説明

軌道式車両

【課題】案内バーの高さを変えずに案内輪および分岐輪の高さを容易にかつ確実に調整することができる軌道式車両を提供する。
【解決手段】案内軌条Rに接触転動する案内輪2と、案内軌条Rの分岐箇所に設置される分岐軌条に接触転動する分岐輪3と、上端部(一端)に案内輪2が接続されるとともに下端部(他端)に分岐輪3が接続される輪軸4と、該輪軸4の長さ寸法に対して対応する高さ寸法が小さく設定され該輪軸4を支持する支持受5と、案内輪側隙間(支持受5と案内輪2との隙間)および分岐輪側隙間(支持受5と分岐輪3との隙間)の大きさを輪軸4の軸方向に直交する方向からアクセスして調整し案内輪2および分岐輪3の高さを調整可能な調整手段6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内軌条に沿って走行する軌道式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バスや鉄道以外の新たな交通手段として、新交通システムが注目されている。このような新交通システムの一種としては、ゴムタイヤからなる走行車輪を有する車両を軌道上で走行させるものが知られている(Automated People Mover,Automated Transit Systems)。
【0003】
この種の車両(軌道式車両)では、案内軌条に沿って接触転動する案内輪を備えているため、案内輪が案内軌条に対して適切な高さに取り付けられるように、案内輪の高さ調整が行われている。
例えば、特許文献1に開示された案内輪支持装置は、案内輪を支持する案内バーに形成された軸孔に、内周面が上搾りのテーパ状に形成されるとともにスリットによって拡径自在なブッシュが嵌入され、案内輪の上方に突出し上搾りのテーパ状に形成されるとともに上端部にねじ部を備えた案内輪の輪軸がブッシュに下方から嵌挿され、案内バーの上方へ突出したねじ部にナットが締結されている。
そして、この案内輪支持装置では、ブッシュが拡径自在であることにより、ブッシュに対する輪軸の高さを調整することができるため、案内輪を案内バーに対して所望の高さに設置することができる。
【0004】
また、上記のような案内輪支持装置を設けずに、案内輪を支持する案内バーと案内バーと接続されるリンクとの間にライナーを設けたり、取付高さを調整可能なネジを用いて案内バーをリンクへ取り付けたりして、案内バーの高さを調整して案内輪の高さを調整することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−40361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、輪軸の一端に案内輪が接続され他端に分岐輪が接続されている場合、案内輪及び分岐輪の高さ調整に特許文献1の案内輪支持装置を適用することが困難である。
また、この案内輪支持装置では、ブッシュおよび輪軸を作業者が手などで押さえておく必要があり作業が煩雑であるとともに、軌道式車両には、複数の案内輪が設けられているため、これらの案内輪の高さを統一させることが困難である。
さらに、この案内輪支持装置を長期使用すると、ブッシュに形成されたスリットによって、案内輪の軸部に錆やシメシロなどによる段差が生じ、案内輪支持装置をばらして補修を行う必要がある。
【0007】
また、案内バーの高さを調整して案内輪の高さを調整する方法では、案内バーの両端部に支持された案内輪をそれぞれ異なる高さ調節する場合、案内バーが水平とならないことがある。そして、リンクは、案内バーを水平に移動させるとともに、案内バーとの接続部が案内バーに対して直角軸を設けてこの直角軸を中心に回転する構成であるため、案内バーが水平とならない場合、直角軸に無理な力が作用してリンクが効率よく機能しないとともに、耐久性が低下する虞がある。
