説明

軟弱野菜収穫機

【課題】作物の根元側を挟持搬送する急傾斜状の搬送部から、後搬送部によって作物を傷めることなく引き継いで挟持搬送することができる軟弱野菜収穫機を提供する。
【解決手段】駆動プーリ45と従動プーリ43とに巻き掛けたベルト状の搬送帯10を左右に対設し、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を形成する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1であって、前記搬送部9の終端部で搬送帯10から、該搬送帯10より緩やかな傾斜となして葉先側を挟持して作物を引き継いで後方搬送する左右一対の後部搬送帯10a,10aを設けると共に、搬送路40に対し一方の後部搬送帯10aを他方の後部搬送帯10aより搬送上流側にずらして対設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウレン草や小ネギ等の野菜を収穫する軟弱野菜収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行装置を有する走行機体に傾斜姿勢で搭載され、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送部(挟持搬送装置)は、特許文献1で示されるように既に公知である。この特許文献1で示される搬送部は、駆動プーリと従動プーリとに平ベルト状の搬送帯を巻き掛けてなる搬送体を、前低後高の傾斜姿勢で左右に対設することにより、作物(非結球葉菜)を始端部から挟持搬送する搬送路を形成し、終端部から排出して収納バケットに収容させる構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2898629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で示される収穫機は、カッタにより根切りされた作物の根元側を対をなす平ベルト状の搬送帯により挟持して搬送をすることができる。然しながら、搬送部は機体の前後長さに制約を受け急傾斜姿勢で設置され収容部に搬送するため、作物は葉先側が前倒れ状態になって乱れを伴いながら収容部に落下収容される。このためホウレン草やコマツ菜,小ネギ等の非結球葉菜等(軟弱野菜)では、傾斜搬送過程で特に葉先側が損傷を受け易く、また隣接する作物の根元側が重なったり絡み合ったりしたまま収納バケットに収容される等、収穫時に作物の品質を損なったり収穫された作物の収集や取出し作業が煩雑になる等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の軟弱野菜収穫機は、第1に、駆動プーリ45と従動プーリ43とに巻き掛けたベルト状の搬送帯10を左右に対設し、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路40を形成する搬送部9を、走行装置5を有する走行機体2に傾斜姿勢で搭載する収穫機1において、前記搬送部9の終端部で搬送帯10から、該搬送帯10より緩やかな傾斜となして葉先側を挟持して作物を引き継いで後方搬送する左右一対の後部搬送帯10a,10aを設けると共に、搬送路40に対し一方の後部搬送帯10aを他方の後部搬送帯10aより搬送上流側にずらして対設することを特徴としている。
【0006】
第2に、後部搬送帯10a,10aの中途部下方に沿って所定の挟持間隔を有して、作物の根元側を挟持して搬送する左右一対の後部補助搬送帯10b,10bを設け、後部補助搬送帯10bの搬送速度を、後部搬送帯10aの搬送速度より低速度にすることを特徴としている。
【0007】
第3に、後部補助搬送帯10bの挟持搬送開始位置の近傍下部に、作物の根元側に一時的に接当させる下部接当部材69を設けたことを特徴としている。
【0008】
第4に、後部補助搬送帯10bを、後部搬送帯10aとの挟持間隔を有する幅の平ベルト部51に弾性挟持用突起52を下部外周に設けた構成にすると共に、後部補助搬送帯10bの平ベルト部51によって挟持間隔を塞ぐように張設することを特徴としている。
【0009】
第5に、搬送帯10の前部を巻き掛ける従動プーリ43の上部に、搬送帯10の巻き掛け径より径大で外周を弾力性を有する肉厚帯部材で形成した上掻込輪体49を設けると共に、従動プーリ43の下部に上記弾性掻込体49bより径大な突出長さで弾力性を有する掻込羽根50bを疎間隔に突設してなる下掻込輪体50を設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明による軟弱野菜収穫機は以下のような効果を奏する。
請求項1の発明によれば、搬送部の終端部で搬送帯より緩やかな傾斜となして葉先側を挟持し後方搬送する、左右一対の後部搬送帯を、搬送路に対し一方の後部搬送帯を他方の後部搬送帯より搬送前側にずらして対設したことにより、後搬送部は搬送始端部において、搬送部の搬送路から送られてくる作物を、内側後部搬送体の搬送帯の始端で挟持することなく一時的に支えた状態で後方送りして、作物の葉先を均しながら外側後部搬送体の搬送帯による挟持送りを開始させるので、後搬送部は挟持搬送時に作物の詰りの発生等を防止し品質を損なうことのない継送を行うことができる。
