説明

軟骨欠損を処置するための、形態形成タンパク質の使用

【課題】利用可能な方法および組成物に関連する問題を克服する軟骨欠損を修復および再生するための組成物および方法の提供。
【解決手段】本発明は、軟骨または軟骨周囲領域への治療有効量の骨形態形成タンパク質を含む組成物の投与による軟骨組織を修復および再生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨欠損の修復方法を提供する。本発明はまた、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨を再生または生成する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、整形外科的組織修復に関する。より詳細には、本発明は、軟骨を修復または再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
軟骨の修復および再生は、現代整形外科における主な問題の1つである。変形性関節症、椎間板変性、および半月板裂傷などの軟骨の損傷および変性障害は米国の成人における身体障害の主な原因であるので、非常に重要である。
【0003】
軟骨は、コラーゲン線維の細胞外基質、プロテオグリカン、および他の非コラーゲンタンパク質に埋め込まれた軟骨細胞から構成される結合組織である。2つの軟骨形態(関節軟骨および非関節軟骨)が存在する。関節軟骨は結合組織の薄層であり、関節内の骨の末端を覆っている。非関節軟骨には、線維軟骨および弾性軟骨が含まれ、椎間板、半月板、気管、喉頭、鼻、および耳などが含まれる。
【0004】
軟骨の機能は、荷重負荷を和らげ、磨耗に耐え、関節をほぼ無摩擦で運動させることである。しばしば外傷(異常な磨耗または疾患)に起因する軟骨組織の欠損により、痛みや硬直を引き起こすことがあり、治療しないままでいると、これらが進行する可能性があり、最終的に関節全体を置換する必要があり得る。例えば、関節軟骨の欠損により、しばしば、最初に関節表面が破壊され、最終的に、骨軟骨欠損、変形性関節症、またはその両方を引き起こし得る。
【0005】
変形性関節症は、基質成分の合成と分解との間の均衡が阻害されて異化にシフトするにつれて、修復を試みているが段階的に衰える損傷した軟骨細胞外基質の修復と考えられている。
【0006】
軟骨組織自体が再生する能力は、血管が無いために厳しく制限される。軟骨組織および基礎をなす骨の両方が含まれる骨軟骨の欠損の修復は、血液および/または骨髄の欠損による幹細胞と成長因子および分化因子の両方の欠損によってその範囲がさらに制限される。動物研究では、これらの欠損は、新規の骨膜および軟骨の形成によっていくらか修復されるが、軟骨基質の高分子組織化および生化学的特徴は不完全である。II型コラーゲンよりもむしろI型コラーゲンおよび軟骨特異的ではないプロテオグリカン(プロテオグリカンを含むデルマタン硫酸など)によって修復組織が得られ、それにより、長期にわたりフィブリル化(fibrillation)がおき、そして変性する。軟骨下骨に浸透しない軟骨欠損の修復は起こらず、起こったとしてもその範囲は制限される。
【0007】
さらに、軟骨欠損の外科的治療は複雑であり、一部の成功に制限されていることが示されている。例えば、関節軟骨の欠損を、関節内遊離体を切除して遷移領域を滑らかにする整形外科的アプローチを使用して治療する。しかし、この方法のみでは、しばしば、症状の緩和が長期間持続しない。膝の代替手術には、しばしば、大量の骨を切除する必要があり、しばしば、複数回手術する必要がある。
【0008】
半月板は、骨の末端と膝関節の内側との間に存在する小さな馬蹄状組織であり、衝撃吸収材として作用する。各膝の両側に2つの半月板が存在する。半月板は、通常、若年層で強く、加齢と共に脆弱になり、容易に損傷する。裂傷は、前十字靭帯(ACL)損傷と極めて共通している。関節硝子軟骨のような半月板線維軟骨は、特に、中間および内部の無血管領域での治癒能力が制限されている。小さな裂傷の現在の治療は、裂傷が大きな問題を引き起こさない場合、放置することである。半月板裂傷治療の選択は、損傷の性質および範囲、最も重要には、その位置が含まれる多数の要因に依存する。高度に血管新生した滑膜と組み合わされた血管新生領域は、縫合によって首尾よく修復されている。部分的または全ての関節半月板切除は、半月板の無血管領域の2/3以内の症状性裂傷の通常の外科的治療である。半月板領域の裂傷は、臨床的に認められる最も一般的な型である。関節半月板切除は、直視下、鏡視下、全部、または一部分の関節半月板切除と無関係に、変形性関節症は、術後数年以内にこれらの患者で頻繁に起こる後遺症である。したがって、共通の修復形態は、裂傷部分の一部のみを除去し、ステープリングによって軟骨を修復することである。不運なことに、この手順後の治癒過程は遅い。さらに、修復が成功しない場合、その後に全裂傷半月願を除去しなければならない。
【0009】
背痛を持続し、且つしばしば衰弱させる主な原因は、椎間板(IVD)変性である。椎間板が変性するにつれて、椎間板によって隣接する脊椎が圧迫され、それにより、しばしば激痛を生じる。
【0010】
靭帯結合としてのIVDにより、隣接する椎体の間に関節が生じ、軸方向に加えられた脊髄負荷を散らす荷重クッションとして作用する。これらの生体力学的機能により、中心の水和プロテオグリカンが豊富なゼラチン状髄核周囲の外側のコラーゲンが豊富な線維輪から構成されるIVDの固有の構造が可能になる。上軟骨終板および下軟骨終板(ヒアリン様軟骨)は、半月板内の椎体の接触面を覆っている。
【0011】
腰椎椎間板変性は、主に腰痛(LBP)として現れる社会に実質的な社会的および経済的負担を強いる。全人口の80%もの人々が障害で少なくとも1度は有意なLBP期間を経験し、LBPの結果として労働人口の約2.5%が1年間にいくらかの病期休暇を取っていると見積もられている。現代成長諸国におけるLBPにおける実質的な費用は、90億ドルと見積もられており、そのほとんどが一般開業医、理学療法士、および他の保守的な開業医の助言に費やされている(非特許文献1)。間接的な総支出(外科的処置が含まれる)は10倍を超え得る(非特許文献2;Walkerら(2003)The economic burden,Proceedings of the Spine Society of Australia Annual Scientific Meeting,Canberra,Australia)。
【0012】
半月板変性は、ほとんどの場合、骨格の成熟時から起こる自然現象である(非特許文献3)。これは加齢と一致するが、多くの場合、特に腰椎の痛みにも関連し、運動性が制限される。患者が制限された運動性に対応するように生活様式を修正するので、LBPの症状は、しばしば、時間と共に自発的に解決される。しかし、多くの場合、外科的介入が必要という重要な要素が残されている。慢性LBPの伝統的な「標準的な」外科的治療は、1つまたは複数の有痛レベルを固定するための脊椎融合であった。融合は、長期入院および専門家の外科的専門知識が必要であるので高額であるにも関わらず、ほとんどのこれらの患者は、短期間しか痛みが緩和せず、融合は最良の結果をもたらさないことが明らかである。長期的研究により、脊椎融合が実際は融合部位に隣接するレベルで変性を促進することが示唆されている(非特許文献4)。関節炎の臀部および骨折した臀部および膝の機能を修復するために50年前に人工挿入物を開発した時と同一の方法で、現在、慢性変性のために痛みおよび関節炎を引き起こした半月板の完全な機械的機能を修復する目的で人口挿入物が開発されている(非特許文献5)。しかし、試験を受けた無数のモデルのいずれかが長期的利益をもたらすと理解するのは時期尚早である。
【0013】
現在、タンパク質自体が前駆細胞を機能的な骨、軟骨、腱、および/または靭帯組織の増殖および分化を誘導することができる真の骨および軟骨組織のモルフォゲンとして作用する能力を有するタンパク質クラスが同定されている。本明細書中で「骨形成タンパク質」または「形態形成タンパク質」と呼ばれるこれらのタンパク質には、異所性軟骨内性骨の形態形成を誘導する能力が最初に同定された骨形態形成タンパク質(BMP)ファミリーのメンバーが含まれる。骨形成タンパク質は、一般に、当該分野で成長因子のTGF−βスーパーファミリーのサブグループとして分類されている(非特許文献6)。タンパク質のモルフォゲンファミリーのメンバーには、哺乳動物骨形成タンパク質−1(OP−1、BMP−7およびDrosophilaホモログ60Aとしても公知)、骨形成タンパク質−2(OP−2、BMP−8としても公知)、骨形成タンパク質−3(OP−3)、BMP−2(BMP−2AまたはCBMP−2AおよびDrosophilaホモログDPPとしても公知)、BMP−3、BMP−4(BMP−2BまたはCBMP−2Bとしても公知)、BMP−5、BMP−6、およびそのマウスホモログVgr−1、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF3(Vgr2としても公知)、GDF8、GDF9、GDF10、GDF11、GDF12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、GDF−5(CDMP−1またはMP52としても公知)、GDF−6(CDMP−2としても公知)、GDF−7(CDMP−3としても公知)、XenopusホモログVglおよびNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、ならびにNEURALが含まれる。このファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴(二量体化する能力を有する約97〜106個のアミノ酸のカルボキシル末端活性ドメインを含む成熟ポリペプチド鎖を得るための前駆体の「前形態(pro−form)」のプロセシングが含まれる)を有する分泌性ポリペプチド鎖をコードする。全メンバーは、このドメイン中に保存されたシステインパターンを共有し、これらのタンパク質の活性形態は、単一のファミリーメンバーのジスルフィド結合ホモ二量体または2つの異なるメンバーのヘテロ二量体のいずれかであり得る(例えば、非特許文献7;非特許文献8を参照のこと)。特許文献1;特許文献2、非特許文献9,非特許文献10,非特許文献11、および特許文献2;非特許文献12;非特許文献13も参照のこと。これらの開示は、これらの骨形成タンパク質のアミノ酸配列およびDNA配列ならびに化学的特徴および物理的特徴を記載している。非特許文献14;BMP 9(特許文献3,1993年1月7日公開);DPP(非特許文献15);およびVg−1(非特許文献16)も参照のこと。
【0014】
現在の好ましい軟骨修復方法には、デブリドマン、自家細胞移植、モザイク形成術、および関節置換術が含まれる。しかし、これらの方法では軟骨組織が実際に修復および置換されない。これらの方法では、瘢痕様の特徴を有する不完全な修復組織が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,011,691号明細書
【特許文献2】米国特許第5,266,683号明細書
【特許文献3】国際公開第93/00432号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Williams DAら,Health care and indemnity costs across the natural history of disability in occupational low back pain,1998年,Spine 第23巻:pp.2329−36
【非特許文献2】MaetzelおよびLi,The economic burden of low back pain:a review of studies published between 1996 and 2001,2002年,Best Prac Res Clin Rheumatol 第16巻:pp.23−30
【非特許文献3】Vemon−Roberts,Age−related and degenerative pathology of intervertebral discs and apophyseal joints,The lumbar spine and back pain.Fourth edition,Jayson MIV,編.1992年,Churchill Livingstone,Edinburgh,第2章,pp.17−41
【非特許文献4】Lee,Accelerated degeneration of the segment adjacent to a lumbar fusion,1988年,Spine 第13巻:pp.375−7
【非特許文献5】Szpaalskiら,V Spine arthroplasty:a historical review,Eur Spine 2002年,第J11巻:pp.S65−S84
【非特許文献6】Hogan,Genes & Development 1996年,第10巻:pp.1580−1594
【非特許文献7】Massague,Annu.Rev.Cell Biol.1990年,第6巻:pp.597
【非特許文献8】Sampathら,J.Biol.Chem.1990年,第265巻:pp.13198
【非特許文献9】Ozkaynakら,EMBO J.1990年,第9巻:pp.2085−2093
【非特許文献10】Whartonら,PNAS 1991年,第88巻:pp.9214−9218
【非特許文献11】Ozkaynak,J.Biol.Chem.1992年,第267巻:pp.25220−25227
【非特許文献12】Celesteら,PNAS 1991年,第87巻:pp.9843−9847
【非特許文献13】Lyonsら,PNAS 1989年,第86巻:pp.4554−4558
【非特許文献14】Wozneyら,Science 1988年,第242巻:pp.1528−1534
【非特許文献15】Padgettら,Nature 1987年,第325巻:pp.81−84
【非特許文献16】Weeks,Cell 1987年,第51巻:pp.861−867
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、現在利用可能な方法および組成物に関連する問題を克服する軟骨欠損を修復および再生するための組成物および方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の要旨
本発明は、軟骨または軟骨周囲領域への骨形態形成タンパク質を含む組成物の投与による軟骨組織を修復および再生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨欠損の修復方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨を再生または生成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨を再生する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨を生成する方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨成長を促進するか軟骨形成を加速させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨成長を促進する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨形成を加速させる方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨破壊を防止するか軟骨損傷または変性疾患を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨破壊を防止する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、軟骨組織損傷または変性疾患もしくは変性障害を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、組織損傷または変性疾患には、変形性関節症、半月板裂傷、ACL損傷、および椎間板変性が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態では、軟骨は関節軟骨である。他の実施形態では、軟骨は非関節軟骨である。いくつかの実施形態では、非関節軟骨は、半月板または椎間板である。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物を軟骨に投与する。いくつかの実施形態では、組成物を半月板または椎間板に投与する。いくつかの実施形態では、組成物を軟骨周囲領域に投与する。いくつかの実施形態では、軟骨周囲領域は滑液である。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される組成物中の形態形成タンパク質には、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、これらのフラグメント、およびアミノ酸配列変異体が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、形態形成タンパク質は、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、形態形成タンパク質は、軟骨欠損の修復を誘導することができる。好ましい実施形態では、形態形成タンパク質は、OP−1、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、およびCDMP−3からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、形態形成タンパク質はOP−1である。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される形態形成タンパク質組成物には、ゲル、パテ、ペースト、または水溶液が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、形態形成タンパク質組成物を、徐放性処方物またはクリアランス遅延処方物(すなわち、形態形成タンパク質のクリアランスがその通常のクリアランスと比較して遅延する処方物)として処方する。いくつかの実施形態では、形態形成タンパク質組成物を、注射可能な処方物として処方する。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨欠損の修復方法。
(項目2)
