説明

軟弱野菜収穫機

【課題】作物の根元側を挟持搬送する急傾斜状の搬送部から、緩やかな傾斜となした補助搬送帯によって葉先寄りを挟持し、根揃いを促進させながら整然と搬送することができる軟弱野菜収穫機を提供する。
【解決手段】駆動プーリ45と従動プーリ43とに巻き掛けたベルト状の搬送帯10を左右に対設し、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を形成する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1であって、前記搬送路40の終端上部で作物を引き継ぎ葉先寄りを挟持して搬送する補助搬送帯10aを、搬送路40より緩やかな傾斜となして設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウレン草や小ネギ等の野菜を収穫する軟弱野菜収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行装置を有する走行機体に傾斜姿勢で搭載され、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送部(挟持搬送装置)は、特許文献1で示されるように既に公知である。この特許文献1で示される搬送部は、駆動プーリと従動プーリとに平ベルト状の搬送帯を巻き掛けてなる搬送体を、前低後高の傾斜姿勢で左右に対設することにより、作物(非結球葉菜)を始端部から挟持搬送する搬送路を形成し、終端部から排出して収納バケットに収容させる構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2898629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で示される収穫機は、カッタにより根切りされた作物の根元側を対をなす平ベルト状の搬送帯により挟持して搬送をすることができる。然しながら、搬送部は機体の前後長さに制約を受け急傾斜姿勢で設置され収容部に搬送するため、作物は葉先側が前倒れ状態になって乱れを伴いながら収容部に落下収容される。このためホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(軟弱野菜)では、傾斜搬送過程で特に葉先側が損傷を受け易く、また隣接する作物の根元側が重なったり絡み合ったりしたまま収納バケットに収容される等、収穫時に作物の品質を損なったり収穫された作物の収集や取出し作業が煩雑になる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明のベルト搬送装置は、第1に、駆動プーリ45と従動プーリ43とに巻き掛けたベルト状の搬送帯10を左右に対設し、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を形成する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1において、前記搬送路40の終端上部で作物を引き継ぎ葉先寄りを挟持して搬送する補助搬送帯10aを、搬送路40より緩やかな傾斜となして設けることを特徴としている。
【0006】
第2に、補助搬送帯10aのベルト表面に、周方向に沿って弾力性を有した中空部74を形成した弾性挟持用突起71を設けることを特徴としている。
【0007】
第3に、補助搬送帯10aの駆動プーリ61を、搬送帯10の駆動プーリ45に形成した凹陥部69に内装される自在継手68を介して連結することを特徴としている。
【0008】
第4に、補助搬送帯10aの駆動プーリ61と従動プーリ62を機体に支持される搬送フレーム63に下向きに軸支し、駆動プーリ61と従動プーリ62に張設される補助搬送帯10aを搬送帯10の終端上部に近接させることを特徴としている。
【0009】
第5に、補助搬送帯10aの終端下方に、落下空間を介して作物を後傾姿勢で収容する収容部21を設けることを特徴としている。
【0010】
第6に、収容部21を走行機体2の下部に作物を収容する収容姿勢と作物を取り出す排出姿勢とに切り換え可能に設けると共に、収容部21を収容姿勢に保持する保持杆37によって収容作物の左右方向の傾倒を規制することを特徴としている。
【0011】