また後搬送部の搬送終端部において、挟持搬送を解除したとき作物を、他方の搬送帯によって支持送りを付与することができ、側方への傾倒や分散を規制することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、後部搬送帯の中途部下方に挟持間隔を有して設けた作物の根元側を挟持搬送する後部補助搬送帯を、後部搬送帯の搬送速度より低速度にすることにより、後部搬送帯と後部補助搬送帯とで挟持搬送する中途において、速度差により作物を無理なく後傾斜姿勢に姿勢変更して収容部に向けて挟持搬送させることができ、収容部において根元側を前方に向けた一定姿勢で収容し易くすることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、後部補助搬送帯の挟持搬送開始位置の近傍下部に、作物の根元側と接当する下部接当部材を設けたことにより、後部搬送帯で挟持搬送される作物が後部補助搬送帯と共に挟持搬送を行なう時点で、根元側を下部接当部材に一時的に接当させて作物を無理なく後傾斜姿勢に変更させるので、後搬送部と後部補助搬送帯との速度差による作物の後傾斜姿勢への変更を助長することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、後部補助搬送帯を、後部搬送帯との挟持間隔を有する幅の平ベルト部に弾性挟持用突起を設けた構成となし、後部補助搬送帯の平ベルト部によって挟持間隔を塞ぐように張設することにより、作物が後部搬送帯と後部補助搬送帯とによる搬送中に、挟持間隔から側方にはみ出そうとする作物や葉に対し、平ベルト部が撓みながら無理なく受けとめてはみ出しを防止しながら、搬送中途に作物の中間を支持した状態で整然と搬送排出することができる。
【0014】
請求項5の発明によれば、従動プーリの上部と下部に、搬送帯の巻き掛け径より径大で外周を弾力性を有する肉厚帯部材で形成した上掻込輪体を設けると共に、巻き掛け径より径大な突出長さで弾力性を有する掻込羽根を疎間隔に有する下掻込輪体を設けることにより、圃場から作物を搬送帯による挟持搬送に先立ち、根元側と葉先側を下掻込輪体の掻込羽根と上掻込輪体により同時的に搬送路に向けて掻込み誘導することができ、作物の挟持搬送を品質を損なうことなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した軟弱野菜収穫機の構成を示す全体側面図である。
【図2】軟弱野菜収穫機の要部の構成を示す平面図である。
【図3】掻込部の構成を示す側断面図である。
【図4】下掻込輪体の斜視図である。
【図5】内側後部搬送体の平面図である。
【図6】内側後部搬送体の側面図である。
【図7】搬送路の構成を示す断面図である。
【図8】後搬送部の搬送路の構成を示す断面図である。
【図9】収容部の要部の構成を示す背面図である。
【図10】収容部の構成を示す側面図である。
【図11】収容部のバケットを回収姿勢にした状態を示す側面図である。
【図12】収容部の回動軸の構成を示す拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態に関わる収穫機1は、主として小ネギ他ホウレン草やコマツ菜等の非結球葉菜等の軟弱野菜(以下単に作物と言う)を収穫することができ、走行機体2に圃場地面から作物を収集搬送して回収する収穫装置3を搭載している。
この走行機体2は、クローラ型の走行装置5に設置される機体フレーム4に、収穫装置3を前低後高状の傾斜姿勢によって支持し、走行装置5の両側でその駆動輪6の設置位置近傍にバッテリ7,7を設置している。
【0017】
上記走行装置5は駆動輪6を大径輪にしており、バッテリ7から給電されるモータ8の回転動力によって駆動するようにしている。バッテリ7は収穫装置3用のモータ8aにも給電しており、収穫装置3を構成する搬送部9,9aの搬送帯10,10aとカッタ11とを、後述する搬送伝動機構12を介して駆動する。
機体フレーム4は後部に二股状のハンドル13の基部を固設しており、後搬送部9aの下方に沿わせて後方に延出し、把持部に前記モータ8,8a等の正逆回転及び回転速度等の操作を司る各種操作スイッチを制御ボックス16を介して備えている。
これにより収穫機1は、モータ8を正逆及び回転調節をして機体の前後進と走行速度調節操作を行い、モータ8aを回転調節して搬送速度調節操作を行い、圃場や作物の状況に適応した走行速度と搬送速度を選定し収穫作業を行うことができる。
【0018】
以下各部の構成について説明する。先ず図1,図2を参照し走行機体(車体)2及び走行装置5について詳述する。この走行機体2は機体フレーム4を、その軸支部を介し前記駆動輪6の駆動軸6aを中心に回動可能に軸支している。
即ち、機体フレーム4は駆動軸6aのやや前方上方に収穫装置3の装置フレーム3aを着脱可能に取付けており、該装置フレーム3aの前側を回動規制支持機構17を介して、走行装置5の走行フレーム19に支持することにより、収穫装置3を前低後高の傾斜姿勢で設けている。
【0019】
機体フレーム4は、前記駆動軸6aより後方に延長されるフレーム4aの後部に、前記モータ8を配設し、該モータ8により伝動機構を内装する伝動ケース20を介してモータ軸から駆動軸6aを伝動するように構成している。そして、フレーム4aに収穫装置3から供給される収穫物を収集する収容部21を設けている。また制御ボックス16は側面視で三角形状となし、走行装置5と装置フレーム3aとの間に形成される空間部で、左右のハンドル杆を接続する取付フレーム4bに取付けている。
