説明

転写ローラ及び画像形成装置

【課題】安定した記録材の搬送性を有し、且つ、像担持体に対する均一な接触を確保して良好な転写性を得ることのできる転写ローラ及びその転写ローラを有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像が形成される像担持体1に圧接されて、像担持体1との間に記録材Pを挟持して搬送しながら、像担持体1上のトナー像を記録材P上に静電的に転写させる転写ローラ5は、芯金51と、芯金51の外側の弾性層52と、を有し、弾性層52は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成され、弾性層52の内周面に芯金51の長手方向に平行で直線状に伸びる複数の凹凸52a、52bを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を利用して画像形成を行う複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において使用される転写ローラ及びその画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真方式を利用した画像形成装置において、像担持体としての感光ドラムなどからトナー像を紙などの記録材に静電的に転写する手段として、転写ローラを利用したローラ転写方式が広く用いられている。例えば、感光ドラム上に形成されたトナー像は、転写ローラと感光ドラムとの間に形成された転写ニップにおいて記録材上に転写される。このとき転写ローラには、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、転写ニップに電界が形成される。これにより、トナー像が感光ドラム上から記録材上に静電的に吸着させられる。
【0003】
ローラ転写方式は、それ以前に広く用いられていたコロナ放電式の転写方法に比べて、次のような利点を有している。即ち、転写ローラ自身が記録材の搬送の機能も持ち合わせるため、転写部においてのズレやブレを生じさせることが少なく、記録材の搬送路の短縮化や記録材の搬送のための構成の簡略化が図れることなどである。
【0004】
ローラ転写方式において、良好な転写画像を得るためには、転写ローラを介して記録材に適度な転写電流を流す必要がある。そのため転写ローラは所定の電気抵抗値を有する必要がある。又、感光ドラムの表面に対して転写ローラを所定の押圧力で当接させ、感光ドラムの長手方向(回転軸線方向)の全域で略均一な密着性を確保するために、適度な弾性を有し、圧縮永久歪みが小さく、更には感光ドラムを汚染しないことが要求される。
【0005】
このような特性を満たすために、一般的には、芯金の外側に導電性の発泡性ゴム層を有するゴムローラが広く用いられている。ゴム層を発泡させないソリッドタイプのゴムローラが使用されることもあるが、ゴム硬度が硬く、感光ドラムとの間に形成する転写ニップの幅が安定しないので、発泡性ゴムローラが用いられることが多い。
【0006】
発泡性ゴムローラに導電性を付与する方法として、次のような方法がある。先ず、金属酸化物の粉末やカーボンブラックなど、電子導電性の導電性充填剤をゴム組成物に配合する方法がある。又、ウレタンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴムなどのイオン導電性ゴムを用いる方法がある。
【0007】
しかし、電子導電性の場合、導電性充填材の配合量のわずかな変化やゴムの分散状態によって電気抵抗が大きくばらつき、安定した電気抵抗の制御が難しいなどの理由から、近年のプリンタや複写機ではイオン導電性ゴムの方が用いられる傾向にある(特許文献1)。
【0008】
上記発泡性ゴムにより形成される転写ローラは加硫工程にて架橋・発泡を行うので、発泡後のゴムチューブは外径安定性が低い。従って、発泡後に研磨工程を必要とする。研磨により発生した材料廃棄物はリサイクルできない。
【0009】
そこで、加工成型性の向上やリサイクル性を重視して、次のような転写ローラの使用が提案されている(特許文献2)。即ち、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムを動的架橋により分散させ、更にイオン導電性の帯電防止剤などを分散することで得られる導電性ポリマーを用いる。そして、単軸押出機などにより押出し成型したチューブに芯金を挿入することで得た導電性ローラを転写ローラとして用いる。
【0010】
又、後述するようにソリッドタイプの弾性ローラを軟らかくするために、ソリッド弾性層の長手方向に複数の貫通孔を設けた弾性ローラが提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−12530号公報
【特許文献2】特開2004−51829号公報
【特許文献3】特開平10−299762号公報
【特許文献4】特開2008−298855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したような各種転写ローラには、次のような問題点がある。
【0013】
