説明

軟水器における、または軟水器に関する改善

封入壁を有し、かつ、カルシウムイオンを結合することができる軟水剤を含む組成物を含有する軟水器であって、前記封入壁は水および前記水に溶解される成分に対して透過性であり、前記軟水器は界面活性剤を含まない、軟水器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水器、特に封入壁(enclosing wall)を有する軟水器に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の金属化合物、特にカルシウム化合物が水の中に存在する場合、それが水の特性に著しく影響することがよく知られている。“硬水”は多量の水溶性のカルシウム化合物およびマグネシウム化合物を含有し、石鹸または洗浄剤と共にスカムを形成するため、泡立てるために大量の石鹸または洗浄剤が必要となる。そのような水からは、例えば加熱、pH変化または蒸発などによりスケール沈着が簡単に形成され得る。
水性溶液から金属イオンを除去するための多くの提案がなされてきた。工業上の観点からは、流路内を流れる水性溶液から重金属イオンを捕獲するためのフィルター層およびポリマーフィルターなどの提案がなされた。具体例がEP-A-992,238 および GB-A-2,086,956に示されている。家庭用途の観点からは、水性洗浄溶液にキレート組成物を加えることによってカルシウムイオンなどの金属イオンを捕獲することが可能である。キレート組成物の具体例がEP-A-892,040に示されている。しかしながら、衣類洗濯機によって行われるようなマルチステップ洗浄プロセスにおいては、プロセスの途中段階で水と共にキレート剤が流出することは問題となり得る。
従って、製品(ware)洗浄機の洗浄作業の全工程(衣類洗濯機のリンスサイクルを含む)にわたって、簡便な方法で金属イオン(少なくともカルシウムイオン、好ましくはさらに他の金属イオン)を結合する技術が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、封入壁を有し、かつ、カルシウムイオンを結合することができる軟水剤を含む組成物を含有する軟水器であって、前記封入壁は水および前記水に溶解される成分に対して透過性であり、前記軟水器は界面活性剤を含まない、軟水器を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明の軟水器は、製品洗浄機の中の水に曝された場合に一定の時間にわたって軟水剤が放出されるように設計されている。
本発明の軟水器の1つの利点は、簡単に個別の投入物とすることが可能であり、かつ、その投入量を、液体または緩やかな粉末で必要となるような測定システムを必要とせずに変更し得ることである。さらに高度な軟水化が必要な場合には、1回に2以上の投入物を使用することができる。
本発明の軟水器のさらなる利点は、軟水器が、その内部にある組成物も含めて、漂白剤を含まないことである。“漂白剤を含まない”とは、0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、好ましくは0重量%の漂白剤を含むことを意味する。
本発明の軟水器は、例えば、食器洗浄機または衣料洗濯機での使用に適し得る。
【0005】
前記軟水器は、水および前期水に溶解している成分に対して透過性の封入壁を有する。しかしながら、前記封入壁は、軟水器内に保持される粉末に対しては非透過性である。封入壁は水に対して透過性である。
水透過性とは、DIN EN ISO 9237に従って、100Paで少なくとも1000 l/m2/sの空気透過性を有することを意味する。加えて、封入壁は、粉末の軟水化組成物を保持できないほど透過性が高くてはならない。従って、例えば、封入壁は250μm未満、好ましくは150μm未満、より好ましくは50μm未満のメッシュサイズを有し得る。
閉じた軟水器は、開封することなく衣料洗濯のサイクル(2時間洗浄/リンス/回転 サイクル, 95℃, 1600rpmの回転)に耐えなければならない。
【0006】