【0020】
また機体フレーム4は、バッテリ載置台22を走行装置5の上方を跨ぎ、駆動軸6aの両側端に近接させるように左右に形成している。(図9)
これにより重量のある左右のバッテリ7は、駆動軸6aの両側でやや前側寄りの適正位置に安定よく設置させ、機体フレーム4に支持される収穫装置3の重量バランスを図るウェイトとしても利用し、収穫装置3の重心位置を前記回動規制支持機構17の近傍に定めるようにしている。
【0021】
上記のように機体を構成した収穫機1は、収穫装置3の前端部を地面に接地させて走行し収穫作業を行なうとき、地面の凹凸に応じた収穫装置3の上下回動を駆動軸6aを中心にスムーズに行う。また同様に走行装置5も駆動軸6aを中心に前方側を地表の凹凸に応じて上下回動するので、収穫装置3と走行装置5の単独的な回動を互いに妨げることなく許容することができる。これにより収穫機1は、機体振動を低減した走行が可能になり、作物の収穫を高い性能で行うことができる。
【0022】
走行装置5は駆動輪6と従動輪6bとにゴム製の突起付無端帯(クローラ)23を巻き掛けており、この実施形態では駆動輪6を大径となし従動輪6bを、駆動輪6の直径の約半分程度となして、駆動軸6aに軸支部を介して回動自在に軸支した走行フレーム19の先端部に遊転自在に軸支している。
これにより走行装置5は側面視において、クローラ23を前方が鋭角状の三角形状に張設することができ、小径の従動輪6b側を装置フレーム3aの左右幅の中央部で、搬送部9より前方下部に可及的に接近させ、且つクローラ23の前後方向の接地長を大きくしながら、収穫機1の全長を抑制し機体をコンパクトに纏めることができる。
【0023】
また走行装置5は図1,図9で示すように、左右のバッテリ載置台22の下方において、接地輪24をクローラ23から機体幅内で左右方向に位置調節可能に設置することにより、左右方向の機体傾動を規制することができるようにしている。
即ち、バッテリ載置台22の下面に対し、接地輪24を軸支するホルダ25を左右方向に取付け位置調節自在に取付けるようにしている。これにより左右の接地輪24は畝の幅等に適応させて左右の接地位置を調節することができるので、左右方向の機体安定性を高めた走行をスムーズに行うことができる。
【0024】
回動規制支持機構17は、走行フレーム19の中途部に横向きに突設される支持杆29と、該支持杆29の両端にスライド可能に嵌挿された状態で立設する連結杆30を有している。この左右の連結杆30は、共に先端を収穫装置3の両側に設けた支持部31に挿入した状態で、支持杆29と支持部31との間にコイルスプリングを介装している。
これにより左右に配置される回動規制支持機構17は、走行装置5に対し装置フレーム3aの左右を支持部31を介して緩衝構造を以って支持される。
【0025】
そして、図1,図9で示すようにフレーム4aは、作物を収容する容器としてのバケット32を、ハンドル基部側の近傍でバケット32の前部を軸支する回動軸(偏心輪)33を支点に、図1,図10で示す作物の収容姿勢と、図11で示す作物の回収姿勢(取出姿勢)とに切換え可能とする収容部21を設置している。
このバケット32は、ハンドル13の左右幅内で底壁をなすように形成される受面部32aと、その両側から立ち上げた側壁部32bとによって上向きコ字状断面をなすようにされ、且つバケット32を収容姿勢と回収姿勢に択一的に切換え可能とする姿勢切換機構34を備えている。
【0026】
これにより収容部21は、姿勢切換機構34を介しバケット32を収容姿勢にしたとき、受面部32aを後方を後傾状に支持し、収容部21の後方で作業者の足元に広いスペースを形成して運転歩行を妨げることなく、且つ後搬送部9aから搬送排出される作物を後傾姿勢の受面部32aで受けると共に、側壁部32bによって側方の漏出を規制して整然と集積させた集積状態に収容する。
そして、このときバケット32は、後述する揺動運動構造によって、回動軸33を回転させることにより前後方向に往復移動させることができ、この揺動運動によって収容した作物を、後述する前壁32c側に根元部を揃えながら整然と収容させることができるようにしている。
【0027】
またバケット32は図11で示す回収姿勢において、回動軸33を支点に受面部32aを略水平又はやや下り姿勢にすることができ、この状態でバケット32を姿勢切換機構34が有するスタンド35を介して接地支持させることができるようにしている。
これによりバケット32は作物を満杯にしたときでも、スタンド35がバケット32及び作物重量を受けて、受面部32aを作業者が作物を取り出し易い適正な取出角に安定よく保持される。
【0028】
実施形態の姿勢切換機構34は図1,図9〜図12で示すように、フレーム4aの左右に偏心回転可能に軸支される回動軸33,33に、バケット32の両側壁部32bの前方下部に設けたメタル部33aを嵌合させることにより回動可能に軸支している。
またバケット32及びスタンド35を支持する支持アーム(回動アーム)36を、フレーム4bから外向きに突設したアームピン4cに回動自在に軸支している。
