転写シート
【課題】被加飾体に対して良好な加飾を可能にする転写シートを提供する。
【解決手段】基体シート2の上に転写層8が形成された転写シート1であって、基体シート2と転写層8との付着力が、基体シート2の周縁部2Aのうち少なくとも一部において、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定してある。
【解決手段】基体シート2の上に転写層8が形成された転写シート1であって、基体シート2と転写層8との付着力が、基体シート2の周縁部2Aのうち少なくとも一部において、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加飾体の表面に転写層(加飾層)を転写する際に用いる転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
被加飾体の一例である金属製品への加飾方法として、製品全体の場合には塗装や染色等があり、ワンポイントの加飾としては、レーザープリント、ホットスタンプ、シルク印刷等がある。特に、製品全体に加飾を行う塗装や染色の場合、塗料や染料の色管理が困難であり、多色多彩な表現にすることは難しい。また、ワンポイントの加飾を行う場合には、レーザープリント、ホットスタンプ、シルク印刷等のための別工程を設ける必要がある。このことから、金属製品への加飾は単調なものが多い。
【0003】
こうした現状から、金属製品への加飾方法として転写シートを用いることが考えられる。転写シートは、例えば、特許文献1に示されるように、基体シートの上に離型層が全面的に形成され、離型層の上にマット層が部分的に形成され、離型層又はマット層の上に剥離層、図柄層、接着層が順に形成されたものである。この転写シートでは、剥離層、図柄層及び接着層が被加飾体の表面を加飾する転写層であり、基体シートが離型層及びマット層と共に転写層から剥離される。
【0004】
上述の転写シートを用いて金属製品の表面を加飾する場合には、成形後の金属体に転写シートを押し付けて加飾する方法と、成形前の平板の金属体に転写シートを押し付けて加飾し、その後に成形する方法のいずれかとなる。前者では、成形後の金属体の絞り部への加飾をするために、その形状に合った金型や圧空装置等を用いる必要がある。一方、後者では、金属体に転写シートの基体シートの付したまま成形し、その後に基体シートを金属体から剥がすことが可能であるため、別の金型や圧空装置等が不要であり、加飾が施された金属製品の製造は容易である。このため、転写シートを用いて金属製品に加飾する場合には、成形前の平板の金属体に転写シートを押し付けて加飾し、その後に成形する方が有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−149383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、転写シートが付されたままの金属体をプレス成形する場合、成形途中の金属体の周縁部において転写層が剥離し加飾面にプレス時に使用されるオイルが付着することもある。また、転写層が剥離しない場合であっても、金属体の周縁部において基体シートがめくれて、プレス不良を起こしたり、転写層にキズをつけたりすることもある。
【0007】
本発明では、被加飾体に対して良好な加飾を可能にする転写シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る転写シートの第1特徴構成は、基体シートの上に転写層が形成された転写シートであって、前記基体シートと前記転写層との付着力が、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部において、前記基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定してある点にある。
【0009】
本構成のように、転写シートにおける基体シートと転写層との付着力が、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定してあることで、基体シートの周縁部において転写層との付着力が大きい領域は他の領域に比べて、基体シートと転写層との接着状態が維持されて、転写層から基体シートが剥離し難い。その結果、被加飾体の表面に配置される転写層の位置ずれが抑制されて、被加飾体に対する転写層の転写が確実となる。
【0010】
また、被加飾体の表面に転写層とともに基体シートが付されたままの状態において、被加飾体を成形する際にも、転写層との付着力が他の領域より大きく設定された基体シートの周縁部と転写層の接着状態が維持されて、被加飾体の周縁部の基体シートが転写層から剥離され難くなる。したがって、被加飾体の成形時に、被加飾体の表面の転写層が露出して傷ついたり、基体シートと転写層との間にゴミが侵入したりするといった不具合が抑制される。
また、被加飾体の成形後に被加飾体から不要な周縁部を切除することで、基体シートの周縁部のうち少なくとも一辺において基体シートの他の領域における転写層に対する付着力よりも大きい領域も同時に切除できる。このため、被加飾体の表面の基体シートを剥離して転写層を露出される工程において、基体シートが容易に剥離される。こうして、被加飾体に対して良好な加飾が施される。
【0011】
本発明に係る転写シートの第2特徴構成は、前記基体シートの上に離型層に形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層を介さずに前記転写層が形成される領域を設けた点にある。
【0012】
転写シートにおいて基体シートの上に離型層が形成された領域は、離型層の存在によって転写層から離型層及び基体シートが剥離され易い。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、離型層を介さずに転写層が形成される領域を設けると、当該領域は基体シートの上に転写層が直接形成されるため、基体シート上に離型層を介して転写層が形成された領域よりも、転写層に対して基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、離型層を介さずに転写層が形成される、基体シートの周縁部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【0013】
本発明に係る転写シートの第3特徴構成は、前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層上に前記転写層が形成され、前記転写層として前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、前記基体シートの周縁部に形成された前記離型層のうち少なくとも一部に、前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた点にある。
【0014】
転写シートにおいて離型層の上に剥離層が形成された領域は、離型層及び剥離層の存在によって転写層から離型層及び基体シートが剥離され易い。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部に形成された離型層のうち少なくとも一部に、剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が積層される領域を設けると、当該領域は離型層の上に図柄層あるいは接着層が直接形成されるため、転写シートにおいて離型層上に剥離層が形成された領域よりも、転写層に対して基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、離型層に剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が積層される、基体シートの周縁部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【0015】
