説明

車輪位置判定装置

【課題】車輪の位置をコストの上昇を抑制しつつ適切に判定することのできる車輪位置判定装置を提供すること。
【解決手段】各タイヤセンサユニット3の加速度センサが生成する検出信号には、車輪2の振動を示す振動情報が含まれている。また、各車輪2の近傍に設けられた回転センサユニット140が生成する回転信号にも、車輪2の振動を示す振動情報が含まれている。受信機ユニット4は、加速度センサの検出信号を含むデータ信号をタイヤセンサユニット3から受信し、その受信されたデータ信号に含まれる振動情報を、各回転センサユニット140から得られる回転信号と比較することに基づき、発信元のタイヤセンサユニット3が設けられた車輪2の位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた複数の車輪の位置を判定するための車輪位置判定装置に関し、特にタイヤ状態監視装置に用いる上で好適な車輪位置判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に設けられた複数のタイヤの状態を運転者が車室内で確認できるようにするための装置として、無線方式のタイヤ状態監視装置が提案されている。このタイヤ状態監視装置は、車両の車輪にそれぞれ装着される複数のタイヤセンサユニットと、車両の車体に搭載される受信機ユニットとを備えている。各タイヤセンサユニットは、対応するタイヤの状態、即ちタイヤ内の圧力や温度を検出し、検出されたタイヤの状態を示すデータを含むデータ信号を無線送信する。一方、受信機ユニットは、各タイヤセンサユニットからのデータ信号を受信アンテナを通じて受信して、タイヤ状態に関する情報を、車室内に設けられた表示器に必要に応じて表示させる。
【0003】
上記のようなタイヤ状態監視装置では、受信されたデータ信号が複数の車輪のうちのどの車輪に設けられたタイヤセンサユニットから発信されたものであるのかを、言い換えれば、受信されたデータ信号に関連する車輪の位置を、受信機ユニットにおいて把握できるようにするのが望ましい。そこで特許文献1に記載されたタイヤ状態監視装置では、複数の車輪をそれぞれ支持するナックルに振動検出手段としての加速度センサが取り付けられ、各加速度センサは対応する車輪で発生した振動を検出するようになっている。各加速度センサで得られた振動情報は、各加速度センサに有線接続された受信機ユニットに入力される。各加速度センサは受信機ユニットに有線接続されているので、受信機ユニットは、入力された振動情報がどの加速度センサで得られた情報であるのかを容易に把握することができる。一方、各タイヤセンサユニットは、圧力センサによって検出されたタイヤ空気圧情報を含むデータ信号を無線送信する。そして、受信機ユニットは、各加速度センサから得られる振動情報と、各タイヤセンサユニットから受信したデータ信号中のタイヤ空気圧情報との相関関係に基づき、各データ信号の発信元のタイヤセンサユニットが備えられた車輪を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−139701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、各車輪で発生する振動が同一の車輪におけるタイヤ空気圧の変動と相関しているという前提の基に、車輪位置の判定を行っている。しかしながら、実際には、車輪が例えば路面上の凸部を乗り越えるときに圧力センサによって検出されるタイヤ空気圧の変動は、そのときに加速度センサによって検出される振動と比較して、そのタイミング及び大きさの点で大きく異なる。そのため、各車輪で発生する振動と各車輪におけるタイヤ空気圧の変動との相関関係を正確に捉えることは実際には困難である。
【0006】
加えて、上記特許文献1に記載された技術では、車輪位置を判定するために用いられる専用の加速度センサを、複数の車輪それぞれに対応して設ける必要があるとともに、それら加速度センサを受信機ユニットに対して有線接続するために配線作業を行う必要があり、よってコストが上昇する。
【0007】
なお上記課題は、タイヤ状態監視装置だけでなく、車輪の位置判定を行うその他の装置についても同様に生じるものである。