この回動アーム36は、アームピン4cに軸支される基部側から、回動軸33の軸支部を跨ぐように下向きU字状に形成される中間アーム36aに、前記受面部32aの後方下部に接当する支持部材(ローラ)36bを有する先端アーム36cを設け、且つ下部にスタンド35の基部を回動自在に軸支するスタンド軸35aを突設している。
【0029】
上記中間アーム36aは図11で示す回収姿勢において、アームピン4cと回動軸33とを結ぶ延長線と略同じ位置にスプリングピン37aを突設し、該スプリングピン37aに取付けたスプリング37を、上記延長線の前方下部でハンドル13基部の近傍位置でフレーム4aに突設したスプリングピン37bに係止している。
これによりスプリング37は、作業者が回動アーム36を収容姿勢と回収姿勢とに択一的に切換えたとき、アームピン4cの上下方向に切り換わり、回動アーム36を同方向に付勢して姿勢保持する。
【0030】
また上記スプリングピン37aはスタンド付勢用のスプリング35bを取付けており、該スプリング35bの他端を、図11で示す回収姿勢におけるスタンド35のスタンド姿勢を位置決めするストッパピン35cに係止している。
これによりスプリング35bは、スタンド姿勢においてスタンド軸35aを越えて前方に切り換わることにより、スタンド35の先端部をスタンド軸35aの直下より前方に接地させることができる。
【0031】
上記構成において図9,図12で示すように前記左右の回動軸33は、軸心から偏寄した位置を偏心軸38で連結していると共に、該偏心軸38の右側の延長軸心位置をフレーム4aに取付けた駆動部としてのモータ8bのモータ軸に接続している。
これにより制御ボックス16の操作スイッチを操作しモータ8bを回転させると、モータ軸を中心に回動軸33が偏心回転するので、バケット32は回動アーム36によって後傾斜姿勢を保持して上下方向の移動を規制された状態で、前部を回動軸33の直径と同じ振幅を有して後部に接当する支持部材36bを支点に揺動回動させ、且つ後部を前後方向に往復作動させる揺動運動をする。
【0032】
上記のように揺動運動をすることができるバケット32は、収容される作物を前壁32c側に向けて根元部を揃えながら効率よく収容させることができると共に、作物の損傷を防止した取出しを行い易くすることができる。
また上記構成において前壁32cは図11,図12で示すように、基部に形成した筒状部32dを偏心軸38に嵌挿し、上端部を取付フレーム4bの板面に接当させて凭れ掛けている。これにより前壁32cは図10で示すように、収容姿勢におけるバケット32の前部開口を取付フレーム4bと共に塞ぐことができ、且つ図11で示すように回収姿勢において、バケット32を取付フレーム4bに凭れ掛けて残置させた状態で、バケット32の前部を大きく開放するので、前壁32cが邪魔になることなく作物の取出し作業を行い易くする。
【0033】
次に収穫装置3について図1〜図8を参照し説明する。収穫装置3は作物を地面側から後方に向けて搬送する搬送部9と後搬送部9a、及び後搬送部9aの終端で作物を収容する前記収容部21等から構成している。搬送部9は搬送始端側に前処理部として圃場地面に植生している作物を切断又は掘り起こしをするカッタ11を備え、搬送始端で収集される作物の根元側(茎部)を挟持して後方上方に向けて搬送し、搬送終端側に設置される後搬送部9aに継送する。
後搬送部9aは作物の主として葉先側(葉茎部)を挟持して搬送部9より緩い傾斜で後方搬送し、搬送終端から作物を後方下方に配置される収容部21のバケット32に排出落下させて供給する。
【0034】
先ず搬送部9,9aについて説明する。この搬送部9,9aは装置幅内において、圃場に作物が植立する左右2列条分の標準的な幅と等しい間隔を有するように調整することができ、植立する左右の作物を収集し所定長さに亘って後方に向けて挟持搬送する搬送路40を構成している。この搬送路40は図7で示す断面構造で対をなす搬送帯10を左右に対向配置させることにより形成される。また左右の搬送路40を形成する4本の搬送帯10は、断面視で逆L字状をなす外側搬送フレーム41,41と内側搬送フレーム42,42とに、それぞれ同一機構によってベルト張りをすることにより、ユニット構造で対をなす外側搬送体9cと内側搬送体9dとを簡潔で軽量な構成にしている。
【0035】
上記外側搬送体9cと内側搬送体9dは、各搬送フレームの横板上部の前後端に対し、従動プーリ43と駆動プーリ45とを縦軸回転可能に軸支し、且つ両者の中間に所定のベルト支持間隔を有し図示しない複数の案内プーリを、縦軸回転可能に軸支し搬送帯10の搬送路40側の裏面に転接させることによりベルト張りを行なっている。
また従動プーリ43,駆動プーリ45,案内プーリには、その外周所定位置に図7で示すようにプーリ溝48を形成しており、該プーリ溝48に搬送帯10の内周に突設されるガイド突起47を突入させて案内するようにしている。
【0036】
上記搬送帯10は可撓性を有しながら縦向きの起立剛性(通直性)を有するベルト本体を、図1,図3,図7で示すように搬送路40を形成する長さと幅を有する平ベルト部51にしており、実施形態の平ベルト部51は、例えば小ネギを好適に搬送するものとして、その根元側から葉の略全体主要部を挟持又は支持する幅にしている。
この平ベルト部51は、その表面側の下部に作物(子ネギ)の根元側を滑りや圧潰しを防止して適切に挟持することができる弾性挟持用突起52を設けている。この弾性挟持用突起52はスポンジや緩衝用ゴム或いはエアーチューブ等で形成している。そして、搬送帯10は平ベルト部51の裏面側に、弾性挟持用突起52の設置位置と対向する位置に前記ガイド突起47を設けている。
