転動体試験装置
【課題】氷雪上走行時の実際の路面環境を忠実に再現した路面において転動体の挙動を正確に評価する。
【解決手段】路面を有する環状体と、環状体を上面視で水平方向に環状回転自在に支持し且つ該環状体を少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように支持する支持機構と、環状体を周回駆動させる駆動機構と、転動体を回転自在に路面に接地させる転動体保持装置と、路面に氷雪層を形成可能な氷雪層形成手段とを有している。
【解決手段】路面を有する環状体と、環状体を上面視で水平方向に環状回転自在に支持し且つ該環状体を少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように支持する支持機構と、環状体を周回駆動させる駆動機構と、転動体を回転自在に路面に接地させる転動体保持装置と、路面に氷雪層を形成可能な氷雪層形成手段とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周回移動する氷雪路面上を転がる転動体の挙動を試験する転動体試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、転動体試験装置として、回転駆動させた回転ドラムの内周面にタイヤを押し付けて、内周面を転動するタイヤの挙動を計測するタイヤ試験装置が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1のタイヤ試験装置では、回転ドラム内周面を路面としているが故に、タイヤの接地状況は平坦な実際の路面と大きく異なる曲面とされており、実際の路面におけるタイヤ接地状況を正確に再現させることは非常に困難である。特に、寒冷地や冬場における氷雪路面(積雪や凍結のある路面)においては路面への接地状況がタイヤの挙動に大きく影響するため、氷雪上走行性能試験においては実際の走行環境を忠実に再現した平坦な路面上でタイヤを転動させ、その挙動を計測することが必要とされている。
【0003】
さて、従来からタイヤとの接触面を平坦にした路面装置が各種提案されている。
例えば、金属ベルトコンベヤ方式を採用した路面装置として、一対のドラムに薄い鋼製のエンドレスベルトを架け渡したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。また金属クローラ方式を採用した路面装置として、立設された駆動輪と従動輪(いずれもチェーンスプロケットと推量される)とに巻き掛けたエンドレスチェーンに対し、そのエンドレス外周側に多数の路面形成杆(クローラシュー)を無端連設させてなるものが知られている(例えば、特許文献3参照)。さらに、ターンテーブル方式を採用した路面装置として、路面がその面を上に向けて水平面上を回転するものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平1−107128号公報
【特許文献2】特開昭56−73332号公報
【特許文献3】特開昭51−16501号公報
【特許文献4】特開2001−74613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2の金属ベルトコンベヤ方式の路面装置をタイヤ試験装置に用いて氷雪上走行性能試験をしようとしても、この金属ベルトコンベヤ方式ではエンドレスベルト(路面)がドラムへ巻き掛けられる形式となっているので、このベルト上に氷雪層を形成したとしてもベルトがドラムに差しかかるたびに氷雪層が落下し、ベルト上に氷雪層を残すことができない。
また、特許文献3の金属クローラ方式の路面装置をタイヤ試験装置に用いて氷雪上走行性能試験をしようとしても、金属クローラ方式も金属ベルトコンベヤ方式と同様にエンドレスチェーン(路面)を駆動輪や従動輪へ巻き掛ける形式となっているので、チェーンが駆動輪等に差しかかる度に氷雪層が落下し、チェーン上に氷雪層を残すことができない。
【0005】
さらに、この金属クローラ方式においては、エンドレスチェーンが駆動輪や従動輪に対する巻き掛け部分から両輪間の張り渡し部分(直線部分)へ移るとき等に、相互隣接するクローラシュー同士が屈曲動作を繰り返す。このような屈曲動作が起こると、相互隣接するクローラシュー同士が接触干渉してエンドレスチェーンに激しい振動が生じるので、チェーン上に形成された氷雪層は金属ベルトコンベヤ方式よりも落下しやすくなる。
つまり、特許文献2の金属ベルトコンベヤ方式や特許文献3の金属クローラ方式の路面装置をタイヤ試験装置に採用すると、ベルトやチェーンを回転させる度に氷雪層が落下してしまう。そのため、凍結路面や深く雪が堆積した路面は直ぐには形成することができず、実際の走行環境を忠実に再現することは困難である。
【0006】
一方、特許文献4の路面装置は、水平面上を路面が回転するターンテーブル方式とされており、路面は絶えず旋回状態にあるため直線状の路面上を走行する試験はできない。路面の旋回半径を大きくすればタイヤの接地部分における路面の直線性を近似的に上げられるが、そのためには路面装置が極めて大規模になってしまい、非現実的である。
また、このような路面装置を氷雪上走行性能試験に適用しようとしても、直線の路面における実際の走行環境を忠実に再現することはできない。
つまり、特許文献2〜4の路面装置をタイヤ試験機に用いても十分な氷雪上走行性能試験は実際には不可能である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水平面上を移動する路面上に氷雪層を形成しているので路面が周回しても氷雪層を路面上に安定して維持することができ、また直線の路面における転動体の氷雪上走行性能試験も可能となる転動体試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る転動体試験装置は、
転動体を転動させることが可能な路面を有する環状体と、
前記環状体を上面視で水平方向に環状回転自在に支持し且つ該環状体を少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように支持する支持機構と、
前記環状体を駆動させて周回させる駆動機構と、
前記転動体を回転自在に支持し且つ当該転動体を前記直線状の路面に対して近接離反させる転動体保持装置と、
前記路面上において氷層及び/又は雪層からなる氷雪層を形成する氷雪層形成手段と
を有していることを特徴とする。
【0009】
ここで、転動体とは主にタイヤである。転動体試験装置としてこのような構成は画期的であって、この構成において環状体は上面視(平面視)で水平方向に環状回転(周回)するので、金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式とは異なってこの路面が水平回転軸周りに姿勢を変えるような巻掛け部分を通過することはない。また、この転動体試験装置では少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように環状体が支持されているので、ターンテーブル方式とも異なり直線状の路面における転動体の挙動を評価することができる。それ故、金属ベルトコンベヤ方式、金属クローラ方式、又はターンテーブル方式を採用することによって生じていた従来の問題は全て払拭される。
【0010】
すなわち、本発明の転動体試験装置によれば、水平面上を移動する路面上に氷雪層を形成しているので路面が周回しても氷雪層を路面上に安定して維持することができ、また直線の路面における転動体の氷雪上走行性能試験も可能となる。
前記環状体は、路面を有する複数の路面部材と、互いに隣り合う路面部材の相対距離を保持するように、前記複数の路面部材を無端状に連結する連結部材とを有しているのが好ましい。
このようにすることで、水平状態のまま環状回転する部分での環状体の周回移動が円滑となり、耳障りな騒音や振動、また摩耗、亀裂、カケ等の発生を防止乃至抑制でき、路面が周回しても氷雪層を路面上に安定して維持することができる。
【0011】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層を形成すべく路面に氷雪層素材を供給する供給手段と、路面上に形成された氷雪層を維持する氷雪層維持手段とを有しているのが好ましい。
このようにすることで、前記供給手段により路面に水、雪、みぞれ、氷などの氷雪層素材を供給して氷雪層を形成した上で、氷雪層維持手段により形成された氷雪層を維持することができる。この氷雪層維持手段は氷雪層を氷冷状態に維持して、氷雪層が溶けて性状が変化したり路面から剥がれたりするのを防止できる。そのため、周回する路面に氷雪層を連続的に成長させて所望の氷雪層を得ることが可能となり、様々な路面環境を忠実に再現して氷雪上走行性能試験を行うことができる。
【0012】
前記氷雪層維持手段は、前記氷雪層を冷却する冷却装置を有しているのが良く、さらに前記路面が環状体上面に形成される路面層の上面である場合には、前記路面層下側に設けられて当該路面にその下方側に位置する環状体から熱が伝達するのを防止する断熱材を有しているのがより好ましい。
このようにすることで、氷雪層を冷却することができ、また外部(下方側)からの熱が氷雪層に伝達することが防止されるため、氷雪層が溶けて形成時の厚みや性状(温度や水分量に影響される雪や氷の性質)が変化することが防止される。このように氷雪層の性状が変化しないようにすることで、周回移動時に遠心力が加わっても、遠心力の作用で氷雪層が脱離し難くなる。その結果、氷雪層を路面上に効率良く形成・維持することができる。
【0013】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層の高さを調整する高さ調整装置を有しているのが好ましく、さらに前記氷雪層を押し固める氷雪層押圧装置を有しているのが良い。ここで、氷雪層の高さとは路面に形成される氷雪層の厚み(深さ)である。
このようにすることで、氷雪層を所望の高さ(厚み)、硬さ、密度に調整可能となり、実際の氷雪路面における種々の氷雪層の物理的特性を忠実に再現した氷雪上走行性能試験を実施することができる。
前記氷雪層形成手段は前記直線状で上向きの路面における周回方向上流側に備えられており、該路面における前記氷雪層形成手段より周回方向下流側に転動体保持装置が備えられているのが良い。
【0014】
このようにすることで、直線部の周回方向上流側で形成された氷雪層は遠心力の作用を受けることなく直線的に移動して転動体保持装置に到達するため、氷雪層に遠心力の作用で剥離しやすい新雪が積雪した路面などを用いても転動体の挙動を正確に評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る転動体試験装置によれば、路面上に氷雪層を安定して維持できるとともに、この氷雪層が形成された路面を直線的な氷雪路面として得ることができ、この直線的な氷雪路面を走行する転動体の挙動を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1〜9は、本発明に係る転動体試験装置の第1実施形態を示している。
図1に示すように、転動体試験装置1は、環状体2と、この環状体2を環状回転可能に支持する支持機構3と、この支持機構3によって支持された環状体2を駆動させる駆動機構4と、環状体2に設けられた路面2aにタイヤなどの転動体Tを接触させる転動体保持装置5と、路面2a上に氷雪及び/又は雪層からなる氷雪層2bを形成可能な氷雪層形成手段6とを有している。
【0017】
氷雪層2bは、路面2a上に形成される氷及び/又は雪(人工雪を含む)を主成分とする氷雪層素材26から層状に形成されている。これらは、氷雪上走行試験を行いたい路面環境に合わせて適宜形成されるものであり、例えば砂、融雪剤または土砂のような添加剤を加えても良いし、性状の異なる氷の層と雪の層とを積層させても良い。
転動体試験装置1は、環状体2が連続的に連なる複数の個別部位からなる路面2aを有しており、平面視したとき環状体2の路面2aが水平方向(例えば、図1矢印G方向)に周回移動(走行)するようになっている。この路面2a上には氷雪層形成手段6により氷雪層2bが形成され、この氷雪層2bに対して転動体保持装置5により近接離反自在に支持されている転動体Tが接地する。つまり、転動体保持装置5に転動体Tが受ける力を測定する6分力計などの測定器を設けることで、転動体試験装置1は転動体Tが接地回転中に発生させる6分力を計測試験する転動体試験装置(タイヤ試験装置)となる。なお、この実施の形態では、「転動体T」はタイヤである。
【0018】