本発明の目的は、車輪の位置をコストの上昇を抑制しつつ的確に判定することのできる車輪位置判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両に設けられた複数の車輪の位置を判定するための車輪位置判定装置であって、前記複数の車輪にそれぞれ設けられる複数の車輪側ユニットと、前記車両の車体に設置される受信機ユニットと、前記複数の車輪の近傍にそれぞれ設けられ、対応する車輪の回転速度を示す回転信号を生成する複数の回転検出器と、を備える車輪位置判定装置を提供する。前記各車輪側ユニットは、対応する車輪の振動を示す振動情報を含む検出信号を生成する振動検出部と、前記振動検出部の検出信号を含むデータ信号を無線送信する送信部と、を有する。前記受信機ユニットは、前記各車輪側ユニットから送信される前記データ信号を受信する受信部と、受信されたデータ信号に含まれる振動情報を、前記各回転検出器から得られる回転信号と比較することに基づき、発信元の車輪側ユニットが設けられた車輪の位置を判定する車輪位置判定部と、を有する。
【0009】
車輪の近傍に設置された回転検出器は車輪とともに振動するので、同回転検出器で生成される回転信号には、対応する車輪で生じる振動の情報が含まれる。一方、各車輪側ユニットにおける振動検出部も車輪とともに振動するので、同振動検出部で生成される検出信号にも、対応する車輪で生じる振動の情報が含まれる。そして、各車輪に対応する回転検出器で生成される回転信号に含まれる振動情報は、同じ車輪に対応する車輪側ユニットで生成される検出信号に含まれる振動情報と相関、或いは類似している。
【0010】
そこで本願発明では、受信機ユニットにおいて、振動検出部の検出信号を含むデータ信号を車輪側ユニットから受信して、その受信されたデータ信号に含まれる振動情報を、各回転検出器から得られる回転信号と比較することに基づき、発信元の車輪側ユニットが設けられた車輪の位置を判定するようにしている。そのため、車輪の位置を的確に判定することができる。
【0011】
しかも、車輪位置の判定のために用いられる回転検出器は、車輪に対する制動力を制御するアンチロック・ブレーキシステムの構成要素の一部として、車両に一般的に搭載されている既存部品である。よって、車輪位置を判定するために用いられる専用のセンサを車体に新たに設ける必要もない。従って、車輪位置を判定するために必要な構成にかかるコストを抑制することもできる。
【0012】
本発明において、前記振動検出部は加速度センサであることが好ましい。代表的な車輪側ユニットとして、例えばタイヤ状態監視装置に用いられるタイヤセンサユニットがあるが、このようなタイヤセンサユニットは、車両の走行の有無を判定したり車輪の回転速度(言い換えれば、車速)を判定したりするために用いられるセンサとして、加速度センサを備えていることが一般的である。すなわち、車輪側ユニットが既設の部品として備えていることの多い加速度センサを振動検出部として利用すれば、専用の振動検出部を設ける場合と比較してコストを抑制することができる。
【0013】
本発明の一態様において、各車輪側ユニットは、前記車輪におけるタイヤの状態を検出するとともに検出したタイヤの状態を示すデータを含むデータ信号を無線送信するタイヤセンサユニットである。すなわち、本発明の車輪位置判定装置はタイヤ状態監視装置に用いる上で好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ状態監視装置が搭載された車両を示す概略構成図。
【図2】(a)は図1の回転センサユニットを示す概略構成図、(b)は回転センサユニットのピックアップコイルが発生する回転信号を示すグラフ。
【図3】図1のタイヤセンサユニットの回路構成を示すブロック図。
【図4】(a)〜(d)は、タイヤセンサユニットの角度位置のそれぞれにおいて加速度センサが検出する加速度成分を説明するための車輪の概略図。
【図5】加速度センサの検出信号の変化態様を例示するグラフ。
【図6】加速度センサの検出信号から抽出した振動情報を周波数解析した結果を例示する図。
【図7】(a)〜(d)は各回転センサユニットの回転信号を周波数解析した結果を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の車輪位置判定装置をタイヤ状態監視装置に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)100及びタイヤ状態監視装置200を搭載した車両1が示されている。
【0016】
