説明

軟弱地盤安定化工法およびブロック材

【課題】 連結部材を使用することなく、少ないブロック材の使用のもとに、作業性の優れた地盤安定化工法を提供すること。
【解決手段】 ほぼ逆三角断面棒状のブロック材1を井桁形に係合状態に重ね合わせると共に、ブロック材1間の間隙に砕石等の充填材7を充填して盤構造を形成するほか、ブロック材1の係合に当たっては、ブロック材1の下端部に上端断面形状に対応する下向き切欠部5を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物あるいは構築物を安全に支持するための地盤を安定化する工法およびこれに使用するブロック材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を安定化する工法としては、例えば特許第2592785号公報(特許文献1)に記載のように、軟弱地盤にコマ(独楽)型ブロックを並列敷設すると共に、ブロック間の間隙に砕石等を充填する工法があり、そのブロックについても複数個を一体的に形成した多連型ブロックを適用し、かつ複数層重積することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許第2592785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第2592785号公報に記載の技術においては、ブロック間を連結部材により連結する必要があり、連結部材の費用が必要であるばかりでなく、組み立て作業に手数を要し、著しく不経済である。また、複数層に重積形成する場合、層間の相互の拘束力が不充分である関係上、各層相互の上下方向あるいは水平方向への遊動傾向があり、間詰めの充填を必要以上に強化する必要がある。更に、各コマ型ブロックの垂直保持に当たっては、隣接する垂直壁等の補助的部材に依存しなければならない不利がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、連結部材を使用することなく、少ない個数のブロック材の使用のもとに、作業性の優れた地盤安定化工法を提供することにあり、他の目的は、その地盤安定化工法に好適なブロック材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、ほぼ逆三角断面棒状のブロック材1を井桁形に係合状態に重ね合わせると共に、ブロック材1間の間隙に砕石等の充填材7を充填して盤構造を形成するほか、ブロック材1の係合に当たっては、ブロック材1の下端部に上端断面形状に対応する下向き切欠部5を形成したことを特徴とする地盤安定化工法である。
【0007】
請求項2の発明は、ブロック材1を重ね合わせる場合の係合に当たり、ブロック材1の下端部に上端形状に対応する下向き切欠部5を形成すると共に、ブロック材1の上端部には下向き切欠部5に対応する上向き切欠部8を形成して、相欠き状態の上下両切欠部同士において相互に噛み合わせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の地盤安定化工法である。
【0008】
請求項3の発明は、ほぼ逆三角断面棒状のブロック材1の上端両側縁に斜め上向きの面取部3を設けて、上端寄り部分の形状を台形断面に形成すると共に、ブロック材1の下端部に上端断面形状に符合する下向き切欠部5を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地盤安定化工法に使用するブロック材である。
【0009】
請求項4の発明は、ブロック材1における斜め下向き両側面2の成す角度が、85度から70度の範囲にある請求項3に記載のブロック材である。
【0010】
請求項5の発明は、中央に空隙部を形成した中空型のブロック材1であって、請求項3または請求項4に記載のブロック材である。
【0011】
請求項6の発明は、ブロック材1が軽量コンクリート製であって、請求項3ないし請求項5のいずれか1に記載のブロック材である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、連結部材を使用することなく、係合によりブロック材1同士の結合が成されてブロック材1同士の動揺が生じ難い関係上、組み立て作業性並びに間詰め作業性がよく、敷設コストが著しく廉価で済む。また、ブロック材1を井桁状に噛み合わせることにより上下方向および水平方向への拘束力が発揮されるから、少量のブロック材1の使用により、頑丈な骨格構造が形成され、間詰め充填材7との協働のもとに強固な盤構造が容易に得られる。更に、ブロック材1の下端部に上端形状に対応する下向き切欠部5を形成したから、最上層のブロック材1は左右方向にスライド可能であり、最上層ブロック材1の並列間隔を任意に選択でき、従って、上層のブロック材1を必要に応じて密着状態に並設することにより、盤構造の上端面を間詰め充填材7が露出しない平坦状態に形成することができる。その他、ブロック材1の下端部に下向き切欠部5を形成したことは、運搬および組み立て作業時のワイヤーロープの括り付けに好都合である。