以下、環状体2、支持機構3、駆動機構4、転動体保持装置5、氷雪層形成手段6について詳しく説明する。なお、下記の説明において、説明の便宜上、図1の上下方向を「幅方向」又は「左右方向」とし、この方向と紙面上で直交する方向(紙面左右方向)を「長手方向」又は「前後方向」とする。
図1、2に示すように、環状体2は、複数の路面部材9が無端状となるように連結されて成るものであって、これら複数の路面部材9と共に、各路面部材9を連結するための連結部材10を有している。個々の路面部材9の上面に路面2aが形成されており、この路面部材9が個々の路面2aを近接させて連結部材10により連結されている。路面部材9が連結部材10により連結されることで、路面2aを全体的に見ると、周方向の所定領域において上を向いたまま連続的に連なった直線状の直線部7が平行に2本形成され、これらの直線部7のそれぞれの端の間を結ぶように水平方向に湾曲した屈曲部8が形成されている。
【0019】
図4〜図8に示すように、路面部材9は、上部片12と、この上部片12の下部に設けられた下部片13とを有している。これら上部片12と下部片13とは一体化されている。この路面部材9を側面視した形状は、上部片12及び下部片13が前後方向にズレて、階段状を呈するようになっている。
上部片12の一方の端部には凸状円弧部14が設けられ、上部片12の他方の端部には凹状円弧部15が設けられている。下部片13は、上部片12に対しその凸状円弧部14よりも周回移動方向に沿ってズレた状態とされ、且つ凹状円弧部15よりも周回移動方向に沿って外側へ突出する状態で設けられている。
【0020】
下部片13には、上部片12の凹状円弧部15に対応する位置より周回移動方向の外側へ突出するようになった凸台部17が設けられており、この凸台部17が、隣り合う路面部材9の上部片12に対してその凸状円弧部14の下へ重ね合わされるようになる。第1実施形態では、凸台部17(下部片13)と凸状円弧部14(上部片12)とが重ね合わされた重ね合わせ部分が連結部材10によって垂直軸心回りに回動自在に連結されている。
また、路面部材9は、上部片12の上面に上部片12よりも熱の伝わり難い材料からなる断熱材83が設けられ、この断熱材83の上に着脱自在に設けられた着脱板60を有している。この着脱板60の上面には路面層61が形成され、この路面層61は上面が路面2aになっている。路面層61はアスファルト、コンクリート、金属、砂地同等材など実際の路面材料と同じ材料やその他の所望の材料によって形成されており、この路面層61は着脱板60に対して接着剤、ボルト、アンカーなどにより固定される。
【0021】
また、着脱板60にはボルト孔62が設けられ、上部片12及び断熱材83にはボルト孔62に合致するボルト通孔63が設けられている。上部片12の下方側からボルト通孔63を介してボルト孔62へ螺合されるボルト64により、上部片12に対して着脱板60及び断熱材83が着脱自在に固定される。上部片12には、ボルト通孔63の下側の開口端にボルト64のボルト頭を没入させるための座繰り65が施されている。これにより、上部片12に対して、それと重ね合わした隣り合う路面部材9の下部片13(凸台部17)の動きがボルト64によって邪魔されることはない。また、断熱材83が路面層61の下側に設けられ、上部片12から路面2aへの熱の伝達を防止している。
【0022】
なお、言うまでもなく、上部片12の下方側空間を利用してボルト64を緩めることで上部片12に対して着脱板60及び断熱材83を外すことができ、これによって着脱板60(路面層61を含む)の着脱が自在となることから、環状体2の全体を分解することなく、路面部材9としての路面2aの交換が個別に可能となっている。
上部片12側、又は着脱板60側にそれらの相互間の位置決め手段として位置決めピン66を突出状態で設けておき、相手側(即ち、位置決めピン66の設けられた方を上部片12とする場合は着脱板60側であり、反対に着脱板60とする場合は上部片12側である)に位置決めピン66をガタツキ無く差し込み可能なピン孔67を設けておくことで、上部片12に対する着脱板60(路面層61を含む)の位置付けを一定化させ、また位置ズレを防止できるので好適となる。
【0023】
このようなことから、路面部材9は着脱板60の交換と共に路面2aの取り替えが個別に可能であり、わざわざ路面部材9全体を取り替える必要がなくなる。また、路面部材9全体ではなく、着脱板60として複数種類を準備することができるので、ストックのためのスペースやコストなどの面で有益となる。また、路面部材9は着脱板60の交換に合わせて断熱材83の交換も可能となっており、これによって劣化した断熱材83の交換が容易となる。
また、一部の路面部材9の路面2aを他の路面部材9の路面2aと異なる種類のものに取り替えたり、すべての路面部材9の路面2aを各種路面材料のものに取り替えたりする事も可能であり、色々な路面状態を容易に設定することができる。
【0024】
図3〜5に示すように、連結部材10は、垂直方向に軸心を向けた枢軸18と、この枢軸18に外嵌されるベアリング又はブッシュ等の軸受部19とを有している。下部片13の凸台部17には枢軸18の中途部を軸受部19を介して差し込む軸受け孔20が上方に開口して設けられている。
また、上部片14の凸状円弧部14には、枢軸18の上端部を軸受部19を介して差し込む軸受け孔21が下方に開口して設けられている。本実施形態においては、更に、軸受け孔20は枢軸18が下方へ貫通している。軸受け孔21は枢軸18が上部(路面2a)へは抜けない状態に設けられている。
【0025】
なお、枢軸18に対し、軸受部19は下側の軸受け孔20内及び上側の軸受け孔21内に嵌るようにそれぞれ複数設けられ、これら軸受部19の軸方向間隔がカラー23によって保持されるようになっている。
上部片12において、凸状円弧部14の外縁が描く凸側の円弧カーブと、凹状円弧部15の外縁が描く凹側の円弧カーブとは、略同等となる曲率半径とされるか又は僅かに凹状円弧部15の方が大きく形成されている。
そのため凸状円弧部14は、隣り合う他の路面部材9の凹状円弧部15に嵌り込み、互いに嵌り込んだ凸状円弧部14と凹状円弧部15とが微小な隙間を生じるか、又は生じないか程度の馴染み具合で互いに接近した状態が得られるようになっている。互いの路面部材9は、このような凸状円弧部14と凹状円弧部15との接近状態を保持したまま、連結部材10により連結されると共に、枢軸18回りに回動自在となっている。
【0026】
下部片13に設けられた軸受け孔20は、下部側の貫通孔が枢軸18は通すが軸受部19は脱落しない程度に縮径された段付き部を備えている。そして枢軸18は、下部片13の下方へ突出した状態として設けられている。このように枢軸18において下部片13の下方へ突出する部分は、後述する駆動部4に対する係合部24を形成する。
また、下部片13には、上部片12の両円弧部の形成されていない幅方向両側へ突出するスライドシュー25が設けられている。このスライドシュー25は、路面部材9、ひいては環状体2の全体が周回移動する場合に、後述する支持機構3によりガイドされる部分となる。図4に示すスライドシュー25は突出端が角部として形成されているがR部として形成しても良い。
【0027】
図1〜図3に示すように、支持機構3は、環状体2を水平方向に環状回転自在に支持し、この環状体2を少なくとも一部の路面2aが屈曲せず(直線状で)上向きになるように支持するためのものである。第1実施形態では、支持機構3は、路面2aが上向きとなるように直線部7を支持すると共に、屈曲部8を支持している。
環状体2が平面視で長円形の輪を呈するように、支持機構3は、半円弧状の2つの円弧部分3b、3bをつなぐ平行な直線部分3aを備えている。即ち、支持機構3は、これら直線部分3aと円弧部分3bとが組み合わせたものとしてある。この直線部分3aによって路面2aの直線部7を支持し、円弧部分3bによって路面2aの屈曲部8を支持している。
【0028】
この支持機構3は、路面部材9に設けられたスライドシュー25を滑らかに案内できるように、断面コ字状をした大小の長円形のガイドレール30を有している。これら大小のガイドレール30は、コ字状の開放部が互いに対向するように平行架設されており、上記した環状体2の長円形の輪に沿ってその全周に設けられたものである。すなわち、これらガイドレール30がスライドシュー25を介して環状体2をその周回方向に沿って摺動自在に保持することになる。
この支持機構3には、環状体2の長さに対応して、ガイドレール30の軌道長さを微調整することのできる調整機構32が設けられている。この調整機構32は、図9に示すように、直線部分3aを形成しているガイドレール30に長手方向の伸縮部33を設け、この伸縮部33に対して直接的又は間接的に長手方向の伸縮力を加えられるものとしてある。伸縮力を加えるための手段として、図2に示す例ではシリンダ装置からなる調整原動部34を設けており、この調整原動部34が伸縮部33に対して伸縮力を加えている。
【0029】
伸縮部33は、2つの直線部分3a、3aの途中の部分で分断されたガイドレール30を伸縮させるものである。この伸縮部33は、分断した一方のレール端に嵌合凸部35を固定的に設け、また分断した他方のレール端にこの嵌合凸部35をガタツキ無く摺動自在な状態で差し込み可能な嵌合凹部36を設けたものである。従って、この嵌合凸部35の差し込み度合いを調整することで、環状体2としての長円形の長さに対応してガイドレール30の軌道長さを変更できるのである。
調整原動部34は、上記したように要は支持機構3の直線部分3bに設けられた伸縮部33を伸縮させることができればよいので、ガイドレール30に直接的に伸縮力を加えるようにしてもよいし、或いは環状体2を介して間接的に伸縮力を加えるようにしてもよい。第1実施形態では、環状体2を介して間接的に伸縮力を加える方式を採用した。
【0030】
すなわち、環状体2では、各路面部材9を連結する連結部材10の枢軸18が各路面部材9の下部片13から下方へ突出した状態とされ、この下方突出部分に後述する駆動機構4との係合を行わせるための係合部24が形成されるようになっている。
そこで、支持機構3におけるいずれか一方の円弧部分3bの中心部に、軸心を垂直方向に向けた回転軸37まわりで水平回転自在となるスプロケット38を設け、このスプロケット38の外周部に、環状体2の上記係合部24が係合する係合凹部39を設けるようにした。このようにしたうえで、このスプロケット38の回転軸37を支持する軸受け台40を長手方向にスライドさせることで調整原動部34による伸縮力が加えられる状態とした。具体的に、この調整原動部34には油圧シリンダやモータ駆動による送りネジ機構等を採用することができる。
【0031】
なお、調整原動部34が回転軸37及びスプロケット38とガイドレール30とを同時に移動させることができるように、回転軸37とガイドレール30との間に連結機構(図示せず)を介装することによって、環状体2の張り具合の調整と伸縮部33の調整を行うようにしてもよい。また、シリンダ装置やネジジャッキ機構やトグル機構等によってガイドレール30に直線的に伸縮力を加えるように構成してもよい。
駆動機構4は、環状体2を駆動させて路面2aを周回移動させるためのものである。第1実施形態では、上記調整機構32のスプロケット38が設けられたのとは反対側となる支持機構3の円弧部分3bに対し、その中心部に、軸心を垂直方向に向けた回転軸41まわりで水平回転自在となるスプロケット42を設け、このスプロケット42の外周部に、環状体2の上記係合部24が係合する係合凹部43を設けるようにし、且つこのスプロケット42を巻掛け伝動手段等の伝動部44を介してモータ45で回転駆動させるものとしてある。
【0032】
転動体保持装置5は、水平方向に向けた軸心まわりで転動体Tを回転自在に保持可能にしたもので、転動体Tの軸芯部へ下向きに所定荷重を加えることができるとともに、当該転動体Tの外周面を環状体2によって形成される路面2aに向けて近接離反自在とすることができる。またこの転動体保持装置5は、路面2aまたは路面2aに形成された氷雪層2bへ転動体Tをキャンバ角、操舵角、スリップ角、接地力などの保持状態を変えて押さえ付ける(接地させる)ことができ、この保持された転動体Tが転動する際に生じる挙動を計測できるようにしてある。
【0033】
氷雪層形成手段6は、路面2aに氷雪層2bを形成すべく路面2aに氷雪層素材26を供給する供給手段75と、路面2a上に形成された氷雪層2bを維持する氷雪層維持手段76とを有している。氷雪層形成手段6は、少なくとも供給手段75と氷雪層維持手段76とを有していればよいが、より実際の氷雪路面を忠実に再現するために高さ調整装置77及び/又は氷雪層押圧装置78を有するのが良い。高さ調整装置77は形成された氷雪層2bの高さを調整するものであり、また氷雪層押圧装置78は形成された氷雪層2bを押し固めるものである。
