車輪転舵装置、車輪転舵装置の車体への取付け構造、及び車体への取付け方法
【課題】過大入力によって一方のボルト締結穴側で亀裂若しくは破断が発生しても、後輪転舵装置による左右の車輪の転舵角制御への悪影響を小さく抑えることを可能とする。
【解決手段】シリンダ部材3に固定したアクチュエータ4からのトルクをロッドに伝達して左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置である。トルク伝達部位置を挟んで、互いに上記ロッド軸方向Sに離隔した2つのボルト締結穴5,6を上記シリンダ部材3に設ける。一方のボルト締結穴を長穴とする。長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に突起部11を設ける。車体組付け時には、上記突起部11を、車体に設けられた開口部24に差し込む。上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びは、車体に組み付けた状態で、他方のボルト締結穴と当該ボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きな値とする。
【解決手段】シリンダ部材3に固定したアクチュエータ4からのトルクをロッドに伝達して左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置である。トルク伝達部位置を挟んで、互いに上記ロッド軸方向Sに離隔した2つのボルト締結穴5,6を上記シリンダ部材3に設ける。一方のボルト締結穴を長穴とする。長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に突起部11を設ける。車体組付け時には、上記突起部11を、車体に設けられた開口部24に差し込む。上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びは、車体に組み付けた状態で、他方のボルト締結穴と当該ボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きな値とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪転舵装置など、アクチュエータからのトルクで左右の車輪を転舵する転舵装置、その車輪転舵装置の車体への取付け構造、及び車体への取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
後輪転舵装置としては例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置は、車幅方向に軸を向けたシリンダ部材で、ロッド(ラック軸)を軸方向へ移動可能に支持する。また、ギヤボックス及びモータからなるアクチュエータのトルクが、ラックピニオン機構を介して上記ロッドに伝達可能となっている。上記アクチュエータは、シリンダ部材に固定されて当該アクチュエータと一体となっている。
【0003】
また、上記後輪転舵装置のシリンダ部材に2つのボルト締結穴を設ける。その2つのボルト締結穴は、互いに上記アクチュエータを挟んでロッド軸方向に離隔している。そして、上記2つのボルト締結穴を車体にボルト締結することで、上記後輪転舵装置を車体に取り付けた状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−186978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記後輪転舵装置のロッドに対し過大入力があると、その入力は、ロッドからアクチュエータを介してシリンダ部材に入力する。そして、上記過大な入力によって、シリンダ部材を車体に取り付けるための2つのボルト締結穴のうちの一方のボルト締結穴若しくはその近傍に大きな応力集中が発生する。
【0006】
上記応力集中が過大な場合には、上記一方のボルト締結穴側では車体に対する後輪転舵装置の固定が不十分な状態となり、後輪転舵装置が他方のボルト締結穴廻りに揺動し易くなる恐れがある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、ロッドに過大入力があっても、車輪転舵装置の揺動発生を小さく規制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、シリンダ部材に固定したアクチュエータからのトルクをロッドに伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置である。上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置を挟んで、互いに上記ロッド軸方向に離隔した車体取付け用の2つのボルト締結穴を上記シリンダ部材に設ける。上記2つのボルト締結穴の一方を長穴とする。その長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出する突起部を設ける。車体組付け時には、上記突起部を、車体に設けられた開口部に差し込む。上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びは、車体に組み付けた状態で、他方のボルト締結穴と当該ボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きな値に設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロッドへの過大入力により、長穴で無い他方のボルト締結穴側での固定が不十分となる状態が発生した場合に、一方のボルト締結穴(長穴)の位置と突起部の位置とのロッド軸方向に離れた二箇所で、車輪転舵装置を車体に保持した状態とすることが出来る。この結果、過大入力によって、長穴で無い他方のボルト締結穴側での固定が不十分となる状態が発生しても、車輪転舵装置の揺動発生を小さく規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る後輪転舵装置及び車体を構成するサスペンションメンバを示す斜視図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る後輪転舵装置を示す部分断面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る突起部の形状を説明する斜視図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る突起部を説明する図である。
【図5】後輪転舵装置を車体に組み付けたときの突起部を示す車両後方からみた断面図である。
【図6】本発明に基づく実施形態に係る第1のボルト締結穴にボルトを挿入する際の処理を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【図7】本発明に基づく実施形態に係る後輪転舵装置の傾きを調整する際の突起部の状態を示す図である。
【図8】本発明に基づく実施形態に係る第2のボルト締結穴にボルトを挿入する際の処理を説明する図である。
【図9】本発明に基づく実施形態に係る破断発生時の状態を示す模式図である。
【図10】破断発生時の突起部の状態例を示す断面図である。
【図11】ヒューズ部位を説明する図である。
【図12】本発明に基づく実施形態に係る別のボルト締結穴を説明する模式的斜視図である。
【図13】図12におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、車輪転舵装置として後輪転舵装置を例に挙げて説明する。また、本実施形態では、車体の一部を構成するサスペンションメンバ20に対し、車両前後方向後方から後輪転舵装置を取り付ける場合を例示する。
図1は、本実施形態に係る後輪転舵装置1、及びサスペンションメンバを示す斜視図である。
【0011】
(構成)
後輪転舵装置1は、図1及び図2に示すように、ロッド2、シリンダ部材3、及びアクチュエータ4からなる。
すなわち、シリンダ部材3は、ロッド2を軸方向に移動可能(案内可能)に支持する。そのシリンダ部材3に対しアクチュエータ4を一体的に固定しておく。アクチュエータ4は、例えば電動モータ4A及びギヤボックス4Bからなる。そして、電動モータ4Aの出力トルクは、ギヤボックス4B内のギヤに伝達し、ギヤボックス4Bのピニオン軸から、ロッド2に設けたラック軸に伝達する。このピニオン軸とラック軸の噛み合い位置が、アクチュエータ4からロッド2へのトルク伝達部10となる。すなわち、本実施形態では、ラックピニオン機構がトルク伝達部10となる。また、上記ロッド2の左右端部にはそれぞれタイロッド9が連結する。図2中、符号30はロッド2をシリンダ部材3に支承させるための軸受を示す。
【0012】
本実施形態では、ロッド2よりも車両前後方向後方にアクチュエータ4が位置する場合とする。
また、シリンダ部材3に2つのボルト締結穴5,6を設ける。符号7,8は、上記ボルト締結穴5,6を形成するボルト締結穴用ブラケットである。上記2つのボルト締結穴5,6は、上記トルク伝達部10位置を挟んで、互いにロッド軸方向Sに離隔している。
【0013】
ここで、上記トルク伝達部10の位置は、シリンダ部材3の軸方向中央位置からロッド軸方向Sに偏心している。
上記2つのボルト締結穴5,6のうち、上記トルク伝達部10位置に近い側のボルト締結穴である第1のボルト締結穴5を丸穴とする。また、上記トルク伝達部10位置から遠い側のボルト締結穴である第2のボルト締結穴6を長穴とする。長穴はロッド軸方向Sに長径を向けておく。また、上記2つのボルト締結穴5,6は、ともに軸を車両前後方向に向けて配置しておく。
【0014】
また、上記シリンダ部材3に突起部11を設ける。突起部11は、上記長穴である第2のボルト締結穴6の位置と上記トルク伝達部10位置との間に設け、その突起部11は、上記ロッド軸方向Sと交叉する方向に突出する。本実施形態の突起部11は、上記シリンダ部材3の車両前後方向前面から車両前後方向前方に突出している。上記突起部11については、後述する。
【0015】
ここで、上記サスペンションメンバ20について説明する。