本発明に係る転写シートの第4特徴構成は、前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、前記転写層は前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層及び前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた点にある。
【0016】
転写シートにおいて離型層の上に剥離層が形成された領域は、離型層及び剥離層の存在によって転写層から離型層及び基体シートが剥離され易い。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、離型層及び剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が形成される領域を設けると、当該領域は基体シートの上に図柄層あるいは接着層が直接形成されるため、転写シートにおいて離型層上に剥離層が形成された領域よりも、転写層に対して基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、離型層及び剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が積層される、基体シートの周縁部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【0017】
本発明に係る転写シートの第5特徴構成は、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部と前記転写層とに亘って、前記基体シートと前記転写層とを連結する連結層を設けた点にある。
【0018】
転写シートは、通常、転写層から基体シートが剥離され易いよう構成されている。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部と転写層とに亘って、基体シートと転写層とを連結する連結層が設けられていると、この連結層によって転写層から基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、基体シートの周縁部と転写層と亘って連結層が設けられた領域において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る転写シートの断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】ロール転写により被加飾体の表面に転写シートを固着する方法を示す断面図である。
【図4】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図5】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図6】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図7】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図8】金属体の成形工程を示す図である。
【図9】金属体の周縁部を切断除去する工程を示す図ある。
【図10】金属体から基体シートを剥離する工程を示す図である。
【図11】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図12】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図13】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図14】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図15】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図16】別実施形態の転写シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
本発明に係る転写シート1は、例えば金属体等の被加飾体の表面を加飾するために用いるものである。当該転写シート1は、基体シート2の上に離型層3を形成し、離型層3上にマット層4を部分的に形成し、次いで転写層8として剥離層5、図柄層6及び接着層7が順に形成されている(図1参照)。被加飾体への加飾は、被加飾体の表面に転写シート1の転写層8を加熱加圧して密着させた後、基体シート2を剥離して被加飾体の表面に転写層8のみを転写させて行う。
【0022】
ここで、離型層3は、転写層8が基体シート2から容易に剥離するように設けられた層であり、基体シート2と一体となって剥離される。マット層4は、表面に微細な凹凸を有し、転写層8の表面にその凹凸を写し取らせてマット形状を付与する層であり、基体シート2及び離型層3と一体となって剥離される。剥離層5は、転写後に基体シート2から剥離し、被加飾体の表面となる層である。図柄層6は、文字や絵柄等を表現する層である。接着層7は、被加飾体の表面に転写層8を接着させる層である。
【0023】
基体シート2としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのプラスチックシートを使用することができる。基体シート2の厚さとしては、10〜100μmのものを使用するとよい。
【0024】
図1及び図2に示すように、離型層3は、基体シート2の上の周縁部2A以外の部分に形成する。離型層3は、転写後に基体シート2と一体となって剥離される層である。離型層3としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤などを用いることができる。離型層を形成する方法としては、グラビア印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法がある。
【0025】
次に、離型層3の上に被加飾体の表面を部分的にマット状にするマット層4を部分的に形成する。マット層4は、転写シート1を被加飾体の表面に密着させた後に基体シート2が剥離される際、基体シート2及び離型層3と一体となって剥離される層である。マット層4としては、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、またはこれらの共重合樹脂や混合物に、シリカ、アルミナなどの体質顔料や樹脂ビーズなどを分散させたものを用いる。樹脂としては、比較的乾燥が速く、剥離層5との剥離性にも優れたエポキシ・メラミン混合樹脂などを用いるとよい。また、マット層4が酸触媒を含有するようにしてもよい。酸触媒としては、パラトルエンスルフォン酸などを用いることができる。マット層4の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法がある。
【0026】
次に、転写層8として、まず剥離層5を形成する。剥離層5は、基体シート2(離型層3及びマット層4を含む)が剥離される際に、被加飾体の最外面となる層である。剥離層5の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層5に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定してハードコート層としてもよい。剥離層5の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0027】
