説明

転写型インクジェット印刷用中間転写体

【課題】 画像保持性と転写性を高度に両立できる転写型インクジェット記録用中間転写体を提供すること。
【解決手段】 中間転写体が表面に付加型シリコーンゴムを含む層からなることを特徴とする転写型インクジェット記録用中間転写体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写型インクジェット印刷用中間転写体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式による画像形成時の問題として、隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディング、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングが存在する。また被印刷体がインク中の液体分を過剰に吸収することによるカール、コックリングといった問題もある。
【0003】
当該問題の解決のために、中間転写体に、インクを吐出して画像を形成する工程と、該中間画像が形成された中間転写体を被印刷体に圧着して該中間画像を該被印刷体へ転写する転写工程とを有する転写型インクジェット印刷方法が考案された。
【0004】
ここで、上述の転写型インクジェット印刷方式に用いられる中間転写体としては、一般的に画像保持性と離型性を両立した材料が求められている。すなわち中間転写体表面に反応液及びインクを付与した場合、得られた中間画像を良好に保持することができ(画像保持性)、かつ、中間画像を被印刷体へより効率よく転写することができる(離型性)材料が求められている。特許文献1には、画像保持性と転写性を両立させる為に、中間転写体にプラズマ処理と界面活性剤付与処理を行う工程を含む画像形成方法が記載されている。この方法では、プラズマ処理と界面活性剤付与処理を行うことで中間転写体に安定的な親水表面を形成する。これにより、後に付与する反応液及びインクの保持性を向上しつつ、良好な離型性を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特登録第4054721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の印刷方法において、作業の効率化のため、転写体を一度に多量に作製し、少しずつ印刷に供するという運用をする場合がある。特に近年は即時印刷(プリント・オン・デマンド)など印刷のデリバリーに対する市場要求は高まる一方であり、転写体は事前に用意しておき必要に応じ即印刷に供する事ができるようにする事が好ましい。そのため該印刷方法に供する中間転写体には、長い期間保管をしても性能が変化しないという特性がより強く求められるようになってきている。
【0007】
従って本発明の目的は、上述の画像形成方法に供するにあたり、長期に渡る保管期間を経過しても画像保持性と転写性を高度に両立できる転写型インクジェット記録用中間転写体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は先述した背景技術を深く鑑み、鋭意検討の結果、以下に示す構成が転写型インクジェット記録用中間転写体として課題に対しより優れた性能を有することを見出し、本発明を成すに至った。即ち、中間転写体に、プラズマ処理と界面活性剤の付与処理を行う工程と、前記プラズマ処理と界面活性剤の付与処理が行われた中間転写体上に、該中間転写体上でのインクの流動性を低下させるための反応液を付与する工程と、前記反応液が付与された中間転写体に、インクを吐出して画像を形成する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する工程と、を具える画像形成方法に供する中間転写体であって、該中間転写体が表面に付加型シリコーンゴムを含むことを特徴とする中間転写体を提供することで課題を解決することができる。
【0009】
このように優れた性能を有する理由は明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。一般的に、シリコーンゴム表面層にプラズマ処理を施すと、ゴム成分、フィラー成分、オイル成分の一部に親水基が導入される。さらに界面活性剤を付与することで、プラズマ処理により高いエネルギー状態となった表面に界面活性剤が吸着することでより安定的な親水表面となると考えられる。
【0010】
シリコーンゴムは、その硬化タイプの違いから付加型と縮合型に大別される。縮合型のシリコーンゴムでは、ベースポリマーの末端が縮合反応を起こしSi―O―Si構造を形成することでゴムを作製する。一方付加型のシリコーンゴムでは、ベースポリマーの末端のビニル基が付加反応を起こし、C―C結合を形成することでゴムを作製する。
【0011】
これらにプラズマ処理を行った場合、付加型と縮合型ではプラズマ処理を行った場合の親水基が異なることが考えられる。プラズマ処理によりその表面には、Si―O―Si結合から発生したSiOH、またC―C結合から発生したCOOH、あるいはCOHからなる親水基が発生する。これら親水基成分に界面活性剤が吸着した場合、COOH、あるいはCOHからなる親水基の方が、SiOHと比較してより安定して存在し得ると考えられる。ここで付加型は縮合型と比較してC−C結合の割合が多い為、付加型の方が縮合型と比較してある一定の保管期間を過ぎた場合の親水性が失われにくいと推定される。
