説明

車輌用前照灯

【課題】 小型化を図る。
【解決手段】 光源11から出射された光を反射するリフレクター10と、光源から出射された光を投影する投影レンズ9と、投影レンズとリフレクターの間に位置され光の一部を遮蔽する固定シェード12と、固定シェードに遮蔽位置と非遮蔽位置の間で回動自在に支持され遮蔽位置に回動されて光源から出射された光の一部を遮蔽する可動シェード17と、可動シェードを回動させヨーク23とヨークの内部に配置されたコイル25とコイルへの通電状態により軸方向へ移動される出力軸26とを有する駆動機構22と、駆動機構の駆動力を可動シェードに伝達するリンク部材36とを設け、駆動機構が投影レンズと固定シェードの間に配置され、駆動機構と固定シェードの間に可動シェードが回動される回動スペース50を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、光源から出射された光の一部を遮蔽する固定シェードと可動シェードを回動させる駆動機構との間に可動シェードが回動される回動スペースを形成して小型化を図る技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には、例えば、カバーとランプハウジングによって構成された灯具外筐の内部に、光源を有する灯具ユニットが配置されたものがある。
【0003】
車輌用前照灯の灯具ユニットには、固定シェードと可動シェードを有し、可動シェードが固定シェードに対して回動されることにより光源から出射される光の照射モードを切り替えることが可能とされているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、例えば、可動シェードが光源から出射される光を遮蔽する遮蔽位置に回動されることにより近距離を照射するロービーム用の照射モードに切り替えられ、可動シェードが光源から出射される光を遮蔽しない非遮蔽位置に回動されることにより遠距離を照射するハイビーム用の照射モードに切り替えられる。
【0005】
特許文献1に記載された車輌用前照灯には、可動シェードを回動させるための駆動機構が設けられており、駆動機構はコイル、ヨーク及び出力軸を有する電磁アクチュエーターによって構成されている。従って、可動シェードは電磁アクチュエーターのコイルへの通電及びその停止が行われることにより遮蔽位置と非遮蔽位置の間で回動される。
【0006】
【特許文献1】特開2009−230958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、灯具ユニットを有する車輌用前照灯は小型化されることが望ましく、特に、近年、車輌用前照灯に設けられる光学系の短焦点化に伴い一層の小型化の要求が高くなっている。
【0008】
ところが、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、固定シェードの下方側に可動シェードを固定シェードに対して回動させるための駆動機構が配置されており、固定シェードや可動シェードを含めたビーム切替構造に関し、特に、上下方向における高さが高く、小型化に支障を来たしている。
【0009】
そこで、本発明車輌用前照灯は、上記した問題点を克服し、小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、少なくとも一方に開口を有するランプハウジングと前記ランプハウジングの前記開口を覆うカバーとによって構成された灯具外筐の内部に灯具ユニットが配置され、前記灯具ユニットは、光源が取り付けられ前記光源から出射された光を反射する反射面を有するリフレクターと、前記光源から出射された光を投影する投影レンズと、前記投影レンズと前記リフレクターの間に位置され前記光源から出射された光の一部を遮蔽する固定シェードと、前記固定シェードに遮蔽位置と非遮蔽位置の間で回動自在に支持され前記遮蔽位置に回動されて前記光源から出射された光の一部を遮蔽する可動シェードと、前記可動シェードを回動させヨークと前記ヨークの内部に配置されたコイルと前記コイルへの通電状態により軸方向へ移動される出力軸とを有する駆動機構と、前記駆動機構の駆動力を前記可動シェードに伝達する伝達機構とを備え、前記駆動機構が前記投影レンズと前記固定シェードの間に配置され、前記駆動機構と前記固定シェードの間に前記可動シェードが回動される回動スペースが形成されたものである。
【0011】
従って、車輌用前照灯にあっては、可動シェードが駆動機構と固定シェードの間において回動される。
【発明の効果】
【0012】
