説明

転炉の炉体

【課題】付着地金となるスピッティング粒鉄が炉口へ付着し難い転炉の炉体を提供する。
【解決手段】上底吹きの操業を行う転炉の炉体の炉体高さH,炉口内径R,炉体の直胴部内径D,炉体を出鋼側へ90°傾けた際の炉体が溶鋼を保持できる炉内保持容積Vi,炉内全容積Voが、2.828ln(R)+5.252≦H≦2.828ln(R)+7.3958,H/D≧1.4,Vi/Vo≧0.06を満たすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上底吹き転炉の炉体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すように転炉の操業においては、炉体内に溶銑を装入し、炉体の炉口へ上吹き用のランスを挿入した後に、このランスから溶銑に向けて酸素ガスを吹き付けることによって吹錬を行っている。このとき、転炉の操業では、炉体の底部からガスを吹き込んで溶銑を攪拌しながら酸素ガスを吹き込むようにしている。
ランスから酸素ガスを吹き込む際、酸素ガスが溶銑の表面に衝突するため、溶銑の一部がスピッティング粒鉄となって炉口へと飛んでいき、このスピッティング粒鉄が炉口へ付着して地金(以降、炉口に付着した地金のことを付着地金という)となる。
【0003】
炉口周りに付着地金が付着して堆積すると炉口が小さくなってしまうことから、例えば、炉体内にスクラップを装入する際、スクラップを炉体内へ入れるスクラップシュートが炉口に詰まってしまってスクラップを炉体内へ入れられない問題が発生する。
また、溶銑(溶鋼)の温度[℃]の測定を行うサブランスを炉体内へ挿入する際、前記サブランスが付着地金に衝突してしまう危険性がある。また、チャージ数が多くなるにつれて炉体の底部(炉底部)の耐火物が溶損して減少する結果、次第に相対的に炉口近傍が重くなり、転炉が起きあがりにくくなる傾動トリップが発生する恐れがある。
【0004】
このように、炉口周りに付着地金が堆積すると様々な問題を引き起こすことから転炉の操業においては付着地金が所定以上堆積すると、例えば、酸素パイプを用いて炉口に付着した付着地金を溶断した後、スクラップシュートを用いて付着地金を除去したり、専用の地金溶解ランスを用いて溶解したりしている。
【特許文献1】特開2005−28939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、付着地金の除去作業を行う間は、転炉の操業を停止しなければならず、生産性が低下してしまう問題がある。また、付着地金の除去作業の際に、炉口の絞り部の耐火物が地金と共に脱落することがあり、転炉寿命が短くなる問題がある。
このような問題に鑑み、転炉の操業においては、炉口周りでの付着地金の堆積速度を低下させる、即ち、付着地金となるスピッティング粒鉄が炉口へ付着し難くすることで前記除去作業をできるだけ少なくすることが望まれている。そこで、ランスチップの改善などを行うことで、スピッティング粒鉄が炉口へ付着しないようにする技術が考えられているが、十分な効果が得られていないのが実情である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、付着地金となるスピッティング粒鉄が炉口へ付着し難い転炉の炉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、上底吹きの操業を行う転炉の炉体が、式(1)〜式(3)を満たす形状の点にある。
【0008】
【数2】

【0009】
このようにすることで、付着地金となるスピッティング粒鉄が炉口へ付着し難くなり、炉口付近における付着地金の堆積速度(成長速度)を低下させることができ、付着地金の除去作業を少なくすることができる。
式(1)〜式(3)の導出する考え方について図1〜6を用いて説明する。