また、案内バーとリンクとの接続部では、接続用のボルトや受が斜めに設置されるため、このボルトや受に曲げ荷重が作用してボルトが緩みやすくなる虞がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、案内バーの高さを変えずに案内輪および分岐輪の高さを容易にかつ確実に調整することができる軌道式車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明に係る軌道式車両は、案内軌条に沿って走行する軌道式車両において、前記案内軌条に接触転動する案内輪と、前記案内軌条の分岐箇所に設置される分岐軌条に接触転動する分岐輪と、一端に前記案内輪が接続されるとともに他端に前記分岐輪が接続される輪軸と、該輪軸の長さ寸法に対して対応する高さ寸法が小さく設定され該輪軸を支持する支持受と、該支持受と前記案内輪および前記分岐輪のそれぞれとの隙間の大きさを調整可能な調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明では、支持受と案内輪および分岐輪のそれぞれとの隙間の大きさを調整可能な調整手段を備えているため、案内輪および分岐輪の高さを容易にかつ確実に調整することができる。
また、案内輪および分岐輪の高さを調整しても、支持受の高さは変更されないため、支持受が設けられた案内バーの高さが変更されることがない。このため、案内バーと接続されるリンクや案内バーとリンクの接合部などの高さ調整を行う必要がない。そして、複数の案内輪および分岐輪の高さを異なる高さに調整しても、案内バーが斜めになることがないため、リンクや案内バーとリンクの接合部などに不要な力が作用することがなく耐久性を高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る軌道式車両では、前記調整手段は、前記支持受と前記案内輪との隙間および前記支持受と前記分岐輪との隙間に装着可能な複数の高さ調整シムを、前記支持受と前記案内輪との隙間および前記支持受と前記分岐輪との隙間のいずれか一方または両方に移動させて前記案内輪および前記分岐輪の高さを調整可能としてもよい。
このように構成されることにより、高さ調整シムを移動させることで案内輪及び分岐輪の高さを容易に調整することができる。
また、高さ調整シムは、複数備えられていることにより、支持受と案内輪との隙間に装着される個数と、支持受と分岐輪との隙間に装着される個数とを調整することで、案内輪及び分岐輪の高さを確実に調整することができる。
【0012】
また、本発明に係る軌道式車両では、前記輪軸は、前記支持受に着脱可能であって、前記高さ調整シムは、環状に形成されて前記輪軸が挿通されていることが好ましい。
このように構成されることにより、高さ調整シムは、輪軸が挿通されている状態で輪軸に沿って移動し輪軸から外れることがないため、高さ調整シムを個別に保管する必要がなく調整手段の管理を簡素化することができる。
【0013】
また、本発明に係る軌道式車両では、前記支持受は、前記輪軸が側方から挿入可能な凹部が形成され高さ寸法が前記輪軸の長さ寸法よりも高さ調整代分短く設定された支持受本体と、該支持受本体とボルトで接合されるとともに該支持受本体と面接触して前記凹部を塞ぐ蓋部と、を備え、前記調整手段は、前記支持受本体と前記蓋部との互いに接触する接触面に高さ方向へ所定の間隔をあけて配列され、互いに噛合う歯を有し、前記蓋部には、高さ方向へ延びて前記ボルトが挿通可能な長孔が形成されていてもよい。
このように構成されることにより、案内輪及び分岐輪を所望の高さに移動して、蓋部と軸受本体とを互いの歯をかみ合わせて接合させればよいため、案内輪及び分岐輪の高さを容易に調整することができる。
また、蓋部には、高さ方向へ延びてボルトが挿通可能な長孔が形成されていることにより、蓋部と支持受本体とは、異なる高さに配されても長孔の高さ寸法の範囲においてボルトで接合可能となる。
また、案内輪および分岐輪の高さ調整に、専用の部材や治具が必要ないため、調整手段の管理を簡素化することができる。
【0014】
また、本発明に係る軌道式車両では、前記調整手段は、前記輪軸の外周面に形成されたネジ部と、該ネジ部に螺合され前記支持受の上面と当接するように配されたナットと、を備え、前記支持受は、高さ寸法が前記輪軸の長さ寸法よりも高さ調整代および前記ナットの高さ分短く設定されていてもよい。
このように、軸部は、ナットが支持受の上面に当接するように設置され、軸部(ネジ部)に対するナットの高さを調整することができるため、軸部と支持受との高さを調整できて、案内輪及び分岐輪の高さを容易に調整することができる。
