説明

車載用衝突物判定装置

【課題】 衝突物の種類を判定可能な車載用衝突物判定装置が求められている。
【解決手段】 車両のサイドメンバとバンパとの間に設置され、前記バンパへ衝突物が衝突した際に、前記バンパに加えられた衝突エネルギーをバンパの前面において上下二箇所以上を検出し、上部検出信号と下部検出信号を出力するセンサと、前記上部検出信号と前記下部検出信号とを比較することで、前記衝突物の種類を特定する判定手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の前部に配置されて歩行者エアバッグ等の保護装置を作動させるための車載用衝突物判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者保護を目的として、歩行者用エアバッグシステムの開発がなされている。この歩行者用エアバッグシステムとは、車両が歩行者に衝突した際に、歩行者の頭部や胸部が車両のボンネットやフロントガラスに激突することを防ぐためにボンネット上に展開するエアバッグである。この歩行者用エアバッグを起動するためには、車両に衝突した衝突物が、エアバッグを展開し保護すべき歩行者であるか、エアバッグを展開しなくて良い障害物であるかを判定する衝突物判定装置が必要である。すなわち、歩行者用エアバッグを展開する必要がないにも関わらずこれを展開した場合、無用の修理費用が必要となる。また、歩行者が車両の各部に激突するよりも早く歩行者用エアバッグを展開する必要があるために、衝突物判定装置には即応性が求められる。
【0003】
そこで、特表2003−535769号公報の発明が知られている。特表2003−535769号公報の衝突物判定装置は、バンパおよびボンネットに衝撃検出センサを設置して、それぞれのセンサが検出した衝撃をもとに、衝突物が歩行者であるか否かを判定している。
【特許文献1】特表2003−535769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特表2003−535769号公報に示される判定装置では、片方の衝撃検出センサをボンネットに取り付けているため、衝突物が少なくともボンネットに衝突するまで判定ができない。このような応答性が悪い判定手段を用いると、衝突物が歩行者であった場合、ボンネットに激突する前に歩行者用エアバッグを展開し保護することが難しいという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、衝突物が歩行者であった場合に歩行者がボンネットに激突する前に歩行者用エアバッグに展開指令を出力できるように、衝突物の種類を判定可能な車載用衝突物判定装置の提供を本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、車両のサイドメンバ(16、17)とバンパ(11)との間に設置され、前記バンパ(11)へ衝突物が衝突した際に、前記バンパ(11)に加えられた衝突エネルギーを前記バンパ(11)の前面において上下二箇所以上を検出し、上部検出信号と下部検出信号を出力するセンサ(13、14、101、171〜174、203、204)と、前記上部検出信号と前記下部検出信号とを比較することで、前記衝突物の種類を特定する判定手段(18)とを備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、衝突物が地面に固定された物体であるか、地面に固定されていない物体であるかを判定することができる。なお、例えば衝突荷重や加速度などから、衝撃の激しさを表す評価値、すなわち衝撃エネルギーを計算することができることが知られている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記センサは、上部センサ(13、171、173、201)および下部センサ(14、172、174、202)の2つのセンサにより構成されることを特徴とする。
【0009】
上下に分かれて衝突エネルギーを検出するセンサが設置されているため、判定手段(18)は各センサの出力値を比較すればよく、簡単なアルゴリズムで衝突物の種類を判定することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記センサ(13、14、201、202)は、アブソーバ(12)とリーンフォースメント(15)との間に備えられることを特徴とする。
【0011】
リーンフォースメント(15)は硬い素材で形成されているため、この硬い素材に設置されているセンサ(13、14、201、202)は、精度よく衝突エネルギーを検出可能である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記センサ(101、171〜174、203、204)は、リーンフォースメント(15)とサイドメンバ(16、17)との間に備えられることを特徴とする。
【0013】
リーンフォースメント(15)およびサイドメンバ(16、17)は非常に強度の高い素材で形成されているため、リーンフォースメント(15)とサイドメンバ(16、17)との間にセンサ(101、171〜174、203、204)を挟設することができれば、衝突エネルギーを漏らすことなく検出可能である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記判定手段(18)は、衝突から所定時間が経過した時点の前記上部検出信号および前記下部検出信号の大小を用いて前記衝突物の種類を判定することを特徴とする。
【0015】
このように、同時刻の検出信号の変化量を用いて判定を行うため、センサ(13、14、101、171〜174、203、204)が振動し検出信号にノイズが加わった場合にも、ノイズの影響を受けることなく衝突物の種類を判定可能である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記判定手段(18)は、衝突から所定時間が経過した時点の前記上部検出信号および前記下部検出信号の時系列変化量の大小を用いて前記衝突物の種類を判定することを特徴とする。
【0017】
これにより、上部検出信号と下部検出信号の値が近い場合、例えば地面に固定されておらず重心がバンパ(11)より少し高い子供に衝突した場合でも衝突物の種類を判定可能である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記判定手段(18)は、前記上部検出信号が前記下部検出信号に比べ所定値以上小さい場合に、前記衝突物は地面に固定された物体であると判定することを特徴とする。
【0019】
衝突物が電柱などの地面に固定された物体の場合、衝突時はバンパ(11)が衝突物に対して水平になる。その後、衝突が進むと、衝突物の一端が地面に固定されているため、衝突物は地面に固定された点を支点に衝突方向へ傾き、バンパ(11)の下部に大きなエネルギーが加わり、上部検出信号が小さく、下部検出信号が大きく出力される。この上部検出信号が小さく、下部検出信号が大きく出力される特徴を衝突物の種類の判定に用いることで、衝突物が地面に固定された物体である場合、これを判定することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、前記判定手段(18)は、前記上部検出信号が前記下部検出信号に比べ所定値以上大きい場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする。
