説明

軒樋内吊金具装置

【課題】
軒先が軒樋で隠れるように取り付けて意匠的に優れ、多様な屋根勾配であっても軒樋を水平に維持することができる軒樋内吊金具装置を提供する。。
【解決手段】
軒樋内吊金具装置100は、軒樋Bの前後端の耳部35を内側から係止する内吊金具本体3と、前記内吊金具本体3を建物の壁面Aに固定支持するための支持機構7とを備え、支持機構7は、建物の壁面3に固定される固定部1と、前記固定部1から前方に突出して前記内吊金具本体3を支持する支持アーム2と、前記支持アーム2の中央から前端にかけて前記内吊金具本体3を下側から抱え込むようにして前後方向に出入り自在に保持する断面コ字形のブラケット4と、前記内吊金具本体3を前後方向に出入り自在に移動させる移動機構8と、固定部に対する支持アームの張り出し角度を調整する調整機構9と、前記移動機構による移動を阻止するロック機構5とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒先が軒樋で隠れるように取り付けて意匠的に優れた軒樋内吊金具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軒樋内吊金具装置を固定する壁面から軒先までの距離は、家屋によって異なる。そのため、吊設した軒樋で確実に軒先を隠すように配置するためには、壁面から軒先までの距離に応じて複数の軒樋内吊金具装置を用意する必要があった。
【0003】
特許文献1では、吊り具本体の横面と固定具の支持腕の横面とを当接し、横棒を長孔に挿入し、横棒の先端の係止片を長孔の側縁に係止させて、吊り具本体を支持腕に沿って移動可能に取り付け、吊り具本体か支持腕のどちらか一方の上面に設けられたラックと、他方に取り付けられたピニオンとを噛み合わせ、ピニオンを適宜位置に固定するストッパを設け、前記吊り具本体を前後方向に出入り自在に移動させて、任意の位置で固定するようにした軒樋内吊金具装置が開示されている。
【0004】
また、家屋の軒先に軒樋を吊設する軒樋内吊金具装置は、傾斜勾配に応じて複数用意するか、あるいは、作業者が、現場で、傾斜勾配に応じた角度に軒樋内吊金具装置を折り曲げるといった加工作業を施す必要があった。
【0005】
特許文献2では、吊り具本体と、前記吊り具本体を軒先に固定する固定部材とからなり、前記吊り具本体の後面側の上部と前記固定部材の前面側の上部とを軸着し、且つ、吊り具本体の後面側の下部を固定部材の前面側の下部に形成した複数の係止個所を備えた係止部に係着し、軒先勾配に応じて角度調整をするようにした軒樋内吊金具装置が開示されている。
【特許文献1】特開平08−165766号公報
【特許文献2】特開平09−144249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、一つのピニオンギヤで移動可能に軒樋を支持しているため、それを確実に移動させるために長穴や他のガイドが必要となり、部材点数や加工数が多くなる問題がある。
【0007】
また、特許文献2では、係止部の角度で取り付け角度が決められてしまうため、特定角度の屋根勾配にしか対応できない問題がある。仮に、係止部の数を増やして対応可能な角度を多くしたとしても、樋吊り具自体が大きくなってしまうので、現場での作業性に問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、軒先が軒樋で隠れるように取り付けて意匠的に優れた軒樋内吊金具装置の提供を目的とする。