先ず、前述したイオン導電性、或いは電子導電性の発泡性ゴムを使用した転写ローラは、次のようにして所望の外径に成型する方法が一般的である。即ち、発泡剤を含んだ未加硫のゴム組成物をチューブ状に押出した後、高圧蒸気による加硫缶加硫などで加硫・発泡させ、ゴムチューブを作成した後に芯金を挿入し、表面を研磨することにより所望の外径に成型する。
【0014】
しかし、加硫缶加硫では発泡体のセルが不均一で、所望のセル径を表面に出すためには、多量の研磨を行わなくてはならず、材料のロスが多い。又、研磨によって発生した廃棄物は加硫ゴム組成物であるため、リサイクルができない。
【0015】
又、発泡ゴムチューブを研磨により成型した場合、記録材の搬送性能において次のような問題がある。一つは、ローラの表面に研磨目が出るため、記録材を搬送する際の搬送力にばらつきが生じやすい。即ち、材料の配合のばらつきや、加硫時の温度や加圧条件のばらつき、製造装置の機械差によって、加硫後の発泡径や硬度が異なる。そして、研磨を行った際の研磨目がばらつくことにより、表面の摩擦力が変化する。表面の摩擦力が変われば転写ローラの記録材の送り量が異なるので、感光ドラム上の画像が記録材上で伸びたり縮んだりする不具合が生じることがある。
【0016】
又、近年においてはプリンタなどの画像形成装置の製造にかかるコストを積極的に削減し、市場からのニーズにより装置を従来よりもコンパクトに設計する傾向が強い。その手段として、記録材の搬送に係る各ローラの外径を小さくしたり、記録材の供給から転写に至る搬送路や転写から定着に至る搬送路を短縮したりすることがある。又、搬送路の短縮によって、従来からある搬送系のコロやレジローラが省略されるような例も少なくない。
【0017】
しかし、ローラ外径の小径化や省略、搬送路の短縮によって、記録材の搬送状態が不安定になり、記録材が斜行しやすくなることがある。又、各ローラ間で記録材の進行方向に形成される記録材のループが長手方向(搬送方向と略直交する方向)で不均一になり、感光ドラム上のトナー像が平行性を保って転写されなくなることがある。特に、上述した発泡ゴムローラの場合、発泡のセル径が大きいと、記録材と転写ローラの接触は、セルの壁部分のみで行われているので、実際の接触面積はソリッドゴムの場合と比べて小さくなる。搬送中の記録材が左右にずれるような力を受けた時にそれを抑制する規制力はソリッドゴムより小さくなるので、斜行などの記録材の搬送性はソリッドローラに比べて悪くなる傾向がある。
【0018】
一方、前述した熱可塑性エラストマーとゴムの分散により押出し成型で得られる転写ローラは、成型に際して研磨を行わないので材料のロスが発生しない。又、ロスが発生したとしてもリサイクル性があるので、ゴム組成物を利用した転写ローラよりも省資源の点で優れている。又、研磨を行わないので、表面がソリッドタイプのゴムローラのように均一であり、記録材の搬送性には優れた性能を期待できる。しかし、現状の材料配合で得られるものは、製品硬度が硬く、転写ローラとして用いても、感光ドラムに対する接触が不安定であり、得られる画像の品位の点では発泡性ゴムローラには及ばない。
【0019】
そこで、ソリッドタイプの弾性ローラの硬度を軟らかくするために、ソリッド弾性層の長手方向に複数の貫通孔を設けることが提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【0020】
しかしながら、長手方向に貫通穴を設ける場合、押出成型機のダイの形状が複雑になるため、目詰まりを起こしたり、材料の流れが悪くなったりするなど、均一に独立した貫通穴を安定して得るには、ダイの清掃やメンテナンスを頻繁に行う必要がある。又、押出し成型により形成された貫通穴の両末端間に中空部を有しない部分がある場合、その部分において弾性体の変形が不均一になり、ローラの軸方向における搬送性能にばらつきを生じて、記録材が撓むなどのおそれがある。又、このような現象を回避するために貫通穴のサイズを大きくしすぎると、ローラの周方向で硬度や電気抵抗にムラが生じて、周期的な転写ムラによる画像不良を引き起こすおそれがある。
【0021】
従って、本発明の目的は、安定した記録材の搬送性を有し、且つ、像担持体に対する均一な接触を確保して良好な転写性を得ることのできる転写ローラ及びその転写ローラを有する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的は本発明に係る転写ローラ及び画像形成装置にて達成される。要約すれば、第1の本発明は、トナー像が形成される像担持体に圧接されて、前記像担持体との間に記録材を挟持して搬送しながら、前記像担持体上のトナー像を前記記録材上に静電的に転写させる転写ローラにおいて、芯金と、前記芯金の外側の弾性層と、を有し、前記弾性層は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成され、前記弾性層の内周面に前記芯金の長手方向に平行で直線状に伸びる複数の凹凸を有することを特徴とする転写ローラである。
【0023】
又、第2の本発明によると、トナー像が形成される像担持体に圧接されて、前記像担持体との間に記録材を挟持して搬送しながら、前記像担持体上のトナー像を前記記録材上に静電的に転写させる転写ローラにおいて、芯金と、前記芯金の外側の弾性層と、を有し、前記弾性層は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成され、前記弾性層の内周面には複数の切れ込みが設けられていることを特徴とする転写ローラが提供される。