次に、図柄層6を形成する。図柄層6の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。図柄層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。図柄層6の厚さとしては、1〜30μmが好ましい。図柄層6は着色インキに限らず、金属蒸着層等を形成して金属光沢のある意匠表現をする場合もある。金属蒸着層の材質としては、アルミ、クロム、銅、スズなどを用いる。金属蒸着層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いればよい。
【0028】
次に、接着層7を形成する。転写層8において被加飾体と接する接着層7の材質として、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。接着層7の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコーティングや、グラビア印刷、スクリーン印刷法などを用いるとよい。
【0029】
上述のように、転写シート1は、基体シート2の周縁部2Aの上には離型層3が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aの上には転写層8の剥離層5が形成されており、剥離層5は離型層3とは接していないので、基体シート2の周縁部2Aと剥離層5との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。こうして、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力が、基体シート2の他の領域と転写層8との付着力よりも大きくなるよう設定される。このため、基体シート2の周縁部2Aは転写層8から剥離し難くなって、接着状態が維持されるようになる。
【0030】
ここで、転写シート1の基体シート2と剥離層5との付着力をさらに向上させるためには、剥離層5として、基体シート2と図柄層6の両者に対して接着性のよい樹脂材料等を選択する必要がある。例えば、基体シート2がPETフィルムであり、離型層3がメラミン系樹脂である場合には、剥離層5としてアクリル系樹脂を用い、図柄層6及び接着層7として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いる。転写シート1を用いて被加飾体の表面を加飾する方法を、以下説明する。
【0031】
図3に示すように、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体11を備えたロール転写機を用い、板状の金属体9の表面に転写シート1の接着層6側を密着させ、温度80〜260℃程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体11を介して転写シート1の基体シート2側から熱と圧力とを加える。こうすることで、接着層7が金属体9の表面に接着する。
【0032】
次いで、図4〜図7に示すように、プレス転写装置20を用いて、金属体9に対する転写シート1の接着状態を強固にする。プレス転写装置20には、一対のダイセット21A,21Bに、それぞれ断熱板22A,22B、ヒータパイプが配設されたヒータプレート23A,23B、弾性シート24A,24Bが配設されている。弾性シート24A、24Bは、熱伝導率が高く、耐熱性、耐候性を有するものであって、例えば、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)シートやテフロン(登録商標)シート等である。
【0033】
まず、図4及び図5に示すように、ロール転写により表面に転写シート1が積層された金属体9を、ダイ21Aの弾性シート24A上に配置する。
【0034】
次に、図6に示すように、ダイ21Bをダイ21Aに対して近接移動させて型締めし、金属体9及び転写シート1を加熱しつつ、転写シート1を金属体9の表面に向けて押圧する。このとき、弾性シート24A,24Bの表面は80〜120℃程度まで加熱されており、例えば、4.0〜10MPaの圧力が1〜10秒程度加えられる。その後、図7に示すように、ダイ21Bをダイ21Aから離間して型開きし、転写シート1が積層された金属体9を取り出す。
【0035】
次に、別のプレス機を用いて、図8に示すように、金属体9に対して絞り成形を施す。このとき、転写シート1のうち、金属体9の周縁部9Aに位置する部分には離型層3が形成されておらず、また、上記のプレス転写により、金属体9の表面と転写シート1の接着層7との接着状態及び、基体シート2と剥離層5との接着状態が強固となっている。このため、絞り成形された金属体9において、その表面に積層されている転写シート1の基体シート2及び離型層3は転写層8から剥離することなく、転写層8との接着状態が維持される。
【0036】
その後、図9に示すように、金属体9の不要な端部を切除してから、図10に示すように、金属体9の表面から基体シート2及び離型層3を剥がすことで、金属体9の表面に転写層8による加飾が施された最終製品を得る。なお、基体シート2と転写層8との付着力が、転写シート1の周縁部において他の領域における付着力より大きい部分は、図8に示す金属体9の不要な周縁部9Aの切除に際に、同時に切除される。
【0037】
このように、基体シート2の周縁部と転写層8との接着状態が維持されて、転写シート1が金属体9の表面に向けて加熱しつつ押圧されて、金属体9の表面に位置する転写層8の位置ずれが抑制されることで、金属体9に対する転写層8の転写が確実に行われるようになった。また、転写シート1が付された状態の金属体9の成形の際にも、基体シート2の周縁部と転写層8の接着状態が維持される。その結果、金属体9の周縁部において基体シート2が転写層8から剥離して、金属体9の表面の転写層8が傷ついたり、基体シート2と転写層8との間にゴミが侵入したりするといった不具合が抑制された。こうして、金属製品に対して転写シート1による良好な加飾が施されることとなった。
【0038】
[第2実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図11に示すように、他の層に比べて離型層3及び剥離層5を幅狭にし、基体シート2の周縁部2Aに図柄層6が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aにおいて離型層3及び剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aには離型層3及び剥離層5を介さずに図柄層6が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aと図柄層6との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。
【0039】
この場合、図柄層6として、基体シート2と接着層7の両者に対して接着性のよい樹脂材料等を選択する。例えば、基体シート2がPETフィルムであり、離型層3がメラミン系樹脂である場合には、剥離層5としてアクリル系樹脂を用い、図柄層6及び接着層7として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いる。
【0040】
[第3実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図12に示すように、他の層に比べて剥離層5のみを幅狭にして、基体シート1の周縁部2Aに形成された離型層3に図柄層6が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aにおいて剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aの離型層に剥離層5を介さずに図柄層6が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aの離型層3と図柄層6との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。