まず、使用する変数について説明する。図1に示すように、炉体の炉内高さHiを、炉口から湯面までの距離とする。詳しくは、炉内高さHiは、炉体内に溶銑,冷銑,故銑,鉄屑などの主原料を装入した際の湯面から炉口までの距離である。炉体の直胴部内径Dを炉体の直胴部内に耐火物を設けたときの耐火物間の距離(内径)とする。また、炉体高さHを炉体の底部に設けた耐火物の上面から炉口までの距離とし、炉口内径Rを炉体の絞り部の端部内径、即ち、絞り部の最端部(炉口縁)に設けた耐火物間の(距離)内径とする。
【0010】
図2に示すように、炉内保持容積Viを、炉体を出鋼側へ90°傾けた際に炉体が保持可能な溶鋼容積(言い換えれば、溶銑容積)、即ち、炉体を出鋼側へ90°傾けた際に炉口からスラグ、さらには、溶鋼が出ないようにできる容積とする。炉内容積Voを炉体内の全容積とする。
以下、具体的な導出方法について説明する。
発明者は、過去の操業において炉口へ付着した付着地金を採取し、その断面積や組成分析などを行った結果、スピッティング粒鉄の粒径が1mm程度のものが付着地金となることが分かった。
【0011】
そこで、発明者は前記粒径が1mm程度のスピッティング粒鉄が炉口に付着しない炉内高さHiと炉体の炉口内径Rとについて検討した。具体的には、図3に示すように、炉口内径Rを横軸にとり、炉内高さHiを縦軸にとり、粒径が1mmのスピッティング粒鉄が炉口に付着しない各炉内高さHiと炉口内径Rとを複数の実験や物理的な計算により算出し、図3にプロットした。
前記物理的な計算は、図8に示すように、酸素を炉体内に吹き込んだ状態でのスピッティング粒鉄の速度vと、酸素を吹き込んだ際に発生する上昇気流(COガス)の速度V(空塔速度)と、抗力と、重力とに着目し、これらを用いて、スピッティング粒鉄が炉口に付着しない運動方程式をたてて、これを解くこととしている。なお、スピッティング粒鉄を球状とした。
【0012】
図3に示すように、例えば、ランスの送酸速度が700Nm3/分であるとき、粒径1mmのスピッティング粒鉄が炉口に付着しない炉内高さHiと炉口内径Rとは、ラインK1(以降、未付着ラインK1とする)になった。この場合は、炉内高さHiと炉口内径Rとを未付着ラインK1上になるように決定することで、スピッティング粒鉄が付着し難い炉体を構成できることが分かった。
ここで、前記炉口内径Rは炉体直胴部内径Dで示すことも可能であって、炉内高さHiを炉体高さHで示すことも可能であるため、図3で炉口内径Rを炉体直胴部内径Dに置き換えると共に、炉内高さHiを炉体高さHに置き換えたとして、炉体高さHと炉体直胴部内径Dとの関係について考える。
【0013】
ラインK1によって、炉体高さHと炉体直胴部内径Dとを決定すると様々な内容積の炉体を構成することができるが、炉体の内容積は、1チャージ当たりに精錬する量に合わせて決定するのが妥当である。
そこで、発明者は図3に炉内容積が一定の炉内容積一定ラインV1を描き、当該炉内容積一定ラインV1と前記未付着ラインk1との接点P1を求めた。
炉口内径R(炉体直胴部内径D)と炉内高さHi(炉体高さH)との関係が点P1になるとき、炉内容積が一定の炉体では最もスピッティング粒鉄が付着し難い炉体となることが分かる。
【0014】
ここで、前記点P1付近を見てみるとその付近で前記未付着ラインK1と炉内容積一定ラインV1とは近接又は重なっており、未付着ラインK1と炉内容積一定ラインVとの近接点P2,P3においても前記点P1と同等の効果を得ることができる。
したがって、未付着ラインK1において点P2〜P3の範囲で、炉口内径Rと炉内高さHiとを決定することが好ましい。
上記と同じように、操業条件などを考慮して複数の未付着ラインと、複数の炉内容積一定ラインとの近接点を複数求め、これらの近接点に対する近似曲線を求めると、図3に示すように、曲線L1,L2になった。
【0015】
図4に示すように、図3の炉内高さHiを炉体高さHに置き換えて、前記曲線L1,L2をフィッティングすると曲線L3,L4になった。
この曲線の近似式を求めると、曲線L3は2.828ln(R)+7.3948となり、曲線L4は2.828ln(R)+5.252となった。
したがって、炉体高さHが曲線L3及び曲線L4で囲まれる領域(最適な領域)にあるとき、即ち、前記式(1)を満たすようにすれば付着地金の堆積速度(成長速度)を低下させることができる。
【0016】