サスペンションメンバ20は、車両前後方向に延在する左右のサイド部材21と、そのサイド部材21間を連結する前側クロス部材22及び後側クロス部材23とを備える。各サイド部材21に端部にそれぞれインシュレータ25を設ける。そして、サスペンションメンバ20は、上記4個のインシュレータ25によって、不図示の車体フレームに弾性支持される。また、各サイド部材21及び後側クロス部材23にそれぞれ、不図示のサスペンションリンクの車体側端部が揺動可能に連結する。サスペンションリンクの車輪側端部は、車輪を支持する車輪支持部材に連結する。
【0016】
上記後側クロス部材23は、車両前後方向で対向する2つの縦壁面を有する閉断面構造となっている。この閉断面構造は、車両前後方向に対向させた2つのコ字状部材を溶接等によって連結して形成する。ここで、通常、2つのコ字状部材の位置決めを行うために、車幅方向中央部近傍に対し、位置決め用の丸穴24が開口している。この位置決め用の丸穴24は、2つの縦壁面が車両前後方向に対向するため、車両前後方向に開口している。
本実施形態では、この既存の丸穴を開口部24として流用する。もっとも、突起部挿入用の開口部を別途、後側クロス部材23に形成しておいても良い。
【0017】
次に、上記突起部11の形状について説明する。
ここで図3は、突起部11の形状を示す斜視図である。図4は、突起部挿入時における突起部11の上面視及び側面時である。図5は、後輪転舵装置1を車体に組み付けた時の、開口部24に対する突起部11の位置を示す断面図である。
本実施形態に突起部11は、ロッド軸方向S(突起部11の突出方向に直交する方向)からみて、直角三角形などの三角形形状をした板部材である。
【0018】
上記突起部11の下面11aは、車幅方向からみて略水平面になっている。もっとも、上記突起部11の下面11aは、車幅方向からみて車両前後方向前方に向かうに連れて下方に向かうように傾斜していても良い。また、直線状に延在している必要もなく、上側に凸の円弧状など曲線状となっていても良い。
その突起部11の下面11aの断面形状は、図5に示すように、車幅方向に沿って下に凸の円弧状の形状となっている。その円弧形状は、真円の一部でも良いし、楕円等の一部から形成しても良い。本実施形態では、突起部11の上面11bの断面形状も、車幅方向に沿って上に凸の円弧状の形状となっている。
【0019】
但し、突起部11の車幅方向で切断した縦断面形状は、上下方向に長辺を向けた略四角形状となっていて、下面及び上面の車幅方向端部にそれぞれ角部11cが形成されている。すなわち、上下方向に離隔している下端部及び上端部に角部11cを形成し、その角部11cは、車幅方向に突出して、開口部24と当接可能となっている。上記突起部11を板状部材とすれば、簡易に角部11cを有することができる。なお、本実施形態では、角部11cの先端が若干丸められている。
【0020】
また、上記突起部11の断面は、上記のように三角形形状とすることで、先端部に向かうにつれて小さくなるようになっている。上記断面は、突起部11の延在方向に直交する断面である。
また、開口部24に応じて、上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びが、図5に示すように、車体に組み付けた状態で、第1のボルト締結穴5と当該第1のボルト締結穴5に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊び、及び第2のボルト締結穴6と当該第2のボルト締結穴6に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きいように設定する。
【0021】
すなわち、車体組付け時において、ロッド軸方向Sの遊びは、次の関係となる。
第1のボルト締結穴5とボルトとの遊び <第2のボルト締結穴6とボルトとの遊び
第2のボルト締結穴6とボルトとの遊び <突起部11の開口部24に対する遊び
また、上記突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びは、上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びよりも小さくなっている。
【0022】
上記突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びは、例えば車体組付け時において、シリンダ部材内径面とロッドとの径方向隙間未満とする。
また、突起部11の位置は、例えば、車体に組み付けたときに、開口部の中央に出来るだけ位置するように設定しておく。
【0023】
(取付けについて)
次に、上記後輪転舵装置1の取付けについて説明する。
先ず、図1に示すように、組立て作業者が、後輪転舵装置1を両手で持って、当該後輪転舵装置1を組み付ける車体のサスペンションメンバ20の近くまで運ぶ。なお、後輪転舵装置1自体の重さは、例えば9kg程度あり、両手でないと持ち運ぶことが困難である。
【0024】
そして、車両前後方向後方から、後輪転舵装置1をサスペンションメンバ20の後側クロス部材23に近づけ、図4に示すように、後輪転舵装置1の突起部11を後側クロス部材23に開口している開口部24(丸孔)に差し込む。
このとき、突起部11の断面は、先端部に向かうにつれて小さくなるようになっている。このため、開口部24に対する突起部11の差し込みが容易となり、後輪転舵装置1の取付け作業性が良い。
【0025】
上記のように差し込むことで、後輪転舵装置1の自重が突起部11を介して車体に仮支持された状態となる。このため、片手で後輪転舵装置1を保持することができる。例えば、アクチュエータ4を片手(左手)で把持すればよい。ここで、上記突起部11を2つのボルト締結穴5,6の間に設けることで、突起部11の下端部位置を中心として、後輪転舵装置1は、やじろべえのような状態で仮支持される。この点からは、突起部11は、軸方向中央部に設けることが好ましい。
【0026】
次に、図6に示すように、左手で後輪転舵装置1を保持しながら、突起部11の下面11aを中心にして後輪転舵装置1の上下方向の傾きを調整して、丸穴側(基準孔)である第1のボルト締結穴5にボルト33を差し込む。
このとき、突起部11の下面11aの断面形状を車幅方向に沿って下側に凸の円弧形状にすることで、次の作用が発生する。
【0027】
すなわち、後輪転舵装置1を車両に組み付ける際に、車体側の開口部24(丸穴)に突起部11を差し込んで載せると、自重によって、突起部11の下面11aが開口部24の下部に当接する。そして、図7に示すように、突起部11下面の円弧部分を開口部24の下部側の開口断面に沿って転がすことで、突起部11で支持させながら後輪転舵装置1を滑らかに傾けることができる。従って、仮支持として突起部11を使用しながら後輪転舵装置1の締結ボルト33を第1の締結穴5に差し込むための位置決め作業が容易になる。
【0028】
また、アクチュエータ4の重心よりも突起部11の設置高さが高いので、突起部11を開口部24に載せて仮支持させた場合における、後輪転舵装置1の安定性が向上する。この点からも、開口部24を支点とした後輪転舵装置1の傾き調整が容易となる。
上記のように調整して、基準穴側の第1のボルト締結穴5に差し込んだボルト33を仮締めする。
【0029】
仮締めした後は、第1のボルト締結穴5(基準穴)側のボルト33と仮支持の突起部11との2ヶ所で、後輪転舵装置1の自重を支持した状態となる。この状態では、作業者が手を離しても、サスペンションメンバ20に後輪転舵装置1を保持した状態にすることができる。すなわち、作業者は手を離すことが出来る。
以上のように、両手が空いた作業は、例えば左手に長穴に差し込むためのボルト34を持っていても、右手で後輪転舵装置1を持ち上げることができる。すなわち、基準穴側である第1のボルト締結穴5(右側のボルト締結穴)側を仮締めしたボルト33を中心に、図8に示すように、後輪転舵装置1の取付け位置を上下にずらしながら左側の長穴側である第2のボルト締結穴6と、車体側の穴位置を合わせることが出来る。
【0030】
左側の穴位置が合った状態で、左手でボルトを差し込む。そして、左右の各ボルト33,34を規定のトルクで本締めする。これによって取付け作業が完了となる。
ここで、後輪転舵装置1をボルト2本止めで車体に固定する構造の場合、2本のボルト締結穴5,6のうち片方を長穴とすることで、車体側の穴中心間距離の公差、後輪転舵装置1の穴中心間距離公差を吸収して確実に車体と後輪転舵装置1の穴へボルトを差し込めるようになる。
【0031】
特に、丸穴側である第1のボルト締結穴5はボルトとの遊び(ガタ)も少なく、後輪転舵装置1の取り付け位置の基準となる役目を果たす。第1のボルト締結穴5とボルトとの遊びは、例えば0.1mm未満である。
また、上記取付け状態においては、突起部11が開口部24に対し中央位置となるように、突起部11の位置を設定しておくことが好ましい。
また、タイロッド9の車輪側端部は、不図示の車輪支持部材(アクスルなど)に連結する。
【0032】
(車体に対し後輪転舵装置1を取付け後の作用)
そして、車両走行中にあっては、ステアリングホイールの操舵角や車両走行状態に応じた後輪目標転舵角となるようにアクチュエータ4が駆動する。そして、アクチュエータ4の駆動によってロッド2が車幅方向に相対変位することで、左右の車輪及びアクスルのトー角を変化させて車輪の転舵角を制御する。
【0033】
ここで、後輪転舵装置1のシリンダ部材3を、互いに車幅方向に離隔した2つのボルト締結穴5,6によって車体に取り付けている。
そして、事故などによって車輪からタイロッド9を介して、過大な入力があるとシリンダ部材3に亀裂/破損が発生する場合がある。この亀裂/破損の発生は、図9に示すように、シリンダ部材3における、第2のボルト締結穴6(長穴)とは反対側の、位置決めの基準となる丸穴側(第1のボルト締結穴5側)で生じる。
【0034】
ここで、トルク伝達部10を挟んで、上記第2のボルト締結穴6(長穴)とは反対側で上記亀裂/破損が発生する理由を、下記に説明する。
車体との締結部である2つのボルト締結穴5,6の間に、アクチュエータ4からロッド2にトルクを伝達するトルク伝達部10が存在する。そして、サスペンションの路面負荷が、タイロッド9を通じてロッド2の軸力として荷重が入力すると、トルク伝達部10でその荷重を支えることとなる。