【0012】
また別の要因としてはオイル成分の遊離量の差が考えられる。プラズマ処理時にはSi―O―Si結合が一部破壊されてシリコーンゴムからオイル成分が遊離する。縮合型は付加型に比べてSi―O―Si結合が多い為、遊離するオイル成分の量は多いと考えられる。プラズマ親水化処理されたシリコーンゴム表面に界面活性剤を付与すると、界面活性剤は親水基部分に吸着する。しかし、遊離したオイル成分が多いと、界面活性剤はオイル成分への吸着に優先的に消費される為、シリコーンゴム表面の親水性を安定的に持続することが難しくなる。したがって、オイル遊離成分が比較的少ない付加型シリコーンゴムの方が縮合型シリコーンゴムと比較して、ある一定の保管期間を過ぎた場合の親水性が失われにくいと考えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期に渡る保管期間を経過しても画像保持性と転写性を高度に両立できる転写型インクジェット記録用中間転写体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用できる画像記録方法に用いられる記録装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の態様は、中間転写体に、プラズマ処理と界面活性剤の付与処理を行う工程と、前記プラズマ処理と界面活性剤の付与処理が行われた中間転写体上に、該中間転写体上でのインクの流動性を低下させるための反応液を付与する工程と、前記反応液が付与された中間転写体に、インクを吐出して画像を形成する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する工程とを有する。以下に本発明の一実施形態に係る印刷方法の概略を説明する。
【0016】
まず、中間転写体にプラズマ処理と界面活性剤の付与処理を行う。
【0017】
<中間転写体>
本発明における中間転写体は、反応液及びインクを保持し、画像を形成する基材となる。構成としては、中間転写体をハンドリングし必要な力を伝達するための支持部材と、画像を形成する表層部材とからなる。これらは均一の部材からなっていても良いし、各々独立した複数の部材からなっていてもよい。形状としては、シート形状、ローラ形状、ドラム形状、ベルト形状、無端ウエブ形状等が挙げられる。また該中間転写体のサイズは、目的の印刷画像サイズに合わせて自由に選択する事ができる。
【0018】
中間転写体の支持部材は、その搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。材質としては金属、セラミック、樹脂などが好適である。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために要求される特性から、以下のものが好ましい。即ち、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクス等である。またこれらを組み合わせて用いるのも好ましい。
【0019】
中間転写体の表層部材は、紙などの被印刷体に画像を圧着させて画像を転写させるため、ある程度の弾性を有していることが望ましい。例えば被印刷体として紙を用いる場合には、中間転写体表層部材の硬度はデュロメータ・タイプA(JIS・K6253準拠)硬度10〜100°の範囲のものが好ましく、特に20〜60°の範囲のものがより好適である。
【0020】
該表層部材の材質としては、前記特性および加工特性に優れるシリコーンゴムが好適に用いられる。この表層部材は複数材料を積層して形成された物でも良く、例えばポリウレタンベルトにシリコーンゴムを薄く被膜させた積層材料は好適に用いることができる。シリコーンゴムはその作製条件から、熱加硫型シリコーンゴム、室温硬化型シリコーンゴム等に分類される。得に室温硬化型シリコーンゴムはゴム作製時に手間がかからず、安価でシリコーンゴムを得ることができるため、好適に用いられる。本発明においては、シリコーンゴムの中でも付加型シリコーンゴムを用いる。付加型シリコーンゴムは、付加反応によりシリコーンゴムを形成されたものであれば特に制限はない。一般的には、不飽和脂肪族基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素に結合した活性水素を有するオルガノポリシロキサン、および架橋触媒として白金化合物が含まれている。
【0021】
シリコーンゴムは更に、製品形態から見た場合、一液性と二液性に分けることができるが、これは特性上・作業上の都合から任意に選択することができる。シリコーンゴムはフィラーを含んでいてもよい。シリコーンゴムのフィラーはゴム硬度や熱伝導性の制御、補強、耐熱性の向上に寄与する上、プラズマ処理による親水化を補助する効果も期待される。フィラーの種類や量は作業性や必要とするゴムの特性に応じ適宜選択することができるが、本発明の目的に対してはシリカからなるフィラーが好ましく、その量は体積比で2%〜80%が好ましい。
【0022】
<表面改質>
シリコーンゴム表面は一般的に撥水性である為、画像保持性を得る為に表層部材は表面改質(親水化処理)を施す。
【0023】