第7に、搬送帯10を支持する搬送フレーム41,42の先端部に、該搬送フレーム41,42の縦側板の先端形状に沿って補強板55を設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による軟弱野菜収穫機は以下のような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、搬送帯を左右に対設してなる搬送部の搬送路によって、作物を根元側を挟持して下方から後方上方に向けて搬送したのちは、上記搬送路より緩やかな傾斜となして設けた補助搬送帯によって、葉先よりを挟持して引き継ぎ根元側を自由にした状態で搬送することにより、隣接する根元の重なりや絡みを解し自重による根揃いを促進させ搬送終端で作物の挟持搬送を解除することができる。また緩傾斜となした搬送帯は搬送終端を下方に設置する収容部に近接させることができるので、根揃いをさせた作物を乱すことなく収容部に整然と供給することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、補助搬送帯をベルト表面に沿って弾力性を有した中空部からなる弾性挟持用突起を設けることにより、補助搬送帯が作物の葉先寄りを挟持するとき、弾性挟持用突起の先端が挟持抵抗に応じ弾性力に抗して中空部を介して容易に変形するため、葉先寄りのボリューム等の状態に応じた断面形状となって、葉先寄りを強く圧縮させることなく広い挟持面となって柔らかく挟持しながら、葉先側の損傷及び抜け落ち等を防止した搬送をスムーズに行うことができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、補助搬送帯の駆動プーリと搬送帯の駆動プーリを連結する自在継手を、駆動プーリに形成した凹陥部内に設けることにより、搬送帯の終端部の上に補助搬送帯の始端部を近接させて、作物のスムーズな引継ぎ搬送を行うことができる。自在継手を駆動プーリ内に収めるので露出による作物の巻き付きを防止することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、搬送フレームに下向きに軸支した駆動プーリと従動プーリに張設した補助搬送帯を搬送帯の終端上部に近接させることにより、補助搬送帯の始端を搬送帯の終端に、搬送フレームの設置スペースを要することなく近接させることができるので、搬送帯から搬送される作物の葉先寄りで根元側に近い部分を補助搬送帯によって挟持搬送するため、葉先側が折れ易い作物の損傷を防止することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、補助搬送帯の終端下方に、落下空間を介して作物を後傾姿勢で収容する収容部を設けることにより、補助搬送帯によって根揃いを促進させ作物を搬送終端に近接させた収容部に根元側から落下させて着地させた状態で後傾姿勢で収容させるので、根元側を揃えた状態で作物を整然と収容することができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、収容部を保持杆によって収容姿勢にしたとき、根元側が受けられて後傾斜姿勢になって順次集積される作物を、保持杆が収容作物の左右方向の傾倒を規制するので整然と収容することができる。また収容部は保持杆を操作することにより地面に近接させた排出姿勢にすることができ、収容部内の収容作物の取り出し作業を簡単に行うことができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、搬送帯を支持する搬送フレームの先端部に、該搬送フレームの縦側板の先端形状に沿って重量のある補強板を設けることにより、搬送フレームは先端部に十分な強度を有した肉薄板にすることができ機体の軽量化を図ることができる。補強板は搬送フレーム,の縦側板の先端形状に沿って厚さ及び大きさを適宜選択することができるので、機体前方のウェイト調整を行なうウェイト調整構造を兼用することができ、収穫機の後方重量と前方重量との重量バランスの改善を省スペースで簡潔な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した軟弱野菜収穫機の構成を示す全体側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2の搬送伝動機構の構成を示す平面図である。
【図4】図3の搬送伝動機構の構成を示す断面図である。
【図5】図1の搬送部と補助搬送部との連結構造を拡大して示す側断面図である。
