説明

転写装置および画像形成装置

【課題】構成を複雑なものとすることなくかつ、簡単な作業によりジャム解消が行える構成を備えた転写装置を提供する。
【解決手段】像担持体2からの画像を転写される記録シートSの搬送路を挟んで対向する一対のローラ16A、16Bを備えて像担持体2に担持された画像の転写位置に向けて記録シートを挟持搬送可能な一対のローラからなる搬送部材16と、搬送部材16に装備されている一対のローラのうちの一つのローラ16Aをこれに対向する他の一つのローラ16Bに対して接離可能に支持する揺動可能なユニット31を備えた転写装置において、ユニット31は、これが前記搬送部材16の一対のローラ同士を当接させた状態から互いに離間する方向に揺動するのに応じて前記一対のローラのうちの一つのローラ16Aを記録シートSの挟持搬送方向に回転させる構成を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、記録媒体の一つとして用いられる記録紙などにジャムが発生した場合のジャム解消機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像を記録媒体の一つである紙などに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
画像形成装置には、紙などに単一色のみの画像だけではなくフルカラー画像を形成する方式もあり、フルカラー画像形成を行う場合には、複数の感光体に各色(例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなど)の可視像を形成し、これら可視像を中間転写部材上に重ねて転写した後、記録紙上に一括転写してフルカラー画像を得るようにした構成が知られている。
【0004】
中間転写部材に重畳された画像を一括転写される記録紙は、給紙装置から給送されると、一括転写位置に至る前にレジストタイミングを設定されてから一括転写位置に向け繰り出される。
レジストタイミングを設定する構成は、記録紙の搬送路を挟んで対向する一対のローラからなるレジストローラが用いられている。
レジストローラは、回転開始時期を制御されることにより一括転写される画像先端部と記録紙の搬送方向先端部との位置関係が整えられるようになっている。
【0005】
ところで、記録紙は、レジストローラと同様に、搬送路を挟んで対向する一対のローラにより挟持搬送されるが、反りや斜行があると搬送路途中でローラと衝突してその進行を阻まれてしまうことがあり、このことが紙詰まり、いわゆる、ジャムの原因となる。
そこで、搬送部材として用いられるローラの配置位置でジャムが生じた場合にこれを解消する構成として、次に挙げるように、ローラに挟まっている記録紙を外部から手で取れる位置まで繰り出すようにした構成が提案されている。
上述した構成としては、駆動機構に連動するギヤに噛み合うギヤを軸端に装備したローラ軸にローラの回転操作用ノブを設けると共に、回転操作用ノブが位置する軸端側を開閉可能なドアに連動させて軸方向に移動させるようにすることで上記ギヤ同士の噛み合いおよび噛み合い解除ができるようにし、噛み合い解除状態で回転操作用ノブを用いてローラを回転させるようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
またこれとは別の構成として、ローラの軸端に係脱可能なノブを設け、ノブとローラの軸とはノブが軸端の外側に向け引き動かされた際に噛み合うギヤを介して連動可能に設けられ、ノブが上述した方向に引き動かされた際にオンするスイッチによってローラへの駆動力伝達機構が伝達を解除される構成が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
またこれとは別の構成として、駆動機構に連動するギヤに噛み合うギヤを軸端に装備したローラ軸にローラの回転操作用ノブを設けると共に、回転操作用ノブが位置する軸端側を開閉可能なドアに連動させて軸方向に移動させるようにすることで上記ギヤ同士の噛み合いおよび噛み合い解除ができるようにし、噛み合い解除状態で回転操作用ノブを用いてローラを回転させる構成がある(例えば、特許文献2)。
これら各特許文献に開示されている構成においては、ノブを軸端の外側に向け引き動かすことにより駆動力の伝達が解除された状態でローラをノブを用いて回転させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記各特許文献に開示されている構成においては、いずれの場合にも、ジャム解消のためにローラへの駆動力伝達を解除することが前提となっている。
このため、駆動力伝達の断接のためのクラッチ機構等が必要となり、構成の複雑化を招く。
また、ジャム解消時でのローラの回転操作には、駆動力伝達解除とローラ軸の回転操作という複数の操作が必要となり、ジャム解消のための作業が繁雑となる。
