説明

車輌に付着した有害生物を死滅させる方法

【課題】本発明の目的は、ブース内のガソリン濃度を上昇させることなく、安全に車輌を熱処理する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、ブース内に車輌を収納し、ブース内の気体を加熱し、車輌に付着した有害生物を死滅させる方法において、ガソリン蒸気を排出しながらブース内の気体を加熱することを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌に付着した有害生物を死滅させる方法に関する。さらに詳しくは、ガソリン濃度の上昇を防止しつつ、車輌を加熱して車輌に付着した有害生物を死滅させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中古車の輸出が盛んに行われている。この際、独自の生態系を有するニュージーランド等のオセアニア諸国は、その生態系を維持するため、輸入する全ての中古車輌の検査を行い、車輌に付着した有害生物を無害化することを要求している。
有害生物を死滅させる方法として燻蒸による方法が知られている。しかし、燻蒸による方法は、人体に有毒で環境にも悪影響を与える薬剤を用いる。
そこで、車輌を熱処理して有害生物を死滅させる方法が検討されている。即ち、車輌をブース内に収納し、ブース内の気体を加熱し、車輌に付着した有害生物を死滅させる方法が検討されている。ブース内の温度を上げると、車輌のガソリンタンク中のガソリンが気化し、ブース内のガソリン濃度が上昇し、火災、大気汚染を引き起こす危険性がある。
一方、ガソリン蒸気の発生を防止する方法として、事前に車輌からガソリンを抜き出すことも考えられる。しかし、全ての車輌からガソリンを抜き出すのは煩雑で手間がかかる。また、かえってガソリンの引火による火災の危険性が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の目的は、ブース内のガソリン濃度を上昇させることなく、安全に車輌を熱処理する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、ブース内のガソリン濃度の上昇を防止しながら車輌を熱処理する方法について検討した。その結果、ブース内のガソリン蒸気を排出しながら車輌を熱処理することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
即ち、本発明は、ブース内に車輌を収納し、ブース内の気体を加熱し、車輌に付着した有害生物を死滅させる方法において、ガソリン蒸気を排出しながら加熱を行なうことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブース内の車輌の熱処理において、ガソリン濃度を上昇させることなく安全に車輌に付着した有害生物を死滅させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ブース内に車輌を収納し、ブース内の気体を加熱し、車輌に付着した有害生物を死滅させる方法において、ガソリン蒸気を排出しながら加熱を行なうことを特徴とする方法である。
【0008】
(ブース)
ブースは、床部(19)、車輌の搬入出部(20)を備えた前壁部(21)、後壁部(22)、左右の側壁部(23)およびこれらを被う屋根部(24)を有する。ブースの一例を図4に示す。
ブースの形状は箱型、ドーム型、立体型など車輌が搬入出できる形状のものであればよく、その形状に特に制限はない。ブースは風雨に直接曝されることのない、加熱気体の熱ロスを最小限にする2重構造の建屋を有するのがよい。ブースは、長さ15〜40m、幅9〜40mであることが好ましい。また、ブースの車輌の収容台数は、3〜40台であるのがよい。2台では処理台数の効率が悪く実用的でなく、好ましくは4台がよく、収納台数41台以上になると車輌全体の気体の温度が均一にならず、好ましくは16台がよい。