【0021】
衝突物が歩行者などの地面に固定されていない物体である場合、衝突時はバンパ(11)が衝突物に対して水平になる。その後、衝突が進むと、衝突物の重心が衝突したバンパ(11)よりも高い位置にあるため、衝突物は車両方向へ傾き、バンパ(11)の上部に大きなエネルギーが加わり、上部検出信号が大きく、下部検出信号が小さく出力される。この上部検出信号が大きく、下部検出信号が小さく出力される特徴を衝突物の種類の判定に用いることで、衝突物が地面に固定されていない物体である場合、これを判定することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記判定手段(18)は、前記比較に加えて前記上部検出信号が所定値以上である場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする。
【0023】
これにより、上部センサ(13、171、173、201)の検出した衝突エネルギーが、下部センサ(14、172、174、202)の検出した衝突エネルギーに比べ小さいことのみを条件として衝突物の種類を判定する方法よりも、判定精度を上げることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、前記車両のピッチングを計測するピッチング計測手段(251)と、前記ピッチング計測手段(251)が計測したピッチング情報をもとに、前記衝突物の種類を特定する判定手段(18)とを備えることを特徴とする。
【0025】
これにより、急ブレーキによりノーズダイブが発生した場合でも、正確に衝突物の種類を判定することができる。
【0026】
請求項11に記載の発明は、前記上部検出信号と該上部検出信号を検出した前記センサ(101)の上部検出場所、および、前記下部検出信号と該下部検出信号を検出した該センサ(101)の下部検出場所とを用いて、該センサ(101)に対して発生する車両進行方向から車両垂直上方向を正とするモーメントを計算し、前記モーメントと、前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号とを、前記判定手段(18)の判定条件に用いることを特徴とする。
【0027】
衝突物が歩行者などの地面に固定されていない物体である場合、衝突時はバンパ(11)が衝突物に対して水平になる。その後、衝突が進むと、衝突物の重心が衝突したバンパ(11)よりも高い位置にあるため衝突物は車両方向へ傾き、バンパ(11)の上部に大きなエネルギーが加わる。これによりバンパには、車両下方向から車両進行方向に対して回転するモーメントが作用する。このモーメントを判定に用いることで、衝突物の形状を判定することができる。
【0028】
請求項12に記載の発明は、前記上部検出信号と該上部検出信号を検出した前記上部センサ(13、171、173、201)の上部検出場所、および、前記下部検出信号と該下部検出信号を検出した前記下部センサ(14、172、174、202)の下部検出場所とを用いて、該センサに対して発生する車両進行方向から車両垂直上方向を正とするモーメントを計算し、前記モーメントと、前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号とを、前記判定手段(18)の判定条件に用いることを特徴とする。
【0029】
請求項13に記載の発明は、前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号が第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも大きい場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする。
【0030】
衝突物が、歩行者のように地面に固定されていない物体である場合、衝突時は、バンパ(11)が車両進行方向に対して衝突物に対して水平になる。その後、衝突が進むと、衝突物の重心が衝突したバンパ(11)よりも高い位置にあるため衝突物は車両方向へ傾き、バンパ(11)の上部に大きなエネルギーが加わる。これによりバンパ(11)には、車両下方向から車両進行方向に対して回転するモーメントが作用する。このモーメントを判定に用いることで、地面に固定されていない物体を判定することができる。
【0031】
請求項14に記載の発明は、前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号が第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも小さい場合に、前記衝突物は地面に固定された物体であると判定することを特徴とする。
【0032】
衝突物が電柱などの地面に固定された物体の場合、衝突時はバンパ(11)が衝突物に対して水平になる。その後、衝突が進むと、衝突物の一端が地面に固定されているため、衝突物は地面に固定された点を支点に衝突方向へ傾き、バンパ(11)の下部に大きなエネルギーが加わる。これによりバンパ(11)には、車両上方向から車両進行方向に対して回転するモーメントが作用する。このモーメントを判定に用いることで、地面に固定された物体を判定することができる。
【0033】
請求項15に記載の発明は、車両のサイドメンバ(16、17)とバンパ(11)との間に設置され、前記バンパ(11)へ衝突物が衝突した際に、前記バンパ(11)に加えられた衝突エネルギーとモーメントとを検出し、出力するセンサ(101)と、前記衝突エネルギーと前記モーメントとを基準値に対して比較することで、前記衝突物の種類を特定する判定手段(18)とを備えることを特徴とする。
【0034】
ある点におけるモーメントおよび衝突エネルギーを判定に用いることにより、1つのセンサ、すなわち単純な構成によって、衝突物の種類を特定可能である。
【0035】
請求項16に記載の発明は、前記衝突エネルギーが第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも大きい場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする。
【0036】
請求項17に記載の発明は、前記衝突エネルギーが第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも小さい場合に、前記衝突物は地面に固定された物体であると判定することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、実施例1から実施例6を用いて、本発明を実施するための最良の形態を述べる。
【0038】
〔実施例1〕
図1から図8を用いて実施例1について説明する。
【0039】
図1(a)、図1(b)および図2を用いて、車両における車載用衝突物判定装置をなす構成の配置を示す。図1(a)は車両上方に視点をおいた場合の構成の配置、図1(b)は車両左側方に視点をおいた場合の構成の配置である。図2は、判定手段18以外の構成の配置を、視点を車両内部においた射影図で表している。
【0040】