さらに加えて、本発明は、多様な屋根勾配であっても軒樋を水平に維持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、軒樋の前後端の耳部を内側から係止する内吊金具本体と、前記内吊金具本体を建物の壁面に固定支持するための支持機構とを備え、前記支持機構は、建物の壁面に固定される固定部と、前記固定部から前方に突出して前記内吊金具本体を支持する支持アームと、前記支持アームの中央から前端にかけて前記内吊金具本体を下側から抱え込むようにして前後方向に出入り自在に保持する断面コ字形のブラケットと、前記内吊金具本体を前後方向に出入り自在に移動させる移動機構と、前記移動機構による移動を阻止するロック機構とが設けられ、前記移動機構は、前記内吊金具本体の前後方向に形成されたラックと、前記ラックに噛合するように前記ブラケットの前後方向に間隔をおいて配置され、前記ブラケットに回転自在に軸支された複数のピニオンギヤとから構成され、前記ロック機構は、前記複数のピニオンギヤのうち、少なくともいずれかのピニオンギヤの軸部に押し付けて摩擦力により前記軸部の回転を阻止し、かつ、前記軸部への押し付ける力の解除により前記軸部の回転を許容するロック部が設けられたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、内吊金具本体は、ブラケットに抱き込むように支持されているため、内吊金具本体をスライドする際に、左右方向に振れることなく、前後方向にスムーズにスライドすることができる。また、内吊金具本体は、下側のブラケットと上側の前後のピニオンギヤとで挟み込んで支持されるため、ピニオンギヤからの駆動力が確実に伝達される。
【0011】
内吊金具本体は、前記内吊金具本体の前後方向に形成されたラックと、前記ラックに噛合するように前記ブラケットの前後方向に間隔をおいて配置され、前記ブラケットに回転自在に軸支された複数のピニオンギヤとから構成されたピニオンラック機構によって、壁面に対して前後方向に移動可能とされる。すなわち、内吊金具本体を前後方向に移動させることで、内吊金具本体に吊り下げられる軒樋が軒先の方に移動することができ、延いては軒樋を軒先が隠れる位置に移動することができる。これにより、多様な壁面から軒先までの距離に対しても、同一の構成部材で容易に軒先を軒樋で隠すことができる。
【0012】
ここで、壁面とは、建物の壁あるいは屋根といった建物の外郭を構成する部材の表面である。
【0013】
ロック機構のロック部がピニオンギヤの回転を阻止することで、内吊金具本体が移動しないようにする。具体的な構成としては、ブラケットに対して回転自在に支持されるピニオンギヤの軸部に対して、ロック部が押圧力をかける。これにより、ロック部と軸部との摩擦力により軸部の回転を規制し、内吊金具本体の移動、延いては軒樋の移動を規制する。
【0014】
これにより、ロック機構は、内吊金具本体の移動を固定するときに、内吊金具本体自体をブラケットにネジ止めするよりも容易にロック操作が可能となり、作業性が向上する。
【0015】
ロック機構の具体的な構成としては、リンク式や回転式のトグルロック機構が挙げられる。リンク式の場合、ロック機構は、前側ピニオンギヤの軸部に連結された第1リンクと、後側ピニオンギヤの軸部に連結された第2リンクと、両リンクの内端部を回転自在に連結する連結軸と、前記両リンクを軸部周りの回転操作する操作部とを備える。前記両リンクを前記軸部周りに回転させ、前記リンクと前記軸部とがそれぞれ連結した軸部嵌合部間の距離を調整することにより、前記軸部嵌合部であるロック部と前記軸部との摩擦力により、少なくとも片側の軸部の回転を阻止する。
【0016】
回転式の場合、ロック機構は、ブラケットに回転自在に支持された回転板と、前記回転板を回転操作するように前記回転板に形成された操作部と、前記回転板のピニオンギヤの軸部側への回転により前記軸部に押し付けられて係合する切欠部とを備える。前記回転板を回転させて前記切欠部を前記軸部に当接させることにより、前記切欠部であるロック部と前記軸部との摩擦力により、少なくとも片側の軸部の回転を阻止する。
【0017】
上記構成によると、作業者が、操作部を操作することで、内吊金具本体の移動をロックすることができる。すなわち、工具やビス等を使用せずに、内吊金具本体、延いては、軒樋を所望する位置に固定することができる。また、ロック機構は、ブラケットに備えつけられるため、紛失することを防止できる。
【0018】
ピニオンギヤの軸部が、ブラケットの側面から外側に突出され、突出された軸部に前記ロック部が押し付け・解除自在に配置される。この構成によると、例えば、軒樋を取り付けた後であっても、軒樋が邪魔とならずに操作することができる。すなわち、作業が容易になる。