【0034】
以下に、供給手段75、氷雪層維持手段76、高さ調整装置77及び氷雪層押圧装置78について詳細に説明する。
本実施形態においては、環状体2の直線部7に周回方向上流側から供給手段75、氷雪層維持手段76の冷却装置82、氷雪層押圧装置78、高さ調整装置77、転動体保持装置5が順に設けられている。なお、供給手段75等が形成された直線部7において、周回方向上流側とは環状体2の周回方向Gに沿ってこの周回方向Gに逆らってさかのぼった側に位置することを云い、周回方向下流側とは周回方向Gに沿ってこの周回方向Gに合わせて下った側に位置することを云う。例えば、図1においては、図の下側に設けられた直線部7の周回上流側とは図の左側であり、下流側とは図の右側である。
【0035】
供給手段75は、氷雪層素材26を投入するホッパ79と、ホッパ79に投入された氷雪層素材26の中から適量を計り取って供給口81に送り出すフィーダ80と、フィーダ80から送られてきた氷雪層素材26を路面部材9の上または既に路面部材9の上に形成された氷雪層2bの上に供給する供給口81とを有している。
ホッパ79は氷雪層素材26を投入すべく上端が開口していると共に下端がフィーダ80に連結されている。フィーダ80は、投入された氷雪層素材26の中から所定の重量(又は体積)を秤量して供給口81に送っており、氷雪層素材26の供給量(流量)を調整している。また、供給口81は氷雪層素材26を路面2aの幅方向に均一に供給可能なように路面2a上を幅方向に横切るように形成されている。なお、氷雪層素材26は、水、氷、雪(人工雪と天然雪の双方を含む)、あるいはこれらを混合したみぞれ状であり、必要に応じて様々な添加剤が加えることができる。
【0036】
氷雪層維持手段76は、路面2aに形成された氷雪層2bを形成された状態(供給手段75で形成された状態)に維持/調整するものである。詳しくは、氷雪層維持手段76によって、氷雪層2bの物性(厚みや密度)や性状(温度や水分量に影響される雪や氷の性質)が変化しないように維持又は適度となるように調整することができる。
氷雪層維持手段76は、具体的には路面2a上の氷雪層2bに冷風を吹き付けて氷雪層2bを低温状態にする冷却装置82と、上述のように路面部材9の上部片12と着脱板60との間に設けられて、路面2a上の氷雪層2bに路面層61の下側に位置する環状体2(上部片12)から熱が伝わることを防止する断熱材83とを有している。
【0037】
冷却装置82は、吸い込んだ空気を冷却して冷風を発生させる冷却空気源84と、この冷却空気源84から送られてきた冷風を路面2aの氷雪層2bに吹き付ける冷却フード85とから構成されている。冷却フード85は、路面2aの氷雪層2bに触れないように路面2aからやや上方に距離をあけて設けられる筺体である。この筺体は、内部が空洞となっており、路面2aの幅より大きな幅方向長さと複数の路面部材9を覆える長手方向長さを有し、冷風を吹き出せるように下方に向かって開口している。よって、冷却装置82においては、冷却空気源84で発生した冷風は冷却フード85の内側に入ってから路面2aの氷雪層2bに向かって該冷却フード85の下方から吹き付けられ、路面2aに形成された氷雪層2bは冷却装置82を通過する間に水平方向にムラなく冷却されて氷冷状態とされる。
【0038】
冷却装置82は、氷雪層2bの冷却効果を上げるために、冷却フード85を周回方向に沿って出来る限り長くとる方が好ましい。そのため、冷却フード85は、周回上流側の端部を供給手段75の供給口81に近づけるように、また周回下流側の端部を氷雪層押圧装置78の転圧ロール91に近づけるように、可能な限り長く形成される。なお、本実施形態においては冷却装置82に次いで周回下流側に転圧ロール91が設けられているため、冷却フード85の周回下流側の端部を転圧ロール91に近づけたが、転圧ロール91以外の装置が設けられている場合は、これらの装置に近づけるように周回下流側の端部を設ければ良い。
【0039】
断熱材83は、路面部材9の上部片12と着脱板60との間に設けられ、この層は上部片12よりも熱が伝わり難い断熱材料で形成されている。断熱材料には樹脂成形体、発泡樹脂成形体、または発泡コンクリートなどを用いることができる。この断熱材83は、着脱板60及び路面層61に下方から熱が上部片12を介して伝わり難くしており、支持機構3や駆動機構4で発生した熱が氷雪層2bに伝わることを可及的に防止している。
なお、氷雪層維持手段76は、断熱材83に代えて、上部片12と着脱板60との間をスペーサを介して離間させてこれらの間に空気の層を設けても良い。
【0040】
高さ調整装置77は、路面2a上に形成された氷雪層2bに調整刃90を上方から当てて氷雪層2bの表面を削りながら高さ(層厚)を所定値に設定する装置である。高さ調整装置77は、具体的には、路面2aを挟んで左右両脇にそれぞれ立設される起立部材86、86と、路面2a上方に設けられて左右の起立部材86、86の上端同士を連結している天板部87と、天板部87に取り付けられた調整ハンドル88と、天板部87より下方に伸びる左右の案内シャフト89、89と、左右の両端を挿通する案内シャフト89に案内されると共に調整ハンドル88を回転させるとネジ機構によって昇降する昇降部材90とを有している。この昇降部材90は、下側に路面部材9の幅方向に沿って水平方向に伸びる刃を備えており、この刃によって氷雪層2bの表面を削ったり均したりできるようになっている。
【0041】
高さ調整装置77は、調整ハンドル88を回転させることで左右一対の案内シャフト89、89に沿って昇降自在とされた昇降部材90が天板部87に対して上下に移動し、路面2aとの相対距離を調整する機構となっている。これによって、路面2a上に形成された氷雪層2bの表面を平滑化すると共に氷雪層2bの高さ(厚み)を適宜調整できるようになっている。
高さ調整装置77は、本実施形態では氷雪層押圧装置78の転圧ロール91より周回方向下流側であって転動体保持装置5の転動体Tより周回方向上流側の直線部7に1箇所設けられており、これによって氷雪層押圧装置78の転圧ロール91により押圧された氷雪層2bの表面を均して転動体保持装置5の転動体Tが同じ状態で氷雪層2bに接地するようにしている。しかしながら、高さ調整装置77は供給手段75の供給口81より周回方向上流側に設けられても良いし、環状体2の直線部7の複数箇所に設けられても良い。
【0042】
氷雪層押圧装置78は、供給手段75の周回方向下流側で路面2a上に形成された氷雪層2bを転圧ロール91を用いて上方から押圧する装置である。氷雪層押圧装置78は、具体的には、路面2aを幅方向に横切るように設けられる転圧ロール91と、この転圧ロール91を回転自在に保持する左右一対の軸受部92、92と、左右のそれぞれの軸受部92を昇降自在に保持すると共にシリンダ等の昇降駆動手段の作用により軸受部92を介して転圧ロール91を下方に向けて所定の力で押圧する支持部93とを有している。従って、この氷雪層押圧装置78により転圧ロール91が一定の圧力で路面2a上の氷雪層2bを押圧し、氷雪層2bを圧縮(圧雪)状態とすることが可能である。
【0043】
氷雪層押圧装置78があるので、供給直後の雪質の氷雪層2bで形成された路面2aが直線部7から屈曲部8にさしかかって当該路面2aに遠心力が作用しても、この氷雪層押圧装置78により供給直後の雪質の氷雪層2bが路面部材9上に又は既に形成されている氷雪層2b上に直線部で押さえつけられているため、氷雪層2bが屈曲部8で脱離することが抑制される。また、この氷雪層押圧装置78は、供給直後の雪質の氷雪層2bを強く押し固めて圧雪質の氷雪層2bを形成し、この圧雪質の氷雪層2bを圧雪路面として雪上走行試験を行うこともできる。
【0044】
上述の構成を具備して成る転動体試験装置1は、以下に示す方法で氷雪上走行性能試験を行うことができる。
路面2aに氷雪層2bを形成する場合は、まず駆動機構4を作動させ、スプロケット42を介して環状体2の各路面部材9へ駆動力を伝える。これにより環状体2が支持機構3に沿って環状に周回移動を始めるようになり、それぞれの路面2aは直線部7と屈曲部8とを交互に通過しながら周回移動する。
本実施形態においては、環状体2の直線部7に周回上流側から供給手段75、氷雪層維持手段76の冷却装置82、氷雪層押圧装置78、高さ調整装置77、転動体保持装置5が順に設けられている。よって、直線部7に差しかかった路面2aには氷雪層素材26が所定の厚みで供給されてまず氷雪層2bが形成される。次に、この氷雪層2bは氷雪層押圧装置78により所定の密度(かたさ)に押し固められ、さらに高さ調整装置77により所望の厚みに調整される。この氷雪層素材26の供給から高さ調整装置77による氷雪層2bの厚み調整は、路面部材9を周回させながら連続的にかつ複数に亘って行われ、氷雪層2bが所望の性状や厚みとされる。その後に転動体保持装置5により転動体Tを氷雪層2bに接地させて転動体Tの挙動が計測される。
【0045】
氷雪上走行性能試験を行う場合は、積雪してから間もない路面(新雪路面)を試験する場合のように直線部7で氷雪層形成手段6により氷雪層2bを形成してすぐに転動体保持装置5により転動体Tを氷雪層2bに接地させることもできるし、例えば凍結路面を試験する場合のように予め路面2aを周回させつつ連続的に氷雪層2bを形成して所望の氷雪層2bが得られてから転動体保持装置5により転動体Tを氷雪層2bに接地させることもできる。
本発明の転動体試験装置1においては、各路面部材9は凸状円弧部14と凹状円弧部15とが微小な隙間を生じるか、又は生じないか程度の馴染み具合となって、互いに接近した状態で連結されるようになっている。即ち、互いに隣り合う路面部材9の周回移動方向についての相対距離を保つようにしているので、路面部材9が水平状態のまま環状回転する部分での環状体2の周回移動は円滑となり、耳障りな騒音や振動、また摩耗、亀裂、カケ等の発生が防止できるだけでなく、路面2a上に氷雪層2bを形成しても氷雪層2bが剥がれ落ちたりすることが防止乃至抑制される。
【0046】
また、周回移動する環状体2は、各路面部材9が水平状態を維持しており(下方を向くことがなく)、従来の金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式とは異なってこの路面2aが上下に姿勢を変えるような巻掛け部分を通過することはない。また、支持機構3に設けられた調整機構32を適切に調整することに伴って伸びやガタツキの発生しない最良のテンションに維持されるので、路面2a上に形成した氷雪層2bに余計な衝撃を与える恐れがなく、従来の金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式を採用する試験機では困難であった氷雪層2bを連続的に形成することが可能となる。
【0047】
さらに、前記転動体試験装置1には環状体2に直線部7が設けられており、この直線部7に氷雪層形成手段6や転動体保持装置5が設けられているので、従来のターンテーブル方式の試験装置のように遠心力の作用で路面2aに形成された氷雪層2bが剥がれ落ちたり、或いは直線状の路面2a上を走行させるために設備を巨大化させたりする必要がない。その結果、直線状の路面2a上に氷雪層2bが形成された場合の氷雪上走行性能試験を容易に実施することができる。
前記転動体試験装置1は氷雪層維持手段76を備えることにより、路面2aが周回移動しても一旦形成された氷雪層2bを安定して路面2a上に性質を変えずに維持することができる。そのため、従来の試験機では困難であった積雪路面や凍結路面を繰り返し利用しての氷雪上走行試験であっても容易に行える。
【0048】
なお、本発明の転動体試験装置1は、互いに隣り合う路面部材9の周回移動方向についての相対距離を保つようにされており、隣り合う路面部材9同士がぶつかり合うことがない構造となっているため、各路面部材9の路面2aには実路面に多用されるアスファルトやコンクリートなどの衝撃に脆い材料を貼り付けて用いることができ、実路面における氷雪上走行状況をより忠実に再現できることになる。
また、本発明の転動体試験装置1は、路面部材9は路面2aが絶えず上方を向いたまま周回移動しているので、金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式のように路面2aがドラムや駆動輪等に巻かれて下を向くことがなく、一旦形成された氷雪層2bが路面2aから逆さに落ちることがない。その結果、氷雪層2bを路面2a上に安定して維持することができる。
[第2実施形態]