【0024】
又、第3の本発明によると、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体上のトナー像を記録材に転写させる上記各本発明の転写ローラと、を有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安定した記録材の搬送性を有し、且つ、像担持体に対する均一な接触を確保して良好な転写性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る転写ローラの(a)模式的な外観図、(b)模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る転写ローラと感光ドラムとの接触幅を説明するための転写ニップ近傍の模式的な断面図である。
【図4】本発明の一実施例に係る転写ローラの内周面に形成された凸部が変形する様子を示す模式図である。
【図5】本発明の一実施例に係る転写ローラの各部の寸法を説明するための模式図である。
【図6】本発明の効果を示す実験の方法を説明するための模式図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る転写ローラの模式的な断面図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る転写ローラの各部の寸法を説明するための模式図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る転写ローラの内周面を示す模式的な部分切り欠き斜視図である。
【図10】参考例の転写ローラと感光ドラムとの接触幅を説明するための転写ニップ近傍の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0028】
実施例1
1.画像形成装置
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の模式的な断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用したレーザービームプリンタである。
【0029】
画像形成装置100は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体、即ち、感光ドラム1を有する。感光ドラム1は、OPC(有機光導電体)、アモルファスSe、アモルファスSiなどの感光材料がアルミニウムやニッケルなどのシリンダ状の基盤上に形成されているものである。本実施例では、感光材料としてOPCを有する感光ドラム1を用いた。感光ドラム1は、図示矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としてのローラ型の帯電装置(帯電部材)である帯電ローラ2である。次に、露光手段としての露光装置(レーザービームスキャナ)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、転写手段としてのローラ型の転写部材である転写ローラ5である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置7である。転写ローラ5は、感光ドラム1と接触して転写ニップNを形成する。又、画像形成装置100は、転写ニップNより記録材Pの搬送方向の上流側に、記録材Pを収容する記録材収容部としてのカセット10、カセット10から記録材Pを送り出す供給部材としての供給ローラ11、記録材Pの搬送部材としての搬送ローラ12を有する。更に、画像形成装置100は、転写ニップNよりも下流側に、定着手段としての定着装置6を有する。
【0030】
画像形成動作時には、感光ドラム1は図示矢印R1方向に回転駆動され、先ず、その表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次に、帯電した感光ドラム1の表面は、露光装置3により、画像情報に応じてON/OFF制御されたレーザービームLによる走査露光が施される。これにより、感光ドラム1上に静電潜像が形成される。次に、感光ドラム1上の静電潜像は、現像装置4によって現像剤としてのトナーで現像(可視化)され、トナー像とされる。現像方法としては、ジャンピング現像法、2成分現像法、FEED現像法などが用いられ、イメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。本実施例では、ジャンピング現像法を採用し、イメージ露光と反転現像との組み合わせによりトナー像を形成した。次に、感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写ニップNにおいて、転写ローラ5の作用により、感光ドラム1上から、所定のタイミングで転写ニップに搬送された記録材P上に転写される。記録材Pは、カセット10から供給ローラ11によって送り出され、搬送ローラ12によって転写ニップNに搬送される。ここで、記録材Pは、感光ドラム1上のトナー像の画像形成位置と記録材Pの先端の書き出し位置が合致するように、トップセンサ8にて記録材Pの先端が検知され、タイミングを合わせて転写ニップNに搬送される。所定のタイミングで転写ニップNに搬送された記録材Pは、感光ドラム1と転写ローラ5とによって一定の加圧力で挟持されて搬送される。転写ニップNにおいてトナー像が転写された記録材Pは、定着装置6へと搬送され、ここで熱と圧力によってその上の未定着のトナー像が定着される。その後、記録材Pは、記録材Pの排出手段としての排出ローラ13によって、画像形成装置100の外部の排出部としてのトレー14に排出される。一方、転写工程後に感光ドラム1上に残存するトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置7により感光ドラム1の表面より除去されて回収される。