【0019】
次に、支持機構は、固定部に対する支持アームの張り出し角度を調整する調整機構が設けられる。この調整機構は、前記固定部に形成された断面C字形の軸受け部と、前記支持アームの後端に形成され前記軸受け部に回転自在に嵌合する回転軸部と、前記支持アームを任意の張り出し角度で前記回転軸部を前記軸受け部に固定する固定手段とを備える。
【0020】
支持アームは、その後端に形成された回転軸部が前記軸受け部に回転自在に嵌合させることで、支持アームの張り出し角度を調整する。固定手段は、所望する張り出し角度に調整されたときに、軸受け部に対して回転軸部が回転しないように固定する。内吊金具本体は、ブラケットに抱き込まれるようにして支持アームに取り付けられる。
【0021】
上記構成によると、軒樋は、支持アームの回転軸部を回転させることで水平に維持される。すなわち、固定部に対して吊り金具を回転させることで、内吊金具本体に吊り下げられる軒樋が水平に維持できる。これにより、多様な屋根勾配に対しても、同一の構成部材で容易に軒樋を水平にさせることができる。
【0022】
なお、固定手段としては、軸受け部と回転軸部とをネジで共締めする、軸受け部と回転軸部を溶接する手段、あるいは、軸受け部と回転軸部を接着するといった手段が挙げられる。
【0023】
軒樋内吊金具装置を構成するすべての部材が、同一の材料から形成されたことを特徴とする。この構成によると、主要部分すべてを同一の部材で形成される。例えば、アルミ押出し成型品を使用することで、軽量でかつ高強度に形成することができる。また、固定手段としてアルミのネジやボルト類を使用することで、異種金属が接触したときの電食腐食を防止することができる。さらに、すべての部材をアルミで構成した場合は、リサイクル性能も非常に高い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、内吊金具本体を前後方向に移動させることで、多様な壁面から軒先までの距離に対しても、軒樋で軒先を隠せる位置に配置させることができる。また、支持アーム後端の回転軸部が軸受け部に対して回転可能に組みつけられるので、傾斜勾配に応じて支持アームの張り出し角度を調整することで、軒樋を水平に維持することができる。
【0025】
これにより、複数種の軒樋内吊金具装置を用意することなく、一つの軒樋内吊金具装置で多種多様な家屋に対して軒樋を所望する位置で水平に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態の軒樋内吊金具装置100は、異種金属同士による電位差により発生する電食を防止するために、これを構成するすべての部材が同一の部材で形成される。本実施形態では、部材の一例として、アルミの押し出し成型品によって形成された場合で説明する。
【0027】
以下に、第1実施形態の軒樋内吊金具装置100の具体的な構成を詳細に説明する。なお、説明の便宜上、壁面Aから離れる方向を前方向とし、壁面Aに近づく方向を後方向とする。
【0028】
軒樋内吊金具装置100は、屋根の軒先を極力隠れるようにして軒樋Bが建物の意匠となるように、軒樋内吊金具装置100自体の高さを低くなるように形成される。軒樋内吊金具装置100は、図1および図2に示すように、軒樋Bの前後端の耳部35を内側から係止する内吊金具本体3と、前記内吊金具本体3を建物の壁面Aに固定支持するための支持機構7とを備える。
【0029】
支持機構7は、建物の壁面3に固定される固定部1と、前記固定部1から前方に突出して前記内吊金具本体3を支持する支持アーム2と、前記支持アーム2の中央から前端にかけて前記内吊金具本体3を下側から抱え込むようにして前後方向に出入り自在に保持する断面コ字形のブラケット4と、前記内吊金具本体3を前後方向に出入り自在に移動させる移動機構8と、固定部に対する支持アーム2の張り出し角度を調整する調整機構9と、前記移動機構8による移動を阻止するロック機構5とが設けられる。
【0030】