【0041】
この場合、図柄層6として、離型層3と接着層7の両者に対して接着性のよい樹脂材料等を選択する。例えば、基体シート2がPETフィルムであり、離型層3がメラミン系樹脂である場合には、剥離層5としてアクリル系樹脂を用い、図柄層6及び接着層7として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いる。
【0042】
[第4実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図13に示すように、他の層に比べて離型層3、剥離層5、図柄層6を幅狭にし、基体シート2の周縁部2Aに接着層7が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aにおいて離型層3及び剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aには離型層3及び剥離層5を介さずに接着層7が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aと接着層7との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。この場合、接着層7として、基体シート2に接着性のよい樹脂材料等を選択する。
【0043】
[第5実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図14に示すように、他の層に比べて剥離層5、図柄層6を幅狭にし、基体シート2の周縁部2Aに形成された離型層3に接着層7が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aの離型層3の上に剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aの離型層3には剥離層5を介さずに接着層7が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aと接着層7との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。この場合、接着層7として、離型層3に接着性のよい樹脂材料等を選択する。
【0044】
[第6実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部と転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図15に示すように、他の層に比べて剥離層5および図柄層6を幅狭にして、基体シート2の周縁部において、離型層3と接着層7との間に両者を連結する連結層Cを設ける構成にしてもよい。また、図16に示すように、剥離層5のみを幅狭にして、離型層3と図柄層6との間に両者を連結する連結層Cを設ける構成にしてもよい。このように、基体シート2の周縁部2Aと転写層8とに亘って両者を連結する連結層Cが設けられていると、この連結層Cによって転写層8から基体シート2が剥離され難くなる。その結果、基体シート2と転写層8との付着力は、基体シート2の周縁部2Aと転写層8と亘って連結層Cが設けられた領域において、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きくなる。この場合、連結層Cは連結対象の2層のいずれにも接着する樹脂材料等である。
【0045】
[その他の実施形態]
(1)上記の実施形態では、基体シート2と転写層8との付着力が、基体シート2の周縁部の全域において、基体シート2の他の領域における付着力より大きく設定された転写シート1を示したが、基体シート2の他の領域における付着力より大きく設定される領域は基体シート2の周縁部の一部であってもよい。例えば、矩形状の転写シート1では、基体シート2の周縁部の対向する二辺であってもよく、一辺のみであってもよい。
【0046】
(2)上記の第1実施形態では、転写シート1としてマット層4を形成されているものを例示したが、本発明に用いられる転写シート1は、マット層4が形成されていないものであってもよい。
【0047】
(3)上記の実施形態において、転写シート1を用いて被加飾体の表面を加飾する方法として、プレス転写の前工程としてロール転写を行う例を示したが、ロール転写を行わずに、プレス転写のみにより金属体9に転写シート1から転写層8を転写して加飾するようにしてもよい。ただし、この場合には、金属体9と転写シート1との間にゴミ等がはさまれないように、プレス転写機をクリーンブース等で囲ったり、クリーンルーム内でプレス転写機を動作させたりする必要がある。また、金属体9と転写シート1との間にエア等が入らないように工夫する必要がある。
【0048】
(4)上記の実施形態では、図1及び図2や図11〜図16に示すように、転写シート1は、基体シート2の周縁部と他の領域(内側領域)とで構成されたシート部分が1つだけ形成されたものを示したが、転写シート1は、基体シート2の周縁部と他の領域(内側領域)とで構成されたシート部分が複数形成されたものであってもよい。この場合には、転写シート1から各シート部分を適宜切断して使用する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る転写シートは、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、さまざまな分野において、内装品、外装品を問わず、使用される金属製品等の加飾品の表面に加飾層が形成する際に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 転写シート
2 基体シート
3 離型層
4 マット層
5 剥離層
6 図柄層
7 接着層
8 転写層
9 金属体(被加飾体)
11 耐熱ゴム状弾性体
20 プレス転写装置
21A,21B ダイセット
22A,22B 断熱板
23A,23B ヒータプレート
24A,24B 弾性シート
C 連結層
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加飾体の表面に転写層(加飾層)を転写する際に用いる転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
被加飾体の一例である金属製品への加飾方法として、製品全体の場合には塗装や染色等があり、ワンポイントの加飾としては、レーザープリント、ホットスタンプ、シルク印刷等がある。特に、製品全体に加飾を行う塗装や染色の場合、塗料や染料の色管理が困難であり、多色多彩な表現にすることは難しい。また、ワンポイントの加飾を行う場合には、レーザープリント、ホットスタンプ、シルク印刷等のための別工程を設ける必要がある。このことから、金属製品への加飾は単調なものが多い。
【0003】
こうした現状から、金属製品への加飾方法として転写シートを用いることが考えられる。転写シートは、例えば、特許文献1に示されるように、基体シートの上に離型層が全面的に形成され、離型層の上にマット層が部分的に形成され、離型層又はマット層の上に剥離層、図柄層、接着層が順に形成されたものである。この転写シートでは、剥離層、図柄層及び接着層が被加飾体の表面を加飾する転写層であり、基体シートが離型層及びマット層と共に転写層から剥離される。
【0004】