【0031】
尚、定着装置6内に設けられた排出センサ9は、記録材Pがトップセンサ8と当該排出センサ9との間で詰まった際に、それを検知するためのセンサである。
【0032】
2.転写ローラ
次に、本実施例の画像形成装置100が有する転写ローラ5について詳細に説明する。図2(a)は、本実施例の転写ローラ5の外観を示し、図2(b)は本実施例の転写ローラ5の長手方向(回転軸線方向)と直交する方向の断面を示す。
【0033】
本実施例の転写ローラ5は、アルミニウムやステンレス鋼などの金属製の円柱状部材である芯金51と、その周囲に設けられた略円筒状の弾性層52とを有して構成される。
【0034】
弾性層52として使用される材料は、熱可塑性樹脂或いは熱可塑性エラストマーなどの成分(A)中に、架橋可能なゴムなどの成分(B)を動的架橋により分散させ、ここにイオン導電性導電剤(C)を混入したものである。
【0035】
より詳しくは、成分(A)としては、耐候性に優れた水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが好適であり、その中でも成型時の破断強度が強く、適度な伸縮特性を持つスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)などが良い。その他にも、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)などを用いても良い。或いは、スチレン系以外でも、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系など、種々の熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0036】
又、成分(B)としては、EPDMを主成分とするゴム成分などが好適であり、EPDM以外のゴム成分とをブレンドしてもよい。EPDM以外のゴム成分としては、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)などのジエン系ゴムなどが用いられ、1種又は2種以上をブレンドしてもよい。
【0037】
又、成分(C)のイオン導電性導電剤としては、金属塩を含むイオン導電性の帯電防止剤を使用するのが好適である。環境特性や通電特性など、要求される転写ローラ5の電気抵抗値の特性に応じて材料や配合量の調整、又配合に関連する添加剤の調整や配合処理を適宜行った後に混練される。
【0038】
又、各種の熱可塑性エラストマーに動的架橋可能なゴム成分を予め分散させたような市販のコンパウンドに対して、イオン導電剤を混練する方法や、導電性を有するエラストマーコンパウンドに、各種導電剤をカスタムして混練する方法を採用しても良い。
【0039】
上記の材料は、次のような手順によって、転写ローラ5として成型される。即ち、2軸押出機に、上記成分(A)の熱可塑性エラストマーと成分(B)の動的架橋の可能なゴムを混練する。又、オイルや可塑剤などの軟化剤、及び混練時の加熱によりゴムの架橋を促進させるために、フェノール樹脂などの樹脂架橋剤を添加し、所定の時間混練し動的架橋を行った後に冷却してペレットとして取り出す。次いで、これらのペレットを単軸押出成型機に各種のイオン導電剤とともに投入し、十分にイオン導電剤を分散させ、ダイ(口金)を通して押出す。ここでは、単軸押出成型時に導電剤を混入したが、事前に別工程で混練してあってもよい。
【0040】
本実施例では、押出機に円筒形チューブを押出す場合の心金(マンドレル)、及び、凹凸形状を配設した専用のダイ(口金)を用いる。これにより、弾性層52の内周面の押出し方向に凹部52a、凸部52bからなるローレット形状を有するチューブを形成する。尚、凹部52aの底部を結ぶ円周から弾性層52の外周面までの領域を弾性層本体52cとする。上記チューブを所定の長さにカットし、中央の中空部に芯金51を挿入することで、図2(a)、(b)に示す弾性ローラが得られる。本実施例ではこのようにして形成された弾性ローラを転写ローラ5として用いる。
【0041】
弾性層52の内周面に長手方向に沿って形成する凹部52a及び凸部52bは、成型可能な範囲でその形状や深さを変えることができ様々な断面形状にすることが可能である。例えば、三角形、四角形、多角形、半円形、台形や、先端より根元のほうが幅広い形状などが考えられる。本実施例では、凹部52a及び凸部52bは、弾性層52の内周面の長手方向の全域にわたり連続して、同一の断面形状にて転写ローラ5の円周方向において等間隔に設けられている。本実施例では、凸部52bの断面形状は、略台形の内歯車の歯状の形状とされている。凸部52bの頂部は平坦であっても、転写ローラ5の回転軸線に向かって又はその逆方向に向かって凸状に湾曲していてもよい。又、本実施例では、転写ローラ5が感光ドラム1に押圧されていない自然状態で、全ての凸部52bの頂部が芯金51に接触する。尚、芯金51は、ある程度凸部52bを押圧するように弾性層52の中央の中空部に圧入されるようになっていてよい。