固定部1は、アンカ等によって壁面Aに取り付けられる平板状の基台11と、後述する支持アーム2の後端に形成された回転軸部21を回転自在に把持する軸受け部12とを有する。基台11と軸受け部12は一体的に形成される。
【0031】
基台11は、壁面Aに向かって左右方向に長い平板形状とされ、その左右両端近傍にアンカが挿通するための貫通穴14が複数形成される。
【0032】
軸受け部12は、図3に示すように、基台11の上端側で前方向に突出した断面C字形に形成される。軸受け部12の内周面には、後述する支持アーム2の回転軸部21の外周面に形成された凹部22と係合する2つの凸部13が形成される。前記凸部13は、内周面の上側と下側、具体的には、軸受け部12の中心を通る水平線に対して上側壁面と下側壁面それぞれに形成される。
【0033】
支持アーム2は、図4(a)に示すように、全体的に高さが低く形成される。詳しくは、軒樋内吊金具装置100を設置したときに、支持アーム2と屋根が接触しないように、後端から前端にいくにつれて高さが低くなるくさび形で、支持アーム2の上面がゆるやかな湾曲状に形成される。
【0034】
支持アーム2の前側下端と中央部分の下端には、ブラケット4を支持アーム2に取り付けるためのピン43の挿通用の筒部23が形成される。支持アーム2の後端には、軸受け部12に回転自在に嵌合する円筒状の回転軸部21が形成される。回転軸部21は、軸方向が左右方向とされる。
【0035】
回転軸部21の外周面には、図4(b)に示すように、軸受け部12の内周面の凸部13と係合する複数の凹部22が形成される。凹部22は、回転軸部21の中心を通る水平線から上側と下側にそれぞれ形成される。具体的には、凹部22は、中心を通る垂線から後方向と、中心を通る水平線から下方向それぞれが対となるように所定角度に形成される。いずれかの凹部22と凸部13とが係合することで、回転軸部21の回転を規制することができる上、壁面固定部1に対する支持アーム2の張り出し角度を容易に所定角度に設定することができる。
【0036】
回転軸部21は、固定手段91によって軸受け部12に固定される。固定手段91としては、例えば、アルミのネジ91を保持部12の上方および下方からねじ込み、回転軸部21を固定する。
【0037】
調整機構9は、固定部1の軸受け部12と、支持アーム2の後端の回転軸部21と、軸受け部12と回転軸部21とを固定する固定手段91とから構成される。
【0038】
内吊金具本体3は、前後方向に長い平板形状の前後両端に、軒樋Bの壁面に形成される断面コ字形の耳部35を内側から係止して前記軒樋Bを吊設する軒樋吊り部32,33を備える。
【0039】
内吊金具本体3は、その長さが、軒樋Bの前後幅と同等の長さとされ、その上面側の前端から後端にかけてラック34が形成される。
【0040】
軒樋吊り部32,33は、内吊金具本体3の前後両端からそれぞれ立ち上がって形成される。各軒樋吊り部32,33は、耳部35に係合して、軒樋Bを内側から吊設するように、その中央部分が内吊金具本体3の外側に膨らむように屈曲し、その上端が内吊金具本体3の中央に向かって折れ曲がって形成される。
【0041】
なお、軒樋吊り部32,33の形状はこの限りではなく、軒樋Bの側面の耳部35を内側から係止できる形状であれば良い。例えば、図5に示すように、軒樋B1が小さい場合は、屋根を流れる雨水を確実に軒樋に流れるようにするために、軒樋B1の前側の壁面が後側の壁面よりも高く形成される。そこで、前側の軒樋吊り部32の方が後側の軒樋吊り部33よりも高く形成される。
【0042】
また、図6に示すように、軒樋B2が大きい場合は、軒樋B2の前側の壁面と後側の壁面とが同等の高さに形成される。そこで、前側の軒樋吊り部32と後側の軒樋吊り部33は同等の高さに形成される。
【0043】
ブラケット4は、平板の左右両側に側壁が立ち上がった断面コ字形に形成される。ブラケット4は、その幅が、内吊金具本体3が左右に振れることなく、前後方向にスムーズにスライドできるように、内吊金具本体3の幅より若干広く形成される。ブラケット4は、側壁の上端側で支持アーム2を左右から挟み込むようにしてピン43を介して組み付けられる。