上述の転写シートを用いて金属製品の表面を加飾する場合には、成形後の金属体に転写シートを押し付けて加飾する方法と、成形前の平板の金属体に転写シートを押し付けて加飾し、その後に成形する方法のいずれかとなる。前者では、成形後の金属体の絞り部への加飾をするために、その形状に合った金型や圧空装置等を用いる必要がある。一方、後者では、金属体に転写シートの基体シートの付したまま成形し、その後に基体シートを金属体から剥がすことが可能であるため、別の金型や圧空装置等が不要であり、加飾が施された金属製品の製造は容易である。このため、転写シートを用いて金属製品に加飾する場合には、成形前の平板の金属体に転写シートを押し付けて加飾し、その後に成形する方が有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−149383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、転写シートが付されたままの金属体をプレス成形する場合、成形途中の金属体の周縁部において転写層が剥離し加飾面にプレス時に使用されるオイルが付着することもある。また、転写層が剥離しない場合であっても、金属体の周縁部において基体シートがめくれて、プレス不良を起こしたり、転写層にキズをつけたりすることもある。
【0007】
本発明では、被加飾体に対して良好な加飾を可能にする転写シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る転写シートの第1特徴構成は、基体シートの上に転写層が形成された転写シートであって、前記基体シートと前記転写層との付着力が、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部において、前記基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定してある点にある。
【0009】
本構成のように、転写シートにおける基体シートと転写層との付着力が、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定してあることで、基体シートの周縁部において転写層との付着力が大きい領域は他の領域に比べて、基体シートと転写層との接着状態が維持されて、転写層から基体シートが剥離し難い。その結果、被加飾体の表面に配置される転写層の位置ずれが抑制されて、被加飾体に対する転写層の転写が確実となる。
【0010】
また、被加飾体の表面に転写層とともに基体シートが付されたままの状態において、被加飾体を成形する際にも、転写層との付着力が他の領域より大きく設定された基体シートの周縁部と転写層の接着状態が維持されて、被加飾体の周縁部の基体シートが転写層から剥離され難くなる。したがって、被加飾体の成形時に、被加飾体の表面の転写層が露出して傷ついたり、基体シートと転写層との間にゴミが侵入したりするといった不具合が抑制される。
また、被加飾体の成形後に被加飾体から不要な周縁部を切除することで、基体シートの周縁部のうち少なくとも一辺において基体シートの他の領域における転写層に対する付着力よりも大きい領域も同時に切除できる。このため、被加飾体の表面の基体シートを剥離して転写層を露出される工程において、基体シートが容易に剥離される。こうして、被加飾体に対して良好な加飾が施される。
【0011】
本発明に係る転写シートの第2特徴構成は、前記基体シートの上に離型層に形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層を介さずに前記転写層が形成される領域を設けた点にある。
【0012】
転写シートにおいて基体シートの上に離型層が形成された領域は、離型層の存在によって転写層から離型層及び基体シートが剥離され易い。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、離型層を介さずに転写層が形成される領域を設けると、当該領域は基体シートの上に転写層が直接形成されるため、基体シート上に離型層を介して転写層が形成された領域よりも、転写層に対して基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、離型層を介さずに転写層が形成される、基体シートの周縁部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【0013】
本発明に係る転写シートの第3特徴構成は、前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層上に前記転写層が形成され、前記転写層として前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、前記基体シートの周縁部に形成された前記離型層のうち少なくとも一部に、前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた点にある。
【0014】
転写シートにおいて離型層の上に剥離層が形成された領域は、離型層及び剥離層の存在によって転写層から離型層及び基体シートが剥離され易い。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部に形成された離型層のうち少なくとも一部に、剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が積層される領域を設けると、当該領域は離型層の上に図柄層あるいは接着層が直接形成されるため、転写シートにおいて離型層上に剥離層が形成された領域よりも、転写層に対して基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、離型層に剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が積層される、基体シートの周縁部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【0015】
本発明に係る転写シートの第4特徴構成は、前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、前記転写層は前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層及び前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた点にある。
【0016】
転写シートにおいて離型層の上に剥離層が形成された領域は、離型層及び剥離層の存在によって転写層から離型層及び基体シートが剥離され易い。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、離型層及び剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が形成される領域を設けると、当該領域は基体シートの上に図柄層あるいは接着層が直接形成されるため、転写シートにおいて離型層上に剥離層が形成された領域よりも、転写層に対して基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、離型層及び剥離層を介さずに図柄層あるいは接着層が積層される、基体シートの周縁部において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【0017】
本発明に係る転写シートの第5特徴構成は、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部と前記転写層とに亘って、前記基体シートと前記転写層とを連結する連結層を設けた点にある。
【0018】
転写シートは、通常、転写層から基体シートが剥離され易いよう構成されている。ここで、本構成のように、基体シートの周縁部のうち少なくとも一部と転写層とに亘って、基体シートと転写層とを連結する連結層が設けられていると、この連結層によって転写層から基体シートが剥離され難くなる。その結果、基体シートと転写層との付着力が、基体シートの周縁部と転写層と亘って連結層が設けられた領域において、基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る転写シートの断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】ロール転写により被加飾体の表面に転写シートを固着する方法を示す断面図である。