ここで画像保持性について説明する。画像保持性が良好な状態とは、中間転写体表面にインクや反応液を付与した場合に、転写体上でインクがはじいたり、ブリーディングを起こしたりすることなく、付与したインク像が所望の画像通りに形成される状態をいう。この画像保持性は、中間転写体とインク・反応液の表面自由エネルギーとの相関により影響を受ける。例えば、転写体表面の表面自由エネルギーが低い(撥水性が強い)場合、付与したインクは転写体上に濡れ広がりにくい為、インクドットのサイズが小さくなり(ハジキの発生)、所望の画像通りのインク像を得られにくい。さらに、隣接して付与されたインク同士が混ざり合いブリーディングを発生させる可能性がある。従って良好な画像保持性を得る為には、転写体表面は表面自由エネルギーが比較的高い状態が好適に用いられる。この中間転写体の表面自由エネルギーを簡易的に評価するためには、転写体表面の水の静的接触角を測定すればよい。
【0024】
一般的に何も処理をしていないシリコーンゴム表面の水の静的接触角は110°程度である。この程度の撥水性であると、画像保持性は得られにくい。本発明については表面の水の静的接触角が概ね95°以下になるよう材料組成や各種表面改質条件を調整することが好ましい。
【0025】
本発明においては、プラズマ処理および界面活性剤処理により表面改質を行う。まず、シリコーンゴム表面にプラズマ処理を行う工程について説明する。プラズマ処理手段としては大気圧もしくは減圧雰囲気下で処理を行うタイプが一般的であり、どちらも好適に用いられる。ここで言うプラズマ処理の処理とは、大気中の酸素を活性化し、表面に水酸基を生じさせることのできるコロナ放電処理を含む。この際、表面に付加型シリコーンゴムが含まれていると、プラズマ処理により遊離するオイル成分が少なく、またC−C結合から−COOHや−COH等の比較的安定性の高い親水基が形成されると考えられる。
【0026】
さらにプラズマ処理した表面に界面活性剤処理を行う。使用できる界面活性剤としてはいずれのものでもよく、例えば、一般的な、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、弗素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤の付与手段としては、ロールコート、ドクターコート、あるいはスプレー塗布、ディップコートを行うものから任意に選ぶことができる。
【0027】
ここで表面に付加型シリコーンゴムが含まれていると、遊離オイル成分が少ないため界面活性剤が無駄なく表面に配向し、また−COOHや−COH等の親水基が界面活性剤により安定化すると考えられる。
【0028】
<保管>
表面改質を行った転写体は、無論すぐ次工程に供する事もできるが、作業の効率化を図るため一度に大量に転写体の表面改質を行ない、印刷を開始するまで改質した転写体を保管するという場合がある。
【0029】
このような保管時に中間転写体の表面特性が変化するメカニズムについて詳細は明らかではない。しかし本発明に因れば、プラズマ処理により高エネルギー化したシリコーンゴム表面に充分な量の界面活性剤が安定的に配向するため、長期の保管による表面特性の変動をより少ない範囲に食い止めることができると考えられる。
【0030】
なおこの場合、界面活性剤をある一定量以上表面に付着させた状態で保管すると、より保管安定性が高まり好ましい。シリコーンゴムは一般的に、経時と共にゴム自体に含まれる低分子量オイル成分が徐々にゴム表面に滲み出してくる。保管時に余剰の界面活性剤が滲み出したオイル成分を吸着することで、オイル成分が親水基に再吸着してゴム表面の親水性が低下するのを抑制することができる為である。
【0031】
さらに外部に浮遊する埃や油分等による汚染を軽減し、転写体を重ねて保管した場合において転写体同士が互いに接着してしまう事も低減する効果もある。
【0032】
続いて反応液を付与する工程を行う。
【0033】
<反応液>
本発明における反応液は、インクの流動性を低下させる成分を含有する。ここで、インクの流動性を低下させるとは、以下の意味である。即ち、インクを構成している組成物の一部である色材や樹脂等がインクの流動性を低下させる成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインク全体の粘度上昇が認められる場合である。さらに、色材などインク組成物の一部が凝集する事により局所的に粘度上昇を生じる場合をも含む。
【0034】
この成分は中間転写体上でのインクおよび/又はインク組成物の一部の流動性を低下せしめて、画像形成時のブリーディング、ビーディングを抑制する効果がある。すなわちインクジェットデバイスを用いた画像形成においては単位面積当たりのインク付与量が多量となる場合があり、そのような時にはインクの滲みや混じり合いであるブリーディング、ビーディングが起こりやすい。しかし該反応液が中間転写体上に付与されている事によって、インクにより画像が形成される時に流動性が低下するためブリーディングやビーディングが起こりにくく、結果として画像が良好に形成・保持されることとなる。
【0035】