【0042】
図10は、弾性層252の内周面に凹部及び凸部を有さず、芯金251の周囲に弾性層252を密接させた構成の参考例の転写ローラ205に転写圧Fを加えた場合の、接触幅D1を示す図である。この参考例の転写ローラ205の芯金251、弾性層252の材料は、本実施例のものと同じである。転写圧Fは、感光ドラム1に対する転写ローラ5の当接圧であり、接触幅D1は転写ニップNの記録材Pの搬送方向の幅である。一方、図3は、本実施例の転写ローラ5に転写圧Fを加えた場合の接触幅D2を示す図である。上述のように、転写ローラ5は弾性層52の内周面に凹部52aと凸部52bが存在する。転写圧Fの影響を受けると、凸部52bは凸方向に潰れるか、又は図4に示すように凹部52a、即ち、隣接する凸部52b間の隙間に潜り込むように斜めにしなりながら潰れる。その結果、弾性層52の全体は楕円形状に変形することになる。そのため、本実施例の転写ローラ5では、弾性層52の内周面に凹部及び凸部が無い参考例の転写ローラ205の場合に比べて、感光ドラム1との接触幅を広く確保することができる。
【0043】
弾性層52の内周面に形成する凹部52aの深さ(即ち、凸部52bの高さ)は、次のように設定することが好ましい。即ち、弾性層52の厚みに対して凹部52aを深くしすぎると強度が落ちて耐久性を満足できないことがある。そのため、凹部52aの深さは、弾性層52の厚みに対して1/4〜1/3程度の深さであることが好ましい。
【0044】
又、弾性層52の内周面に形成する凹部52aの間隔(即ち、凸部52の間隔)は、次のように設定することが好ましい。即ち、凹部52aの間隔は広すぎると感光ドラム1との良好な密着性を期待できず、又狭すぎると押出工程で材料が目詰まりを起こして適正に成型できない可能性がある。そのため、凹部52aの間隔は、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
【0045】
ここで、図5に示すように、凹部52aの深さ(凸部52bの高さ)D1は、自然状態の転写ローラ5の半径方向における、凹部52aの底部を結ぶ円周から凸部52bの頂部を結ぶ円周までの距離で代表する。又、凹部52aの間隔D2は、凸部52bの頂部を結ぶ円周上における、一の凹部52aの中央から隣接する一の凹部52aの中央までの距離で代表する。同様に、凸部52bの間隔D3は、凸部52bの頂部を結ぶ円周上の、一の凸部52bの中央から隣接する一の凸部52bの中央までの距離で代表する。又、弾性層52の厚さD4は、自然状態の転写ローラ5の半径方向における、凸部52bの頂部を結ぶ円周から弾性層52の外周面までの距離で代表する。
【0046】
但し、これらの凹部52aの深さや間隔は、使用する材料の強度や製品硬度、製品外径などにも因るので、上記範囲に限定されるものではない。
【0047】
尚、転写ローラは、弾性層の主成分としてアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムのいずれか1方、又は、両者の混合物に、液状ポリブタジエンを所定量混合し、硫黄などの加硫剤、スルフィド系の加硫促進剤、カーボンブラックなどの導電材他の助剤を混合したもので形成することもできる。その場合は、上述と同様に凹凸形状を配設した口金を用いてゴム組成物を押出し、未加硫のチューブ状のゴム成形物を得た後、加硫缶にて160℃×30分の加硫を行ないチューブ状の導電性ゴム成形物を作製し、次いで芯金を前記チューブ状のゴム成型物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体を得る。又、凹部及び凸部の表面、若しくは、隣接する凸部間の隙間には、凸部の潰れを妨げない程度に導電性グリスなどのプライマ層を設けて、芯金と弾性層のねじれを防止したり、芯金と弾性層の導通接点を強化したりしてもよい。
【0048】
3.比較試験
(1)転写性能の比較
次に、本実施例の転写ローラを用いた場合の転写性能を比較例と比較した結果について説明する。
【0049】
本実施例の転写ローラの作製に用いた材料は、次の通りである。熱可塑性エラストマーとして、スチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)を用いた。又、架橋可能なゴムとしてEPDMを用いた。又、イオン導電性導電剤として、市販のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製のIRGASTAT(登録商標)−P22とその他の添加剤を用いた。但し、本発明は使用する材料をこれらに限定されるものではない。
【0050】
本実施例の転写ローラの各部の寸法は次の通りである。芯金の直径5.0mmである。弾性層の外径は12.5mm、厚さは3.75mm、長手方向の長さは216mmである。又、弾性層の凹部の深さは1.0mm、凹部の間隔は0.785mmであり、凹部の数は20個である。又、凸部の断面形状は、頂部の幅が0.2mm、基部の幅が0.3mmの略台形形状である。