ブースの後壁部(22)、左右の側壁部(23)およびこれらを被う屋根部(24)には断熱材を有することが好ましい。断熱材の厚みは5〜200mmが好ましい。5mm未満では断熱効果が悪い。また200mmを超えると断熱効果に変りがない。好ましくは20〜100mmである。断熱材としてはポリスチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、ロックウール、グラスウール、繊維混入セメントボードなどがよい。
【0009】
搬入出部(20)を備えた前壁部の床には、幅が10〜100mm、深さが10〜100mmの水溝を設置し、搬入出部の天井から熱バリヤー性のシートを吊るして水溝に漬けてブースの気密を確保し加熱空気の熱ロスを防ぐことが好ましい。熱バリヤー性シートの厚みは0.1〜50mmがよい。0.1mmより薄いと断熱効果に劣る。50mmより厚いと車輌の搬入出の邪魔となる。好ましくは2〜10mmである。熱バリヤー性シートは塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂などのプラスチックシート、また綿布、合成繊維布、ゴムなどが挙げられる。
【0010】
ブースは、車輌の搬入、搬出のための開閉部として、前壁部の上部から吊り下げられたシートを有することが好ましい。また、該シートの裾部は、水溝中に入れられ、水溝中の水により気密性が保たれていることが好ましい。即ち、ブースは、前壁部の上部から吊り下げられたシートを有し、該シートの裾部は、水溝中に入れられ、水溝中の水により気密性が保たれていることが好ましい。
車輌の搬入および搬出を容易にするため、ブースの床部にタイヤガイドを有することが好ましい。
ブースは、可燃性ガス検知警報装置を有することが好ましい。警報装置の型式としてはハンデー型、壁掛け型、定置型が挙げられるが、好ましくは定置型がよい。また、測定方式としては赤外線方式、接触燃焼方式、半導体方式が挙げられる。
ブースは、防爆設備を有することが好ましい。防爆設備を必要とする装置は、加熱装置、気体流動装置、排気装置、可燃性ガス警報装置および照明器具等が挙げられる。
【0011】
ブースは、爆発防止自動制御システムを有することが好ましい。該システムは、ガソリン濃度を定置型濃度測定器で三箇所以上測定し、そのいずれか1箇所の濃度が1000ppm以上において、排気ファンを自動的に稼動して外気の気体を吸入し、ガソリン濃度を10ppm以下まで下げる。10ppm未満に下がったら排気ファンを自動的に停止する。また、万一ガソリン濃度が危険濃度(10000ppm以上)域に達したときは自動的に加熱を停止すると共に緊急警報システムにより自動的に排気ファンで外気の気体と置換するシステムである。
ブースは、建屋内に設置することが好ましい。建屋は風、雨、地震などの防げる構造で、車輌の搬入出ができるシャッターがある気密な構造であることが好ましい。建屋はシート、平板またはこれら組合せ、並びに支柱からなることが好ましい。建屋は、支柱および平板より構成されていてもよい。平板としてプラスチックシート、金属板、セメント板などが挙げられる。建屋は、支柱およびシートよりなるテントであってもよい。シートは難燃シートが好ましい。
建屋は、ブースを1個以上設置できる大きさであればよく、好ましくはブースを2個以上設置できる大きさがよい。従って、建屋は、横5〜50m、長さ10〜80m、高さ2〜5mであることが好ましい。建屋内には複数のブースを有することが好ましい。
【0012】
(車輌)
本発明の対象車輌は、主に輸出中古車輌であるが、輸出新車輌も含まれる。車輌の種類としては乗用車、ワゴン車、RV車、ライトバン、バス、トラック、およびオートバイなどが挙げられる。
【0013】
(有害生物)
有害生物として、昆虫網、クモ類などの節足動物、アフリカマイマイ、カタツムリ類などの軟体動物などが挙げられる。
【0014】
(収納)
車輌の収納は、車輌のエンジンを起動して自走して行うことができる。自走して行う場合、車輌はバッテリーの充電切れで動かないものが多くある。そのため、バッテリーを充電することも必要である。また、ローラーやコンベヤーで搬入することもできる。
【0015】
(加熱)
ブース内の気体は、空気であるが、二酸化炭素ガス、窒素ガスなどを併用してもよい。
また、ブース内の気体湿度が50〜80%のとき有害生物に対して効果的に作用する。