使用するインクの流動性を低下させる成分は、画像形成に使用するインクの種類によって適切に選択するのが望ましい。例えば、染料系のインクに対しては高分子凝集剤を用いることが有効であり、微粒子が分散されてなる顔料系のインクに対しては、多価の金属イオンを含有する液体や、酸緩衝液などのpH調整剤を用いることが有効である。また別のインクの流動性を低下させる成分の例として、カチオンポリマーなど複数のイオン性基を有する化合物を用いるのも良い。また、これらの化合物を2種類以上併用するのも有効である。
【0036】
具体的にインクの流動性を低下させる成分として使用できる高分子凝集剤としては、例えば、陽イオン性高分子凝集剤、陰イオン性高分子凝集剤、非イオン性高分子凝集剤、両性高分子凝集剤等が挙げられる。
【0037】
また具体的にインクの流動性を低下させる成分として使用できる金属イオンとしては、例えば以下のようなものが挙げられる。即ち、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+およびZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+およびAl3+等の三価の金属イオン等である。勿論、これらに限定されるものではない。そして、これらの金属イオンを含有する液体を塗布する場合には、金属塩水溶液として塗布することが望ましい。金属塩の陰イオンとしては、以下のようなものが挙げられる。即ち、Cl、NO、CO2−、SO2−、I、Br、ClO、HCOO、RCOO(Rはアルキル基)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
金属塩水溶液の金属塩濃度は0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、20質量%以下が好ましい。
【0039】
また具体的にインクの流動性を低下させる成分として使用できるpH調整剤としてはpHが7未満の酸性溶液が好適に用いられる。例としては塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等の無機酸、蓚酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸等の有機酸が挙げられる。またこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩の溶液も同様に好ましく用いることができる。
【0040】
またpH緩衝能を有する酸緩衝液(バッファー)は、インクにより見かけ上の反応液濃度が低下してもpHの変動が少ないためインクとの反応性が衰えないので、極めて好適に用いられる。pH緩衝能を得るためには、反応液中に緩衝剤を含有させることが好ましい。用いることのできる緩衝剤の具体例としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム等の酢酸塩、リン酸水素塩、炭酸水素塩、或いは、フタル酸水素ナトリウム、フタル酸水素カリウム等の多価カルボン酸の水素塩を用いることができる。更に、多価カルボン酸の具体例としては、フタル酸以外にも、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等が挙げられる。これ以外でも、添加することによってpHに対して緩衝作用を発現させる従来公知の化合物は、いずれも好適に用いることができる。
【0041】
また、本発明に係る反応液は適量の水や有機溶剤を含有させてもよい。上記したようなインクの流動性を低下させる成分を水や有機溶剤に溶解してなるが、水性媒体の例としては、例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。具体的には、例えば、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール類。ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどのグリコールエーテル類。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類。アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン、又は、ケトアルコール。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。グリセリン。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類。チオジグリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体などの多価アルコール類。2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物などが好適に用いられる。また、これらの中から2種類以上の物を選択して混合して用いることもできる。また、反応液は必要に応じて所望の性質を持たせるため、上記の成分のほかに消泡剤、防腐剤、防黴剤などを適宜に添加することができる。
【0042】