【0051】
一方、比較例1の転写ローラとして、本実施例の転写ローラと同じ材料の熱可塑性エラストマーを用い、弾性層の内周面にローレット形状の凹部及び凸部を有さない転写ローラ(図10参照)を用いた。比較例1の弾性層の外径や芯金の外径は、本実施例のものと同じである。
【0052】
これらの本実施例の転写ローラと比較例1の転写ローラについて、ローラ硬度、感光ドラムとの接触ニップ幅、及びハーフトーン画像の転写性を比較した。具体的には硬度に関して、アスカーC硬度計を用いて、1.0kgfの荷重をかけたときの硬度を比較した。又、感光ドラムとの接触ニップ幅は、外径が24mmの感光ドラムに対して、次の条件で転写ローラを加圧した時に、記録材の搬送方向における転写ローラと感光ドラムとが接触している幅を測定した。転写ローラは芯金の長手方向の両端部において感光ドラムに対して加圧するものとし、片側540gfの荷重(総圧1.08kgf)で加圧した。又、ハーフトーン画像の転写性は、各転写ローラを用いてプリントを行った際の画像ムラや放電によるスジなどについて比較した。このハーフトーン画像の転写性の比較のためのプリントは、記録材としての紙とトナー及び感光ドラムとの間の放電による異常画像が検出しやすい低温低湿環境(ここでは、15℃、10%RH)において行った。結果を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
上記結果より、転写ローラの長手方向にローレット形状の凹部及び凸部を設けた本実施例の方が、ローラ硬度が低下し、その結果、感光ドラムとの接触幅が増え、転写性も向上していることがわかる。
【0055】
(2)記録材の搬送性能の比較
次に、本実施例の転写ローラの搬送性能を、本実施例の転写ローラと同等の転写性能を示す比較例の転写ローラと比較した結果について説明する。
【0056】
比較例2の転写ローラとして、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とエピクロルヒドリンゴムの2元系混合ゴムを加硫により発泡させ、得られた発泡ゴムチューブを研磨することにより、本実施例と同じ外径に揃えた転写ローラを用いた。尚、比較例2の転写ローラは、アスカーC硬度計を用いて、1.0kgfの荷重をかけたときのローラ硬度が35°、感光ドラムとの接触幅は3.5mmである。接触幅の測定方法は上述の通りである。
【0057】
記録材の搬送性能は、次のようにして測定した。即ち、図6に示すように、1cm×1cmの正方形が連続した格子パターンを、記録材としてのLTRサイズの紙にプリントアウトする。そして、(1)記録材の斜行量の比較として、搬送方向の先端側の上にして見たときの記録材の左端からの余白部の距離を、記録材の先端位置Aと後端位置Bにおいて測定し、それぞれの距離をa、bとした時の差(a−b)を求めて比較した。又、(2)転写位置における記録材の送り量の、転写ローラの長手方向の左右両端部間の差(以下、「平行性」と呼ぶ。)について、図6に示す長さL1とL2を測定し、その差(L1−L2)を比較した。斜行量、平行性ともに差の絶対値が大きいほど記録材の搬送性が悪いことを示す。尚、それぞれの転写ローラについて連続100枚のプリントを行い、得られた100枚のサンプルの(1)斜行量と(2)平行性を測定し、100枚中の最大値として以下の表2に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
上記結果より、本実施例の転写ローラの方が、斜行量、平行性ともに小さく、記録材の搬送性能について優れていることがわかる。これは、本実施例の転写ローラが、プリント中に記録材に対して左右に動こうとする外力が働いても、そのグリップ力の高さから、記録材を安定して搬送させる働きがあることを示している。このグリップ力は、転写ローラが押出し成型機により押出したままの状態であるので、表面性が平滑であり、且つ、熱可塑性エラストマー中に分散された架橋ゴムの性能により表面がソリッドゴムのようにグリップ力を持っていることによるものと考えられる。又、本実施例の転写ローラは、押出し成型であることにより、長手左右の外径差も小さくなることから、長手左右での記録材の送り量に対しても差が少ないことを示している。
【0060】
一方、比較例2の発泡ゴム性の転写ローラは、表面に発泡セルがあるために、記録材をグリップする力が小さくなり、斜行が安定しないものと考えられる。又、研磨により外径を整えるため、研磨機の削れ量のばらつきや硬度の長手ばらつきにより、左右の外径差が生じ、平行性も悪化すると考えられる。
【0061】
以上のように、本実施例では、トナー像が形成される像担持体1に圧接されて像担持体1との間に記録材Pを挟持して搬送しながら、像担持体上のトナー像を記録材上に静電的に転写させる転写ローラは、次の構成を有する。即ち、本実施例では、転写ローラ5は、芯金51と、芯金51の外側の弾性層52と、を有し、弾性層52は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成されている。そして、本実施例では、転写ローラ5は、弾性層52の内周面に芯金51の長手方向に平行で直線状に伸びる複数の凹凸を有する。特に、本実施例では、転写ローラ5は、押出し成型により押出されたチューブ状の弾性体52に芯金51を挿入することで形成される。