【0009】
特許文献1に開示されている構成においては、開閉可能なドアの開閉操作に連動させてローラ軸を軸方向に移動させる点で特許文献2に開示の構成に比べ作業が簡単であるが、ジャム解消後に行われるギヤ同士の噛み合い操作がクラッチの噛み合い整合を要することからドアの閉じ作業が困難となる虞もある。
【0010】
本発明の目的は、上記従来のジャム解消における問題に鑑み、構成を複雑なものとすることなくかつ、簡単な作業によりジャム解消が行える構成を備えた転写装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)像担持体と、該像担持体からの画像を転写される記録シートの搬送路を挟んで対向する一対のローラを備えて該像担持体に担持された画像の転写位置に向けて記録シートを挟持搬送可能な一対のローラからなる搬送部材と、該搬送部材に装備されている一対のローラのうちの一つのローラをこれに対向する他の一つのローラに対して接離可能に支持する揺動可能なユニットを備えた転写装置において、
前記ユニットは、これが前記搬送部材の一対のローラ同士を当接させた状態から互いに離間する方向に揺動するのに応じて前記一対のローラのうちの一つのローラを前記記録シートの挟持搬送方向に回転させる構成を備えていることを特徴とする転写装置。
【0012】
(2)(1)記載の転写装置において、
前記搬送部材における一つのローラのうちの一つのローラは、前記ユニットの揺動量に応じた回転量を以て前記記録シートの挟持搬送方向に回転可能であることを特徴とする転写装置。
【0013】
(3)(1)または(2)2記載の転写装置において、
前記搬送部材を構成する一対のローラのうちの一つのローラがこれと対向する他の一つのローラから離れる方向に揺動するのに応じて前記一つのローラを回転させる構成として、前記一つのローラの回転軸に設けられて該一つのローラを記録シートの挟持搬送方向にのみに回転させる一方向クラッチが用いられ、前記ユニットの揺動に応じて前記一つのローラを記録シートの挟持搬送方向に回転させることを特徴とする転写装置。
【0014】
(4)(1)乃至(3)のうちの一つに記載の転写装置において、
前記ユニットは、これを覆う外郭をなすカバーの開放動作に連動して揺動可能であり、該カバーが開放されるのに連動して自重により前記一つのローラをこれに対向するローラから離間させる方行に揺動可能であることを特徴とする転写装置。
【0015】
(5)(1)乃至(4)のうちの一つに記載の転写装置において、
前記ユニットに支持されている一つのローラには、これに対向するローラに対して当接させる習性を付与するとともに、該ユニットが所定揺動角に達した場合に上記当接習性を解除する圧解除部材が設けられ、該圧解除部材は、前記ユニットの揺動角に応じて前記像担持体から前記転写部材を押し離す構成であることを特徴とする転写装置。
【0016】
(6)(5)記載の転写装置において、
前記圧解除部材は、その一部が前記搬送部材に用いられる他の一つのローラに対して前記ユニットの非揺動時と揺動時とで前記第1,第2の対向軸間距離を変化させることができる構成を備え、前記ユニットの揺動時には、前記第1,第2のローラ同士での対向軸間距離を非揺動時に相当する各ローラが互いに当接している時よりも大きくしてローラ同士を離間させることを特徴とする転写装置。
【0017】
(7)(6)記載の転写装置において、
前記圧解除部材は、前記ユニットの所定揺動角に達した時点で前記ローラ同士の対向軸間距離が最大となる構成であることを特徴とする転写装置。
【0018】
(8)(5)乃至(7)のうちの一つに記載の転写装置において、
前記圧解除部材は、前記ユニットの揺動に応じて回動可能であって、外周の一部が前記一つのローラに対向するローラ側に当接するカムで構成されていることを特徴とする転写装置。
【0019】
(9)(1)記載の転写装置において、
前記像担持体として、ベルト状の転写体が用いられることを特徴とする転写装置。
【0020】
(10)(1)記載の転写装置において、
前記像担持体として、作像部に用いられるベルト状の感光体が用いられることを特徴とする転写装置。
【0021】
(11)(1)乃至(10)のうちの一つに記載の転写装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、記録シートの搬送路を挟んで対向するローラを備えた搬送部材においてユニットの揺動に応じて一つのローラが記録シートの挟持搬送方向に回転するようになっており、特に、ユニットの揺動量に応じて回転量を以て記録シートの挟持搬送方向に回転するようになっているので、搬送部材の配置位置で記録シートにジャムが生じたい場合でも、ユニットの揺動操作のみで記録シートの先端を手で掴みやすい位置まで繰り出すことが可能となる。