ブース内の気体の温度は、50〜80℃にすることが好ましい。ブース内の気体の温度は、50〜80℃にすることにより、有害生物を死滅させることができる。また、車輌内部は複雑な形状を有しており、車輌内の温度のばらつきを抑え、出来るだけ均一に加熱する必要がある。また、時間当たり出来るだけ多くの車輌を処理するため、短時間で処理する必要がある。
【0016】
気体の温度の上昇は、加熱装置で行うことが好ましい。加熱装置として、ボイラー、シーズヒーター、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーター、燃焼バーナー、熱交換器、面状発熱体およびこれらを組合せが挙げられる。好ましくは熱交換器、シーズヒーター、面状発熱体である。より好ましくは熱交換器である。熱交換器は、エロフィン方式、プレートフィン方式、フィンチューブ方式のいずれでもよい。熱交換器の熱媒体は、水、油などの液体、または蒸気、ガスなどいずれでもよい。蒸気または油が好ましい。加熱装置の熱媒体の温度は、好ましくは50〜500℃、より好ましくは80〜300℃である。50℃未満ではブース内の気温の上昇が悪く、500℃を超えると熱源のコストが高くなる。
【0017】
また、加熱気体の吹き出し口は、床部、左右の側壁面部、天井部、搬入出部を備えた前壁部、後壁部などいずれでもよい。好ましくは、床部または/および左右の側壁部がよい。また、加熱気体の吹き出し口の数は、好ましくは2箇所以上である。吹き出し口が2箇所以上あれば、ブース内の気体の温度のバラツキが少なくなる。
ボイラー(25)、蒸気ヘッダー(26)、蒸気熱交換コイル(27)、循環ファン(28)、気体吸入口(29)、蒸気配管系統(30)および気体循環配管系統(31)を有すブースの平面図の一例を図5に示す。
【0018】
また、加熱装置で加熱された気体は、気体流動装置によりブース内に送られる。気体流動装置として、送風機、撹伴機およびこれらの組合せが挙げられる。また、送風機、攪拌機として、シロッコファン、ルーツブロワー、軸流ファン、油圧換気扇、扇風機などが挙げられる。気体流動装置は、ブース内の加熱およびブース内の気体を排出するのに用いることができる。気体流動装置を取り付ける場所は特に限定しないが、好ましくは、天井部、側壁部である。気体の吹き出し口の数は、好ましくは2個以上である。また、吹き出し口の取り付ける場所は、好ましくは床部、側壁部である。ブースは、ブロワーを取り付けた導管を有することが好ましい。
【0019】
気体の流速は、好ましくは1〜5m/秒、より好ましくは2〜3m/秒である。1m/秒未満ではブース内の気温の上昇が悪く、5m/秒を超えると気体温度を50℃以上にコントロールするのに風量が大きすぎて加熱装置のコストが高くなる。
気体流動装置からブース内へ送られる気体の温度は、好ましくは60〜80℃である。気体の温度が60℃未満ではブース内の気体の温度上昇に時間が長くかかり、車輌の処理台数の効率が悪くなる。また80℃を超えると、ガソリンタンクからガソリンの漏洩が多くなり、ブース内のガソリン濃度が高くなり爆発の危険性が増し、また、車輌に障害が生じる恐れがある。
【0020】
加熱は、下記式で表される送風量(V)で、温度60〜80℃の気体をブース内に送風することにより行うことが好ましい。
0.5V≦V
但し、Vはブースの容積(m)、Vは1分間あたりの送風量(m)である。
送風量が大きすぎると熱量のむだとなる。また、流動が少ないと温度のムラが生じる。従って、0.5V≦V≦1.5Vであることがより好ましい。
ブース内の気体の温度は、1〜2℃/分の速度で上昇させることが好ましい。加熱の時間は、好ましくは10分間〜3時間、より好ましくは30分間〜2時間である。加熱工程の時間が10分未満だと加熱設備と熱量コストが高くなる。3時間を超えると、ガソリンタンクからガソリンの漏洩が多くなってブース内のガソリン濃度が高くなり爆発の危険性が増す。また加熱工程の時間が長いと多くの車輌が処理しきれないのでブースの数を増やす必要がありコストが高くなる。
加熱では、ブース内の気体の温度を維持する時間を設けることが好ましい。即ち、ブース内の気体の温度を50〜80℃で、5分間〜1時間維持することが好ましい。維持する時間が短すぎると、有害生物に対する効果が無く、また、長すぎると有害生物に対する効果に差がなく、またガソリン濃度が上昇して危険性が増す。