【0035】
トルク伝達部10が支える外力は、アクチュエータ4を介して、シリンダ部材3に伝わる。そして、当該トルク伝達部10の位置を挟んで、シリンダ部材3の片側には引張り荷重が加わり、反対側は圧縮荷重を支える状態になる。なお、亀裂が入る場合は通常、引張り荷重の加わる部分から亀裂が入ることとなる。
【0036】
ここで、車両の事故等で過大な入力がロッド2に入力する場合、2点のボルト締結穴5,6のうち第2のボルト締結穴6である長穴側では、後輪転舵装置1と車体との締結座面が滑る影響で、締結座面の摩擦以上はシリンダ部材に荷重が加わらないか小さい。一方、第1のボルト締結穴5である丸穴(取り付け位置の基準となるボルト締結穴)は、第2のボルト締結穴6である長穴部の締結座面に滑りが生じた後も外力を支え続けて応力集中が発生する。そして、この応力集中が過大の場合には、取付け位置の基準となる第1のボルト締結穴5側のシリンダ部材3に亀裂/破損が生じる恐れがある(図5参照)。上記亀裂/破損が生じる場合には、トルク伝達部10の位置と第1のボルト締結穴5、若しくは第1のボルト締結穴5位置で、亀裂/破損が生じることになる。すなわち、亀裂/破損は、トルク伝達部10の位置よりも第1のボルト締結穴5で発生する。
【0037】
このとき、ロッドは、亀裂/破損が発生した位置よりも第2のボルト締結穴6側(長穴側)のシリンダ部材部分で、軸方向に移動可能に支持された状態となる。また、上記亀裂/破損が生じた場合には、第2のボルト締結穴6である長穴側のボルトを中心にして、後輪転舵装置1が上下に回転変位可能な状態となる。このとき、突起部11が開口部に当接することで、図9に示すように、長穴側の第2のボルト締結穴6の位置と突起部11の位置とのロッド軸方向に離れた2点で、後輪転舵装置1を車体に保持することができる。そして、長穴側である第2のボルト締結穴6に挿入したボルト34を中心にした、後輪転舵装置1の上下方向への回転変位量を、突起部11によって小さく抑える。この回転変位量は、突起部11の開口部24に対する上下方向の遊びで決定する。すなわち、第2のボルト締結穴6位置を中心に後輪転舵装置1が上下方向に回動変位する際に、突起部11が開口部24の上側若しくは下側に当接することで、上下方向の回動変位が規制される。このことからは、この遊びを小さく設定した。
【0038】
これによって、転舵角制御における制御精度の悪化を小さく抑えることが出来る。このため、例えば事故後に緊急で車両を移動しなければならない状況でも、車両を運転者が思う通りの軌跡で移動させることが可能となる。
また、開口部24に対する突起部11のロッド軸方向Sの遊びが、丸穴である第1のボルト締結穴5とボルト33との遊びよりも大きい。このため、突起部11で上記加重を受けることが無い。つまり、突起部11が曲がったり折れたりすることが回避出来て、上記作用を発揮することが可能となる。
【0039】
ここで、図10(a)は、過大入力が入った際にシリンダ部材3に破断が発生して、第2のボルト締結穴6である長穴部の締結部に滑りが発生して後輪転舵装置1の組付け位置がずれた状態である。過大入力が入った時にシリンダの破断荷重よりも、後輪転舵装置1の締結座面が滑る荷重の方が小さいので、シリンダが破損する時は、ボルトに対する長穴分、後輪転舵装置1の取付け位置にずれが発生する。この時に、突起部11の上下に設けた角部11cが丸穴の開口断面に当たることで、後輪転舵装置1の上下方向の移動を規制し易くなる。仮に上下に離れた角部11cが無いと、図10(b)のように、丸穴に沿って、丸断面の突起部11が転がってしまい上下方向に動きを規制する効果が十分に得られない恐れがある。
【0040】
また、上述の破損の発生順序は、後輪転舵装置1の締結部の滑り → 第1のボルト締結穴5である丸穴側のボルト33に荷重が集中 →その丸穴側取付部が破断という流れになる。
上記破断が発生しても、第2のボルト締結穴6である長穴部とボルト34の遊び分だけ後輪転舵装置1の固定位置がずれたとしても、突起部11と開口部24との間の遊びを大きくしておくことで、突起部11と開口部24が直接接触して荷重が加わらないか加わっても小さい荷重となるので、突起部11が破損しないで済む。
ここで、上記後輪転舵装置1は車輪転舵装置を構成する。またサスペンションメンバ20が車体の一部を構成する。
【0041】
(本実施形態の効果)
(1)車体取付け用の第1のボルト締結穴5を、上記アクチュエータ4からロッド2へのトルク伝達部10位置に対し上記ロッド軸方向Sに離隔した位置で上記シリンダ部材3に設ける。車体取付け用の長穴からなる第2のボルト締結穴6を、上記トルク伝達部10位置に対し上記第1のボルト締結穴5の形成位置とは反対方向であって上記ロッド軸方向Sに離隔した位置で上記シリンダ部材3に設ける。車体に設けられた開口部24に差し込み可能な突起部11を、上記トルク伝達部10位置と第2のボルト締結穴6形成位置との間で上記シリンダ部材3から上記ロッド軸方向Sと交叉する方向に突出させる。上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びは、車体に組み付けた状態で、第1のボルト締結穴5と当該第1のボルト締結穴5に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きい。
【0042】
これによって、ロッドへの過大入力により、長穴で無い他方のボルト締結穴(丸穴)側での固定が不十分でない状態が発生した場合に、ロッド軸方向に離れた一方のボルト締結穴(長穴)の位置と突起部の位置とで、車輪転舵装置を車体に保持した状態とすることが出来る。この結果、過大入力があっても、車輪転舵装置の揺動発生を小さく規制出来る。上記揺動発生を小さく出来る事は、転舵制御の制御精度の悪化を小さく抑えることに繋がる。
【0043】
例えば、2つのボルト締結穴5,6のうち一方のボルト締結穴(第2のボルト締結穴6)を長穴とすることで、過大入力により亀裂若しくは破断が発生する場合には、第1のボルト締結穴5、若しくはその第1のボルト締結穴5と上記トルク伝達部10位置との間で、上記亀裂若しくは破断が発生することとなる。このとき、上記亀裂若しくは破断箇所よりも一方のボルト締結穴(長穴)側のシリンダ部材で、ロッドは、軸方向へ移動可能に支持された状態となる。そして、一方のボルト締結穴(長穴)でボルト締結しているボルトと、突起部11が開口部に当接することで、車輪転舵装置は車体に保持した状態とすることが出来る。すなわち、ロッド軸方向に離れた2箇所(一方のボルト締結穴の位置と突起部11の位置)で、ロッドをロッド軸方向に移動可能に支持する上記シリンダ部材部分を車体に保持した状態とすることが出来る。
【0044】
そして、第2のボルト締結穴6廻りの車輪転舵装置の揺動(本実施形態では上下方向の揺動)は、上記突起部11と開口部との間の遊び分だけに小さく規制出来る。この結果、過大入力によって第1のボルト締結穴5側で亀裂若しくは破断が発生しても、車輪転舵装置による左右の車輪の転舵角制御への悪影響を小さく抑えることが出来る。
また、車輪転舵装置の取付け時において、次の効果も有する。
【0045】
すなわち、2つのボルト締結穴5,6の間に突起部11を設け、その突起部11を車体の開口部24に差し込むことで、車輪転舵装置を車体に対し仮支持させることが出来る。この結果、各ボルト締結穴5,6へのボルト締結作業が容易となる。つまり、車輪転舵装置の車体への取付け作業が容易となる。
なお、2つのボルト締結穴5,6の間に突起部11を形成することで、車輪転舵装置をやじろべえの状態で仮支持させることが可能となる。また、アクチュエータ4は、シリンダ部材3から張り出した状態となっているので、把持し易い。このため、仮支持させた後に、突起部11からロッド軸方向Sに偏心しているアクチュエータ4部分を把持することで、車輪転舵装置の傾動を調整し易くなっている。
【0046】
(2)上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びを、車体に組み付けた状態で、第2のボルト締結穴6と当該第2のボルト締結穴6に挿入されるボルト34とのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きく設定する。
第1のボルト締結穴5側で亀裂若しくは破断が発生した後において、ロッド2への入力があると、長穴である第2のボルト締結穴6とボルト34との遊び分だけシリンダ部材3がずれる可能性がある。突起部11と開口部24との遊びを相対的に大きくしておくことで、突起部11に荷重が加わらないようになって、当該突起部11の破損を回避出来る。
【0047】
(3)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。上記突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びは、上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びよりも小さい。
これによって、突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びを小さく出来る。そして、第1のボルト締結穴5側で亀裂、破断が発生した場合における、第2のボルト締結穴6側を中心とした車輪転舵装置の回動変位をより小さく規制することが出来る。
【0048】
(4)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。上記突起部11の下面11aの断面形状は、ロッド軸方向Sに沿って下側に凸の円弧形状となっている。
車輪転舵装置を組み付ける際に、突起部11を車体の開口部24に差し込んで仮支持させると、突起部11の下面11aが開口部24に当接して加重を伝達する状態となる。この開口部24に当接する部分をロッド軸方向S(車幅方向)に沿って下側の凸とすることで、上記突起部11下面を中心とした車輪転舵装置の傾動が滑らかとなる。このことは、第1のボルト締結穴5側の穴合わせが容易となることに繋がる。
【0049】
(5)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。上記突起部11は、左右両側にそれぞれ上下に離隔して形成された2つの角部11cを備える。