また、ユニット側に設けられている一つのローラは、圧解除部材によってユニットが所定揺動角を越えた時点で前記一つのローラに対向するローラとの間の対向軸間距離を最大にして離間されるので、ジャムを起こしている記録シートに対するローラからの挟持圧力が解消されて、容易にジャムの解消が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明実施例による転写装置を用いる画像形成装置を示す模式図である。
【図2】本発明実施例による転写装置の要部構成を説明するための模式図である。
【図3】図2に示した要部構成に用いられる搬送部材の駆動力伝達機構を説明するための模式図である。
【図4】図1に示した画像形成装置に用いられるトナーの特性について説明するための模式図である。
【図5】図1に示した画像形成装置の一部変形例説明するための模式図である。
【図6】図2に示した構成の要部変形例を説明するための模式図である。
【図7】図3に示した駆動力伝達機構に関する変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に示す実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明による転写装置が適用される画像形成装置を示す図であり、同図に示す画像形成装置1000は、タンデム方式を用いたカラープリンタである。
図1において画像形成装置は、像担持体として、後述する作像ステーションでの画像を順次1次転写される中間転写ベルト5Aを対象としている。
【0025】
図1において中間転写体として用いられる中間転写ベルト5Aの展張面に沿って色毎の作像ステーション(便宜上、補色トナーの色であるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各作像ステーションおよび後述するプロセスカートリッジを纏めて符号Y,M,C,Kで示す)が並設されている。
【0026】
作像ステーションは、同じ構成のプロセスカートリッジを備えており、プロセスカートリッジには、感光体ドラム1およびこの周囲に配置されている帯電装置2,書き込み装置(便宜上、書き込み光を符号Lで示す)、現像装置3およびクリーニング装置4が備えられている。なお、図1では、各プロセスカートリッジに設けられている上記各装置の符号に各色の符号を添えて示してある。
【0027】
プロセスカートリッジでは、感光体ドラム1に対して帯電装置2による一様帯電が行われ、書き込み装置(L)からの書込動作によって画像情報に対応した静電潜像が形成される。
感光体ドラム1に形成された静電潜像は、現像装置3から供給されるトナーにより可視像化され、後述する転写装置5において可視像の担持体として用いられる中間転写ベルト5Aに対して1次転写装置である転写ローラ6からの転写バイアスを受けることで1次転写される。
フルカラー画像形成時には、各作像ステーションにおいて形成された可視像が順次、中間転写ベルト5Aに転写されて重畳される。
【0028】
転写後の感光体ドラム1は、クリーニング装置4に設けられているクリーニングブレード4Aによって残留トナーを除去され、帯電装置2による一様帯電が行われて次回の作像処理に備えられる。
【0029】
転写装置5は、複数のローラ5B,5C,5Dおよび5Eに掛け回された中間転写ベルト5Aと、各感光体ドラムに対して中間転写ベルト5Aを挟んで対峙する1次転写ローラ6とを備えている。
図1に示す構成において中間転写ベルト5Aは、複数のローラのうちの一つが用いられる駆動ローラによる駆動によりプロセス速度として、例えば、150mm/secの移動速度が設定されて、図示矢印方向に展張面を移動させるようになっている。
【0030】
中間転写ベルト5Aが掛け回されているローラのうちで、符号5Bで示すローラは、前述した駆動ローラとして用いられるとともに、中間転写ベルト5Aを挟んで対峙する2次転写装置として用いられる2次転写ローラ7に対するバックアップローラとして用いられるようになっている。また、符号5Cで示すローラは、図示しないバネなどの弾性体により展張方向に付勢されるテンションローラとして用いられている。
【0031】
1次転写装置である転写ローラ6は、バネなどの弾性体6Aにより感光体ドラム1に向けて付勢されており、バイアス電源8から給電される転写バイアスにより可視像を中間転写ベルト5Aに転写するようになっている。図1に示す構成において用いられる1次転写バイアスは、例えば、+1800Vとされている。また、2次転写ローラ7に対してもバイアス電源10からの給電により2次転写バイアスが印加されるようになっている。
【0032】