また、ネジ部に対してナットの高さを無段階で設定することができるため、案内輪および分岐輪の高さを精度良く調整することができる。
また、案内輪および分岐輪の高さ調整に、専用の部材や治具が必要ないため、調整手段の管理を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、案内輪と分岐輪の高さを容易にかつ確実に調整することができるとともに支持受が設けられた案内バーと接続されるリンクや案内バーとリンクの接合部などに影響を及ぼすことがないため、軌道式車両を良好な状態で走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態による軌道式車両の高さ調整手段の一例を示す図で(b)のA−A線断面図、(b)は(a)のB方向矢視図、(c)は(a)のC方向矢視図である。
【図2】(a)〜(c)は図1に示す調整手段による高さ調整方法を説明する図である。
【図3】(a)は本発明の第2実施形態による軌道式車両の高さ調整手段の一例を示す図で(b)のD−D線断面図、(b)は(a)のE方向矢視図、(c)は(a)のF方向矢視図、(d)は支持受本体側歯および蓋部側歯を説明する図である。
【図4】(a)〜(c)は図3に示す調整手段による高さ調整方法を説明する図である。
【図5】(a)は本発明の第3実施形態による軌道式車両の高さ調整手段の一例を示す図で(b)のG−G線断面図、(b)は(a)のH方向矢視図、(c)は(a)のI方向矢視図である。
【図6】(a)〜(c)は図5に示す調整手段による高さ調整方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態による軌道式車両について、図1および図2に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による軌道式車両1は、案内軌条R(図1(a)参照)に沿って走行する車両で、案内軌条に接触転動する案内輪2と、案内軌条Rの分岐箇所に設置される分岐軌条(不図示)に接触転動する分岐輪3と、上端部4aに案内輪2が接続されるとともに下端部4bに分岐輪3が接続される輪軸4と、該輪軸4を支持する支持受5と、案内輪2及び分岐輪3の高さを調整可能な調整手段6と、を備えている。
【0018】
案内輪2および分岐輪3は、互いに偏心して輪軸4に接続されている。
輪軸4は、案内輪2を案内輪軸2a(図1(b)、(c)参照)を中心に回転可能に軸受を介して支持しているとともに、分岐輪3を分岐輪軸3a(図1(b)、(c)参照)を中心に回転可能に軸受を介して支持している。
また、輪軸4は上端部4aに径方向外側に突出するフランジ11(図1(a)、(b)参照)を備えており、このフランジ11が案内輪2と軸受を介して当接している。
輪軸4は、鉛直方向に設けられていて、本実施形態では、1直線形状に形成されている。なお、輪軸4はクランク形状に形成されていてもよい。
【0019】
支持受5は、軌道式車両本体(不図示)に支持された案内バー12(図1(a)、(b)参照)の両端部12aにそれぞれ設けられていて、案内バー12の両端部12aに輪軸4を支持している。なお、軌道式車両1には、複数の案内バー12が設けられていて、複数の案内輪2および分岐輪3が設けられている。
また、支持受5は、案内バー12に固定され、輪軸4が側方から挿入可能な凹部13a(図1(a)、(b)参照)が形成された支持受本体13と、支持受本体13に着脱可能な蓋部14とを備えている。蓋部14は、支持受本体13に装着されることで、支持受本体13の凹部13を閉塞可能に構成されている。
【0020】
そして、支持受本体13の凹部13aに輪軸4を挿入し、支持受本体13に蓋部14を装着して、支持受本体13および蓋部14をボルト15で固定することで、輪軸4は、支持受本体13および蓋部14に当接した状態で挟まれるため、支持受5に固定される。
このとき、支持受本体13および蓋部14と輪軸4とは、互いに相対変位できないように構成されている。
【0021】
また、支持受5(支持受本体13および蓋部14)は、高さ寸法L1(図1(c)参照)が輪軸4の長さ寸法L2(図1(c)参照)より短く設定されている。ここで、輪軸4の長さ寸法L2とは、分岐輪3の上面からフランジ11の下面までの長さとする。