【0013】
請求項2の発明によれば、ブロック材1の下端部に上端形状に対応する下向き切欠部5を形成すると共に、ブロック材1の上端部に下端に形成した下向き切欠部5に対応する上向き切欠部8を形成し、上下両切欠部同士において相互に噛み合わせるようにしたから、強固な盤構造を容易に得ることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、上端両側縁に斜め上向きの面取部3を設けて、上端寄り部の形状を台形断面に構成することにより、上端両側縁が鈍角に形成されて損壊され難いばかりでなく、上層に重積するブロック材1をスライドさせつつ載設作業を容易に行うことができ、しかも全体の形状が単純な角棒状であって鋭角状の突起部分が限られ、貯蔵並びに取り扱い上好都合である。
【0015】
請求項4の発明によれば、ブロック材1における斜め下向き両側面2の成す角度を85度ないし70度の範囲に限定したから、側方への遊動および沈降を適正に抑制することができるから、間詰めの充填を軽減することができる。
【0016】
請求項5の発明は、ブロック材1の中央に空隙部を形成したことにより、ブロック材1を軽量化することができ、取り扱い並びに施工作業が容易となるほか、基礎自体の重量に起因する沈降を抑制することができる。
【0017】
請求項6の発明は、ブロック材1を軽量コンクリート製としたから、ブロック材1自体を軽量化することができ、取り扱い並びに施工作業が容易となるほか、基礎自体の重量に起因する沈降を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明の一実施形態における工法による盤構造の正面図である。
【図2】 図1の盤構造のブロック材だけの平面図である。
【図3】 図2の盤構造の側面図である。
【図4】 図1の盤構造におけるブロック材の部分的破断斜視図である。
【図5】 他の実施形態におけるブロック材の部分的破断斜視図である。
【図6】 図5のブロック材の重ね合わせ状態を示す要部の断面図である。
【図7】 更に他の実施形態におけるブロック材の部分的破断斜視図である。
【図8】 広範囲地盤の施工例を示す盤構造のブロック材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を添付図の実施形態について説明するが、まず、本発明工法に使用するブロック材1としては、例えば図1ないし図4のように、主体として左右の斜め下向きの側面2の成す角度が直角または鋭角を成すほぼ二等辺三角断面に成型したコンクリート製棒状に形成し、上端両側縁には比較的大きく作成した面取部3を設けると共に、下端縁には水平あるいは円弧状の比較的小さい面取部4を形成し、更に、主体の下端縁には上端寄り部分の断面形状に対応する下向き切欠部5を適宜間隔のもとに形成し、ブロック材1を直交状態に重ね合わせる場合に、下位のブロック材1における上端寄り部分と上位のブロック材1における下向き切欠部5とが係合するようにする。なお前記面取部3については、斜め上向きとして主体の上端寄り部分を台形断面に形成すると共に、下端縁に形成する下向き切欠部5を上端寄り部分の台形断面に符合する台形に形成するのが望ましい。
【0020】
ブロック材1を使用する軟弱地盤安定化のための盤構造については、例えば図1ないし図4に示す実施形態のように、先ず盤構造の構築位置に掘り下げた地盤底部に砕石等を搗き固め充填して根固め基礎層6を形成し、この基礎層6の上にブロック材1を等間隔に並列させた後、これらブロック材1の上部に他のブロック材1をその下向き切欠部5が下層ブロック材1の上端部に係合する井桁状態もとに2層に重ね合わせ、更にその上部に他のブロック材1を前記同様に井桁状態に三層構造に重ね合わせると共に、各ブロック材1間の間隙に砕石あるいは砂利等の充填材7を転圧充填して盤構造を形成する。
【0021】