また反応液には、転写性を向上させるために、もしくは最終的に形成された画像の堅牢性を向上させるために、各種樹脂を添加することもできる。樹脂を添加しておくことで転写時の被記録体への接着性を良好な物としたり、インク被膜の機械強度を高めたりすることが可能である。また種類によっては画像の耐水性の向上も見込める。用いられる材料としてはインクの流動性を低下させる成分と共存できるものであれば制限は無い。例としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの有機ポリマーが好適に用いられる。またインクに含まれる成分と反応し架橋するような樹脂も好適である。例としては、インク中での色材分散のために頻繁に用いられるカルボン酸と反応し架橋する、オキザゾリンやカルボジイミドが挙げられる。
【0043】
これらの樹脂は反応液溶媒に溶解させてあっても良いし、エマルション状態やサスペンション状態で添加してあっても良い。
【0044】
また反応液は界面活性剤を加えてその表面張力を適宜調整して用いることができる。界面活性剤としては、イオン性、非イオン性、カチオン性、アニオン性等の公知の物を必要に応じて適宜選択し使用することができる。但し、ある種の界面活性剤は反応液とインクとに影響を及ぼし、画像形成に影響を及ぼす場合があるので注意を有することは言うまでもない。
【0045】
<反応液付与>
反応液を付与する方法は従来知られている各種手法を適宜用いることができる。例としてはダイコーティング、ブレードコーティング、グラビアローラー、またこれらにオフセットローラーを組み合わせた物などが挙げられる。また高速高精度に付与できる手法としてインクジェットデバイスを用いるのも好適である。
【0046】
続いてインクを吐出して画像を形成する工程を行う。
【0047】
<描画>
続いて該反応液が付与された中間転写体上に、インクジェットデバイスを用いてインクが付与される。
【0048】
本発明に適用されるインクジェットデバイスとしては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、静電気を利用してインクを吐出する形態等がある。インクジェット液体吐出技術で提案される各種インクジェットデバイスをいずれも用いることができる。中でも特に高速で高密度の印刷の観点からは電気−熱変換体を利用したものが好適に用いられる。
【0049】
またインクジェットデバイス全体の形態としては特に制限はない。中間転写体の進行方向(ドラム形状の場合は軸方向)にインク吐出口を配列してなるラインヘッド形態のインクジェットヘッドや、中間転写体の進行方向と垂直にヘッドを走査しながら記録を行うシャトル形態のヘッドを用いることもできる。
【0050】
<インク>
本発明におけるインクは、インクジェット用インクとして広く用いられているインク、具体的には染料やカーボンブラック、有機顔料といった色材を溶解および/または分散させた各種インクを用いることができる。中でも特にカーボンブラックや有機顔料インクは、耐候性や発色性の良い画像が得られるため好適である。
【0051】
また環境に対する負荷や、使用時の臭気の観点から、成分に水を含む水性インクが好適である。特に成分中に水分を45%以上含むインク、溶媒の主成分が水であるインクが非常に好ましい。
【0052】
さらに該インクは色材含有量が0.1%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましい。また、15.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましい。
【0053】
色材としては染料やカーボンブラック、有機顔料、及びそれに付随する樹脂等が含まれ、以下に示すものが使用可能である。
【0054】
染料としては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、8、22、34、70、71、76、78、86、142、199、C.I.アシッドブルー9、22、40、59、93、102、104、117、120、167、229、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83、227、C.I.アシッドレッド1、4、8、13、14、15、18、21、26、35、37、249、257、289、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142、C.I.アシッドイエロー1、3、4、7、11、12、13、14、19、23、25、34、44、71、C.I.フードブラック1、2、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、112、118等が挙げられる。上記以外でも公知の染料を用いることができる。
【0055】
カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック顔料で、例えば、以下の市販品などを用いることができる。なお、本発明で用いることができるカーボンブラックは、これらに限定されるものではなく、公知のカーボンブラックを用いることができる。また、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子やチタンブラックなどを用いてもよい。
【0056】
レイヴァン:7000、5750、5250、5000、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上コロンビア製)。ブラックパールズ:L、リーガル:400R、330R、660R、モウグル:L、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、ヴァルカン:XC−72R(以上キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学製)。
