説明

軌道回路測定器およびプログラム

【課題】軌道回路の点検者が、軌道回路毎に軌道回路測定器を用意して選択する負担や、測定周波数値を設定する負担を軽減する。
【解決手段】内部記憶部51が、操作入力部31の有する押ボタンと対応付けて、周波数設定値を記憶する。そして、操作入力部31が押ボタンの押下を受け付けると、対象選択部412が、押下された押ボタンに対応付けられた周波数設定値を内部記憶部51から読み出し、測定対象周波数として設定する。これにより、軌道回路測定器1は、押ボタンの押下で、異なる周波数の電気信号を用いる複数の軌道回路に対応でき、点検者の負担を軽減し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道回路を流れる信号を測定する軌道回路測定器、および軌道回路を流れる信号を測定するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道上の列車の存在を検出する方法として、ある区間のレールに電気信号を流し、列車の車輪や車軸による2本のレールの短絡を検出する方法が知られている。かかる検出を行うための電気回路、或いは、当該電気回路を構成するために用いられる、レールに電流を供給する装置やレールの短絡を検出する装置は、軌道回路と呼ばれる。
この軌道回路においてレールに流す電気信号として、様々なものが用いられている。例えば、直流の電気信号を用いる軌道回路は直流軌道回路と呼ばれ、交流の電気信号を用いる軌道回路は交流軌道回路と呼ばれる。また、交流軌道回路において、様々な周波数の電気信号が用いられている。
【0003】
また、軌道回路に関連する幾つかの技術が示されている。
例えば、特許文献1に記載の分倍周軌道回路用極性試験器は、制御区間の送信側より商用電源周波数を1/2分周してインピーダンスボンドを介してレール電流を送り出し、着電側でインピーダンスボンドを介して受信したレール電流を倍周し、軌道リレー回路を駆動させるようにした分倍周軌道回路において、インピーダンスボンドの2次巻線の中性点および隣接軌道回路の各レール電流信号を取り込むための端子と、取り込んだ各レール出信号を波形成形する波形成形回路と、波形成形した各信号の位相差を求める位相差測定回路と、測定した位相差を表示するメータとを備える。
この分倍周軌道回路用極性試験器において、隣接する軌道回路のそれぞれの一方のレールおよびインピーダンスボンドの2次巻線の中性点に3本のリード線を接続し、各軌道回路を流れるレール電流の位相差を測定することにより、極めて容易に極性判定を行うことができる。
【0004】
また、特許文献2に記載の事故電流検出装置には、交流き電線に流れる電流を検出する電流検出部と、その検出電流が事故電流か否かを判別する電流判定部と、事故電流の場合に外部に表示をする表示部とが設けられる。そして、電流判定部は、瞬時電流を検出した後、所定時間内に負荷電流を検出しない場合に事故電流と判定する。また事故電流検出装置をブースタートランスの配置間毎に設置し、ブースタートランスの配置間隔を単位区間として事故区間を判別する。
これにより、地絡等の事故発生時に、き電線に流れる事故電流を容易かつ確実に検出できると共に、既設のき電設備に簡単に設置できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−31550号公報
【特許文献2】特開2000−201427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、軌道回路に用いられる電気信号には様々なものがある。路線毎に異なる電気信号を用いる鉄道事業者など、異なる電気信号を用いる複数の軌道回路を点検する点検者は、点検対象の軌道回路に用いられる電気信号毎に軌道回路測定器を用意しておき、点検時に、点検対象の軌道回路に応じて軌道回路測定器を選択して点検を行う。
かかる軌道回路測定器の用意および選択は、点検者にとって負担となる。さらに、軌道回路測定器の選択を誤ると、点検を正しく行えないおそれがある。
【0007】
また、異なる周波数の電気信号を用いる複数の軌道回路を点検する点検者の場合、測定周波数を設定可能なシグナルアナライザを用いて、当該シグナルアナライザの測定周波数を、点検対象の信号周波数に設定して点検を行うことが考えられる。この場合、1つのシグナルアナライザで複数の軌道回路を点検し得るが、点検者は、シグナルアナライザの測定周波数値を設定する必要がある。この測定周波数値の設定は、点検者にとって負担となる。さらに、測定周波数値の設定を誤ると、点検を正しく行えないおそれがある。