【図4】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図5】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図6】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図7】プレス転写装置による転写工程を示す図である。
【図8】金属体の成形工程を示す図である。
【図9】金属体の周縁部を切断除去する工程を示す図ある。
【図10】金属体から基体シートを剥離する工程を示す図である。
【図11】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図12】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図13】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図14】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図15】別実施形態の転写シートを示す図である。
【図16】別実施形態の転写シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[第1実施形態]
本発明に係る転写シート1は、例えば金属体等の被加飾体の表面を加飾するために用いるものである。当該転写シート1は、基体シート2の上に離型層3を形成し、離型層3上にマット層4を部分的に形成し、次いで転写層8として剥離層5、図柄層6及び接着層7が順に形成されている(図1参照)。被加飾体への加飾は、被加飾体の表面に転写シート1の転写層8を加熱加圧して密着させた後、基体シート2を剥離して被加飾体の表面に転写層8のみを転写させて行う。
【0022】
ここで、離型層3は、転写層8が基体シート2から容易に剥離するように設けられた層であり、基体シート2と一体となって剥離される。マット層4は、表面に微細な凹凸を有し、転写層8の表面にその凹凸を写し取らせてマット形状を付与する層であり、基体シート2及び離型層3と一体となって剥離される。剥離層5は、転写後に基体シート2から剥離し、被加飾体の表面となる層である。図柄層6は、文字や絵柄等を表現する層である。接着層7は、被加飾体の表面に転写層8を接着させる層である。
【0023】
基体シート2としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ビニロン樹脂、アセテート樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのプラスチックシートを使用することができる。基体シート2の厚さとしては、10〜100μmのものを使用するとよい。
【0024】
図1及び図2に示すように、離型層3は、基体シート2の上の周縁部2A以外の部分に形成する。離型層3は、転写後に基体シート2と一体となって剥離される層である。離型層3としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤などを用いることができる。離型層を形成する方法としては、グラビア印刷法、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法等のコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法がある。
【0025】
次に、離型層3の上に被加飾体の表面を部分的にマット状にするマット層4を部分的に形成する。マット層4は、転写シート1を被加飾体の表面に密着させた後に基体シート2が剥離される際、基体シート2及び離型層3と一体となって剥離される層である。マット層4としては、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、またはこれらの共重合樹脂や混合物に、シリカ、アルミナなどの体質顔料や樹脂ビーズなどを分散させたものを用いる。樹脂としては、比較的乾燥が速く、剥離層5との剥離性にも優れたエポキシ・メラミン混合樹脂などを用いるとよい。また、マット層4が酸触媒を含有するようにしてもよい。酸触媒としては、パラトルエンスルフォン酸などを用いることができる。マット層4の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの印刷法がある。
【0026】
次に、転写層8として、まず剥離層5を形成する。剥離層5は、基体シート2(離型層3及びマット層4を含む)が剥離される際に、被加飾体の最外面となる層である。剥離層5の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーを用いるとよい。剥離層5に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定してハードコート層としてもよい。剥離層5の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0027】
次に、図柄層6を形成する。図柄層6の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。図柄層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。図柄層6の厚さとしては、1〜30μmが好ましい。図柄層6は着色インキに限らず、金属蒸着層等を形成して金属光沢のある意匠表現をする場合もある。金属蒸着層の材質としては、アルミ、クロム、銅、スズなどを用いる。金属蒸着層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などを用いればよい。
【0028】
次に、接着層7を形成する。転写層8において被加飾体と接する接着層7の材質として、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。接着層7の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコーティングや、グラビア印刷、スクリーン印刷法などを用いるとよい。
【0029】
上述のように、転写シート1は、基体シート2の周縁部2Aの上には離型層3が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aの上には転写層8の剥離層5が形成されており、剥離層5は離型層3とは接していないので、基体シート2の周縁部2Aと剥離層5との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。こうして、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力が、基体シート2の他の領域と転写層8との付着力よりも大きくなるよう設定される。このため、基体シート2の周縁部2Aは転写層8から剥離し難くなって、接着状態が維持されるようになる。
【0030】
ここで、転写シート1の基体シート2と剥離層5との付着力をさらに向上させるためには、剥離層5として、基体シート2と図柄層6の両者に対して接着性のよい樹脂材料等を選択する必要がある。例えば、基体シート2がPETフィルムであり、離型層3がメラミン系樹脂である場合には、剥離層5としてアクリル系樹脂を用い、図柄層6及び接着層7として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いる。転写シート1を用いて被加飾体の表面を加飾する方法を、以下説明する。
【0031】