【0062】
これにより、本実施例の転写ローラは、従来の架橋発泡ゴム製の転写ローラと同等で良好な転写性を得ることができる。又、押出し成型により研磨を行わないので、ソリッドゴムに近い表面性を得ることができることから、記録材とのグリップ力を向上させることができ、従来の加硫発泡ゴム製の転写ローラと比較して、高い記録材の搬送性能を得ることが可能となる。
【0063】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0064】
図7は、本実施例の転写ローラ5の長手方向(回転軸線方向)と直交する方向の断面を示す。
【0065】
本実施例の転写ローラ5に用いる材料は実施例1と同様である。実施例1では、転写ローラ5の弾性層52の内周面に長手方向に沿って凹部52a及び凸部52bを有する構成により、感光ドラム1との接触性を高めた。これに対し、本実施例では、図7に示すように、弾性層52の内周面に長手方向に沿って切れ込み(スリット)52dが設けられている。これにより、本実施例の転写ローラ5は、実施例1の転写ローラ5と同様に、感光ドラム1との接触性を高めることができる。
【0066】
実施例1のように、弾性層52の内周面に凹凸形状を有する転写ローラ5の場合、押出成型機のダイの形状が複雑になるため、目詰まりを起こしたり、材料の流れが悪くなったりして、凹凸の形状や大きさが制限される場合が考えられる。
【0067】
一方、転写ローラ5の材料として用いる熱可塑性エラストマー自身の材料の強度により、転写ローラ5の硬度が硬くなる。その反面、磨耗や変形に対しては強度が強い。この利点を利用して、転写ローラ5の内周面に切れ込み(スリット)52dを設ける。この切れ込み52dは、加圧によって弾性変形する力を転写ローラ5の回転方向へ逃がすことができ、感光ドラム1との接触幅を広げることができる。
【0068】
尚、上記同様の切れ込みを弾性層52の外周面に設けることで、同様の作用効果をねらうことが考えられる。但し、弾性層52の外周面に切れ込みを設けると、この切れ込み部に紙粉やトナーが溜まることで目詰まりを起こし、感光ドラム1との接触幅への効果が徐々に低下するおそれがある。従って、本実施例では、転写ローラ5の使用に伴い紙やトナーの影響を受けることない、弾性層52の内周面にのみ切れこみ52dを設けた。
【0069】
本実施例の転写ローラ5は、次のようにして製造することができる。即ち、実施例1と同様の単軸押出成型機を用いて、通常の円筒状チューブを押出す際に用いるようなダイを用い、押出し成型後に材料が冷却固化した状態で、チューブ内周面をカッターなどで切れ込むようにして加工する。
【0070】
弾性層52の内周面に形成する切れ込み52dの深さは、次のように設定することが好ましい。即ち、弾性層52の厚みに対して切れ込み52dを深くしすぎると強度が落ちて耐久性を満足できないことがある。そのため、切れ込み52dの深さは、弾性層52の厚みに対して1/4〜1/3程度の深さであることが好ましい。
【0071】
又、弾性層52の内周面に形成する切れ込み52dの間隔は、次のように設定することが好ましい。即ち、切れ込み52dの間隔は広すぎると感光ドラム1との良好な密着性を期待できず、又狭すぎると強度が不足する。そのため、切れ込み52dの間隔は、1.0mm以上3.0mm以下が好ましい。
【0072】
ここで、図8に示すように、切れ込み52dの深さD5は、自然状態の転写ローラ5の半径方向における、弾性層52の内周面から、弾性層52の外周面側の切れ込み52dの端部までの距離で代表する。又、切れ込み52dの間隔D6は、弾性層52の内周面上における、隣接する切れ込み52dの該内周面側の端部間の距離で代表する。又、弾性層52の厚さD7は、自然状態の転写ローラ5の半径方向における、弾性層52の内周面から弾性層52の外周面までの距離で代表する。
【0073】
但し、これらの切れ込みの深さや間隔は、使用する材料の強度や製品硬度、製品外径などにも因るので、上記範囲に限定されるものではない。
【0074】
本実施例の転写ローラの各部の寸法は次の通りである。芯金の直径は5.0mmである。弾性層の外径は12.5mm、内径は5.0mm、厚さは3.75mm、長手方向の長さは216mmである。又、弾性層の切れ込みの間隔は1.0mm、深さは1.0mmであり、切れ込みの数は16個である。この切れ込みを弾性層52の長手方向に連続して設けた。
【0075】
実施例1で説明したものと同様の転写性能、記録材の搬送性能を確認する試験を行った。その結果、本実施例の転写ローラ5を用いた場合も、実施例1とほぼ同等の転写性及び記録材の搬送性を達成することができた。
【0076】
尚、弾性層52に形成する切れ込みは、必ずしも弾性層52の長手方向において連続的に繋がっている必要はなく、長手方向において不連続の複数の切れ込みに分断されていても良い。
【0077】