【0057】
有機顔料は、例えば、以下のものを用いることができる。トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。チオインジゴ系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなど。
【0058】
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、170、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50。C.I.ピグメントブルー:15、15:3、15:1、15:4、15:6、22、60、64。C.I.ピグメントグリーン:7、36。C.I.ピグメントブラウン:23、25、26。上記以外でも公知の有機顔料を用いることができる。
【0059】
これらの顔料は、形態としての限定を受けず、例えば、自己分散タイプ、樹脂分散タイプ、マイクロカプセルタイプ等のものをいずれも使用することが可能である。その際に使用する顔料の分散剤としては、水溶性で、重量平均分子量が1000〜15000程度の分散樹脂が好適に使用できる。具体例としては、ビニル系水溶性樹脂、スチレンおよびその誘導体、ビニルナフタレンおよびその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸およびその誘導体。マレイン酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体、フマル酸およびその誘導体からなるブロック共重合体或いはランダム共重合体、また、これらの塩等が挙げられる。
【0060】
また、最終的に形成された画像の堅牢性を向上させるために、水溶性樹脂や水溶性架橋剤を添加することもできる。用いられる材料としてはインク成分と共存できるものであれば制限は無い。水溶性樹脂としては上に例示した分散樹脂をそのまま用いることができる。水溶性架橋剤としては、オキザゾリンやカルボジイミドがインク安定性の面で好適に用いられる。またポリエチレングリコールジアクリレートやアクリロイルモルフォリンのような反応性オリゴマーも好適に用いることができる。
【0061】
また、本発明に係る中間転写体を用いる方式においては被印刷体に転写するときのインクはほぼ色材と高沸点有機溶剤だけとなるので、転写性向上のために適量の有機溶剤を含有させることが有効である。使用する有機溶剤としては、高沸点で蒸気圧の低い水溶性の材料であることが好ましい。例えば、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール類。ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどのグリコールエーテル類。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類。アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン、又は、ケトアルコール。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。グリセリン。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類。チオジグリコール、1,2,6−ヘキサントリオールなどの多価アルコール類。2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリンなどの複素環類、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物等が好適に用いられる。また、これらの中から2種類以上の物を選択して混合して用いることもできる。
【0062】
また、本発明に係るインクは上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂の中和剤、塩などの、種々の添加剤を含有してもよい。
【0063】
また必要に応じて界面活性剤を加えてインクの表面張力を適宜調整して用いることも好ましい。界面活性剤としては、インクに対して保存安定性等が低下する影響を及ぼさないものであれば限られるものではない。例えば脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール類、アセチレングリコール類等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。またこれらの2種以上を適宜選択して使用することもできる。
【0064】
インクを構成する成分の配合比については限定を受けることなく、選択したインクジェットヘッドの吐出力、ノズル径等から吐出可能な範囲で、適宜に調製することが可能である。インクがインクジェットデバイスを用いて該反応液が付与された中間転写体の画像形成面に付与されると、表面で該反応液と該インクとが接触し、流動性が低下したインク画像が中間画像として形成される。
【0065】