【図6】図2の接地部構造を拡大して示す平面図である。
【図7】補助搬送体の構成及び作用を示す断面図である。
【図8】補助搬送体の別実施形態の構成を示す断面図である。
【図9】補助搬送体及び収容部の別実施形態を備えた軟弱野菜収穫機の構成を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態に関わる収穫機1は、主としてホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(以下単に作物と言う)の軟弱野菜を収穫することができる。この収穫機1は走行機体2に圃場地面から作物を収集搬送して回収する収穫装置3を搭載している。
この走行機体2は、クローラ型の走行装置5に設置される機体フレーム4に、収穫装置3を前低後高状の傾斜姿勢によって支持し、走行装置5の両側でその駆動輪6の設置位置にバッテリ7,7を設置している。
【0021】
上記走行装置5は駆動輪6を大径輪にしており、バッテリ7から給電されるモータ8の回転動力によって駆動するようにしている。バッテリ7は収穫装置3用のモータ8aにも給電しており、収穫装置3を構成する搬送部9,9aの搬送帯10,10aとカッタ11とを、後述する搬送伝動機構12を介して駆動する。
機体フレーム4は後部に二股状のハンドル13を設けており、搬送部9の下方に沿わせて後方に延出し、把持部に前記モータ8,8aの正逆回転及び回転速度等の操作を司る各種操作スイッチ15,15aを制御ボックス16を介して備えている。
これにより収穫機1は、モータ8を正逆及び回転調節をして機体の前後進と走行速度調節操作を行い、モータ8aを回転調節して搬送速度調節操作を行い、圃場や作物の状況に適応した走行速度と搬送速度を選定し収穫作業を行うことができる。
【0022】
以下各部の構成について説明する。先ず図1,図2を参照し走行機体(車体)2及び走行装置5について詳述する。この走行機体2は機体フレーム4を、その軸支部を介し前記駆動輪6の駆動軸6aを中心に回動可能に軸支している。即ち、機体フレーム4は駆動軸6aのやや前方上方に収穫装置3の装置フレーム3aを取付具4aによって取付け、該装置フレーム3aの前側を回動規制支持機構17を介して、走行装置5の走行フレーム19に支持することにより収穫装置3を前低後高の傾斜姿勢で設けている。
【0023】
機体フレーム4は前記駆動軸6aより後方に延長されるフレーム4bの後部に、前記モータ8を配設し、伝動機構を内装する伝動ケース20を介してモータ軸から駆動軸6aを伝動するように構成している。そして、フレーム4bに対し収穫装置3から供給される収穫物を収集する収容部21を設けている。また制御ボックス16は走行装置5と装置フレーム3aで形成される空間部に対し、側面視で三角形状に纏めた形状を以ってハンドル13の基部側に取付けている。
【0024】
機体フレーム4は、バッテリ載置台22を駆動軸6aの両側端に近接させるように走行装置5の上方を跨いで左右に形成している。これにより重量のある左右のバッテリ7は、駆動軸6aの両側でやや前側寄りの適正位置に安定よく設置させ、機体フレーム4に支持される収穫装置3の重量バランスを図るウェイトとしても利用し、収穫装置3の重心位置を前記回動規制支持機構17の近傍に定めるようにしている。
また収穫機1は機体フレーム4に支持される搬送部9の後述する搬送フレーム41に、機体前方のウェイト調整構造を兼用するように構成される接地部構造24を備えており、上記後方重量と前方重量との重量バランスを改善するようにしている。
【0025】
上記のように機体を構成した収穫機1は、収穫装置3の前端部を地面に接地させて走行し収穫作業を行なうとき、地面の凹凸に応じた収穫装置3の上下回動を駆動軸6aを中心にスムーズに行う。また同様に走行装置5も駆動軸6aを中心に前方側を地表の凹凸に応じて上下回動するので、収穫装置3と走行装置5の単独的な回動を互いに妨げることなく許容することができる。これにより収穫機1は、機体振動を低減した走行が可能になり、作物の収穫を高い性能で行うことができる。
【0026】
走行装置5は駆動輪6と従動輪6bとにゴム製の突起付無端帯(クローラ)25を巻き掛けており、この実施形態では駆動輪6を大径となし従動輪6bを、駆動輪6の直径の約半分程度となして、駆動軸6aに軸支部を介して回動自在に軸支した走行フレーム19の先端部に遊転自在に軸支している。