さて、炉体高さHと炉体直胴部内径Dとの関係を考えてみると、例えば、炉体高さHに対して炉体直胴部内径Dが大きくなり過ぎると、溶銑を装入した際に溶銑の深さが浅くなると共にその深さに対する溶銑の湯幅が大きくなりすぎるため、操業の際に溶銑の攪拌などが十分に行えない問題がある。
そこで、発明者は、溶銑を装入した際に溶銑の深さを所定以上確保できるようにすると共に、その溶銑の湯幅が所定以上大きくならないようになる炉体高さHと炉体直胴部内径Dとの縦横比率(H/D)を実験により求めた。転炉の操業において、前記縦横比率をH/D≧1.4[式(2)]にすれば、溶銑の攪拌が十分に行えることが分かった。
【0017】
さて、通常、炉体内の溶鋼(溶銑)を炉体から出鋼(出湯)するとき、炉体を出鋼側に傾けて炉体の出鋼口(出湯口)から出鋼する。溶鋼を出鋼する際、スラグが炉口から出ると、溶鋼を受ける溶鋼鍋内のスラグ量が多くなり溶鋼の品質低下を招く、さらに炉口から流出したスラグが溶鋼鍋に入らず溶鋼鍋を搬送する受鋼台車を焼損する恐れがあるため、スラグが炉口から出ないようにする必要がある。
溶鋼を出鋼する際、即ち、炉体を出鋼側に傾けたとき、スラグが炉口から出ないようにする炉内容積Voと炉内保持容積Viとを実験により調べた。これらの関係がVi/Vo≧0.06にすると、出鋼の際に炉口からスラグが出ることはなく、スムーズに出鋼作業を行うことができた。
【0018】
なお、式(1)〜式(3)は、吹錬を行う種類に関わらず適用できる。即ち、上記で示した炉体は、脱りん処理のみを行う炉体にも適用できるし,脱炭処理のみを行う炉体にも適用できる。当然の如く、脱りん処理及び脱炭処理の両方を行う炉体にも適用できるし、上底吹きの操業を行う転炉の炉体であればすべてのものに適用可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、付着地金となるスピッティング粒鉄が炉口へ付着しにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1は本発明の転炉の炉体の全体側面図を示している。図1に示すように本発明の転炉は、転炉の上側から酸素を吹きつけ且つ、転炉の底部からガスを吹き込むことができる上底吹き転炉であり、転炉の炉体1内に溶銑(溶鋼)やスクラップ等が収容可能となっている。
前記炉体1は有底で筒状に形成された鉄皮2と、この鉄皮2の内部に設けられた複数の耐火物3(耐火レンガ)から構成されている。炉体1の底部4にはガスを吹き込むための底吹き羽口5が設けられ、この底吹羽口5(炉体の底部4)に対向する側に炉口6が形成されている。炉口6に酸素などを吹くための上吹きランス7が挿入可能になっている。
【0021】
鉄皮2は、底部10と、この底部10から炉口6側にいくにしたがって徐々に内径及び外径が大きくなる拡大部11と、この拡大部11から連続していて内径及び外径が略一定の直胴部12と、この直胴部12から炉口6側にいくにしたがって徐々に内径及び外径が小さくなる絞り部13とを備えたものとなっている。
前記耐火物3は、鉄皮2の底部10,拡大部11,直胴部12及び絞り部13に沿うように順番に鉄皮2内に貼り付けられ、貼り付けられた耐火物3の内面が鉄皮2の内面に略沿ったものとなっている。鉄皮2の直胴部12に溶銑8(溶鋼)を出湯(出鋼)するための出湯口9(出鋼口)が形成されている。
【0022】
以上のことから、炉体1には、鉄皮2及び耐火物3によって、外径又は内径が徐々に大きくなる炉拡大部15が形成され、この炉拡大部15に連続して形成され外径又は内径が略一定となる炉直胴部16と、この炉直胴部16から炉口6にいくにしたがって外径又は内径が小さくなる炉絞り部17とがそれぞれ形成されている。そして、前記炉拡大部15、炉直胴部16及び炉絞り部17の内径や炉内高さは、鉄皮2に耐火物3を貼り付ける際に、耐火物3の厚みT1を調整することによって自在に変更することができる。前記厚みT1は、鉄皮2の内面に対向する対向部から径内側までの距離である。
【0023】
転炉の炉体1の形状は式(1)〜式(3)を満たすように設定されている。
【0024】
【数3】

【0025】