前記軟骨が、関節軟骨および非関節軟骨からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記非関節軟骨が、半月板および椎間板からなる群から選択される、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記軟骨周囲領域が滑液である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異体からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記形態形成タンパク質が、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、該形態形成タンパク質が前記軟骨欠損の修復を誘導することができる、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、およびCDMP−3からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記形態形成タンパク質がOP−1である、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記組成物が、ゲル、水溶液、ペースト、およびパテからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記組成物が、徐放性処方物またはクリアランス遅延処方物として処方される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記組成物が注射可能な処方物である、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記組成物がゲルである、項目9に記載の方法。
(項目13)
前記組成物が水溶液である、項目9に記載の方法。
(項目14)
軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨を再生または生成する方法。
(項目15)
前記軟骨が、関節軟骨および非関節軟骨からなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記非関節軟骨が、半月板および椎間板からなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記軟骨周囲領域が滑液である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異体からなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記形態形成タンパク質が、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、該形態形成タンパク質が前記軟骨欠損の修復を誘導することができる、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、およびCDMP−3からなる群から選択される、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記形態形成タンパク質がOP−1である、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記組成物が、ゲル、水溶液、ペースト、およびパテからなる群から選択される、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記組成物が、徐放性処方物またはクリアランス遅延処方物として処方される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記組成物が注射可能な処方物である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記組成物がゲルである、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記組成物が水溶液である、項目22に記載の方法。
(項目27)
軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨成長を促進するかまたは軟骨形成を加速させる方法。
(項目28)
前記軟骨が、関節軟骨および非関節軟骨からなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記非関節軟骨が、半月板および椎間板からなる群から選択される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記軟骨周囲領域が滑液である、項目27に記載の方法。
(項目31)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異体からなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目32)
前記形態形成タンパク質が、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、該形態形成タンパク質が前記軟骨欠損の修復を誘導することができる、項目27に記載の方法。
(項目33)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、およびCDMP−3からなる群から選択される、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記形態形成タンパク質がOP−1である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記組成物が、ゲル、水溶液、ペースト、およびパテからなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目36)
前記組成物が、徐放性処方物またはクリアランス遅延処方物として処方される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記組成物が注射可能な処方物である、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記組成物がゲルである、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記組成物が水溶液である、項目35に記載の方法。
(項目40)
軟骨または軟骨周囲領域に治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を投与する工程を含む、患者の軟骨破壊を防止するか軟骨損傷または変性疾患あるいは変性障害を治療する方法。
(項目41)
前記軟骨が、関節軟骨および非関節軟骨からなる群から選択される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記非関節軟骨が、半月板および椎間板からなる群から選択される、項目31に記載の方法。
(項目43)
前記軟骨周囲領域が滑液である、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異体からなる群から選択される、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記形態形成タンパク質が、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、該形態形成タンパク質が前記軟骨欠損の修復を誘導することができる、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記形態形成タンパク質が、OP−1、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、およびCDMP−3からなる群から選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記形態形成タンパク質がOP−1である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記組成物が、ゲル、水溶液、ペースト、およびパテからなる群から選択される、項目40に記載の方法。
(項目49)
前記組成物が、徐放性処方物またはクリアランス遅延処方物として処方される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記組成物が注射可能な処方物である、項目48に記載の方法。
(項目51)
前記組成物がゲルである、項目48に記載の方法。
(項目52)
前記組成物が水溶液である、項目48に記載の方法。
(項目53)
前記組織損傷または変性疾患が、変形性関節症、半月板裂傷、ACL損傷、および板の変性(disc degeneration)からなる群から選択される、項目40に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、両側衝撃損傷部位を示す関節の略図である。
【図2】図2は、OP−1処置動物およびコントロール動物についての滑液中の白血球数を示すグラフである。
【図3】図3Aおよび3Bは、コントロールおよびOP−1処置関節の組織学的切片である。
【図4】図4は、OP−1処置動物およびコントロール動物についての大腿骨内顆軟骨中のsGAGレベルを示すグラフである。
【図5】図5は、変形性関節症モデルにおけるコントロールおよびOP−1処置ヒツジの代表的な結果を示す。コントロールヒツジを、コラーゲンのみで処置した。OP−1処置ヒツジに350μgのOP−1パテを手術時に投与し、1週間後の関節腔への注射によって第2の投与を行った。
【図6】図6は、OP−1パテでの処置から6週間後の孔の組織学的切片である。
【図7】図7は、6週間のコントロール欠損の孔の組織学的切片である。
【図8】図8は、12週間のコントロール欠損の孔の組織学的切片である。
【図9】図9は、OP−1パテでの処置から12週間後の孔の組織学的切片である。
【図10】図10は、OP−1パテでの処置から6週間後の半月板裂傷の組織学的切片である。
【図11】図11は、線維輪(AF)四分円および髄核(NP)に半月板を分離するための帯状解剖(zonal dissection)スキームならびにヒツジ腰椎椎間板の水平断面および垂直断面における四分円1中の前外側輪状病変の位置および範囲を示す。術後3ヶ月および6ヶ月の水平断面中のAF病変の位置は、この図の左側に十分に詳細に図解している。椎間板および隣接する椎体ならびに上脊椎成長板および下脊椎成長板を通過する組織学的垂直断面も、外側のAFのコラーゲンの変化(マッソン三色染色法)に関連するAF病変(矢印)の限局的性質ならびに半月板に約4mm透過する病変部位中のコラーゲン性組織化(ピクロシリウスレッド)およびプロテオグリカンの限局的枯渇(トルイジンブルー)を示す(図の右側)。
【図12】図12は、インタクトおよび損傷した(前輪状病変)ヒツジ椎単位(functional spinal unit)(FSU)についての屈曲伸展ROMプロットを示す。
【図13】図13は、ヒトOP−1のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本明細書中に記載の発明を完全に理解するために、以下に詳細な説明を記載する。
【0028】
他で定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書中に記載の方法および材料に類似の方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるにも関わらず、適切な方法および材料を以下に記載する。材料、方法、および実施例は例示のみを目的とし、本発明を制限することを意図しない。本明細書中で言及した全ての刊行物、特許、および他の書類は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0029】
本明細書を通して、用語「comprise」または「comprises」または「comprising」などの変化形は、記述した整数または整数群を含むことを暗示するが、いかなる他の整数または整数群も排除しない。
【0030】
本発明をさらに定義するために、以下の用語および定義を本明細書中に示す。
【0031】
用語「軟骨」は、軟骨細胞または軟骨細胞様細胞(全てではないが多くの軟骨細胞の特徴を有する)、細胞間質(例えば、I型、II型、IX型、およびXI型コラーゲン)、プロテオグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、およびデルマタン硫酸プロテオグリカン)、および他のタンパク質を含む結合組織タイプをいう。軟骨には、関節軟骨および非関節軟骨が含まれる。
【0032】
硝子軟骨とも呼ばれる「関節軟骨」はまた、関節内の骨の連接表面(articulating surface)を覆い、2つの対向する骨表面の間の摩擦低減接合部分としての機能を果たす無血管の非無機化結合組織をいう。関節軟骨により、骨同士が直接接触することなく運動することが可能である。関節軟骨は、骨化する傾向はない。軟骨表面は巨視的には滑らかで真珠のような光沢があるように見え、高倍率では細かい顆粒状である。関節軟骨は、隣接する滑膜の血管および被覆される骨の血管から部分的に栄養素を得ている。関節軟骨は、II型およびIX型のコラーゲンならびに種々の十分に特徴づけられているプロテオグリカンの存在ならびに軟骨内性骨形成に関連するX型コラーゲンの非存在に関連する。関節軟骨の微細構造の詳細な説明については、例えば、Aydelotte and Kuettner,Conn.Tiss.Res.,18,p.205(1988);Zanettiら,J.Cell Biol.,101,p.53(1985);およびPooleら,J.Anat.,138,p.13(1984)を参照のこと。
【0033】
「非関節軟骨」は、関節表面を被覆しない軟骨をいい、線維軟骨(関節円板、線維軟骨円板、結合線維軟骨、および関節周縁線維軟骨)および弾性軟骨が含まれる。線維軟骨では、ミクロポリサッカリド網が突出したコラーゲン束と組み合わされ、軟骨細胞が硝子軟骨または関節軟骨よりも広範に散在している。関節円板は衝撃に曝され、且つ頻繁に運動する関節(例えば、膝の半月板)で見出される。このような関節の例には、側頭下顎骨、胸鎖関節、手関節、および膝関節が含まれるが、これらに限定されない。二次軟骨結合は、線維軟骨の半月板によって形成される。対向する両表面に密接して接着するこのような線維軟骨円板は、軟骨の薄層が介在した線維組織の同心円状の輪から構成される。このような線維軟骨円板の例は、脊髄の椎間板である。結合線維軟骨は、これらの関節の骨表面の間に介在し、椎体の間および恥骨の間をわずかに移動することが可能である。関節周縁線維軟骨は、いくつかの関節腔(臀部の寛骨臼および肩の関節窩など)の縁部を取り囲む。
【0034】
弾性軟骨は、エラスチン線維と組織学的に類似のコラーゲン線維を含む。このような軟骨は、外耳の心耳、耳管、小角軟骨、および喉頭蓋で見出される。全ての軟骨と同様に、弾性軟骨はまた、軟骨細胞および基質を含み、後者は、黄色弾性線維網によって各方向に行き渡り、各細胞のすぐ周囲に存在もの以外は全方向に分岐および吻合し、非フィブリル化したガラス質の細胞間物質の量は変化する。
【0035】
用語「滑液」は、関節内の摩擦を低減する滑液腔内の薄い潤滑物質をいう。
【0036】
用語「欠損」または「欠損部位」は、軟骨組織または骨軟骨組織の破壊をいう。欠損は、例えば、軟骨組織または骨軟骨組織の空隙、空洞、孔、または完全な構造の他の実質的な破壊などの三次元的欠損を意味すると理解される「空間」の形状と見なすことができる。欠損はまた、その付着点から骨または靭帯への軟骨の剥離であり得る。一定の実施形態では、欠損は、内因性または自発的な修復が不可能である。欠損は、事故、疾患、および/または外科的操作の結果であり得る。例えば、軟骨欠損は、半月板裂傷組織の関節への置換などの関節外傷の結果であり得る。軟骨欠損はまた、変形性関節症などの変性関節疾患の結果であり得る。
【0037】
用語「修復」は、欠損部位で空間または構造の切れ目を少なくとも部分的に充填するのに十分な新規の軟骨の形成をいう。しかし、修復は、その欠損前の生理学的/構造的/機械的状態への欠損の修復に100%有効な完全な治癒または治療の過程を意味しないか必要としない。
【0038】
用語「治療有効量」は、軟骨組織の修復、再生、促進、加速、破壊の防止、または形成に有効な量をいう。
【0039】
用語「患者」は、動物(哺乳動物(例えば、ヒト)が含まれる)をいう。
【0040】
用語「アジュバントの薬学的に許容可能なキャリア」は、本発明の形態形成タンパク質と共に患者に投与することができ、その薬理学的活性を破壊しない非毒性キャリアをいう。
【0041】
用語「形態形成タンパク質」は、形態形成活性を有するタンパク質をいう。好ましくは、本発明の形態形成タンパク質は、BMPタンパク質ファミリーに属する少なくとも1つのポリペプチドを含む。形態形成タンパク質には、骨形成タンパク質が含まれる。形態形成タンパク質は、前駆細胞の増殖および/または分化経路の開始を誘導し、局所環境に依存して軟骨、骨、腱、靭帯、または他の組織形成型を得ることができ、それにより、形態形成タンパク質は環境によって挙動が異なり得る。例えば、形態形成タンパク質は、少なくとも1つの治療部位で骨組織を誘導し、異なる治療部位で軟骨組織を誘導することができる。
【0042】
用語「骨形態形成タンパク質(BMP)」は、DNAおよびアミノ酸の配列相同性に基づいてタンパク質のTGF−βスーパーファミリーのBMPファミリー(BMPファミリー)に属するタンパク質をいう。タンパク質は、BMPタンパク質ファミリーに特徴的な保存されたC末端システインリッチドメイン内の少なくとも1つの公知のBMPファミリーメンバーとアミノ酸配列が少なくとも50%同一である場合、本発明のBMPファミリーに属する。好ましくは、タンパク質は、保存されたC末端システインリッチドメイン内の少なくとも1つの公知のBMPファミリーメンバーとアミノ酸配列が少なくとも70%同一である。BMPファミリーのメンバーは、全体として50%未満のDNA配列またはアミノ酸配列が同一であり得る。本明細書中で定義した骨形成タンパク質はまた、適切なインビボ無血液位置で間接軟骨の形成を誘導する能力がある。
【0043】
用語「アミノ酸配列相同性」は、アミノ酸配列の同一性および類似性の両方を含むと理解される。相同配列は、同一および/または類似の配列を供有し、類似の残基が、アラインメントした基準配列中の対応するアミノ酸残基と保存的に置換されるか、「点変異」される。したがって、基準配列と70%のアミノ酸相同性を有する候補ポリペプチド配列は、アラインメントした残基の70%が基準配列中の対応する配列と同一であるか保存的に置換されているものである。一定の特に好ましい形態形成ポリペプチドは、ヒトOP−1および関連タンパク質の保存された7システインドメインを定義するC末端の102〜106アミノ酸と少なくとも60%、好ましくは70%のアミノ酸配列が同一である。
【0044】
アミノ酸配列相同性を、当該分野で周知の方法によって決定することができる。例えば、7システインドメインの配列に対する候補アミノ酸配列の相同率を決定するために、2つの配列を最初にアラインメントする。アラインメントを、例えば、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48,pp.443(1970)に記載の動的プログラミングアルゴリズムおよびAlign Program(DNAstar,Inc.)によって作製された市販のソフトウェアパッケージを使用して作製することができる。両供給源による教示は、本明細書中で参考として援用される。最初のアラインメントを、関連タンパク質ファミリーの多配列アラインメントとの比較によって精緻化することができる。一旦アラインメントが作製されて緻密化されると、相同率スコアを計算する。2つの配列のアラインメントしたアミノ酸残基の配列をその相互の類似性について比較する。類似性の要因には、サイズ、形状、および電荷が含まれる。アミノ酸類似性の1つの特に好ましい決定方法は、Dayhoffら,Atlas of Protein Sequence and Structure,5,pp.345−352(1978 & Supp.)(本明細書中で参考として援用される)に記載のPAM250行列である。類似性スコアを、ペアワイズにアラインメントしたアミノ酸類似性スコアの和として最初に計算する。相同率および同一率の目的のために、挿入および欠失を無視する。したがって、この計算ではギャップペナルティを使用しない。次いで、生スコアを候補配列および7システインドメインのスコアの相乗平均で割ることによって生スコアを正規化する。相乗平均は、これらのスコアの生成物の平方根である。正規化された生スコアは、相同率である。