中間転写ベルト5Aは、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層に構成し、カーボンブラック等の導電性材料を分散させ、その体積抵抗率を10〜1012Ωcm、かつ表面抵抗率を10〜1013Ωcmの範囲となるように調整されている。なお、必要に応じ該中間転写ベルト10の表面に離型層をコートしても良い。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、 PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パ−フルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂が使用できるが、これに限定されるものではない。
【0033】
中間転写ベルト5Aの製造方法は注型法、遠心成形法等があり、必要に応じてその表面を研磨しても良い。なお、中間転写ベルト5Aの体積抵抗率が上述した範囲を超えると転写に必要なバイアスが高くなることが原因して電源での諸費電力が増加するために好ましくないので上述した範囲にとどめることが望ましい。しかも、転写工程、転写紙剥離工程などで中間転写ベルト10の帯電電位が高くなり、かつ自己放電が困難になるため除電手段を設ける必要が生じる。また、体積抵抗率および表面抵抗率が上記範囲を下回ると、帯電電位の減衰が早くなるため自己放電による除電には有利となるが、転写時の電流が面方向に流れるためトナー飛び散りが発生してしまう。したがって、本発明における中間転写ベルト10の体積抵抗率および表面抵抗率は上記範囲内が好ましい。なお、体積抵抗率および表面抵抗率の測定は高抵抗抵抗率計(三菱化学社製:ハイレスタIP)にHRSプローブ(内側電極直径5.9mm,リング電極内径11mm)を接続し、中間転写ベルト10の表裏に100V(表面抵抗率は500V)の電圧を印加して10秒後の測定値を用いた。
【0034】
中間転写ベルト5Aは、全ての転写画像が2次転写を終えると、ベルトクリーニング装置11により残留トナーを除去されるようになっている。
クリーニング装置11は、中間転写ベルト5Aに当接するウレタンゴムなどの弾性体で構成されたクリーニングブレード11Aを備えており、クリーニングブレード11Aは揺動可能なブレードホルダ(図示されず)によって接離可能に支持されており、当接することで中間転写ベルト5A上に残留するトナーを堰き止めて清掃するようになっている。
クリーニングブレードに代えて、導電性ブラシやローラを用いることも可能であり、バイアスを印加することにより中間転写ベルト5Aから静電的に付着物であるトナーを回収する構成とすることができる。
中間転写ベルト5Aから回収されたトナーは、図示しないが、クリーニング装置内に設けられている搬送部材によって装置奥側に搬送されて重力により下方へ落下されるようになっている。トナーが落下する位置にはトナー回収ボトルが配置されており、トナー回収ボトルには図示しないが満杯検知センサが設けられて満杯時での交換を促すように監視できるようになっている。
【0035】
ベルトクリーニング装置11の近傍には、クリーニングブレード11Aによる摺擦損傷の防止およびトナーの除去性能を向上させるために潤滑剤塗布装置13が設けられている。
潤滑剤塗布装置13は、図1に示すように、固形潤滑剤13Aと固形潤滑剤13Aに接触しながら回転することで潤滑剤13Aを削り取り、削り取った潤滑剤13Aを中間転写ベルト5Aの表面に塗布する塗布ブラシ13Bとが備えられている。
【0036】
本実施例においては、潤滑剤として、直鎖状の炭化水素構造を持つ、脂肪酸金属塩を用いる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸から選択される少なくとも1種以上の脂肪酸を含有し、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウムから選択される少なくとも1種以上の金属を含有する脂肪酸金属塩が挙げられる。とりわけその中でもステアリン酸亜鉛は、工業的規模で生産されかつ多方面での使用実績があることから、コストと品質安定性とおよび信頼性で、最も好ましい材料である。ただし、一般に工業的に使われている高級脂肪酸金属塩は、その名称の化合物単体組成ではなく、多かれ少なかれ類似の他の脂肪酸金属塩、金属酸化物、および遊離脂肪酸を含むものであり、本発明での脂肪酸金属塩もその例外ではない。
【0037】
これらの潤滑剤13Aは、微量ずつ、粉体の形態で供給されるのであるが、その具体的な方法としては、図示した塗布ブラシ13Bなどの潤滑剤塗布手段によりブロック上に固形成形された潤滑剤を削り取って塗布する方法や、トナーに外添して供給する方法等がある。ただし、トナーに外添して潤滑剤を供給する場合、その供給量が出力する画像面積に依存し、常にベルト表面全面に供給することはできないため、簡易な装置構成で、かつ、ベルト表面全面に安定に潤滑剤を供給しようとした場合、上述したように、固形潤滑剤をブラシで削り取って塗布する方法が好ましい。