第1のボルト締結穴5側で亀裂若しくは破断が発生した後において、長穴である第2のボルト締結穴6側を中心に車輪転舵角が回動変位して、突起部11が開口部24に当接する際に、突起部11の角部11cが開口部24に当接し易くなる。角部11cが当接することで、より有効に上下の回動変位を規制可能となる。
【0050】
(6)上記突起部11の縦断面は、先端部に近づくほど小さくなる。
先端部に向けて徐々に断面が小さくなっているので、突起部11を車体の開口部24に差し込み易くなる。
(7)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。その突起部11の位置は、上記アクチュエータ4の重心よりも高くする。
重量物となるアクチュエータ4の重心よりも高い位置で、上記突起部11によって仮支持することとなる。このため、突起部11による仮支持の安定性が向上する。
【0051】
(8)アクチュエータ4からのトルクをロッド2に伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置を車体に取り付ける。このとき、上記突起部11を、車体に設けられた開口部24に差し込むことで、車輪転舵装置を車体に仮支持させてから、上記2つのボルト締結穴5,6を車体にボルト締結する。
これによって、車輪転舵装置の車体への組付け作業が楽になる。
【0052】
(変形例)
(1)第1のボルト締結穴5と上記トルク伝達部10位置との間のシリンダ部材3位置に、強度が低いヒューズ部位を形成すると良い。
例えば、図11に示すように、第1のボルト締結穴5を形成するブラケット7,8と、シリンダ部材3に対するアクチュエータ4の取付け部との間に位置する、シリンダ部材3の肉を意識的に削ることで、その部分を周辺部よりも強度を落としたヒューズ部位31とする。
【0053】
この場合には、事故等で過大な入力が入った場合に、亀裂が入る場所を予めコントロールすることができる。第1のボルト締結穴5を形成するブラケット7,8と、トルク伝達部10位置との間で亀裂/破断を発生することで、確実に、第2のボルト締結穴6である長穴部と突起部11の2点で支えるモードになるように亀裂を入れることができる。
また、ロッド2を支持する軸受が亀裂位置よりも第1のボルト締結穴5側に存在擦る場合には、そのロッド2を支持する軸受によるガイド機能が作用することで、3点支持にすることができる。
【0054】
(2)上記実施形態では、各ボルト締結穴の向きと突起部11との向きが同一方向を向く場合で例示した。各ボルト締結穴の向きと突起部11との向きが同一方向を向かない場合であっても、本実施形態は適用可能である。
例えば、後輪転舵装置1のサスペンションメンバ20への取付け構造として、図12及び図13のような構造であっても、適用可能である。
【0055】
この構造は、突起部11は、車両前後方向に突出するが、ボルト締結穴5,6は上下方向に向く場合の例である。すなわち、ボルト締結穴5,6を形成するブラケット7,8をL字型ブラケット7,8とすることで、ボルト締結穴を上下方向に向ける。
この場合にも、突起部11を車体の開口部24に差し込んで一旦仮支持させる。その状態で、突起部11を中心にして車輪転舵装置を上下に傾動調整して、第1のボルト締結穴5である丸穴側の穴合わせを行って仮締めする。その後、第2のボルト締結穴6である長穴側を穴合わせを行い、ボルト締結を行う。
【0056】
ここで、本来は、突起部11の方向と同じ方向にボルトを差し込む構造にしたいが、シリンダ部材3とサスペンションメンバ20との位置関係が、次の理由によって不可能な場合がある。
すなわち、シリンダが丁度サスペンションメンバ20の角部11cに近い位置へ配置すると、シリンダの下側にボルトを差し込むスペースが無くなる。またサスペンションメンバ20側に裏ナットをつけるスペースが無くなってしまう。また、全く別要件となるが、車体との隙間が無く、シリンダ部材3の上側に突起部11と同じ方向にボルトを差し込むことが不可能な場合もある。こういった場合には、上述のように下面にボルト締結する必要がある。
【0057】
(3)なお、ボルト締結穴5,6を形成するブラケット7,8は、シリンダ部材3と一体で成形される場合でも、後付けでボルト締結などでシリンダ部材3に固定する場合でも構わない。
(4)上記実施形態では、突起部11が車両前後方向に突出場合を例示したが、これに限定しない。車輪転舵装置の組付け構造に応じて、突起部11の突出方向を設定すればよい。例えば突起部11を下方に突出させても良い。
【0058】
(5)また、上記実施形態では、車輪転舵装置とした後輪転舵装置1を例示した。ただしこれに限定しない。アクチュエータ4を固定した車輪転舵装置であれば、前輪転舵装置であっても適用可能である。
(6)また、車体としてサスペンションメンバを例示した。車輪転舵装置を組み付ける車体部分は、サスペンションメンバに限定しない。車体フレーム自体に車輪転舵装置を組み付ける場合であっても、適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 後輪転舵装置(車輪転舵装置)
2 ロッド
3 シリンダ部材
4 アクチュエータ
4A 電動モータ
4B ギヤボックス
5 第1のボルト締結穴
6 第2のボルト締結穴
7,8 ブラケット
10 トルク伝達部
11 突起部
11a 下面
11b 上面
11c 角部
20 サスペンションメンバ
23 後側クロス部材
24 開口部
31 ヒューズ部位
33,34 ボルト
S ロッド軸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪転舵装置など、アクチュエータからのトルクで左右の車輪を転舵する転舵装置、その車輪転舵装置の車体への取付け構造、及び車体への取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
後輪転舵装置としては例えば特許文献1に記載の装置がある。この装置は、車幅方向に軸を向けたシリンダ部材で、ロッド(ラック軸)を軸方向へ移動可能に支持する。また、ギヤボックス及びモータからなるアクチュエータのトルクが、ラックピニオン機構を介して上記ロッドに伝達可能となっている。上記アクチュエータは、シリンダ部材に固定されて当該アクチュエータと一体となっている。
【0003】
また、上記後輪転舵装置のシリンダ部材に2つのボルト締結穴を設ける。その2つのボルト締結穴は、互いに上記アクチュエータを挟んでロッド軸方向に離隔している。そして、上記2つのボルト締結穴を車体にボルト締結することで、上記後輪転舵装置を車体に取り付けた状態とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−186978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記後輪転舵装置のロッドに対し過大入力があると、その入力は、ロッドからアクチュエータを介してシリンダ部材に入力する。そして、上記過大な入力によって、シリンダ部材を車体に取り付けるための2つのボルト締結穴のうちの一方のボルト締結穴若しくはその近傍に大きな応力集中が発生する。
【0006】
上記応力集中が過大な場合には、上記一方のボルト締結穴側では車体に対する後輪転舵装置の固定が不十分な状態となり、後輪転舵装置が他方のボルト締結穴廻りに揺動し易くなる恐れがある。
本発明は、上記のような点に着目したもので、ロッドに過大入力があっても、車輪転舵装置の揺動発生を小さく規制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、シリンダ部材に固定したアクチュエータからのトルクをロッドに伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置である。上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置を挟んで、互いに上記ロッド軸方向に離隔した車体取付け用の2つのボルト締結穴を上記シリンダ部材に設ける。上記2つのボルト締結穴の一方を長穴とする。その長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出する突起部を設ける。車体組付け時には、上記突起部を、車体に設けられた開口部に差し込む。上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びは、車体に組み付けた状態で、他方のボルト締結穴と当該ボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きな値に設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロッドへの過大入力により、長穴で無い他方のボルト締結穴側での固定が不十分となる状態が発生した場合に、一方のボルト締結穴(長穴)の位置と突起部の位置とのロッド軸方向に離れた二箇所で、車輪転舵装置を車体に保持した状態とすることが出来る。この結果、過大入力によって、長穴で無い他方のボルト締結穴側での固定が不十分となる状態が発生しても、車輪転舵装置の揺動発生を小さく規制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る後輪転舵装置及び車体を構成するサスペンションメンバを示す斜視図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る後輪転舵装置を示す部分断面図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る突起部の形状を説明する斜視図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る突起部を説明する図である。
【図5】後輪転舵装置を車体に組み付けたときの突起部を示す車両後方からみた断面図である。
【図6】本発明に基づく実施形態に係る第1のボルト締結穴にボルトを挿入する際の処理を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A矢視図である。
【図7】本発明に基づく実施形態に係る後輪転舵装置の傾きを調整する際の突起部の状態を示す図である。