なお、支持受本体13と蓋部14は、同じ高さ寸法に形成され、各上端部および各下端部を揃えた状態でボルト15によって固定されている。
このため、輪軸4が支持受5(支持受本体13および蓋部14)に支持されると、支持受5と案内輪2との隙間、支持受5と分岐輪3との隙間のいずれかまたは両方に隙間が形成される。
ここで、支持受5と案内輪2との隙間を案内輪側隙間d1(図2(b)、(c)参照)とし、支持受5と分岐輪3との隙間を分岐輪側隙間d2(図2(a)、(b)参照)として以下説明する。
【0022】
調整手段6は、案内輪側隙間d1および分岐輪側隙間d2に装着可能な複数の高さ調整シム16を備えている。なお、図1および図2では、2つの高さ調整シム16が設けられているが、高さ調整シム16の個数は、任意に設定されてよい。
高さ調整シム16は、環状に形成されて、輪軸4が挿通されている。そして、高さ調整シム16は、輪軸4に沿って高さ方向へ移動可能に構成されている。
また、高さ調整シム16は、輪軸4が挿通されている孔部が、輪軸4のフランジ11の外径および分岐輪3の外径よりも小さく形成されており、輪軸4から外れないように構成されている。
これらの高さ調整シム16は、作業者が輪軸4の側方からアクセスして高さ方向へ移動させることができる。
【0023】
そして、これらの高さ調整シム16は、案内輪側隙間d1および分岐輪側隙間d2のいずれか一方または両方に配されて、案内輪側隙間d1および分岐輪側隙間d2の大きさを調整している。これにより、案内輪2および分岐輪3の高さが調整される。
このため、支持受5の高さ寸法L1と輪軸4の長さ寸法L2との差は、全ての高さ調整シム16の高さ寸法を合わせた値に相当している。
この、高さ調整シム16は、例えば、1mm〜2mmの高さ寸法に形成されている。
【0024】
次に、第1実施形態における案内輪2および分岐輪3の高さ調整方法について説明する。
ここでは、調整手段6によって案内輪2および分岐輪3を上方に移動させる方法について説明する。なお、案内輪2および分岐輪3の高さ調整を行う前には、図2(a)に示すように、高さ調整シム16は全て分岐輪側隙間d2に配されているものとする。
【0025】
まず、ボルト15を外して蓋部14を支持受本体13から外し、輪軸4とともに案内輪2および分岐輪3を支持受本体13から取り外す。
続いて、高さ調整シム16の一部または全部を輪軸4に沿って上方へ移動させる。このとき、移動させる高さ調整シム16の高さ寸法の合計の値が、案内輪2および分岐輪3を上側へ移動させる寸法と一致または近似するように、移動させる高さ調整シム16の個数を決定する。
【0026】
続いて、上方へ移動させた高さ調整シム16を上方に押さえた状態で、輪軸4を案内輪2および分岐輪3とともに支持受本体13の凹部13aへ挿入する。このとき、図2(b)に示すように、上方へ移動させた高さ調整シム16Aを案内輪側隙間d1に設置し、これ以外の高さ調整シム16Bを分岐輪側隙間d2に設置する。
なお、図2(c)に示すように、全ての高さ調整シム16を上方へ移動させた場合は、分岐輪側隙間d2ができないようになっている。
【0027】
続いて、蓋部14を支持受本体13に装着し、これらをボルト15(図1参照)で固定する。
これにより、案内輪2および分岐輪3が上方へ移動した状態で輪軸4が支持受5に固定される。
なお、案内輪2および分岐輪3を下方へ移動させるときには、案内輪側隙間d1に設置された高さ調整シム16を分岐輪側隙間d2に移動させればよい。
【0028】
次に、上述した軌道式車両1の効果について図面を用いて説明する。
第1実施形態による軌道式車両1によれば、輪軸4を案内輪2および分岐輪3とともに支持受5から外し、輪軸4が挿通された高さ調整シム16を高さ方向に移動させて、案内輪側隙間d1および分岐輪側隙間d2の高さ寸法を調整することで、案内輪2および分岐輪3の高さを調整することができるため、案内輪2および分岐輪3の高さ調整を容易にかつ確実に行うことができる。
【0029】
また、案内輪2および分岐輪3の高さを調整しても、支持受5の高さは変更されないため、支持受5が設けられた案内バー12の高さが変更されず、案内バー12と接続されるリンク(不図示)や案内バー12とリンクの接合部などの高さを調整する必要がなく、案内輪2および分岐輪3の高さ調整を容易に行うことができる。。
