説明

軟質薄膜の物性値測定方法とそのための装置

【課題】軟質薄膜の厚さが非常に薄い場合や、軟質薄膜の音響インピーダンスが低い場合であっても、単体の軟質薄膜の物性値を高精度に測定することのできる軟質薄膜の物性値測定方法とそのための装置を提供すること。
【解決手段】液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該軟質薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において液体音響媒体側から超音波を伝達し、軟質薄膜を介した状態と、軟質薄膜を介さない状態とで得られた固体平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して単体の軟質薄膜の物性値を高精度に測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波が薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して、軟質薄膜の物性値を高精度に測定する軟質薄膜の物性値測定方法と、そのための装置を提供するものに関する。本発明は特に軟質で、薄い高分子薄膜の高精度な物性値測定に好適な技術であり、従来測定が難しかった、数μm厚さの軟質薄膜や、低い音響インピーダンスを有する薄膜の物性値測定に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜の物性値を測定する手法として、固体材料表面に形成した固体薄膜の物性値を測定する超音波顕微鏡法がある。
【0003】
当該超音波検査手法は、固体基板上に測定対象である薄膜を製膜する必要があることから、その利用が固体薄膜の評価に限られ、単体の軟質薄膜の物性値を測定することが困難であった。
【0004】
単体の軟質薄膜の物性値を測定する手法として、液体音響媒体である水の中に配置した薄膜に対して、集束型超音波探触子により超音波を発信し、薄膜の表面と裏面から得られる超音波エコーの時間差から薄膜の音速、厚さを測定する超音波検査法がある。しかしながら当該手法は、薄膜の厚さが30μm程度以下になると表面波と裏面波が重畳するために物性値の測定が困難となる(下記「非特許文献1」参照)。
【0005】
また、単体の軟質薄膜の物性値を測定する手法として、液体音響媒体である水の中に薄膜と金属反射板とを配置した超音波伝達系において、薄膜を介して得た金属反射板表面からの超音波エコーを収録し、水−薄膜−水間の超音波音圧往復通過率より、薄膜の音響インピーダンスを測定する手法がある。しかしながら当該手法は、薄膜の音響インピーダンスが水のそれに近くなると測定が困難になる(下記「非特許文献2」参照)。
【0006】
【非特許文献1】V. Hanel, “Journal of Applied Physics” 84 (1998) 668-670
【非特許文献2】A. Kumar, et al., “Ultrasonics” 35 (1997) 53-56
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、従来の薄膜の物性値測定方法では、測定可能な薄膜が固体基板上に成膜された固体薄膜に限られており、また、単体の軟質薄膜を評価できる物性値測定方法では、薄膜の厚さが薄い場合や、薄膜の音響インピーダンスが低い場合に高精度な薄膜の物性値測定が困難であった。
【0008】
本発明は、従来の薄膜の物性値測定方法では測定が困難な、単体の軟質薄膜の物性値を超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して、高精度に測定する軟質薄膜の物性値測定方法と、そのための装置を提供せんとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特許を受けようとする第1発明は、液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該軟質薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において液体音響媒体側から超音波を伝達し、軟質薄膜を介した状態と、軟質薄膜を介さない状態とで得られた固体平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して軟質薄膜の物性値を測定することを特徴とする軟質薄膜の物性値測定方法である。
【0010】
当該第1発明は、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して単体の軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速、厚さを高精度に測定するものであり、以下にその測定原理の一例を示す。
【0011】
液体音響媒体−軟質薄膜−固体平板からなる3媒体超音波伝達系の超音波音圧往復通過率Tは次式で与えられる。
【数1】

ここでkTは軟質薄膜内での波数(=2πν/CT)であり、νは周波数、CTは薄膜内での超音波音速である。またZは音響インピーダンスであり、次式で与えられる。
【数2】