本発明車輌用前照灯は、少なくとも一方に開口を有するランプハウジングと前記ランプハウジングの前記開口を覆うカバーとによって構成された灯具外筐の内部に灯具ユニットが配置された車輌用前照灯であって、前記灯具ユニットは、光源が取り付けられ前記光源から出射された光を反射する反射面を有するリフレクターと、前記光源から出射された光を投影する投影レンズと、前記投影レンズと前記リフレクターの間に位置され前記光源から出射された光の一部を遮蔽する固定シェードと、前記固定シェードに遮蔽位置と非遮蔽位置の間で回動自在に支持され前記遮蔽位置に回動されて前記光源から出射された光の一部を遮蔽する可動シェードと、前記可動シェードを回動させヨークと前記ヨークの内部に配置されたコイルと前記コイルへの通電状態により軸方向へ移動される出力軸とを有する駆動機構と、前記駆動機構の駆動力を前記可動シェードに伝達する伝達機構とを備え、前記駆動機構が前記投影レンズと前記固定シェードの間に配置され、前記駆動機構と前記固定シェードの間に前記可動シェードが回動される回動スペースが形成されたことを特徴とする。
【0013】
従って、灯具ユニットの上下方向における高さを低くすることができ、車輌用前照灯の小型化を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載した発明にあっては、前記ヨークは少なくとも一部が板状の材料が所定の形状に折り曲げられてケース状に形成され、前記ヨークは前記投影レンズ側から入射された光の内部への入射が遮蔽される形状に形成されている。
【0015】
従って、外部から車輌用前照灯を視認したときにヨークの内部に配置された構造が視認されず、車輌用前照灯の見栄えの向上及びデザイン性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項3に記載した発明にあっては、前記可動シェードの回動位置によって遠距離を照射するハイビームの配光パターンと近距離を照射するロービームの配光パターンとが切り替えられ、前記ヨークの上面に光源から出射された光を反射する光反射面を有する反射部材が配置され、前記ロービームの配光パターンの形成時に、前記反射部材の光反射面で反射される光によって前記ロービームの配光パターンの上側にオーバーヘッドサイン光の配光パターンが形成されるようにしている。
【0017】
従って、反射部材の光反射面の大きさを小さくすることが可能であり、反射部材の小型化による車輌用前照灯の小型化を図ることができる。
【0018】
請求項4に記載した発明にあっては、前記ヨークの前記投影レンズ側に下縁が上縁より前記投影レンズ側に位置された傾斜面部が形成され、前記ヨークの傾斜面部の水平面に対する傾斜角度が前記反射部材の光反射面の水平面に対する傾斜角度より大きくされている。
【0019】
従って、光源から反射部材側へ向かった光がヨークの傾斜面部に入射され難く、オーバーヘッドサイン光の配光パターンの形成時に不必要な光がオーバーヘッドサイン光として用いられ難く、オーバーヘッドサイン光の良好な配光パターンを形成することができる。
【0020】
請求項5に記載した発明にあっては、前記伝達機構の一端部が前記可動シェードの回動中心より上側に連結され、前記伝達機構の他端部が前記駆動機構の出力軸に連結され、前記伝達機構の一端部と他端部のそれぞれ前記可動シェードと前記出力軸に対する連結方向が同じ方向にされている。
【0021】
従って、伝達機構の可動シェードと駆動機構に対する組付が容易であり、伝達機構の可動シェードと駆動機構に対する組付作業における作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
車輌用前照灯1は、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0024】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口を閉塞するカバー3とを備えている。ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成され、灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0025】
ランプハウジング2の後端部には前後に貫通された取付孔2aが形成されている。取付孔2aにはバックカバー6が取り付けられている。
【0026】
灯室5には灯具ユニット7が配置されている(図1乃至図3参照)。灯具ユニット7は、レンズホルダー8とレンズホルダー8の前端部に取り付けられた投影レンズ9とレンズホルダー8の後方に位置されたリフレクター10とリフレクター10の後端部に取り付けられた光源11とを有している。光源11としては、例えば、放電ランプが用いられている。