さらに、複数の案内輪2および分岐輪3を、異なる高さに調整しても、案内バー12が斜めになることがないため、案内バー12とリンクとを接合するボルトなどの接合部材が斜めに配置されることがない。これにより、リンクなどに不要な力が作用しないため、リンクなどの耐久性を低下させることを防ぐことができる。
また、高さ調整シム16は、環状に形成されて常に輪軸4に挿通されているため、高さ調整シム16を軌道式車両1と別に保管する必要がなく、管理を容易にすることができる。
【0030】
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0031】
(第2実施形態)
図3に示すように、第2実施例による軌道式車両21は、第1実施形態の高さ調整シム16を備える調整手段6(図1参照)に代わって、支持受本体13および蓋部14の当接面13b,14bにそれぞれ形成され互いにかみ合う複数の歯22,23(図3(d)参照)を有する調整手段24を備えている。また、蓋部14には、支持受本体13と蓋部14とを締結するボルト15が挿通されるボルト孔25(図3(c)参照)が形成され、このボルト孔25は、高さ方向に延びる長孔となっている。
ここで、支持受本体13に形成された歯を支持受本体側歯22とし、蓋部14に形成された歯を蓋部側歯23として以下説明する。
【0032】
図3(b)に示すように、本実施形態では、支持受本体13と蓋部14とは異なる高さ寸法に形成されていて、支持受本体13の高さ寸法L3は、輪軸4の長さ寸法L2より短く設定され、蓋部14の高さ寸法L4は、輪軸4の長さ寸法L2と同じ寸法となるように設定されている。なお、蓋部14の高さ寸法L4は、輪軸4の長さ寸法L2よりも短く設定されていてもよい。
図3(d)に示すように、支持受本体側歯22および蓋部側歯23は、略水平方向へ延びる形状で、側面視において先端側が角部となる向きの略三角形に形成されている。
複数の支持受本体側歯22および複数の蓋部側歯23は、同一形状に形成されていて、高さ方向に所定のピッチで配列されている。
本実施形態では、支持受本体側歯22および蓋部側歯23のピッチは、1〜2mmとしている。
【0033】
これにより、支持受本体13と蓋部14とが互いに異なる高さに配される場合でも、この高さにおいて支持受本体側歯22と蓋部側歯23とが噛み合うように構成されている。
そして、図3(c)に示すように、蓋部14のボルト孔25が高さ方向に延びる長孔となっているため、支持受本体13と蓋部14とが互いに異なる高さに配される場合でも、同一のボルト孔25を使用して支持受本体13と蓋部14とを固定することができる。
なお、支持受本体13と蓋部14とは、蓋部14のボルト孔25の高さ寸法の範囲において、互いに異なる高さで接合可能に構成されている。
【0034】
次に、第2実施形態における案内輪2および分岐輪3の高さ調整方法について説明する。
ここでは、調整手段24によって案内輪2および分岐輪3を上方に移動させる方法について説明する。なお、案内輪2および分岐輪3の高さ調整を行う前には、図4(a)に示すように、蓋部14は、支持受本体13に対して接合可能な最下位置に設置されている。
【0035】
まず、ボルト15を緩め、蓋部14を上方に移動させても支持受本体側歯22と蓋部側歯23とが干渉しない位置まで、蓋部14を支持受本体13から離間させる。このとき、ボルト15を支持受本体13および蓋部14から外さずに、支持受本体13のボルト孔(符号なし)および蓋部14のボルト孔25に挿通させた状態とする。
続いて、蓋部14を輪軸4、案内輪2および分岐輪3とともに上方へ移動させる。
【0036】
続いて、蓋部14を上昇させた高さで支持受本体13側へ移動させ、支持受本体側歯22と蓋部側歯23とを噛み合わせるように蓋部14と支持受本体13とを当接させる。
そして、図4(b)または図4(c)に示すようにボルト15で蓋部14と支持受本体13とを固定する。
ここで、図4(b)は、蓋部14が支持受本体13に対して接合可能な高さ範囲において中間の高さで固定された様子を示し、図4(c)では、蓋部14が支持受本体13に対して接合可能な高さ範囲において最上位置に固定された様子を示している。