【0037】
このガイド突起47は駆動プーリ45等の外周に形成した凹溝状のプーリ溝48に嵌挿されて、スリップやベルト外れを防止した伝動を行う。
従って、駆動プーリ45のプーリ溝48にガイド突起47を嵌挿させた搬送帯10は、互いの弾性挟持用突起52によって作物の挟持箇所を押し潰したりすることなく柔らかく挟持して搬送を確実に行う。また作物の非挟持部分を対向する平ベルト部51で形成される搬送路40の搬送支持間隔内で、側方への姿勢を規制した状態で整然と搬送することができる。
【0038】
また外側搬送体9cと内側搬送体9dは図1,図2,図3で示すように、各搬送帯10の始端側の上下で作物を搬送路40に向けて掻込む上掻込輪体49と下掻込輪体50とからなる掻込部10dを設けることにより、軟弱野菜の収穫初期において作物を傷めることなく搬送路40内に向けて掻込誘導を促進するようにしている。
即ち、搬送帯10の前部を巻き掛ける従動プーリ43の上部に、搬送帯10の巻き掛け径より径大で外周を弾力性を有する肉厚帯部材で形成した上掻込輪体49を設けると共に、従動プーリ43の下部に上記弾性掻込体49bより径大な突出長さで弾力性を有する掻込羽根50bを疎間隔に突設してなる下掻込輪体50を設けている。
【0039】
実施形態の掻込部10dは、上掻込輪体49を従動プーリ軸43aに設けた従動プーリ43の上部に着脱可能に取付けており、下掻込輪体50を従動プーリ軸43aに嵌挿させた状態で従動プーリ軸43aの下部に着脱可能に取付けている。
上掻込輪体49は、従動プーリ43と略同径状をなすリング状の輪体49aの外周に、前記弾性挟持用突起52と同様な弾力性を有する肉厚部材(スポンジ)を貼着してなる弾性掻込体49bを設けている。これにより相対向する掻込輪体49は、平ベルト部51より先行して、作物の上部を柔らかく滑らかな肉厚部材によって、作物を葉先側に傷をつけること無く両側から把持するように掻込んで搬送路40に掻込み誘導する。
【0040】
また下掻込輪体50は図4で示すように、従動プーリ43と略同径状をなすドーナツ盤状の輪体50aの外周に、弾力性を有する線状部材をブラシ状に束ねて疎間隔を有して植設される掻込羽根50bを備えている。これにより相対向する下掻込輪体50は、平ベルト部51及び弾性挟持用突起52より先行して、作物の下部を両側から掻込羽根50bが柔らかく疎間隔な接当を以って掻寄せながら抱き上げるように搬送路40に掻込み誘導することができる。
【0041】
そして、上記のように構成されて対をなす外側搬送体9cと内側搬送体9dは、互いの外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の下部側を、前後に配置される杆状の連結フレーム53aと板状の連結フレーム53によって連結することにより、それぞれ左右の搬送路40を形成するユニット構造の左搬送部と右搬送部とによって、収穫装置3の本体部を構成している。
【0042】
次に図1,図2を参照し前記接地部構造24について説明する。この収穫機1は各外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の先端に、圃場に植立する作物を掻き分ける(分草)デバイダ54,54aを設けていると共に、カッタ11を地表から所定深さ(例えば10〜20ミリ程度)だけ地中に埋没することができるように設けている。
これにより各デバイダ54,54aは、機体の進行に伴い作物を各搬送路40側に分草誘導することができ、且つ分草された作物は内向き回転する両側の搬送帯10が挟持搬送を開始するとき、カッタ11によって根元部を切断されるため搬送帯10による挟持搬送がスムーズに行われる。
【0043】
実施形態における接地部構造24は、逆L字状断面をなす各外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42の縦側板の先端部形状を側面視で略三角形状となしており、この縦側板面に沿って補強板55をボルト等によって着脱可能に取付けている。
図示例の補強板55は、搬送フレームの肉厚の数倍の厚さを有する鉄板を先端形状と同じ三角形状となして、搬送フレームの前端から走行装置5に近接する位置まで接合する大きさにしている。これにより外側搬送フレーム41と内側搬送フレーム42は先端部の強度を有して肉薄板にすることができるため機体の軽量化を図ることができる。
【0044】
また各補強板55は厚さ及び大きさを適宜選択し、機体前方のウェイト調整を行なうウェイト調整構造を兼用するように構成することができ、前記収穫機1の後方重量と前方重量との重量バランスの改善を、ウェイト調整構造のためのスペースを大きく占めることなく簡単な構造によって行うことができる。
また上記のように構成される補強板55は、搬送フレーム先端部に沿い全面を覆うように重合されて外側搬送フレーム41及び内側搬送フレーム42を剛体構造にするので、分草杆54,54aを有する接地用のデバイダ56を補強板55の下辺に強度を有して取付けることができる。また肉厚で広幅な補強板55は、カッタ11の取付軸57を所望の位置に安定よく設けることができる。
【0045】