【0027】
レンズホルダー8は前後に貫通された円筒状のレンズ取付部8aと周方向に離隔しレンズ取付部8aからそれぞれ後方へ突出された複数の取付脚部8b、8b、・・・とを有している。
【0028】
リフレクター10は内面が反射面10aとして形成されている。リフレクター10には左右に離隔して外方へ張り出された締結部10b、10bが設けられている。
【0029】
固定シェード12は前後方向を向く板状に形成された遮蔽面部13と遮蔽面部13の下縁から前方へ突出された取付面部14とが一体に形成されて成る。
【0030】
遮蔽面部13は左右両側部がそれぞれリフレクター10の締結部10b、10bに取り付けられる被取付部13a、13aとして設けられている。
【0031】
遮蔽面部13には光透過孔15が形成されている。光透過孔15は横長の第1の部分15aと第1の部分15aの下端における左右両端部を除く部分に連続する第2の部分15bとから成り、第2の部分15bは開口縁が下方へ凸の略円弧状に形成されている。
【0032】
遮蔽面部13の左端寄りの位置には光透過孔15の直ぐ下側の位置に支持孔13bが形成され、遮蔽面部13の右端寄りの位置には光透過孔15の下側開口縁に前方へ突出されたストッパー片13cが設けられている。
【0033】
遮蔽面部13には光透過孔15の下側の位置に前方に開口された浅い凹部13dが形成されている。遮蔽面部13のうち凹部13dが形成された部分は後方へ突出するように打出状に形成された支持面部16として設けられている。遮蔽面部13の支持孔13bとストッパー片13cは支持面部16の上端部に形成されている。支持面部16は前面が遮蔽面部13の他の部分の後面と同一平面上に位置されている。
【0034】
取付面部14には前後左右に離隔して四つの取付孔14a、14a、・・・が形成されている。
【0035】
固定シェード12の被取付部13a、13aにはレンズホルダー8の取付脚部8b、8b、・・・の後端部が前側から結合され、取付脚部8b、8b、・・・と被取付部13a、13aがリフレクター10の締結部10b、10bにネジ止め等によって結合される。
【0036】
固定シェード12の支持面部16には可動シェード17が回動自在に支持されている(図2乃至図5参照)。可動シェード17は略左右に延びる板状の遮光部18と遮光部18の左端部における前面に取り付けられたウエイト19とを有している。
【0037】
遮光部18の厚みは固定シェード12の遮蔽面部13の厚みと同じにされている。遮光部18の左端寄りの位置には前後に貫通された被支持孔18aが形成されている。遮光部18には被支持孔18aの上側に前方へ突出された枠状の連結片18bが設けられている。
【0038】
可動シェード17は遮光部18の被支持孔18aと遮蔽面部13の支持孔13bに回動軸20が前側から挿入されて固定シェード12に連結され、被支持孔18aを支点として固定シェード12に対して回動可能とされる。
【0039】
可動シェード17の遮光部18には第1の反射部材21が取り付けられている(図2及び図4参照)。第1の反射部材21は上斜め前方を向く光反射面21aを有し、遮光部18の左右方向における略中央部の前面に取り付けられている。
【0040】
可動シェード17は固定シェード12に形成された光透過孔15の第2の部分15bを閉塞する遮蔽位置(図4参照)と第2の部分15bを開放する非遮蔽位置(図5参照)との間で回動可能とされている。可動シェード17は固定シェード12に設けられたストッパー片13cによって回動が規制されることにより遮蔽位置に保持される。
【0041】
尚、車輌用前照灯1において振動が生じた場合には、可動シェード17に対して遮蔽位置から非遮蔽位置へ回動される方向への回動力が付与されるおそれがあるが、可動シェード17には、上記したように、ウエイト19が設けられている。従って、ウエイト19によって非遮蔽位置へ回動される方向への回転モーメントが小さくされており、振動の発生時における可動シェード17の非遮蔽位置への不必要な回動を防止することができる。
【0042】
可動シェード17は駆動機構22によって回動される。駆動機構22としては、例えば、電磁アクチュエーターが用いられ、駆動機構22はヨーク23とコイルボビン24とコイル25と出力軸26を有している(図2参照)。
【0043】
ヨーク23はケース本体部27と蓋部28とを有している。
【0044】