また、特許文献1、2には、異なる周波数の電気信号を用いる複数の軌道回路を点検する際の点検者の負担を軽減することは記載されていない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、点検者が、軌道回路測定器を用意して選択する負担や、測定周波数値を設定する負担を軽減可能な軌道回路測定器およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による軌道回路測定器は、電気信号の入力を受け付ける信号入力部と、
周波数設定値を複数記憶する記憶部と、前記記憶部の記憶する周波数設定値から、測定対象における電気信号の周波数を選択する対象選択部と、前記信号入力部の受け付ける電気信号に含まれる、前記対象選択部の選択した周波数の電圧値および位相を検出する測定対象周波数成分検出部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様による軌道回路測定器は、上述の軌道回路測定器であって、前記信号入力部は、複数の電圧の入力を受け付け、前記測定対象周波数成分検出部は、前記信号入力部の受け付ける複数の電圧の各々について、前記対象選択部の選択した周波数の電圧値および位相を検出し、検出した電圧値および位相に基づいて軌道リレーのトルクファクターを算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様による軌道回路測定器は、上述の軌道回路測定器であって、前記信号入力部は、前記複数の電圧の各々の入力を、互いに独立した回路で受け付けることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様によるプログラムは、周波数設定値を複数記憶する記憶部を具備する軌道回路測定器としてのコンピュータに、電気信号の入力を受け付ける信号入力ステップと、前記記憶部の記憶する周波数設定値から、測定対象における電気信号の周波数を選択する対象選択ステップと、前記信号入力ステップにて受け付ける電気信号に含まれる、前記対象選択ステップにて選択した周波数の電圧値および位相を検出する測定対象周波数成分検出ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、点検者が、軌道回路測定器を用意して選択する負担や、測定周波数値を設定する負担を軽減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における軌道回路測定器の概略構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態における軌道回路測定器の外形の概略を示す外形図である。
【図3】同実施形態において、軌道回路測定器が行う信号測定および表示の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態における軌道回路測定器の概略構成を示す構成図である。同図において、軌道回路測定器1は、軌道信号入力部11と、軌道信号処理部12と、局部信号入力部21と、局部信号処理部22と、操作入力部31と、表示部32と、制御部41と、内部記憶部(記憶部)51と、外部記憶部52とを具備する。制御部41は、操作入力処理部411と、対象選択部412と、データ処理部(測定対象周波数成分検出部)413と、表示処理部414とを具備する。
【0016】
軌道回路測定器1は、軌道回路の点検時に、軌道電圧(軌道回路を流れる電気信号(以下、「軌道信号」と称する)の電圧であり、軌道リレーの軌道側コイルに印加される)や、局部電圧(軌道リレーの局部側コイルに印加される電圧。以下、軌道リレーの局部側コイルを流れる電気を「局部信号」と称する)の入力を受けて、これらの電圧等を出力(例えば表示)する。
【0017】
軌道信号入力部11と、局部信号入力部21とは、信号入力部の一例であり、それぞれ、軌道電圧と、局部電圧との入力を受け付ける。
軌道信号処理部12は、軌道信号入力部11に入力される軌道電圧に対して、交流/直流変換や、アナログ/デジタル変換や、デジタル信号処理などの信号処理を行う。この信号処理によって、軌道信号処理部12は、サンプリング時間毎の電圧値など、軌道電圧の電圧値および位相を検出可能なデジタル信号を生成して制御部41に出力する。