図10〜図13は、本発明に係る転動体試験装置1の第2実施形態を示している。この第2の実施形態は図10に示すように、環状体2を平面視(上面視)して環状体2が水平方向に環状回転するものである点で第1実施形態と同じである。
【0049】
この第2実施形態が上記した第1実施形態の転動体試験装置1と最も異なるところは、支持機構3において、両側の円弧部分3bに対し周回移動方向に沿って90°のひねりを生じさせるようにしている点にある。このため、図10に示す転動体試験装置1の環状体2においては、一方の直線部分3a(即ち、転動体Tを転動可能とさせるために環状体2に形成させる路面2aの形成領域)では環状体2を平面視して水平な路面2a(上向きの路面2a)をなしているのに対して、他方の直線部分3aでは紙面貫通方向に路面2a横に起こしたような姿勢になっている。
【0050】
このようにすることで、環状体2が支持機構3の円弧部分3bを周回移動するときに生じる遠心力を支持機構3で受けやすくして支持機構3の案内面での遠心力への耐力性を向上させることができ、遠心力が作用して路面2aに対して氷雪層2bがずれたり剥がれたりするのを防止できるようになる。
また、第2実施形態の転動体試験装置1は、氷雪層押圧装置78を直線部7に備えている。この氷雪層押圧装置78により、供給直後の氷雪層2bを押し固めて氷雪層2bを路面2a上に確実に保持することができる。その結果、他方の直線部分3aにおいて氷雪層2bが紙面貫通方向に路面2a横に起こしたような姿勢になっても、氷雪層2bが路面部材9から落下しにくくなり、氷雪層2bがずれたり剥がれたりするのを防止できるようになる。
【0051】
第2実施形態の環状体2は、第1実施形態とは形状が異なる路面部材9を有している。即ち、路面部材9は、板状の本体片50(上部片12と下部片13とで階段状になったものではない)を有したものとなっている。
本体片50の路面2aの周回方向の一方側には、凸状円弧部14が設けられ、他方側には、凹状円弧部15が設けられている。路面2aが上を向く領域では、それぞれ隣り合う本体片50のうち、一方の本体片50の凸状円弧部14が他方の本体片50の凹状円弧部15に嵌り込むことで、隣り合う本体片50間の継ぎ目を除いて連続的な路面2aが形成されるようになっている。
【0052】
また、路面部材9は、本体片50の下面に突出状に設けられたカプラー台51を有しており、このカプラー台51に連結部材10が取り付けられている。上述したように、本体片50の凸状円弧部14が隣り合う他の路面部材9の本体片50の凹状円弧部15に嵌め込んだ状態で、連結部材10によって互いに隣り合うカプラー台51を連結することで、互いに隣り合う路面部材9は連続的に連なるようになっている。
具体的には、連結部材10は、互いに隣り合う路面部材9における一方のカプラー台51から他方のカプラー台51へと延びる連結ロッド52と、この連結ロッド52の先端に設けられた自在継ぎ手(ユニバーサルジョイント、ボールジョイントなど)53とを有しているものとなっている。この自在継ぎ手54を介して一方のカプラー台51の連結ロッド52が他方のカプラー台51に接続されている。
【0053】
なお、環状体2が支持機構3の円弧部分3bを走行する際、互いに隣り合う路面部材9は、継ぎ目部分において互いにスライドする方向にずれるような動きをする。その動きにより、互いに隣り合う路面部材9の周回移動方向についての相対距離を保つようになっているので、円弧部分3bにおいても互いに隣り合う路面部材9がぶつかり合うことがなく、路面部材9同士の衝突に由来する振動等が発生することもない。そのため、路面部材9の継ぎ目部分の摩耗、亀裂、欠け等の発生を防止乃至抑制したり、また路面2aとして路面部材9に実路面で多用されるコンクリートやアスファルト等の衝撃に脆い材料を利用できるだけでなく、路面2aに形成された氷雪層2bを路面2aが周回移動しても安定して維持することが可能になる。
【0054】
また、カプラー台51には、3つの箇所に分けてガイドローラ54が設けられている。1カ所はカプラー台51の路面部材9(本体片50)とは反対側に設けられており、残りはカプラー台51の両サイドに設けられている。これに対して支持機構3は、各ガイドローラ54、55をカプラー51の周回移動方向に沿って回転自在に案内すると共に、各ガイドローラ54,55の回転面を支持する断面コ字状をした溝型ガイドレール56を有したものとなっている。
更に第2実施形態では、駆動機構4としてリニアモータ57を採用している。リニアモータ57としては、水平状態の直線部分3a(即ち、転動体Tを転動可能とさせるために環状体2に形成させる路面2aの形成領域)に対応させて推進用コイル72を設けている。路面部材9の下面には、推進用コイル72に対応する推進力発生用の磁石(図示略)が搭載されている。
【0055】
第2実施形態に駆動機構4としてリニアモータ57を採用する利点は、スプロケット方式では避けられないピン接触音やピン摩耗、試験雰囲気中でのピン潤滑が回避できる事にある。
なお、第2実施形態におけるその他の構成、実質的な動作及び作用、効果は、上記第1実施形態と略同様であり、また第3実施形態においてもリニアモータ57が採用されているので、ここでの詳説は省略する。
[第3実施形態]
図14〜図16は、本発明に係る転動体試験装置1の第3実施形態を示している。この第3実施形態は、基本的には第1実施形態(図1〜図9参照)と略同じであるが、駆動機構4として第2実施形態と同様に環状体2を全周的に浮上させた上で推進力を付与するリニアモータシステムを採用している点が第1実施形態と異なっている。
【0056】
第3実施形態の駆動機構4は、路面部材9を浮上させる浮上用コイル70と、路面部材9の浮上を制限する浮上制限コイル71と、路面部材9を介して環状体2に推進力を与える推進用コイル72と、路面部材9の支持機構3に対する横方向の移動を制限する軌道案内コイル73と、路面部材9側に設けられた磁石(図示略)とを有している。駆動機構4の各コイル70〜73が制御されることで、路面部材9に推進力が付与され路面部材9、即ち、環状体2が周回移動する。
第3実施形態に駆動機構4としてリニアモータ57を採用する利点は、路面部材9が浮上状態とされていることで、路面2a上に形成された氷雪層2bに熱がさらに伝わり難くなる点にある。つまり、第3実施形態においては、路面部材9が支持機構3と接触することを極力なくすことができるので、路面部材9と支持機構3との摩擦による発熱が抑制される。つまり、路面部材9と浮上用コイル70との間のみならず浮上制限コイル71や軌道案内コイル73との間にもすき間(空気層)が形成されており、路面部材9が他の部材と接触(摩擦)して発熱することも防止でき、更に空気層による断熱作用も得ることのできる構造となっているので、氷雪層2bの維持効果は格別のものとなる。
【0057】
第3実施形態におけるその他の構成、実質的な動作及び作用、効果は、上記第1実施形態と略同様であるので、ここでの詳説は省略する。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
即ち、上述の実施形態においては転動体試験装置1は氷雪層2b上を転動する転動体Tの挙動を評価するのに用いられていたが、この転動体試験装置1は転動する転動体Tから氷雪層2bを有する路面2aがどのような影響を受けるかを評価する路面試験装置としても利用することができる。
【0058】
また、氷雪層形成手段75で供給される氷雪層素材26は、氷、雪(人工雪と天然雪の双方を含む)、あるいはこれらを混合したみぞれ状とするのが好ましいが、これらに代えて水を供給することもできる。この場合は、冷却装置82による冷却能力を上げて氷雪層2b(例えば、凍結路面)を形成することができ、冷却装置82が氷雪層形成手段75の一部として機能することになる。
また、路面部材9の少なくとも一部は、転動体Tのある側から反転動体側へ(言い換えれば、路面部材9の上下方向に)可視光線を透過するガラスや透明プラスチックなどの部材で形成することができる。このようにすると、路面部材9の下方から転動体Tの氷雪層2bへの接触状態を確認又は観察することができることになり、様々な試験、測定が可能となる。
【0059】
支持機構3や駆動機構4の組み合わせは特に限定されるものではなく、例えば第1〜第3実施形態で説明した各駆動機構4をそれぞれ他の実施形態の駆動機構4として置換するといったことが可能である。例えば、第3実施形態では支持機構3の周方向全周に亘り、リニアモータ57の各種コイル72が設けられているが、十分に推進力を得ることができるものであれば第2実施形態のように支持機構3の周方向一部に各種コイル72を設けるようにしてもよい。路面部材9に用いる着脱板60には各種材料を用いることができ、これによって様々な環境の路面2aを形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る転動体試験装置の第1実施形態を一部破砕して示した平面図である。
【図2】図1に対応する一部破砕正面図である。
【図3】転動体試験装置の要部断面図である。
【図4】環状体の一部を拡大して示した平面図である。
【図5】図2のB部を拡大し一部破砕して示した断面図である。
【図6】路面部材を示した斜視図である。
【図7】路面部材の平面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】調整機構の伸縮部を示した平面断面図である。
【図10】本発明に係る転動体試験装置の第2実施形態を示した平面図である。
【図11】図10に対応する一部破砕正面図である。
【図12】図10のD部を拡大し且つ破砕して示した図である。
【図13】第2実施形態の転動体試験装置の要部断面図である。
【図14】本発明に係る転動体試験装置の第3実施形態を一部破砕して示した平面図である。
【図15】図14に対応する一部破砕正面図である。
【図16】第3実施形態の転動体試験装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 転動体試験装置
2 環状体
2a 路面
2b 氷雪層
3 支持機構
4 駆動機構
5 転動体保持装置
6 氷雪層形成手段
7 直線部
26 氷雪層素材
75 供給手段
76 氷雪層維持手段
77 高さ調整装置
78 氷雪層押圧装置
82 冷却装置
83 断熱材
T 転動体
【技術分野】
【0001】
本発明は、周回移動する氷雪路面上を転がる転動体の挙動を試験する転動体試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、転動体試験装置として、回転駆動させた回転ドラムの内周面にタイヤを押し付けて、内周面を転動するタイヤの挙動を計測するタイヤ試験装置が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1のタイヤ試験装置では、回転ドラム内周面を路面としているが故に、タイヤの接地状況は平坦な実際の路面と大きく異なる曲面とされており、実際の路面におけるタイヤ接地状況を正確に再現させることは非常に困難である。特に、寒冷地や冬場における氷雪路面(積雪や凍結のある路面)においては路面への接地状況がタイヤの挙動に大きく影響するため、氷雪上走行性能試験においては実際の走行環境を忠実に再現した平坦な路面上でタイヤを転動させ、その挙動を計測することが必要とされている。
【0003】
さて、従来からタイヤとの接触面を平坦にした路面装置が各種提案されている。
例えば、金属ベルトコンベヤ方式を採用した路面装置として、一対のドラムに薄い鋼製のエンドレスベルトを架け渡したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。また金属クローラ方式を採用した路面装置として、立設された駆動輪と従動輪(いずれもチェーンスプロケットと推量される)とに巻き掛けたエンドレスチェーンに対し、そのエンドレス外周側に多数の路面形成杆(クローラシュー)を無端連設させてなるものが知られている(例えば、特許文献3参照)。さらに、ターンテーブル方式を採用した路面装置として、路面がその面を上に向けて水平面上を回転するものが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平1−107128号公報
【特許文献2】特開昭56−73332号公報
【特許文献3】特開昭51−16501号公報
【特許文献4】特開2001−74613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2の金属ベルトコンベヤ方式の路面装置をタイヤ試験装置に用いて氷雪上走行性能試験をしようとしても、この金属ベルトコンベヤ方式ではエンドレスベルト(路面)がドラムへ巻き掛けられる形式となっているので、このベルト上に氷雪層を形成したとしてもベルトがドラムに差しかかるたびに氷雪層が落下し、ベルト上に氷雪層を残すことができない。