図3に示すように、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体11を備えたロール転写機を用い、板状の金属体9の表面に転写シート1の接着層6側を密着させ、温度80〜260℃程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体11を介して転写シート1の基体シート2側から熱と圧力とを加える。こうすることで、接着層7が金属体9の表面に接着する。
【0032】
次いで、図4〜図7に示すように、プレス転写装置20を用いて、金属体9に対する転写シート1の接着状態を強固にする。プレス転写装置20には、一対のダイセット21A,21Bに、それぞれ断熱板22A,22B、ヒータパイプが配設されたヒータプレート23A,23B、弾性シート24A,24Bが配設されている。弾性シート24A、24Bは、熱伝導率が高く、耐熱性、耐候性を有するものであって、例えば、EPT(エチレン・プロピレン・ターポリマー)シートやテフロン(登録商標)シート等である。
【0033】
まず、図4及び図5に示すように、ロール転写により表面に転写シート1が積層された金属体9を、ダイ21Aの弾性シート24A上に配置する。
【0034】
次に、図6に示すように、ダイ21Bをダイ21Aに対して近接移動させて型締めし、金属体9及び転写シート1を加熱しつつ、転写シート1を金属体9の表面に向けて押圧する。このとき、弾性シート24A,24Bの表面は80〜120℃程度まで加熱されており、例えば、4.0〜10MPaの圧力が1〜10秒程度加えられる。その後、図7に示すように、ダイ21Bをダイ21Aから離間して型開きし、転写シート1が積層された金属体9を取り出す。
【0035】
次に、別のプレス機を用いて、図8に示すように、金属体9に対して絞り成形を施す。このとき、転写シート1のうち、金属体9の周縁部9Aに位置する部分には離型層3が形成されておらず、また、上記のプレス転写により、金属体9の表面と転写シート1の接着層7との接着状態及び、基体シート2と剥離層5との接着状態が強固となっている。このため、絞り成形された金属体9において、その表面に積層されている転写シート1の基体シート2及び離型層3は転写層8から剥離することなく、転写層8との接着状態が維持される。
【0036】
その後、図9に示すように、金属体9の不要な端部を切除してから、図10に示すように、金属体9の表面から基体シート2及び離型層3を剥がすことで、金属体9の表面に転写層8による加飾が施された最終製品を得る。なお、基体シート2と転写層8との付着力が、転写シート1の周縁部において他の領域における付着力より大きい部分は、図8に示す金属体9の不要な周縁部9Aの切除に際に、同時に切除される。
【0037】
このように、基体シート2の周縁部と転写層8との接着状態が維持されて、転写シート1が金属体9の表面に向けて加熱しつつ押圧されて、金属体9の表面に位置する転写層8の位置ずれが抑制されることで、金属体9に対する転写層8の転写が確実に行われるようになった。また、転写シート1が付された状態の金属体9の成形の際にも、基体シート2の周縁部と転写層8の接着状態が維持される。その結果、金属体9の周縁部において基体シート2が転写層8から剥離して、金属体9の表面の転写層8が傷ついたり、基体シート2と転写層8との間にゴミが侵入したりするといった不具合が抑制された。こうして、金属製品に対して転写シート1による良好な加飾が施されることとなった。
【0038】
[第2実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図11に示すように、他の層に比べて離型層3及び剥離層5を幅狭にし、基体シート2の周縁部2Aに図柄層6が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aにおいて離型層3及び剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aには離型層3及び剥離層5を介さずに図柄層6が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aと図柄層6との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。
【0039】
この場合、図柄層6として、基体シート2と接着層7の両者に対して接着性のよい樹脂材料等を選択する。例えば、基体シート2がPETフィルムであり、離型層3がメラミン系樹脂である場合には、剥離層5としてアクリル系樹脂を用い、図柄層6及び接着層7として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いる。
【0040】
[第3実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図12に示すように、他の層に比べて剥離層5のみを幅狭にして、基体シート1の周縁部2Aに形成された離型層3に図柄層6が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aにおいて剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aの離型層に剥離層5を介さずに図柄層6が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aの離型層3と図柄層6との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。
【0041】
この場合、図柄層6として、離型層3と接着層7の両者に対して接着性のよい樹脂材料等を選択する。例えば、基体シート2がPETフィルムであり、離型層3がメラミン系樹脂である場合には、剥離層5としてアクリル系樹脂を用い、図柄層6及び接着層7として塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いる。
【0042】
[第4実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図13に示すように、他の層に比べて離型層3、剥離層5、図柄層6を幅狭にし、基体シート2の周縁部2Aに接着層7が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aにおいて離型層3及び剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aには離型層3及び剥離層5を介さずに接着層7が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aと接着層7との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。この場合、接着層7として、基体シート2に接着性のよい樹脂材料等を選択する。
【0043】
[第5実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部2Aと転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図14に示すように、他の層に比べて剥離層5、図柄層6を幅狭にし、基体シート2の周縁部2Aに形成された離型層3に接着層7が形成されるよう構成されていてもよい。転写シート1には、基体シート2の周縁部2Aの離型層3の上に剥離層5が形成されていない。すなわち、基体シート2の周縁部2Aの離型層3には剥離層5を介さずに接着層7が直に接しており、基体シート2の周縁部2Aと接着層7との付着力は、離型層3と剥離層5との付着力よりも大きくなる。この場合、接着層7として、離型層3に接着性のよい樹脂材料等を選択する。
【0044】
[第6実施形態]