【図8】本発明に基づく実施形態に係る第2のボルト締結穴にボルトを挿入する際の処理を説明する図である。
【図9】本発明に基づく実施形態に係る破断発生時の状態を示す模式図である。
【図10】破断発生時の突起部の状態例を示す断面図である。
【図11】ヒューズ部位を説明する図である。
【図12】本発明に基づく実施形態に係る別のボルト締結穴を説明する模式的斜視図である。
【図13】図12におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態では、車輪転舵装置として後輪転舵装置を例に挙げて説明する。また、本実施形態では、車体の一部を構成するサスペンションメンバ20に対し、車両前後方向後方から後輪転舵装置を取り付ける場合を例示する。
図1は、本実施形態に係る後輪転舵装置1、及びサスペンションメンバを示す斜視図である。
【0011】
(構成)
後輪転舵装置1は、図1及び図2に示すように、ロッド2、シリンダ部材3、及びアクチュエータ4からなる。
すなわち、シリンダ部材3は、ロッド2を軸方向に移動可能(案内可能)に支持する。そのシリンダ部材3に対しアクチュエータ4を一体的に固定しておく。アクチュエータ4は、例えば電動モータ4A及びギヤボックス4Bからなる。そして、電動モータ4Aの出力トルクは、ギヤボックス4B内のギヤに伝達し、ギヤボックス4Bのピニオン軸から、ロッド2に設けたラック軸に伝達する。このピニオン軸とラック軸の噛み合い位置が、アクチュエータ4からロッド2へのトルク伝達部10となる。すなわち、本実施形態では、ラックピニオン機構がトルク伝達部10となる。また、上記ロッド2の左右端部にはそれぞれタイロッド9が連結する。図2中、符号30はロッド2をシリンダ部材3に支承させるための軸受を示す。
【0012】
本実施形態では、ロッド2よりも車両前後方向後方にアクチュエータ4が位置する場合とする。
また、シリンダ部材3に2つのボルト締結穴5,6を設ける。符号7,8は、上記ボルト締結穴5,6を形成するボルト締結穴用ブラケットである。上記2つのボルト締結穴5,6は、上記トルク伝達部10位置を挟んで、互いにロッド軸方向Sに離隔している。
【0013】
ここで、上記トルク伝達部10の位置は、シリンダ部材3の軸方向中央位置からロッド軸方向Sに偏心している。
上記2つのボルト締結穴5,6のうち、上記トルク伝達部10位置に近い側のボルト締結穴である第1のボルト締結穴5を丸穴とする。また、上記トルク伝達部10位置から遠い側のボルト締結穴である第2のボルト締結穴6を長穴とする。長穴はロッド軸方向Sに長径を向けておく。また、上記2つのボルト締結穴5,6は、ともに軸を車両前後方向に向けて配置しておく。
【0014】
また、上記シリンダ部材3に突起部11を設ける。突起部11は、上記長穴である第2のボルト締結穴6の位置と上記トルク伝達部10位置との間に設け、その突起部11は、上記ロッド軸方向Sと交叉する方向に突出する。本実施形態の突起部11は、上記シリンダ部材3の車両前後方向前面から車両前後方向前方に突出している。上記突起部11については、後述する。
【0015】
ここで、上記サスペンションメンバ20について説明する。
サスペンションメンバ20は、車両前後方向に延在する左右のサイド部材21と、そのサイド部材21間を連結する前側クロス部材22及び後側クロス部材23とを備える。各サイド部材21に端部にそれぞれインシュレータ25を設ける。そして、サスペンションメンバ20は、上記4個のインシュレータ25によって、不図示の車体フレームに弾性支持される。また、各サイド部材21及び後側クロス部材23にそれぞれ、不図示のサスペンションリンクの車体側端部が揺動可能に連結する。サスペンションリンクの車輪側端部は、車輪を支持する車輪支持部材に連結する。
【0016】
上記後側クロス部材23は、車両前後方向で対向する2つの縦壁面を有する閉断面構造となっている。この閉断面構造は、車両前後方向に対向させた2つのコ字状部材を溶接等によって連結して形成する。ここで、通常、2つのコ字状部材の位置決めを行うために、車幅方向中央部近傍に対し、位置決め用の丸穴24が開口している。この位置決め用の丸穴24は、2つの縦壁面が車両前後方向に対向するため、車両前後方向に開口している。
本実施形態では、この既存の丸穴を開口部24として流用する。もっとも、突起部挿入用の開口部を別途、後側クロス部材23に形成しておいても良い。
【0017】
次に、上記突起部11の形状について説明する。
ここで図3は、突起部11の形状を示す斜視図である。図4は、突起部挿入時における突起部11の上面視及び側面時である。図5は、後輪転舵装置1を車体に組み付けた時の、開口部24に対する突起部11の位置を示す断面図である。
本実施形態に突起部11は、ロッド軸方向S(突起部11の突出方向に直交する方向)からみて、直角三角形などの三角形形状をした板部材である。
【0018】
上記突起部11の下面11aは、車幅方向からみて略水平面になっている。もっとも、上記突起部11の下面11aは、車幅方向からみて車両前後方向前方に向かうに連れて下方に向かうように傾斜していても良い。また、直線状に延在している必要もなく、上側に凸の円弧状など曲線状となっていても良い。
その突起部11の下面11aの断面形状は、図5に示すように、車幅方向に沿って下に凸の円弧状の形状となっている。その円弧形状は、真円の一部でも良いし、楕円等の一部から形成しても良い。本実施形態では、突起部11の上面11bの断面形状も、車幅方向に沿って上に凸の円弧状の形状となっている。
【0019】
但し、突起部11の車幅方向で切断した縦断面形状は、上下方向に長辺を向けた略四角形状となっていて、下面及び上面の車幅方向端部にそれぞれ角部11cが形成されている。すなわち、上下方向に離隔している下端部及び上端部に角部11cを形成し、その角部11cは、車幅方向に突出して、開口部24と当接可能となっている。上記突起部11を板状部材とすれば、簡易に角部11cを有することができる。なお、本実施形態では、角部11cの先端が若干丸められている。
【0020】
また、上記突起部11の断面は、上記のように三角形形状とすることで、先端部に向かうにつれて小さくなるようになっている。上記断面は、突起部11の延在方向に直交する断面である。
また、開口部24に応じて、上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びが、図5に示すように、車体に組み付けた状態で、第1のボルト締結穴5と当該第1のボルト締結穴5に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊び、及び第2のボルト締結穴6と当該第2のボルト締結穴6に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きいように設定する。
【0021】
すなわち、車体組付け時において、ロッド軸方向Sの遊びは、次の関係となる。
第1のボルト締結穴5とボルトとの遊び <第2のボルト締結穴6とボルトとの遊び
第2のボルト締結穴6とボルトとの遊び <突起部11の開口部24に対する遊び
また、上記突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びは、上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びよりも小さくなっている。
【0022】
上記突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びは、例えば車体組付け時において、シリンダ部材内径面とロッドとの径方向隙間未満とする。
また、突起部11の位置は、例えば、車体に組み付けたときに、開口部の中央に出来るだけ位置するように設定しておく。
【0023】
(取付けについて)
次に、上記後輪転舵装置1の取付けについて説明する。
先ず、図1に示すように、組立て作業者が、後輪転舵装置1を両手で持って、当該後輪転舵装置1を組み付ける車体のサスペンションメンバ20の近くまで運ぶ。なお、後輪転舵装置1自体の重さは、例えば9kg程度あり、両手でないと持ち運ぶことが困難である。
【0024】
そして、車両前後方向後方から、後輪転舵装置1をサスペンションメンバ20の後側クロス部材23に近づけ、図4に示すように、後輪転舵装置1の突起部11を後側クロス部材23に開口している開口部24(丸孔)に差し込む。
このとき、突起部11の断面は、先端部に向かうにつれて小さくなるようになっている。このため、開口部24に対する突起部11の差し込みが容易となり、後輪転舵装置1の取付け作業性が良い。
【0025】
上記のように差し込むことで、後輪転舵装置1の自重が突起部11を介して車体に仮支持された状態となる。このため、片手で後輪転舵装置1を保持することができる。例えば、アクチュエータ4を片手(左手)で把持すればよい。ここで、上記突起部11を2つのボルト締結穴5,6の間に設けることで、突起部11の下端部位置を中心として、後輪転舵装置1は、やじろべえのような状態で仮支持される。この点からは、突起部11は、軸方向中央部に設けることが好ましい。
【0026】
次に、図6に示すように、左手で後輪転舵装置1を保持しながら、突起部11の下面11aを中心にして後輪転舵装置1の上下方向の傾きを調整して、丸穴側(基準孔)である第1のボルト締結穴5にボルト33を差し込む。
このとき、突起部11の下面11aの断面形状を車幅方向に沿って下側に凸の円弧形状にすることで、次の作用が発生する。
【0027】
すなわち、後輪転舵装置1を車両に組み付ける際に、車体側の開口部24(丸穴)に突起部11を差し込んで載せると、自重によって、突起部11の下面11aが開口部24の下部に当接する。そして、図7に示すように、突起部11下面の円弧部分を開口部24の下部側の開口断面に沿って転がすことで、突起部11で支持させながら後輪転舵装置1を滑らかに傾けることができる。従って、仮支持として突起部11を使用しながら後輪転舵装置1の締結ボルト33を第1の締結穴5に差し込むための位置決め作業が容易になる。
【0028】
また、アクチュエータ4の重心よりも突起部11の設置高さが高いので、突起部11を開口部24に載せて仮支持させた場合における、後輪転舵装置1の安定性が向上する。この点からも、開口部24を支点とした後輪転舵装置1の傾き調整が容易となる。