これらの図1(a)、図1(b)および図2に示すように、車両の前部に位置するフロントバンパ11はアブソーバ12の車両進行方向側に配置されており、衝突物がフロントバンパ11に衝突した場合にはフロントバンパ11が変形しアブソーバ12が衝撃を緩和する。また、アブソーバ12は、上部光ファイバセンサ13および下部光ファイバセンサ14を介してリーンフォースメント15に固定されている。また、リーンフォースメント15の右端部付近に右サイドメンバ16、左端部に左サイドメンバ17が繋がっている。判定手段18は、車両内部のフロア上に設置されている。なお、本実施例において、光ファイバセンサ13、14とは、光ファイバセンサを部材に設置したセンサユニットであり、後述の各実施例においても、センサとは部材にセンサ単体を設置したセンサユニットである。
【0041】
図3は、本装置の構成間の入出力を表したブロック図である。これに示すように、上部光ファイバセンサ13および下部光ファイバセンサ14の各出力が判定手段18に入力され、判定手段18は、図8のフローチャートを用いて後述する処理手順に基づき衝突物の種類を判定する。なお、上部光ファイバセンサ13および下部光ファイバセンサ14が計測した衝突荷重を演算処理することで、衝突エネルギーを推定できる。
【0042】
図4(a)、図4(b)、図5、図6(a)、図6(b)、図7を用いて、衝突物の種類の違いにより、上部光ファイバセンサ13および下部光ファイバセンサ14の出力値が異なることについて以下に述べる。衝突物が電柱などの地面に固定された物体の場合、衝突時(時刻t0)は図4(a)に示すように、フロントバンパ11が衝突物に対して、水平になる。その後、衝突が進むと(時刻t1)、衝突物の一端が地面に固定されているため、図4(b)に示すように上部光ファイバセンサ13が小さく歪み、下部光ファイバセンサ14が大きく歪む。図5に、車両が衝突物に衝突した瞬間を時刻t0と置き、衝突以降の上部光ファイバセンサ13が検出した荷重を実線、下部光ファイバセンサ14が検出した荷重を点線で表す。この図によれば、衝突直後(時刻t0から時刻t1の間)は、上部光ファイバセンサ13の出力と下部光ファイバセンサ14の出力との間に大きな差は見られない。しかし、衝突物が地面に固定されているため、時刻t1以降は衝突物およびフロントバンパ11が地面を支点に傾き、下部光ファイバセンサ14に掛かる荷重の増加速度が上部光ファイバセンサ13にかかる荷重の増加速度を大きく上回る。
【0043】
次に、衝突物が歩行者などの地面に固定されていない物体の場合、衝突時(時刻t0)は図6(a)に示すように、フロントバンパ11が衝突物に対して水平になる。この点は、衝突物が地面に固定されている物体である場合と同様である。衝突が進むと(時刻t2)、地面に固定されていないため衝突物はボンネット方向に倒れこむ。その結果、図6(b)に示すように上部光ファイバセンサ13が大きく歪み、下部光ファイバセンサ14が小さく歪む。図7に、車両が衝突物に衝突した瞬間を時刻t0と置き、衝突以降の上部光ファイバセンサ13が検出した荷重を実線、下部光ファイバセンサ14が検出した荷重を点線で表す。この図によれば、衝突直後(時刻t0から時刻t2の間)は、上部光ファイバセンサ13出力と下部光ファイバセンサ14出力との間に大きな差は見られない。すなわち、衝突物が地面に固定された電柱であっても、地面に固定されない歩行者であっても上下センサ13、14にかかる荷重に差はない。しかし、時刻t2以降は衝突物である歩行者はボンネット側に傾き、上部光ファイバセンサ13に掛かる荷重の増加速度が下部光ファイバセンサ14にかかる荷重の増加速度を大きく上回る。
【0044】
以上より、衝突物が地面に固定された物体の場合は、衝突後(時刻t1以降)に上部光ファイバセンサ13の出力値の増加速度が、下部光ファイバセンサ14の出力値の増加速度に比べ小さい。一方、衝突物が地面に固定されていない物体、すなわち歩行者である場合は、衝突後(時刻t2以降)に下部光ファイバセンサ14の出力値の増加速度が上部光ファイバセンサ13の出力値の増加速度に比べ小さい。判定手段18では、これらの特徴を用いて、衝突物の種類を判定する。
【0045】
図8のフローチャートを用いて判定手段18の処理手順を説明する。なお、本処理は衝突が発生した時点で開始される。まずステップS801にて、時刻カウンタt、および、上部光ファイバセンサ13の初期出力値のD1(0)、下部光ファイバセンサ14の初期出力値D2(0)を初期化(t=D1(0)=D2(0)=0)する。続くステップS802にて時刻カウンタtに1を加算し、ステップS803にて上部光ファイバセンサ13の出力値D1(t)および下部光ファイバセンサ14の出力値D2(t)を演算する。ステップS803に続くステップS804では、出力値D1(t)から前回の出力値D1(t−1)を除算することで、時系列変化量ΔD1、すなわち増加速度を算出する。同様に、出力値D2(t)から前回の出力値D2(t−1)を除算し、時系列変化量ΔD2を演算する。ステップS804に続くステップS805では、時刻カウンタtが判定上限時間Tth1に達したか否かを条件に分岐判定を行う。もし、時刻カウンタtが判定上限時間Tth1に達していると判定されたなら、判定上限時間Tth1だけ処理を行っても、衝突物が歩行者とも地面に固定された物体とも判別ができなかったとみなし、ステップS806にて衝突物はその他の衝突物、例えばゴミ箱やショッピングカートなど、と判定し判定結果を出力する。ステップS805にて、時刻カウンタtが判定上限時間Tth1に達していないと判定されたなら、ステップS807へ進む。ステップS807では、上部光ファイバセンサ13の時系列変化量ΔD1が下部光ファイバセンサ14の時系列変化量ΔD2に比べ閾値Pth1よりも大きいと判定された時、すなわち図7の時刻t2のように上部光ファイバセンサ13へ掛かる荷重の増加速度が下部光ファイバセンサ14へ掛かる荷重の増加速度に比べ大きい時はステップS808へ進み、上部光ファイバセンサ13の時系列変化量ΔD1が下部光ファイバセンサ14の時系列変化量ΔD2に比べ閾値Pth1よりも大きくないと判定された時はステップS809へ進む。ステップS808では、衝突物は歩行者であると判定し判定結果として出力する。一方、ステップS809では、下部光ファイバセンサ14の時系列変化量ΔD2が上部光ファイバセンサ13の時系列変化量ΔD1に比べ閾値Dth1よりも大きいと判定された時、すなわち図5の時刻t1のように下部光ファイバセンサ14へ掛かる荷重の増加速度が上部光ファイバセンサ13へ掛かる荷重の増加速度に比べ大きい時はステップS810へ進み、下部光ファイバセンサ14の時系列変化量ΔD2が上部光ファイバセンサ13の時系列変化量ΔD1に比べ閾値Dth1よりも大きくないと判定された時はステップS811にて上部光ファイバセンサ13の出力値D1(t)および下部光ファイバセンサ14の出力値D2(t)を保存しステップS802へ戻る。ステップS810では、衝突物は地面に固定された物体であると判定し判定結果として出力する。なお、ステップS806およびステップS808およびステップS810にて判定結果を出力した場合は、処理を終了する。
【0046】
以上の構成により、本車載用衝突物判定装置は、衝突物が歩行者であるかどうかを判定可能である。これにより、歩行者がボンネットに激突する前に、判定手段18は判定結果を出力でき、歩行者用エアバッグ装置などを起動し歩行者を保護することができる。
【0047】