なお当然であるが、該中間画像形成時には、中間転写体上に所望の画像が反転した画像(ミラー画像)を形成する。
【0066】
<水分除去>
前記中間画像から液体分を減少させる工程を設けることも好ましい。該画像の液体分が過剰であると次の圧着転写工程において余剰液体がはみ出したりあふれ出したりして画像を乱したり転写不良を引き起こしたりすることになる。なお水分除去の手法としては旧来用いられている各種手法がいずれも好適に適用できる。加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、吸収体を接触させる方法、またこれらを組み合わせる手法がいずれも好適に用いられる。また、自然乾燥により行うことも可能である。
【0067】
続いて、中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する工程を行う。
【0068】
<転写>
その後該画像に被印刷体を圧着して画像を中間転写体上から被印刷体へ転写することで、画像印刷物を得る。本明細書において「被印刷体」とは、一般的な印刷で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック、フィルムその他の印刷媒体、記録メディアも含めて言う。
【0069】
この際には加圧ローラを用いて中間転写体と被印刷体の両側から加圧すると、効率良く画像が転写形成されるため好適である。
【0070】
また多段階に加圧することも転写不良の軽減に効果が有り好適である。
【0071】
<クリーニング>
以上で画像形成は完了するが、該中間転写体は生産性の観点から繰り返し連続的に用いることがあり、その際には次の画像形成を行う前に表面を洗浄再生することが好ましい。
【0072】
当該洗浄再生を行う手段としては、旧来用いられている各種手法がいずれも好適に適用できる。シャワー状に洗浄液を当てる方法、濡らしたモルトンローラを表面に当接させ払拭する方法、洗浄液面に接触させる方法、またワイパーブレードで掻き取る方法、各種エネルギーを付与する方法など、いずれも好適に用いられる。無論、これらを複数組み合わせる手法も好適である。
【0073】
<定着>
なお追加工程として、転写後画像記録が行われた被印刷体をローラで加圧し、表面平滑性を高めるようにしても良い。またこの際ローラを加熱しておくと画像の堅牢性が向上する場合もありこれも好適である。
【0074】
上述のように、本発明の態様を取ることで、本発明によればある一定の保管期間を設けても画像保持性と転写性を両立した転写型インクジェット記録用中間転写体を提供することができることを本発明者は初めて見出した。
【実施例】
【0075】
以下に本発明にかかる転写型インクジェット印刷用中間転写体の実施例、および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。もちろん、本発明は下記実施例に限られるものではない。
【0076】
図1は、反応液が付与された中間転写体上に、インクをインクジェットデバイスを用いて選択的に付与することにより中間画像を形成する中間画像形成工程と、該中間画像が形成された中間転写体を被印刷体に圧着して該中間画像を転写する転写工程とを有する本発明の一例の模式図である。
【0077】
図1において、中間転写体は回転可能なドラム状の支持部材12と、その外面に固定された表層部材11とからなっている。そして該支持部材12は軸13を中心として矢印方向に回転駆動し、その回転と同期して、周辺に配置された各デバイスが作動するようになっている。
【0078】
この中間転写体の表層部材11はシリコーンゴムとPETシートからなる層であり、両面粘着テープにより支持部材12に固定されている。本実施例では、厚さ0.5mmのPETシートにシリコーンゴムを0.3mmの厚さにコーティングしたものを用いた。この表面に、大気圧プラズマ処理装置(キーエンス社製 ST−7000)を用いて下記条件にて表面改質を施した。
処理距離: 7mm
プラズマモード: High
処理速度: 50mm/sec
【0079】
さらにこの表面をアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる市販の中性洗剤を3%となるように純水で希釈した界面活性剤水溶液に10秒間浸漬させた後、界面活性剤が付着したまま自然乾燥を行った。
【0080】
得られた転写体を、ある一定の時間保管を行った。保管環境は、表面改質を行った界面活性剤が付着したままの転写体を50枚重ね合わせ、温度30℃湿度50%RH条件下に放置した。
【0081】
本構成においては、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、回転のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するため等について要求される特性から、アルミニウム合金からなる円筒形のドラムを中間転写体の支持部材12として用いた。
【0082】
しかし中間転写体の支持部材としては、適用する記録装置の形態ないしは被印刷体への転写に態様に合わせ、例えばローラ状、ベルト状の物も好適に使用することができる。
【0083】
いずれにしてもドラム状の支持部材やベルト状の無端ウエブ構成の支持部材を用いると、同一の中間転写体を連続して繰り返し使用することが可能となり、生産性の面から極めて好適な構成となる。
