説明

転炉ダストの処理方法

【課題】転炉ダストの処理方法として、粗粒ダストを荷台に載せる作業時やその後の移動中に、周りに水が飛び散らないようにできる、作業効率が高い方法を提供する。
【解決手段】粗粒ダストを水とともに排出して山6を形成する地面5に、排水路8に接続された複数の溝7を形成する。水が粗粒ダストの山6の下部に溜まって溝7に入るため、短時間で水切りされる。粗粒ダストの山6からショベルカー9のショベル91で粗粒ダストをすくい上げる際に、ショベル91が溝7内に入らないため、溝7内の水と粗粒ダストはショベル91ですくい上げられない。これにより、ショベル91に水が入ることが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、転炉ダストの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、転炉の排ガスから湿式集塵法で粗粒ダストと細粒ダストを含む集塵水を回収し、この集塵水から粗粒ダストと細粒ダストを分離、回収して、製鉄材料にリサイクルすることが行われている。
例えば、図1に示すように、転炉ガス集塵装置1から出た集塵水をトラフ2に流し、その下流部に設けた粗粒分離機3で粗粒ダストを分離、除去した後に、細粒ダストをシックナー4で回収する。そして、除去された粗粒ダスト(例えば直径50μm以上のダスト)は、例えば、敷地内の地面5に水とともに排出されて一次置きされ、この粗粒ダストが堆積された山6から、粗粒ダストをショベルですくい上げてダンプカーの荷台に載せ、別の場所に移動している。
【0003】
この方法では、すくい上げ作業時にショベル内に粗粒ダストとともに水が入るため、荷台に粗粒ダストと水を載せて運んでいる。そのため、この方法には、移動中に水を道路に撒き散らし、荷台に載せる作業時にも水が周りに飛び散るなどの問題がある。また、時間とともに、一次置きされた粗粒ダストの山の下部に水が溜まるため、排水路までの間の地面が水浸しになることもある。
【0004】
さらに、ショベルが地面を削って凹部が生じると水たまりができるため、これを避ける目的で地面に鉄板を敷く場合があるが、この場合には、鉄板が水浸しになってショベルカーのタイヤが滑って空回する問題がある。
これらの問題を解決する方法として、例えば、粗粒分離機で分離された粗粒ダストを、水切りした後に地面に排出して一次置きする方法がある。しかし、この方法では、水切りのために一時的に集塵水の流れを止める必要があるため、大量に発生する集塵水を迅速に処理することができない。
【0005】
また、水を含んだ粗粒ダストを荷台に載せてから水切りした後に運ぶ方法もあるが、この方法では、水切りに時間がかかり、その間は運送作業ができないため、運送の作業効率がよくない。
さらに、粗粒ダストをショベルですくい上げる際に水抜きされるように、ショベルに水抜き穴を開ける方法もあるが、この方法では、荷台に載せる作業時に水が周りに飛び散る問題点は解決できない。
【0006】
なお、下記の特許文献1には、湿式集塵装置によって回収された湿潤ダストを、貯蔵ホッパーから運搬トラックに切り出して、蓄熱されている鋼製スラグ鍋に移し、このスラグ鍋の熱により湿潤ダストを乾燥させた後に、スクラップヤードに搬送してリサイクルすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−78115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の課題は、転炉の排ガスから湿式集塵法で回収した集塵水に含まれる粗粒ダストを、集塵水から分離して水とともに敷地内の地面に一次置きし、この地面に置かれた粗粒ダストをショベルですくい上げて荷台に載せて別の場所に移動する転炉ダストの処理方法として、粗粒ダストを荷台に載せる作業時やその後の移動中に、周りに水が飛び散らないようにでき、しかも、粗粒ダスト処理の作業効率が高い方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の転炉ダストの処理方法は、転炉の排ガスから湿式集塵法で回収した集塵水に含まれる粗粒ダストを、集塵水から分離して水とともに敷地内の地面に一次置きし、この地面に置かれた粗粒ダストをショベルですくい上げて荷台に載せて別の場所に移動する転炉ダストの処理方法であって、前記粗粒ダストを一次置きする地面に、排水路に接続された複数の溝を形成することを特徴とする。
【0010】
この発明の方法によれば、転炉の排ガスから湿式集塵法で回収した集塵水に含まれる粗粒ダストが、水とともに、前記複数の溝が形成された地面に一次置きされる。そのため、粗粒ダストの山の下部に移動した水は前記溝に入って排水路に向かう。よって、粗粒ダストが水とともに前記溝の無い平坦な地面に一次置きされた場合と比較して、短時間で粗粒ダストから水が分離されるため、効率的に水切りが行われる。
【0011】
また、一次置きされた粗粒ダストをショベルですくい上げる際に、前記溝内に存在する水を多く含む粗粒ダストはショベルに入りにくい。
したがって、一次置きされた粗粒ダストをすくい上げたショベル内に水が入ることが抑制されるため、粗粒ダストを荷台に載せる作業時に周りに水が飛び散らないようにできる。また、粗粒ダストをダンプカー等の荷台に載せて別の場所に移動する際に、水を道路に撒き散らすことが防止される。
【0012】