また、判定条件に時系列変化量、すなわち時間微分値を用いているため、ある時刻における上部光ファイバセンサ13の出力値と下部光ファイバセンサ14の出力値との差を判定条件に用いる構成(実施例2において後述)に比べ、上部検出信号と下部検出信号の値が近い場合、例えば地面に固定されておらず重心がバンパ11より少し高い子供に衝突した場合でも、正確に衝突物の種類を判定可能である。
【0048】
〔実施例2〕
図4からから図7および図9を用いて実施例2について説明する。この実施例2における前述の実施例1との構成上の相違点は、衝突物の種類を判定する条件に、ある時刻における上部光ファイバセンサ13の出力値と下部光ファイバセンサ14の出力値との差を用いる点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例2における説明を省略する。
【0049】
図4(a)、図4(b)、図5、図6(a)、図6(b)、図7によれば、衝突物が地面に固定された物体の場合は、衝突後の時刻t3における下部光ファイバセンサ14の出力値は上部光ファイバセンサ13の出力値に比べDth2以上大きい。一方、衝突物が地面に固定されていない物体、すなわち歩行者である場合は、衝突後の時刻t4における上部光ファイバセンサ13の出力値は下部光ファイバセンサ14の出力値に比べ、Pth2以上大きい。判定手段18では、これらの特徴を用いて、衝突物の種類を判定する。
【0050】
図9のフローチャートを用いて判定手段18の処理手順を説明する。なお、本処理は衝突が発生した時点で開始される。まずステップS91にて、時刻カウンタtの初期化(t=0)を行う。続くステップS92にて時刻カウンタtに1を加算し、ステップS93にて上部光ファイバセンサ13の出力値D1を演算、ステップS94にて下部光ファイバセンサ14の出力値D2を演算する。ステップS94に続くステップS95では、時刻カウンタtが判定上限時間Tth2に達したか否かを条件に分岐判定を行う。もし、時刻カウンタtが判定上限時間Tth2に達していると判定されたなら、判定上限時間Tth2だけ処理を行っても、衝突物が歩行者とも地面に固定された物体とも判別ができなかったとみなし、ステップS96にて衝突物はその他の衝突物と判定し判定結果を出力する。ステップS95にて、時刻カウンタtが判定上限時間Tth2に達していないと判定されたなら、ステップS97へ進む。ステップS97では、上部光ファイバセンサ13の出力値D1が下部光ファイバセンサ14の出力値D2に比べ閾値Pth2よりも大きいと判定された時、すなわち図7の時刻t4のように上部光ファイバセンサ13へ掛かる荷重が下部光ファイバセンサ14へ掛かる荷重に比べPth2以上に大きい時はステップS98へ進み、上部光ファイバセンサ13の出力値D1が下部光ファイバセンサ14の出力値D2に比べ閾値Pth2より大きくないと判定された時はステップS99へ進む。ステップS98では、衝突物は歩行者であると判定し判定結果として出力する。一方、ステップS99では、下部光ファイバセンサ14の出力値D2が上部光ファイバセンサ13の出力値D1に比べ閾値Dth2よりも大きいと判定された時、すなわち図5の時刻t3のように下部光ファイバセンサ14へ掛かる荷重が上部光ファイバセンサ13へ掛かる荷重に比べDth2以上に大きい時はステップS100へ進み、下部光ファイバセンサ14の出力値D2が上部光ファイバセンサ13の出力値D1に比べ閾値Dth2より大きくないと判定された時はステップS92へ戻る。ステップS100では、衝突物は地面に固定された物体であると判定し判定結果として出力する。なお、ステップS96およびステップS98およびステップS100にて判定結果を出力した場合は、処理を終了する。
【0051】
本実施例の構成は、衝突物の種類を判定する際に、同時刻の検出信号を用いるため、上部光ファイバセンサ13または下部光ファイバセンサ14が振動し、上部光ファイバセンサ13または下部光ファイバセンサ14が出力する検出信号にノイズが加わった場合にも、ノイズの影響を受けることなく衝突物の種類を判定可能である。
【0052】
〔実施例3〕
図10から図16を用いて実施例3について説明する。この実施例3における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では面圧センサ101がリーンフォースメント15とサイドメンバ16、17との間に設置されている点である。なお、前述の各実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例3における説明を省略する。
【0053】
図10を用いて、面圧センサ101を用いた車載用衝突物判定装置をなす構成の車両における配置を示す。面圧センサ101はリーンフォースメント15とサイドメンバ16、17との間に設置されている。面圧センサ101の出力は、面圧センサ101内の座標値(x,y)と、その座標値に加わった荷重F(x,y)である。また、以降の説明では、面圧センサ101の全出力の平均値を平均荷重FAとする。
【0054】
図11(a)、図11(b)を用いて、この構成に対して、車両進行方向より衝突が発生した場合の衝突荷重の成分分解およびモーメントについて説明する。図11(a)に示す前方から加えられた平均荷重FAを、図11(b)に示すようにF1およびF2としてサイドメンバ16、17の上下方向の成分に分解する。このとき、面圧センサ101の上端部から距離L1だけ下部の部分に発生する車両の左側面方向から見た場合の車両進行方向に対する時計周りのモーメントMは、M=L1F1−L2F2で表すことができる。
【0055】
以下、図12(a)、図12(b)、図13、図14(a)、図14(b)、図15を用いて、衝突物の種類の違いにより、面圧センサ101の検出する平均荷重FAと面圧センサ101に発生する時計回りのモーメントMが異なることについて以下に述べる。衝突物が電柱などの地面に固定された物体の場合、衝突時(時刻t0)は図12(a)に示すように、フロントバンパ11が衝突物に対して、水平になる。その後、衝突が進むと(時刻t1)、衝突物の一端が地面に固定されているため、図12(b)に示すように半時計周り方向にモーメントMが発生する。図13に、車両が衝突物に衝突した瞬間を時刻t0と置き、衝突以降の面圧センサ101が検出した荷重を実線、時計回り方向のモーメントMを点線で表す。この図によれば、衝突後、面圧センサ101には、マイナス値のモーメントM、すなわち半時計周り方向のモーメントMが発生していることがわかる。
【0056】
次に、衝突物が歩行者などの地面に固定されていない物体の場合、衝突時(時刻t0)は図14(a)に示すように、フロントバンパ11が衝突物に対して水平になる。この点は、衝突物が地面に固定されている物体である場合と同様である。衝突が進むと(時刻t2)、地面に固定されていないため衝突物はボンネット方向に倒れこむ。その結果、図14(b)に示すように時計周り方向にモーメントMが発生する。図15に、車両が衝突物に衝突した瞬間を時刻t0と置き、衝突以降の面圧センサ101が検出した荷重を実線、時計回り方向のモーメントMを点線で表す。この図によれば、衝突後、面圧センサ101には、プラス値のモーメントM、すなわち時計周り方向のモーメントMが発生していることがわかる。
【0057】
以上より、衝突物が地面に固定された物体の場合は、面圧センサ101に半時計周りのモーメントMが発生する。一方、衝突物が地面に固定されていない物体、すなわち歩行者である場合は、面圧センサ101に時計周りのモーメントMが発生する。判定手段18では、これらの特徴を用いて、衝突物の種類を判定する。