ケース本体部27は板状の金属材料が所定の形状に折り曲げられて形成されている。ケース本体部27は上下方向を向く横長の矩形状に形成された下面部27aと下面部27aの前縁から上方へ突出された前面部27bと前面部27bの上縁から上斜め後方へ突出された傾斜面部27cと傾斜面部27cの上縁から後方へ突出された上面部27dと上面部27dの後縁から上方へ突出された結合面部27e、27eと右方の開口を閉塞する図示しない側面部とが一体に形成されて成る。ケース本体部27の下面部27aには下方へ突出された加締め突起27f、27fが設けられている。加締め突起27f、27fはそれぞれ下面部27aの右端部における前後両端部に設けられている。
【0045】
蓋部28は左右方向を向く板状に形成され、ケース本体部27の左方の開口を閉塞する機能を有し、左右に貫通された軸挿通孔28aを有している。蓋部28には下方へ突出された加締め突起28b、28bが設けられ、加締め突起28b、28bはそれぞれ前後両端部に設けられている。
【0046】
コイルボビン24は左右方向へ延びる図示しない円筒部と円筒部の左右両端部にそれぞれ設けられた押さえ部24a、24aと左側に位置する押さえ部24aの後端部から左方へ突出された取付部24bとから成る。コイルボビン24には左右に貫通された軸挿入孔24cが形成されている。
【0047】
コイル25はコイルボビン24の円筒部に巻き付けられている。
【0048】
出力軸26は挿入軸部29と挿入軸部29の左端に連続して設けられた規制軸部30とから成り、規制軸部30の径が挿入軸部29の径より大きくされている。規制軸部30には周方向に延びる連結溝30aが形成されている。
【0049】
コイル25が巻き付けられたコイルボビン24はヨーク23の内部に配置され、取付部24bがヨーク23から左方へ突出された状態で位置される。
【0050】
出力軸26は挿入軸部29がヨーク23の蓋部28に形成された軸挿通孔28a及びコイルボビン24の軸挿入孔24cに挿入され、左右方向へ移動可能とされる。
【0051】
出力軸26が軸挿通孔28a及び軸挿入孔24cに挿入された状態において、挿入軸部29にリターンスプリング31が支持され、出力軸26がリターンスプリング31によって左方へ付勢される。
【0052】
コイルボビン24の取付部24bにはコネクターケース32が取り付けられる。コネクターケース32はケース部32aとケース部32aの左端部から前方へ突出されたストッパー突部32bとから成り、ケース部32aが取付部24bに取り付けられる。ケース部32aの内部には図示しない接続端子や各種のダイオード等が配置されている。
【0053】
このように車輌用前照灯1にあっては、接続端子やダイオード等の電子部品をコネクターケース32のケース部32aに配置しているため、機能の集積化及び配置スペースの有効活用による小型化を図ることができる。
【0054】
コネクターケース32のケース部32aの内部に配置された接続端子には図示しない電源回路に接続されたプラグが接続され、電源回路から接続端子を介してコイル25に駆動電流が供給される。
【0055】
コネクターケース32のストッパー突部32bは出力軸26の左側に位置され、リターンスプリング31によって左方へ付勢された出力軸26の左方への一定以上の移動を規制する。
【0056】
ヨーク23のケース本体部27には第2の反射部材33が取り付けられている。第2の反射部材33は反射部34と反射部34からそれぞれ左右に突出された結合片35、35とから成る。反射部34には上斜め前方を向く光反射面34aが形成されている。反射部34の光反射面34aの傾斜角度は可動シェード17に取り付けられた第1の反射部材21の光反射面21aの傾斜角度と同じにされている。
【0057】
第2の反射部材33は結合片35、35がそれぞれ結合面部27e、27eにネジ止め等によって結合されてヨーク23の上面部27dの上側に配置される。
【0058】
ヨーク23は加締め突起27f、27f、28b、28bがそれぞれ取付孔14a、14a、・・・に挿入され加締めによって固定シェード12の取付面部14に取り付けられる。ヨーク23が固定シェード12の取付面部14に取り付けられた状態において、駆動機構22と固定シェード12の遮蔽面部13との間に可動シェード17が回動される回動スペース50が形成される(図1参照)。
【0059】
上記したように、加締め突起27f、27fがそれぞれケース本体部27の下面部27aの右端部における前後両端部に設けられ、加締め突起28b、28bが蓋部28の前後両端部に設けられているため、加締め突起27f、27f、28b、28b間の各距離が大きくされている。従って、ヨーク23を固定シェード12の取付面部14に強固に取り付けることができ、振動等が生じたときのヨーク23の取付面部14からの浮き上がりを防止することができる。