また、特許文献3の金属クローラ方式の路面装置をタイヤ試験装置に用いて氷雪上走行性能試験をしようとしても、金属クローラ方式も金属ベルトコンベヤ方式と同様にエンドレスチェーン(路面)を駆動輪や従動輪へ巻き掛ける形式となっているので、チェーンが駆動輪等に差しかかる度に氷雪層が落下し、チェーン上に氷雪層を残すことができない。
【0005】
さらに、この金属クローラ方式においては、エンドレスチェーンが駆動輪や従動輪に対する巻き掛け部分から両輪間の張り渡し部分(直線部分)へ移るとき等に、相互隣接するクローラシュー同士が屈曲動作を繰り返す。このような屈曲動作が起こると、相互隣接するクローラシュー同士が接触干渉してエンドレスチェーンに激しい振動が生じるので、チェーン上に形成された氷雪層は金属ベルトコンベヤ方式よりも落下しやすくなる。
つまり、特許文献2の金属ベルトコンベヤ方式や特許文献3の金属クローラ方式の路面装置をタイヤ試験装置に採用すると、ベルトやチェーンを回転させる度に氷雪層が落下してしまう。そのため、凍結路面や深く雪が堆積した路面は直ぐには形成することができず、実際の走行環境を忠実に再現することは困難である。
【0006】
一方、特許文献4の路面装置は、水平面上を路面が回転するターンテーブル方式とされており、路面は絶えず旋回状態にあるため直線状の路面上を走行する試験はできない。路面の旋回半径を大きくすればタイヤの接地部分における路面の直線性を近似的に上げられるが、そのためには路面装置が極めて大規模になってしまい、非現実的である。
また、このような路面装置を氷雪上走行性能試験に適用しようとしても、直線の路面における実際の走行環境を忠実に再現することはできない。
つまり、特許文献2〜4の路面装置をタイヤ試験機に用いても十分な氷雪上走行性能試験は実際には不可能である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水平面上を移動する路面上に氷雪層を形成しているので路面が周回しても氷雪層を路面上に安定して維持することができ、また直線の路面における転動体の氷雪上走行性能試験も可能となる転動体試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る転動体試験装置は、
転動体を転動させることが可能な路面を有する環状体と、
前記環状体を上面視で水平方向に環状回転自在に支持し且つ該環状体を少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように支持する支持機構と、
前記環状体を駆動させて周回させる駆動機構と、
前記転動体を回転自在に支持し且つ当該転動体を前記直線状の路面に対して近接離反させる転動体保持装置と、
前記路面上において氷層及び/又は雪層からなる氷雪層を形成する氷雪層形成手段と
を有していることを特徴とする。
【0009】
ここで、転動体とは主にタイヤである。転動体試験装置としてこのような構成は画期的であって、この構成において環状体は上面視(平面視)で水平方向に環状回転(周回)するので、金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式とは異なってこの路面が水平回転軸周りに姿勢を変えるような巻掛け部分を通過することはない。また、この転動体試験装置では少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように環状体が支持されているので、ターンテーブル方式とも異なり直線状の路面における転動体の挙動を評価することができる。それ故、金属ベルトコンベヤ方式、金属クローラ方式、又はターンテーブル方式を採用することによって生じていた従来の問題は全て払拭される。
【0010】
すなわち、本発明の転動体試験装置によれば、水平面上を移動する路面上に氷雪層を形成しているので路面が周回しても氷雪層を路面上に安定して維持することができ、また直線の路面における転動体の氷雪上走行性能試験も可能となる。
前記環状体は、路面を有する複数の路面部材と、互いに隣り合う路面部材の相対距離を保持するように、前記複数の路面部材を無端状に連結する連結部材とを有しているのが好ましい。
このようにすることで、水平状態のまま環状回転する部分での環状体の周回移動が円滑となり、耳障りな騒音や振動、また摩耗、亀裂、カケ等の発生を防止乃至抑制でき、路面が周回しても氷雪層を路面上に安定して維持することができる。
【0011】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層を形成すべく路面に氷雪層素材を供給する供給手段と、路面上に形成された氷雪層を維持する氷雪層維持手段とを有しているのが好ましい。
このようにすることで、前記供給手段により路面に水、雪、みぞれ、氷などの氷雪層素材を供給して氷雪層を形成した上で、氷雪層維持手段により形成された氷雪層を維持することができる。この氷雪層維持手段は氷雪層を氷冷状態に維持して、氷雪層が溶けて性状が変化したり路面から剥がれたりするのを防止できる。そのため、周回する路面に氷雪層を連続的に成長させて所望の氷雪層を得ることが可能となり、様々な路面環境を忠実に再現して氷雪上走行性能試験を行うことができる。
【0012】
前記氷雪層維持手段は、前記氷雪層を冷却する冷却装置を有しているのが良く、さらに前記路面が環状体上面に形成される路面層の上面である場合には、前記路面層下側に設けられて当該路面にその下方側に位置する環状体から熱が伝達するのを防止する断熱材を有しているのがより好ましい。
このようにすることで、氷雪層を冷却することができ、また外部(下方側)からの熱が氷雪層に伝達することが防止されるため、氷雪層が溶けて形成時の厚みや性状(温度や水分量に影響される雪や氷の性質)が変化することが防止される。このように氷雪層の性状が変化しないようにすることで、周回移動時に遠心力が加わっても、遠心力の作用で氷雪層が脱離し難くなる。その結果、氷雪層を路面上に効率良く形成・維持することができる。
【0013】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層の高さを調整する高さ調整装置を有しているのが好ましく、さらに前記氷雪層を押し固める氷雪層押圧装置を有しているのが良い。ここで、氷雪層の高さとは路面に形成される氷雪層の厚み(深さ)である。
このようにすることで、氷雪層を所望の高さ(厚み)、硬さ、密度に調整可能となり、実際の氷雪路面における種々の氷雪層の物理的特性を忠実に再現した氷雪上走行性能試験を実施することができる。
前記氷雪層形成手段は前記直線状で上向きの路面における周回方向上流側に備えられており、該路面における前記氷雪層形成手段より周回方向下流側に転動体保持装置が備えられているのが良い。
【0014】
このようにすることで、直線部の周回方向上流側で形成された氷雪層は遠心力の作用を受けることなく直線的に移動して転動体保持装置に到達するため、氷雪層に遠心力の作用で剥離しやすい新雪が積雪した路面などを用いても転動体の挙動を正確に評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る転動体試験装置によれば、路面上に氷雪層を安定して維持できるとともに、この氷雪層が形成された路面を直線的な氷雪路面として得ることができ、この直線的な氷雪路面を走行する転動体の挙動を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1〜9は、本発明に係る転動体試験装置の第1実施形態を示している。
図1に示すように、転動体試験装置1は、環状体2と、この環状体2を環状回転可能に支持する支持機構3と、この支持機構3によって支持された環状体2を駆動させる駆動機構4と、環状体2に設けられた路面2aにタイヤなどの転動体Tを接触させる転動体保持装置5と、路面2a上に氷雪及び/又は雪層からなる氷雪層2bを形成可能な氷雪層形成手段6とを有している。
【0017】
氷雪層2bは、路面2a上に形成される氷及び/又は雪(人工雪を含む)を主成分とする氷雪層素材26から層状に形成されている。これらは、氷雪上走行試験を行いたい路面環境に合わせて適宜形成されるものであり、例えば砂、融雪剤または土砂のような添加剤を加えても良いし、性状の異なる氷の層と雪の層とを積層させても良い。
転動体試験装置1は、環状体2が連続的に連なる複数の個別部位からなる路面2aを有しており、平面視したとき環状体2の路面2aが水平方向(例えば、図1矢印G方向)に周回移動(走行)するようになっている。この路面2a上には氷雪層形成手段6により氷雪層2bが形成され、この氷雪層2bに対して転動体保持装置5により近接離反自在に支持されている転動体Tが接地する。つまり、転動体保持装置5に転動体Tが受ける力を測定する6分力計などの測定器を設けることで、転動体試験装置1は転動体Tが接地回転中に発生させる6分力を計測試験する転動体試験装置(タイヤ試験装置)となる。なお、この実施の形態では、「転動体T」はタイヤである。
【0018】
以下、環状体2、支持機構3、駆動機構4、転動体保持装置5、氷雪層形成手段6について詳しく説明する。なお、下記の説明において、説明の便宜上、図1の上下方向を「幅方向」又は「左右方向」とし、この方向と紙面上で直交する方向(紙面左右方向)を「長手方向」又は「前後方向」とする。
図1、2に示すように、環状体2は、複数の路面部材9が無端状となるように連結されて成るものであって、これら複数の路面部材9と共に、各路面部材9を連結するための連結部材10を有している。個々の路面部材9の上面に路面2aが形成されており、この路面部材9が個々の路面2aを近接させて連結部材10により連結されている。路面部材9が連結部材10により連結されることで、路面2aを全体的に見ると、周方向の所定領域において上を向いたまま連続的に連なった直線状の直線部7が平行に2本形成され、これらの直線部7のそれぞれの端の間を結ぶように水平方向に湾曲した屈曲部8が形成されている。
【0019】
図4〜図8に示すように、路面部材9は、上部片12と、この上部片12の下部に設けられた下部片13とを有している。これら上部片12と下部片13とは一体化されている。この路面部材9を側面視した形状は、上部片12及び下部片13が前後方向にズレて、階段状を呈するようになっている。
上部片12の一方の端部には凸状円弧部14が設けられ、上部片12の他方の端部には凹状円弧部15が設けられている。下部片13は、上部片12に対しその凸状円弧部14よりも周回移動方向に沿ってズレた状態とされ、且つ凹状円弧部15よりも周回移動方向に沿って外側へ突出する状態で設けられている。
【0020】
下部片13には、上部片12の凹状円弧部15に対応する位置より周回移動方向の外側へ突出するようになった凸台部17が設けられており、この凸台部17が、隣り合う路面部材9の上部片12に対してその凸状円弧部14の下へ重ね合わされるようになる。第1実施形態では、凸台部17(下部片13)と凸状円弧部14(上部片12)とが重ね合わされた重ね合わせ部分が連結部材10によって垂直軸心回りに回動自在に連結されている。
また、路面部材9は、上部片12の上面に上部片12よりも熱の伝わり難い材料からなる断熱材83が設けられ、この断熱材83の上に着脱自在に設けられた着脱板60を有している。この着脱板60の上面には路面層61が形成され、この路面層61は上面が路面2aになっている。路面層61はアスファルト、コンクリート、金属、砂地同等材など実際の路面材料と同じ材料やその他の所望の材料によって形成されており、この路面層61は着脱板60に対して接着剤、ボルト、アンカーなどにより固定される。
【0021】
また、着脱板60にはボルト孔62が設けられ、上部片12及び断熱材83にはボルト孔62に合致するボルト通孔63が設けられている。上部片12の下方側からボルト通孔63を介してボルト孔62へ螺合されるボルト64により、上部片12に対して着脱板60及び断熱材83が着脱自在に固定される。上部片12には、ボルト通孔63の下側の開口端にボルト64のボルト頭を没入させるための座繰り65が施されている。これにより、上部片12に対して、それと重ね合わした隣り合う路面部材9の下部片13(凸台部17)の動きがボルト64によって邪魔されることはない。また、断熱材83が路面層61の下側に設けられ、上部片12から路面2aへの熱の伝達を防止している。
【0022】
なお、言うまでもなく、上部片12の下方側空間を利用してボルト64を緩めることで上部片12に対して着脱板60及び断熱材83を外すことができ、これによって着脱板60(路面層61を含む)の着脱が自在となることから、環状体2の全体を分解することなく、路面部材9としての路面2aの交換が個別に可能となっている。