これにより走行装置5は側面視において、クローラ25を前方が鋭角状の三角形状に張設することができ、小径の従動輪6b側を装置フレーム3aの左右幅の中央部で、搬送部9の前方下部に可及的に接近させ、且つクローラ25の前後方向の接地長を大きくしながら、収穫機1の全長を抑制し機体をコンパクトに纏めることができる。
【0027】
回動規制支持機構17は、走行フレーム19の中途部に横向きに取付支持される支持杆29と、該支持杆29の両端にスライド可能に嵌挿された状態で立設する連結杆30を有している。この左右の連結杆30は、共に先端を収穫装置3の両側に設けた支持部31に挿入した状態で、支持杆29と支持部31との間にコイルスプリングを介装している。これにより左右に配置される回動規制支持機構17は走行装置5に対し、装置フレーム3aの左右を支持部31を介して緩衝構造を以って支持することができる。
【0028】
次に収穫装置3について図1〜図7を参照し説明する。収穫装置3は作物を地面側から後方に向けて搬送する搬送部9,補助搬送部9aと、該搬送部9aの終端で作物を収容する処理物21等から構成される。搬送部9は搬送始端側に前処理部として圃場地面に植生している作物を切断又は掘り起こしをするカッタ11を備え、搬送始端で収集される作物の根元側(茎部)を挟持して後方上方に向けて搬送し、搬送終端側に設置される補助搬送部9aに継送する。
補助搬送部9aは作物の葉側(葉茎部)を挟持し搬送部9より緩い傾斜で後方搬送し、搬送終端から作物を後方下方に配置される収容部21に供給する。
【0029】
収容部21は、前記フレーム4bに対しハンドル左右幅内に形成される受面部32と、該受面部32の両側から立ち上げた側壁部33とからなり、上向きコ字状断面をなす形状にしている。図示例の収容部21は受面部32の基部側を上方に向けて屈曲することにより側面視で「く」字状に傾斜させている。これにより収容部21は、搬送部9aから搬送排出される作物を、後傾姿勢の受面部32で受け且つ側壁部33によって側方の漏出を規制し、整然と集積させた集積状態に収容することができる。また受面部32は後方を後傾状に起立させているので、収容部21の後方に広いスペースを形成し運転歩行を妨げないようにしている。
【0030】
また収容部21は別実施形態として図9で示すように、走行機体2の下部に対し作物を収容する収容姿勢と、作物を取り出す排出姿勢とに切り換え回動可能に設けることができる。即ち、同図で示す別実施形態の収容部21は、ハンドル左右幅内に形成される受面部32と、該受面部32の両側から前方側に向け大きく起立させた側壁部33とによって、上向きコ字状断面をなす形状にしている。また受面部32の下部に前方に向けて逆「へ」字状をなすように屈曲させた底面部34を一体的に設けることにより、収容量の大きいバケット形状にしている。
【0031】
そして、収容部21は左右の側壁部33の前部をフレーム4bに支持軸36を介して、実線で示す収容姿勢と点線で示す排出姿勢とに回動自在に枢支し、且つ受面部32の左右幅の中間位置上部を姿勢切換え用の保持杆37によって係脱自在に支持している。
この保持杆37は基部側を前方に位置するハンドル13等の取付部材に設けられる蝶番構造等からなる回動部38によって上下方向に回動可能に支持され、先端部をフック状に屈曲させて形成した保持部37aを設けている。
【0032】
この保持部37aは受面部32の上部に穿設した保持孔39に挿入すると、該保持孔39の下部壁にフック端が係止し収容部21の収容姿勢を保持する。これにより補助搬送体66の終端で挟持搬送が解除されて落下する作物は、根元側が前傾形状の底面部34で受けられ後傾斜姿勢になり後方に滑り移動して受面部32に支持され順次集積する。このとき保持杆37は収容部21の中央部において、収容された作物の葉側に接して作物を区画するように作用するので、収容した作物を受面部32の幅一杯に整然と集積させることができる。
【0033】
また保持杆37は機体旋回の左右の揺れに対しても作物の左右方向の傾倒を防止するので、収容した作物の乱れを防いで品質を損なうことのない収穫作業を能率よく行うことができる。
また保持杆37は保持部37aを少し持ち上げて保持孔39から外すと、支持軸36を支点に収容部21を後方回動し地面に着地した排出姿勢にすることができる。これにより作業者はハンドル13の下方で広く解放された空間部から収容部21内の集積作物を、集束した状態で容易に取り出すことができる等の特徴がある。