【0060】
また、ヨーク23を有する駆動機構22は後述する伝達機構を介して可動シェード17に連結されるため、ヨーク23を固定シェード12の取付面部14に強固に取り付けて振動等が生じたときのヨーク23の取付面部14からの浮き上がりを防止することにより、可動シェード17の位置精度が向上し、所望の配光パターンを良好に形成することができる。
【0061】
さらに、ヨーク23は加締めによって固定シェード12の取付面部14に取り付けられるため、ヨーク23を取付面部14に取り付けるためのネジ等が必要なく、その分、車輌用前照灯1の部品点数の削減を図ることができる。
【0062】
ヨーク23が固定シェード12の取付面部14に取り付けられ可動シェード17が遮蔽位置に保持されている状態においては、第1の反射部材21の光反射面21aと第2の反射部材33の光反射面34aとが同一平面上に位置された状態で上下方向かつ前後方向において連続される(図4及び図6参照)。このときヨーク23のケース本体部27に設けられた傾斜面部27cの水平面Hに対する傾斜角度θ1は第1の反射部材21の光反射面21aと第2の反射部材33の光反射面34aとの水平面Hに対する傾斜角度θ2より大きくされている(図6参照)。
【0063】
駆動機構22の駆動力は伝達機構として機能するリンク部材36によって可動シェード17に伝達される(図2乃至図5参照)。リンク部材36は棒状の金属材料が所定の形状に折り曲げられて形成され、略上下方向に延びる延設部37と延設部37の上端から折り曲げられた第1の結合部38と延設部37の下端から折り曲げられた第2の結合部39とから成る。第1の結合部38の先端部は下方に突出された結合用突部38aとして設けられ、第2の結合部39は二股状に形成されている。
【0064】
リンク部材36は、第1の結合部38の結合用突部38aが連結片18bに上側から挿入されて可動シェード17に連結され、第2の結合部39が出力軸26の規制軸部30に形成された連結溝30aに上側から挿入されて駆動機構22に連結される。
【0065】
このようにリンク部材36は第1の結合部38と第2の結合部39が被支持孔18aの上側に設けられた連結片18bと出力軸26にともに上側から結合される。
【0066】
従って、簡素な構造のリンク部材36が同じ方向から可動シェード17と駆動機構22に結合され、リンク部材36の可動シェード17と駆動機構22に対する組付が容易であり、リンク部材36の可動シェード17と駆動機構22に対する組付作業における作業性の向上を図ることができる。
【0067】
灯室5には灯具ユニット7が支持された図示しない枠状のフレームが配置されており、フレームは図示しないエイミング調整機構を介してランプハウジング2に傾動自在に支持されている。従って、エイミング調整機構の動作により灯具ユニット7がフレームと一体になって上下方向又は左右方向へ傾動され、光源11の光軸調整(初期調整)が行われる。
【0068】
また、灯具ユニット7はフレームに、例えば、上下方向へ傾動可能に支持されていてもよい。灯具ユニット7がフレームに上下方向へ傾動可能に支持されている場合には、灯具ユニット7に図示しないレベリング調整機構が連結され、レベリング調整機構の動作によって灯具ユニット7が上下方向へ傾動され、車載物の重量に応じて光源11の光軸の向きが調整される。
【0069】
さらに、灯具ユニット7はフレームに、例えば、水平方向へ回動可能に支持されていてもよい。灯具ユニット7がフレームに水平方向へ回動可能に支持されている場合には、灯具ユニット7に図示しないスイブル機構が連結され、スイブル機構の動作によって灯具ユニット7が水平方向へ回動され、車輌の走行方向に追従して光軸の向きが変更される。
【0070】
上記のように構成された車輌用前照灯1において、可動シェード17は、遮蔽位置から非遮蔽位置へ向かう方向への回動力が付与されていない状態において、リターンスプリング31の付勢力によって固定シェード12に設けられたストッパー片13cに押し付けられて回動が規制されることにより遮蔽位置に保持される(図4参照)。
【0071】
可動シェード17が遮蔽位置にある状態において、光源11から光が出射されると、出射された光の一部が固定シェード12及び可動シェード17によって遮蔽され、遮蔽されなかった光が固定シェード12の光透過孔15を透過されて投影レンズ9に入射され、投影レンズ9によって光が投影されて近距離を照射するロービームの配光パターンが形成される。
