前記機能連携パケット送受信ステップにおいて送受信される機能連携用データを、前記機能連携用OSによって管理されるユーザアドレス空間上の機能連携用アドレス空間に展開し、
前記プログラムは、さらに、
専用のAPIを介して前記機能連携用アドレス空間に記録された前記機能連携用データにアクセスするステップを含む
ことを特徴とする請求項11記載のプログラム。
【請求項14】
前記タグデータには、前記他のECUとの機能連携の実行局面に対応する情報であるシーン識別情報と、当該タグデータが付与されたデータが自らのECUで用いる機能連携用のデータであるか否かを示す機能連携用メモリビットとが含まれる
ことを特徴とする請求項12又は13記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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