【0034】
次に搬送部9,9aについて説明する。この搬送部9,9aは装置幅内において、圃場に作物が植立する左右2列条分の標準的な幅と等しい間隔を有するように調整することができ、植立する左右の作物を収集し所定長さに亘って後方に向けて挟持搬送する搬送路40を構成している。この搬送路40は図4で示す断面構造の搬送帯10を左右に対向配置させることにより形成される。また左右の搬送路40を形成する4本の搬送帯10は、断面視で逆L字状をなす外側搬送フレーム41,41と内側搬送フレーム42,42とに、それぞれ同一機構によってベルト張りをすることにより、ユニット構造で対をなす外側搬送体9cと内側搬送体9dとを簡潔で軽量な構成にしている。
【0035】
上記外側搬送体9cと内側搬送体9dは、各搬送フレームの横板上部の前後端に対し、従動プーリ43と駆動プーリ45とを縦軸回転可能に軸支し、且つ両者の中間に所定のベルト支持間隔を有し図示しない複数の案内プーリを、縦軸回転可能に軸支し搬送帯10の搬送路40側の裏面に転接させることによりベルト張りを行なっている。
また従動プーリ43,駆動プーリ45,案内プーリには、その外周所定位置に図5で示すようにプーリ溝48を形成しており、該プーリ溝48に搬送帯10の内周に突設されるガイド突起47を突入させて案内するようにしている。
【0036】
上記搬送帯10は可撓性を有しながら縦向きの起立剛性(通直性)を有するベルト本体を、図1,図2,図4,図5で示すように搬送路40を形成する長さと幅を有する平ベルト部51にしており、実施形態の平ベルト部51は、例えば小ネギを好適に搬送するものとして、その根元側から葉の略全体主要部を挟持又は支持する幅にしている。
この平ベルト部51は、その表面側の下部に作物(子ネギ)の根元側を滑りや圧潰しを防止して適切に挟持することができる弾性挟持用突起52を設けている。この弾性挟持用突起52はスポンジや緩衝用ゴム或いはエアーチューブ等で形成している。そして、搬送帯10は平ベルト部51の裏面側に、弾性挟持用突起52の設置位置と対向する位置に前記ガイド突起47を設けている。
【0037】
このガイド突起47は駆動プーリ45等の外周に形成した凹溝状のプーリ溝48に嵌挿されて、スリップやベルト外れを防止した伝動を行うことができる。
従って、駆動プーリ45のプーリ溝48にガイド突起47を嵌挿させた搬送帯10は、互いの弾性挟持用突起52によって作物の挟持箇所を押し潰したりすることなく柔らかく挟持して搬送を確実に行う。また作物の非挟持部分を対向する平ベルト部51で形成される搬送路40の搬送支持間隔内で、側方への姿勢を規制した状態で整然と搬送することができる等の特徴がある。
【0038】
そして、対をなす外側搬送体9cと内側搬送体9dは、互いの外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の下部側を、前後に配置される杆状の連結フレーム53aと板状の連結フレーム53によって連結することにより、左右の搬送路40をそれぞれ形成するユニット構造の左搬送部と右搬送部を構成し収穫装置3の装置フレームをなしている。
【0039】
次に図1,図6を参照し前記接地部構造24について説明する。この収穫機1は各外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の先端に、圃場に植立する作物を掻き分ける(分草)デバイダ54を設けていると共に、カッタ11を地表から所定深さ(例えば10〜20ミリ程度)だけ地中に埋没させるように設けている。
これにより各デバイダ54は機体の進行に伴い作物を各搬送路40側に分草誘導することができ、且つ分草された作物は内向き回転する両側の搬送帯10が挟持搬送を開始するとき、カッタ11によって根元部を切断されるため搬送帯10による挟持搬送がスムーズに行われる。
【0040】
実施形態における接地部構造24は、逆L字状断面をなす各外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の縦側板の先端部形状を側面視で略三角形状となしており、この縦側板面に沿って補強板55をボルト等によって着脱可能に取付けている。
図示例の補強板55は、搬送フレームの肉厚の数倍の厚さを有する鉄板を先端形状と同じ三角形状となして、搬送フレームの前端から走行装置5に近接する位置まで接合する大きさにしている。これにより外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42は先端部の強度を有して肉薄板にすることができるため機体の軽量化を図ることができる。