上部片12側、又は着脱板60側にそれらの相互間の位置決め手段として位置決めピン66を突出状態で設けておき、相手側(即ち、位置決めピン66の設けられた方を上部片12とする場合は着脱板60側であり、反対に着脱板60とする場合は上部片12側である)に位置決めピン66をガタツキ無く差し込み可能なピン孔67を設けておくことで、上部片12に対する着脱板60(路面層61を含む)の位置付けを一定化させ、また位置ズレを防止できるので好適となる。
【0023】
このようなことから、路面部材9は着脱板60の交換と共に路面2aの取り替えが個別に可能であり、わざわざ路面部材9全体を取り替える必要がなくなる。また、路面部材9全体ではなく、着脱板60として複数種類を準備することができるので、ストックのためのスペースやコストなどの面で有益となる。また、路面部材9は着脱板60の交換に合わせて断熱材83の交換も可能となっており、これによって劣化した断熱材83の交換が容易となる。
また、一部の路面部材9の路面2aを他の路面部材9の路面2aと異なる種類のものに取り替えたり、すべての路面部材9の路面2aを各種路面材料のものに取り替えたりする事も可能であり、色々な路面状態を容易に設定することができる。
【0024】
図3〜5に示すように、連結部材10は、垂直方向に軸心を向けた枢軸18と、この枢軸18に外嵌されるベアリング又はブッシュ等の軸受部19とを有している。下部片13の凸台部17には枢軸18の中途部を軸受部19を介して差し込む軸受け孔20が上方に開口して設けられている。
また、上部片14の凸状円弧部14には、枢軸18の上端部を軸受部19を介して差し込む軸受け孔21が下方に開口して設けられている。本実施形態においては、更に、軸受け孔20は枢軸18が下方へ貫通している。軸受け孔21は枢軸18が上部(路面2a)へは抜けない状態に設けられている。
【0025】
なお、枢軸18に対し、軸受部19は下側の軸受け孔20内及び上側の軸受け孔21内に嵌るようにそれぞれ複数設けられ、これら軸受部19の軸方向間隔がカラー23によって保持されるようになっている。
上部片12において、凸状円弧部14の外縁が描く凸側の円弧カーブと、凹状円弧部15の外縁が描く凹側の円弧カーブとは、略同等となる曲率半径とされるか又は僅かに凹状円弧部15の方が大きく形成されている。
そのため凸状円弧部14は、隣り合う他の路面部材9の凹状円弧部15に嵌り込み、互いに嵌り込んだ凸状円弧部14と凹状円弧部15とが微小な隙間を生じるか、又は生じないか程度の馴染み具合で互いに接近した状態が得られるようになっている。互いの路面部材9は、このような凸状円弧部14と凹状円弧部15との接近状態を保持したまま、連結部材10により連結されると共に、枢軸18回りに回動自在となっている。
【0026】
下部片13に設けられた軸受け孔20は、下部側の貫通孔が枢軸18は通すが軸受部19は脱落しない程度に縮径された段付き部を備えている。そして枢軸18は、下部片13の下方へ突出した状態として設けられている。このように枢軸18において下部片13の下方へ突出する部分は、後述する駆動部4に対する係合部24を形成する。
また、下部片13には、上部片12の両円弧部の形成されていない幅方向両側へ突出するスライドシュー25が設けられている。このスライドシュー25は、路面部材9、ひいては環状体2の全体が周回移動する場合に、後述する支持機構3によりガイドされる部分となる。図4に示すスライドシュー25は突出端が角部として形成されているがR部として形成しても良い。
【0027】
図1〜図3に示すように、支持機構3は、環状体2を水平方向に環状回転自在に支持し、この環状体2を少なくとも一部の路面2aが屈曲せず(直線状で)上向きになるように支持するためのものである。第1実施形態では、支持機構3は、路面2aが上向きとなるように直線部7を支持すると共に、屈曲部8を支持している。
環状体2が平面視で長円形の輪を呈するように、支持機構3は、半円弧状の2つの円弧部分3b、3bをつなぐ平行な直線部分3aを備えている。即ち、支持機構3は、これら直線部分3aと円弧部分3bとが組み合わせたものとしてある。この直線部分3aによって路面2aの直線部7を支持し、円弧部分3bによって路面2aの屈曲部8を支持している。
【0028】
この支持機構3は、路面部材9に設けられたスライドシュー25を滑らかに案内できるように、断面コ字状をした大小の長円形のガイドレール30を有している。これら大小のガイドレール30は、コ字状の開放部が互いに対向するように平行架設されており、上記した環状体2の長円形の輪に沿ってその全周に設けられたものである。すなわち、これらガイドレール30がスライドシュー25を介して環状体2をその周回方向に沿って摺動自在に保持することになる。
この支持機構3には、環状体2の長さに対応して、ガイドレール30の軌道長さを微調整することのできる調整機構32が設けられている。この調整機構32は、図9に示すように、直線部分3aを形成しているガイドレール30に長手方向の伸縮部33を設け、この伸縮部33に対して直接的又は間接的に長手方向の伸縮力を加えられるものとしてある。伸縮力を加えるための手段として、図2に示す例ではシリンダ装置からなる調整原動部34を設けており、この調整原動部34が伸縮部33に対して伸縮力を加えている。
【0029】
伸縮部33は、2つの直線部分3a、3aの途中の部分で分断されたガイドレール30を伸縮させるものである。この伸縮部33は、分断した一方のレール端に嵌合凸部35を固定的に設け、また分断した他方のレール端にこの嵌合凸部35をガタツキ無く摺動自在な状態で差し込み可能な嵌合凹部36を設けたものである。従って、この嵌合凸部35の差し込み度合いを調整することで、環状体2としての長円形の長さに対応してガイドレール30の軌道長さを変更できるのである。
調整原動部34は、上記したように要は支持機構3の直線部分3bに設けられた伸縮部33を伸縮させることができればよいので、ガイドレール30に直接的に伸縮力を加えるようにしてもよいし、或いは環状体2を介して間接的に伸縮力を加えるようにしてもよい。第1実施形態では、環状体2を介して間接的に伸縮力を加える方式を採用した。
【0030】
すなわち、環状体2では、各路面部材9を連結する連結部材10の枢軸18が各路面部材9の下部片13から下方へ突出した状態とされ、この下方突出部分に後述する駆動機構4との係合を行わせるための係合部24が形成されるようになっている。
そこで、支持機構3におけるいずれか一方の円弧部分3bの中心部に、軸心を垂直方向に向けた回転軸37まわりで水平回転自在となるスプロケット38を設け、このスプロケット38の外周部に、環状体2の上記係合部24が係合する係合凹部39を設けるようにした。このようにしたうえで、このスプロケット38の回転軸37を支持する軸受け台40を長手方向にスライドさせることで調整原動部34による伸縮力が加えられる状態とした。具体的に、この調整原動部34には油圧シリンダやモータ駆動による送りネジ機構等を採用することができる。
【0031】
なお、調整原動部34が回転軸37及びスプロケット38とガイドレール30とを同時に移動させることができるように、回転軸37とガイドレール30との間に連結機構(図示せず)を介装することによって、環状体2の張り具合の調整と伸縮部33の調整を行うようにしてもよい。また、シリンダ装置やネジジャッキ機構やトグル機構等によってガイドレール30に直線的に伸縮力を加えるように構成してもよい。
駆動機構4は、環状体2を駆動させて路面2aを周回移動させるためのものである。第1実施形態では、上記調整機構32のスプロケット38が設けられたのとは反対側となる支持機構3の円弧部分3bに対し、その中心部に、軸心を垂直方向に向けた回転軸41まわりで水平回転自在となるスプロケット42を設け、このスプロケット42の外周部に、環状体2の上記係合部24が係合する係合凹部43を設けるようにし、且つこのスプロケット42を巻掛け伝動手段等の伝動部44を介してモータ45で回転駆動させるものとしてある。
【0032】
転動体保持装置5は、水平方向に向けた軸心まわりで転動体Tを回転自在に保持可能にしたもので、転動体Tの軸芯部へ下向きに所定荷重を加えることができるとともに、当該転動体Tの外周面を環状体2によって形成される路面2aに向けて近接離反自在とすることができる。またこの転動体保持装置5は、路面2aまたは路面2aに形成された氷雪層2bへ転動体Tをキャンバ角、操舵角、スリップ角、接地力などの保持状態を変えて押さえ付ける(接地させる)ことができ、この保持された転動体Tが転動する際に生じる挙動を計測できるようにしてある。
【0033】
氷雪層形成手段6は、路面2aに氷雪層2bを形成すべく路面2aに氷雪層素材26を供給する供給手段75と、路面2a上に形成された氷雪層2bを維持する氷雪層維持手段76とを有している。氷雪層形成手段6は、少なくとも供給手段75と氷雪層維持手段76とを有していればよいが、より実際の氷雪路面を忠実に再現するために高さ調整装置77及び/又は氷雪層押圧装置78を有するのが良い。高さ調整装置77は形成された氷雪層2bの高さを調整するものであり、また氷雪層押圧装置78は形成された氷雪層2bを押し固めるものである。
【0034】
以下に、供給手段75、氷雪層維持手段76、高さ調整装置77及び氷雪層押圧装置78について詳細に説明する。
本実施形態においては、環状体2の直線部7に周回方向上流側から供給手段75、氷雪層維持手段76の冷却装置82、氷雪層押圧装置78、高さ調整装置77、転動体保持装置5が順に設けられている。なお、供給手段75等が形成された直線部7において、周回方向上流側とは環状体2の周回方向Gに沿ってこの周回方向Gに逆らってさかのぼった側に位置することを云い、周回方向下流側とは周回方向Gに沿ってこの周回方向Gに合わせて下った側に位置することを云う。例えば、図1においては、図の下側に設けられた直線部7の周回上流側とは図の左側であり、下流側とは図の右側である。
【0035】
供給手段75は、氷雪層素材26を投入するホッパ79と、ホッパ79に投入された氷雪層素材26の中から適量を計り取って供給口81に送り出すフィーダ80と、フィーダ80から送られてきた氷雪層素材26を路面部材9の上または既に路面部材9の上に形成された氷雪層2bの上に供給する供給口81とを有している。
ホッパ79は氷雪層素材26を投入すべく上端が開口していると共に下端がフィーダ80に連結されている。フィーダ80は、投入された氷雪層素材26の中から所定の重量(又は体積)を秤量して供給口81に送っており、氷雪層素材26の供給量(流量)を調整している。また、供給口81は氷雪層素材26を路面2aの幅方向に均一に供給可能なように路面2a上を幅方向に横切るように形成されている。なお、氷雪層素材26は、水、氷、雪(人工雪と天然雪の双方を含む)、あるいはこれらを混合したみぞれ状であり、必要に応じて様々な添加剤が加えることができる。
【0036】
氷雪層維持手段76は、路面2aに形成された氷雪層2bを形成された状態(供給手段75で形成された状態)に維持/調整するものである。詳しくは、氷雪層維持手段76によって、氷雪層2bの物性(厚みや密度)や性状(温度や水分量に影響される雪や氷の性質)が変化しないように維持又は適度となるように調整することができる。
氷雪層維持手段76は、具体的には路面2a上の氷雪層2bに冷風を吹き付けて氷雪層2bを低温状態にする冷却装置82と、上述のように路面部材9の上部片12と着脱板60との間に設けられて、路面2a上の氷雪層2bに路面層61の下側に位置する環状体2(上部片12)から熱が伝わることを防止する断熱材83とを有している。
【0037】
冷却装置82は、吸い込んだ空気を冷却して冷風を発生させる冷却空気源84と、この冷却空気源84から送られてきた冷風を路面2aの氷雪層2bに吹き付ける冷却フード85とから構成されている。冷却フード85は、路面2aの氷雪層2bに触れないように路面2aからやや上方に距離をあけて設けられる筺体である。この筺体は、内部が空洞となっており、路面2aの幅より大きな幅方向長さと複数の路面部材9を覆える長手方向長さを有し、冷風を吹き出せるように下方に向かって開口している。よって、冷却装置82においては、冷却空気源84で発生した冷風は冷却フード85の内側に入ってから路面2aの氷雪層2bに向かって該冷却フード85の下方から吹き付けられ、路面2aに形成された氷雪層2bは冷却装置82を通過する間に水平方向にムラなく冷却されて氷冷状態とされる。
【0038】