転写シート1において、基体シート2の周縁部と転写層8との付着力を、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きく設定するために、図15に示すように、他の層に比べて剥離層5および図柄層6を幅狭にして、基体シート2の周縁部において、離型層3と接着層7との間に両者を連結する連結層Cを設ける構成にしてもよい。また、図16に示すように、剥離層5のみを幅狭にして、離型層3と図柄層6との間に両者を連結する連結層Cを設ける構成にしてもよい。このように、基体シート2の周縁部2Aと転写層8とに亘って両者を連結する連結層Cが設けられていると、この連結層Cによって転写層8から基体シート2が剥離され難くなる。その結果、基体シート2と転写層8との付着力は、基体シート2の周縁部2Aと転写層8と亘って連結層Cが設けられた領域において、基体シート2の他の領域における付着力よりも大きくなる。この場合、連結層Cは連結対象の2層のいずれにも接着する樹脂材料等である。
【0045】
[その他の実施形態]
(1)上記の実施形態では、基体シート2と転写層8との付着力が、基体シート2の周縁部の全域において、基体シート2の他の領域における付着力より大きく設定された転写シート1を示したが、基体シート2の他の領域における付着力より大きく設定される領域は基体シート2の周縁部の一部であってもよい。例えば、矩形状の転写シート1では、基体シート2の周縁部の対向する二辺であってもよく、一辺のみであってもよい。
【0046】
(2)上記の第1実施形態では、転写シート1としてマット層4を形成されているものを例示したが、本発明に用いられる転写シート1は、マット層4が形成されていないものであってもよい。
【0047】
(3)上記の実施形態において、転写シート1を用いて被加飾体の表面を加飾する方法として、プレス転写の前工程としてロール転写を行う例を示したが、ロール転写を行わずに、プレス転写のみにより金属体9に転写シート1から転写層8を転写して加飾するようにしてもよい。ただし、この場合には、金属体9と転写シート1との間にゴミ等がはさまれないように、プレス転写機をクリーンブース等で囲ったり、クリーンルーム内でプレス転写機を動作させたりする必要がある。また、金属体9と転写シート1との間にエア等が入らないように工夫する必要がある。
【0048】
(4)上記の実施形態では、図1及び図2や図11〜図16に示すように、転写シート1は、基体シート2の周縁部と他の領域(内側領域)とで構成されたシート部分が1つだけ形成されたものを示したが、転写シート1は、基体シート2の周縁部と他の領域(内側領域)とで構成されたシート部分が複数形成されたものであってもよい。この場合には、転写シート1から各シート部分を適宜切断して使用する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る転写シートは、自動車、家庭用電化製品、携帯電話、パーソナルコンピュータ等、さまざまな分野において、内装品、外装品を問わず、使用される金属製品等の加飾品の表面に加飾層が形成する際に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 転写シート
2 基体シート
3 離型層
4 マット層
5 剥離層
6 図柄層
7 接着層
8 転写層
9 金属体(被加飾体)
11 耐熱ゴム状弾性体
20 プレス転写装置
21A,21B ダイセット
22A,22B 断熱板
23A,23B ヒータプレート
24A,24B 弾性シート
C 連結層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体シートの上に転写層が形成された転写シートであって、
前記基体シートと前記転写層との付着力が、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部において、前記基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定してある転写シート。
【請求項2】
前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、
前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層を介さずに前記転写層が形成される領域を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、
前記転写層として前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、
前記基体シートの周縁部に形成された前記離型層のうち少なくとも一部に、前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項4】
前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、
前記転写層として前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、
前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層及び前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項5】
前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部と前記転写層とに亘って、前記基体シートと前記転写層とを連結する連結層を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項1】
基体シートの上に転写層が形成された転写シートであって、
前記基体シートと前記転写層との付着力が、前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部において、前記基体シートの他の領域における付着力よりも大きく設定してある転写シート。
【請求項2】
前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、
前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層を介さずに前記転写層が形成される領域を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、
前記転写層として前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、
前記基体シートの周縁部に形成された前記離型層のうち少なくとも一部に、前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項4】
前記基体シートの上に離型層が形成され、前記離型層の上に前記転写層が形成され、
前記転写層として前記離型層の上に剥離層、図柄層及び接着層が順に形成され、
前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部に、前記離型層及び前記剥離層を介さずに前記図柄層あるいは前記接着層が形成される領域を設けた請求項1記載の転写シート。
【請求項5】
前記基体シートの周縁部のうち少なくとも一部と前記転写層とに亘って、前記基体シートと前記転写層とを連結する連結層を設けた請求項1記載の転写シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−40784(P2012−40784A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184336(P2010−184336)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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