【0045】
用語「保存的置換」は、対応する基準残基と物理的または機能的に類似の残基をいう。すなわち、保存的置換およびその基準残基は、類似のサイズ、形状、電荷、または化学的特性(共有結合、水素結合が含まれる)などを有する。好ましい保存的置換は、Dayhoffら,前出に記載の許容される点変異について定義された基準を満たすものである。保存的置換の例は、以下の群内の置換である:(a)バリン、グリシン、(b)グリシン、アラニン、(c)バリン、イソロイシン、ロイシン、(d)アスパラギン酸、グルタミン酸、(e)アスパラギン、グルタミン、(f)セリン、トレオニン、(g)リジン、アルギニン、メチオニン、および(h)フェニルアラニン、チロシン。用語「保存的変異体」または「保存的変異物(conservative variation)」には、所与の親アミノ酸配列の代わりに置換アミノ酸残基の使用も含まれ、親配列に特異的な抗体は、得られた置換ポリペプチド配列にも特異的である(すなわち、「交差反応」または「免疫反応」する)。
【0046】
用語「骨形成タンパク質(OP)」は、前駆細胞の軟骨および/または骨への形成を誘導することができる形態形成タンパク質をいう。骨は、膜内骨または軟骨内性骨であり得る。ほとんどの骨形成タンパク質は、BMPファミリーのメンバーであり、したがって、BMPでもある。本明細書中に記載のように、タンパク質のクラスは、ヒト骨形成タンパク質(hOP−1)に代表される。本発明の実施で有用な他の骨形成タンパク質には、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr−1、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、UNIVIN、NODAL、SCREW、ADMP、またはNEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異形の骨形成的に活性な形態が含まれる。出願人の発明と共に使用するのに適切な骨形成タンパク質を、Reddi and Sampath(Sampathら,Proc.Natl.Acad.Sci.,84,pp.7109−13(本明細書中で参考として援用される))に記載の当該分野で認識されたバイオアッセイを使用した日常的実験を用いて同定することができる。
【0047】
軟骨成長および修復のための方法および組成物
本発明の形態形成組成物を、軟骨修復(例えば、関節、半月板、椎間板)のために使用することができる。本明細書中に開示の形態形成タンパク質を含む形態形成組成物により、医師が局在化した刺激組織の再生または修復によって改善または矯正することができる種々の組織の損傷、組織の変性、または病態および障害を治療することが可能である。
【0048】
本発明は、軟骨組織の損傷および軟骨変性疾患もしくは軟骨変性障害(変形性関節症、半月板裂傷、ACL損傷、および椎間板変性が含まれるが、これらに限定されない)を治療するための方法および組成物を提供する。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者の軟骨を修復または再生する方法および組成物を提供する。本発明はまた、患者の軟骨の生成、軟骨成長の促進、軟骨形成の加速、および軟骨変性の防止のための方法および組成物を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を軟骨に投与する工程を含む。この方法は、軟骨組織への形態形成組成物の直接投与(例えば、軟骨組織への注射)を含む。例えば、形態形成タンパク質組成物を、半月板または椎間板に注射することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、治療有効量の形態形成タンパク質を含む組成物を軟骨周囲の滑液に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、軟骨は間接軟骨である。他の実施形態では、軟骨は非間接軟骨である。いくつかの実施形態では、非間接軟骨には、椎間板、半月板、気管、耳、鼻、肋骨、および喉頭が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、非間接軟骨は椎間板である。別の好ましい実施形態では、非間接軟骨は、半月板である。いくつかの実施形態では、軟骨周囲領域は滑液である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される組成物中の形態形成タンパク質には、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異体が含まれるが、これらに限定されない。他の実施形態では、形態形成タンパク質は、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、形態形成タンパク質が軟骨欠損の修復を誘導することができる。好ましい実施形態では、形態形成タンパク質は、OP−1、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、またはCDMP−3である。より好ましい実施形態では、形態形成タンパク質はOP−1である。
【0052】
骨形態形成タンパク質ファミリー
その代表的な骨形態形成/骨形成タンパク質ファミリーメンバーにちなんで名付けられたBMPファミリーは、TGF−βタンパク質スーパーファミリーに属する。主に配列相同性に基づいて単離され報告された「BMP」(BMP−1からBMP−18)のうちのBMP−1以外のすべてが、依然として形態形成タンパク質のBMPファミリーのメンバーとして分類されている(Ozkaynakら,EMBO J.,9,pp.2085−93(1990))。
【0053】
BMPファミリーには、形態形成タンパク質である他の構造的に関連したメンバー(ショウジョウバエデカペンタプレジック遺伝子複合体(DPP)産物、Xenopus laevisのVg1産物およびそのマウスホモログ(Vgr−1)が含まれる)が含まれる(例えば、Massague,Annu.Rev.Cell Biol.,6,pp.597−641(1990)(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。
【0054】
BMP−3、BMP−5、BMP−6、およびOP−1(BMP−7)のC末端ドメインは、BMP−2のC末端ドメインと約60%同一であり、BMP−6およびOP−1のC末端ドメインは87%同一である。BMP−6は、マウスVgr−1のヒトホモログの可能性が高い(Lyonsら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86,pp.4554−59(1989));2つのタンパク質は、アミノ酸配列レベルで全体の92%同一である(米国特許第5,459,047号(本明細書中で参考として援用される))。BMP−6は、XenopusのVg−1産物と58%同一である。
【0055】
骨形態形成タンパク質の生化学的構造および機能特性
天然に存在する骨形態形成タンパク質は、そのC末端領域(ドメイン)中に実質的なアミノ酸配列相同性を共有する。典型的には、上記の天然に存在する骨形成タンパク質は、典型的には約30残基未満のN末端シグナルペプチド配列およびその後に切断されて約97〜106アミノ酸の成熟C末端ドメインを生成する「プロ」ドメインを有する前駆体として翻訳される。シグナルペプチドは、翻訳の際に、Von Heijne Nucleic Acids Research,14,pp.4683−4691(1986)の方法を使用して所与の配列で予想することができる切断部位で迅速に切断される。プロドメインは、典型的には、完全にプロセシングされた成熟C末端ドメインの約3倍の長さである。
【0056】
BMPタンパク質ファミリーメンバーの別の特徴は、その見かけ上の二量体化能力である。7つの骨由来骨形成タンパク質(OP)およびBMPは、その活性形態でホモ二量体およびヘテロ二量体として見出される。OPおよびBMPの二量体形成能力は、形態形成タンパク質にさらなるまたは変化した形態形成誘導能力を付与することができる。ヘテロ二量体は、ホモ二量体と異なるOPおよびBMP受容体分子に対する定性的または定量的結合親和性を示し得る。結合親和性の変化により、異なるシグナル伝達経路を媒介する受容体の活性化が異なり、最終的に異なる生物活性または結果を得ることができる。結合親和性の変化はまた、組織または細胞型特異的様式で現れ、それにより、特に前駆細胞型の増殖および/または分化のみを誘導することができる。
【0057】
好ましい実施形態では、骨形成ポリペプチド対は、それぞれ基準モルフォゲンのアミノ酸配列との定義された関係を共有する配列を含むアミノ酸配列を有する。ここに、好ましい骨形成ポリペプチドは、骨形成的に活性なヒトOP−1中に存在する配列(配列番号1)との定義された関係を共有する(図1を参照のこと)。しかし、本明細書中に開示の任意の1つまたは複数の天然に存在する配列または生合成配列を、基準配列として同様に使用することができる。好ましい骨形成ポリペプチドは、ヒトOP−1の少なくともC末端の6システインドメイン(配列番号1の残基335〜431)との定義された関係を共有する。好ましくは、骨形成ポリペプチドは、ヒトOP−1の少なくともC末端の7システインドメイン(配列番号1の残基330〜431)との定義された関係を共有する。すなわち、骨形態形成活性を有する二量体タンパク質中の好ましいポリペプチドは、それぞれ、基準配列に対応するか基準配列に機能的に等価な配列を含む。
【0058】
機能的に等価な配列には、基準配列内に並べられたシステイン残基の機能的に等価な配置が含まれ、機能的に等価な配列は、これらのシステインの線状の配置を変化させるアミノ酸の挿入または欠失を含むが、二量体形態形成タンパク質の折り畳み構造におけるその関係を実質的に損ねず、形態形成活性に必要であり得るような鎖内または鎖間のジスルフィド結合を形成する能力を含む。機能的に等価な配列には、さらに、この相違が骨形態形成活性を破壊しない場合、1つまたは複数のアミノ酸残基が基準配列の対応する残基(例えば、ヒトOP−1のC末端の7システインドメイン(本明細書中で、保存された7システイン骨格とも呼ばれる))と異なるものが含まれる。したがって、基準配列中の対応するアミノ酸の保存的置換は好ましい。基準配列中の対応する残基の保存的置換物であるアミノ酸残基は、対応する基準残基と物理的または機能的に類似している(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的性質(共有結合または水素結合などを形成する能力が含まれる)を有する)アミノ酸残基である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら,前出(その教示が本明細書中で参考として援用される)に記載の許容された点変異について定義された基準を満たす保存的置換である。
【0059】
骨形成タンパク質OP−1は記載されている(例えば、Oppermannらの米国特許第5,354,557号(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)。その成熟した天然の形態の天然起源の骨形成タンパク質は、典型的には、SDS−PAGEによって決定したところ見かけ上の分子量が約30〜36kDaであるグリコシル化二量体である。還元された場合、30kDaのタンパク質から見かけの分子量が約16kDaおよび18kDaの2つのグリコシル化ペプチドサブユニットが生じる。還元状態では、タンパク質は、検出可能な骨形成活性を持たない。骨形成活性も有する非グリコシル化タンパク質の見かけ上の分子量は約27kDaである。還元された場合、27kDaのタンパク質から、哺乳動物において軟骨内性骨形成を誘導することができる分子量が約14kDaから16kDaの2つの非グリコシル化ポリペプチドが生じる。骨形成タンパク質は、種々のグリコシル化パターン、種々のN末端を有する形態、および未変性タンパク質の活性な短縮形態または変異形態を含み得る。上記のように特に有用な配列には、DPP(ショウジョウバエ由来)、Vg1(ツメガエル由来)、Vgr−1(マウス由来)、OP−1およびOP−2タンパク質(米国特許第5,011,691号およびOppermannら(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)ならびにBMP−2、BMP−3、BMP−4(WO88/00205、米国特許第5,013,649号、およびWO91/18098(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)、BMP−5およびBMP−6(WO90/11366、PCT/US90/01630(本明細書中で参考として援用される)を参照のこと)、BMP−8およびBMP−9と呼ばれるタンパク質のC末端の96個または102個のアミノ酸配列を含む配列が含まれる。
【0060】
本発明の好ましい形態形成タンパク質および骨形成タンパク質は、少なくとも1つのポリペプチド(OP−1(BMP−7)、OP−2、OP−3、COP−1、COP−3、COP−4、COP−5、COP−7、COP−16、BMP−2、BMP−3、BMP−3b、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、MP121、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、dorsalin−1、DPP、Vg−1、Vgr−1、60Aタンパク質、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、TGF−β、ならびにこれらのアミノ酸配列の変異形およびホモログ(これらの種ホモログが含まれる)が含まれるが、これらに限定されない)を含む。好ましくは、形態形成タンパク質は、OP−1(BMP−7)、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、またはCDMP−3から選択される少なくとも1つのポリペプチド、より好ましくは、OP−1(BMP−7)BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、またはCDMP−3、最も好ましくは、OP−1(BMP−7)を含む。
【0061】
これらの配列を開示した刊行物ならびにその化学的および物理的性質には、OP−1およびOP−2(米国特許第5,011,691号;米国特許第5,266,683号;Ozkaynakら,EMBO J.,9,pp.2085−2093(1990);OP−3(WO94/10203(PCT US93/10520));BMP−2、BMP−3、BMP−4、(WO88/00205;Wozneyら,Science,242,pp.1528−1534(1988));BMP−5およびBMP−6(Celesteら,PNAS,87,9843−9847(1991));Vgr−1(Lyonsら,PNAS,86,pp.4554−4558(1989));DPP(Padgettら,Nature,325,pp.81−84(1987));Vg−1(Weeks,Cell,51,pp.861−867(1987));BMP−9(WO95/33830(PCT/US95/07084);BMP−10(WO94/26893(PCT/US94/05290);BMP−11(WO94/26892(PCT/US94/05288);BMP−12(WO95/16035(PCT/US94/14030);BMP−13(WO95/16035(PCT/LTS94/14030);GDF−1(WO92/00382(PCT/US91/04096)およびLeeら,PNAS,88,pp.4250−4254(1991);GDF−8(WO94/21681(PCT/US94/03019);GDF−9(WO94/15966(PCT/US94/00685);GDF−10(WO95/10539(PCT/US94/11440);GDF−11(WO96/01845(PCT/US95/08543);BMP−15(WO96/36710(PCT/US96/06540);MP−121(WO96/01316(PCT/EP95/02552);GDF−5(CDMP−1、MP52)(WO94/15949(PCT/US94/00657)、WO96/14335(PCT/US94/12814)、およびWO93/16099(PCT/EP93/00350));GDF−6(CDMP−2、BMP13)(WO95/01801(PCT/US94/07762)、WO96/14335、およびWO95/10635(PCT/US94/14030));GDF−7(CDMP−3、BMP12)(WO95/10802(PCT/US94/07799)およびWO95/10635(PCT/US94/14030));BMP−17およびBMP−18(米国特許第6,027,917号)が含まれる。上記の刊行物は、本明細書中で参考として援用される。
【0062】
別の実施形態では、有用なタンパク質には、生物活性生合成構築物(2つまたはそれを超える公知のモルフォゲン由来の配列を使用してデザインした新規の生合成形態形成タンパク質およびキメラタンパク質が含まれる)が含まれる。
【0063】
本発明の別の実施形態では、形態形成タンパク質を、組織形成を合成的に誘導するために調製することができる。合成的に調製した形態形成タンパク質は、天然タンパク質または非天然タンパク質(すなわち、天然で見出されないタンパク質)であり得る。
【0064】
非天然形態形成タンパク質は、一連のコンセンサスDNA配列を使用して合成されている(米国特許第5,324,819号(本明細書中で参考として援用される))。天然の骨形成生成物から得た部分的アミノ酸配列データおよび推定または証明された発生機能を有する文献で報告された他の遺伝子との認められた相同性に基づいてコンセンサス配列をデザインした。
【0065】
合成コンセンサス配列(コンセンサス骨形成タンパク質または「COP」と呼ばれる)のいくつかは、原核生物中で融合タンパク質として発現している(例えば、米国特許第5,011,691号(本明細書中で参考として援用される))。これらには、COP−1、COP−3、COP−4、COP−5、COP−7、およびCOP−16、ならびに当該分野で公知の他のタンパク質が含まれる。精製融合タンパク質を、確立された動物モデル中で切断し、再度折り畳み、移植し、骨および/または軟骨誘導活性を有することを示すことができる。現在の好ましい合成骨形成タンパク質は、COP−5(配列番号2)およびCOP−7(配列番号3)と命名された2つの合成アミノ酸配列を含む。
【0066】
Oppermannらの米国特許第5,011,691号および同第5,324,819号(本明細書中で参考として援用される)は、以下に示すCOP−5およびCOP−7のアミノ酸配列を記載している:
COP5 LYVDFS−DVGWDDWIVAPPGYQAFYCHGECPFPLAD
COP7 LYVDFS−DVGWNDWIVAPPGYHAFYCHGECPFPLAD