冷却装置82は、氷雪層2bの冷却効果を上げるために、冷却フード85を周回方向に沿って出来る限り長くとる方が好ましい。そのため、冷却フード85は、周回上流側の端部を供給手段75の供給口81に近づけるように、また周回下流側の端部を氷雪層押圧装置78の転圧ロール91に近づけるように、可能な限り長く形成される。なお、本実施形態においては冷却装置82に次いで周回下流側に転圧ロール91が設けられているため、冷却フード85の周回下流側の端部を転圧ロール91に近づけたが、転圧ロール91以外の装置が設けられている場合は、これらの装置に近づけるように周回下流側の端部を設ければ良い。
【0039】
断熱材83は、路面部材9の上部片12と着脱板60との間に設けられ、この層は上部片12よりも熱が伝わり難い断熱材料で形成されている。断熱材料には樹脂成形体、発泡樹脂成形体、または発泡コンクリートなどを用いることができる。この断熱材83は、着脱板60及び路面層61に下方から熱が上部片12を介して伝わり難くしており、支持機構3や駆動機構4で発生した熱が氷雪層2bに伝わることを可及的に防止している。
なお、氷雪層維持手段76は、断熱材83に代えて、上部片12と着脱板60との間をスペーサを介して離間させてこれらの間に空気の層を設けても良い。
【0040】
高さ調整装置77は、路面2a上に形成された氷雪層2bに調整刃90を上方から当てて氷雪層2bの表面を削りながら高さ(層厚)を所定値に設定する装置である。高さ調整装置77は、具体的には、路面2aを挟んで左右両脇にそれぞれ立設される起立部材86、86と、路面2a上方に設けられて左右の起立部材86、86の上端同士を連結している天板部87と、天板部87に取り付けられた調整ハンドル88と、天板部87より下方に伸びる左右の案内シャフト89、89と、左右の両端を挿通する案内シャフト89に案内されると共に調整ハンドル88を回転させるとネジ機構によって昇降する昇降部材90とを有している。この昇降部材90は、下側に路面部材9の幅方向に沿って水平方向に伸びる刃を備えており、この刃によって氷雪層2bの表面を削ったり均したりできるようになっている。
【0041】
高さ調整装置77は、調整ハンドル88を回転させることで左右一対の案内シャフト89、89に沿って昇降自在とされた昇降部材90が天板部87に対して上下に移動し、路面2aとの相対距離を調整する機構となっている。これによって、路面2a上に形成された氷雪層2bの表面を平滑化すると共に氷雪層2bの高さ(厚み)を適宜調整できるようになっている。
高さ調整装置77は、本実施形態では氷雪層押圧装置78の転圧ロール91より周回方向下流側であって転動体保持装置5の転動体Tより周回方向上流側の直線部7に1箇所設けられており、これによって氷雪層押圧装置78の転圧ロール91により押圧された氷雪層2bの表面を均して転動体保持装置5の転動体Tが同じ状態で氷雪層2bに接地するようにしている。しかしながら、高さ調整装置77は供給手段75の供給口81より周回方向上流側に設けられても良いし、環状体2の直線部7の複数箇所に設けられても良い。
【0042】
氷雪層押圧装置78は、供給手段75の周回方向下流側で路面2a上に形成された氷雪層2bを転圧ロール91を用いて上方から押圧する装置である。氷雪層押圧装置78は、具体的には、路面2aを幅方向に横切るように設けられる転圧ロール91と、この転圧ロール91を回転自在に保持する左右一対の軸受部92、92と、左右のそれぞれの軸受部92を昇降自在に保持すると共にシリンダ等の昇降駆動手段の作用により軸受部92を介して転圧ロール91を下方に向けて所定の力で押圧する支持部93とを有している。従って、この氷雪層押圧装置78により転圧ロール91が一定の圧力で路面2a上の氷雪層2bを押圧し、氷雪層2bを圧縮(圧雪)状態とすることが可能である。
【0043】
氷雪層押圧装置78があるので、供給直後の雪質の氷雪層2bで形成された路面2aが直線部7から屈曲部8にさしかかって当該路面2aに遠心力が作用しても、この氷雪層押圧装置78により供給直後の雪質の氷雪層2bが路面部材9上に又は既に形成されている氷雪層2b上に直線部で押さえつけられているため、氷雪層2bが屈曲部8で脱離することが抑制される。また、この氷雪層押圧装置78は、供給直後の雪質の氷雪層2bを強く押し固めて圧雪質の氷雪層2bを形成し、この圧雪質の氷雪層2bを圧雪路面として雪上走行試験を行うこともできる。
【0044】
上述の構成を具備して成る転動体試験装置1は、以下に示す方法で氷雪上走行性能試験を行うことができる。
路面2aに氷雪層2bを形成する場合は、まず駆動機構4を作動させ、スプロケット42を介して環状体2の各路面部材9へ駆動力を伝える。これにより環状体2が支持機構3に沿って環状に周回移動を始めるようになり、それぞれの路面2aは直線部7と屈曲部8とを交互に通過しながら周回移動する。
本実施形態においては、環状体2の直線部7に周回上流側から供給手段75、氷雪層維持手段76の冷却装置82、氷雪層押圧装置78、高さ調整装置77、転動体保持装置5が順に設けられている。よって、直線部7に差しかかった路面2aには氷雪層素材26が所定の厚みで供給されてまず氷雪層2bが形成される。次に、この氷雪層2bは氷雪層押圧装置78により所定の密度(かたさ)に押し固められ、さらに高さ調整装置77により所望の厚みに調整される。この氷雪層素材26の供給から高さ調整装置77による氷雪層2bの厚み調整は、路面部材9を周回させながら連続的にかつ複数に亘って行われ、氷雪層2bが所望の性状や厚みとされる。その後に転動体保持装置5により転動体Tを氷雪層2bに接地させて転動体Tの挙動が計測される。
【0045】
氷雪上走行性能試験を行う場合は、積雪してから間もない路面(新雪路面)を試験する場合のように直線部7で氷雪層形成手段6により氷雪層2bを形成してすぐに転動体保持装置5により転動体Tを氷雪層2bに接地させることもできるし、例えば凍結路面を試験する場合のように予め路面2aを周回させつつ連続的に氷雪層2bを形成して所望の氷雪層2bが得られてから転動体保持装置5により転動体Tを氷雪層2bに接地させることもできる。
本発明の転動体試験装置1においては、各路面部材9は凸状円弧部14と凹状円弧部15とが微小な隙間を生じるか、又は生じないか程度の馴染み具合となって、互いに接近した状態で連結されるようになっている。即ち、互いに隣り合う路面部材9の周回移動方向についての相対距離を保つようにしているので、路面部材9が水平状態のまま環状回転する部分での環状体2の周回移動は円滑となり、耳障りな騒音や振動、また摩耗、亀裂、カケ等の発生が防止できるだけでなく、路面2a上に氷雪層2bを形成しても氷雪層2bが剥がれ落ちたりすることが防止乃至抑制される。
【0046】
また、周回移動する環状体2は、各路面部材9が水平状態を維持しており(下方を向くことがなく)、従来の金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式とは異なってこの路面2aが上下に姿勢を変えるような巻掛け部分を通過することはない。また、支持機構3に設けられた調整機構32を適切に調整することに伴って伸びやガタツキの発生しない最良のテンションに維持されるので、路面2a上に形成した氷雪層2bに余計な衝撃を与える恐れがなく、従来の金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式を採用する試験機では困難であった氷雪層2bを連続的に形成することが可能となる。
【0047】
さらに、前記転動体試験装置1には環状体2に直線部7が設けられており、この直線部7に氷雪層形成手段6や転動体保持装置5が設けられているので、従来のターンテーブル方式の試験装置のように遠心力の作用で路面2aに形成された氷雪層2bが剥がれ落ちたり、或いは直線状の路面2a上を走行させるために設備を巨大化させたりする必要がない。その結果、直線状の路面2a上に氷雪層2bが形成された場合の氷雪上走行性能試験を容易に実施することができる。
前記転動体試験装置1は氷雪層維持手段76を備えることにより、路面2aが周回移動しても一旦形成された氷雪層2bを安定して路面2a上に性質を変えずに維持することができる。そのため、従来の試験機では困難であった積雪路面や凍結路面を繰り返し利用しての氷雪上走行試験であっても容易に行える。
【0048】
なお、本発明の転動体試験装置1は、互いに隣り合う路面部材9の周回移動方向についての相対距離を保つようにされており、隣り合う路面部材9同士がぶつかり合うことがない構造となっているため、各路面部材9の路面2aには実路面に多用されるアスファルトやコンクリートなどの衝撃に脆い材料を貼り付けて用いることができ、実路面における氷雪上走行状況をより忠実に再現できることになる。
また、本発明の転動体試験装置1は、路面部材9は路面2aが絶えず上方を向いたまま周回移動しているので、金属ベルトコンベヤ方式や金属クローラ方式のように路面2aがドラムや駆動輪等に巻かれて下を向くことがなく、一旦形成された氷雪層2bが路面2aから逆さに落ちることがない。その結果、氷雪層2bを路面2a上に安定して維持することができる。
[第2実施形態]
図10〜図13は、本発明に係る転動体試験装置1の第2実施形態を示している。この第2の実施形態は図10に示すように、環状体2を平面視(上面視)して環状体2が水平方向に環状回転するものである点で第1実施形態と同じである。
【0049】
この第2実施形態が上記した第1実施形態の転動体試験装置1と最も異なるところは、支持機構3において、両側の円弧部分3bに対し周回移動方向に沿って90°のひねりを生じさせるようにしている点にある。このため、図10に示す転動体試験装置1の環状体2においては、一方の直線部分3a(即ち、転動体Tを転動可能とさせるために環状体2に形成させる路面2aの形成領域)では環状体2を平面視して水平な路面2a(上向きの路面2a)をなしているのに対して、他方の直線部分3aでは紙面貫通方向に路面2a横に起こしたような姿勢になっている。
【0050】
このようにすることで、環状体2が支持機構3の円弧部分3bを周回移動するときに生じる遠心力を支持機構3で受けやすくして支持機構3の案内面での遠心力への耐力性を向上させることができ、遠心力が作用して路面2aに対して氷雪層2bがずれたり剥がれたりするのを防止できるようになる。
また、第2実施形態の転動体試験装置1は、氷雪層押圧装置78を直線部7に備えている。この氷雪層押圧装置78により、供給直後の氷雪層2bを押し固めて氷雪層2bを路面2a上に確実に保持することができる。その結果、他方の直線部分3aにおいて氷雪層2bが紙面貫通方向に路面2a横に起こしたような姿勢になっても、氷雪層2bが路面部材9から落下しにくくなり、氷雪層2bがずれたり剥がれたりするのを防止できるようになる。
【0051】
第2実施形態の環状体2は、第1実施形態とは形状が異なる路面部材9を有している。即ち、路面部材9は、板状の本体片50(上部片12と下部片13とで階段状になったものではない)を有したものとなっている。
本体片50の路面2aの周回方向の一方側には、凸状円弧部14が設けられ、他方側には、凹状円弧部15が設けられている。路面2aが上を向く領域では、それぞれ隣り合う本体片50のうち、一方の本体片50の凸状円弧部14が他方の本体片50の凹状円弧部15に嵌り込むことで、隣り合う本体片50間の継ぎ目を除いて連続的な路面2aが形成されるようになっている。
【0052】
また、路面部材9は、本体片50の下面に突出状に設けられたカプラー台51を有しており、このカプラー台51に連結部材10が取り付けられている。上述したように、本体片50の凸状円弧部14が隣り合う他の路面部材9の本体片50の凹状円弧部15に嵌め込んだ状態で、連結部材10によって互いに隣り合うカプラー台51を連結することで、互いに隣り合う路面部材9は連続的に連なるようになっている。
具体的には、連結部材10は、互いに隣り合う路面部材9における一方のカプラー台51から他方のカプラー台51へと延びる連結ロッド52と、この連結ロッド52の先端に設けられた自在継ぎ手(ユニバーサルジョイント、ボールジョイントなど)53とを有しているものとなっている。この自在継ぎ手54を介して一方のカプラー台51の連結ロッド52が他方のカプラー台51に接続されている。
【0053】
なお、環状体2が支持機構3の円弧部分3bを走行する際、互いに隣り合う路面部材9は、継ぎ目部分において互いにスライドする方向にずれるような動きをする。その動きにより、互いに隣り合う路面部材9の周回移動方向についての相対距離を保つようになっているので、円弧部分3bにおいても互いに隣り合う路面部材9がぶつかり合うことがなく、路面部材9同士の衝突に由来する振動等が発生することもない。そのため、路面部材9の継ぎ目部分の摩耗、亀裂、欠け等の発生を防止乃至抑制したり、また路面2aとして路面部材9に実路面で多用されるコンクリートやアスファルト等の衝撃に脆い材料を利用できるだけでなく、路面2aに形成された氷雪層2bを路面2aが周回移動しても安定して維持することが可能になる。