【0058】
図16のフローチャートを用いて判定手段18の処理手順を説明する。なお、本処理は衝突が発生した時点で開始される。まずステップS161にて、時刻カウンタtを初期化(t=0)する。続くステップS162にて時刻カウンタtに1を加算し、ステップS163にて面圧センサ101の出力である衝突荷重F(x,y)から、平均荷重FAと、面圧センサ101の上端部の辺に加わった衝突荷重F1と、下端部の辺に加わった衝突荷重F2とを計算する。ステップS163に続くステップS164では、M=L1F1−L2F2で表すことができる時計周りのモーメントMを計算する。ステップS164に続くステップS165では、平均荷重FAと閾値Fthとの関係を条件に分岐判定を行う。平均荷重FAが閾値Fthよりも大きいと判定されたならステップS166へ進み、平均荷重FAが閾値Fthよりも大きくないと判定されたならステップS162へ戻る。ステップS165に続くステップS166では、時刻カウンタtが判定上限時間Tth1に達したか否かを条件に分岐判定を行う。もし、時刻カウンタtが判定上限時間Tth1に達していると判定されたなら、判定上限時間Tth1だけ処理を行っても、衝突物が歩行者とも地面に固定された物体とも判別ができなかったとみなし、ステップS167にて衝突物はその他の衝突物、例えばゴミ箱やショッピングカートなど、と判定し判定結果を出力する。ステップS166にて、時刻カウンタtが判定上限時間Tth1に達していないと判定されたなら、ステップS168へ進む。ステップS168で、面圧センサ101に発生したモーメントMが閾値Mth2よりも大きいと判定された時、すなわち図15のように面圧センサ101においてモーメントMが時計回り方向へ大きく発生している時はステップS169へ進み、モーメントMが閾値Mth2よりも大きくないと判定された時はステップS170へ進む。ステップS169では、衝突物は歩行者であると判定し判定結果として出力する。
【0059】
ステップS170では、面圧センサ101に発生したモーメントMが閾値Mth1よりも小さいと判定された時、すなわち図13のように面圧センサ101においてモーメントMが反時計回り方向へ大きく発生している時はステップS171へ進み、モーメントMが閾値Mth1よりも小さくないと判定された時はステップS161へ戻る。ステップS171では、衝突物は地面に固定された物体であると判定し判定結果として出力する。なお、ステップS167およびステップS169およびステップS171にて判定結果を出力した場合は、処理を終了する。
【0060】
前述の実施例1では、センサとして上下2つの光ファイバーセンサを用いていたが、本実施例の図10に示すように面圧センサ101を用いればセンサは1つで済む。
【0061】
以上より、本実施例で提案の衝突物判定装置は、実施例1と同様の作用効果に加え、部品点数を減らすことが可能である。
【0062】
〔実施例4〕
図17から図19を用いて実施例4について説明する。この実施例4における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例ではリーンフォースメント15と右サイドメンバ16との間に衝撃センサとして右上部チューブ式圧力センサ171および右下部チューブ式圧力センサ172が設置されている点と、リーンフォースメント15と左サイドメンバ17との間に衝撃センサとして左上部チューブ式圧力センサ173および左下部チューブ式圧力センサ174が設置されている点である。なお、前述の実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例4における説明を省略する。
【0063】
図17(a)、図17(b)、図18を用いて、車載用衝突物判定装置をなす構成の車両における配置を示す。図17(a)は車両上方に視点をおいた場合の構成の配置、図17(b)は車両左側方に視点をおいた場合の構成の配置である。実施例1と異なり、本実施例では、衝撃センサが上下左右に独立しており、またその設置場所も右サイドメンバ16および左サイドメンバ17とリーンフォースメント15との間である。もし、フロントバンパ11の右半面に歩行者が衝突した場合、右上部チューブ式圧力センサ171と右下部チューブ式圧力センサ172の出力は図7のように変化する。同様に、左上部チューブ式圧力センサ173と左下部チューブ式圧力センサ174の出力は図7の傾向を維持しつつも右側センサの出力に比べ小さなレンジで変化する。これら4種類のチューブ式圧力センサ171〜174の出力値を用いて、次に述べる図19のフローチャートに示す処理を行い、衝突物の種類と衝突された箇所を判定する。
【0064】
図19のフローチャートを用いて、判定手段18の内部処理を説明する。前述の実施例と同様に、本処理は衝突が発生した時点で開始される。まず、ステップS191で時刻カウンタtを初期化し、ステップS192で時刻カウンタtに1を加算し、ステップS193で右上部チューブ式圧力センサ171の出力値D1と、右下部チューブ式圧力センサ172の出力値D2と、左上部チューブ式圧力センサ173の出力値D3と、左下部チューブ式圧力センサ174の出力値D4を演算する。続くステップS194では、右側センサの出力和(D1+D2)と左側センサの出力和(D3+D4)を比較し、右側センサの出力和(D1+D2)が大きいと判定されたならステップS195で処理91を行い、左側センサの出力和(D3+D4)が大きいと判定されたならステップS197へ進む。なお、ステップS195の処理91とは、図9における処理の一部である。ステップS195に続くステップS196では衝突方向は右側であると衝突方向を出力し、処理を終了する。ステップS194より分岐したステップS197では、時刻カウンタtが判定上限時間Tth2に達したか否かを条件に分岐判定を行う。もし、時刻カウンタtが判定上限時間Tth2に達していると判定されたなら、判定上限時間Tth2だけ処理を行っても、衝突物が歩行者とも地面に固定された物体とも判別ができなかったとみなし、ステップS198にてフロントバンパ11左側に衝突した衝突物はその他の衝突物と判定し判定結果を出力する。ステップS197にて、時刻カウンタtが判定上限時間Tth2に達していないと判定されたなら、ステップS199へ進む。ステップS199では、左上部チューブ式圧力センサ173出力D3が左下部チューブ式圧力センサ174の出力D4に比べ閾値Pth2よりも大きいと判定された時、すなわち図7の時刻t4のように左上部チューブ式圧力センサ173へ掛かる荷重が左下部チューブ式圧力センサ174へ掛かる荷重に比べPth2以上に大きい時はステップS200へ進み、左上部チューブ式圧力センサ173の出力値D3が左下部チューブ式圧力センサ174の出力D4に比べ閾値Pth2より大きくないと判定された時はステップS201へ進む。ステップS200では、フロントバンパ11左側に衝突した衝突物は歩行者であると判定し判定結果として出力する。一方、ステップS201では、左下部チューブ式圧力センサ174の出力D4が左上部チューブ式圧力センサ173出力D3に比べ閾値Dth2よりも大きいと判定された時、すなわち図5の時刻t3のように左下部チューブ式圧力センサ174へ掛かる荷重が左上部チューブ式圧力センサ173へ掛かる荷重に比べDth2以上に大きい時はステップS202へ進み、左下部チューブ式圧力センサ174の出力D4が左上部チューブ式圧力センサ173の出力値D3に比べ閾値Dth2より大きくないと判定された時はステップS192へ戻る。ステップS202では、フロントバンパ11左側に衝突した衝突物は地面に固定された物体であると判定し判定結果として出力する。さらに、ステップS198とステップS200とステップS202終了後は、ステップS203にて、衝突方向は左側であると衝突方向を出力し、処理を終了する。