先ず前記ABS100について説明すると、同ABS100は、ABSコントローラ110と、車両1の4つの車輪2にそれぞれ対応する回転センサユニット140とを備えている。各車輪2は、ホイール部5と同ホイール部5に装着されるタイヤ6とを含む。ABSコントローラ110はマイクロコンピュータ等よりなり、前記回転センサユニット140からの信号に基づき各車輪2の回転速度を求めると共に、この回転速度に基づき各車輪2のスリップ率を求める。ABSコントローラ110はまた、車両のブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれたとき、各車輪2のスリップ率が所定の許容値を超えないように各車輪2に対応するブレーキ装置(図示せず)を制御して、各車輪2に対する制動力を調整する。
【0017】
図2(a)に示すように、回転検出器としての前記各回転センサユニット140は車輪2の近傍で且つバネ下に設けられており、車輪2と一体回転するセンサロータ140aと、センサロータ140aの外周面に対向するように配置されたピックアップコイル140bとを含む。センサロータ140aの外周面には複数の歯が等角度間隔置きに設けられている。車輪2と共にセンサロータ140aが回転すると、ピックアップコイル140bは図2(b)に示すように、センサロータ140aの回転速度、つまり車輪2の回転速度に比例した周波数を有する交流電圧信号(回転信号)を生成する。前記ABSコントローラ110は、各ピックアップコイル140bに有線接続され、各ピックアップコイル140bからの回転信号に基づき、各車輪2の回転速度を求める。
【0018】
次に前記タイヤ状態監視装置200について説明すると、図1に示すように、タイヤ状態監視装置200は、4つの車輪2にそれぞれ取り付けられる4つのタイヤセンサユニット3と、車両1の車体に設置される受信機ユニット4とを備えている。
【0019】
車輪側ユニットとしての前記各タイヤセンサユニット3は、タイヤ6の内部空間に配置されるように、そのタイヤ6が装着されたホイール部5に対して取り付けられている。各タイヤセンサユニット3は、対応するタイヤ6の状態(タイヤ内圧力、タイヤ内温度)を検出して、検出されたタイヤ状態を示すデータを含む信号、即ちタイヤ状態データ信号(以下、データ信号と称する)を無線送信する。
【0020】
図3に示すように、前記各タイヤセンサユニット3は、圧力センサ11、温度センサ12、加速度センサ13、センサユニットコントローラ14、及び、送信部としてのRF送信回路16を備えている。圧力センサ11及び温度センサ12は、タイヤ6の状態を検出するタイヤ状態検出部を構成する。各タイヤセンサユニット3は、例えば内蔵された電池(図示せず)からの供給電力によって動作する。
【0021】
前記圧力センサ11は、対応するタイヤ6内の圧力(内部空気圧)を検出して、その検出によって得られたタイヤ内圧力データをセンサユニットコントローラ14に出力する。温度センサ12は、対応するタイヤ6内の温度(内部空気温度)を検出して、その検出によって得られたタイヤ内温度データをセンサユニットコントローラ14に出力する。加速度センサ13は自身に作用する加速度を検出して、その検出によって得られた加速度データをセンサユニットコントローラ14に出力する。センサユニットコントローラ14は、CPU及び記憶部14a(RAMやROM等)を含むマイクロコンピュータ等よりなり、記憶部14aには各タイヤセンサユニット3に固有の識別情報であるIDコードが登録されている。このIDコードは、各タイヤセンサユニット3を受信機ユニット4において識別するために使用される情報である。センサユニットコントローラ14は、タイヤ内圧力データ、タイヤ内温度データ、加速度データ及びIDコードを含むデータを、RF送信回路16に出力する。RF送信回路16は、センサユニットコントローラ14からのデータを変調して変調信号を生成し、変調信号を送信アンテナ19から無線送信する。
【0022】
各タイヤセンサユニット3は、例えば、データ信号の送信動作を所定時間間隔で定期的に行う。但し、計測されたタイヤ状態が異常を示す場合(例えば、タイヤ内圧力の異常低下、タイヤ内圧力の急変、タイヤ内温度の急変等)、タイヤセンサユニット3は定期的な送信動作とは関係無く、直ちに送信動作を行う。
【0023】
前記タイヤセンサユニット3に備えられた加速度センサ13は、例えば、ピエゾ抵抗型や静電容量型の加速度センサとして周知のものであり、加速度に応じた検出信号を発生して出力する。なお本実施形態では、加速度センサ13として1軸の加速度センサ、すなわち一つの検出軸に沿った方向の加速度成分を検出可能な加速度センサが用いられる。図4(a)〜図4(d)に示す例では、加速度センサ13は、加速度の検出方向(すなわち、検出軸)10が車輪2の径方向と一致するように、同車輪2に対して配置される。言い換えれば、加速度センサ13は、車輪2の径方向の加速度成分を検出するが、車輪2の周方向の加速度成分は検出しないように、同車輪2に対して配置される。