【0054】
また、カプラー台51には、3つの箇所に分けてガイドローラ54が設けられている。1カ所はカプラー台51の路面部材9(本体片50)とは反対側に設けられており、残りはカプラー台51の両サイドに設けられている。これに対して支持機構3は、各ガイドローラ54、55をカプラー51の周回移動方向に沿って回転自在に案内すると共に、各ガイドローラ54,55の回転面を支持する断面コ字状をした溝型ガイドレール56を有したものとなっている。
更に第2実施形態では、駆動機構4としてリニアモータ57を採用している。リニアモータ57としては、水平状態の直線部分3a(即ち、転動体Tを転動可能とさせるために環状体2に形成させる路面2aの形成領域)に対応させて推進用コイル72を設けている。路面部材9の下面には、推進用コイル72に対応する推進力発生用の磁石(図示略)が搭載されている。
【0055】
第2実施形態に駆動機構4としてリニアモータ57を採用する利点は、スプロケット方式では避けられないピン接触音やピン摩耗、試験雰囲気中でのピン潤滑が回避できる事にある。
なお、第2実施形態におけるその他の構成、実質的な動作及び作用、効果は、上記第1実施形態と略同様であり、また第3実施形態においてもリニアモータ57が採用されているので、ここでの詳説は省略する。
[第3実施形態]
図14〜図16は、本発明に係る転動体試験装置1の第3実施形態を示している。この第3実施形態は、基本的には第1実施形態(図1〜図9参照)と略同じであるが、駆動機構4として第2実施形態と同様に環状体2を全周的に浮上させた上で推進力を付与するリニアモータシステムを採用している点が第1実施形態と異なっている。
【0056】
第3実施形態の駆動機構4は、路面部材9を浮上させる浮上用コイル70と、路面部材9の浮上を制限する浮上制限コイル71と、路面部材9を介して環状体2に推進力を与える推進用コイル72と、路面部材9の支持機構3に対する横方向の移動を制限する軌道案内コイル73と、路面部材9側に設けられた磁石(図示略)とを有している。駆動機構4の各コイル70〜73が制御されることで、路面部材9に推進力が付与され路面部材9、即ち、環状体2が周回移動する。
第3実施形態に駆動機構4としてリニアモータ57を採用する利点は、路面部材9が浮上状態とされていることで、路面2a上に形成された氷雪層2bに熱がさらに伝わり難くなる点にある。つまり、第3実施形態においては、路面部材9が支持機構3と接触することを極力なくすことができるので、路面部材9と支持機構3との摩擦による発熱が抑制される。つまり、路面部材9と浮上用コイル70との間のみならず浮上制限コイル71や軌道案内コイル73との間にもすき間(空気層)が形成されており、路面部材9が他の部材と接触(摩擦)して発熱することも防止でき、更に空気層による断熱作用も得ることのできる構造となっているので、氷雪層2bの維持効果は格別のものとなる。
【0057】
第3実施形態におけるその他の構成、実質的な動作及び作用、効果は、上記第1実施形態と略同様であるので、ここでの詳説は省略する。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
即ち、上述の実施形態においては転動体試験装置1は氷雪層2b上を転動する転動体Tの挙動を評価するのに用いられていたが、この転動体試験装置1は転動する転動体Tから氷雪層2bを有する路面2aがどのような影響を受けるかを評価する路面試験装置としても利用することができる。
【0058】
また、氷雪層形成手段75で供給される氷雪層素材26は、氷、雪(人工雪と天然雪の双方を含む)、あるいはこれらを混合したみぞれ状とするのが好ましいが、これらに代えて水を供給することもできる。この場合は、冷却装置82による冷却能力を上げて氷雪層2b(例えば、凍結路面)を形成することができ、冷却装置82が氷雪層形成手段75の一部として機能することになる。
また、路面部材9の少なくとも一部は、転動体Tのある側から反転動体側へ(言い換えれば、路面部材9の上下方向に)可視光線を透過するガラスや透明プラスチックなどの部材で形成することができる。このようにすると、路面部材9の下方から転動体Tの氷雪層2bへの接触状態を確認又は観察することができることになり、様々な試験、測定が可能となる。
【0059】
支持機構3や駆動機構4の組み合わせは特に限定されるものではなく、例えば第1〜第3実施形態で説明した各駆動機構4をそれぞれ他の実施形態の駆動機構4として置換するといったことが可能である。例えば、第3実施形態では支持機構3の周方向全周に亘り、リニアモータ57の各種コイル72が設けられているが、十分に推進力を得ることができるものであれば第2実施形態のように支持機構3の周方向一部に各種コイル72を設けるようにしてもよい。路面部材9に用いる着脱板60には各種材料を用いることができ、これによって様々な環境の路面2aを形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る転動体試験装置の第1実施形態を一部破砕して示した平面図である。
【図2】図1に対応する一部破砕正面図である。
【図3】転動体試験装置の要部断面図である。
【図4】環状体の一部を拡大して示した平面図である。
【図5】図2のB部を拡大し一部破砕して示した断面図である。
【図6】路面部材を示した斜視図である。
【図7】路面部材の平面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】調整機構の伸縮部を示した平面断面図である。
【図10】本発明に係る転動体試験装置の第2実施形態を示した平面図である。
【図11】図10に対応する一部破砕正面図である。
【図12】図10のD部を拡大し且つ破砕して示した図である。
【図13】第2実施形態の転動体試験装置の要部断面図である。
【図14】本発明に係る転動体試験装置の第3実施形態を一部破砕して示した平面図である。
【図15】図14に対応する一部破砕正面図である。
【図16】第3実施形態の転動体試験装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 転動体試験装置
2 環状体
2a 路面
2b 氷雪層
3 支持機構
4 駆動機構
5 転動体保持装置
6 氷雪層形成手段
7 直線部
26 氷雪層素材
75 供給手段
76 氷雪層維持手段
77 高さ調整装置
78 氷雪層押圧装置
82 冷却装置
83 断熱材
T 転動体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体を転動させることが可能な路面を有する環状体と、
前記環状体を上面視で水平方向に環状回転自在に支持し且つ該環状体を少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように支持する支持機構と、
前記環状体を駆動させて周回させる駆動機構と、
前記転動体を回転自在に支持し且つ当該転動体を前記直線状の路面に対して近接離反させる転動体保持装置と、
前記路面上において氷層及び/又は雪層からなる氷雪層を形成する氷雪層形成手段と
を有していることを特徴とする転動体試験装置。
【請求項2】
前記環状体は、路面を有する複数の路面部材と、互いに隣り合う路面部材の相対距離を保持するように、前記複数の路面部材を無端状に連結する連結部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載の転動体試験装置。
【請求項3】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層を形成すべく路面に氷雪層素材を供給する供給手段と、路面上に形成された氷雪層を維持する氷雪層維持手段とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の転動体試験装置。
【請求項4】
前記氷雪層維持手段は、前記氷雪層を冷却する冷却装置を有していることを特徴とする請求項3に記載の転動体試験装置。
【請求項5】
前記路面は、環状体上面に形成される路面層の上面であって、
前記氷雪層維持手段は、前記路面層下側に設けられて当該路面にその下方側に位置する環状体から熱が伝達するのを防止する断熱材を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の転動体試験装置。
【請求項6】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層の高さを調整する高さ調整装置を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の転動体試験装置。
【請求項7】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層を押し固める氷雪層押圧装置を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の転動体試験装置。
【請求項8】
前記氷雪層形成手段は前記直線状で上向きの路面における周回方向上流側に備えられており、該路面における前記氷雪層形成手段より周回方向下流側に転動体保持装置が備えられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の転動体試験装置。
【請求項1】
転動体を転動させることが可能な路面を有する環状体と、
前記環状体を上面視で水平方向に環状回転自在に支持し且つ該環状体を少なくとも一部の路面が直線状で上向きになるように支持する支持機構と、
前記環状体を駆動させて周回させる駆動機構と、
前記転動体を回転自在に支持し且つ当該転動体を前記直線状の路面に対して近接離反させる転動体保持装置と、
前記路面上において氷層及び/又は雪層からなる氷雪層を形成する氷雪層形成手段と
を有していることを特徴とする転動体試験装置。
【請求項2】
前記環状体は、路面を有する複数の路面部材と、互いに隣り合う路面部材の相対距離を保持するように、前記複数の路面部材を無端状に連結する連結部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載の転動体試験装置。
【請求項3】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層を形成すべく路面に氷雪層素材を供給する供給手段と、路面上に形成された氷雪層を維持する氷雪層維持手段とを有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の転動体試験装置。
【請求項4】
前記氷雪層維持手段は、前記氷雪層を冷却する冷却装置を有していることを特徴とする請求項3に記載の転動体試験装置。
【請求項5】
前記路面は、環状体上面に形成される路面層の上面であって、
前記氷雪層維持手段は、前記路面層下側に設けられて当該路面にその下方側に位置する環状体から熱が伝達するのを防止する断熱材を有していることを特徴とする請求項3又は4に記載の転動体試験装置。
【請求項6】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層の高さを調整する高さ調整装置を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の転動体試験装置。
【請求項7】
前記氷雪層形成手段は、前記氷雪層を押し固める氷雪層押圧装置を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の転動体試験装置。
【請求項8】
前記氷雪層形成手段は前記直線状で上向きの路面における周回方向上流側に備えられており、該路面における前記氷雪層形成手段より周回方向下流側に転動体保持装置が備えられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の転動体試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−196911(P2008−196911A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31012(P2007−31012)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
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