【0065】
以上より、本実施例で提案の衝突物判定装置は、衝撃センサ171、172、173、174を上下左右独立に配置することで、実施例1と同様の作用効果に加え、衝突物の衝突した部位を判定可能である。
【0066】
〔実施例5〕
図20から図24を用いて実施例5について説明する。この実施例5における前述の実施例との構成上の相違点は、本実施例ではアブソーバ12とリーンフォースメント15との間に衝撃センサとして上部タッチセンサ201および下部タッチセンサ202、リーンフォースメント15の右端部と右サイドメンバ16との間に右クランク型センサ203、リーンフォースメント15の左端部と左サイドメンバ17との間に左クランク型センサ204を備える点である。なお、前述の実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例5における説明を省略する。
【0067】
上部タッチセンサ201および下部タッチセンサ202は、オン(=1)もしくはオフ(=0)のデジタル出力をもつセンサである。フロントバンパ11およびアブソーバ12に荷重が加わった場合、その荷重がある一定値以上であるとき、上部タッチセンサ201および下部タッチセンサ202がアブソーバ12とリーンフォースメント15との間で圧縮されスイッチがオンとなる。これら上部タッチセンサ201および下部タッチセンサ202の出力は図示しない判定手段18へ入力される。
【0068】
図21に右クランク型センサ203の詳細を示す。右クランク型センサ203は、クランク形状の金属部材211に歪ゲージ212を貼り付けたセンサである。図22に示すように、リーンフォースメント15に荷重がかかった場合、右サイドメンバ16との間に挟まれた金属部材211の垂直成分、すなわち図22の図面上下方向に延びる部材が歪む。歪ゲージ212はこの垂直成分の歪みを計測し出力する。右クランク型センサ203および左クランク型センサ204の出力は、判定手段18に入力される。
【0069】
図23を用いて、衝突物の種類を判定する方法について説明する。図23(a)は、右クランク型センサ203と左クランク型センサ204の出力の合計値Pの時系列変化を表している。図23(b)は上部タッチセンサ201の出力T1、図23(c)は下部タッチセンサ202の出力T2の時系列変化を表している。図23(a)、(b)、(c)のプロット開始時刻t0は物体がフロントバンパ11へ衝突した時刻であり、この図23における衝突物とは歩行者である。
【0070】
右クランク型センサ203および左クランク型センサ204によりバンパ11が衝突物から受けた荷重を検出し、衝突物の種類の判定に用いる。このように、衝突物から受けた荷重を判定に用いれば、衝突物の質量を考慮できる。また、地面に固定されているか否かを判定するため、上部タッチセンサ201および下部タッチセンサ202を用いる。図23(b)および図23(c)に示すように、衝突物からの荷重を受け上下タッチセンサ201、202がオンになっている時刻を判定に用いる。時刻t5において、ある一定以上の荷重を受け上下タッチセンサ201、202が同時にオンになる。その後、衝突物である歩行者は地面に固定されておらず、ボンネット側に倒れ込むため、フロントバンパ11下部に加わる荷重が減り、時刻t6において下部タッチセンサ202がオフとなる。この時、図23(a)に示す右左クランク型センサ203、204により検出された衝突物の荷重が大きいことが分かっているため、衝突物は地面に固定されず重心がフロントバンパ11上部よりも高い位置にあり重量が大きい物体、すなわち歩行者であると判定することができる。
【0071】
図24のフローチャートを用いて、判定手段18の内部処理について説明をする。前述の実施例と同様に、本処理は衝突が発生した時点で開始される。まずステップS241にてループの実行回数を表す時刻カウンタtおよびカウンタC1およびカウンタC2を初期化(=0)する。ステップS242で時刻カウンタtに1を加算し、ステップS243では上部タッチセンサ201のデジタル出力値T1を取得し、ステップS244では下部タッチセンサ202のデジタル出力値T2を取得する。ステップS244に続くステップS245で上部タッチセンサ201の出力値T1が1(オン)と判定されたならステップS246にてカウンタC1に1を加算しステップS247へ進み、出力値T1が0(オフ)であると判定されたなら何もせずステップS247へ進む。ステップS247で下部タッチセンサ202の出力値T2が1(オン)であると判定されたならステップS248にてカウンタC2に1を加算しステップS249へ進み、出力値T2が0(オフ)であると判定されたなら何もせずステップS249へ進む。ステップS249では、右クランク型センサ203の出力値P1および左クランク型センサ204の出力値P2を演算し、ステップS250へ進む。ステップS250では、時刻カウンタtが判定上限時間Tthに達したか否かを条件に分岐判定を行う。もし、時刻カウンタtが判定上限時間Tthに達していると判定されたなら、判定上限時間Tthだけ処理を行って衝突物の種類を判定できなかったため、衝突物は少なくとも歩行者以外の衝突物であると判定しステップS251において判定結果を出力する。ステップS250にて、時刻カウンタtが判定上限時間Tthに達していないと判定されたなら、ステップS252へ進む。ステップS252では、カウンタC1がカウンタC2に比べ閾値Cthよりも大きいと判定されたならステップS253へ進み、カウンタC1がカウンタC2に比べ閾値Cthよりも大きくないと判定されたならステップS242へ戻る。ステップS253では、右クランク型センサ203の出力値P1および左クランク型センサ204の出力値P2の合計値と閾値Pthとの関係を条件に判定を行う。ステップS253において出力値P1と出力値P2との合計値が閾値Pthよりも大きいと判定された時は、ステップS254へ進み、衝突物は歩行者であると判定結果を出力する。一方ステップS253において合計出力値Pが閾値Pth以下と判定された場合は、ステップS251へ進み、衝突物は少なくとも歩行者以外の衝突物であると判定結果を出力する。
【0072】
ステップS251およびステップS254より続くステップS255では、出力値P1と出力値P2の関係を条件に分岐判定を行う。出力値P1が出力値P2よりも大きいと判定されたならステップS256へ進み、出力値P2が出力値P1以上であるならステップS257へ進む。ステップS256では、衝突物はバンパ11の右側に衝突したと判定し衝突方向を出力する。ステップS257では、衝突物はバンパ11の左側に衝突したと判定し衝突方向を出力する。
【0073】
以上より、本実施例の構成は、実施例4と比べ使用するセンサの総数は変わらないが、2箇所のセンサにタッチセンサ201、202を用いるため、装置の製造コストを下げながらも実施例4と同様に衝突方向を判定可能である。
【0074】
〔実施例6〕