【0044】
ピン43の一端側は、ピン43が抜け落ちないようにするためにかしめられる。なお、ピン43の他端側は、ブラケット4を取り付け後にかしめられる。
【0045】
ブラケット4は、壁面Aに対して前後方向に移動可能に内吊金具本体3を抱え込むように支持する。具体的には、ブラケット4は、下側の平板の上に内吊金具本体3を載せ、左右の側壁で挟むようにして支持する。
【0046】
ブラケット4には、内吊金具本体3が前後方向に移動するように、ラック部31のラック34と噛み合う2つのピニオンギヤ41,44が前後に設けられる。
【0047】
ピニオンギヤ41,44には、その中心に軸部であるシャフト42,45が圧入される。シャフト42,45は、ブラケット4に対して回転自在に支持され、両端がブラケット4の側面から外側に突出される。シャフト42,45の一端側は、シャフト42,45が抜け落ちないようにするためにかしめられる。なお、シャフト42,45の他端側は、ピニオンギヤ42を取り付け後にかしめられる。
【0048】
シャフト42,45の表面には、図7および図8に示すように、シャフト42,45が空回りしないようにするために、ピニオンギヤ41,44の内周面に形成される凸部46と噛み合う凹部47が複数形成される。凹部47は、シャフト42,45の中心線の延長線上にそれぞれが位置するように形成される。
【0049】
なお、本実施形態では、シャフト42,45の表面に形成された凹部47は4つとしているが、特にこの限りではなく、1つでも良い。すなわち、シャフト42,45の凹部47とピニオンギヤ41,44の凸部46とが噛み合い、ピニオンギヤ41,44が空回りしないようにできる構成であればよい。
【0050】
移動機構8は、内吊金具本体3に形成されたラック34と、ブラケット4に軸支されるピニオンギヤ42,44とから構成される。
【0051】
ブラケット4には、所定の位置で前記内吊金具本体3を固定するロック機構5がブラケット4の側壁の外側側面に備えられる。ロック機構5は、アーム状の2本のリンク51,52を有するトグルロック機構とされる。ここで、トグルとは、くの字に曲がった2本のリンク51,52をくの字の頂点から垂直方向に押すと、くの字が伸びていく機構である。
【0052】
具体的な構成として、ロック機構5は、前側に位置する前側ピニオンギヤ41のシャフト42に取り付けられる第1リンク51と、後側に位置する後側ピニオンギヤ44のシャフト45に取り付けられる第2リンク52と、両リンク51,52の内端部を回転自在に連結する連結軸56と、前記両リンクを軸部周りの回転操作する操作部53とを備える。
【0053】
第1リンク51は、前側端に前後方向に長い長穴54が形成される。前記長穴54にシャフト42が嵌合される。第2リンク52は、後側端に貫通穴55が形成される。前記貫通穴55にシャフト45が嵌合される。
【0054】
操作部53は、連結軸56の上側に備えられる。操作部53は、第1リンク51の後側端の上辺から外側に突出した平板状に形成される。
【0055】
操作部53をくの字状の頂点から垂直方向に押下げすると、2本のリンク51,52は、くの字に曲がった状態から一直線状態になる。詳しくは、作業者が操作部53を押下げ、連結軸56が他の支点を結んだ直線、詳しくは、前側のシャフト42と後側のシャフト42の中心点を結んだ直線と同等もしくはそれより下側に位置すると、連結された2本のリンク51,52は、前後方向に突っ張り、前記シャフト42を前後方向に押圧力をかける。これにより、シャフト42は第1リンク51との摩擦力によって回転が規制される。すなわち、前側ピニオンギヤ41の回転が規制されるので、内吊金具本体3の前後方向の移動が規制できる。
【0056】
操作部53を一直線状態の下死点から垂直方向に押上げすると、2本のリンク51,52は、一直線状態からくの字に曲がった状態になる。詳しくは、作業者が操作部53を押上げ、連結軸56が前記直線より上側に位置すると、くの字の角度が大きくなり、シャフト42への押圧力がなくなる。これにより、シャフト42は回転が可能となる。すなわち、前側ピニオンギヤ41の回転が可能なので、内吊金具本体3の前後方向の移動が許可される。