またカッタ11は正面視でL字状をなし、その縦片部を各補強板55に対し取付軸57を支点に刃部を揺動可能に取付けており、且つ縦片部の上部を後述する搬送伝動機構12側に構成されるカッタ駆動機構の駆動杆11aに連結している。これにより駆動杆11aが前後作動すると、カッタ11は取付軸57を支点に刃部を地中で前後揺動させて作物の根元部或いは根を切断することができる。尚、カッタ11は刃部の上下高さを調節したり、必要により作動を固定した状態で使用することができ、また取り外した状態での収穫作業も行なうようにすることもできる。
【0046】
次に図1,図2,図5,図6を参照し後搬送部9aについて説明する。この後搬送部9aは、左右で対をなす駆動プーリ61,61aと従動プーリ62,62aを各搬送フレーム63の前後端に軸支し、駆動プーリ61と従動プーリ62及び駆動プーリ61aと従動プーリ62aのそれぞれに、搬送帯(後部搬送帯)10aを張設して作物を挟持搬送する搬送路40a,40aを形成し、上記各搬送帯10aの後方寄り下方に作物の支持間隔を有して、図7で示す構成からなる搬送帯(後部補助搬送帯)10bを駆動プーリ64と従動プーリ64aに張設したユニット構造となし、搬送フレーム63を機体フレーム4の上部から後方に延長する支持フレーム4cによって着脱可能に取付支持している。
【0047】
即ち、後搬送部9aは、機体幅の左右外側に搬送帯10aと下段の搬送帯10bとからなる後部搬送体65,65を配置し、該後部搬送体65,65の内側に同様な構成からなる搬送帯10aと下段の搬送帯10bとからなる後部搬送体65a,65aとを配置して、対をなす外側後部搬送体65と内側後部搬送体65aで形成される各搬送路40aをそれぞれ前記各搬送路40に連通させている。
これにより後搬送部9aは、側面視で搬送路40aを搬送路40より緩やかな傾斜となして搬送路40の終端上部で、作物を搬送帯10aによって葉先側を挟持して引き継ぎ、且つ搬送帯10bによって根元側を柔らかく挟持状に支持して後方に搬送することができる。
【0048】
上記構成において内側後部搬送体65aは、外側後部搬送体65より相対向する駆動プーリ61,61aと従動プーリ62,62aが同位置にならないように、内側後部搬送体65a側を前方にずらして設置し、各搬送帯10の駆動プーリ45から等速度で駆動するようにしている。
先ず、図6を参照し内側後部搬送体65aの伝動構造について説明すると、搬送フレーム63は、前後の駆動プーリ61aと従動プーリ62aとの間に、前方から中間駆動プーリ66を有するプーリ軸66aと、搬送帯10bを駆動する前記下段の駆動プーリ64と上部駆動プーリ64bを有するプーリ軸64cと、従動プーリ64aを有するプーリ軸64d等を軸支している。
【0049】
そして、図6で示すように上記中間駆動プーリ66のプーリ軸66aを、搬送帯10の駆動プーリ45のプーリ駆動軸45aに対し、自在継手67を介して着脱及び伝動角変更可能に連結している。これにより中間駆動プーリ66の径大プーリ66bからベルト66cを介して駆動プーリ61aを駆動して搬送帯10aを回動し、且つ径小プーリ66dからベル66eを介して前記下段の駆動プーリ64と一体な上部駆動プーリ64bに駆動して、該駆動プーリ64により搬送帯10bを回動する。
このとき搬送帯10bは、駆動プーリ64が中間駆動プーリ66の径小プーリ66dからベルト伝動され搬送帯10aよりやや低速で回転される。
【0050】
また外側後部搬送体65は、図6で示す内側後部搬送体65aに対し中間駆動プーリ66を省略し、図1で示される駆動プーリ61を前記搬送帯10のプーリ駆動軸45aに対し、自在継手67を介して着脱及び伝動角変更可能に連結し、他の構成は同じにしている。これにより図2で示すように、外側後部搬送体65はプーリ駆動軸45aから直接伝動されて、始端部を内側後部搬送体65aより後方にずらした位置にすることができると共に、後端部を内側後部搬送体65aより後方に位置させて設置することができる。また搬送帯10aの下部の搬送帯10bの搬送速度も内側後部搬送体65aの搬送帯10bの速度と同じにすることができる。
【0051】
従って、後搬送部9aは搬送始端部において、搬送路40から送られてくる作物を、内側後部搬送体65aの搬送帯10aの始端で挟持することなく一時的に支えた状態で後方送りするので、作物の葉先を均し揃えながら外側後部搬送体65の搬送帯10aによる挟持送りを開始させる。
これにより後搬送部9aは、搬送始端部で搬送路40から作物を継送するとき、挟持開始時に作物を駆動プーリ61,61aの間で一挙に挟持させないので、作物を傷めたり詰りの発生等を防止することができる。また搬送路40の終端と搬送路40aの始端部に非挟持の死角部分を生じさせないので、作物の落下漏れやずれを無くし作物の品質を損なうことなくスムーズな継送を行うことができる。
【0052】
また後搬送部9aは搬送終端部において、上記のように相対向する搬送帯10aと搬送帯10bとにより挟持搬送された作物の挟持が解除された時点で、作物を一挙に放出落下させることなく外側搬送帯10aによる支持送りを付与するので、外側方への傾倒や分散を規制して収容部21のバケット32内に整然と収容させることができる。
尚、各駆動プーリ61及び中間駆動プーリ66を、自在継手67を前記駆動プーリ45の上部に凹入形成した凹陥部45b内に設けることにより、各外側後部搬送体65と内側後部搬送体65aを各外側搬送体9cと内側搬送体9dとにより近接させた上下関係を以って引継ぎ搬送をさせることができる。また自在継手67を駆動プーリ45内に収容した状態にするので、継手部への作物の巻き付きを防止した搬送をスムーズに行うことができる。