式(1)〜式(3)において、炉体高さHは、炉口6から炉体1の底部4に貼り付けた耐火物3の内面14(上面)までの距離である。詳しくは、図1に示すように、炉体高さHは炉体1の左右方向中心位置での高さとする。炉口内径Rは炉絞り部17(鉄皮2の絞り部13)の最端部に設けた耐火物3の内径、詳しくは、左側の最端部耐火物3aの内面から右側の最端部耐火物3bの内面までの距離である。
また、炉体直胴部内径Dは、炉直胴部12に設けた耐火物3の内径、詳しくは、左側の炉直胴部16に位置する耐火物3cの内面から右側の炉直胴部16に位置する耐火物3dの内面までの距離であり、前記炉内保持容積Viは、炉体1を出鋼側(出湯側)へ90°傾けた際に炉体1が溶銑を保持できる容積である。炉内容積Voは炉体内の全容積(耐火物3で取り囲まれた容積)である。
【0026】
式(2)は実験により求めたもので、実験炉で炉内高さHと炉体直胴部内径Dとを変化させながら複数の脱りん処理を行った結果から求めた。
図5は、実験結果をまとめたもので、炉体高さHを炉体直胴部内径Dで割った縦横比率(H/D)を横軸にとり、縦軸に脱りんの効率を縦軸にとって、これらの実験データをプロットしたものである。なお、脱りん効率は、脱りん開始時のりん濃度を[P]iとし、脱りん終了時のりん濃度を[P]fとし、開始時のりん濃度[P]iから終了時のりん濃度[P]fを引いて、この値を開始時のりん濃度[P]iで割ることにより、脱りんの割合を百分率で示したものである。
【0027】
図5に示すように、前記縦横比率が1.4以上であるときは殆どの脱りん処理において脱りん効率(脱りん割合)が60%を超えており、脱りん処理における攪拌には問題がなかった。
式(3)は式(2)と同様に実験により求めたもので、実験炉で炉内保持容積Viと炉内容積Voとを変化させながら複数の脱りん処理を行った結果から求めた。
図6は、実験結果をまとめたもので、炉内保持容積Viを炉内容積Voで割った保持率(Vi/Vo)を横軸にとり、出鋼時間を縦軸にとって、これらの実験データをプロットしたものである。
【0028】
図6に示すように、前記保持率が0.06未満であると、出鋼(出湯)の際にスラグSが炉口6から流出してその影響で出鋼時間が6分以上かかってしまい問題があった。保持率が0.06以上であるときは、スラグSが炉口6から流出することもなく、出鋼時間は6分以内にすることができた。
なお、上記では、保持率を0.06以上にする、即ち、Vi/Vo≧0.06にすると良いことを出鋼の観点(脱炭処理を行った後に溶鋼を出鋼するという観点)から説明したが、湯面上に脱りん処理の際にも脱炭処理と同じようにスラグSが形成される。
【0029】
したがって、脱りん処理を行った後の出湯の際にもスラグSが炉口6からでないようにする必要があるので、Vi/Vo≧0.06の関係は脱炭処理の際に限定されず、脱りん処理を行って溶銑を出湯する際に保持率を0.06以上にするとよい。言い換えれば、Vi/Vo≧0.06にするということは、脱りん処理又は脱炭処理のどちらにでも適用することができる。
図7は、炉体の形状を変えて操業を行った結果をまとめたものである。図7の実施例1,2は式(1)〜式(3)のすべてを満たす形状の炉体1(転炉)を形成して脱りん処理を伴いつつ脱炭処理を行ったもので、比較例1〜7は、少なくとも式(1)〜式(3)の一つを満たさないように脱りん処理を伴いつつ脱炭処理を行った。なお、実施例及び比較例において、転炉へ装入した溶銑の[P]濃度は、0.030〜0.040% と、P規格の上限である0.020%より高いものを使用し、脱りん処理が必要な条件で行った。また、酸素を吹き込むランスは、その孔数が6個、その孔径が42mm、送酸の吐出角度15°、酸素を送り出す送酸素速度は3.0Nm3/分・t、ランスの高さ2.8m(湯面からランス先端までの高さ),底吹きガスの流量(速度)を0.06Nm3/分・tとして、各実験例及び比較例の操業条件を同じにした。
【0030】