ここでρは密度、cは超音波音速であり、式(1)中の下添え字Cは液体音響媒体を、Bは固体平板を、Tは軟質薄膜をそれぞれ表す。一方、軟質薄膜がない場合の、液体音響媒体−固体平板からなる2媒体超音波伝達系の超音波音圧往復通過率Tは次式で与えられる。
【数3】

したがって、両者の比θ(=T/T)は次式となる。
【数4】

ここでAは次式で与えられる。
【数5】

式(4)より、θは次式で与えられる共鳴周波数
【数6】

において最大値θをとり、かつ、θは周波数の関数である。これが本発明で着目する音響共鳴現象である。またθは、次式で与えられる。
【数7】

式(5)および式(7)を変形して、次の二次方程式を得る。
【数8】

ここで、Bは次式で与えられる。
【数9】

式(8)をZついて解けば、Z<√(Z)の時
【数10】

となる。
【0012】
あらかじめZとZが既知であり、θを測定すれば、式(10)よりZが求まる。またCT、d、ρのうち、いずれか一つが既知であれば、νを測定することで、求めたZと式(2)および式(6)を用いて残る2つの物性値が求まる。
【0013】
ここで、液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該軟質薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで構成した超音波伝達系において、軟質薄膜内での超音波減衰損失が無視しえるほど小さく、かつ、薄膜/固体平板界面での超音波信号損失が無視しえるほど小さい場合、両者の超音波伝達系において液体音響媒体側から超音波を伝達し、軟質薄膜を介した状態と、軟質薄膜を介さない状態とで得られた固体平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルの比は、T1とT2の比に一致する。したがって、液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該軟質薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで構成した超音波伝達系において、本発明で着目する超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を観察することができ、これを利用して軟質薄膜の物性値を測定することが可能である。
【0014】
特許を受けようとする第2発明は、液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属平板との間に、軟質薄膜を介して当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して、軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速、厚さを高精度に測定することを特徴とする請求項1に記載の軟質薄膜の物性値測定方法である。
【0015】
図1に液体音響媒体として水(ZC = 1.48MNm-3s)を用い、固体平板(ZB)との間にZT = 6MNm-3sの軟質薄膜を介した場合のθrをZBの関数として実線でデシベル表示する。また、ZT = 4MNm-3sの軟質薄膜を介した場合のθrを破線で、ZT = 2MNm-3sの軟質薄膜を介した場合のθrを点線でデシベル表示する。
【0016】
図1より、ZC < ZT < ZBであればθrが1を上回ることがわかる。いずれのZTにおいてもZBが大きければθrが大きくなり、また、ZBが大きな固体平板を用いた場合はZTに対してθrが一義的に決まることがわかる。よってZBが大きな固体平板を用いることで、本発明で着目する音響共鳴現象が明瞭に観察でき、高精度で確実な軟質薄膜の物性値測定が可能となる。
【0017】
特許を受けようとする第3発明は、液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属平板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルの比から軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速を測定することを特徴とする請求項1に記載の軟質薄膜の物性値測定方法である。
【0018】
特許を受けようとする第4発明は、液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルの比が最大値若しくは最小値を示す周波数から軟質薄膜の厚さ、音速を測定することを特徴とする請求項1に記載の軟質薄膜の物性値測定方法である。
【0019】
特許を受けようとする第5発明は、液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において液体音響媒体側から超音波を伝達し、軟質薄膜を介した状態と、軟質薄膜を介さない状態とで得られた固体平板表面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して軟質薄膜の物性値を測定することを特徴とする軟質薄膜の物性値測定方法である。
【0020】
第1発明は固体平板裏面からの超音波エコーを利用して軟質薄膜の物性値測定を行うのに対して、当該第5発明は固体平板表面からの超音波エコーを利用して軟質薄膜の物性値測定を行う。
【0021】
特許を受けようとする第6発明は、液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属平板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板表面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速、厚さを測定することを特徴とする請求項5に記載の軟質薄膜の物性値測定方法である。
【0022】