COP5 HFNSTN−−H−AVVQTLVNSVNSKI−−PKACCVPTELSA
COP7 HLNSTN−−H−AVVQTLVNSVNSKI−−PKACCVPTELSA

COP5 ISMLYLDENEKVVLKYNQEMVVEGCGCR
COP7 ISMLYLDENEKVVLKYNQEMVVEGCGCR。
【0067】
これらのアミノ酸配列では、ダッシュ(−)を、関連タンパク質中の匹敵する配列を一列に並べることのみを目的とした充填物(filler)として使用する。アラインメントしたアミノ酸配列間の相違を強調する。
【0068】
これらおよび他のBMPファミリーメンバーのDNA配列およびアミノ酸配列は公開されており、当業者は、これらを使用して新規に同定したタンパク質がBMPファミリーに属するかどうかを決定することができる。新規のBMP関連遺伝子産物を、少なくとも1つの形態形成活性を保有するための類似性によって予想し、それにより、BMPとして分類する。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施形態では、形態形成タンパク質は、少なくとも1つのサブユニットがBMPタンパク質ファミリーに属する組換えペプチドを含む、二量体種を生成するためにジスルフィド結合したサブユニット対を含む。本発明の別の好ましい実施形態では、形態形成タンパク質は、少なくとも1つのサブユニットがBMPタンパク質ファミリーに属する組換えペプチドを含む、二量体種を生成するサブユニット対を含む。非共有結合的相互作用には、ファンデルワールス、水素結合、疎水性、および静電相互作用が含まれる。二量体種は、ホモ二量体またはヘテロ二量体であってよく、細胞増殖および/または組織形成を誘導することができる。
【0070】
一定の好ましい実施形態では、本明細書中で有用な骨形態形成タンパク質には、アミノ酸配列が上記の天然に存在するタンパク質から選択される基準形態形成タンパク質と少なくとも70%のアミノ酸配列が相同または「類似」しているか、75%、80%、85%、90%、95%、または98%が相同または類似している配列を含むものが含まれる。好ましくは、基準タンパク質はヒトOP−1であり、その基準配列はヒトOP−1の骨形成的に活性な形態中に存在するC末端の7システインドメイン(配列番号1の残基330〜431)である。一定の実施形態では、Alignプログラム(DNAstar,Inc.)などのコンピュータプログラムによって都合よく実行されるNeedleman,ら,前出の方法を使用して、基準モルフォゲンポリペプチドと機能的に等価であることが疑われるポリペプチドとアラインメントする。上記のように、アミノ酸配列の相同性または同一性のレベルとして伝統的に示される候補配列と基準配列との間の定義された関係を計算する目的で候補配列中の内部ギャップおよびアミノ酸挿入を無視する。「アミノ酸配列の相同性」は、本明細書中では、アミノ酸配列の同一性および類似性の両方を含むと理解される。相同配列は、同一および/または類似のアミノ酸残基を共有し、類似の残基は、アラインメントした基準配列中の対応するアミノ酸残基が保存的に置換されるか「点変異される」。したがって、基準配列と70%のアミノ酸が相同な候補ポリペプチド配列は、任意の70%のアラインメントした残基が基準配列中の対応するアミノ酸残基と保存的に置換されるか点変異されたものである。これまでのところ好ましい実施形態では、基準配列はOP−1である。したがって、本明細書中で有用な骨形態形成タンパク質には、天然に存在するか化学合成によって生成された好ましい基準配列の対立遺伝子、系統発生対応物、および他の変異体(例えば、「ムテイン」または「変異タンパク質」が含まれる)が含まれる(上記または定義されたものが含まれる)。一定の特に好ましい形態形成ポリペプチドは、ヒトOP−1の好ましい基準配列と少なくとも60%のアミノ酸が同一であるか、さらにより好ましくは少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%のアミノ酸が同一である。
【0071】
別の実施形態では、有用な骨形成タンパク質には、本明細書中に定義するように、保存された7システインドメインおよびC末端活性ドメイン内に少なくとも70%のアミノ酸配列相同性(類似性)を有するものが含まれる。さらに別の実施形態では、本発明の骨形成タンパク質を、本明細書中に定義した一般的(generic)配列のいずれか1つ(OPX(配列番号4)、一般的配列7(配列番号5)、および8(配列番号6)、または一般的配列9(配列番号7)および10(配列番号8)が含まれる)を有する骨形成的に活性なタンパク質と定義することができる。
【0072】
本発明で有用な骨形態形成ポリペプチドのファミリーおよびそのメンバーを、一般的アミノ酸配列によって定義することができる。例えば、一般的配列7(配列番号5)および一般的配列8(配列番号6)は、それぞれ96および102アミノ酸配列であり、今日までに定義された好ましいタンパク質ファミリーメンバー(少なくともOP−1、OP−2、OP−3、CBMP−2A、CBMP−2B、BMP−3、60A、DPP、Vgl、BMP−5、BMP−6、Vgr−1、およびGDF−1が含まれる)の間で共有される相同性に適合する。これらのタンパク質のアミノ酸配列は、上記でまとめるように、本明細書中そして/または当該分野で記載されている。一般的配列には、6個および7個のシステイン骨格(それぞれ一般的配列7および8)によって定義されたC末端ドメイン中のこれらの配列が共有する同一のアミノ酸ならびに配列内の可変部分の代わりの残基が含まれる。一般的配列により、分子内または分子間ジスルフィド結合を形成することができ、且つ折り畳まれたタンパク質の三次構造に影響を与える可能性が高い一定の重要なアミノ酸を含む適切なシステイン骨格が得られる。さらに、一般的配列の36位(一般的配列7)または41位(一般的配列8)にシステインを付加することが可能であり、それにより、OP−2およびOP−3の形態形成的に活性な配列を含むことが可能である。
【0073】
【化1】

(ここで、各Xaaは、独立して、以下に定義した1つまたは複数の特定のアミノ酸群から選択される:「res.」は、「残基」を意味し、res.2のXaa=(TyrまたはLys);res.3のXaa=ValまたはIle);res.4のXaa=(Ser、AspまたはGlu);res.6のXaa=(Arg、Gln、Ser、Lys、またはAla);res.7のXaa=(AspまたはGlu);res.8のXaa=(Leu、Val、またはIle);res.11のXaa=(Gln、Leu、Asp、His、Asn、またはSer);res.12のXaa=(Asp、Arg、Asn、またはGlu);res.13のXaa=(TrpまたはSer);res.14のXaa=(IleまたはVal);res.15のXaa=(IleまたはVal);res.16(AlaまたはSer);res.18のXaa=(Glu、Gln、Leu、Lys、ProまたはArg);res.19のXaa=(GlyまたはSer);res.20のXaa=(TyrまたはPhe);res.21のXaa=(Ala、Ser、Asp、Met、His、Gln、Leu、またはGly);res.23のXaa=(Tyr、Asn、またはPhe);res.26のXaa=(Glu、His、Tyr、Asp、Gln、Ala、またはSer);res.28のXaa=(Glu、Lys、Asp、Gln、またはAla);res.30のXaa=(Ala、Ser、Pro、Gln、Ile、またはAsn);res.31のXaa=(Phe、Leu、またはTyr);res.33のXaa=(Leu、Val、またはMet);res.34のXaa=(Asn、Asp、Ala、Thr、またはPro);res.35のXaa=(Ser、Asp、Glu、Leu、Ala、またはLys);res.36のXaa=(Tyr、Cys、His、Ser、またはIle);res.37のXaa=(Met、Phe、Gly、またはLeu);res.38のXaa=(Asn、Ser、またはLys);res.39のXaa=(Ala、Ser、Gly、またはPro);res.40のXaa=(Thr、Leu、またはSer);res.44のXaa=(He、Val、またはThr);res.45のXaa=(Val、Leu、Met、またはIle);res.46のXaa=(GlnまたはArg);res.47のXaa=(Thr、Ala、またはSer);res.48のXaa=(LeuまたはIle);res.49のXaa=(ValまたはMet);res.50のXaa=(His、Asn、またはArg);res.51のXaa=(Phe、Leu、Asn、Ser、Ala、またはVal);res.52のXaa=(Ile、Asn、Ala、Val、Gly、またはLeu);res.53のXaa=(Asn、Lys、Ala、Glu、Gly、またはPhe);res.54のXaa=(Pro、Ser、またはVal);res.55のXaa=(Glu、Asp、Asn、Gly、Val、Pro、またはLys);res.56のXaa=(Thr、Ala、Val、Lys、Asp、Tyr、Ser、Gly、Ile、またはHis);res.57のXaa=(Val、Ala、またはIle);res.58のXaa=(ProまたはAsp);res.59のXaa=(Lys、Leu、またはGlu);res.60のXaa=(Pro、Val、またはAla);res.63のXaa=(AlaまたはVal);res.65のXaa=(Thr、Ala、またはGlu);res.66のXaa=(Gln、Lys、Arg、またはGlu);res.67のXaa=(Leu、Met、またはVal);res.68のXaa=(Asn、Ser、Asp、またはGly);res.69のXaa=(Ala、Pro、またはSer);res.70のXaa=(Ile、Thr、Val、またはLeu);res.71のXaa=(Ser、Ala、またはPro);res.72のXaa=(Val、Leu、Met、またはIle);res.74のXaa=(TyrまたはPhe);res.75のXaa=(Phe、Tyr、Leu、またはHis);res.76のXaa=(Asp、Asn、またはLeu);res.77のXaa=(Asp、Glu、Asn、Arg、またはSer);res.78のXaa=(Ser、Asn、Tyr、またはAsp);res.79のXaa=(Ser、Asn、Asp、Glu、またはLys);res.80のXaa=(Asn、Thr、またはLys);res.82のXaa=(Ile、Val、またはAsn);res.84のXaa=(LysまたはArg);res.85のXaa=(Lys、Asn、Gln、His、Arg、またはVal);res.86のXaa=(Tyr、Glu、またはHis);res.87のXaa=(Arg、Gln、Glu、またはPro);res.88のXaa=(Asn、Glu、Trp、またはAsp);res.90のXaa=(Val、Thr、Ala、またはIle);res.92のXaa=(Arg、Lys、Val、Asp、Gln、またはGlu);res.93のXaa=(Ala、Gly、Glu、またはSer);res.95のXaa=(GlyまたはAla)、およびres.97のXaa=(HisまたはArg))。
【0074】
一般的配列8(配列番号6)は、一般的配列7の全てを含み、さらに、そのN末端に以下の配列(配列番号9)を含む。
【0075】
【化2】

したがって、残基7から始まって、一般的配列8中の各「Xaa」は、一般的配列7で定義した特定のアミノ酸であり、一般的配列7で記載した各残基数が一般的配列8で5個シフトしていることが異なる。したがって、一般的配列7中の「res.2のXaa=(TyrまたはLys)」は、一般的配列8中のres.7のXaaをいう。一般的配列8では、res.2のXaa=(Lys、Arg、Ala、またはGln);res.3のXaa=(Lys、Arg、またはMet);res.4のXaa=(His、Arg、またはGln);およびres.5のXaa=(Glu、Ser、His、Gly、Arg、Pro、Thr、またはTyr)。
【0076】
別の実施形態では、有用な骨形成タンパク質には、以下に定義のように、一般的配列9および10によって定義されたものが含まれる。
【0077】
詳細には、一般的配列9および10は、以下のタンパク質の複合アミノ酸配列である:ヒトOP−1、ヒトOP−2、ヒトOP−3、ヒトBMP−2、ヒトBMP−3、ヒトBMP−4、ヒトBMP−5、ヒトBMP−6、ヒトBMP−8、ヒトBMP−9、ヒトBMP 10、ヒトBUT−11、ショウジョウバエ60A、ツメガエルVg−1、ウニUNIVIN、ヒトCDMP−1(マウスGDF−5)、ヒトCDMP−2(マウスGDF−6、ヒトBMP−13)、ヒトCDMP−3(マウスGDF−7、ヒトBMP−12)、マウスGDF−3、ヒトGDF−1、マウスGDF−1、ニワトリDORSALIN、dpp、ショウジョウバエSCREW、マウスNODAL、マウスGDF−8、ヒトGDF−8、マウスGDF−9、マウスGDF−10、ヒトGDF−11、マウスGDF−11、ヒトBMP−15、およびラットBMP3b。一般的配列7のように、一般的配列9は、C末端の6システイン骨格と適合する96アミノ酸配列であり、一般的配列8のように、一般的配列10は、7システイン骨格と適合する102アミノ酸配列である。
【0078】
【化3】