【0024】
図4(a)〜図4(d)は、タイヤセンサユニット3が車輪2の周方向における4つの角度位置にそれぞれ位置する状態を示している。図4(a)及び図4(c)は、タイヤセンサユニット3が図4(d)の最上位置と図4(b)の最下位置との間の中間位置に位置している状態を示している。車両1の前進時における車輪2の回転に伴い、タイヤセンサユニット3の角度位置は、図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)の順に変化する。
【0025】
車輪2の回転時において、タイヤセンサユニット3が図4(a)に示す中間位置に位置するときには、加速度センサ13の検出軸10は重力加速度AGの方向と直交し且つ遠心加速度ACの方向と平行になる。そのため、加速度センサ13は遠心加速度ACのみを反映する検出信号を出力する。その後、タイヤセンサユニット3が図4(b)に示す最下位置に移動すると、加速度センサ13の検出軸10は重力加速度AGの方向及び遠心加速度ACの方向の双方と平行になる。この場合、加速度センサ13は1Gの重力加速度AGに遠心加速度ACを加えた加速度値を示す検出信号を出力する。その後、タイヤセンサユニット3が図4(c)に示す中間位置に移動すると、図4(a)の場合と同様、加速度センサ13の検出軸10は重力加速度AGの方向と直交し且つ遠心加速度ACの方向と平行になる。そのため、加速度センサ13は遠心加速度ACのみを反映する検出信号を出力する。その後、タイヤセンサユニット3が図4(d)に示す最上位置に移動すると、加速度センサ13の検出軸10は重力加速度AGの方向及び遠心加速度ACの方向の双方と平行になる。この場合、加速度センサ13は−1Gの重力加速度AGに遠心加速度ACを加えた加速度値(言い換えれば、遠心加速度ACから1Gの重力加速度AGを差し引いた加速度値)を示す検出信号を出力する。
【0026】
以上のように、車輪2の回転時、加速度センサ13の検出軸の方向は、遠心加速度の方向に対して平行な状態を維持しつつ、重力加速度の方向に対して変化する。そのため、加速度センサ13の検出信号には、車輪2の回転速度に応じた大きさの遠心加速度成分と、車輪2が1回転する期間を1周期として周期的に変化する重力加速度成分との両方が含まれるようになる。図5は、車輪2の回転時における加速度センサ13の検出信号の変化態様を示すグラフである。なお、“α”は遠心加速度成分を示している。加速度センサ13の検出信号は2Gの振幅で周期的に変化する。但し図5は、車輪2の回転速度が一定の状態である場合を示しており、この場合、加速度センサ13の検出信号は正弦波状に変化する。
【0027】
センサユニットコントローラ14は、前記加速度センサ13の検出信号に基づき、車両1の走行の有無を判定したり、車輪2の回転速度(言い換えれば、車速)を判定したりすることもできる。例えば、加速度センサ13の検出信号から得られる加速度値の大きさ(或いは加速度値の変化量)が所定値を越えたか否かに基づいて、車両1の走行の有無を判定することができる。また、例えば、加速度センサ13の検出信号の1周期の時間、或いは同検出信号から得られる加速度の大きさに基づき、車輪2の回転速度(車速)を判定することができる。
【0028】
そして、車両1が走行しているか否かに応じて、或いは車速に応じて、前記圧力センサ11の動作態様や前記温度センサ12の動作態様を制御することができる。例えば、車両1が走行停止しているときには、少なくともデータ信号の定期的な送信動作を行わないようにしてもよいし、或いはデータ信号の送信時間間隔を車両走行時よりも長くしてもよい。さらには、車両1の走行時において、車速に応じてデータ信号の送信時間間隔を変更してもよい。
【0029】
図1に示すように、前記受信機ユニット4は、車体の所定箇所に設置され、例えば車両1のバッテリ(図示せず)からの供給電力によって動作する。受信機ユニット4は、車体の任意の箇所に配置された受信アンテナ32を備えており、各タイヤセンサユニット3から受信アンテナ32を通じて前記データ信号を受信して、その受信した信号を処理する。
【0030】
受信機ユニット4は、車輪位置判定部としての受信機ユニットコントローラ33、及びRF受信回路35を備えている。受信機ユニットコントローラ33はCPU及び記憶部(ROMやRAM等)を含むマイクロコンピュータ等よりなり、受信機ユニット4の動作を統括的に制御する。受信部としてのRF受信回路35は、各タイヤセンサユニット3から受信アンテナ32を通じて受信された変調信号を復調して、受信機ユニットコントローラ33に送る。受信機ユニットコントローラ33は、RF受信回路35からのデータ信号に基づき、発信元のタイヤセンサユニット3に対応するタイヤ6の内部空気圧及び内部温度を把握する。