【0021】
(ガソリン蒸気の排出)
ガソリン蒸気の排出は、ブース内の気体を排出することにより行なうことが好ましい。気体の排出は、ブース内の気体の加熱に用いる気体流動装置の吸入口から行なうことができる。またガソリン蒸気の排出用の気体流動装置の吸入口から行なうことができる。気体流動装置として、ルーツブロワー、シロッコファン、軸流ファンが挙げられる。これらは好ましくは防爆仕様がよい。
排出した気体を吸着剤に接触させ、ガソリンを除去することが好ましい。
吸着剤に接触させ、ガソリンを除去した気体をブース内に戻すこともできる。即ち、ブースからから排出した気体を循環させることもできる。
【0022】
吸着剤として、活性炭、モレキュラシーブ、セラミック吸収剤、シリカゲルなどが挙げられる。吸着剤として特に活性炭が好ましい。活性炭はメソ孔を主体とする石油系炭化水素を吸着するものがよい。活性炭のメソ孔を有する成分は30〜70%の割合のものがよい。また、メソ孔の細孔は3〜500Åを有する、C2〜C12の石油系炭化水素を吸着するものがよい。メソ孔の細孔は3Åより小さいと活性炭の再生効率が悪い。また500Åより大きいと炭素数の少ない石油系炭化水素の吸着が悪い。好ましくは20〜300Åである。即ち、活性炭はメソ孔を30〜70%を有し、メソ孔の直径は3〜500Åであることが好ましい。活性炭の原料はヤシガラ、石炭、木質、樹脂が挙げられる。好ましくは石炭または木質である。活性炭の形状はペッレト炭、破砕炭、粉末炭が挙げられる。好ましくは、ペレット炭または破砕炭である。
【0023】
気体と吸着剤との接触時間が0.1分〜3時間であり、気体の空塔速度(SV値)が0.2〜2.0m/sであることが好ましい。
また、ガソリン蒸気の排出を、車輌のガソリンタンクに導管を接続して行なうことが好ましい。導管は、ガソリンタンクの給油口に接続することが好ましい。即ち、ガソリンタンクの給油口の蓋を外し、別に、導管の付いた蓋をガソリンタンクの給油口に取り付け、導管からガソリン蒸気をブース外に放出する方法が好ましい。給油口の蓋に取り付ける蓋、パッキンおよび導管の材質は銅、アルミニュームなどの金属およびテフロン、ナイロン、ポリエチレンなどのプラスッチク樹脂が挙げられる。導管の内径は4〜12mmがよい。
【0024】
また導管を、ガソリンタンクの大気放出系に接続してガソリン蒸気を排出することが好ましい。ガソリンタンクには、気化するガソリンが大気に放出されることを防止するため、大気放出系の導管が設けられている。大気放出系の導管は、エンジン吸気部および活性炭が充填されたキャニスターに接続されている。エンジンの起動中は、大気放出系の導管は、コントロールバルブによりエンジン吸気部に接続され、ガソリンタンクからの気体はエンジン吸気部に導かれ燃焼される。一方、エンジンの停止中は、大気放出系の導管は、コントロールバルブによりエンジン吸気部と切断され、ガソリンタンクからの気体は、活性炭が充填されたキャニスターから大気に放出される。従って、導管はガソリンタンクの大気放出系、特にキャニスターの大気に放出用の導管に接続することが好ましい。
【0025】
また、導管から排出されるガソリン蒸気を、吸着若しくは冷却して除去することが好ましい。即ち、ガソリン蒸気の除去は、容器に充填した活性炭に吸着させることにより行うことができる。また、導管から排出されるガソリン蒸気を、熱交換器で冷却してもよい。冷却温度は、−20℃前後が好ましい。
ガソリン蒸気の排出は、ブース内の気体を排出する方法およびガソリンタンクの大気放出系から排出する方法を併用することが好ましい。
ブース内のガソリン濃度は300ppm以下にすることが好ましい。しかし、ガソリンは大気を汚染し、また発がん性物質第2群B類(証拠が比較的十分でない分類)であり、できるだけ少なくするため、好ましくは10ppmがよい。
【0026】
本発明は、車輌をブース内に搬入し(i)、ガソリン蒸気を排出しながらブース内の気体を加熱し(ii)、ブース内の気体を排出し(iii)、車輌をブース外に搬出する(iv)ことにより行なうことができる。