(ここで、各Xaaは、独立して、以下に定義した1つまたは複数の特定のアミノ酸群から選択される:「res.」は、「残基」を意味し、res.1のXaa=(Phe、Leu、またはGlu);res.2のXaa=(Tyr、Phe、His、Arg、Thr、Lys、Gln、Val、またはGlu);res.3のXaa=(Val、Ile、Leu、またはAsp);res.4のXaa=(Ser、Asp、Glu、Asn、またはPhe);res.5のXaa=(PheまたはGlu);res.6のXaa=(Arg、Gln、Lys、Ser、Glu、Ala、またはAsn);res.7のXaa=(Asp、Glu、Leu、Ala、またはGln);res.8のXaa=(Leu、Val、Met、Ile、またはPhe);res.9のXaa=(Gly、His、またはLys);res.10のXaa=(TrpまたはMet);res.11のXaa=(Gln、Leu、His、Glu、Asn、Asp、Ser、またはGly);res.12のXaa=(Asp、Asn、Ser、Lys、Arg、Glu、またはHis);res.13のXaa=(TrpまたはSer);res.14のXaa=(IleまたはVal);res.15のXaa=(IleまたはVal);res.16のXaa=(Ala、Ser、Tyr、またはTrp);res.18のXaa=(Glu、Lys、Gln、Met、Pro、Leu、Arg、His、またはLys);res.19のXaa=(Gly、Glu、Asp、Lys、Ser、Gln、Arg、またはPhe);res.20のXaa=(TyrまたはPhe);res.21のXaa=(Ala、Ser、Gly、Met、Gln、His、Glu、Asp、Leu、Asn、Lys、またはThr);res.22のXaa=(AlaまたはPro);res.23のXaa=(Tyr、Phe、Asn、Ala、またはArg);res.24のXaa=(Tyr、His、Glu、Phe、またはArg);res.26のXaa=(Glu、Asp、Ala、Ser、Tyr、His、Lys、Arg、Gln、またはGly);res.28のXaa=(Glu、Asp、Leu、Val、Lys、Gly、Thr、Ala、またはGln);res.30のXaa=(Ala、Ser、Ile、Asn、Pro、Glu、Asp、Phe、Gln、またはLeu);res.31=(Phe、Tyr、Leu、Asn、Gly、またはArg);res.32のXaa=(Pro、Ser、Ala、またはVal);res.33のXaa=(Leu、Met、Glu、Phe、またはVal);res.34のXaa=(Asn、Asp、Thr、Gly、Ala、Arg、Leu、またはPro);res.35のXaa=(Ser、Ala、Glu、Asp、Thr、Leu、Lys、Gln、またはHis);res.36のXaa=(Tyr、His、Cys、Ile、Arg、Asp、Asn、Lys、Ser、Glu、またはGly);res.37のXaa=(Met、Leu、Phe、Val、Gly、またはTyr);res.38のXaa=(Asn、Glu、Thr、Pro、Lys、His、Gly、Met、Val、またはArg);res.39のXaa=(Ala、Ser、Gly、Pro、またはPhe);res.40のXaa=(Thr、Ser、Leu、Pro、His、またはMet);res.41のXaa=(Asn、Lys、Val、Thr、またはGln);res.42のXaa=(His、Tyr、またはLys);res.43のXaa=(Ala、Thr、Leu、またはTyr);res.44のXaa=(Ile、Thr、Val、Phe、Tyr、Met、またはPro);res.45のXaa=(Val、Leu、Met、Ile、またはHis);res.46のXaa=(Gln、Arg、またはThr);res.47のXaa=(Thr、Ser、Ala、Asn、またはHis);res.48のXaa=(Leu、Asn、またはIle);res.49のXaa=(Val、Met、Leu、Pro、またはIle);res.50のXaa=(His、Asn、Arg、Lys、Tyr、またはGln);res.51のXaa=(Phe、Leu、Ser、Asn、Met、Ala、Arg、Glu、Gly、またはGln);res.52のXaa=(Ile、Met、Leu、Val、Lys、Gln、Ala、またはTyr);res.53のXaa=(Asn、Phe、Lys、Glu、Asp、Ala、Gln、Gly、Leu、またはVal);res.54のXaa=(Pro、Asn、Ser、Val、またはAsp);res.55のXaa=(Glu、Asp、Asn、Lys、Arg、Ser、Gly、Thr、Gln、Pro、またはHis);res.56のXaa=(Thr、His、Tyr、Ala、Ile、Lys、Asp、Ser、Gly、またはArg);res.57のXaa=(Val、Ile、Thr、Ala、Leu、またはSer);res.58のXaa=(Pro、Gly、Ser、Asp、またはAla);res.59のXaa=(Lys、Leu、Pro、Ala、Ser、Glu、Arg、またはGly);res.60のXaa=(Pro、Ala、Val、Thr、またはSer);res.61のXaa=(Cys、Val、またはSer);res.63のXaa=(Ala、Val、またはThr);res.65のXaa=(Thr、Ala、Glu、Val、Gly、Asp、またはTyr);res.66のXaa=(Gln、Lys、Glu、Arg、またはVal);res.67のXaa=(Leu、Met、Thr、またはTyr);res.68のXaa=(Asn、Ser、Gly、Thr、Asp、Glu、Lys、またはVal);res.69のXaa=(Ala、Pro、Gly、またはSer);res.70のXaa=(Ile、Thr、Leu、またはVal);res.71のXaa=(Ser、Pro、Ala、Thr、Asn、またはGly);res.2のXaa=(Val、Ile、Leu、またはMet);res.74のXaa=(Tyr、Phe、Arg、Thr、Tyr、またはMet);res.75のXaa=(Phe、Tyr、His、Leu、Ile、Lys、Gln、またはVal);res.76のXaa=(Asp、Leu、Asn、またはGlu);res.77のXaa=(Asp、Ser、Arg、Asn、Glu、Ala、Lys、Gly、またはPro);res.78のXaa=(Ser、Asn、Asp、Tyr、Ala、Gly、Gln、Met、Glu、Asn、またはLys);res.79のXaa=(Ser、Asn、Glu、Asp、Val、Lys、Gly、Gln、またはArg);res.80のXaa=(Asn、Lys、Thr、Pro、Val、Ile、Arg、Ser、またはGln);res.81のXaa=(Val、Ile、Thr、またはAla);res.82のXaa=(Ile、Asn、Val、Leu、Tyr、Asp、またはAla);res.83のXaa=(Leu、Tyr、Lys、またはIle);res.84のXaa=(Lys、Arg、Asn、Tyr、Phe、Thr、Glu、またはGly);res.85のXaa=(Lys、Arg、His、Gln、Asn、Glu、またはVal);res.86のXaa=(Tyr、His、Glu、またはIle);res.87のXaa=(Arg、Glu、Gln、Pro、またはLys);res.88のXaa=(Asn、Asp、Ala、Glu、Gly、またはLys);res.89のXaa=(MetまたはAla);res.90のXaa=(Val、Ile、Ala、Thr、Ser、またはLys);res 91のXaa=(ValまたはAla);res.92のXaa=(Arg、Lys、Gln、Asp、Glu、Val、Ala、Ser、またはThr);res.93のXaa=(Ala、Ser、Glu、Gly、Arg、またはThr);res.95のXaa=(Gly、Ala、またはThr);res.97のXaa=(His、Arg、Gly、Leu、またはSer))。さらに、rBMP3bおよびmGDF−10中のres.53の後にIleが存在し、GDF−1のres.54の後にTが存在し、BMP3中のres.54の後にVが存在し、BMP−8およびドルサリン中のres.78の後にGが存在し、hGDF−1中のres.37の後にPro、Gly、Gly、Proが存在する。
【0079】
一般的配列10(配列番号8)は、一般的配列9(配列番号7)の全てを含み、さらに、そのN末端に以下の配列(配列番号9)を含む。
【0080】
【化4】

したがって、残基6から始まって、一般的配列10中の各「Xaa」は、一般的配列9で定義した特定のアミノ酸であり、一般的配列9で記載した各残基数が一般的配列10で5個シフトしていることが異なる。したがって、一般的配列9中の「res.1のXaa=(Tyr、Phe、His、Arg、Thr、Lys、Gln、Val、またはGlu)」は、一般的配列10中のres.6のXaaをいう。一般的配列10では、res.2のXaa=(Lys、Arg、Gln、Ser、His、Glu、Ala、またはCys);res.3のXaa=(Lys、Arg、Met、Lys、Thr、Leu、Tyr、またはAla);res.4のXaa=(His、Gln、Arg、Lys、Thr、Leu、Val、Pro、またはTyr);およびres.5のXaa=(Gln、Thr、His、Arg、Pro、Ser、Ala、Gln、Asn、Tyr、Lys、Asp、またはLeu)。
【0081】
上記のように、本発明で有用な一定のこれまでのところ好ましい骨形態形成ポリペプチド配列は、hOP−1の好ましい基準配列を定義するアミノ酸配列と60%を超えて同一であるか、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%を超えて同一である。これらの特に好ましい配列は、OP−1タンパク質およびOP−2タンパク質(ショウジョウバエ60Aタンパク質が含まれる)の対立遺伝子および系統発生対応物変異形を含む。したがって、一定の特に好ましい実施形態では、有用な形態形成タンパク質には、7システイン骨格を定義し、OP−1とOP−2のいくつかの同定された変異形の間の相同性に適合する本明細書中で「OPX」(配列番号4)と呼ばれる一般的アミノ酸配列内のポリペプチド鎖対を含む活性タンパク質が含まれる。本明細書中に記載のように、所与の位置の各Xaaは、マウスまたはヒトのOP−1またはOP−2のC末端配列中の対応する位置で生じる残基から選択される。
【0082】
【化5】