図25を用いて実施例6について説明する。この実施例6における前述の実施例1との構成上の相違点は、本実施例では上下加速度センサ251が追加されている点である。なお、前述の実施例と同等の構成については、各実施例と同様の符号を付し、本実施例6における説明を省略する。
【0075】
図25に示すように、上下加速度センサ251の計測したピッチング情報は、判定手段18に入力される。判定手段18は、ピッチング情報と上部光ファイバセンサ13と下部光ファイバセンサ14の出力をもとに衝突物の種類を判定する。
【0076】
以下、衝突物の種類を判定する際に、ピッチング情報を用いる理由について述べる。多くの運転者は衝突物に衝突する前にブレーキングを行っている。これにより、物体に衝突する時には、車両はフロントサスペンションが大きく沈んでいるノーズダイブ状態となっており、フロントバンパ11が衝突物に対し水平に衝突しない場合が多い。このノーズダイブ状態で地面に固定された物体、例えば電柱に衝突したとする。ノーズダイブ状態によりフロントバンパ11前面が地面方向に傾いているため、上部光ファイバセンサ13が下部光ファイバセンサ14よりも先に電柱に衝突する。このため、図6および図7を用いて歩行者に衝突した場合を例に説明した場合と同様に、上部光ファイバセンサ13の出力が下部光ファイバセンサ14の出力よりも大きくなり、衝突物の種類を判定するための条件設定が複雑になる。
【0077】
しかし、ピッチング情報を用いてフロントバンパ11前面の傾きが地面に対して垂直となった時刻を判定し、その時刻から図8のフローチャートで示した処理を開始する。このように、ピッチング情報をもとにフロントバンパ11前面の傾きを補正すれば、判定条件の設定を簡単化することができる。
【0078】
〔その他の実施例〕
前述の実施例では、センサとして光ファイバセンサおよび面圧センサ、チューブ式圧力センサ、タッチセンサを例に説明を行ったが、センサはこれらに限定されない。例えば、歪ゲージやGセンサなどのセンサを用いても実施可能である。
【0079】
前述の実施例では、上部センサおよび下部センサの出力情報のみを用いて、衝突物の判定を行ったが、さらにこれ以外の情報を用いても良い。例えば、車載用カメラの出力情報を組み合わせて判定を行えば、前述の実施例に比べ更に高精度な判定が可能である。
【0080】
前述の実施例3では、面圧センサ101を用いて、上下2箇所の衝突荷重を検出し、この衝突荷重を用いてモーメントを演算し、衝突荷重とモーメントを判定条件に用いたが、モーメントは衝突荷重から演算しなくても良い。例えば、衝突荷重とモーメントとの両方を計測可能な1つのセンサを用いて、衝突荷重とモーメントを検出し判定条件に使用すれば、実施例3と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
前述の実施例では、前方からの衝突物に対して衝突物判定を行ったが、判定する衝突物の衝突方向は前方に限定されない。例えば、2つの光ファイバーセンサを車両後部のアブソーバと車両後部のリーンフォースメントとの接合部に挟設した場合、後方からの衝突物を判定可能である。
【0082】
前述の実施例では、衝突物を判定する際に11種類の閾値(Tth,Tth1,Tth2,Pth,Pth1,Pth2,Dth1,Dth2,Mth1,Mth2,Cth)を用いたが、これらの値は一定値でなくとも良い。例えば、Gセンサや歪ゲージといったセンサの外気温変化や経年劣化を考慮して、手動または自動で修正をした場合、前述の実施例に比べ更に高精度な判定が可能である。
【0083】
前述の実施例では、衝突物を判定する際に11種類の閾値(Tth,Tth1,Tth2,Pth,Pth1,Pth2,Dth1,Dth2,Mth1,Mth2,Cth)を条件に分岐判定を行ったが、判定の際に閾値を用いなくとも良い。例えば、ファジィ集合を用いた推論やニューラルネットワークを用いた判定を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施例1において用いられる衝突物判定装置の構成のおおよその配置を示す図面であり、図1(a)は鳥瞰図、図1(b)は側面図である。
【図2】実施例1において用いられる視点を車両内部においた衝突物判定装置を表す射影図である。
【図3】実施例1において用いられる衝突物判定装置内部の入出力を表すブロック図である。
【図4】実施例1において用いられる衝突物判定装置が地面に固定された物体に衝突した場合の各部の変形を表す図面であり、図4(a)は時刻t0の様子、図4(b)は時刻t1の様子を表す。
【図5】実施例1において用いられる衝突物判定装置が地面に固定された物体に衝突した場合の光ファイバセンサの時系列出力情報を表す図である。
【図6】実施例1において用いられる衝突物判定装置が地面に固定されていない物体に衝突した場合の各部の変形を表す図面であり、図6(a)は時刻t0の様子、図6(b)は時刻t2の様子を表す。
【図7】実施例1において用いられる衝突物判定装置が地面に固定されていない物体に衝突した場合の光ファイバセンサの時系列出力情報を表す図である。
【図8】実施例1において用いられる判定手段18の内部処理を表すフローチャートである。
【図9】実施例2において用いられる判定手段18の内部処理を表すフローチャートである。
【図10】実施例3において用いられる衝突物判定装置の構成のおおよその配置を示す側面図である。
【図11】実施例3において用いられる図面であり、図11(a)は面圧センサ101にかかる平均荷重FAの時系列出力情報を表し、図11(b)は面圧センサ101にかかるモーメントMの時系列出力情報を表す。
【図12】実施例3において用いられる衝突物判定装置が地面に固定された物体に衝突した場合の各部の変形を表す図面であり、図12(a)は時刻t0の様子、図12(b)は時刻t1の様子を表す。
【図13】実施例3において用いられる衝突物判定装置が地面に固定された物体に衝突した場合の面圧センサ101が計測した平均荷重FAとモーメントMの時系列出力情報とを表す図である。
【図14】実施例3において用いられる衝突物判定装置が地面に固定されていない物体に衝突した場合の各部の変形を表す図面であり、図14(a)は時刻t0の様子、図14(b)は時刻t2の様子を表す。
【図15】実施例3において用いられる衝突物判定装置が地面に固定されていない物体に衝突した場合の面圧センサ101が計測した平均衝突荷重FとモーメントMの時系列出力情報とを表す図である。
【図16】実施例3において用いられる判定手段18の内部処理を表すフローチャートである。
【図17】実施例4において用いられる衝突物判定装置の構成のおおよその配置を示す図面であり、図17(a)は鳥瞰図、図17(b)は側面図である。
【図18】実施例4において用いられる視点を車両内部においた衝突物判定装置を表す射影図である。
【図19】実施例4において用いられる判定手段18の内部処理を表すフローチャートである。
【図20】実施例5において用いられる視点を車両内部においた衝突物判定装置を表す射影図である。
【図21】実施例5において用いられるクランク型センサの詳細図である。
【図22】実施例5において用いられるクランク型センサに荷重が掛かった場合の詳細図である。
【図23】実施例5において用いられる歩行者が衝突物判定装置に衝突した場合の各センサの時系列出力であり、図23(a)はクランク型センサの出力、図23(b)は上部タッチセンサ201の出力、図23(c)は下部タッチセンサ202の出力を表す。
【図24】実施例5において用いられる判定手段18の内部処理を表すフローチャートである。