上記のように調整して、基準穴側の第1のボルト締結穴5に差し込んだボルト33を仮締めする。
【0029】
仮締めした後は、第1のボルト締結穴5(基準穴)側のボルト33と仮支持の突起部11との2ヶ所で、後輪転舵装置1の自重を支持した状態となる。この状態では、作業者が手を離しても、サスペンションメンバ20に後輪転舵装置1を保持した状態にすることができる。すなわち、作業者は手を離すことが出来る。
以上のように、両手が空いた作業は、例えば左手に長穴に差し込むためのボルト34を持っていても、右手で後輪転舵装置1を持ち上げることができる。すなわち、基準穴側である第1のボルト締結穴5(右側のボルト締結穴)側を仮締めしたボルト33を中心に、図8に示すように、後輪転舵装置1の取付け位置を上下にずらしながら左側の長穴側である第2のボルト締結穴6と、車体側の穴位置を合わせることが出来る。
【0030】
左側の穴位置が合った状態で、左手でボルトを差し込む。そして、左右の各ボルト33,34を規定のトルクで本締めする。これによって取付け作業が完了となる。
ここで、後輪転舵装置1をボルト2本止めで車体に固定する構造の場合、2本のボルト締結穴5,6のうち片方を長穴とすることで、車体側の穴中心間距離の公差、後輪転舵装置1の穴中心間距離公差を吸収して確実に車体と後輪転舵装置1の穴へボルトを差し込めるようになる。
【0031】
特に、丸穴側である第1のボルト締結穴5はボルトとの遊び(ガタ)も少なく、後輪転舵装置1の取り付け位置の基準となる役目を果たす。第1のボルト締結穴5とボルトとの遊びは、例えば0.1mm未満である。
また、上記取付け状態においては、突起部11が開口部24に対し中央位置となるように、突起部11の位置を設定しておくことが好ましい。
また、タイロッド9の車輪側端部は、不図示の車輪支持部材(アクスルなど)に連結する。
【0032】
(車体に対し後輪転舵装置1を取付け後の作用)
そして、車両走行中にあっては、ステアリングホイールの操舵角や車両走行状態に応じた後輪目標転舵角となるようにアクチュエータ4が駆動する。そして、アクチュエータ4の駆動によってロッド2が車幅方向に相対変位することで、左右の車輪及びアクスルのトー角を変化させて車輪の転舵角を制御する。
【0033】
ここで、後輪転舵装置1のシリンダ部材3を、互いに車幅方向に離隔した2つのボルト締結穴5,6によって車体に取り付けている。
そして、事故などによって車輪からタイロッド9を介して、過大な入力があるとシリンダ部材3に亀裂/破損が発生する場合がある。この亀裂/破損の発生は、図9に示すように、シリンダ部材3における、第2のボルト締結穴6(長穴)とは反対側の、位置決めの基準となる丸穴側(第1のボルト締結穴5側)で生じる。
【0034】
ここで、トルク伝達部10を挟んで、上記第2のボルト締結穴6(長穴)とは反対側で上記亀裂/破損が発生する理由を、下記に説明する。
車体との締結部である2つのボルト締結穴5,6の間に、アクチュエータ4からロッド2にトルクを伝達するトルク伝達部10が存在する。そして、サスペンションの路面負荷が、タイロッド9を通じてロッド2の軸力として荷重が入力すると、トルク伝達部10でその荷重を支えることとなる。
【0035】
トルク伝達部10が支える外力は、アクチュエータ4を介して、シリンダ部材3に伝わる。そして、当該トルク伝達部10の位置を挟んで、シリンダ部材3の片側には引張り荷重が加わり、反対側は圧縮荷重を支える状態になる。なお、亀裂が入る場合は通常、引張り荷重の加わる部分から亀裂が入ることとなる。
【0036】
ここで、車両の事故等で過大な入力がロッド2に入力する場合、2点のボルト締結穴5,6のうち第2のボルト締結穴6である長穴側では、後輪転舵装置1と車体との締結座面が滑る影響で、締結座面の摩擦以上はシリンダ部材に荷重が加わらないか小さい。一方、第1のボルト締結穴5である丸穴(取り付け位置の基準となるボルト締結穴)は、第2のボルト締結穴6である長穴部の締結座面に滑りが生じた後も外力を支え続けて応力集中が発生する。そして、この応力集中が過大の場合には、取付け位置の基準となる第1のボルト締結穴5側のシリンダ部材3に亀裂/破損が生じる恐れがある(図5参照)。上記亀裂/破損が生じる場合には、トルク伝達部10の位置と第1のボルト締結穴5、若しくは第1のボルト締結穴5位置で、亀裂/破損が生じることになる。すなわち、亀裂/破損は、トルク伝達部10の位置よりも第1のボルト締結穴5で発生する。
【0037】
このとき、ロッドは、亀裂/破損が発生した位置よりも第2のボルト締結穴6側(長穴側)のシリンダ部材部分で、軸方向に移動可能に支持された状態となる。また、上記亀裂/破損が生じた場合には、第2のボルト締結穴6である長穴側のボルトを中心にして、後輪転舵装置1が上下に回転変位可能な状態となる。このとき、突起部11が開口部に当接することで、図9に示すように、長穴側の第2のボルト締結穴6の位置と突起部11の位置とのロッド軸方向に離れた2点で、後輪転舵装置1を車体に保持することができる。そして、長穴側である第2のボルト締結穴6に挿入したボルト34を中心にした、後輪転舵装置1の上下方向への回転変位量を、突起部11によって小さく抑える。この回転変位量は、突起部11の開口部24に対する上下方向の遊びで決定する。すなわち、第2のボルト締結穴6位置を中心に後輪転舵装置1が上下方向に回動変位する際に、突起部11が開口部24の上側若しくは下側に当接することで、上下方向の回動変位が規制される。このことからは、この遊びを小さく設定した。
【0038】
これによって、転舵角制御における制御精度の悪化を小さく抑えることが出来る。このため、例えば事故後に緊急で車両を移動しなければならない状況でも、車両を運転者が思う通りの軌跡で移動させることが可能となる。
また、開口部24に対する突起部11のロッド軸方向Sの遊びが、丸穴である第1のボルト締結穴5とボルト33との遊びよりも大きい。このため、突起部11で上記加重を受けることが無い。つまり、突起部11が曲がったり折れたりすることが回避出来て、上記作用を発揮することが可能となる。
【0039】
ここで、図10(a)は、過大入力が入った際にシリンダ部材3に破断が発生して、第2のボルト締結穴6である長穴部の締結部に滑りが発生して後輪転舵装置1の組付け位置がずれた状態である。過大入力が入った時にシリンダの破断荷重よりも、後輪転舵装置1の締結座面が滑る荷重の方が小さいので、シリンダが破損する時は、ボルトに対する長穴分、後輪転舵装置1の取付け位置にずれが発生する。この時に、突起部11の上下に設けた角部11cが丸穴の開口断面に当たることで、後輪転舵装置1の上下方向の移動を規制し易くなる。仮に上下に離れた角部11cが無いと、図10(b)のように、丸穴に沿って、丸断面の突起部11が転がってしまい上下方向に動きを規制する効果が十分に得られない恐れがある。
【0040】
また、上述の破損の発生順序は、後輪転舵装置1の締結部の滑り → 第1のボルト締結穴5である丸穴側のボルト33に荷重が集中 →その丸穴側取付部が破断という流れになる。
上記破断が発生しても、第2のボルト締結穴6である長穴部とボルト34の遊び分だけ後輪転舵装置1の固定位置がずれたとしても、突起部11と開口部24との間の遊びを大きくしておくことで、突起部11と開口部24が直接接触して荷重が加わらないか加わっても小さい荷重となるので、突起部11が破損しないで済む。
ここで、上記後輪転舵装置1は車輪転舵装置を構成する。またサスペンションメンバ20が車体の一部を構成する。
【0041】
(本実施形態の効果)
(1)車体取付け用の第1のボルト締結穴5を、上記アクチュエータ4からロッド2へのトルク伝達部10位置に対し上記ロッド軸方向Sに離隔した位置で上記シリンダ部材3に設ける。車体取付け用の長穴からなる第2のボルト締結穴6を、上記トルク伝達部10位置に対し上記第1のボルト締結穴5の形成位置とは反対方向であって上記ロッド軸方向Sに離隔した位置で上記シリンダ部材3に設ける。車体に設けられた開口部24に差し込み可能な突起部11を、上記トルク伝達部10位置と第2のボルト締結穴6形成位置との間で上記シリンダ部材3から上記ロッド軸方向Sと交叉する方向に突出させる。上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びは、車体に組み付けた状態で、第1のボルト締結穴5と当該第1のボルト締結穴5に挿入されるボルトとのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きい。
【0042】
これによって、ロッドへの過大入力により、長穴で無い他方のボルト締結穴(丸穴)側での固定が不十分でない状態が発生した場合に、ロッド軸方向に離れた一方のボルト締結穴(長穴)の位置と突起部の位置とで、車輪転舵装置を車体に保持した状態とすることが出来る。この結果、過大入力があっても、車輪転舵装置の揺動発生を小さく規制出来る。上記揺動発生を小さく出来る事は、転舵制御の制御精度の悪化を小さく抑えることに繋がる。
【0043】
例えば、2つのボルト締結穴5,6のうち一方のボルト締結穴(第2のボルト締結穴6)を長穴とすることで、過大入力により亀裂若しくは破断が発生する場合には、第1のボルト締結穴5、若しくはその第1のボルト締結穴5と上記トルク伝達部10位置との間で、上記亀裂若しくは破断が発生することとなる。このとき、上記亀裂若しくは破断箇所よりも一方のボルト締結穴(長穴)側のシリンダ部材で、ロッドは、軸方向へ移動可能に支持された状態となる。そして、一方のボルト締結穴(長穴)でボルト締結しているボルトと、突起部11が開口部に当接することで、車輪転舵装置は車体に保持した状態とすることが出来る。すなわち、ロッド軸方向に離れた2箇所(一方のボルト締結穴の位置と突起部11の位置)で、ロッドをロッド軸方向に移動可能に支持する上記シリンダ部材部分を車体に保持した状態とすることが出来る。
【0044】
そして、第2のボルト締結穴6廻りの車輪転舵装置の揺動(本実施形態では上下方向の揺動)は、上記突起部11と開口部との間の遊び分だけに小さく規制出来る。この結果、過大入力によって第1のボルト締結穴5側で亀裂若しくは破断が発生しても、車輪転舵装置による左右の車輪の転舵角制御への悪影響を小さく抑えることが出来る。