上記構成によれば、井桁状に組み合わせたブロック材1の斜め下向きの側面2部分と充填材7との協働作用により、建築物あるいは構築物の基礎,床の加重を広範囲に均等に分散させるばかりでなく、軟弱地盤を強固な盤構造に改良し、建築物あるいは構築物を安全に支持することができる。
【0022】
図5および図6の実施形態は、ブロック材1の係合に当たり、ブロック材1の下端部に上端形状に対応する下向き切欠部5を形成する以外に、ブロック材1の上端部に下端に形成した下向き切欠部5に対応する相欠き状態の上向き切欠部8を形成し、上下両切欠部5,8同士を噛み合わせ状態に係合させたものであり、これにより係合が一層強固となるのである。
【0023】
本発明においては、ブロック材1の並列により形成される単位各層の大きさは、ブロック材1の長さにより自ずと決まり、かつ、ブロック材1における下向き切欠部5および上向き切欠部8の個数および間隔の選択は設計事項であるが、盤構造のコストおよび強度上重要である。本発明においては、各層におけるブロック材1の個数は3本以上とするのが望ましく、ブロック材1による層数は図示のように3層に限らず2層あるいは4層以上でもよいこと当然である。
【0024】
ブロック材1としては、図7のように中空構造にしてもよく、これによりブロック材1自体を軽量化して運搬,取り扱いを容易に行うことができる。ブロック材1の主体を筒状に成型した後、両端の開口部9を蓋材10により閉塞すればよい。またブロック材1の軽量化については、ブロック材1自体の材質として軽量コンクリート,プラスチック,レジンコンクリート等種々採択することができる。ブロック材1を軽量化することにより、ブロック材1の加重に起因する沈降を抑制することができる。
【0025】
ブロック材1の寸法の範囲については、運搬,取り扱いの都合上、自ずと定まるのであるが、幅と高さとが各数十cmで、長さを数m程度に製作するのが適当である。また主体における斜め下向き両側面2の成す角度については、大き過ぎると側方へ遊動し易く、小さ過ぎると沈降し易い傾向があるため、そのバランスは重要な要素であって、実施の結果、実用範囲は90度ないし60度であり、望ましくは85度ないし70度である。
【0026】
広範囲な地盤造成に当たっては、数m四方の盤構造を単に並設することなく、図10のようにブロック材1により形成される各層を千鳥状にずらした状態に重ね合わせることにより、広範囲にわたる平坦な強化地盤を確実に造成することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ブロック材
2 側面
3 面取部
4 面取部
5 下向き切欠部
6 基礎層
7 充填材
8 上向き切欠部
9 開口部
10 蓋材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ逆三角断面棒状のブロック材(1)を井桁形に係合状態に重ね合わせると共に、ブロック材(1)間の間隙に砕石等の充填材(7)を充填して盤構造を形成するほか、ブロック材(1)の係合に当たっては、ブロック材(1)の下端部に上端断面形状に対応する下向き切欠部(5)を形成したことを特徴とする地盤安定化工法。
【請求項2】
ブロック材(1)を重ね合わせる場合の係合に当たり、ブロック材(1)の下端部に上端形状に対応する下向き切欠部(5)を形成すると共に、ブロック材(1)の上端部には下向き切欠部(5)に対応する上向き切欠部(8)を形成して、相欠き状態の上下両切欠部(5),(8)同士において相互に噛み合わせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の地盤安定化工法。
【請求項3】
ほぼ逆三角断面棒状のブロック材(1)の上端両側縁に斜め上向きの面取部(3)を設けて、上端寄り部分の形状を台形断面に形成すると共に、ブロック材(1)の下端部に上端断面形状に符合する下向き切欠部(5)を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地盤安定化工法に使用するブロック材。
【請求項4】
ブロック材(1)における左右両側面2の成す角度が、85度から70度までの範囲にある請求項3に記載のブロック材。
【請求項5】
中央に空隙部を形成した中空型の請求項3または請求項4に記載のブロック材。
【請求項6】
軽量コンクリート製とした請求項3ないし請求項5のいずれか1に記載のブロック材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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