【図25】実施例6において用いられる衝突物判定装置内部の入出力を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
11 フロントバンパ
12 アブソーバ
13 上部光ファイバセンサ
14 下部光ファイバセンサ
15 リーンフォースメント
16 右サイドメンバ
17 左サイドメンバ
18 判定手段
101 面圧センサ
171 右上部チューブ式圧力センサ
172 右下部チューブ式圧力センサ
173 左上部チューブ式圧力センサ
174 左下部チューブ式圧力センサ
201 上部タッチセンサ
202 下部タッチセンサ
203 右クランク型センサ
204 左クランク型センサ
211 金属部材
212 歪ゲージ
251 上下加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドメンバ(16、17)とバンパ(11)との間に設置され、前記バンパ(11)へ衝突物が衝突した際に、前記バンパ(11)に加えられた衝突エネルギーを前記バンパ(11)の前面において上下二箇所以上を検出し、上部検出信号と下部検出信号を出力するセンサ(13、14、101、171〜174、201〜204)と、
前記上部検出信号と前記下部検出信号とを比較することで、前記衝突物の種類を特定する判定手段(18)とを備えることを特徴とする車載用衝突物判定装置。
【請求項2】
前記センサは、上部センサ(13、171、173、201)および下部センサ(14、172、174、202)の2つのセンサにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項3】
前記センサ(13、14、201、202)は、アブソーバ(12)とリーンフォースメント(15)との間に備えられることを特徴とする請求項1に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項4】
前記センサ(101、171〜174、203、204)は、リーンフォースメント(15)と前記サイドメンバ(16、17)との間に備えられることを特徴とする請求項1に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項5】
前記判定手段(18)は、衝突から所定時間が経過した時点の前記上部検出信号および前記下部検出信号の大小を用いて前記衝突物の種類を判定することを特徴とする請求項1に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項6】
前記判定手段(18)は、衝突から所定時間が経過した時点の前記上部検出信号および前記下部検出信号の時系列変化量の大小を用いて前記衝突物の種類を判定することを特徴とする請求項1に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項7】
前記判定手段(18)は、前記上部検出信号が前記下部検出信号に比べ所定値以上小さい場合に、前記衝突物は地面に固定された物体であると判定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項8】
前記判定手段(18)は、前記上部検出信号が前記下部検出信号に比べ所定値以上大きい場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項9】
前記判定手段(18)は、前記比較に加えて前記上部検出信号が所定値以上である場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項10】
前記車両のピッチングを計測するピッチング計測手段(251)と、
前記ピッチング計測手段(251)が計測したピッチング情報をもとに、前記衝突物の種類を特定する判定手段(18)とを備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項11】
前記上部検出信号と該上部検出信号を検出した前記センサ(101)の上部検出場所、および、前記下部検出信号と該下部検出信号を検出した該センサ(101)の下部検出場所とを用いて、該センサ(101)に対して発生する車両進行方向から車両垂直上方向を正とするモーメントを計算し、前記モーメントと、前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号とを、前記判断手段(18)の判定条件に用いることを特徴とする請求項1または請求項3から請求項10に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項12】
前記上部検出信号と該上部検出信号を検出した前記上部センサ(13、171、173、201)の上部検出場所、および、前記下部検出信号と該下部検出信号を検出した前記下部センサ(14、172、174、202)の下部検出場所とを用いて、該センサに対して発生する車両進行方向から車両垂直上方向を正とするモーメントを計算し、前記モーメントと、前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号とを、前記判定手段(18)の判定条件に用いることを特徴とする請求項2に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項13】
前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号が第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも大きい場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項14】
前記上部検出信号、またはおよび、前記下部検出信号が第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも小さい場合に
、前記衝突物は地面に固定された物体であると判定することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項15】
車両のサイドメンバ(16、17)とバンパ(11)との間に設置され、前記バンパ(11)へ衝突物が衝突した際に、前記バンパ(11)に加えられた衝突エネルギーとモーメントとを検出し、出力するセンサ(10
1)と、
前記衝突エネルギーと前記モーメントとを基準値に対して比較することで、前記衝突物の種類を特定する判定手段(18)とを備えることを特徴とする車載用衝突物判定装置。
【請求項16】
前記衝突エネルギーが第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも大きい場合に、前記衝突物は地面に固定されていない物体であると判定することを特徴とする請求項15に記載の車載用衝突物判定装置。
【請求項17】
前記衝突エネルギーが第一所定値よりも大きく、かつ、前記モーメントが第二所定値よりも小さい場合に、前記衝突物は地面に固定された物体であると判定することを特徴とする請求項15に記載の車載用衝突物判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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