【0031】
受信機ユニットコントローラ33はまた、前記内部空気圧及び内部温度に関する情報等を表示器38に表示させる。表示器38は、車室内等、車両1の搭乗者の視認範囲に配置される。受信機ユニットコントローラ33はさらに、内部空気圧や内部温度の異常を警報器(報知器)37にて報知させる。警報器37としては、例えば、異常を光の点灯や点滅によって報知する装置や、異常を音によって報知する装置が適用される。なお、このような異常を報知器としての表示器38によって報知させるようにしてもよい。
【0032】
前記受信機ユニットコントローラ33は、前記ABSコントローラ110に接続され、各回転センサユニット140で生成された前記回転信号(図2(b)参照)を、ABSコントローラ110を通じて受け取る。なお、車輪2の近傍に設置された回転センサユニット140は車輪2とともに振動するので、同回転センサユニット140で生成される回転信号には、対応する車輪2で生じる振動の情報が含まれる。言い換えれば、回転センサユニット140で生成される回転信号には、対応する車輪2で生じる振動に応じた変動成分が含まれる。一方、各タイヤセンサユニット3における加速度センサ13も車輪2とともに振動するので、同加速度センサ13で生成される加速度信号にも、対応する車輪2で生じる振動の情報が含まれる。すなわち、加速度センサ13は振動検出部としても機能する。そして、各車輪2に対応する回転センサユニット140で生成される回転信号に含まれる振動情報は、同じ車輪2に対応するタイヤセンサユニット3で生成される加速度信号に含まれる振動情報と相関、或いは類似している。
【0033】
そこで本実施形態では、受信機ユニットコントローラ33は、各タイヤセンサユニット3から受信されたデータ信号に含まれる加速度信号中の振動情報を、各回転センサユニット140から得られる回転信号と比較することに基づき、発信元のタイヤセンサユニット3が設けられた車輪2の位置を判定するようにしている。
【0034】
次に、本実施形態の作用について説明する。なお以後、適宜に、前側左車輪2を符号“FL”で示し、前側右車輪2を符号“FR”で示し、後側左車輪2を符号“RL”で示し、後側右車輪2を符号“RR”で示す。
【0035】
さて、受信機ユニットコントローラ33は、各タイヤセンサユニット3から送信されたデータ信号を受信すると、同データ信号に含まれる加速度信号中の振動情報を、各回転センサユニット140から得られる回転信号と比較する。
【0036】
具体的には、受信機ユニットコントローラ33は、受信データ信号に含まれる加速度信号(すなわち、図5に例示するような加速度センサ13の検出信号)から重力加速度成分と遠心速度成分とを取り除き、振動情報を抽出する。重力加速度成分は車輪2が1回転する期間を1周期として2Gの振幅で周期的に変化するものなので、この特性に基づき加速度信号から容易に取り除くことができる。遠心加速度成分は、回転センサユニット140から得られる回転信号に基づき求められる車輪2の回転速度と、タイヤセンサユニット3の回転半径とに基づき求めることができるので、これも加速度信号から容易に取り除くことができる。そして、受信機ユニットコントローラ33は、加速度信号から抽出した振動情報を例えばFFTにより周波数解析して、図6に例示するような周波数解析結果を得る。なお、ここでは、図6に例示する周波数解析結果は、前側左車輪FLのタイヤセンサユニット3の加速度信号中の振動情報から得られたものであるとする。
【0037】
一方、受信機ユニットコントローラ33は、4つの回転センサユニット140の回転信号を、例えばFFTにより周波数解析して、図7(a)〜図7(d)に例示するような周波数解析結果を得る。図7(a)は前側左車輪FLの回転センサユニット140に関連する周波数解析結果であり、図7(b)は前側右車輪FRの回転センサユニット140に関連する周波数解析結果であり、図7(c)は後側左車輪RLの回転センサユニット140に関連する周波数解析結果であり、図7(d)は後側右車輪RRの回転センサユニット140に関連する周波数解析結果である。図7(a)〜図7(d)に例示するように、4つの回転センサユニット140の回転信号からそれぞれ得られる周波数解析結果は互いに異なっている。
【0038】