局部信号処理部22は、局部信号入力部21に入力される局部電圧に対して、交流/直流変換や、アナログ/デジタル変換や、デジタル信号処理などの信号処理を行う。この信号処理によって、局部信号処理部22は、サンプリング時間毎の電圧値など、局部電圧の電圧値および位相を検出可能なデジタル信号を生成して制御部41に出力する。
【0018】
なお、軌道信号入力部11および軌道信号処理部12や、局部信号入力部21および局部信号処理部22の耐電圧は、想定される入力電圧に対して充分な耐電圧を有する。例えば、軌道リレーの定格電圧110Vに対して、これら各部の耐電圧(軌道信号入力部11や局部信号入力部21への最大入力電圧)は150Vとなっている。これにより、過電圧による軌道回路測定器1内部でのショートを防止することができる。
また、軌道信号入力部11および軌道信号処理部12と、局部信号入力部21および局部信号処理部22とは、電源回路を含めて全て別系統(互いに独立した回路)で構成される。これにより、軌道回路測定器1内部における入力同士の干渉(軌道電圧と局部電圧との干渉)を防止し得る。
【0019】
操作入力部31は、複数の押ボタンが設けられたメンブレンキーボード(Membrane Keyboard)、および、データ記憶を指示する押ボタンであるデータストアボタンを有し、点検者(軌道回路測定器1のユーザ)による操作入力を受け付ける。特に、操作入力部31は、点検対象の路線の選択操作、あるいは、点検対象の軌道回路の種類の選択操作など、軌道回路測定器1が電圧値や位相を測定する対象の周波数(以下、「測定対象周波数」と称する)を特定する情報の入力を受け付ける。また、操作入力部31は、デシベル(dB)表示とボルト(V)表示との切り替えなど、データ処理に対する要求を示す操作入力を受け付ける。
【0020】
表示部32は、液晶ディスプレイ等の表示画面を有し、制御部41の制御に従って各種データを表示する。特に、表示部32は、軌道電圧と、局部電圧と、位相(軌道電圧と局部電圧との位相差、すなわち、軌道電圧の局部電圧に対する位相)と、軌道リレーのトルクファクターとを表示する。
【0021】
制御部41は、軌道信号処理部12および局部信号処理部22から出力されるデータを処理し、処理結果および操作入力部31の受け付ける操作入力に応じて、軌道回路測定器1の各部を制御する。制御部41は、例えば、軌道回路測定器1の具備するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が、内部記憶部51の記憶するプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0022】
操作入力処理部411は、操作入力部31の受け付ける操作入力を、測定対象周波数を特定する操作入力と、データ処理に対する要求を示す操作入力とに分類する。そして、操作入力処理部411は、測定対象周波数を特定する操作入力を、対象選択部412に出力し、データ処理に対する要求を示す操作入力を、データ処理部413に出力する。
【0023】
対象選択部412は、操作入力処理部411から出力される操作入力に従って、内部記憶部51の予め記憶する周波数設定値から、測定対象周波数を選択する。
データ処理部413は、軌道信号処理部12から出力されるデータに基づいて、軌道信号に含まれる、対象選択部412の選択した測定対象周波数の周波数成分の、電圧(電圧値)および位相を検出する。また、データ処理部413は、局部信号処理部22から出力されるデータに基づいて、局部電圧に含まれる、対象選択部412の選択した測定対象周波数の周波数成分の、電圧値および位相を検出する。これらの電圧値および位相を検出する際、データ処理部413は、操作入力処理部411から出力される操作入力の示す単位で電圧を検出するなど、操作入力に従って処理を行う。
さらにデータ処理部413は、軌道電圧と局部電圧との位相差を検出し、検出した電圧および位相差を用いて、式(1)に基づいて、軌道リレーのトルクファクターTFを算出する。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、式(1)における「80°」は、位相の基準値として予め設定された値である。
【0026】