【0057】
次に、図6(a)および(b)を用いて、軒樋内吊金具装置100の取り付け動作、および、内吊金具本体4の移動機構8の動作を説明する。なお、説明の便宜上、ロック機構5は、2本のアーム51,52を有するトグルロック機構とされ、軒樋B2が大きい場合で説明する。
【0058】
軒樋内吊金具装置100は、工場出荷時において、支持アーム2と内吊金具本体3とブラケット4とロック機構5とを取り付けた状態で出荷する。このとき、ロック機構5は、内吊金具本体3が移動しないようにロックをかけた状態とする。作業者は、取り付けする場所で固定部1に支持アーム2を組み付ける。
【0059】
作業者は、軒先の壁面Aに固定部1をビスを打ちつけて固定する。次に、支持アーム2を壁面Aに取り付けた固定部1の軸受け部12に取り付ける。このとき、支持アーム2の下面が水平となるように、壁面Aの傾斜角度に応じて支持アーム2の取り付け角度を調整する。
【0060】
例えば、図6(a)に示すように、壁面Aが傾斜している場合、軸受け部12に対して回転軸部21を回転させ、内吊金具本体3が水平となる位置に合わせる。また、図6(b)に示すように、壁面Aが傾斜していない場合、固定部1に対して支持アーム2が直交する位置に合わせる。
【0061】
このとき、軸受け部12の内周面の凸部13と支持アーム2の回転軸部21の外周面の凹部22とを係合させ、支持アーム2が自重で回転するのを防止する。また、凹部22が決められた角度に形成されるため、所望する角度に形成された凹部22に凸部13を係合させることで、容易に角度を調整できる。
【0062】
支持アーム2の取り付け角度が決定したら、作業者は、アルミのネジ91を保持部12の上方および下方からねじ込み、支持アーム2の回転を規制する。
【0063】
次に、作業者は、内吊金具本体3に軒樋B2を取り付ける。作業者は、軒樋吊り部32,33を軒樋B2の耳部35内をスライドさせて、軒樋吊り部32,33が耳部35を係止するように、軒樋B2を側方から内吊金具本体3に差し込む。
【0064】
軒樋B2が内吊金具本体3に取り付けられると、作業者は、ロック機構5のロックを解除する。そして、内吊金具本体3に取り付けた軒樋B2によって軒先が隠れる位置に内吊金具本体3を移動させる。所定の位置に軒樋B2がセットできたときに、ロック機構5の操作部53を押下げ、ロックをする。これにより、内吊金具本体3の移動が規制される。
【0065】
これにより、内吊金具本体3が移動自在に支持されるので、多様な壁面Aから軒先までの距離に対しても、軒樋Bを軒先に位置させることが容易にできる。
【0066】
また、作業者は、軒先に軒樋Bを取り付ける際、支持アーム2が固定部1に対して回転可能に組みつけることができるので、傾斜勾配に応じて支持アーム2を固定部1に対して回転させて、軒樋Bを水平することが容易にできる。
【0067】
また、ブラケット4と支持アーム2によって、移動機構8を覆うように組み付けられるので、移動機構8に落ち葉等が入り込みにくいようになっている。すなわち、ブラケット4と支持アーム2は、移動機構8のカバーの役割をする。
【0068】
また、部材をアルミの押し出しによって形成するので、複雑な形状であっても容易に作成することができる。例えば、各部材に空洞部分等を設けて軽量化することができる。
〔第2実施形態〕
図9に、本発明の第2実施形態を示す。図9に示すように、この第2実施形態は、第1実施形態に係る軒樋内吊金具装置1の移動機構8による移動を阻止するロック機構6に関する手段が異なる。すなわち、第1実施形態では、リンク式のトグルロック機構5によって移動機構8の移動を阻止しているが、第2実施形態は、回転式のロック機構6によって移動機構8の移動を阻止している。
【0069】
以下、第2実施形態について具体的に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の機能部品については、同一の符号を付して、その説明を省略し、重要なロック機構6についてのみ記載する。