軟水化組成物はいかなる固体形体(例えば粉末または1以上の錠剤)であってもよい。“粉末”とは、固体で流動性を有する(flowable)あらゆる組成物を意味する。従って、粉末は、例えば顆粒または凝集した粒子の形体にあってもよい。錠剤は、圧縮した粉末顆粒または凝集した粒子の形体にあってもよい。
前記軟水器は、例えば洗濯機の内部配管に入ってフィルター上に移動するなどのように、ドラムから移動して出るものであってはならない。従って、軟水器は一般に大きく、好ましくは長さと幅の最小値が少なくとも100mm、より好ましくは少なくとも120mmである。
前記軟水器は好ましくは薄く、すなわち、小袋(sachet)の厚さは、小袋の他の2つの次元(幅、長さ)の少なくとも5倍少なく、好ましくは少なくとも10倍少なく、理想的には少なくとも30倍少ない。
前記軟水器は、使用後に廃棄してもよいし、あるいは、特定の軟水剤を使用した場合には再生し(例えば陽イオン交換樹脂では塩化ナトリウムを使用してイオン交換をもたらす)、再利用することができる。
【0007】
前記軟水器は、洗浄する物品と一緒に自動洗浄機内に入れることができる。あるいは、前記軟水器は、製品洗浄機のリンス水または洗浄水の流路内に、水がそれを通過するような形態でパックすることができる。これは、衣料洗濯機に使用される水を軟水化するための効率的な方法である。適切には、主要の洗浄用の水は軟水器を通過せず、前記水の軟水化は洗濯洗浄剤組成物中に存在する従来のビルダーにより達成される。リンスに先立って、ビルダーを含む洗浄水が排水され、そしてその後初めてリンス水が機械内に導入される;このリンス水は、ローディングトレイの中に配置された軟水器を通過することによって軟水化されている。ビルダー、および軟水器中の金属イオン封鎖剤のいずれも他方と同時には働かない。従って、それらは互いに競合せず、無駄に利用されることはない。
【0008】
好ましくは、前記軟水器は2つの膜(web)で挟んだことによる薄い容器または小袋に形成される。水透過性のシートまたはフィルムが少なくとも片方の膜に存在し、そして容器の少なくとも1つの封入壁を形成する。水透過性の外側の封入壁は、例えば、テキスタイル、ポリマーまたは紙の、織物、編物または好ましくは不織布の材料を含み得る。前記材料は、単一層または積層の形体にあってもよい。好ましくは、封入壁は、1、2または3層の積層を有するシートを含み、それにより、容器内の溶解していないまたは不溶性のいかなる物質も、細孔を通過するには大きすぎるようになるか、または、封入壁を通過して容器から出るためには不可能な程曲がりくねった経路を通らなければならなくなる。好ましくは、前記シートは織物または不織布の材料である。
【0009】
前記軟水器は、簡便にはその周囲部でシールされた2つの膜を含み得、内容物がその内部に保持される。シーリングは、接着性若しくは誘導性溶着、好ましくは加熱シーリング、または、最も好ましくは超音波シーリングの手段によるものであり得る。シーリングが加熱シーリングによるものである場合、これを促進するために、シートは熱可塑性物質を含み得る。接着性ストリップを形成する材料は、APP、SBS、SEBS、SIS、EVAなどの様々な材料を含むいわゆるホットメルト、または、例えばSBS、天然ゴムなどの様々な材料の分散体などのコールドグルー、またはさらに溶媒ベース若しくはツーコンポーネントの接着システムであってもよい。さらには、前記材料は、架橋により様々な層と特異的、永久的な化学結合を形成し得るものであってもよい。接着剤の量は使用する接着剤の種類に依存する。しかしそれは一般に0.2〜20g/m2である。
ティーバッグの製造、またはサニタリーまたはおむつ製品の製造に使用される従来材料が適切であり得、また、ティーバッグまたはサニタリー製品の製造に使用される技術は、本発明において有用な柔軟な軟水器の製造に適用し得る。そのような技術は WO 98/36128、US-A-6,093,474、EP-A-708,628 および EP-A-380,127に記載されている。
簡便には、2つの膜は不織布である。不織布の製造のプロセスは4つの一般的カテゴリーに分類することが可能であり、その結果4つの主要な種類の不織布製品、即ちテキスタイル-系、紙-系、押し出し-ポリマー形成-系およびハイブリッド組み合わせ品が製造される。
【0010】
テキスタイル