搬入、加熱は前述の通りである。
ブース内の気体の排出(iii)は、送風機または/および撹伴機を用いて行うことが出来る。送風機、攪拌機として、シロッコファン、ルーツブロワー、軸流ファン、油圧換気扇などが挙げられる。また送風機等は、別に取り付けてもよいが、好ましくはブース内に気体を送風する装置と同一の物を使用するのがよい。また、2つ以上のブースを使用するとき、排出する気体は導管を用いて車輌の搬入が終了した他のブースに接続し、有効に加熱気体を利用することが好ましい。ブース内の気体を排出する風量は、好ましくは8〜1000m/分、より好ましくは10〜500m/分である。風量が8m/分未満ではブース内の冷却が遅く、あまり風量が大きすぎてもエネルギーの無駄となる。
車輌の搬出(iv)は、車輌のエンジンを起動して自走して行なうことができる。自走して行う場合、車輌はバッテリーの充電切れで動かないものが多くある。そのため、バッテリーを充電する必要がある場合がある。また、ローラーやコンベヤーで搬出することもできる。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕
<試験装置>
試験装置を図1に示す。
【0028】
(ブース)
ブース(1)として、ガス漏洩のない密閉できるリーファーコンテナ(L:5,486mm、W:2,270mm、H:2,234mm、V:27.8m)を用いた。
【0029】
(車輌)
車輌(2)として、中古乗用車(車種;レガシー、年式;1997年、排気量;2000cc、スバル製)を用いた。該車輌は、キャニスターがあり、ガソリンタンクには約4分の1のガソリンが残っていた。
【0030】
(加熱装置、気体流動装置)
加熱装置(3)として、熱風発生機(型式:TSK101B、ヒーター容量:45kW(200V,3相)、メーカー:(株)竹綱製作所)を用いた。気体流動装置(4)として送風機(型式:YU−2200、32m/分、メーカー:(株)竹鋼製作所)を用いた。気体流動装置(4)の吸入導管(6)をコンテナの上部に、加熱装置(3)の吐出導管(5)をコンテナの下部にアルミ製ダクトで接続した。
【0031】
(吸着槽)
吸着槽(7)として、ステンレス製の容器(直径:600mm、高さ:1,000mm)の下部に吸入口を取り付け、上部の蓋に吐出口を取り付けた。容器の中に下部から300mmの空隙を設けて、ガソリン吸着用活性炭(8)(商品名:クラレコール、銘柄:KG、形状:顆粒状、粒度:8メッシュ、嵩比重:0.7g/cc)を100kg充填した。
【0032】
(排出装置)
気体流動装置(9)として循環ブロワー(商品名:電動送風機、型式:KSB−750(H)、風量:23m/分、静圧:2.3kPa、メーカー:昭和電機(株))に風量を調整するインバーターを取り付けたものを用いた。この気体流動装置(9)の吸入口に内径100mmのアルミ製の吸入導管(11)でブース(1)の下部の吸入口に接続した。
次に、気体流動装置(9)の吐出口を内径100mmのアルミ製導管で吸着槽(7)の下部の吸入口に接続した。この導管に穴を開けてアネモマスター(10)(Model:6113、風速測定範囲:0.1〜50m/s、風温:0〜100℃、メーカー:カノマックス製)の検出部を挿入した。吸着槽(7)の吐出口からアルミ製の吸入導管(12)でブース(1)の上部の吐出口に接続した。
【0033】
<試験方法>
(車輌の収納)
乗用車の窓を開けてブース(1)に搬入し、ブース(1)を密閉した。
【0034】
(加熱)
加熱装置(3)の加熱温度は200℃とし、風量はインバーターで設定して30m/分とし、熱風吐出温度の設定は80℃とした。a、b、cの測定箇所の温度計の表示温度が65℃になったら熱風吐出温度の設定を65℃として、30分間維持し続け、加熱を終了した。各温度の設置場所を図3に示す。
【0035】
(吸着)
加熱装置の加熱開始と同時に、気体流動装置(9)を稼動させ、アネモマスター(10)の風速からインバーターで気体流動装置(9)の風量を15m/分として、加熱が終了するまでブース(1)内の空気を吸着槽(7)に循環させた。この時の空塔速度(SV)は0.88m/sであった。
【0036】
<評価>
(温度)