【0038】
塗布ブラシ13Bは、図示しない加圧付勢手段によって固形潤滑剤13Aに対して1N〜4Nの力で当接している。固形潤滑剤13Aの幅は、画像幅よりも広くされており、本実施例では304mm以上に設定されている。また、塗布ブラシ13Bの幅は、固形潤滑剤13Aとの均一接触を可能にするために固形潤滑剤13Aの幅よりも大きくされている。
【0039】
一方、2次転写ローラ7は、SUS等の金属製芯金上に、導電性材料によって10〜1010Ωの抵抗値に調整されたウレタン等の弾性体を被覆することで構成されている。
ここで、2次転写ローラ7の抵抗値が上記範囲を超えると電流が流れ難くなるため、必要な転写性を得る為にはより高電圧を印加しなければならなくなり、電源コストの増大を招く。また、高電圧を印加するため転写部ニップ前後の空隙にて放電が起こるため、ハーフトーン画像上に放電による白ポチ抜けが発生する。逆に、2次転写ローラ7の抵抗値が上記範囲を下回ると同一画像上に存在する複数色画像部(例えば3色重ね像)と単色画像部との転写性が両立できなくなる。
【0040】
これは、2次転写ローラ7の抵抗値が低い為、比較的低電圧で単色画像部を転写するのに十分な電流が流れるが、複数色画像部を転写するには単色画像部に最適な電圧よりも高い電圧値が必要となるため、複数色画像部を転写できる電圧に設定すると単色画像では転写電流過剰となり転写効率の低減を招く。なお、2次転写ローラ7の抵抗値測定は、導電性の金属製板に2次転写ローラ7を設置し、芯金両端部に片側4.9N(両側で合計9.8N)の荷重を掛けた状態にて、芯金と前記金属製板との間に1000Vの電圧を印加した時に流れる電流値から算出した。また、2次転写ローラ7は駆動ギヤ(図示しない)によって駆動力が与えられており、その周速は中間転写ベルト10の周速に対して、略同一となるよう調整されている。2次転写は定電流で制御され、本実施例ではその設定値を+30μAとした。
【0041】
記録シートとして用いられる記録紙Sは、給紙ローラ14,転写紙搬送ローラ15により搬送され、レジストローラ16において中間転写ベルト5Aに形成される4色重ね画像の先端部が2次転写位置に到達するタイミングに合わせて給紙される。4色重ね画像を転写された記録紙Sは、転写出口および定着入り口ガイドを兼ねるガイド部材30に沿って定着装置19へ搬送され、定着装置19で定着された後、排紙ローラ20によって排紙される。
なお、図示しないが、転写後の記録紙Sを除電して転写紙の裏面に付着したトナーを剥落させるようにすることも可能である。
【0042】
以上のような画像形成装置の構成を対象として本発明の特徴である転写装置の説明を、レジストローラ16を含む2次転写装置の構成を対象として説明する。
2次転写装置は、2次転写ローラ7を主要部とすると共に、記録紙Sの搬送路を挟んで対向する第1,第2のローラ16A、16Bのうちの一つのローラ16Aを含むユニット31を備えている。
【0043】
図2は、2次転写装置(便宜上、符号100で示す)の構成を説明する模式図である。
図2において2次転写装置100は、これを覆うように設けられて画像形成装置の外郭をなす開閉可能なカバー101の開閉動作に連動するようになっている。
つまり、カバー101は、画像形成装置本体側に支持されている支点軸101Aによって上端部を開放端として開放することができ、その一部には、図2において2次転写ローラ7を中間転写ベルト5A側に当接させるようにユニット31を付勢するガイド部材102が設けられている。ガイド部材102は、図示しないスプリングなどの押圧付勢手段によって、図2(A)中、矢印Sで示すように、常時ユニット31側に向けて変位する習性が付与されており、ユニット31の傾動時でのガイド部としてユニット31に当接できるようになっている。なお、押圧付勢手段の付勢力は、ユニット31がカバー101の開放に連動して自重を利用した回動を妨げられない力に設定されている。これによりユニット31は、図2(A)に示すカバー101の閉じ態位からカバー101の開放に連動して図2(B)に示すように、自重を利用して揺動することができ、図2(C)に示すように、カバー101が所定位置まで開放した際には、図示しない装置側に設けられた係止部により最大揺動角度の位置で止まるようになっている。
【0044】
ユニット31は、記録紙Sの搬送路を挟んで対向する一対のローラ16A、16Bで構成されるレジストローラ16のうちの一つのローラ16Aの回転軸を支点として画像形成装置本体側において揺動可能に支持されている。またユニット31の揺動端側には2次転写ローラ7が支持されている。
【0045】