このとき、蓋部14のボルト孔25が長孔に形成されていることにより、蓋部14が支持受本体13に対して異なる高さに設置されてもボルト15で蓋部14と支持受本体13とを固定することができる。
【0037】
第2実施形態による軌道式車両21によれば、蓋部14を支持受本体13に固定しているボルト15を緩め、蓋部14を輪軸4、案内輪2および分岐輪3とともに所望の高さに移動させて、支持受本体13と蓋部14とをボルト15で固定すればよいため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、ボルト15を外して蓋部14を支持受本体13から完全に外す必要がないため、案内輪2および分岐輪3の高さを容易に調整することができる。
また、支持受本体側歯22と蓋部側歯23とが噛み合っていて、支持受本体13と蓋部14とが高さ方向にずれることがないため、支持受5は案内輪2および分岐輪3を所望の高さに支持することができる。
また、案内輪2および分岐輪3を高さ調整するための特別な部品や治具が不要であるため、調整手段24の管理を簡素化することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態による軌道式車両31は、第1実施形態の高さ調整シム16を備える調整手段6(図1参照)に代わって、輪軸4の上部側の外周面にネジ部32(図5(a)、(c)参照)と、このネジ部32に螺合されて支持受5と案内輪2との間に配されるナット33とを有する調整手段34を備えている。
このナット33は、ネジ部32に対して所望の高さに設置することが可能に構成されている。そして、ナット33が取り付けられた輪軸4は、ナット33の下面33aが支持受5の上面5aと当接するように支持受5に支持されている。
【0039】
本実施形態においては、支持受本体13および蓋部14が、ネジ部32と当接しないように、支持受本体13および蓋部14とネジ部32との間に隙間35(図5(c)参照)が形成されている。なお、輪軸4のネジ部32より下側は、支持受本体13および蓋部14と当接し、支持受本体13および蓋部14に挟まれることによって固定されている。
【0040】
次に、第3実施形態における案内輪2および分岐輪3の高さ調整方法について説明する。
ここでは、調整手段34によって案内輪2および分岐輪3を上方に移動させる方法について説明する。なお、案内輪2および分岐輪3の高さ調整を行う前には、図6(a)に示すように、ナット33がネジ部32に対して螺合可能な最上位置に取り付けられている。
【0041】
まず、ボルト15を緩めて、蓋部14および支持受本体13による輪軸4の固定を解除する。これにより、輪軸4が高さ方向に移動可能となる。このとき、ボルト15を支持受本体13および蓋部14から外さずに、支持受本体13のボルト孔(符号なし)および蓋部14のボルト孔(符号なし)に挿通させた状態とする。
【0042】
続いて、ナット33を回して、下方へ移動させる。これにより、ナット33と案内輪2との間隔が、ナット33を移動させる前よりも長くなる。
続いて、図6(a)または図6(b)に示すように、ナット33の下面33aを支持受本体13の上面5aと当接させ、支持受本体13に蓋部14を取り付けてボルト15で固定する。このとき、支持受本体13および蓋部14で輪軸4を固定する。
そして、ナット33と案内輪2との間隔が長くなることにより、案内輪2および分岐輪3が調整前よりも上方へ調整されて設置される。
【0043】
第3実施形態による軌道式車両31によれば、蓋部14を支持受本体13に固定するボルト15を緩め、ナット33回転させて高さ方向へ移動させ、所望の位置で蓋部14と支持受本体13とを固定すればよいため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、ナット33を回転させて高さを調整するため、案内輪2および分岐輪3の高さ調整を無段階で行うことができる。
また、ボルト15を外して蓋部14を支持受本体13から完全に外す必要がないため、案内輪2および分岐輪3の高さを容易に調整することができる。
また、案内輪2および分岐輪3を高さ調整するための特別な部品や治具が不要であるため、調整手段24の管理を簡素化することができる。
【0044】