テキスタイル技術には、ガーネッティング、カーディング、および、繊維を選択的な配向膜に空気力学的に形成することが含まれる。これらのシステムにより作製された繊維品はドライレイド不織布と呼ばれ、これは、ガーネッティング、カーディング、エアレイドファブリックなどの用語を包含する。テキスタイルベースの不織布(またはファイバーネットワーク構造(fibre-network structures))は、乾燥状態でテキスタイル繊維を処理するように設計された機械で製造される。このカテゴリーには、繊維束または粗麻糸(tow)から形成された構造体、および、ステープルファイバーおよび縫い糸から構成された繊維品も含まれる。
テキスタイル繊維および結合システムのほとんどを使用することが可能であるため、一般に、テキスタイル技術を基にする方法は最大限の製品汎用性を提供する。
【0011】

紙-ベースの技術には、短い合成繊維、ウッドパルプ繊維に対応するように設計されたドライレイドパルプおよびウェットレイド(改質紙)システムが含まれる。これらのシステムにより作製された繊維品は、ドライレイドパルプおよびウェットレイド不織布と呼ばれる。紙-ベースの不織布は、液体中に懸濁された短い繊維に対応するように設計された機械により製造される。
【0012】
押し出し
押し出しには、スパンボンド、メルトブローン、および多孔性フィルムシステムが含まれる。これらのシステムにより作製された繊維品は、個別にスパンボンド、メルトブローン、およびテクスチャードまたはアパーチャーフィルム不織布、または一般にポリマーレイド不織布と呼ばれる。押し出しベースの不織布は、ポリマー押し出しに適した機械により製造される。ポリマーレイドシステムでは、繊維構造は同時に形成、処理される。
【0013】
ハイブリッド
ハイブリッドには、繊維/シートのコンバイニング(combining)システム、コンビネーション(combination)システム、コンポジット(composite)システムが含まれる。コンバイニングシステムは、ラミネーション技術または少なくとも1つの基本の不織布膜形成または圧密(consolidation)技術を使用して2以上の繊維基質を合わせる。コンビネーションシステムは、少なくとも1つの繊維基質を使用する。コンポジットシステムは、2以上の基本の不織布膜結合技術を統合して膜構造を生産する。ハイブリッド法は、特定の用途のために技術の利点を組み合わせる。
【0014】
封入壁の形成に適した材料は、紙、ポリオレフィン(例えばポリエチレンまたはポリプロピレンなど)繊維である。
【0015】
本発明の軟水器は、製品洗浄機内で水と接触した後に、組成物の20重量%未満が残存するようなものである。これは、標準的な洗浄サイクル、特に綿製品用サイクル(60℃、水の硬度はいくらでもよいが、好ましくは水の硬度18〜24°dH (ドイツ硬度))に設定された標準的な洗濯機(例えばボッシュ社製 WFR 3240 洗濯機)のドラム内に軟水器が置かれた場合に、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、そして最も好ましくは5重量%の組成物が残存することを意味する。好ましくはボッシュ WFR 3240 洗濯機が、60℃および水の硬度18°dHでの綿製品用サイクルで使用される。疑義を避けるため、この試験は特定の衣料洗濯機を使用するものの、本発明の軟水器は、衣料洗濯機または軟水化が必要とされる他のあらゆる製品洗浄機(例えば食器洗浄機)において使用することができる。軟水器が上記試験を通過するならば、前記軟水器は衣料用でないものも含めあらゆる製品洗浄機において使用することが可能である。
【0016】
前記軟水器は、洗い流されることが可能な軟水剤を有する。好ましくは、前記軟水剤はカルシウムイオンと共にマグネシウムイオンを結合することができる。
好ましくは、水溶性軟水剤は、粉末組成物中に、1重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%を超える量で存在し得る。望ましい最大量は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満である。