又、図9のように、弾性層52の内周面に円周方向への切れ込み52eを設けることも可能である。この周方向の切れ込み52eは、転写ローラ5の長手方向において好ましくは等間隔に複数設けることができる。使用する材料の強度や製品硬度、製品外径などにもよるが、周方向の切れ込み52eの深さ、転写ローラ5の長手方向における切れ込み52dの間隔は、上述の長手方向の切れ込み52dと同等とすることができる。この転写ローラ5の円周方向に伸びる切れ込み52eは、上述の転写ローラ5の長手方向に伸びる切れ込み52dに代えて又は加えて設けることができる。
【0078】
以上のように、本実施例では、転写ローラ5は、次の構成を有する。即ち、本実施例では、転写ローラ5は、芯金51と、芯金51の外側の弾性層52と、を有し、弾性層52は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成されている。そして、本実施例では、転写ローラ5は、弾性層52の内周面には複数の切れ込みが設けられている。この切れ込みは、芯金51の長手方向に平行な切れ込み、芯金51の周方向に平行な切れ込み、又はこれらの両方であってよい。
【0079】
これにより、熱可塑性エラストマーとゴムをブレンドした転写ローラにおいて、弾性層の内周面に切れ込みを入れることでも、感光ドラムとの密着性を良好にし、記録材の搬送性能を維持したまま、転写性を良好にすることが可能となる。
【0080】
以上説明した通り、本発明によれば、加工性やリサイクル性に優れた、熱可塑性エラストマーにゴムを分散させた材料をベースに成型した転写ローラにおいて、弾性層の内周面にローレット形状の凹凸溝を設けたり、弾性層の内周面に切り込みを入れたりする。これにより、転写圧に対する弾性層の潰れ量を増すことができる。その結果、感光ドラムとの密着性を向上させることができ、従来の架橋発泡ゴム製の転写ローラと同等の転写性を得ることができる。又、押出し成型により研磨を行わないので、ソリッドゴムに近い表面性を得ることができることから、記録材とのグリップ力を向上させることができ、従来の加硫発泡ゴム製の転写ローラと比較して、高い記録材の搬送性能を得ることが可能となる。
【0081】
尚、上述の実施例では、転写ローラは、像担持体としての感光ドラムから記録材にトナー像を転写するものとして説明したが、これに限定されるものではない。当業者には周知のように、第1の像担持体として感光体上に形成したトナー像を一旦第2の像担持体としての中間転写体に一次転写し、その後中間転写体から記録材にトナー像を二次転写する中間転写方式がある。中間転写体としては、例えば無端ベルト状の中間転写ベルトなどが用いられる。中間転写方式の画像形成装置では、二次転写手段として、ローラ状の二次転写部材である二次転写ローラが広く用いられている。二次転写ローラは、一般に、中間転写ベルトを介して、中間転写ベルトの内周面側に配置された対向ローラに押圧されると共に、二次転写工程時に所定の二次転写バイアスが印加される。本発明は、転写ローラとしての二次転写ローラにも等しく適用できるものである。
【符号の説明】
【0082】
1 感光ドラム
2 帯電ローラ
3 露光装置
4 現像装置
5 転写ローラ
6 定着装置
7 クリーニング装置
8 トップセンサ
9 排出センサ
P 記録材
L レーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体に圧接されて、前記像担持体との間に記録材を挟持して搬送しながら、前記像担持体上のトナー像を前記記録材上に静電的に転写させる転写ローラにおいて、
芯金と、前記芯金の外側の弾性層と、を有し、前記弾性層は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成され、前記弾性層の内周面に前記芯金の長手方向に平行で直線状に伸びる複数の凹凸を有することを特徴とする転写ローラ。
【請求項2】
前記転写ローラは、押出し成型により押出されたチューブ状の弾性体に芯金を挿入することで形成されることを特徴とする請求項1に記載の転写ローラ。
【請求項3】
トナー像が形成される像担持体に圧接されて、前記像担持体との間に記録材を挟持して搬送しながら、前記像担持体上のトナー像を前記記録材上に静電的に転写させる転写ローラにおいて、
芯金と、前記芯金の外側の弾性層と、を有し、前記弾性層は、熱可塑性エラストマー中に架橋可能なゴムが動的架橋されて分散され、且つ、イオン導電性導電材を含んだ材料より形成され、前記弾性層の内周面には複数の切れ込みが設けられていることを特徴とする転写ローラ。
【請求項4】
前記切れ込みは、前記芯金の長手方向に平行な切れ込み、前記芯金の周方向に平行な切れ込み、又はこれらの両方であることを特徴とする請求項3に記載の転写ローラ。
【請求項5】
トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体上のトナー像を記録材に転写させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の転写ローラと、を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97065(P2013−97065A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237889(P2011−237889)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】