そして、受信機ユニットコントローラ33は、加速度信号中の振動情報から得られた周波数解析結果を、4つの回転信号からそれぞれ得られた周波数解析結果と比較し、加速度信号中の振動情報と最も高い相関性を有する(言い換えれば、最も類似度の高い)回転信号に関連する回転センサユニット140を選択する。図6及び図7(a)〜図7(d)の例では、前側左車輪FL、前側右車輪FR、後側左車輪RL、及び後側右車輪RRのうち、前側左車輪FLの回転センサユニット140に関連する回転信号(図7(a)参照)が、タイヤセンサユニット3の加速度信号中の振動情報(図6参照)と最も高い相関性を有するので、前側左車輪FLの回転センサユニット140が選択される。この場合、受信機ユニットコントローラ33は、受信したデータ信号が、前側左車輪FLのタイヤセンサユニット3から発信されたものであると判定する。なお、周波数解析結果の比較に際して、タイヤセンサユニット3の加速度信号と4つの回転センサユニット140の回転信号とは、同時期に得られたものであることが望ましい。
【0039】
以上詳述した本実施形態は、下記の利点を有する。
(1)本実施形態では、受信機ユニット4は、加速度センサ(振動検出部)13の検出信号を含むデータ信号を、タイヤセンサユニット(車輪側ユニット)3から受信する。そして、受信機ユニット4は、その受信されたデータ信号に含まれる振動情報を、各車輪2の近傍に設けられた回転センサユニット(回転検出器)140から得られる回転信号と比較することに基づき、発信元のタイヤセンサユニット3が設けられた車輪2の位置を判定するようにしている。加速度センサ13及び回転センサユニット140の何れも、対応する車輪2で生じる振動を直接受けており、対応する車輪2で生じる振動を直接的に検出している。言い換えれば、これら加速度センサ13及び回転センサユニット140の検出信号に含まれる振動情報には、対応する車輪2で生じる振動が直接的に反映されている。そのため、車輪2の位置を的確に判定することができる。
【0040】
(2)しかも、車輪位置の判定のために用いられる回転センサユニット140は、車輪2に対する制動力を制御するABS100の構成要素の一部として、車両1に一般的に搭載されている既存部品である。よって、車輪位置を判定するために用いられる専用のセンサを車体に新たに設けたり同センサに関連する配線作業を行ったりする必要もない。従って、車輪位置を判定するために必要な構成にかかるコストを抑制することもできる。
【0041】
(3)本実施形態において、各タイヤセンサユニット3は、車輪2で生じる振動を検出するための振動検出部として、加速度センサ13を備えている。タイヤ状態監視装置200に用いられるタイヤセンサユニット3は、車両1の走行の有無を判定したり車輪2の回転速度(言い換えれば、車速)を判定したりするために用いられるセンサとして、加速度センサ13を備えていることが一般的である。すなわち、タイヤセンサユニット3が既設の部品として備えていることの多い加速度センサ13を振動検出部として利用しているので、専用の振動検出部を設ける場合と比較してコストを抑制することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更することも可能である。
・FFTによる周波数解析結果の比較に際しては、周波数解析結果の全体同士を比較してもよいし、周波数解析結果における特徴的な部分同士を比較してもよい。また、加速度センサ13の検出信号に含まれる振動情報の周波数解析を、受信機ユニット4ではなくタイヤセンサユニット3で行い、周波数解析結果をタイヤセンサユニット3から受信機ユニット4に送信するようにしてもよい。或いは、加速度センサ13の検出信号に含まれる振動情報と、各回転センサユニット140から得られる回転信号との比較は、FFTによる周波数解析結果の比較に限られない。要するに、加速度センサ13の検出信号に含まれる振動情報と、各回転センサユニット140から得られる回転信号に含まれる振動情報との間の相関性を評価できるのであれば、どの様な手法での比較も可能である。
【0043】
・各回転センサユニット140を受信機ユニットコントローラ33に直接有線接続して、各回転センサユニット140で生成された回転信号を、ABSコントローラ110を介することなく直接、受信機ユニットコントローラ33に入力するようにしてもよい。
【0044】
・回転センサユニット140において、ピックアップコイル140bに代えて、ホール素子やMR素子等の他の検出素子が用いられてもよい。