また、この方法は、粗粒ダストを水切りした後に地面に一次置きする方法や、粗粒ダストを荷台に載せてから水切りした後に運ぶ方法と比較して、作業効率が高い。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、転炉の排ガスから湿式集塵法で回収した集塵水に含まれる粗粒ダストを、集塵水から分離して水とともに敷地内の地面に一次置きし、この地面に置かれた粗粒ダストをショベルですくい上げて荷台に載せて別の場所に移動する転炉ダストの処理方法として、粗粒ダストを荷台に載せる作業時やその後の移動中に、周りに水が飛び散らないようにでき、しかも、粗粒ダスト処理の作業効率が高い方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】転炉ダストの処理設備の一例を示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施形態の方法で、粗粒ダストを一次置きする地面を示す平面図(a)と、そのA−A断面図(b)と、そのB−B断面図(c)である
【図3】この発明の実施形態の方法で、一次置きされた粗粒ダストをショベルですくい上げている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
この実施形態で使用する転炉ダストの処理設備は、図1に示すように、転炉ガス集塵装置1と、トラフ2と、トラフ2の下流部に設けた粗粒分離機3と、シックナー4と、で構成されている。
この設備により、転炉ガス集塵装置1から出た粗粒ダストと細粒ダストを含む集塵水がトラフ2を流れ、粗粒分離機3で集塵水から粗粒ダストが分離、除去された後に、細粒ダストがシックナー4で回収される。そして、粗粒分離機3で除去された粗粒ダスト(直径50μm以上のダスト)が、敷地内の地面5に水とともに排出される。地面5の上には、排出された粗粒ダストが堆積して山6が形成される。この粗粒ダストの山6は水を含んでいる。
【0016】
この実施形態では、地面5の一部(山6が形成される部分とその周辺部)を図2に示す状態にしてある。
図2の(a)は平面図であり、(b)はそのA−A断面図であり、(c)はそのB−B断面図である。
図2(a)〜(c)に示すように、この地面5には、互いに平行に配置された複数の直線状の溝7と、全ての溝7が接続された排水路8が形成されている。溝7は、地面5の上にスラブプレート71を固定することで形成されている。溝7が形成されている部分の地面5は、排水路8側が低い斜面状に形成されている。この斜面の度合いは、ショベルカーによる作業性を損なわない範囲で設定する。
【0017】
この実施形態の方法では、上述のように、地面5に溝7を形成しているため、図3に示すように、粗粒ダストの山6が複数の溝7が形成された地面5の上に形成され、溝7内にも粗粒ダストと水が入る。そして、粗粒ダストの山6に含まれている水は、時間とともに山6の下部に移動して溝7に入り、速やかに排水路8に向かう。そのため、粗粒ダストの山6が溝7の無い平坦な地面5に形成される場合と比較して、短時間で粗粒ダストから水が分離されて効率的に水切りが行われる。
【0018】
また、図3に示すように、粗粒ダストの山6からショベルカー9のショベル91で粗粒ダストをすくい上げる際に、ショベル91は溝7内に入らないため、溝7内に存在する水を多く含む粗粒ダストがショベル81に入りにくい。
これにより、粗粒ダストの山6から粗粒ダストをすくい上げたショベル91内に水が入ることが抑制される。そのため、ショベル91ですくい上げた粗粒ダストをダンプカー等の荷台に載せる作業時に、周りに水が飛び散らないようにできる。また、粗粒ダストをダンプカー等の荷台に載せて別の場所に移動する際に、水を道路に撒き散らすことが防止される。
【0019】
さらに、地面5に溝7を設けることで、表面が凹凸になるため、ショベルカー9の走行面が水で濡れた場合でも、ショベルカー9のタイヤ92が滑って空回りすることが防止できる。
なお、地面5に溝7を設ける方法は、地面5にスラブプレート71を固定する方法以外に、鋼矢板を地面5に固定する方法や、地面5に直接、溝を形成する方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 転炉ガス集塵装置
2 トラフ
3 粗粒分離機
4 シックナー
5 地面
6 粗粒ダストの山
7 溝
71 スラブプレート(溝形成部材)
8 排水路
9 ショベルカー
91 ショベル
92 ショベルカーのタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉の排ガスから湿式集塵法で回収した集塵水に含まれる粗粒ダストを、集塵水から分離して水とともに敷地内の地面に一次置きし、この地面に置かれた粗粒ダストをショベルですくい上げて荷台に載せて別の場所に移動する転炉ダストの処理方法であって、
前記粗粒ダストを一次置きする地面に、排水路に接続された複数の溝を形成することを特徴とする転炉ダストの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−32500(P2011−32500A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177423(P2009−177423)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】