【0072】
このときリフレクター10の反射面10aで反射された光の一部が光透過孔15を透過されて第1の反射部材21の光反射面21a及び第2の反射部材33の光反射面34aに入射されて反射され、投影レンズ9によって上方へ向けて投影される。この上方へ向けて投影される光によってロービームの配光パターンの上側にオーバーヘッドサイン光の配光パターンが形成される。
【0073】
このように車輌用前照灯1においては、可動シェード17とヨーク23の上面部27dに配置された第1の反射部材21と第2の反射部材33によって光が反射されロービームの配光パターンの形成時にオーバーヘッドサイン光の配光パターンが形成され、配光制御の自由度の向上が図られている。
【0074】
オーバーヘッドサイン光の配光パターンの形成時において、第1の反射部材21と第2の反射部材33はヨーク23の上面部27dの上側に位置されており、固定シェード12の光透過孔15を光が透過された直後の位置に存在するため、光の径が小さい状態で入射された光を反射する。
【0075】
従って、第1の反射部材21の光反射面21aと第2の反射部材33の光反射面34aの大きさを小さくすることが可能であり、第1の反射部材21と第2の反射部材33の小型化による車輌用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0076】
また、光源11は前後方向に一定の長さを有するため、オーバーヘッドサイン光として用いられる光は光透過孔15を透過された直後の位置においても前後に一定の幅を有する。従って、上記したように、前後に配置された第1の反射部材21の光反射面21aと第2の反射部材33の光反射面34aとによってオーバーヘッドサイン光として用いられる光を反射させることにより、光の利用効率の向上が図られ、オーバーヘッドサイン光の所望の配光パターンを形成することができる。
【0077】
さらに、上記したように、車輌用前照灯1にあっては、図6に示すように、ヨーク23のケース本体部27に設けられた傾斜面部27cの水平面Hに対する傾斜角度θ1が第1の反射部材21の光反射面21aと第2の反射部材33の光反射面34aとの水平面Hに対する傾斜角度θ2より大きくされている。
【0078】
従って、光透過孔15を透過され第1の反射部材21及び第2の反射部材33側へ向かった光が第2の反射部材33の下側に位置するヨーク23の傾斜面部27cに入射され難く、オーバーヘッドサイン光の配光パターンの形成時に不必要な光がオーバーヘッドサイン光として用いられ難く、オーバーヘッドサイン光の良好な配光パターンを形成することができる。
【0079】
駆動機構22のコイルボビン24に通電が行われると、出力軸26が右方へ移動され、出力軸26の駆動力がリンク部材36から可動シェード17に伝達され、可動シェード17が非遮蔽位置まで回動される。可動シェード17が非遮蔽位置まで回動されることにより、光源11から出射される光の一部が固定シェード12のみによって遮蔽され、遠距離を照射するハイビームの配光パターンが形成される。
【0080】
このとき可動シェード17は駆動機構22と固定シェード12の遮蔽面部13との間に形成された回動スペース50において回動される。
【0081】
コイル25に対する通電が停止されると、リターンスプリング31の付勢力によって出力軸26が左方へ移動され固定シェード12に設けられたストッパー片13cによって回動が規制されることにより遮蔽位置に保持される(図4参照)。
【0082】
このとき可動シェード17は駆動機構22と固定シェード12の遮蔽面部13との間に形成された回動スペース50において回動される。
【0083】
可動シェード17が遮蔽位置へ向けて回動されたときには、コネクターケース32に設けられたストッパー突部32bによって出力軸26の左方への過度の移動が規制される。従って、出力軸26のコイルボビン24からの脱落を防止することができる。
【0084】
また、ストッパー突部32bがコネクターケース32においてケース部32aと一体に形成されているため、部品点数の削減を図ることができる。
【0085】
さらに、出力軸26に支持されたリターンスプリング31の付勢力によって可動シェード17を非遮蔽位置から遮蔽位置まで回動させることが可能であるため、可動シェード17の非遮蔽位置から遮蔽位置までの回動時にコイル25に対する通電が不要になり、その分、省電力化を図ることができる。
【0086】