【0041】
また各補強板55は厚さ及び大きさを適宜選択し、機体前方のウェイト調整を行なうウェイト調整構造を兼用するように構成することができ、前記収穫機1の後方重量と前方重量との重量バランスの改善を、ウェイト調整構造のためのスペースを大きく占めることなく簡単な構造によって行うことができる。
また上記のように構成される補強板55は、搬送フレーム先端部に沿い全面を覆うように重合されて外側搬送フレーム41及び内側搬送フレーム42を剛体構造にするので、分草杆56を有する接地用のデバイダ54を補強板55の下辺に強度を有して取付けることができる。また肉厚で広幅な補強板55は、カッタ11の取付軸57を所望の位置に安定よく設けることができる。
【0042】
尚、実施形態のカッタ11は正面視でL字状をなし、その縦片部を各補強板55に対し取付軸57を支点に刃部を揺動可能に取付けており、且つ縦片部の上部を後述する搬送伝動機構12側に構成されるカッタ駆動機構の駆動杆89に連結している。これにより駆動杆89が前後作動すると、カッタ11は取付軸57を支点に刃部を地中で前後揺動させて作物の根元部或いは根を切断することができる。尚、カッタ11は刃部の上下高さを調節したり、必要により作動を固定した状態で使用することができ、また取り外した状態での収穫作業も行うことができる。
【0043】
次に図1,図2,図3,図5を参照し補助搬送部9aについて説明する。この補助搬送部9aは、駆動プーリ61と従動プーリ62を搬送フレーム63の前後端に軸支し、両者に搬送帯10aを張設したユニット構造の補助搬送体66を構成している。そして、補助搬送体66は前記各外側搬送体9cと内側搬送体9dの後部で、取付アーム67,67aを介して取付けることにより、搬送路40の終端上部で作物を葉先寄りを挟持して引き継ぎ、且つ側面視で搬送路40より緩やかな傾斜となして後方に搬送するようにしている。
【0044】
図示例の補助搬送体66は、駆動プーリ61を搬送帯10の駆動プーリ45のプーリ駆動軸45aに対し、プーリ軸61aを自在継手68を介して着脱及び伝動角変更可能に連結して搬送帯10aを回転駆動するようにしている。
また図4,図5で示すように上記構成からなる補助搬送体66は、自在継手68を前記駆動プーリ45の上部に凹入形成した凹陥部69内に設けることにより、各補助搬送体66を外側搬送体9cと内側搬送体9dにより近接させた上下関係を以って引継ぎ搬送をさせると共に、自在継手68を駆動プーリ45内に収容した状態となし、自在継手68への作物の巻き付きを防止した搬送をスムーズに行うようにしている。
【0045】
上記内側搬送体9dに接続される補助搬送体66は、その搬送フレーム63を装置フレーム3aから延設した取付フレーム67によって、また内側搬送体9dに接続される補助搬送体66は、その搬送フレーム63をハンドル13側から延設した取付フレーム67aによって、着脱可能及び取付け高さ並びに取付け角度調節可能に取付けている。
これにより補助搬送体66は、外側搬送体9cと内側搬送体9dに対し、その上方に接続した状態で緩い傾斜を以って搬送路40aを形成し、終端を収容部21の上方に臨む位置に設置させている。そして、搬送部9から根元側を挟持して搬送される作物の葉先寄りを引き継いで挟持搬送をする際に、水平に近くなる緩傾斜で搬送するので、作物の根元側が自由となり根元自重による根揃いを促進させることができる。これにより隣接する根元の重なりや絡みを解すことができ、搬送終端で作物の挟持搬送を解除し収容部21に整然と供給することができる。
【0046】
実施形態の搬送帯10aは図7で示すように、前記搬送帯10と同様に平ベルト部70の表面側に弾性挟持用突起71を設けていると共に、裏面側に弾性挟持用突起71の設置位置に対向する位置にガイド突起72を設けている。そして、ガイド突起72を駆動プーリ61と従動プーリ62の外周に形成した凹溝状のプーリ溝73に嵌挿させた状態で巻き掛けてベルト外れを防止した搬送をさせる。
また図7で示すように上記弾性挟持用突起71は、弾力性及び可撓性を有するスポンジや緩衝用ゴム等の中空形成部材によって、平ベルト部70のベルト方向に一連の中空部74を形成する中空帯にしている。これにより弾性挟持用突起71は前記搬送帯10の弾性挟持用突起52よりも柔らかな弾力性を有し変形し易くしている。