特許を受けようとする第7発明は、液体音響媒体を収容した容器の中に超音波計測手段と接続された超音波探触子を内装するとともに、当該容器に設けた開口部に軟質薄膜を配置し、軟質薄膜と、その下部にある固体平板との間の空気を排除するための機構と、これと連結された排気能力の高い真空装置とから構成されることを特徴とする軟質薄膜の物性値測定装置である。
【0023】
当該第7発明は、本発明により軟質薄膜の物性値測定を実施するための装置構成について記述したものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法および装置により、薄膜の厚さが薄い場合であっても、また、薄膜の音響インピーダンスが低い場合であっても、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して、単体の軟質薄膜の物性値を高精度に測定できるようになった。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。図2は、本発明にかかる軟質薄膜の物性値測定方法とそのための装置の構成例を示す図である。液体音響媒体1と固体平板2との間に軟質薄膜3を介し、軟質薄膜3と固体平板2とを密着させる手段4により密着させる。液体音響媒体側から超音波計測手段5と接続された超音波探触子5aにより超音波を発信し5b、固体平板2と周囲環境6との界面である固体平板裏面2aからの超音波エコー5cを収録する。また、軟質薄膜3を挿入しない場合についても固体平板2と周囲環境6との界面である固体平板裏面2aからの超音波エコー5cを収録し、両者の振幅スペクトルを解析して軟質薄膜の物性値を算出する。
【0026】
実施例1での軟質薄膜3は厚さが11.8μmのポリエチレン(PE)薄膜であり、実施例2での軟質薄膜3は厚さが7.6μmのポリ塩化ビニル(PVC)薄膜である。液体音響媒体1として水を、固体平板2として厚さ1mmのタングステン平板(ZB = 99.84MNm-3s)を用いた。また、実験は大気中、室温下(293K)において実施した。軟質薄膜3と固体平板2とを密着させる手段4として、薄膜と平板2との間の空気を真空装置により排除した。超音波計測手段5と接続された超音波探触子5aとして、公称周波数が50MHz、振動子直径が3.2mmの広帯域超音波探触子を用いた。用いた超音波探触子5aの圧電振動子の前面には長さが7.6mmの石英でできた遅延材が取り付けられており、超音波探触子5aの前面と軟質薄膜3との間の距離は5mmであった。
【0027】
軟質薄膜3を介した状態で、水側から超音波計測手段5と接続された超音波探触子5aにより超音波を発信し5b、タングステン平板2と空気6との界面であるタングステン平板裏面2aからの超音波エコー5cを収録した。また、軟質薄膜3を介さない場合についてもタングステン平板2と空気6との界面であるタングステン平板裏面2aからの超音波エコー5cを収録した。ここで、軟質薄膜3を介した状態で得た超音波エコー5cの振幅スペクトルをφ1、軟質薄膜3を介さない状態で得た超音波エコー5cの振幅スペクトルをφ2とする。
【0028】
実施例1および実施例2の超音波エコー5cの振幅スペクトルφとφを図3に示す。図中、破線はPE薄膜を挿入して得たφであり、実線はPVC薄膜を挿入して得たφである。また、点線は薄膜を挿入しない状態で得たφである。図3より、いずれの薄膜を挿入した場合も周波数範囲20〜70MHzにおいて、φがφを上回っており、超音波が薄膜を通過する際の音響共鳴現象が明瞭に観察されている。
【0029】
実施例1および実施例2の振幅スペクトルの比(φ/φ)を図4にデシベル表示する。図中、破線はPE薄膜に対するφ/φであり、実線はPVC薄膜に対するφ/φである。ここで、軟質薄膜3内での超音波減衰損失と、軟質薄膜3と固体平板2との界面での信号損失が無視できるほど小さい場合、φ/φはφにほぼ一致する。PE薄膜に対するφ/φの最大値とその周波数は1.61±0.01と42.6±0.6MHzであった。また、PVC薄膜に対するφ/φの最大値とその周波数は2.76±0.02と63.5±1.1MHzであった。
【0030】
PE薄膜、およびPVC薄膜に対するφ1/φ2の最大値を式(9)のφrに代入してBを求め、これを式(10)に代入することで、PE薄膜、およびPVC薄膜の音響インピーダンスはそれぞれ、1.89±0.01MNm-3s、2.53±0.01MNm-3sと測定された。
【0031】
また、式(2)および式(6)より、PE薄膜の音速と密度はそれぞれ、2010±30m/s、940±20kg/m3と測定された。また、PVC薄膜の音速と密度はそれぞれ、1930±40m/s、1310±30kg/m3と測定された。PE薄膜に対する測定結果(実施例1)より、本発明を用いれば、音響インピーダンスが水に近い軟質薄膜の物性値を高精度に測定可能であることが明らかである。また、PVC薄膜に対する測定結果(実施例2)より、本発明により厚さが約8μmと非常に薄い軟質薄膜であっても高精度に物性値測定が可能であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】液体音響媒体として水を用い、固体平板との間にZTが6MNm-3sの軟質薄膜を介した場合のθrを実線で、ZT = 4MNm-3sの軟質薄膜を介した場合のθrを破線で、ZT = 2MNm-3sの軟質薄膜を介した場合のθrを点線でZBの関数としてデシベル表示したものである。
【図2】本発明にかかる軟質薄膜の物性値測定方法とそのための装置の構成例を示す図である。
【図3】実施例1および実施例2で収録した超音波エコーの振幅スペクトルである。
【図4】実施例1および実施例2の振幅スペクトルの比である。
【符号の説明】
【0033】
1 液体音響媒体
2 固体平板
2a 固体平板裏面
3 軟質薄膜
4 軟質薄膜と固体平板とを密着させる手段
5 超音波計測手段
5a 超音波探触子
5b 超音波を発信
5c 固体平板と周囲環境との界面である固体平板裏面からの超音波エコー
6 周囲環境