また、車輪転舵装置の取付け時において、次の効果も有する。
【0045】
すなわち、2つのボルト締結穴5,6の間に突起部11を設け、その突起部11を車体の開口部24に差し込むことで、車輪転舵装置を車体に対し仮支持させることが出来る。この結果、各ボルト締結穴5,6へのボルト締結作業が容易となる。つまり、車輪転舵装置の車体への取付け作業が容易となる。
なお、2つのボルト締結穴5,6の間に突起部11を形成することで、車輪転舵装置をやじろべえの状態で仮支持させることが可能となる。また、アクチュエータ4は、シリンダ部材3から張り出した状態となっているので、把持し易い。このため、仮支持させた後に、突起部11からロッド軸方向Sに偏心しているアクチュエータ4部分を把持することで、車輪転舵装置の傾動を調整し易くなっている。
【0046】
(2)上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びを、車体に組み付けた状態で、第2のボルト締結穴6と当該第2のボルト締結穴6に挿入されるボルト34とのロッド軸方向Sへの遊びよりも大きく設定する。
第1のボルト締結穴5側で亀裂若しくは破断が発生した後において、ロッド2への入力があると、長穴である第2のボルト締結穴6とボルト34との遊び分だけシリンダ部材3がずれる可能性がある。突起部11と開口部24との遊びを相対的に大きくしておくことで、突起部11に荷重が加わらないようになって、当該突起部11の破損を回避出来る。
【0047】
(3)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。上記突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びは、上記突起部11の開口部24に対するロッド軸方向Sへの遊びよりも小さい。
これによって、突起部11の開口部24に対する上下方向への遊びを小さく出来る。そして、第1のボルト締結穴5側で亀裂、破断が発生した場合における、第2のボルト締結穴6側を中心とした車輪転舵装置の回動変位をより小さく規制することが出来る。
【0048】
(4)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。上記突起部11の下面11aの断面形状は、ロッド軸方向Sに沿って下側に凸の円弧形状となっている。
車輪転舵装置を組み付ける際に、突起部11を車体の開口部24に差し込んで仮支持させると、突起部11の下面11aが開口部24に当接して加重を伝達する状態となる。この開口部24に当接する部分をロッド軸方向S(車幅方向)に沿って下側の凸とすることで、上記突起部11下面を中心とした車輪転舵装置の傾動が滑らかとなる。このことは、第1のボルト締結穴5側の穴合わせが容易となることに繋がる。
【0049】
(5)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。上記突起部11は、左右両側にそれぞれ上下に離隔して形成された2つの角部11cを備える。
第1のボルト締結穴5側で亀裂若しくは破断が発生した後において、長穴である第2のボルト締結穴6側を中心に車輪転舵角が回動変位して、突起部11が開口部24に当接する際に、突起部11の角部11cが開口部24に当接し易くなる。角部11cが当接することで、より有効に上下の回動変位を規制可能となる。
【0050】
(6)上記突起部11の縦断面は、先端部に近づくほど小さくなる。
先端部に向けて徐々に断面が小さくなっているので、突起部11を車体の開口部24に差し込み易くなる。
(7)上記突起部11は、車両前後方向に突出する。その突起部11の位置は、上記アクチュエータ4の重心よりも高くする。
重量物となるアクチュエータ4の重心よりも高い位置で、上記突起部11によって仮支持することとなる。このため、突起部11による仮支持の安定性が向上する。
【0051】
(8)アクチュエータ4からのトルクをロッド2に伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置を車体に取り付ける。このとき、上記突起部11を、車体に設けられた開口部24に差し込むことで、車輪転舵装置を車体に仮支持させてから、上記2つのボルト締結穴5,6を車体にボルト締結する。
これによって、車輪転舵装置の車体への組付け作業が楽になる。
【0052】
(変形例)
(1)第1のボルト締結穴5と上記トルク伝達部10位置との間のシリンダ部材3位置に、強度が低いヒューズ部位を形成すると良い。
例えば、図11に示すように、第1のボルト締結穴5を形成するブラケット7,8と、シリンダ部材3に対するアクチュエータ4の取付け部との間に位置する、シリンダ部材3の肉を意識的に削ることで、その部分を周辺部よりも強度を落としたヒューズ部位31とする。
【0053】
この場合には、事故等で過大な入力が入った場合に、亀裂が入る場所を予めコントロールすることができる。第1のボルト締結穴5を形成するブラケット7,8と、トルク伝達部10位置との間で亀裂/破断を発生することで、確実に、第2のボルト締結穴6である長穴部と突起部11の2点で支えるモードになるように亀裂を入れることができる。
また、ロッド2を支持する軸受が亀裂位置よりも第1のボルト締結穴5側に存在擦る場合には、そのロッド2を支持する軸受によるガイド機能が作用することで、3点支持にすることができる。
【0054】
(2)上記実施形態では、各ボルト締結穴の向きと突起部11との向きが同一方向を向く場合で例示した。各ボルト締結穴の向きと突起部11との向きが同一方向を向かない場合であっても、本実施形態は適用可能である。
例えば、後輪転舵装置1のサスペンションメンバ20への取付け構造として、図12及び図13のような構造であっても、適用可能である。
【0055】
この構造は、突起部11は、車両前後方向に突出するが、ボルト締結穴5,6は上下方向に向く場合の例である。すなわち、ボルト締結穴5,6を形成するブラケット7,8をL字型ブラケット7,8とすることで、ボルト締結穴を上下方向に向ける。
この場合にも、突起部11を車体の開口部24に差し込んで一旦仮支持させる。その状態で、突起部11を中心にして車輪転舵装置を上下に傾動調整して、第1のボルト締結穴5である丸穴側の穴合わせを行って仮締めする。その後、第2のボルト締結穴6である長穴側を穴合わせを行い、ボルト締結を行う。
【0056】
ここで、本来は、突起部11の方向と同じ方向にボルトを差し込む構造にしたいが、シリンダ部材3とサスペンションメンバ20との位置関係が、次の理由によって不可能な場合がある。
すなわち、シリンダが丁度サスペンションメンバ20の角部11cに近い位置へ配置すると、シリンダの下側にボルトを差し込むスペースが無くなる。またサスペンションメンバ20側に裏ナットをつけるスペースが無くなってしまう。また、全く別要件となるが、車体との隙間が無く、シリンダ部材3の上側に突起部11と同じ方向にボルトを差し込むことが不可能な場合もある。こういった場合には、上述のように下面にボルト締結する必要がある。
【0057】
(3)なお、ボルト締結穴5,6を形成するブラケット7,8は、シリンダ部材3と一体で成形される場合でも、後付けでボルト締結などでシリンダ部材3に固定する場合でも構わない。
(4)上記実施形態では、突起部11が車両前後方向に突出場合を例示したが、これに限定しない。車輪転舵装置の組付け構造に応じて、突起部11の突出方向を設定すればよい。例えば突起部11を下方に突出させても良い。
【0058】
(5)また、上記実施形態では、車輪転舵装置とした後輪転舵装置1を例示した。ただしこれに限定しない。アクチュエータ4を固定した車輪転舵装置であれば、前輪転舵装置であっても適用可能である。
(6)また、車体としてサスペンションメンバを例示した。車輪転舵装置を組み付ける車体部分は、サスペンションメンバに限定しない。車体フレーム自体に車輪転舵装置を組み付ける場合であっても、適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 後輪転舵装置(車輪転舵装置)
2 ロッド
3 シリンダ部材
4 アクチュエータ
4A 電動モータ
4B ギヤボックス
5 第1のボルト締結穴
6 第2のボルト締結穴
7,8 ブラケット
10 トルク伝達部
11 突起部
11a 下面
11b 上面
11c 角部
20 サスペンションメンバ
23 後側クロス部材
24 開口部
31 ヒューズ部位
33,34 ボルト
S ロッド軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車輪を転舵するために軸方向へ移動可能なロッドと、そのロッドを軸方向へ移動可能に支持するシリンダ部材と、そのシリンダ部材に固定されると共に上記ロッドに当該ロッドを軸方向に移動させるトルクを伝達可能なアクチュエータと、
上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置に対し上記ロッド軸方向に離隔した位置で上記シリンダ部材に設けられた車体取付け用の第1のボルト締結穴と、
上記トルク伝達部位置に対し上記第1のボルト締結穴形成位置とは反対方向であって上記ロッド軸方向に離隔した位置で上記シリンダ部材に設けられた車体取付け用の長穴からなる第2のボルト締結穴と、
上記トルク伝達部位置と第2のボルト締結穴形成位置との間で上記シリンダ部材から上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出して、車体に設けられた開口部に差し込み可能な突起部と、
を備え、
上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びは、車体に組み付けた状態で、第1のボルト締結穴と当該第1のボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きいことを特徴とする車輪転舵装置。
【請求項2】
上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びを、車体に組み付けた状態で、第2のボルト締結穴と当該第2のボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きく設定することを特徴とする請求項1に記載した車輪転舵装置。