【0070】
ロック機構6は、ブラケット4に回転可能に支持される回転板61を回転させ、回転中心からの距離が異なる端部がシャフト45に当たり、さらに回転板61が回転することでシャフト45に対して徐々に押圧力を加えていく。そして、回転板61は、シャフト45との摩擦力によって回転を規制するものである。
【0071】
具体的な構成としては、回転板61は、平板状とされ、ブラケット4を支持アーム2に取り付けるためのピン43に軸支される。回転板61は、その下方前側端に切欠部65が形成される。切欠部65は、その上辺と回転中心までの長さが、回転中心からシャフト45までの長さよりも長くなるように形成される。
【0072】
切欠部65の前側端63は、回転板61を回転させたときに、シャフト45との摩擦を少なくするように、面取りが施される。切欠部65の後側端64は、シャフト45に当接することで、回転板61が回転しすぎるのを防止するストッパとなる。
【0073】
回転板61には、その回転板61を前後方向に回転させるための操作部62が備えられる。操作部62は、回転板61の上辺から外側に突出した平板状に形成される。
【0074】
作業者が操作部62を押下げると、回転板61が、その前側端がシャフト45の表面に沿って回転する。そして、シャフト45が切欠部65の後側端64に当接するまで回転板61を回転させると、回転板61がシャフト45を下方向に押圧力をかける。これにより、シャフト42は、切欠部65の上辺との摩擦力によって回転が規制される。すなわち、ピニオンギヤ44の回転が規制されるので、内吊金具本体3の移動が規制される。
【0075】
作業者が操作部62を押上げ、回転板61を後方に回転させると、シャフト45への押圧力がなくなる。これにより、シャフト45は回転が可能となる。すなわち、ピニオンギヤ44の回転が可能なので、内吊金具本体3の移動が許可される。
【0076】
これにより、部材点数を少なくしてシャフト45の回転、すなわち、移動機構8の移動を阻止することができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。例えば、本実施形態では、取り付けする場所において、支持アームの取り付け角度を調整しているが、あらかじめ工場で所定角度に取り付けて出荷しても良い。この場合、アルミのリベットではなく溶接で支持アームと固定部とを固定することができる。すなわち、リベットで固定するよりもしっかり固定することができる。
【0078】
本実施形態では、ブラケットを支持アームに取り付ける際にピンを用いているが、特にこの限りではなく、部材点数を少なくするために、ギヤに用いられるシャフトを用いても良い。
【0079】
本実施形態では、アルミの押し出し成型品で軒樋内吊金具装置の部材を形成しているが特にこの限りではなく、その他の金属で形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る第1実施形態の軒樋内吊金具装置の背面斜視図
【図2】軒樋内吊金具装置の正面斜視断面図
【図3】固定部の側面図
【図4】支持アームの側面図であって、(a)が全体図、(b)が後端詳細図
【図5】小さい軒樋を備えた場合の軒樋内吊金具装置の側面図であって、(a)が傾斜のある壁面に取り付けた場合を示す図、(b)が傾斜のない壁面に取り付けた場合を示す図
【図6】大きい軒樋を備えた場合の軒樋内吊金具装置の側面図であって、(a)が傾斜のある壁面に取り付けた場合を示す図、(b)が傾斜のない壁面に取り付けた場合を示す図
【図7】ピニオンギヤの側面図
【図8】シャフトの側面図
【図9】第2実施形態のロック機構を備えた軒樋内吊金具装置の正面斜視図
【符号の説明】
【0081】
1 固定部
11 基台
12 軸受け部
13 凸部
14 貫通穴
2 吊り金具
21 後端
22 凹部
23 筒部
3 内吊金具本体
32 前側軒樋吊り部
33 後側軒樋吊り部
34 ラック
35 耳部
4 ブラケット
41 前側ピニオギヤ
42 シャフト
43 ピン
44 後側ピニオギヤ
45 シャフト
46 凸部
47 凹部