以上、本発明による軌道式車両の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、輪軸4の上端部4aに案内輪2が接続されて、下端部4bに分岐輪3が接続されているが、輪軸4の上端部4aに分岐輪3が接続されて、下端部4bに案内輪2が接続されていてもよい。
また、上述した実施形態では、案内輪2と分岐輪3とが偏心しているが、偏心していなくてもよい。
【0045】
また、上述した第1実施形態では、高さ調整シム16は環状に形成されているが、平面視においてU字状に形成されていてもよい。このように、高さ調整シム16は、U字状に形成されることにより、蓋部14を支持受本体13から完全に外さなくても、ボルト15を緩めるだけで、容易に移動することができる。
また、上述した第2実施形態では、支持受本体側歯22および蓋部側歯23は、側面視において三角形に形成されているが、支持受本体側歯22および蓋部側歯23は、互いに噛み合うように形成されていればよいため、同一の形状でなくてもよく、また側面視において略三角形以外の形状に形成されていてもよい。
また、上述した第3実施形態では、ナット33を回転させてネジ部32に沿って移動させているが、例えば、案内輪2と分岐輪3とが偏心していない場合などでは、輪軸4(ネジ部32)を回転させることで、ネジ部32に対するナット33の位置を調整することができる。
【符号の説明】
【0046】
1,21,31 軌道式車両
2 案内輪
3 分岐輪
4 輪軸
5 支持受
6,24,34 調整手段
13 支持受本体
14 蓋部
15 ボルト
16 高さ調整シム
22 支持受本体側歯
23 蓋部側歯
25 ボルト孔(長孔)
32 ネジ部
33 ナット
d1 案内輪側隙間
d2 分岐輪側隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内軌条に沿って走行する軌道式車両において、
前記案内軌条に接触転動する案内輪と、
前記案内軌条の分岐箇所に設置される分岐軌条に接触転動する分岐輪と、
一端に前記案内輪が接続されるとともに他端に前記分岐輪が接続される輪軸と、
該輪軸の長さ寸法に対して対応する高さ寸法が小さく設定され該輪軸を支持する支持受と、
該支持受と前記案内輪および前記分岐輪のそれぞれとの隙間の大きさを調整可能な調整手段と、を備えることを特徴とする軌道式車両。
【請求項2】
前記調整手段は、前記支持受と前記案内輪との隙間および前記支持受と前記分岐輪との隙間に装着可能な複数の高さ調整シムを、前記支持受と前記案内輪との隙間および前記支持受と前記分岐輪との隙間のいずれか一方または両方に移動させて前記案内輪および前記分岐輪の高さを調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の軌道式車両。
【請求項3】
前記輪軸は、前記支持受に着脱可能であって、前記高さ調整シムは、環状に形成されて前記輪軸が挿通されていることを特徴とする請求項2に記載の軌道式車両。
【請求項4】
前記支持受は、前記輪軸が側方から挿入可能な凹部が形成され高さ寸法が前記輪軸の長さ寸法よりも高さ調整代分短く設定された支持受本体と、該支持受本体とボルトで接合されるとともに該支持受本体と面接触して前記凹部を塞ぐ蓋部と、を備え、
前記調整手段は、前記支持受本体と前記蓋部との互いに接触する接触面に高さ方向へ所定の間隔をあけて配列され、互いに噛合う歯を有し、
前記蓋部には、高さ方向へ延びて前記ボルトが挿通可能な長孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軌道式車両。
【請求項5】
前記調整手段は、前記輪軸の外周面に形成されたネジ部と、該ネジ部に螺合され前記支持受の上面と当接するように配されたナットと、を備え、
前記支持受は、高さ寸法が前記輪軸の長さ寸法よりも高さ調整代および前記ナットの高さ分短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の軌道式車両。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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