レジストローラ16を構成するローラのうちで一つのローラ16Aに対向するローラ16Bは、図示しない付勢手段により一つのローラ16A側に向けて当接する習性が付与されている。従って、一つのローラ16Aに対向するローラ16Bは、付勢に抗して一つのローラ16Aに対し接離方向に移動することにより対向軸間距離を変化させることができる部材である。
【0046】
ユニット31は、図示しない弦巻バネなどを用いて図2において時計方向に揺動する習性が付与されており、この揺動はカバー101が閉じ位置にある場合に阻止されるようになっている。なお、上述したようなユニット31に対する時計方向の付勢を用いることに限らず、カバー101が開放された際に生じる隙間から手を差し入れてユニット31を回動させるようにしても良い。いずれの場合にもユニット31は、自重により時計方向に揺動することができるようになっている。
【0047】
レジストローラ16を構成するローラのうちの一つのローラ16Aは、ユニット31の揺動、つまり、カバー101が開放される際にこれに連動して記録紙Sの挟持搬送方向に回転できるようになっている、以下、この構成について説明する。
レジストローラ16を構成するローラのうちで一つのローラ16Aの回転軸には、記録紙Sの挟持搬送が可能な方向にのみ回転力を伝える一方向クラッチが装備されている。一方向クラッチは、その詳細を説明しないが、ユニット31側に固定される基部と一つのローラ16Aの回転軸を挿通される回転体とを備え、これら基部と回転体間に、記録紙Sの挟持搬送方向のみに一つのローラ16Aの回転軸が回転する機構が備えられている。
【0048】
図3は、回転軸の回転可能な方向を示しており、同図において、記録紙Sの挟持搬送方向に相当する回転方向である符号Fで示す方向のみに回転し、符号Rで示す方向にユニット31が揺動した場合には回転軸が空転するようになっている。
これにより、ユニット31がカバー101の開放方向に揺動した場合には、その揺動方向が図2に示すように時計方向であるので、揺動に連動して一つのローラ16Aの回転軸も時計方向に回転することができる。そして、この場合の一つのローラ16Aの回転量は、ユニット31の揺動量に応じたものとされる。
【0049】
一方、レジストローラ16を構成するローラ対は、ユニット31の揺動に応じて接離する構成、特に、カバー31が開放された際に一つのローラ16Aがこれに対向するローラ16Bから離される構成が設けられている。
つまり、ユニット31においてレジストローラ16を構成するローラ対のうちで一つのローラ16Aに対向するローラ16Bに有する回転軸には、ユニット31に固定されているカムで構成された圧解除部材103が対向当接している。
【0050】
カム103は、図2(A)においてバルーン表示するように、ユニット31が所定揺動角(θ)に達するまではローラ同士を当接させ、所定揺動角を越えた時点で一つのローラ16Aに対向するローラ16Bを一つのローラ16Aから離して対向軸間距離を大きくするカムプロフィールを備えている。
一つのローラ16Aに対向するローラ16Bは圧解除部材103のカムプロフィールにより押し動かされると、自身の習性に抗して一つのローラ16Aから離れる向きに移動する。
【0051】
上述した所定揺動角(θ)は、カバー101が開放される際の最大開放角(図2(C)において符号βで示す角度)よりも小さい角度であり、この最大開放角(β)は、ユニット31をほぼ水平態位に保持できる位置にガイド部材102を位置決めする角度に相当している。
従って、レジストローラ16を構成するローラ対のうちの一つのローラ16Aは、所定揺動角(θ)に至るまでの間、他の一つのローラ16Bと当接しながら記録紙Sの挟持搬送方向に回転することになるので、レジストローラ16での記録紙の繰り出しが行えることになる。
本実施例では、上述した所定揺動角(θ)として、記録紙Sの先端がレジストローラ16の位置でジャムしている場合を対象として、その位置から記録紙先端を手で引き出すことができる一つのローラ16Aの回転量が得られる角度に設定されている。なお、図2では、便宜上、他の一つのローラ16Bの周面に圧解除部材103が対向している状態を示しているが、実際には、上述したように、他の一つのローラ16Bの回転軸に対応させて設けられている。
【0052】
本実施例は以上のような構成であるから、図2に示すように、2次転写装置内で記録紙Sにジャムが発生した場合には、カバー101を開放することでユニット31を連動させて揺動させる。
ユニット31がカバー101の開放方向に揺動すると、レジストローラ16を構成するローラのうちの一つのローラ16Aは一方向クラッチを介してユニット31の揺動量に対応する回転量を以て記録紙Sの挟持搬送方向に回転する。
【0053】
ユニット31の揺動角が所定角度(θ)に達するまではローラ同士が当接した状態にあるので、記録紙Sが繰り出され、その先端が手で取り出せる位置まで繰り出せることになる。
【0054】