表示処理部414は、データ処理部413の検出ないし算出する電圧や位相差やトルクファクター等を操作入力部31に表示させるための表示データを生成し、操作入力部31に表示させる。
内部記憶部51は、制御部41を実現するためのプログラムや各種データを記憶する。特に、内部記憶部51は、軌道回路測定器1の測定対象周波数の候補である周波数設定値を、操作入力部31の有する押ボタンと対応付けて予め記憶する。
【0027】
外部記憶部52は、例えばコンパクトフラッシュ(Compact Flash、登録商標)あるいはSDメモリーカード(SD Memory Card)などの外部記憶デバイスを格納し、データ処理部413の検出ないし算出する電圧や位相差やトルクファクター等を、データ処理部413の制御に従って、外部記憶デバイスに書き込む。これにより、検査者は、軌道回路測定器1による測定結果を容易に保存し、パソコン(Personal Computer)などの情報処理装置に読み込ませることができる。
【0028】
図2は、軌道回路測定器1の外形の概略を示す外形図である。同図において、軌道回路測定器1の筐体に、信号入力端子T11およびT12と、表示画面W11と、押ボタンB11と、メンブレンキーボードK11とが設けられている。
【0029】
信号入力端子T11は、軌道信号入力部11の有する信号入力端子であり、例えば信号ケーブルを介して軌道リレーの軌道側コイルに接続され、軌道電圧(軌道信号)の入力を受け付ける。
信号入力端子T12は、局部信号入力部21の有する信号入力端子であり、例えば信号ケーブルを介して軌道リレーの局部側コイルに接続され、局部電圧の入力を受け付ける。
【0030】
表示画面W11は、表示部32の有する表示画面である。図2に示される表示例において、表示画面W11は、領域A11に軌道電圧を表示し、領域A12に局部電圧を表示し、領域A13に位相(軌道電圧と局部電圧との位相差)を表示し、領域A14にトルクファクターを表示している。
【0031】
押ボタンB211は、操作入力部31の有するデータストアボタンであり、外部記憶部52の格納する外部記憶デバイスへのデータの書込を指示する操作入力を受け付ける。
メンブレンキーボードK11は、操作入力部31の有するキーボードであり、点検対象の路線の選択操作を受け付ける押ボタンB111〜B113と、点検対象の軌道回路の種類の選択操作を受け付ける押ボタンB121〜B128と、測定対象周波数自動設定の押ボタンB131と、データ処理に対する要求を示す操作入力を受け付ける押ボタンB132〜B133およびB141〜B143と、電源ボタンB151とが設けられている。
【0032】
このメンブレンキーボードK11の押ボタンB111〜B113およびB121〜B128およびB131の何れかが押下されると、軌道回路測定器1(図1の対象選択部412)は、測定対象周波数を決定する。
例えば、「路線1」の押ボタンB111が押下されると、軌道回路測定器1は、路線1に設置されている軌道回路における軌道信号の周波数を、測定対象周波数とする。また、「商用」の押ボタンB125が押下されると、軌道回路測定器1は、商用周波数50ヘルツ(Hz)を、測定対象周波数とする。
【0033】
また、「自動」の押ボタンB131は、軌道回路測定器1が測定対象周波数を自動設定するべき旨の指示を示す押ボタンである。この押ボタンB131が押下されると、軌道回路測定器1(対象選択部412)は、軌道信号処理部12から出力されるデータに基づいて、軌道電圧に含まれる各周波数成分のうち、検査者によって設定された周波数の範囲内で電圧値の最も大きい周波数成分を検出し、検出した周波数を測定対象周波数とする。
【0034】
また、押ボタンB111〜B113およびB121〜B128は、トルクファクター算出指示を示す押ボタンであり、これらの何れかが押下されると、データ処理部413(図1)は、トルクファクターを算出する。一方、押ボタンB131が押下された場合、軌道回路測定器1は、局部電圧や、位相や、トルクファクターの検出ないし算出や、これらの表示を行わない。
【0035】
また、押ボタンB132は、軌道電圧の平均値の算出指示を示す押ボタンであり、押ボタンB133は、軌道電圧の瞬時値表示の指示を示す押ボタンであり、押ボタンB142は、軌道電圧を表示する単位をデシベルとボルトとの間で切り替える指示を示す押ボタンである。
【0036】
次に、図3を参照して、軌道回路測定器1の動作について説明する。