ブース(1)内の温度は自記記録温度計(おんどとり:TR−72S型、Thermo Recorder製)を(a)コンテナ空間、(b) 車内前座席シートの下(c)導管内に設置し、各部位の温度の経時変化を測定する。また、吸着槽(7)手前の風温(d)は加熱終了後にアネモマスター(10)からプリントアウトした。
【0037】
(ガソリン濃度)
テフロン(登録商標)パイプ(内径:4mm)をコンテナ内の下部(a)、車内空間(b)および車内前座席シートの下(c)に設置し、ガソリン測定用検知管(型式:101L,ガスッテク製)を吸引ポンプで1〜3回吸引し経時的に測定した。
また、同時にポリエチレンパイプを車内空間に設置し、これに可燃性ガス警報器(型式:GP−88A、接触燃焼式、理研計器(株)製)を取り付け監視した。設置場所を図3に示す。
【0038】
(空塔速度)
ブロワーの風量はアネモマスター(10)の風速を測定し、風速(m/s)×アルミ製導管断面積(m)で風量を算出する。空塔速度は算出した風量(m/s)を風量(m/s)/吸着槽断面積(m)で算出した。
【0039】
<試験結果>
(1)各場所の温度、ガソリン濃度の経時変化を表1に示す。
(2)試験中、可燃性ガスにおける異常はなかった。
【0040】
【表1】

【0041】
尚、外気温(コンテナ外)は0〜71分の間、15.4〜17.3℃で推移した。
【0042】
<考察>
加熱処理において、加熱開始30分後における各場所の温度が50℃以上になったとき、また65℃になってから30分間、65℃を維持したとき、いずれもガソリン濃度は全て検出(ND)されなかった。一方、比較例は加熱開始20分後46.0〜51.3℃のとき、ガソリン濃度は30ppmが検出され、その後ガソリン濃度は温度と時間と共に上昇し、最終的には600ppmに達した。この結果から、ガソリンを含む気体を吸着能力の優れた活性炭に接触させることにより、ガソリン濃度の上昇を防止できることがわかった。
【0043】
〔実施例2〕
<試験装置>
試験装置を図2に示す。
【0044】
(ブース)
実施例1と同じ物を使用した。
【0045】
(車輌)
実施例1と同じ物を使用した。
【0046】
(加熱装置、気体流動装置)
実施例1と同じ物を使用した
【0047】
(ガソリン燃料タンクの気体放出装置)
ガソリン燃料タンクと同じ口径のステンレスのネジ蓋(13)およびゴムのパッキンを作製した。ネジ蓋(13)にはテフロン(商標登録)の導管(14)(外径:6mm、内径:4mm、長さ:13m)をコ−ティング剤で取り付け、ガソリン燃料タンクの気体をコンテナ外に放出する装置とした。
【0048】
(ガソリン除去装置)
ガソリン燃料タンクのテフロンの気体放出導管(14)に、蛇管(15)(長さ:蛇管の長さ:約15cmのガラス製の受器、理化学実験用)を取り付け、蛇管(15)を冷媒の入った冷却容器(16)に浸漬し、ガソリンを液化除去する装置とした。
【0049】
(排気ガソリン濃度測定)
蛇管(15)の出口側にテフロン導管(18)でテトラーバック(17)(サイズ:150×250mm、商標登録)に接続した。
【0050】
<試験方法>
(車輌の搬入)
実施例1と同様に行った。
【0051】
(加熱)
実施例1と同様に行った。
【0052】
(ガソリン燃料タンクの気体放出)
乗用車のガソリン燃料タンクの蓋を開け、これにあらかじめ作製しておいたテフロン気体放出導管(14)の付いたネジ蓋(13)およびパッキンを取り付け、ブース(1)の外の蛇管(15)に接続した。
(ガソリン除去)
蛇管(15)を約―20℃に冷却したアセトン−ドライアイス溶液冷媒の入った冷却容器(16)に浸漬し、ガソリンを液化除去した。
【0053】
<評価>
(温度)
実施例1と同様に行った。また、設置場所も実施例1と同様にした。
【0054】
(ガソリン濃度)
実施例1と同様に行った。また、設置場所も実施例1と同様にした。
【0055】
(排気ガソリン濃度)
ガラス製の蛇管(15)の出口側にテトラーバック(サイズ:150×250mm、商標要録)(17)を取り付け加熱終了まで捕集し、これにガソリン測定用検知管(型式:101L,ガスッテク製)を取り付、吸引ポンプで3回吸引し測定した。
【0056】