一方、ユニット31が所定揺動角度(θ)を越えると、圧解除部材31によって一つのローラ16Aからこれに対向するローラ16Bが離され、ローラ同士の対向軸間距離が大きくされる。これにより、ローラ同士が離れている状態となるので、記録紙Sに対する挟持圧力が解消されるので、円滑に取り出すことができる。
【0055】
次に、図1に示した画像形成装置に用いられるトナーの特性について説明する。
本実施例に用いられるトナーは、重合法によって生成された重合トナーである。
更に本構成に用いられるトナーの形状係数SF−1は100〜180、形状係数SF−2は100〜180の範囲にあることが好ましい。
図4は、形状係数SF−1、形状係数SF−2を説明するためにトナーの形状を模式的に表した図である。
【0056】
形状係数SF−1は、トナー形状の丸さの割合を示すものであり、下記式(1)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる形状の最大長MXLNGの二乗を図形面積AREAで除して、100π/4を乗じた値である。
SF−1={(MXLNG)/AREA}×(100π/4)・・・式(1)
SF−1の値が100の場合トナーの形状は真球となり、SF−1の値が大きくなるほど不定形になる。
また、形状係数SF−2は、トナー形状の凹凸の割合を示すものであり、下記式(2)で表される。トナーを2次元平面に投影してできる図形の周長PERIの二乗を図形面積AREAで除して、100/4πを乗じた値である。
SF−2={(PERI)/AREA}×(100/4π)・・・式(2)
SF−2の値が100の場合トナー表面に凹凸が存在しなくなり、SF−2の値が大きくなるほどトナー表面の凹凸が顕著になる。
形状係数の測定は、具体的には、走査型電子顕微鏡(S−800:日立製作所製)でトナーの写真を撮り、これを画像解析装置(LUSEX3:ニレコ社製)に導入して解析して計算した。
【0057】
トナーの形状が球形に近くなると、トナーとトナーあるいはトナーと感光体との接触状態が点接触になるために、トナー同士の吸着力は弱くなり従って流動性が高くなり、また、トナーと感光体との吸着力も弱くなって、転写率は高くなる。形状係数SF−1、SF−2のいずれかが180を超えると、転写率が低下するとともに転写手段に付着した場合のクリーニング性も低下するため好ましくない。
また、トナー粒径は体積平均粒径で4〜10μmの範囲であることが望ましい。これよりも小粒径の場合には現像時に地汚れの原因となったり、流動性が悪化し、さらに凝集しやすくなるので中抜けが発生しやすくなる。逆にこれよりも大粒径の場合にはトナー飛び散りや、解像度悪化により高精細な画像を得ることができない。本実施形態では、トナー粒径の体積平均粒径6.5μmのものを用いた。
【0058】
次に、本実施例の要部構成に関する変形例について説明する。
図5は、像担持体として、ベルト状の感光体を用いた画像形成装置を示している。
同図において、画像形成装置は、図1に示した中間転写ベルト5Aに置き換えた感光体ベルト50Aが用いられている。
【0059】
感光体ベルト50Aの展張面の一つには、色毎の画像形成が可能な帯電装置2、書き込み装置(便宜上、図1と同様に書き込み光をLで示す)および現像装置3並置されており、各作像部で形成された色画像は、感光体ベルト50Aの内側において各作像部と対向している転写ローラ6により転写された重畳された後、2次転写ローラにより、記録紙Sに対して一括転写される。
【0060】
図6は、図2に示した構成の要部変形例を示す図であり、同図に示す構成は、カバー101とユニット31とが独立して揺動する構成となっている。つまり、図2に関する構成においても説明したが、ユニット31は、強制的な付勢が行われておらず、カバー101が開放された後、ユーザあるいはオペレータを介して自重による揺動行われるようになっている。
この場合のユニット31を対象とした構成は図2および図3に示した構成と同様なものが用いられる。これにより、ユニット31に付与されている時計方向への付勢構造を要しない分、部品コストの低減が図れる。
【0061】
図7は、図2および図6に示したカバー101とユニット31とを別体としないで一体化した構成を示している。
つまり、図7に示す構成では、図2に示したカバー101をユニット31に置き換えたものである(便宜上、符号31’で示す)。この構成においても、レジストローラ16を構成するローラ16A、16Bの回転方向の設定および接離機構に関しては図2に示した個性と同様なものが用いられる。これにより、部品点数の低現が図れることになる。
【符号の説明】
【0062】
2 像担持体の一例である感光体
7 転写ローラ
5A 像担持体の別例である中間転写ベルト
16 レジストローラ
16A 一つのローラ
16B 一つのローラに対向するローラ
31 ユニット
101 カバー
101A 支点軸
103 圧解除部材