【請求項3】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
上記突起部の開口部に対する上下方向への遊びは、上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びよりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車輪転舵装置。
【請求項4】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
上記突起部の下面の断面形状は、ロッド軸方向に沿って下側に凸の円弧形状となっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項5】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
上記突起部は、左右両側にそれぞれ上下に離隔して形成された2つの角部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項6】
上記突起部の縦断面は、先端部に近づくほど小さくなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項7】
第1のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間のシリンダ部材位置に、強度が低いヒューズ部位を形成したことを特徴する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項8】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
その突起部の位置は、上記アクチュエータの重心よりも高いことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項9】
アクチュエータからのトルクをロッドに伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置の車体への取付け構造であって、
上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置を挟んで互いに上記ロッド軸方向に離隔して設けた車体取付け用の2つのボルト締結穴で上記車輪転舵装置を車体に取り付けると共に、上記2つのボルト締結穴の一方を長穴とし、
その長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に形成され且つ上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出する突起部を、車体に設けられた開口部に差し込み、且つ上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びを、車体に組み付けた状態で、上記長穴でないボルト締結穴と当該ボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きい値に設定することを特徴とする車輪転舵装置の車体への取付け構造。
【請求項10】
アクチュエータからのトルクをロッドに伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置を車体に取り付ける取付け方法であって、
上記車輪転舵装置に対し、上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置を挟んで上記ロッド軸方向に離隔して車体取付け用の2つのボルト締結穴を設けると共に、上記2つのボルト締結穴の一方を長穴とし、且つ、その長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出する突起部を設けておき、
上記突起部を、車体に設けられた開口部に差し込むことで、車輪転舵装置を車体に仮支持させてから、上記2つのボルト締結穴を車体にボルト締結することを特徴とする車輪転舵装置の車体への取付け方法。
【請求項1】
左右の車輪を転舵するために軸方向へ移動可能なロッドと、そのロッドを軸方向へ移動可能に支持するシリンダ部材と、そのシリンダ部材に固定されると共に上記ロッドに当該ロッドを軸方向に移動させるトルクを伝達可能なアクチュエータと、
上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置に対し上記ロッド軸方向に離隔した位置で上記シリンダ部材に設けられた車体取付け用の第1のボルト締結穴と、
上記トルク伝達部位置に対し上記第1のボルト締結穴形成位置とは反対方向であって上記ロッド軸方向に離隔した位置で上記シリンダ部材に設けられた車体取付け用の長穴からなる第2のボルト締結穴と、
上記トルク伝達部位置と第2のボルト締結穴形成位置との間で上記シリンダ部材から上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出して、車体に設けられた開口部に差し込み可能な突起部と、
を備え、
上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びは、車体に組み付けた状態で、第1のボルト締結穴と当該第1のボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きいことを特徴とする車輪転舵装置。
【請求項2】
上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びを、車体に組み付けた状態で、第2のボルト締結穴と当該第2のボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きく設定することを特徴とする請求項1に記載した車輪転舵装置。
【請求項3】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
上記突起部の開口部に対する上下方向への遊びは、上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びよりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車輪転舵装置。
【請求項4】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
上記突起部の下面の断面形状は、ロッド軸方向に沿って下側に凸の円弧形状となっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項5】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
上記突起部は、左右両側にそれぞれ上下に離隔して形成された2つの角部を備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項6】
上記突起部の縦断面は、先端部に近づくほど小さくなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項7】
第1のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間のシリンダ部材位置に、強度が低いヒューズ部位を形成したことを特徴する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項8】
上記突起部は、車両前後方向に突出し、
その突起部の位置は、上記アクチュエータの重心よりも高いことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した車輪転舵装置。
【請求項9】
アクチュエータからのトルクをロッドに伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置の車体への取付け構造であって、
上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置を挟んで互いに上記ロッド軸方向に離隔して設けた車体取付け用の2つのボルト締結穴で上記車輪転舵装置を車体に取り付けると共に、上記2つのボルト締結穴の一方を長穴とし、
その長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に形成され且つ上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出する突起部を、車体に設けられた開口部に差し込み、且つ上記突起部の開口部に対するロッド軸方向への遊びを、車体に組み付けた状態で、上記長穴でないボルト締結穴と当該ボルト締結穴に挿入されるボルトとのロッド軸方向への遊びよりも大きい値に設定することを特徴とする車輪転舵装置の車体への取付け構造。
【請求項10】
アクチュエータからのトルクをロッドに伝達することで左右の車輪を転舵可能な車輪転舵装置を車体に取り付ける取付け方法であって、
上記車輪転舵装置に対し、上記アクチュエータからロッドへのトルク伝達部位置を挟んで上記ロッド軸方向に離隔して車体取付け用の2つのボルト締結穴を設けると共に、上記2つのボルト締結穴の一方を長穴とし、且つ、その長穴のボルト締結穴と上記トルク伝達部位置との間に上記ロッド軸方向と交叉する方向に突出する突起部を設けておき、
上記突起部を、車体に設けられた開口部に差し込むことで、車輪転舵装置を車体に仮支持させてから、上記2つのボルト締結穴を車体にボルト締結することを特徴とする車輪転舵装置の車体への取付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−253990(P2010−253990A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103180(P2009−103180)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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