(ここで、res.2のXaa=(LysまたはArg);res.3のXaa=(LysまたはArg);res.11のXaa=(ArgまたはGln);res.16のXaa=(GlnまたはLeu);res.19のXaa=(IleまたはVal);res.23のXaa=(GluまたはGln);res.26のXaa=(AlaまたはSer);res.35のXaa=(AlaまたはSer);res.39のXaa=(AsnまたはAsp);res.41のXaa=(TyrまたはCys);res.50のXaa=(ValまたはLeu);res.52のXaa=(SerまたはThr);res.56のXaa=(PheまたはLeu);res.57のXaa=(IleまたはMet);res.58のXaa=(AsnまたはLys);res.60のXaa=(Glu、Asp、またはAsn);res.61のXaa=(Thr、Ala、またはVal);res.65のXaa=(ProまたはAla);res.71のXaa=(GlnまたはLys);res.73のXaa=(AsnまたはSer);res.75のXaa=(IleまたはThr);res.80のXaa=(PheまたはTyr);res.82のXaa=(AspまたはSer);res.84のXaa=(SerまたはAsn);res.89のXaa=(LysまたはArg);res.91のXaa=(TyrまたはHis);およびres.97のXaa=(ArgまたはLys)。
【0083】
さらに別の好ましい実施形態では、有用な骨形成的に活性なタンパク質は、低い、中程度の、または高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下で基準モルフォゲン配列(OP−1、OP−2、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、60A、GDF−3、GDF−6、およびGDF−7などの保存された7システインドメインを定義するC末端配列)をコードするDNAまたはRNAとハイブリダイゼーションする核酸によってコードされる配列を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド鎖を有する。本明細書中で使用されるように、高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を、公知の技術にしたがった40%ホルムアミド、5×SSPE、5×Denhardt液、および0.1%SDS中における37℃でのハイブリダイゼーションならびに0.1×SSPE、0.1%SDSにおける50℃での洗浄と定義する。標準的なストリンジェントの条件は、市販の標準分子クローニングテキスト中で十分に特徴づけられている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984):Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);およびB.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)(その開示が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0084】
上記のように、本発明で有用なタンパク質は、一般に、上記ポリペプチドの折り畳まれた対を含む二量体タンパク質である。このような形態形成タンパク質は、還元された場合に不活性であるが、酸化ホモ二量体として活性であり、本発明の他の物質と組み合わせて酸化されてヘテロ二量体を生成する。したがって、形態形成的に活性なタンパク質中の折り畳まれた形態形成ポリペプチド対のメンバーを、独立して、上記の特定のポリペプチドのいずれかから選択することができる。いくつかの実施形態では、骨形態形成タンパク質は単量体である。
【0085】
本発明の材料および方法で有用な骨形態形成タンパク質には、天然に存在する供給源から単離されるか組換えDNA技術または他の合成技術によって産生される上記のポリペプチド鎖のいずれかを含むタンパク質、これらのタンパク質の対立遺伝子および系統発生対応物の変異体、そのムテイン、ならびに種々の短縮構築物および融合構築物が含まれる。欠失または付加ムテインも活性であると考えられ、変化によって折り畳み構造中のシステインの関係が機能的に破壊されない場合、保存されたC末端の6または7システインドメインが変化することができる変異体が含まれる。したがって、このような活性形態は、本明細書中に開示の具体的に記載した構造と等価であると見なされる。タンパク質には、種々のグリコシル化パターン、種々のN末端、アミノ酸配列相同性領域を有する関連タンパク質ファミリーを有する形態、および宿主細胞中の組換えDNAの発現によって産生された天然タンパク質または生合成タンパク質の活性な短縮形態または変異形態が含まれ得る。
【0086】
本明細書中で企図される骨形態形成タンパク質を、インタクトもしくは短縮されたcDNAまたは原核生物もしくは真核生物宿主細胞中の合成DNAから発現するか、精製、切断、再折り畳み、および二量体化して形態形成的に活性な組成物を形成することができる。今のところ好ましい宿主細胞には、原核生物(大腸菌が含まれる)、真核生物(酵母が含まれる)、または哺乳動物細胞(CHO細胞、COS細胞、またはBSC細胞など)が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、他の宿主細胞を使用して利益を得ることができることを認識している。本発明の実施で有用な骨形態形成タンパク質の詳細な説明(どのようにして作製し、使用し、骨形成活性について試験するのかが含まれる)は、多数の刊行物(米国特許第5,266,683号および同第5,011,691号(その開示が本明細書中で参考として援用される)ならびにこれらで引用された刊行物のいずれか(その開示が本明細書中で参考として援用される)が含まれる)に開示されている。
【0087】
したがって、当該分野で利用可能なこの開示および知識を考慮して、遺伝子エンジニアは、適切なアミノ酸配列をコードする種々の異なる生物種のcDNAまたはゲノムライブラリーから遺伝子を単離するかオリゴヌクレオチドからDNAを構築し、次いで、これらを種々の宿主細胞型(原核細胞および真核細胞の両方が含まれる)で発現させて、哺乳動物における骨および軟骨の形態形成を刺激することができる活性タンパク質の巨大ライブラリーを生成することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、骨形成タンパク質には、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vgl、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびこれらのアミノ酸配列変異形が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、形態形成タンパク質は、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%相同なアミノ酸配列を含み、形態形成タンパク質が軟骨欠損の修復を誘導することができる。
【0089】
好ましい実施形態では、形態形成タンパク質は、OP−1、GDF−5、GDF−6およびGDF−7、CDMP−1、CDMP−2またはCDMP−3である。最も好ましい実施形態では、形態形成タンパク質はOP−1である。
【0090】
薬学的組成物
形態形成タンパク質を含む薬学的組成物は、種々の形態であり得る。これらには、例えば、粉末、錠剤、丸薬、座剤、溶液、懸濁液、ゲル、パテ、ペースト、乳濁液、および輸液などの固体、半固体、および液体の投薬形態が含まれる。好ましい形態は、意図される投与様式および治療への適用に依存し、当業者が選択することができる。投与様式には、経口、非経口、筋肉内、腹腔内、関節内、皮下、静脈内、病変内、または局所への投与が含まれ得る。組成物を、各投与経路に適切な投薬形態で処方することができる。いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物を、組織の再生または修復を必要とする部位に(すなわち、軟骨に直接)投与する。他の実施形態では、本発明の薬学的組成物を、組織の再生または修復を必要とする部位の周辺に投与する。例えば、いくつかの実施形態では、本発明の薬学的組成物を、修復(すなわち、関節)を必要とする軟骨周囲領域(例えば、滑液)に投与する。他の実施形態では、本発明の薬学的組成物を、軟骨組織(例えば、半月板または椎間板)に直接投与することができる。
【0091】
形態形成タンパク質を含む薬学的組成物を、例えば、取り込みまたは安定性を刺激する補因子を使用するか使用することなく滅菌等張処方物に含めることができる。処方物は、好ましくは、液体であるか、凍結乾燥粉末であり得る。例えば、形態形成タンパク質を、処方緩衝液で希釈することができる。溶液を、凍結乾燥させ、冷蔵下で保存し、投与前に滅菌注射用水(USP)を使用して再構成することができる。
【0092】
組成物はまた、好ましくは、当該分野で周知の従来の薬学的に許容可能なキャリアを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Mac Publishing Company(1980)を参照のこと)。このような薬学的に許容可能なキャリアには、他の薬物、キャリア、遺伝子キャリア、アジュバント、ビヒクルなど(ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物など)が含まれ得る。好ましくは、キャリアは、患者の血液または滑液と等張である。このようなキャリア賦形薬の例には、水、生理食塩水、リンゲル液、緩衝化溶液、ヒアルロナン、およびデキストロース溶液が含まれる。不揮発油およびオレイン酸エチルなどの非水性賦形薬も本明細書中で有用である。組成物は、好ましくは、単位投与形態であり、通常、特定の組織治療に依存する投与計画として投与する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、徐放性処方物、低送達処方物、形態形成タンパク質のクリアランスが遅延した処方物である。これらの組成物の調製で利用可能な送達材料が多数存在する。これらには、ポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマー、リポソーム、コラーゲン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸/フィブリンマトリクス、ヒアルロン酸、フィブリン、キトサン、ゼラチン、SABERTMシステム(ショ糖酢酸イソ酪酸エステル(SAIB))、DURINTM(薬物負荷インプラントのための生分解性ポリマー)、MICRODURTM(生分解性ポリマー/マイクロカプセル化)、およびDUROSTM(ミニ浸透ポンプ)のミクロスフェアが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、形態形成タンパク質は、送達材料と共有結合している。
【0094】
本発明の組成物は、化合物のための適切な送達系として処方した生体適合キャリア材料中に分散された形態形成タンパク質を含む。徐放性キャリアの適切な例には、半透性ポリマー材料が含まれる。移植可能であるかマイクロカプセルの徐放性材料には、ポリラクチド(米国特許第3,773,319号;欧州特許第58,481号)、L−グルタミン酸とγ−エチルL−グルタミン酸とのコポリマー(Sidmanら,Biopolymers,22,pp.547−56(1985));ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、エチレンビニルアセテート(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15,pp.167−277(1981);Langer,Chem.Tech.,12,pp.98−105(1982))、ポリ−D−(−)−3ヒドロキシ酪酸(欧州特許第133,988号)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、または上記のポリマーが含まれる。
【0095】
本発明の薬学的組成物を、例えば、ミクロスフェア、リポソーム、他の微粒子送達系、または徐放性組成物を使用して、罹患組織中、罹患組織付近、または罹患組織に通じている領域、これらの組織が浸漬している流動物(例えば、滑液)、またはこれらの組織が浸漬している血流に投与することもできる。
【0096】
本発明の形態形成タンパク質を含むリポソームを、周知の方法によって調製することができる(例えば、ドイツ特許第3,218,121号;Epsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82,pp.3688−92(1985);Hwangら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,77,pp.4030−34(1980);米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号を参照のこと)。一般に、リポソームは、脂質含有量が約30mol.%コレステロールを超える小さな(約200〜800Å)単層型である。形態形成タンパク質の至適な放出速度を調節するために、コレステロールの比率を選択する。
【0097】
本発明の形態形成タンパク質を、組織誘導の速度および特徴を調整するために、免疫抑制薬、サイトカインなどの他の生物活性分子を含むリポソームに付着させることもできる。リポソームへの形態形成タンパク質の付着を、ターゲティングされた送達のための抗体への毒素または化学療法薬をカップリングするために広く使用されているヘテロ二官能性架橋剤などの任意の公知の架橋剤によって行うことができる。リポソームへの抱合を、炭水化物指向性架橋試薬である4−(4−マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)を使用して行うこともできる(Duzgunesら,J.Cell.Biochem.Abst.Suppl.16E 77(1992))。
【0098】
当業者は、組織誘導を促進するのに最適な生体適合性および/または生分解性処方物を作製することができる。
【0099】
形態形成タンパク質のための首尾のよいキャリアは、いくつかの重要な機能を果たすべきである。形態形成タンパク質の遅延放出送達系として作用するか、形態形成タンパク質のクリアランスを遅延させ、非特異的タンパク質分解から形態形成タンパク質を保護するべきである。
【0100】
さらに、選択された材料は、インビボで生体適合性を示し、好ましくは生分解性を示さなければならない。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、および種々の組み合わせは、インビボで異なる解離速度を有する。
【0101】
キャリアはまた、ヒドロゲル形態を取ることができる。キャリア材料がヒドロゲルを含む場合、キャリア材料は、実質的に水から構成されるゲルの形態の架橋親水性ポリマーの三次元ネットワークをいい、好ましくは、90%を超える水を含むゲルであるが、これに限定されない。ヒドロゲルは、正味の正電荷または正味の負電荷を有し得るか、中性であり得る。典型的な正味の負電荷のヒドロゲルはアルギニン酸塩である。正味の正電荷を有するヒドロゲルを、コラーゲンおよびラミニンなどの細胞外基質成分に代表され得る。市販の細胞外基質成分の例には、MatrigelTMおよびVitrogenTMが含まれる。正味の中性ヒドロゲルの例は、高度に架橋したポリエチレンオキシドまたはポリビニルアルコールである。
【0102】
種々の成長因子、サイトカイン、ホルモン、栄養因子、ならびに抗体および化学療法薬、酵素、酵素インヒビター、および他の生体活性薬を含む治療組成物を、形態形成タンパク質を含むキャリア材料上に吸着させるかキャリア材料内に分散させることができ、また、長期放出させてゆっくり吸収させる。
【0103】
約1μg/日と約1000μg/日、好ましくは3μg/日と50μg/日との間の投薬レベルの形態形成タンパク質は、軟骨の修復および再生に有用である。当業者が認識するように、引用した用量よりも低いか高い用量が必要な可能性がある。任意の特定の患者のための特定の投薬量および治療計画は、種々の要因(使用した特定の形態形成タンパク質の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、組織損傷の重症度、および治療する医師の判断が含まれる)に依存する。
【実施例1】
【0104】
実施例1:骨軟骨欠損のイヌモデル修復
12匹の繁殖用(bred for purpose)の雌成体イヌを手術する。両後肢を準備し、滅菌した布で包む。長さ約4cmの内側傍膝蓋骨切片を作製する。膝蓋骨を側面に沿って引っ張って大腿骨顆部を露呈させる。右内側顆では、特別にデザインするか改変した5.0mmのドリル用ビットを使用して、軟骨層に及び、且つ軟骨下骨に6mmの深さで浸透した直径5.0mmの欠損を、大腿顆の中央の荷重負荷領域に作製する。動物をそれぞれ6匹の動物を含む2つの群に分ける。第1の群では、破片を除去して骨髄細胞を流出させるための大量の生理食塩水での洗浄後、適切な徐放性OP−1を欠損周囲の滑液に適用する。6匹の動物を含む第1の群では、右側の欠損に徐放性OP−1を投与する。全動物の左側の肢は、コントロールビーズ(0%OP−1)を投与したコントロールとしての役割を果たす。
【0105】
6匹の動物を含む第2の群には、手術時にOP−1で処置しない。術後3日目に、適切な徐放性OP−1処方物を欠損関節周囲の滑液に注射する。6匹の動物には、徐放性OP−1を、右側の欠損周囲の滑液に注射する。全動物の左側の肢は、コントロールビーズ(0%OP−1)を投与したコントロールとしての役割を果たす。
【0106】
術後16週目に動物を屠殺する。屠殺時に、大腿遠位をひとまとめに回収し、欠損部位を、以前の調査で使用されたMoranら(J.Bone Joint Surg.74B:659−667,1992)のスキームに基づいて組織化学的または肉眼的に評価する。
【0107】
後肢のX線写真を、手術前、手術直後、および術後16週間後に得る。手術前のX線写真を使用して、事前に異常が存在しないことを確認し、骨格の成熟を検証する。術後X線写真を使用して欠損の配置を評価する。解剖(sacrifice)X線写真を使用して、軟骨下骨および関節表面の治癒および修復速度を評価する。評価日の1週間以内にX線写真を得る。
【0108】
屠殺直後に死体の肉眼的病理学試験を行う。大腿遠位を即座に一まとめに採取し、生理食塩水に浸したタオル中で保存し、ラベルを貼ったプラスチックバッグに入れる。欠損部位の高倍率写真を撮影し、慎重にラベルを貼る。
【0109】
欠損部位から軟組織を慎重に切り取り、大腿近位端を除去する。水冷式ダイアモンドカットノコギリにて、組織学的評価のために各欠損部位を単離する。
【0110】
検体を、4%パラホルムアルデヒド溶液への浸漬によって固定し、組織学的脱灰過程のために調製する。3つのレベル由来の3つの切片を各ブロックから切断する。レベル1および3は、欠損周囲に最も近い。レベル2は欠損中心に存在する。各レベル由来の3つの切片を、トルイジンブルー、サフラニンO、およびファーストグリーンで染色する。Moranら(J.Bone Joint Surg.74B:659−667,1992)のスキームに基づいて、切片を採点する。
【0111】
OP−1処置動物は、コントロール動物と比較した場合、骨軟骨欠損が改善すると予想される。
【実施例2】
【0112】
実施例2:徐放性ミクロスフェアにおけるOP−1の関節内投与による軟骨欠損の代表的なヒツジモデル
18匹の繁殖用ヒツジを手術する。特別にデザインした装置を使用して、体重負荷がかかる顆状突起表面上に石灰化層に対して深さ2mmまでの直径10mmの軟骨欠損を、18匹のヒツジの後肢膝に作製する(血液の曝露は明白な失敗(failure)である)。全動物の右膝をコントロールとして処置しないままにする。
【0113】
群1(6匹の動物):術後3日目に、各動物の左膝にOP−1を含まない57mgのコントロール0.3%ミクロスフェアを含む250μlの懸濁液を関節内注射する。
【0114】
群2(6匹の動物):術後3日目に、各動物の左膝に170μgのOP−1を含む57mgの0.3%ミクロスフェアを含む250μlの懸濁液を関節内注射する。
【0115】
群3(6匹の動物):術後3日目および術後6週目に、各動物の左膝に170μgのOP−1を含む57mgの0.3%ミクロスフェアを含む250μlの懸濁液を関節内注射する。
【0116】
術後3週目および6週目に全動物で膝の関節鏡評価を行う。術後3週目および6週目にNMR/MRIスキャンを行う。定期的に膝の機械的試験も行う。
【0117】
術後3ヶ月目に全動物を屠殺する。屠殺後、組織学、組織形態計測、免疫染色、および特定の関節軟骨細胞マーカーについてのインサイツハイブリダイゼーションを行う。OP−1処置膝は、コントロール膝と比較して再生が改善すると予想される。
【実施例3】
【0118】
実施例3:変形性関節症の予防のためのヒツジモデル
ヒツジは1回の損傷による衝撃後に進行性変形性関節症を引き起こすことが証明されているので、変形性関節症モデルとしてヒツジを使用する。12匹の14日間馴化させたメス交雑ヒツジを本研究で使用した。全ヒツジを全身麻酔し、無菌技術を使用して、3cmの関節切開を使用して両大腿頸骨関節にアクセスした。バネ荷重の機械装置を使用して、大腿顆の中央の荷重負荷領域に両側衝撃による損傷を作製した(30Mpa、直径6mm×2)(図1を参照のこと)。これらの切開の日常的な縫合後、ヒツジの各膝にOP−1を含むコラーゲンおよびカルボキシメチルセルロースのビヒクル(OP−1 Implant、340μg)またはビヒクルのみを関節内注射した。2つの実験群(N=6)を使用した。群Aには、一方の膝に、手術の当日(0日目)および1週間後(7日目)に0.3mlのOP−1+コラーゲン+カルボキシメチルセルロースを関節内に投与した。0日目の注射は、外科的切開を縫合した直後に行った。群Bには、0日目、7日目、14日目、21日目、28日目、および35日目に、一方の膝にOP−1を投与した。OP−1およびビヒクルの注射前に滑液を吸引し、炎症の指標として白血球数および総タンパク質を測定した。OP−1処置により、術後1週目に滑液中の白血球は有意に減少したが(p<.003、対応のあるT検定)、総タンパク質濃度は減少しなかった(図2を参照のこと)。
【0119】
関節組織の詳細な評価(パラビタール(paravital)染色、TUNEL染色、組織病理学、軟骨、硫酸化GAG分析、生化学的圧痕試験)のために、術後12週間後にヒツジを屠殺した。OP−1膝の病変がしばしば光沢/反射率の減少に制限されるのに対して、コントロール関節はフィブリル化領域またはびらん領域を有するので、異常軟骨(インディアインク取り込み)は群間で有意に異なっていた(p<.03)(表1を参照のこと)。
【0120】
【表1】