【0053】
また外側後部搬送体65と内側後部搬送体65aの搬送帯10bは、図7で示す前記搬送帯10と同様の、平ベルト部51と弾性挟持用突起52とガイド突起47等からなるベルトを、駆動プーリ64と従動プーリ64bに巻き掛けている。これにより搬送帯10bの平ベルト部51によって前記挟持間隔を可撓性を有して塞ぐことができると共に、平ベルト部51の下部に沿う弾性挟持用突起52で作物の下部を柔らかく挟持して搬送帯10aより低速度で搬送するようにしている。
従って、搬送中途において挟持間隔から側方に傾倒したりはみ出そうとする作物に対し、平ベルト部51が撓みながら無理なく受けとめてはみ出しを防止し、作物の中間を支持した搬送を大きな搬送抵抗を伴うことなくスムーズに行うことができる。
【0054】
上記構成において、隣接する内側後部搬送体65a,65aの搬送帯10b,10bは図5に示すように、始端部に前部を内向きに湾曲させた誘導板68を設けることにより、搬送帯10a,10aによる挟持搬送中途の作物をスムーズに挟持搬送開始させると共に、終端部に後部を内向きに湾曲させた排出案内板68aを設けることにより、搬送帯10a,10aによる挟持搬送終了後の作物を、巻き付きを防止してスムーズに排出落下させるようにしている。
【0055】
そして、搬送帯10bの前部で挟持開始位置の下方に、挟持される作物の根元側(最下部側)に接当する下部接当部材69を横向に臨設している。この下部接当部材69は作物が搬送帯10aで挟持搬送される作物が搬送帯10bによる挟持搬送を行なう時点で、根元側を下部接当部材69との接当を介して一時的に制動し作物を後傾斜姿勢に変更させるので、後搬送部9aによる後方搬送中に搬送帯10aと搬送帯10bの速度差により作物を無理なく一層後傾斜姿勢に姿勢変更して挟持搬送させることができる。
これにより後搬送部9aは、後搬送部9aの終端から作物を適正な後傾斜姿勢で放出落下させることができ、後傾斜姿勢のバケット32の受面部32aに沿って根元側を前方に揃えた状態で整然と集積し収容することができる。尚、下部接当部材69は、横方向に支持される支持軸69aにパイプ69bを遊転自在に嵌挿させる構成が望ましい。
【0056】
また搬送帯10は図7で示すように、前記搬送帯10と同様に平ベルト部70の表面側に弾性挟持用突起71を設け、裏面側に弾性挟持用突起71の設置位置に対向する位置にガイド突起72を設けている。そして、ガイド突起72を駆動プーリ61,61aと従動プーリ62,62aの外周に形成した凹溝状のプーリ溝73に嵌挿させて巻き掛けている。また図示例の弾性挟持用突起71は、弾力性及び可撓性を有するスポンジや緩衝用ゴム等の中空形成部材によって、ベルト方向に一連の中空部74を形成する中空帯にしている。これにより搬送帯10aは、搬送路40a内に供給される作物の葉先側を挟持するときの挟持抵抗に応じ点線で示すように中空部74を変形させて、葉先側のボリュームや形状等の状態に応じた断面形状となって、葉先側の損傷及び抜け落ち等を防止した搬送をスムーズに行うことを可能にする。
【0057】
次に収穫装置3の伝動構造について図1,図2を参照し説明する。先ず前記搬送伝動機構12は搬送部9の後方下部に設置され、左側の外側搬送フレーム41の側方に突設したモータ台41aにモータ8aを下向きに設置していると共に、モータ軸に設けた図示しない駆動スプロケットからチェン等を介して、各搬送帯10の駆動プーリ45をプーリ駆動軸45aに設けた入力スプロケットに巻き掛けて、各搬送帯10を搬送方向に回転駆動するようにしている。
【0058】
また搬送伝動機構12は、左右の各搬送路40の両側に対をなして設けているカッタ11が有するカッタ駆動杆11bを、プーリ駆動軸45aから変換伝動して前後に往復作動させるカッタ駆動機構を備えている。これによりカッタ11はカッタ駆動杆11bの往復作動により、取付軸57を支点に刃部を前後揺動させて作物の根元部の切断や掘り起こし等を行なう。
【0059】
次に以上のように構成される収穫機1により、小ネギ(以下単にネギと言う)を収穫する作業例について説明する。収穫機1は圃場のネギ列の幅に適応させて左搬送部9cと右搬送部9dとを左右に間隔調節し、圃場のネギ列の幅に適応させて左右の搬送路40の始端部を位置決めして作業が開始される。次いで、モータ8を駆動することにより駆動輪6が回転し、走行装置5が収穫装置3の略中央部を支持して走行する。
またモータ8aを駆動することにより搬送伝動機構12を介し搬送路40の両側に設置される各搬送帯10を互いに内向き回転させ、またカッタ駆動機構を介しカッタ11を往復作動させる。
【0060】
これにより収穫機1はネギ栽培圃場を進行し、デバイダ56,56aで掻き分けたネギの根又は根元部をカッタ11で切り、切断されたネギを搬送帯10によって後方上方に向けて挟持搬送する。このとき各搬送帯10の始端側の上下で作物を搬送路40に向けて掻込む上掻込輪体49と下掻込輪体50とが、収穫初期において作物を傷めることなく適正姿勢を以って搬送路40内に向けて掻込誘導をする。
【0061】
次いで搬送路40の終端から挟持搬送を解除されるネギは、該搬送路40より緩やかな傾斜の搬送路40bとなした後搬送部9aの後部搬送帯10aによって、葉先側が挟持されて引き継がれ後方に向けて挟持搬送される。