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該軟質薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において液体音響媒体側から超音波を伝達し、軟質薄膜を介した状態と、軟質薄膜を介さない状態とで得られた固体平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して軟質薄膜の物性値を測定することを特徴とする軟質薄膜の物性値測定方法。
【請求項2】
液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属平板との間に、軟質薄膜を介して当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して、軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速、厚さを高精度に測定することを特徴とする請求項1に記載の軟質薄膜の物性値測定方法。
【請求項3】
液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属平板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルの比から軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速を測定することを特徴とする請求項1に記載の軟質薄膜の物性値測定方法。
【請求項4】
液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板裏面からの超音波エコーの振幅スペクトルの比が最大値若しくは最小値を示す周波数から軟質薄膜の厚さ、音速を測定することを特徴とする請求項1に記載の軟質薄膜の物性値測定方法。
【請求項5】
液体音響媒体と固体平板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と固体平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において液体音響媒体側から超音波を伝達し、軟質薄膜を介した状態と、軟質薄膜を介さない状態とで得られた固体平板表面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して軟質薄膜の物性値を測定することを特徴とする軟質薄膜の物性値測定方法。
【請求項6】
液体音響媒体として水を、固体平板として音響インピーダンスの高い金属平板を用い、水と金属平板との間に、軟質薄膜を介して、当該薄膜と金属平板とを密着させた状態と、軟質薄膜を介さない状態とで超音波伝達系を構成し、両者の超音波伝達系において水側から超音波を伝達して得られた金属平板表面からの超音波エコーの振幅スペクトルを解析し、超音波が軟質薄膜を通過する際に生じる音響共鳴現象を利用して軟質薄膜の音響インピーダンス、密度、音速、厚さを測定することを特徴とする請求項5に記載の軟質薄膜の物性値測定方法。
【請求項7】
液体音響媒体を収容した容器の中に超音波計測手段と接続された超音波探触子を内装するとともに、当該容器に設けた開口部に軟質薄膜を配置し、軟質薄膜と、その下部にある固体平板との間の空気を排除するための機構と、これと連結された排気能力の高い真空装置とから構成されることを特徴とする軟質薄膜の物性値測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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