図3は、軌道回路測定器1が行う信号測定および表示の処理手順を示すフローチャートである。軌道回路測定器1は、電源を接続(ON)されると、同図の処理を開始する。
同図の処理において、まず、操作入力部31が、図2で説明した押ボタンB111〜B128およびB131の何れかの押下による、測定対象周波数の選択操作を受け付け、受け付けた操作入力を示す情報を操作入力処理部411と、対象選択部412とに出力する(ステップS101)。
【0037】
次に、操作入力処理部411は、周波数自動設定が選択されたか否かを判定する(ステップS102)。具体的には、操作入力処理部411は、ステップS101で操作入力部31の受け付けた操作入力が、押ボタンB111〜B113およびB121〜B128のいずれかであると判定すると、周波数自動設定が選択されていないと判定し、押ボタンB131であると判定すると、周波数自動設定が選択されたと判定する。
【0038】
周波数自動設定が選択されていないと判定した場合(ステップS102:NO)、対象選択部412は、ステップS101で押下された押ボタンに対応付けられる周波数設定値を内部記憶部51から読み出し、測定対象周波数に設定する(ステップS111)。例えば、上述したように、対象選択部412は、「路線1」の押ボタンB111(図2)が押下されると、路線1に設置されている軌道回路における軌道信号の周波数を、内部記憶部51から読み出して測定対象周波数とする。また、対象選択部412は、「商用」の押ボタンB125が押下されると、軌道回路測定器1は、商用周波数50ヘルツを、内部記憶部51から読み出して測定対象周波数とする。
【0039】
次に、データ処理部413は、軌道信号処理部12から出力されるデータに基づいて、軌道電圧における、ステップS111で設定された測定対象周波数の周波数成分の、電圧値および位相を検出する(ステップS112)。
また、データ処理部413は、局部信号処理部22から出力されるデータに基づいて、局部電圧における、ステップS111で設定された測定対象周波数の周波数成分の、電圧値および位相を検出する(ステップS113)。
【0040】
次に、データ処理部413は、軌道電圧の位相と局部電圧の位相との位相差を算出する(ステップS114)。また、データ処理部413は、上記の式(1)に基づいて軌道リレーのトルクファクターを算出する(ステップS115)。
そして、表示処理部414は、データ処理部413の検出ないし算出した電圧値や位相やトルクファクターを示す画像データを生成して表示部32に出力する。表示部32は、表示処理部414から出力される画像データに従って、例えば図2に示す表示画面例のように、電圧値や位相やトルクファクターを表示する(ステップS116)。
その後、同図の処理を終了する。
【0041】
一方、ステップS102において、周波数自動設定が選択されたと判定した場合(ステップS102:YES)、対象選択部412は、軌道信号処理部12の出力するデータに基づいて、測定対象周波数を設定する(ステップS121)。具体的には、対象選択部412は、軌道電圧に含まれる周波数成分のうち、検査者によって設定されて内部記憶部51の記憶する周波数の範囲内で電圧値の最も大きい周波数成分を検出し、検出した周波数を測定対象周波数とする。
【0042】
次に、データ処理部413は、軌道信号処理部12から出力されるデータに基づいて、軌道電圧における、ステップS121で設定された測定対象周波数の周波数成分の、電圧値を検出する(ステップS122)。
そして、表示処理部414は、データ処理部413の検出した軌道電圧を示す画像データを生成して表示部32に出力する。表示部32は、表示処理部414から出力される画像データに従って、例えば図2の表示画面例の領域A11のように、軌道電圧を表示する(ステップS123)。
その後、同図の処理を終了する。
【0043】
なお、同図の処理を終了した後、軌道回路測定器1は、点検者による操作入力に応じた処理を行う。
例えば、いずれの押ボタンも押下されない状態では、データ処理部413が一定時間毎に軌道電圧の検出等を行い、表示部32が表示内容を更新する。一方、「平均」の押ボタンB132が押下されると、データ処理部413は、一定時間毎に軌道電圧等の平均値を算出し、表示部32は、データ処理部413の算出する平均値を表示する。また、「瞬時」の押ボタンB133が押下されると、表示部32は、表示内容の更新を行わずに瞬時値の表示を維持する。また、「dB/V」の押ボタンB142が押下されると、データ処理部413は、一定時間毎に軌道電圧等の電圧をデシベルにて検出し、表示部32が表示内容を更新する。