関節表面上のインディアインク取り込み(デジタル写真)からのNorthern EclipseTM形態計測ソフトウェアを使用した瘢痕領域の測定。
【0121】
組織切片はビヒクル処置関節中に軟骨細胞クラスター、無細胞基質、および軟骨の喪失を示すのに対して(図3A)、OP−1処置関節中の病変(図3B)は、表面上の軟骨細胞喪失帯および/または小さな溝を示した。Mankin組織採点法(Mankin histology scoring)は有意に異なったが(p<.06、ウィルコクソン符合順位検定)、病変サイズに敏感なOARSI採点システムでは有益性が証明された(p<.03)(表2を参照のこと)(van der Sluijs J.ら,The reliability of the Mankin score for osteoarthrits.Ortho Res 1992,10:58−61)。
【0122】
【表2】

修正Mankinスコアは0〜13であり、0は正常軟骨である。
Osteoarthritis Research Society International Scoreの計算=損傷重症度×1損傷について最大24の領域。
【0123】
硫酸化グリコサミノグリカン濃度は、OP−1処置群でより高く、統計的に有意である傾向が強い(p<.06)(図4を参照のこと)。
【0124】
コラーゲン/CMCのみの群は表面がフィブリル化およびびらんを引き起こすのに対して、OP−1群は損傷の徴候がほとんど内か全くない(図5を参照のこと)。OP−1処置骨格は、コントロールよりも健康で光沢があるようである。
【0125】
これらの実験は、2種のOP−1注射を使用した注射により完全とまではいかないが顕著な改善を示す。処置にもかかわらず小さな病変が存在し得るが、これは、30MPaの衝撃による損傷によって部分的な厚さの欠損が生じ、完全に修復される可能性が低いためである。OP−1は、大腿顆の変性変化の遠心性拡大を抑制することができるのに対して、ビヒクル処置関節は単顆型(unicompartmental)変形性関節症を発症した。OP−1がこの効果を発揮する機構は、修復の影響によるその同化特性による可能性がある。しかし、衝撃部位で修復組織はほとんど存在しないので、損傷軟骨細胞の生存を促進する別の機構が有効であり得る。これらの所見は、OP−1が細胞を採取するか操作した場合に損傷が生じ得る組織工学および細胞ベースの治療などの他の適用に有用であり得ることを示す。
【実施例4】
【0126】
実施例4:関節内注射後のOP−1の治療効果についてのヒツジモデル
本研究は、研究前に14日間馴化させ、健康状態を評価した1.5〜2.5歳の成体雌交雑ヒツジ(N=12)を使用する。全身麻酔下で無菌技術を使用して、3cmの最小浸潤性関節切開術によって全ヒツジの両方(左および右)の内側大腿顆に標準化した30MPaの衝撃による損傷を負わせる。術後3週目に、表3にしたがって、ヒツジをジアゼパム(10mg/kg)およびケタミン(3〜5mg/kg)で鎮静して滑膜穿刺(synoviocentesis)のための膝を準備し、被験物質、偽薬、または生理食塩水を内側大腿頸骨関節に注射する。
【0127】
【表3】

全ヒツジに、両側内側大腿顆損傷を負わせる。9匹のヒツジから構成される第1の群では、一方の膝に被験物質を投与し、反対側の膝にビヒクルのみを含む偽薬を投与する。完全なブロックデザイン(block design)によって膝の処置を割り当てる。3匹のヒツジから構成される第2の群に、偽薬効果のコントロールとして生理食塩水USPを投与する。
【0128】
研究は、以下の表4に記載の手順に従う。
【0129】
【表4】