前記水溶性軟水剤は軟水器から洗い流されることが可能である。“水溶性”なる用語には、水に分散性である軟水剤が含まれる。そのような軟水剤として、例えば、ポリカーボネート及びポリアクリレートなどの水溶性ポリマーが挙げられる。軟水剤の例として以下が挙げられる:
1) イオン捕集剤 - 金属イオンが不溶性塩を形成し、または界面活性剤と反応することを防止する物質、例えばポリホスフェート、単量ポリカーボネート、例えばクエン酸またはその塩。
2) 凝集防止(Anti-nucleating)剤 - 種結晶の成長を防止する物質、例えばポリカーボネートポリマー、例えばポリアクリレート、アクリリック/マレイック コポリマー、ホスホネート、および、アクリリックホスホネートおよびスルホネート。
3) 分散剤 - 結晶を溶液内に懸濁した状態に保つ物質、例えばポリアクリレートポリマー。
【0017】
封入壁は、水溶性ポリマー(例えばポリ(ビニルアルコール))などの水溶性成分でコーティングされていてもよい。
また、本発明は、製品洗浄機(例えば衣料洗濯機または食器洗浄機)において硬水を軟水化させる方法であって、硬水を前述の軟水器と接触させる前記方法を提供する。
【実施例】
【0018】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
以下の顆粒状組成物を調製し、各組成物20グラムを、約10cm2の2枚の不織ポリプロピレン材のシートの間に入れた。2枚の不織布シートの縁を加熱シールして、組成物の周囲に連続的なシールを形成した。
不織布シートの多孔率は、組成物の平均粒度分布よりも小さくなるような値を選択した。従って、シールされた不織布小袋からの物質の流出は、前記物質が溶解する場合のみである。
【0019】

【0020】

【0021】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
封入壁を有し、かつ、カルシウムイオンを結合することができる軟水剤を含む組成物を含有する軟水器であって、前記封入壁は水および前記水に溶解している成分に対して透過性であり、前記軟水器は界面活性剤を含まない、軟水器。
【請求項2】
漂白剤を含まない、請求項1記載の軟水器。
【請求項3】
組成物が粉末または1以上の錠剤の形体にある、請求項1または2記載の軟水器。
【請求項4】
軟水剤が水溶性ポリマーを含む、請求項1から3のいずれか1項記載の軟水器。
【請求項5】
水溶性ポリマーが、ポリカーボネートまたはポリアクリレートである、請求項4記載の軟水器。
【請求項6】
軟水剤が、ポリホスフェート、単量ポリポリカーボネートまたはポリカルボン酸またはその混合物を含む、請求項1から5のいずれか1項記載の軟水器。
【請求項7】
単量ポリカーボネートまたはポリカルボン酸が、クエン酸またはその塩である、請求項6記載の軟水器。
【請求項8】
封入壁が、水透過性かつ水不溶性の膜を含む、請求項1から7のいずれか1項記載の軟水器。
【請求項9】
膜が不織布膜である、請求項8記載の軟水器。
【請求項10】
膜がポリオレフィン繊維で形成されている、請求項8または9記載の軟水器。
【請求項11】
封入壁が水溶性成分でコーティングされている、請求項1から10のいずれか1項記載の軟水器。
【請求項12】
水溶性成分がポリ(ビニルアルコール)を含む、請求項11記載の軟水器。
【請求項13】
製品洗浄機において硬水を軟水化する方法であって、硬水を請求項1から12のいずれか1項記載の軟水器と接触させる、前記方法。

【公表番号】特表2008−517758(P2008−517758A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538488(P2007−538488)
【出願日】平成17年10月10日(2005.10.10)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003898
【国際公開番号】WO2006/046002
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(506429673)レキット ベンキサー ナムローゼ フェンノートシャップ (36)
【Fターム(参考)】