各実施例及び比較例では、溶鋼1ton当たりのダスト発生量(kg/t),地金取り間隔(ch/回),即ち、付着地金の除去を終了してから再度除去作業を開始するまでに操業できる総チャージ数、放熱ロス(Mcal/t),溶鋼1ton当たりの溶製によって耐火物3が溶損する量を示す耐火物原単位(kg/t)、脱りん効率(脱P率),出鋼時間(分/ch)を調べた。
図7に示すように、式(1)を満たす炉体1では地金取り間隔が18〜20ch/回となり、式(1)を満たさない炉体1では地金取り間隔が4〜8ch/回となった。
【0031】
したがって、式(1)を満たす炉体1の地金取り間隔が式(1)を満たさない炉体1に比べ、地金取り間隔が大幅に大きくなった。即ち、炉体1の形状を式(1)を満たすようにすることで、付着地金の除去を終了してから再度除去作業を開始するまでの総チャージ数を増加させることができた。
式(2)を満たした炉体1では、放熱ロスが7.2〜10Mcal/tとなり、式(2)を満たしていない炉体1での放熱ロスの値が12Mcal/tや14Mcal/tのものに比べ、放熱ロスが小さくなった。また、式(2)を満たした炉体1では、脱りん効率(脱P率)が60%以上であり、式(2)を満たしていない炉体1での脱りん効率が50%前後のものに比べ、脱りん効率が高くなった。さらに、式(2)を満たした炉体1では、耐火物原単位が0.3〜0.5kg/tとなり、式(2)を満たしていない炉体1の耐火物原単位の値が0.6のものに比べ、耐火物原単位が小さくなった。
【0032】
式(3)を満た炉体1では、出鋼時間が他の炉体1に比べて短く6分以内となった。
以上、式(1)〜式(3)のすべてを満たす炉体1が、付着地金が炉口6に付着し難く、放熱ロスや耐火物3の溶損も少なく、脱りん効率が高いうえに、出鋼時間も短くすることができる。
本発明の炉体1は、上記実施の形態に限定されるものではない。即ち、操業を行うことによって耐火物3の溶損し、その結果、前記炉内高さH、炉口内径R、炉体直胴部内径D、炉内保持容積Vi及び炉内容積Voが変化した場合でも上記式(1)〜(3)を満たすように、鉄皮2内に貼り付ける各耐火物3の厚みT1を調整することにより、本発明の炉体1を形成することができる。即ち、製鋼工場に設置して操業を行っている既存の炉体1に対して適用可能であるし、製鋼工場等に新設する新しい炉体1にも適用可能である。新設する場合には、式(1)〜(3)を満たすように鉄皮2に新しい耐火物3を貼り付けるようにしたり鉄皮2の形状、或いは、厚みT2を設定すればよい。
【0033】
また、上記の説明では、縦横比率をH/D≧1.4にすれば良いことを脱りん処理の観点から説明したが、縦横比率の関係は炉体に入っている湯の攪拌に着目したものであるので、縦横比率をH/D≧1.4の関係は脱りん処理の際に限定されず、脱炭処理の際にも適用できる。言い換えれば、縦横比率をH/D≧1.4にするということは、脱りん処理又は脱炭処理のどちらにでも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】転炉の炉体の全体側面図である。
【図2】炉体を90°傾けたときの全体側面図である。
【図3】炉口内径と炉内高さとの関係を示す図である。
【図4】炉口内径と炉体高さとの関係を示す図である。
【図5】縦横比率と脱りん効率とを示す実験図である。
【図6】保持率と出鋼時間とを示す実験図である。
【図7】実施例及び比較例をまとめたものである。
【図8】酸素を吹きつけた際のスピッティング粒鉄の飛翔状態でのモデル図である。
【符号の説明】
【0035】
1 炉体
2 鉄皮
3 耐火物(耐火レンガ)
6 炉口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上底吹きの操業を行う転炉の炉体が、式(1)〜式(3)を満たす形状であることを特徴とする転炉の炉体。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−46116(P2007−46116A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232464(P2005−232464)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】