さらにまた、可動シェード17のウエイト19はリターンスプリング31の付勢力が付与される方向と同じ方向への回動力を生じる機能を有するため、その分、リターンスプリング31として付勢力の弱い小さいスプリングを用いることが可能であり、車輌用前照灯1の小型化に寄与する。また、リターンスプリング31として付勢力の弱いスプリングを用いることが可能であるため、その分、可動シェード17の遮蔽位置から非遮蔽位置までの回動時にコイル25に対する電流の供給量を低減することが可能であり、その分、一層の省電力化を図ることができる。
【0087】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、駆動機構22と固定シェード12の間に可動シェード17が回動される回動スペース50が形成されているため、灯具ユニット7の上下方向における高さを低くすることができ、車輌用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0088】
また、車輌用前照灯1にあっては、駆動機構22として温度上昇により駆動力の低下を来たすおそれのある電磁アクチュエーターが用いられているが、駆動機構22が固定シェード12の遮蔽面部13の前側に配置されているため、光源11からの光の出射に伴って発生する熱が駆動機構22に影響し難い。
【0089】
従って、駆動機構22として駆動力の大きな大型のタイプを用いる必要がなく、駆動機構22の小型化による車輌用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0090】
さらに、車輌用前照灯1にあっては、ヨーク23のケース本体部27における下面部27a、前面部27b、傾斜面部27c及び上面部27dが板状の金属材料の折り曲げによって一体に形成され、これらの各部の間に隙間が存在せず、ケース本体部27は投影レンズ9側から入射された光の内部への入射が遮蔽される形状に形成されている。
【0091】
従って、外部から車輌用前照灯1を視認したときにヨーク23の内部に配置された構造が視認されず、車輌用前照灯1の見栄えの向上及びデザイン性の向上を図ることができる。
【0092】
尚、車輌用前照灯1においては、上記したように、固定シェード12の遮蔽面部13に形成された凹部13dによって設けられた支持面部16の前面が遮蔽面部13の他の部分の後面と同一平面上に位置されると共に可動シェード17の遮光部18の厚みが固定シェード12の遮蔽面部13の厚みと同じにされている。
【0093】
従って、可動シェード17が遮蔽位置にある状態において、図7の上段の図に示すように、可動シェード17の前面における上縁、即ち、ロービームの配光パターンの形成時にカットラインを形成するために光を遮蔽する遮蔽縁17aと遮蔽面部13の支持面部16以外の部分の前面13eとが同一平面上に位置されている(図7の上段における右の図参照)。
【0094】
車輌用前照灯には可動シェードを有さないタイプも存在するが、このようなタイプの車輌用前照灯に用いられる固定シェード12Aは、図7の下段の図に示すように、平板状に形成され、ロービームの配光パターンの形成時にカットラインを形成するために光を遮蔽する遮蔽縁17bが固定シェード12Aに形成された光透過孔15Aの前側開口縁とされている。
【0095】
このように固定シェード12に代えて固定シェード12Aを用いることも可能であるが、固定シェード12のように遮蔽縁17aと前面13eを同一平面上に位置させることにより、固定シェード12に代えて固定シェード12Aを用いた場合においても、可動シェード17の遮蔽縁17aと固定シェード12Aの遮蔽縁17bとを前後方向において同一の位置にすることができる(図7に示すF参照)。
【0096】
また、固定シェード12に取り付けられるリフレクター10の取付面13f、即ち、遮蔽面部13の支持面部16以外の部分の後面と固定シェード12Aのリフレクター10の取付面13gとを前後方向において同一の位置にすることができる(図7に示すB参照)。
【0097】
従って、上記のように、可動シェード17の遮蔽縁17aと固定シェード12の前面13eとを同一平面上に位置させることにより、車輌用前照灯のタイプによって固定シェード12を固定シェード12Aに変更することができ、固定シェード12以外のリフレクター10等の他の部品の共通化を図ることができる。
【0098】
また、車輌用前照灯1にあっては、固定シェード12に凹部13dを形成し可動シェード17の遮光部18の厚みを固定シェード12の遮蔽面部13の厚みと同じにすることにより、可動シェード17の遮蔽縁17aと固定シェード12の前面13eとを同一平面上に位置させている。従って、固定シェード12及び可動シェード17を複雑な形状にする必要がなく、固定シェード12及び可動シェード17容易に形成することができる。