5 ロック機構
51 第1リンク
52 第2リンク
53 操作部
54 長穴
55 貫通孔
56 連結軸
6 ロック機構
61 回転板
62 操作部
63 前側端
64 後側端
65 切欠部
7 支持機構
8 移動機構
9 調整機構
91 固定手段
100 軒樋内吊金具装置
A 壁面
B 軒樋
B1 小さい軒樋
B2 大きい軒樋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋の前後端の耳部を内側から係止する内吊金具本体と、前記内吊金具本体を建物の壁面に固定支持するための支持機構とを備え、
前記支持機構は、建物の壁面に固定される固定部と、前記固定部から前方に突出して前記内吊金具本体を支持する支持アームと、前記支持アームの中央から前端にかけて前記内吊金具本体を下側から抱え込むようにして前後方向に出入り自在に保持する断面コ字形のブラケットと、前記内吊金具本体を前後方向に出入り自在に移動させる移動機構と、前記移動機構による移動を阻止するロック機構とが設けられ、
前記移動機構は、前記内吊金具本体の前後方向に形成されたラックと、前記ラックに噛合するように前記ブラケットの前後方向に間隔をおいて配置され、前記ブラケットに回転自在に軸支された複数のピニオンギヤとから構成され、
前記ロック機構は、前記複数のピニオンギヤのうち、少なくともいずれかのピニオンギヤの軸部に押し付けて摩擦力により前記軸部の回転を阻止し、かつ、前記軸部への押し付ける力の解除により前記軸部の回転を許容するロック部が設けられたことを特徴とする軒樋内吊金具装置。
【請求項2】
支持機構は、固定部に対する支持アームの張り出し角度を調整する調整機構を有し、
前記調整機構は、前記固定部に形成された断面C字形の軸受け部と、前記支持アームの後端に形成され前記軸受け部に回転自在に嵌合する回転軸部と、前記支持アームを任意の張り出し角度で前記回転軸部を前記軸受け部に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の軒樋内吊金具装置。
【請求項3】
ロック機構は、前側ピニオンギヤの軸部に連結された第1リンクと、後側ピニオンギヤの軸部に連結された第2リンクと、両リンクの内端部を回転自在に連結する連結軸と、前記両リンクを軸部周りの回転操作する操作部とを備え、
前記両リンクを前記軸部周りに回転させ、前記リンクと前記軸部とがそれぞれ連結した軸部嵌合部間の距離を調整することにより、前記軸部嵌合部であるロック部と前記軸部との摩擦力により、少なくとも片側の軸部の回転を阻止することを特徴とする請求項1または2に記載の軒樋内吊金具装置。
【請求項4】
ロック機構は、ブラケットに回転自在に支持された回転板と、前記回転板を回転操作するように前記回転板に形成された操作部と、前記回転板のピニオンギヤの軸部側への回転により前記軸部に押し付けられて係合する切欠部とを備え、
前記回転板を回転させて前記切欠部を前記軸部に当接させることにより、前記切欠部であるロック部と前記軸部との摩擦力により、少なくとも片側の軸部の回転を阻止することを特徴とする請求項1または2に記載の軒樋内吊金具装置。
【請求項5】
ピニオンギヤの軸部が、ブラケットの側面から外側に突出され、
突出された軸部に前記ロック部が押し付け・解除自在に配置されたことを特徴とする請求項3または4に記載の軒樋内吊金具装置。
【請求項6】
軒樋内吊金具装置を構成するすべての部材が、同一の材料から形成されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の軒樋内吊金具装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−150837(P2010−150837A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331326(P2008−331326)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(592131663)井上商事株式会社 (18)