【0047】
上記のように構成される搬送帯10aは、搬送路40a内に供給される作物の葉先寄りを挟持するときの挟持抵抗に応じ、図7の点線で示すように、中空状をなす弾性挟持用突起71の先端が部材の弾性力に抗して押圧され、中空部74を上下方向に容易に変形することができるので、葉先側のボリュームや形状等の状態に応じた断面形状となって、葉先側を大きく圧縮させることなく且つ広い挟持面積で挟持しながら、葉先側の損傷及び抜け落ち等を防止した搬送をスムーズに行うことを可能にする。
【0048】
尚、図示例の中空弾性挟持用突起71は蒲鉾状断面の筒をなすように形成した中空帯を平ベルト部70の表面に沿って貼着したものを示したが、これに限定されることなく、例えば方形状や三角形状の中空断面にすることもできる。また薄いゴム材によって風船筒状の中空帯にすることもできる。さらに搬送帯10aは図8に示すように、平ベルト部70の表面に沿って複数の中空弾性挟持用突起71を形成することもできる。
【0049】
次に図9を参照し補助搬送帯10aの別実施形態について説明する。尚、前記実施形態のものと同様な構成及び作用については説明を省略する。この例の補助搬送帯10aは各外側搬送体9cと内側搬送体9dの後部に対し、前記補助搬送部9aを上下に反転させた反転状態で取付けることにより、搬送帯10の終端に搬送帯10aの始端をより近接させるように取付けている。
即ち、補助搬送帯10aは搬送フレーム63の前後端に駆動プーリ61と従動プーリ62を下向きに軸支した状態で、前記と同様に配置される補助搬送帯10aの搬送フレーム63を取付アーム67,67aによって、搬送路40より緩やかな傾斜となすように取付けている。
【0050】
これによれば補助搬送帯10aは、その始端を搬送路40の終端上部で搬送帯10の終端に、搬送フレーム63の設置スペースを要することなく近接させることができるので、例えば小ネギのように葉先側が折れたりばらばらに乱れ易い作物を収穫する場合に、補助搬送帯10aは搬送帯10から搬送される作物の葉先側で根元側に近い部分を挟持することができるため、引継ぎ初期に葉先折れや詰りを生じさせることなくスムーズ継送搬送を能率よく行うと共に、作物の損傷を防止した収穫作業を行うことができる等の特徴がある。
【0051】
次に収穫装置3の伝動構造について図1,図3,図4を参照し説明する。この搬送伝動機構12は搬送部9の後方下部に設置され、左側の外側搬送フレーム41の側方に突設したモータ台41aにモータ8aを下向きに設置し、このモータ軸に設けた駆動スプロケット76からチェン77を、各搬送帯10の前記駆動プーリ45を有するプーリ駆動軸45aに設けた入力スプロケット78とテンションスプロケット79とに巻き掛け、各搬送帯10を搬送方向に回転駆動するようにしている。
【0052】
また搬送伝動機構12は装置フレーム3aの前側寄りに、各カッタ11を往復作動させるカッタ作動部材81とカッタ入力スプロケット82とを上下に備えたカッタ駆動軸83を、左右の搬送路40の両側に対をなして立設し両者の間にテンションスプロケット84を軸支している。
そして、対をなすカッタ入力スプロケット82とテンションスプロケット84と、搬送部9の左右に位置するプーリ駆動軸45aに設けたカッタ駆動スプロケット86とにチェン87を巻き掛けている。
【0053】
またカッタ作動部材81は、その一側に立設したピン88とカッタ11とを駆動杆89によって連結している。
上記のように構成されるカッタ駆動機構は、プーリ駆動軸45aからカッタ駆動軸83を回転させ、且つカッタ作動部材81を介して駆動杆89を往復作動させる。これによりカッタ11は取付軸57を支点に刃部を前後揺動させて作物の根元部の切断や掘り起こし等を行なう。
【0054】
次に以上のように構成される収穫機1により、小ネギ(以下単にネギと言う)を収穫する作業例について説明する。収穫機1は圃場のネギ列の幅に適応させて左搬送部9cと右搬送部9dとを左右に調節し、圃場のネギ列の幅に適応させて左右の搬送路40の始端部を位置決めして作業が開始される。次いで、モータ8を駆動することにより駆動輪6が回転し、走行装置5により収穫装置3の略中央部を支持し走行する。またモータ8aを駆動すると搬送伝動機構12を介し搬送路40の両側に設置される搬送帯10を互いに内向き回転させると共に、カッタ駆動機構を介しカッタ11を往復作動させることができる。