θ 所定揺動角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】実開昭63−200844
【特許文献2】特許第3033996号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、該像担持体からの画像を転写される記録シートの搬送路を挟んで対向する一対のローラを備えて該像担持体に担持された画像の転写位置に向けて記録シートを挟持搬送可能な一対のローラからなる搬送部材と、該搬送部材に装備されている一対のローラのうちの一つのローラをこれに対向する他の一つのローラに対して接離可能に支持する揺動可能なユニットを備えた転写装置において、
前記ユニットは、これが前記搬送部材の一対のローラ同士を当接させた状態から互いに離間する方向に揺動するのに応じて前記一対のローラのうちの一つのローラを前記記録シートの挟持搬送方向に回転させる構成を備えていることを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1記載の転写装置において、
前記搬送部材における一つのローラのうちの一つのローラは、前記ユニットの揺動量に応じた回転量を以て前記記録シートの挟持搬送方向に回転可能であることを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の転写装置において、
前記搬送部材を構成する一対のローラのうちの一つのローラがこれと対向する他の一つのローラから離れる方向に揺動するのに応じて前記一つのローラを回転させる構成として、前記一つのローラの回転軸に設けられて該一つのローラを記録シートの挟持搬送方向にのみに回転させる一方向クラッチが用いられ、前記ユニットの揺動に応じて前記一つのローラを記録シートの挟持搬送方向に回転させることを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの一つに記載の転写装置において、
前記ユニットは、これを覆う外郭をなすカバーの開放動作に連動して揺動可能であり、該カバーが開放されるのに連動して自重により前記一つのローラをこれに対向するローラから離間させる方行に揺動可能であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちの一つに記載の転写装置において、
前記ユニットに支持されている一つのローラには、これに対向するローラに対して当接させる習性を付与するとともに、該ユニットが所定揺動角に達した場合に上記当接習性を解除する圧解除部材が設けられ、該圧解除部材は、前記ユニットの揺動角に応じて前記像担持体から前記転写部材を押し離す構成であることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項5記載の転写装置において、
前記圧解除部材は、その一部が前記搬送部材に用いられる他の一つのローラに対して前記ユニットの非揺動時と揺動時とで前記第1,第2の対向軸間距離を変化させることができる構成を備え、前記ユニットの揺動時には、前記第1,第2のローラ同士での対向軸間距離を非揺動時に相当する各ローラが互いに当接している時よりも大きくしてローラ同士を離間させることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項6記載の転写装置において、
前記圧解除部材は、前記ユニットの所定揺動角に達した時点で前記ローラ同士の対向軸間距離が最大となる構成であることを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のうちの一つに記載の転写装置において、
前記圧解除部材は、前記ユニットの揺動に応じて回動可能であって、外周の一部が前記一つのローラに対向するローラ側に当接するカムで構成されていることを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項1記載の転写装置において、
前記像担持体として、ベルト状の転写体が用いられることを特徴とする転写装置。
【請求項10】
請求項1記載の転写装置において、
前記像担持体として、作像部に用いられるベルト状の感光体が用いられることを特徴とする転写装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちの一つに記載の転写装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−157173(P2011−157173A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19540(P2010−19540)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】