<試験結果>
(1)各場所の温度、ガソリン濃度の経時変化を表2に示す。
(2)排気ガソリン濃度は加熱開始から終了までの排ガスを捕集した濃度は検出限界
以下であった。
(3)試験中、可燃性ガスにおける異常はなかった。
【0057】
【表2】

【0058】
尚、外気温(コンテナ外)は0〜71分の間15.4〜17.3℃で推移した。
【0059】
<考察>
加熱処理において、加熱開始後、30分で各部所の温度が50℃以上のとき、ガソリン濃度は全て検出(ND)されなかった。また65℃になってから30分間、65℃を維持する過程において、いずれもガソリン濃度は全て検出(ND)されなかった。一方、比較例は加熱開始20分後46.0〜51.3℃のとき、ガソリン濃度は30ppmが検出され、その後ガソリン濃度は温度と時間とともに上昇し、最終的には600ppmに達した。この結果から、車輌のガソリン燃料タンクからガソリンを含む気体をコンテナ外に放出することより、ガソリン濃度の上昇を防止できることがわかった。
【0060】
〔比較例〕
循環ブロワー(9)でガソリン蒸気を排出し吸着ない以外は実施例と同じ操作を行なった。
【0061】
<試験結果>
【0062】
【表3】

【0063】
尚、外気温(コンテナ外)は0〜71分の間、15.1〜17.9℃で推移した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1で用いた装置の略図である。
【図2】実施例2で用いた装置の略図である。
【図3】実施例1〜2および比較例における温度およびガソリン濃度の測定位置を示す図である。
【図4】ブースの斜視図である。
【図5】ブースの平面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ブース
2 車輌
3 加熱装置
4 気体流動装置
5 吐出導管
6 吸入導管
7 吸着槽
8 活性炭
9 気体流動装置
10 アネモマスター
11 吸入導管
12 吐出導管
13 ガソリンタンクのネジ蓋
14 気体放出導管
15 蛇管
16 冷却容器
17 テドラーバック
18 導管
19 床部
20 搬入出部
21 前壁部
22 後壁部
23 側壁部
24 屋根部
25 ボイラー
26 蒸気ヘッダー
27 蒸気熱交換コイル
28 循環ファン
29 気体吸入口
30 蒸気配管系統
31 気体循環配管系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブース内に車輌を収納し、ブース内の気体を加熱し、車輌に付着した有害生物を死滅させる方法において、ガソリン蒸気を排出しながらブース内の気体を加熱することを特徴とする方法。
【請求項2】
ガソリン蒸気の排出を、ブース内の気体を排出することにより行なう請求項1記載の方法。
【請求項3】
排出した気体を吸着剤に接触させ、ガソリンを除去する請求項2記載の方法。
【請求項4】
吸着剤に接触させガソリンを除去した気体を、ブース内に戻す請求項3記載の方法。
【請求項5】
気体と吸着剤との接触時間が0.1分〜3時間であり、気体の空塔速度(SV値)が0.2〜2.0m/sである請求項3記載の方法。
【請求項6】
吸着剤が活性炭である請求項3記載の方法。
【請求項7】
活性炭はメソ孔を30〜70%を有し、メソ孔の直径は3〜500Åである請求項6記載の方法。
【請求項8】
ガソリン蒸気の排出を、車輌のガソリンタンクに導管を接続して行なう請求項1記載の方法。
【請求項9】
ガソリンタンクの給油口に導管を接続して行なう請求項8記載の方法。
【請求項10】
ガソリンタンクの大気放出系に導管を接続して行なう請求項8記載の方法。
【請求項11】
導管から排出されるガソリン蒸気を、吸着若しくは冷却して除去する請求項8記載の方法。
【請求項12】
ブース内の気体の温度を50〜80℃で5分間〜1時間維持する請求項1記載の方法。
【請求項13】
ブース内のガソリン濃度を300ppm以下に維持する請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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