【0055】
これにより収穫機1はネギ栽培圃場を進行し、デバイダ56で掻き分けたネギの根又は根元部をカッタ11で切り、切断されたネギを搬送帯10によって後方上方に向けて挟持搬送する。次いで搬送路40の終端から挟持搬送を解除されるネギは、該搬送路40より緩やかな傾斜の補助搬送帯10aによって、葉先寄りが挟持されて引き継がれ水平に近くなる緩傾斜で後方に向けて搬送される。
これにより作物は後方搬送に伴い根元側が垂下状態となって根元自重による根揃いが促進されて、搬送終端で作物の挟持搬送が解除されるとき、略鉛直姿勢で収容部21に向けて落下し整然と収容される。従って、作物に損傷を生じさせることなく品質よく収穫することができる。また機体の小旋回走行や作業の高速化を図る場合でも品質を損なうことのない収穫作業を行うことができる等の特徴がある。
【符号の説明】
【0056】
1 収穫機(軟弱野菜収穫機)
2 走行機体
3 収穫装置
5 走行装置
9 搬送部
9a 補助搬送部
10 搬送帯
10a 補助搬送帯
21 収容部
37 保持杆
40 搬送路
41,42 搬送フレーム
43 従動プーリ
45 駆動プーリ
51 平ベルト部
52 弾性挟持用突起
55 補強板
61 駆動プーリ
62 従動プーリ
63 搬送フレーム
68 自在継手
69 凹陥部
71 弾性挟持用突起
74 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリ(45)と従動プーリ(43)とに巻き掛けたベルト状の搬送帯(10)を左右に対設し、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路(40)を形成する搬送部(9)を、走行装置(5)を有する走行機体(2)に傾斜姿勢で搭載する収穫機(1)において、前記搬送路(40)の終端上部で作物を引き継ぎ葉先寄りを挟持して搬送する補助搬送帯(10a)を、搬送路(40)より緩やかな傾斜となして設けることを特徴とする軟弱野菜収穫機。
【請求項2】
補助搬送帯(10a)のベルト表面に、周方向に沿って弾力性を有した中空部(74)を形成した弾性挟持用突起(71)を設ける請求項1記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項3】
補助搬送帯(10a)の駆動プーリ(61)を、搬送帯(10)の駆動プーリ(45)に形成した凹陥部(69)に内装される自在継手(68)を介して連結する請求項1又は2記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項4】
補助搬送帯(10a)の駆動プーリ(61)と従動プーリ(62)を機体に支持される搬送フレーム(63)に下向きに軸支し、駆動プーリ(61)と従動プーリ(62)に張設される補助搬送帯(10a)を搬送帯(10)の終端上部に近接させる請求項1乃至3記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項5】
補助搬送帯(10a)の終端下方に、落下空間を介して作物を後傾姿勢で収容する収容部(21)を設ける請求項1乃至4記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項6】
収容部(21)を走行機体(2)の下部に作物を収容する収容姿勢と作物を取り出す排出姿勢とに切り換え可能に設けると共に、収容部(21)を収容姿勢に保持する保持杆(37)によって収容作物の左右方向の傾倒を規制する請求項1乃至5記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項7】
搬送帯(10)を支持する搬送フレーム(41),(42)の先端部に、該搬送フレーム(41),(42)の縦側板の先端形状に沿って補強板(55)を設ける請求項1乃至6記載の軟弱野菜収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−10619(P2011−10619A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159154(P2009−159154)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【出願人】(391052127)株式会社ニシザワ (14)
【Fターム(参考)】