このとき、搬送部9から根元側を挟持して搬送される作物は、葉先側を引き継いで挟持し水平に近くなる緩傾斜で搬送されるので、作物の根元側が自由となり根元自重による根揃いを促進させて隣接する根元の重なりや絡みが解される。
【0062】
次いで、搬送帯10aの後方搬送に伴い根元側が垂下状態となって根揃いした作物は、根元側が下部接当部材69と接当し一時的な制動を受けて後傾斜姿勢にされながら搬送帯10bによる低速挟持搬送が行なわれる。そして、搬送帯10aと搬送帯10bとによる共同搬送中途部で、作物は無理なく2段階的に後傾斜姿勢に変更されて、搬送終端で作物の挟持搬送が解除されるとき、収容部21のバケット32に向けて適正な後傾斜姿勢をなして落下し整然と収容される。
【0063】
このとき、一方の後部搬送帯10aを他方の後部搬送帯10aより搬送上流側にずらして対設した後搬送部9aは、後搬送部9aは搬送始端部において、搬送路40から送られてくる作物を、内側後部搬送体65aの搬送帯10aの始端で挟持することなく一時的に支えた状態で後方送りするので、作物の葉先を均しながら外側後部搬送体65の搬送帯10aによる挟持送りを開始させるため、挟持搬送時に作物を傷めたり詰りの発生等を防止することができると共に、搬送路40の終端と搬送路40aの始端部で、作物の漏れやずれを防止し品質を損なうことのない継送を行うことができる。
【0064】
また後搬送部9aの搬送終端部において、挟持搬送を解除したとき作物を他方の搬送帯10aによって支持送りを付与することができ、側方への傾倒や分散を規制して収容部21のバケット32内に整然と収容させることができる。
従って、上記のように構成される後搬送部9aを備えた収穫機1は、挟持搬送及び排出時に作物に損傷を生じさせることなく品質よく収穫することができるので、機体の小旋回走行や作業の高速化を行う場合でも品質を損なうことなく収穫作業を能率よく行うことができる等の特徴がある。
【符号の説明】
【0065】
1 収穫機(軟弱野菜収穫機)
2 走行機体
3 収穫装置
5 走行装置
9 搬送部
9a 後搬送部
10 搬送帯
10a 搬送帯(後部搬送帯)
10b 搬送帯(後部補助搬送帯)
21 収容部
40 搬送路
43 従動プーリ
41,42 搬送フレーム
43 従動プーリ
45 駆動プーリ
49 上掻込輪体
49b 弾性掻込体
50 下掻込輪体
50b 掻込羽根
51 平ベルト部
52 弾性挟持用突起
61 駆動プーリ
62 従動プーリ
69 下部接当部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリ(45)と従動プーリ(43)とに巻き掛けたベルト状の搬送帯(10)を左右に対設し、作物を下方から後方上方に向けて挟持搬送する搬送路(40)を形成する搬送部(9)を、走行装置(5)を有する走行機体(2)に傾斜姿勢で搭載する収穫機(1)において、前記搬送部(9)の終端部で搬送帯(10)から、該搬送帯(10)より緩やかな傾斜となして葉先側を挟持して作物を引き継いで後方搬送する左右一対の後部搬送帯(10a),(10a)を設けると共に、搬送路(40)に対し一方の後部搬送帯(10a)を他方の後部搬送帯(10a)より搬送上流側にずらして対設することを特徴とする軟弱野菜収穫機。
【請求項2】
後部搬送帯(10a),(10a)の中途部下方に沿って所定の挟持間隔を有して、作物の根元側を挟持して搬送する左右一対の後部補助搬送帯(10b),(10b)を設け、後部補助搬送帯(10b)の搬送速度を、後部搬送帯(10a)の搬送速度より低速度にする請求項1記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項3】
後部補助搬送帯(10b)の挟持搬送開始位置の近傍下部に、作物の根元側に一時的に接当させる下部接当部材(69)を設ける請求項1又は2記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項4】
後部補助搬送帯(10b)を、後部搬送帯(10a)との挟持間隔を有する幅の平ベルト部(51)に弾性挟持用突起(52)を下部外周に設けた構成にすると共に、後部補助搬送帯(10b)の平ベルト部(51)によって挟持間隔を塞ぐように張設する請求項1乃至3記載の軟弱野菜収穫機。
【請求項5】
搬送帯(10)の前部を巻き掛ける従動プーリ(43)の上部に、搬送帯(10)の巻き掛け径より径大で外周を弾力性を有する肉厚帯部材で形成した上掻込輪体(49)を設けると共に、従動プーリ(43)の下部に上記弾性掻込体(49b)より径大な突出長さで弾力性を有する掻込羽根(50b)を疎間隔に突設してなる下掻込輪体(50)を設ける請求項1乃至4記載の軟弱野菜収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−193747(P2011−193747A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61344(P2010−61344)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【出願人】(391052127)株式会社ニシザワ (14)
【Fターム(参考)】