【実施例5】
【0130】
実施例5:変形性関節症のモルモットモデルおよびウサギモデル
健康なモルモット(自発性)およびACL切除したウサギ(誘導性)の変形性関節症モデルを使用した。3、6、および9月齢の14匹のモルモットの右膝に、50μgのrhOP−1を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)溶液を3週間間隔で12週間注射した。左膝を、未処置コントロールとして使用した。
【0131】
10匹のニュージーランドホワイトウサギの左側のACLを切除し、100μgのrhOP−1を含むPBS溶液またはコントロール溶液のいずれかを12週間の評価期間に3週間間隔で注射した。全動物において、右膝を、非ACL切除未処置コントロールとして使用した。
【0132】
両モデルの全動物を、変性重症度を採点するための修正Mankinスケールを使用して、肉眼による外観および組織学的証拠について評価した。未処置モルモットの膝は、3〜6、6〜9、および9〜12月齢で関節の変化が進行し、12月齢で肉眼的および組織学的に明らかに重篤な変性を示した。OP−1処置により、初期段階でモルモットにおける変性の防止に最も顕著な効果が認められた。9月齢のrhOP−1処置動物における膝の肉眼的および組織学的変性は、6月齢の未処置動物と類似していた。12月齢で、変性の重症度の変化は同程度であった。ウサギACL切除モデルでは、OP−1処置により、12週目の評価期間において処置部位の変性の重症度のわずかな改善が認められた。これらの結果は、OP−1が初期段階の関節炎の変化を防止または遅延させる有利な効果がいくらかあることを示す。
【実施例6】
【0133】
実施例6:半月板治癒のヒツジモデル
非再吸収性の糸によって縫合した孔(直径6mm)および縦裂(長さ2cm)を、ヒツジの両膝の各内側半月に作製した。以下の2つの処置群が存在した:OP−1パテ群(カルボキシメチルセルロースを含む1gのウシ1型コラーゲンあたり3.5mgOP−1)および外科的に作製した欠損以外の処置を行わないコントロール群。OP−1処置動物に、切開の縫合直前に0.3ml(350mcg)を注射し、次いで、術後7日目に関節腔に注射した。
【0134】
処置後6、12、および26週目に、動物を安楽死させる。安楽死後、半月板を除去し、前側の縫合縦裂および後側の2つに切断し、孔が作製された。切片を、MassonトリコロームおよびサフラニンOで染色する。コラーゲンI、II、VI、S100、プロテアーゼMMP1に特異的な抗体を使用して、半月板の免疫組織化学も行った。
【0135】
半月板切片を分離し、OCTに包埋し、液体窒素中で凍結させた。低温保持装置を使用して得た切片を回収し、ホモジナイズし、トリゾール試薬を使用してRNAを調製した。RT−PCRにより、種々のマーカー(I型、II型、II型コラーゲン、細胞外基質についてのマーカーとしてのアグレカン、成長因子としてのTGF−βおよびIGF−2、基質分解酵素としてのMMP−1、MMP−3、およびTIMP−1、最後に、細胞の増殖状態およびアポトーシス状態のためのサイクリンA、Bcl−2、BAX、およびカスパーゼ3が含まれる)の遺伝子発現を研究する。他の関節組織も調査し、OP−1に起因し得る任意の肉眼的相違についてコントロールと比較する。
【0136】
半月板の無血管野中の孔におけるOP−1パテの効果についての予備段階の結果は、孔を有する全半月板でOP−1パテでの処置後に正の結果が得られたことを示す。パテは最初の6週間保持され、その後に再吸収されて消滅した。明らかに、半月板表面から孔への細胞の相当な浸透が認められ、主に8週間後から線維組織に充填された。
【0137】
6週間後、ほとんどのコントロール動物は、材料の欠損への充填がほとんど認められず、存在する材料は繊維状でありわずかであった(whispy)。OP−1処置欠損では、巨大な特定のコラーゲンと共により多くの組織が存在した。細胞応答は、OP−1群でより高いようであった(図6および7を参照のこと)。12週目まで、ほとんどのコントロール欠損は空のままであった。細胞活性は、欠損周囲に認められなかった。OP−1処置欠損は依然としてコラーゲン粒子を含んでいたが、欠損周囲の細胞性は増加し、新規の組織形成にいくらか進行しているようであった(図8を参照のこと)。25週目に、いくつかのコントロール動物で線維の架橋が認められたが、これのほとんどが事実上わずかであった。OP−1群で欠損から消滅したコラーゲン粒子は、主に線維組織に置換された。再造形は、活性なままのようであった(図9を参照のこと)。
【0138】
半月板縦裂修復におけるOP−1パテの効果についての予備段階の結果は、決定的ではなかった。コントロール群と比較した場合に、OP−1で処置した病変からわずかな相違しか認められなかった。これは、縫合によって適切に固定されず、縫合によってタンパク質が十分に一体化しないという事実に起因し得る。いくつかのOP−1処置動物では、欠損の架橋が認められた(図10を参照のこと)。
【実施例7】
【0139】
実施例7:椎間板の修復および再生のヒツジモデル
ヒツジにおける制御された外側の環状欠損の実験的誘導により、ヒトにおける椎間板再生が病理学的および生化学的に密接に再生される一連の事象が開始される。組成の変化には、病変部位の細胞によって合成されるコラーゲンの量および型の変動(Kaapaら 1994a,b,1995 Kaapa E.ら(1995)Collagen synthesis and types I,III,IV,and VI collagens in an animal model of disc degeneration,Spine 20,59−67;Kaapa Eら(1994)Collagens in the injured porcine intervertebral disc,J.Orthop.Res.12.93−102;and Kaapa Eら(1994)Proteoglycan chemistry in experimentally injured porcine intervertebral disk,J.Spin.Dis.7,296−306)、巨大な高浮遊密度アグリカン型プロテオグリカンの喪失および損傷椎間板中の小DS置換プロテオグリカンであるデコリンレベルおよびバイグリカンレベルの評価(Melrose J.ら(1992)A longitudinal study of the matrix changes induced in the intervertebral disc by surgical damage to the annulus fibrosus,J Orthop Res 10:665−676;Melrose J.ら(1997)Topographical variation in the catabolism of aggrecan in an ovine annular lesion model of experimental disc degeneration J
Spinal Disord 10:55−67;およびMelrose J.ら(1997)Elevated synthesis of biglycan and decorin in an ovine annular lesion model of experimental disc degeneration,Eur Spine J 6:376−84)が含まれる。椎間板変性の結果としての軟骨終板(CEP)への血管供給の変化(Moore RJら(1992)Changes in endplate vascularity after an outer anulus
tear in the sheep,Spine 17:874−878)および実験環状欠損に隣接する椎骨の再造形の変化(Moore RJ,ら(1996)Remodeling of vertebral bone after.outer anular injury in sheep,Spine 21:936−940.)、「修復された」病変罹患椎間板の生体力学的能力の変化(Latham JMら(1994)Mechanical consequences of annular tears and subsequent intervertebral disc degeneration,J Clin Biomech 9:211−9)、ならびに脊髄椎間関節の変形性関節症への変化(Moore RJら(1999)Osteoarthrosis of the facet joints resulting from
anular rim lesions in sheep lumbar discs,Spine,24:519−525)も留意した。
【0140】
A.ヒツジ輪状病変モデル
手術の24時間前にヒツジを絶食させ、1gのチオペントンの静脈内注射によって麻酔する。正常な腰椎の生体構造を検証するために、側方単純X線写真を撮影する。2.5%ハロタンによる気管内挿管後に全身麻酔が維持され、パルス酸素測定および呼吸終期CO測定によってモニタリングした。滅菌手術のために肋骨から腸骨稜までの左側腹部を準備する。ヒツジに1200mgのペニシリンを筋肉内注射する。脊椎の横突起の直前の左側の皮膚を切開し、前筋分割技術を使用した鈍的切開によって腰椎を露呈させる。血管および神経の生体構造を重視し、必要に応じて直接的な圧迫または電気焼灼器によって出血を制御する。
【0141】
11番外科用メスを使用した頭側の終板(cranial endplate)と平行し、且つ隣接した左前外側線維輪を通した切開によって、全部で12匹の2歳のヒツジのL1−L2、L3−L4、およびL5−L6の椎間板に制御された輪状病変を作製して長さ4mm×深さ5mmの病変を作製する。介在する腰椎(L2−L3、L4−L5)は切開しない。
【0142】
切開した椎間板に以下の3つの処置のうちの1つを行う:(I)処置なし、(II)ラクトース溶液、または(III)OP−1含有ラクトース。全ヒツジにおいて、L3−L4椎間板に輪状病変を負わせ、処置を行わない。4匹のヒツジでは、L1−L2椎間板を、ラクトース溶液のみで処置し、L5−L6椎間板をラクトース+OP−1で処置する。残りの4匹のヒツジでは、脊髄レベルに関連するいかなる潜在的な結果の偏りも回避するために、L1−L2およびL5−L6椎間板の処置を逆にする。非操作椎間板は、その後の力学的試験においてFSUが適切に固定されるように処置椎間板の間に留まらなければならない(以下を参照のこと)。その後のX線での同定および形態学的同定のために、針金縫合を使用して、頭側操作レベルを同定する。これらのさらなる非操作動物を、生体力学研究のためのコントロールとしても使用する。
【0143】
ヒツジにおける輪状切開後の変性は十分に確立されており(Osti OLら(1990)Volvo Award for Basic Science,Annulus tears and intervertebral disc degeneration.An experimental study using an animal
model,Spine 15:762−7)、12週間後に最も早いX線写真および組織化学による証拠が示されると予想することができる。輪状病変の誘導から3ヶ月後に、ヒツジを6.5gペントバルビタールナトリムの静脈内注射によって屠殺し、腰椎のX線写真を撮影して椎間板の石灰化を評価し、生体力学的分析(n=8)および組織化学的分析(n=4)のために切開および処理し、生体力学試験後、この椎間板を組成分析のために帯状に切開する。
【0144】
B.椎間板組織の組成分析
図11に示すように、椎間板組織を、四分円および髄核に帯状に切開する。
【0145】
C.椎間板組織のプロテオグリカンおよびコラーゲン含有量の決定
線維輪および髄核のサンプルを、氷上で細かく刻み、既知の湿重量の各組織帯の代表的な部分を一定重量まで凍結乾燥させる。組織の出発重量と最終重量との間の差により、その含水量が得られる。3連の部分(1〜2mg)の乾燥組織を、6M HClにて110℃で16時間水和し、中和水和物のアリコートを、組織コラーゲン含有量の基準としてヒドロキシプロリンについてアッセイする(Melrose Jら(1992)A longitudinal study of the matrix changes induced in the intervertebral disc by surgical damage to the annulus fibrosus,J Orthop Res 10:665−676;Melrose Jら(1994a)Proteoglycan heterogeneity in the normal adult ovine intervertebral disc,Matrix 14:61−75;Melrose Jら(1994b)Variation in the composition of the ovine intervertebral disc with spinal level and in its constituent proteoglycans,Vet Comp Orthop Traum 7:70−76;Melrose Jら(1991)The influence of scoliosis and ageing on proteoglycan heterogeneity in the human intervertebral disc J Orthop Res 9:68−77;and Melrose Jら(1996)Intervertebral disc reconstitution after chemonucleolysis with chymopapain is dependent on dosage:an experimental study in beagle dogs Spine 21:9−17)。乾燥組織の3連の部分(約2mg)を、パパインでも消化し、可溶化組織のアリコートを、異染色素である1,9−ジメチルメチレンブルーを使用して、組織プロテオグリカンの基準として硫酸化グリコサミノグリカンについてアッセイする(Melroseら 1991,1992,1994,1996,前出を参照のこと)。
【0146】
D.組織化学的分析および免疫組織化学的分析
組織化学的分析のために指定された脊髄運動セグメントを、骨用ノコギリ(bone saw)を使用した軟骨終板付近の頭蓋椎体および尾椎体を通した切断によって単離する。隣接する椎体セグメントを含む椎間板検体の全体を、10%中性緩衝化ホルマリンまたはHistochoice(登録商標)のいずれかで56時間ひとまとめに固定し、Faxitron HP43855A X線キャビネット(Hewlett Packard,McMinnville,USA)を使用して完全な脱灰が確認されるまで、10%蟻酸を含む5%NBFを振とうしながら2週間に数回交換して脱灰する。
【0147】
脱灰椎間板−椎体検体の矢状スライス(厚さ5mm)を、標準的な組織学的方法によってエタノール溶液で段階的に脱水し、パラフィンワックス中に包埋する。組織化学的染色のために厚さ4μmのパラフィン切片を調製し、Superfrost Plus glass microscope slides(Menzel−Glaser)上にマウントし、85℃で30分間乾燥させ、その後55℃で一晩乾燥させる。切片を、キシレン中で脱パラフィンし(4回交換×2分)、段階的なエタノール洗浄(100〜70%v/v)によって再水和する。
【0148】
全ブロック由来の3つの切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。これらの切片を符号化し、切開のみを行った輪状切開レベルと切開してrhOP−1を投与した輪状切開レベルとの組織学的特長を比較する独立した組織病理学者が試験する。4点半定量的等級付けシステムを使用して、微視的特長を評価する。偏光顕微鏡法を使用して、マッソン三色染色法およびピクリン酸−シリウスレッドで染色した切片中のコラーゲンの構造も試験する。
【0149】
以前に記載のSequenzaカセットおよび使い捨てのCoverplate免疫染色システムを使用して、免疫組織化学的手順を行う(Melrose Jら(2002)Perlecan,the Multi−domain Proteoglycan of Basement Membrane is also a Prominent Pericellular Component of Hypertrophic Chondrocytes of Ovine Vertebral Growth Plate and Cartilaginous End Plate Cartilage,Histochem.Cell Biol.118,269−280;Melrose Jら(2002)Increased nerve and blood−vessel in−growth associated with proteoglycan depletion in an ovine annular lesion model of experimental disc degeneration,Spine 27,1278−85;Melrose Jら(2002)Comparison of the morphology and growth characteristics of intervertebral disc cells,synovial fibroblasts and articular chondrocytes in monolayer and alginate bead cultures,Eur.Spine J.12,57−65;Melrose Jら(2001)Differential expression of proteoglycan epitopes and growth characteristics of
ovine intervertebral disc cells grown in alginate beads,Cells Tissues Organs 168:137−146;Melrose Jら(2003)Perlecan,the multi domain HS−proteoglycan of basement membranes is a prominent extracellular and pericellular component of the cartilaginous vertebral body rudiments,vertebral growth plates and intervertebral discs
of the developing human spinal column,J
Histochem Cytochem 51:1331−1341;Melrose
Jら(2000)Differential Expression of Proteoglycan epitopes by ovine intervertebral disc cells grown in alginate bead culture,J.Anat.197:189−198;Melrose Jら(2002)Spatial and Temporal Localisation of Transforming GrowthFactor−(3,Fibroblast Growth Factor−2,Osteonectin and Identification of Cells Expressing a−Smooth Muscle Actin in the Injured Annulus Fibrosus:Implications for Extracellular Matrix Repair,Spine 27:1756−1764;and Knox Sら(2002)Not all perlecans are created equal:interactions with fibroblast growth factor−2(FGF−2)and FGF receptors,J.Biol.Chem.277:14657−14665)。内因性ペルオキシダーゼ活性を、組織切片の3%Hとのインキュベーションによって最初に遮断する。この後に、組織切片を、コンドロイチナーゼABC(0.25U/ml)を含む20mM Tris−酢酸緩衝液(pH8.0)(37℃で1時間)とウシ精巣ヒアルロニダーゼ(1000U/ml)(37℃で1時間)を含むリン酸緩衝液(pH5.0)との組み合わせで予備消化し、その後に、20mM Tris−HCl(pH7.2)、0.5M NaCl(TBS)で3回洗浄して、またはプロテイナーゼ−K(DAKO S3020)にて6分間室温で抗原エピトープを曝露する。次いで、組織を、20%の正常なブタ血清中で1時間ブロッキングし、巨大および小さなプロテオグリカンおよびコラーゲンに対する多数の一次抗体で探索する(表5)。一次抗体を省略するか、目的の真の一次抗体を無関係のイソ型に適合する一次抗体と置換して負のコントロールの切片も処理する。西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ結合体化二次抗体を、0.05%3,3’−ジアミノベンジジン二塩酸および0.03%Hを含むTBSまたはNova RED基質を使用した検出のために使用する。染色したスライドを、明視野顕微鏡法によって試験し、Leica MPS6
0顕微鏡写真デジタルカメラシステムを使用して写真を撮影する。
【0150】
【表5】

E.脊髄運動セグメントの生体力学的評価
種々の可動面(屈曲−伸展、横曲げ、圧迫、およびねじれ)における各椎単位(functional spinal unit)(FSU)について非破壊生体力学的可動域(ROM)分析を行う。各FSUは、2つの隣接した脊髄(介在椎間板および関連する靭帯)を含む。
【0151】
CallaghanおよびMcGillにおって開発されたジグ(jig)に基づいて特別にデザインされたジグにより、軸方向荷重が一定に維持しながら純粋なねじれおよび曲げモーメントが各FSUに適用される。この組み合わせ荷重は、脊椎がインビボで経験する生理学的荷重と酷似している。
【0152】
以下の4つのFSUを試験する:非操作コントロールレベル、切開したレベル、切開してOP−1およびキャリアで処置したレベル、ならびに切開してキャリアのみで処置したレベル。各FSUを、2つのアルミニウム合金カップに入れ、低温硬化歯科用セメントで固定する。椎間板がカップと確実に揃うように注意する。試験開始前に、再現可能な水和状態が選られるまで、各FSUに0.5MPaの圧力を予め荷重する。これを、各試験前のベースラインとして使用する。予め荷重した0.5MPaの圧力によって弛緩状態が刺激され、これは、脊髄内圧(intradistal pressure)のインビボ測定に基づく(Wilke H−Jら(1999)New in vivo measurements of pressures in the intervertebral disc in daily life,Spine 24:755−62)。±5Nmのねじれ荷重および±1Nmの屈曲伸展、横曲げ荷重を、0.5MPaの軸方向荷重を一定に保ちながら10サイクルにわたり加える。IVDの軸圧縮応答を調査するために、周期的(cyclic)軸方向荷重(10サイクルにわたり0〜1000N)を加える。
【0153】
F.パイロット研究
実験技術を検証するために、ヒツジおよびカンガルーの脊髄についてパイロット研究を完了した。図12は、10回の屈曲伸展荷重サイクルにおけるヒツジFSUの典型的な「トルク対回転」プロットを示す。2つのプロットは、関節周囲の前輪状縁(anterior annular rim)病変前後のFSUを示す。輪状の切断により伸展中の可動域(ROM)が増加する一方で、屈曲ROMには影響がないことが認められる。このROMの増加全体は、脊髄の不安定度の増加を示す。別の所見は、荷重サイクルの高い反復性であり、これにより、試験設定の再現性が実証される。
【0154】
データ分析には、5回目の荷重サイクル中の細長い領域の剛性、ヒステリシス、および歪みエネルギー、および中立帯範囲が含まれる。非操作領域由来のデータを、OP−1を使用するか使用しない切開レベルと比較し、各生体力学パラメーターについて反復測定一元配置分散分析を行う。
【実施例8】
【0155】
ヤギモデルにおける軟骨および微小骨折処置軟骨欠損に対するOP−1の効果
本研究は、ヤギモデルにおける微小骨折手順によって誘導された修復組織の量および組成に対するOP−1の効果を評価する。体重が約25kgの全部で24匹の成体雄ヤギ(1.5〜3歳)を使用する。手術前に、膝関節を、変性関節欠損または他の顕著な整形外科上の問題を有する動物を排除するためにレントゲン写真で試験する。全動物の右膝の滑車溝(後膝関節)中に1つの(一辺が)8mmの正方形の軟骨欠損(石灰化軟骨層の最高到達点(tidemark)に至るまで軟骨を除去する)を作製する。これらのヤギのうちの12匹で、この軟骨欠損を質部位として使用する(IA群およびIB群)(以下の表4を参照のこと)。次いで、12匹の動物の右膝関節に微小骨折処置を行う(IIA群およびIIB群)。直径約1mmのピックを使用して16個の微小骨折孔を作製する。
【0156】
操作直後に、生理食塩水で水和した約0.3mlのOP−1パテ(コラーゲン+CMC)を、関節の滑液内に注射する。7日目に、第2の注射を行う。軟骨欠損群(IB)の6匹の動物および微小骨折群(IIB)の6匹の動物に、ビヒクルのみを送達させる。
【0157】
【表6】

術後16週目に全動物を屠殺する。全部位を、組織形態計測による評価のために準備する。各欠損の中央部分由来の1つの組織学的切片を評価する。元の軟骨欠損領域を満たす特定の組織型(関節軟骨、硝子軟骨、線維軟骨、および線維組織)の全領域および比率を、顕微鏡の接眼レンズのグリッドを使用して決定する。組織型についての十分に許容された組織学的基準を使用する(例えば、Wang Q.,ら,Healing of defects in canine articular cartilage:distribution of nonvascular alpha smooth muscle actin−containing cells,Wound Repair Regen.8,pp.145−158(2000);Breinan HA,ら,Healing of canine articular cartilage defects treated with microfracture,a type II
collagen matrix,or cultured autologous chondrocytes,J.Orthop.Res.18,pp.781−789(2000);およびBreinan,HA,ら,Effect of cultured
autologous chondrocytes on repair of chondral defects in a canine model,J.Bone Joint Surg.79A,pp.1439−1451(1997)を参照のこと)。
【表7−01】

【表7−02】

【表7−03】

【表7−04】

【表7−05】

【表7−06】

【表7−07】

【表7−08】

【表7−09】

【表7−10】

【表7−11】

【表7−12】

【表7−13】

【表7−14】

【表7−15】

【表7−16】

【表7−17】

【表7−18】

【表7−19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−189200(P2011−189200A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−148712(P2011−148712)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【分割の表示】特願2007−515221(P2007−515221)の分割
【原出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】