また、データストアボタンB211が押下されると、データ処理部413は、次にデータストアボタンB211が押下されるまで、軌道電圧等を外部記憶部52に書き込む。
【0044】
以上のように、対象選択部412が、押下される押ボタンに応じて、内部記憶部51の記憶する周波数設定値から測定対象周波数を選択して設定する。そして、データ処理部413は、対象選択部412の選択した測定対象周波数に従って、電圧値(軌道信号に含まれる測定対象の周波数成分)を検出する。
これにより、軌道回路測定器1は、異なる電気信号を用いる複数の軌道回路に対応可能である。従って、点検者は、点検対象の軌道回路に用いられる電気信号毎に軌道回路測定器を用意しておく必要や、点検時に、点検対象の軌道回路に応じて軌道回路測定器を選択して点検を行う必要がなく、点検者の負担を軽減し得る。
また、対象選択部412は、押下される押ボタンに応じて、内部記憶部51の記憶する周波数設定値から測定対象周波数を選択して設定するので、点検者は、測定周波数値を設定する必要がなく、点検者の負担を軽減し得る。
【0045】
また、データ処理部413は、対象選択部412の選択した測定対象周波数に従って、軌道リレーのトルクファクターを算出する。これにより、点検者がトルクファクターを算出する負担を軽減でき、また、点検者は、トルクファクターを迅速に取得でき、異常の有無を判断できる。
【0046】
また、軌道信号入力部11と局部信号入力部21とは、互いに独立した回路で構成されて、それぞれ軌道電圧と局部電圧との入力を受け付ける。これにより、軌道回路測定器1内部における入力同士の干渉を防止し得る。
【0047】
なお、軌道回路測定器1の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 軌道回路測定器
11 軌道信号入力部
12 軌道信号処理部
21 局部信号入力部
22 局部信号処理部
31 操作入力部
32 表示部
41 制御部
411 操作入力処理部
412 対象選択部
413 データ処理部
414 表示処理部
51 内部記憶部
52 外部記憶部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の入力を受け付ける信号入力部と、
周波数設定値を複数記憶する記憶部と、
前記記憶部の記憶する周波数設定値から、測定対象における電気信号の周波数を選択する対象選択部と、
前記信号入力部の受け付ける電気信号に含まれる、前記対象選択部の選択した周波数の電圧値および位相を検出する測定対象周波数成分検出部と、
を具備することを特徴とする軌道回路測定器。
【請求項2】
前記信号入力部は、複数の電圧の入力を受け付け、
前記測定対象周波数成分検出部は、前記信号入力部の受け付ける複数の電圧の各々について、前記対象選択部の選択した周波数の電圧値および位相を検出し、検出した電圧値および位相に基づいて軌道リレーのトルクファクターを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の軌道回路測定器。
【請求項3】
前記信号入力部は、前記複数の電圧の各々の入力を、互いに独立した回路で受け付ける
ことを特徴とする請求項2に記載の軌道回路測定器。
【請求項4】
周波数設定値を複数記憶する記憶部を具備する軌道回路測定器としてのコンピュータに、
電気信号の入力を受け付ける信号入力ステップと、
前記記憶部の記憶する周波数設定値から、測定対象における電気信号の周波数を選択する対象選択ステップと、
前記信号入力ステップにて受け付ける電気信号に含まれる、前記対象選択ステップにて選択した周波数の電圧値および位相を検出する測定対象周波数成分検出ステップと、
を実行させるためのプログラム。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−201348(P2012−201348A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70832(P2011−70832)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】