【0084】
本構成においては、反応液を付与するデバイスとしてローラ式塗布装置14が配置されている。これにより反応液が中間転写体の表面に連続的に付与される構造となっている。
【0085】
本例においては反応液として金属塩の水溶液、具体的には酢酸カルシウム((CH3COO)2Ca)の28質量%水溶液に界面活性剤としてアセチレノールE100(商品名)0.3部を適宜添加して表面張力を調整した物を使用した。なお、金属種及び濃度は適宜条件に応じて変更可能である。
【0086】
次に、インクジェットデバイス15から画像形成用のインクが吐出され、中間転写体上に中間画像(ミラー反転している画像)が形成される。本構成では電気熱変換素子を用いオンデマンド方式にてインク吐出を行うタイプのデバイスを使用した。
【0087】
本例においてはインクとして樹脂分散型顔料インクを調製して用いた。組成を下に示す。
(「部」は質量部)
顔料色材:C.I.ピグメントブルー15 3.0部
分散樹脂:スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(酸価100、重量平均分子量12000) 1.0部
非水溶剤1:グリセリン 6.5部
非水溶剤2:エチレングリコール 5.0部
界面活性剤:アセチレノールE100(商品名) 0.3部
イオン交換水: 84.2部
【0088】
本構成においては、中間転写体上の画像を構成するインク中の液体分を減少させる目的で送風装置16が配置されている。また同時に、中間転写体の裏面側から加熱を行う加熱ヒータ17も配置されている。これらによりインク画像中の液体分が乾燥し、転写時の画像の乱れが抑制される。
【0089】
そして、中間転写体上に形成されている画像に被印刷体18を接触させ、画像を転写形成させるための加圧ローラ19が配置されている。本構成においては支持部材12と加圧ローラ19とで中間画像と被印刷体18を挟み込むように加圧することで、効率の良い画像転写を実現している。
【0090】
本例においては被印刷体として表面親水処理化ペットフィルム(厚さ50μm)を用いた。なお被印刷体の形状としては本例では規定の形状に長尺・ロール状のシートを用いたが、シートカットされた枚葉シートでも良い。
【0091】
本形態によればこの段階で既に中間転写体上でインク中の液体成分は減少し流動性が低下するので、ペットフィルムのようなインク吸収をほとんどしないような被印刷体を用いても良好な画像を形成することができる。
【0092】
上述したような構成において、本発明に係る実施例1〜3、および比較例1〜2を行った。夫々の実施例に用いた中間転写体の水準を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
(シリコーンゴムは全てモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)
表1において、ゴム硬度はJIS K6253のタイプAデュロメータにて測定した値である。画像保持性および離型性の評価は、保管せずに印刷に供した場合(表面改質から印刷までがおよそ10分)と、8ヶ月間保管したサンプルを用いて印字・転写評価を行った。
【0095】
評価基準は評価者のうち80%以上の人が良好であると判断した場合に◎、50%以上80%未満の人が良好であると判断した場合に○、50%以上の人が不良であると判断した場合に×と記している。
【0096】
評価結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
実施例1〜3では比較例1〜2と比べ、8ヶ月保管の後における画像保持性がより良好な物となっていた。
【0099】
上記の結果から明らかなように、本発明によれば、長期に渡る保管期間を経過しても画像保持性と転写性を高度に両立できる転写型インクジェット記録用中間転写体を提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
11 表層部材
12 支持部材
13 支持部材12の回転軸
14 ローラー式塗布装置
15 インクジェットデバイス
16 送風装置
17 加熱ヒータ
18 被印刷体
19 加圧ローラ
20 クリーニングユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体に、プラズマ処理と界面活性剤の付与処理を行う工程と、前記プラズマ処理と界面活性剤の付与処理が行われた中間転写体上に、該中間転写体上でのインクの流動性を低下させるための液体を付与する工程と、前記液体が付与された中間転写体に、インクを吐出して画像を形成する工程と、前記中間転写体上に形成された画像を記録媒体に転写する工程と、を具える画像形成方法に供する中間転写体であって、
該中間転写体が表面に付加型シリコーンゴムを含むことを特徴とする中間転写体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−173325(P2011−173325A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39065(P2010−39065)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】