・加速度センサ13は、加速度の検出方向(すなわち、検出軸)が車輪2の周方向と一致するように、同車輪2に対して配置されてもよい。言い換えれば、加速度センサ13は、車輪2の周方向の加速度成分を検出するが、車輪2の径方向の加速度成分(つまり、遠心加速度成分)は検出しないように、同車輪2に対して配置されてもよい。この場合、加速度センサ13の検出信号には遠心加速度成分が含まれないので、振動情報の抽出に際しては、加速度センサ13の検出信号から重力加速度成分のみを除去すればよい。
【0045】
・タイヤセンサユニット3に設けられる振動検出部としては、対応する車輪2で生じる振動を直接的に検出するものであれば(言い換えれば、車輪2で生じる振動をタイヤ空気圧の変動として間接的に検出する圧力センサ以外のものであれば)、加速度センサ13以外のものを使用してもよい。
【0046】
・前述した車輪位置判定は、車両1の走行時に常時行われてもよいし、所定の走行条件(例えば、車両1がほぼ一定の低速で前方へ直進走行しているという条件)が満たされた場合にのみ行われても良い。所定の走行条件が満たされた場合のみ車輪位置判定が行われる例では、タイヤセンサユニット3のIDコードと同タイヤセンサユニット3が設けられた車輪2の位置を示す情報とが関連付けられた状態で、受信機ユニットコントローラ33の記憶部に記憶される。そして、所定の走行条件が満たされていない状態では、受信機ユニットコントローラ33は、タイヤセンサユニット3からデータ信号を受信したとき、この記憶部に記憶された情報に基づき発信元のタイヤセンサユニット3が設けられた車輪2の位置を判定する。
【0047】
・本発明は、タイヤ状態監視装置への適用に限定されるものではなく、車輪2の位置判定を行う各種の装置に適用することができる。
以下に、上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
【0048】
[A] 前記加速度センサは、加速度の検出方向が前記車輪の径方向と一致するように同車輪に対して配置され、前記車輪位置判定部は、受信されたデータ信号から前記振動情報を得るべく、前記加速度センサの検出信号から重力加速度成分及び遠心加速度成分を除去する、請求項2に記載の車輪位置判定装置。
【0049】
[B] 前記加速度センサは加速度の検出方向が前記車輪の周方向と一致するように同車輪に対して配置され、前記車輪位置判定部は、受信されたデータ信号から前記振動情報を得るべく、前記加速度センサの検出信号から重力加速度成分を除去する、請求項2に記載の車輪位置判定装置。
【符号の説明】
【0050】
1…車両、2…車輪、3…タイヤセンサユニット(車輪側ユニット)、4…受信機ユニット、6…タイヤ、13…加速度センサ(振動検出部)、16…RF送信回路(送信部)、33…受信機ユニットコントローラ(車輪位置判定部)、35…RF受信回路(受信部)、140…回転センサユニット(回転検出器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた複数の車輪の位置を判定するための車輪位置判定装置であって、同車輪位置判定装置は、
前記複数の車輪にそれぞれ設けられる複数の車輪側ユニットと、
前記車両の車体に設置される受信機ユニットと、
前記複数の車輪の近傍にそれぞれ設けられ、対応する車輪の回転速度を示す回転信号を生成する複数の回転検出器と、を備え、
前記各車輪側ユニットは、
対応する車輪の振動を示す振動情報を含む検出信号を生成する振動検出部と、
前記振動検出部の検出信号を含むデータ信号を無線送信する送信部と、を有し、
前記受信機ユニットは、
前記各車輪側ユニットから送信される前記データ信号を受信する受信部と、
受信されたデータ信号に含まれる振動情報を、前記各回転検出器から得られる回転信号と比較することに基づき、発信元の車輪側ユニットが設けられた車輪の位置を判定する車輪位置判定部と、を有する
ことを特徴とする車輪位置判定装置。
【請求項2】
前記振動検出部は加速度センサである、請求項1に記載の車輪位置判定装置。
【請求項3】
前記各車輪側ユニットは、前記車輪におけるタイヤの状態を検出するとともに検出したタイヤの状態を示すデータを含むデータ信号を無線送信するタイヤセンサユニットである、請求項1又は2に記載の車輪位置判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103519(P2013−103519A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246566(P2011−246566)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)