【0099】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図2乃至図7と共に本発明車輌用前照灯の実施の形態を示すものであり、本図は、縦断面図である。
【図2】灯具ユニットの分解斜視図である。
【図3】灯具ユニットの斜視図である。
【図4】可動シェードが遮蔽位置に保持されている状態を示す正面図である。
【図5】可動シェードが非遮蔽位置に保持されている状態を示す正面図である。
【図6】反射部材の光反射面の傾斜角度とヨークの傾斜面部の傾斜角度との関係を示す概念図である。
【図7】可動シェードを有する車輌用前照灯に用いられる固定シェードと可動シェードを有さない車輌用前照灯に用いられる固定シェードとを比較して示す模式図である。
【符号の説明】
【0101】
1…車輌用前照灯、2…ランプハウジング、3…カバー、4…灯具外筐、7…灯具ユニット、9…投影レンズ、10…リフレクター、10a…反射面、11…光源、12…固定シェード、17…可動シェード、22…駆動機構、23…ヨーク、25…コイル、26…出力軸、27c…傾斜面部、33…第2の反射部材、34a…光反射面、36…リンク部材(伝達機構)、50…回動スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方に開口を有するランプハウジングと前記ランプハウジングの前記開口を覆うカバーとによって構成された灯具外筐の内部に灯具ユニットが配置された車輌用前照灯であって、
前記灯具ユニットは、
光源が取り付けられ前記光源から出射された光を反射する反射面を有するリフレクターと、
前記光源から出射された光を投影する投影レンズと、
前記投影レンズと前記リフレクターの間に位置され前記光源から出射された光の一部を遮蔽する固定シェードと、
前記固定シェードに遮蔽位置と非遮蔽位置の間で回動自在に支持され前記遮蔽位置に回動されて前記光源から出射された光の一部を遮蔽する可動シェードと、
前記可動シェードを回動させヨークと前記ヨークの内部に配置されたコイルと前記コイルへの通電状態により軸方向へ移動される出力軸とを有する駆動機構と、
前記駆動機構の駆動力を前記可動シェードに伝達する伝達機構とを備え、
前記駆動機構が前記投影レンズと前記固定シェードの間に配置され、
前記駆動機構と前記固定シェードの間に前記可動シェードが回動される回動スペースが形成された
ことを特徴とする車輌用前照灯。
【請求項2】
前記ヨークは少なくとも一部が板状の材料が所定の形状に折り曲げられてケース状に形成され、
前記ヨークは前記投影レンズ側から入射された光の内部への入射が遮蔽される形状に形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用前照灯。
【請求項3】
前記可動シェードの回動位置によって遠距離を照射するハイビームの配光パターンと近距離を照射するロービームの配光パターンとが切り替えられ、
前記ヨークの上面に光源から出射された光を反射する光反射面を有する反射部材が配置され、
前記ロービームの配光パターンの形成時に、前記反射部材の光反射面で反射される光によって前記ロービームの配光パターンの上側にオーバーヘッドサイン光の配光パターンが形成されるようにした
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用前照灯。
【請求項4】
前記ヨークの前記投影レンズ側に下縁が上縁より前記投影レンズ側に位置された傾斜面部が形成され、
前記ヨークの傾斜面部の水平面に対する傾斜角度が前記反射部材の光反射面の水平面に対する傾斜角度より大きくされた
ことを特徴とする請求項3に記載の車輌用前照灯。
【請求項5】
前記伝達機構の一端部が前記可動シェードの回動中心より上側に連結され、
前記伝達機構の他端部が前記駆動機構の出力軸に連結され、
前記伝達機構の一端部と他端部のそれぞれ前記可動シェードと前記出力軸に対する連結方向が同じ方向にされた
ことを特徴とする請求項2、請求項3又は請求項4に記載の車輌用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38023(P2013−38023A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175328(P2011−175328)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】