説明

転相インクのためのインクセットおよび製造プロセス

【課題】インクセットの各色インク同士が相溶しない状態を避けつつ、異なる色の硬化性転相インクを一緒に混合することができ、これにより、基本的なインクセットのためのカスタムカラーが得られ、信頼性の高い色域を広げることのできるインクセットおよび画像作成方法を提供する。
【解決手段】複数の異なる色に着色した硬化性転相インクで構成されるインクセットおよびこれを用いた画像の作成方法であって、このインクセットのそれぞれの着色したインクは、インク媒剤、ゲル化剤、顔料、分散剤で構成され、前記分散剤が、前記インクセットのそれぞれの着色したインクで同じであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、インクセットのそれぞれのインクが、このインクセットの異なる色同士で同じ分散剤を利用しており、さらに、同じ量の分散剤を含むような転相インクのセットに関し、その結果、インク同士が相溶しない状態を避けつつ、異なる色の転相インク同士を容易に混合してカスタムカラーを作成することができ、これによりカスタムカラーが得られ、色域が広がる。
【0002】
印刷の必要性に応じてカスタムカラーインクを提供することができれば、非常に望ましい。ハイライトカラーおよびスポットカラーは、印刷の必要性を満たす上述のカスタムカラーインクのための重要な必需品である。液体染料に由来するインクを用い、望ましい色を得るためのカスタムカラーの作成は、一般的に簡単になされるが、顔料インクの場合には、顔料と共に分散剤を用い、インクセットのカラーインク(例えば、C(シアン)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、K(黒))同士で、異なる顔料と分散剤/添加剤との間で相互作用が起こる可能性があるため、状況はもっと複雑である。
【0003】
カスタムカラーを得ること、または色域が広がったインクを得ることは、積み重ね高さが低いことが必要な用途では、CYMK色から外れた色を得るためにマルチパス方式の印刷を行うことができないので、特に重要である。また、デジタル印刷のために多くのカスタムカラーを配合することを望む顧客は、典型的には、短期間の印刷で使用するために、抱える量が少なく、小さなバッチサイズのカスタムカラーを望む。本開示は、顔料転相インクで即座にカスタムカラーを配合することが可能な、容易に混合可能な顔料インクまたは顔料濃縮物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、溶融混合した放射線硬化性転相インクと、比較例のインクについて、動的温度工程によるレオロジー曲線をあらわすグラフである。
【図2】図2は、溶融混合した放射線硬化性転相インクについて測定され、プロットされた、レッド(正の値)とグリーン(負の値)との間の色度をあらわすa*と、イエロー(正の値)とブルー(負の値)との間の色度をあらわすb*といった色特性をあらわすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に記載のインクセットのインクは、硬化性転相インクであり、望ましくは、放射線硬化性転相インクであり、例えば、UV線をあてることによって硬化させることができる。このインクは、室温または周囲温度(25℃)付近では固体状態である。インクを吐出させるために、インクを溶融温度よりも高い温度まで加熱し、液相または吐出可能な相に変える。
【0006】
本明細書の基本的なインクセットは、少なくとも2色、望ましくは3色または4色の異なる色を有する転相インクを含む。本明細書の着色したインクは、例えば、このインクが、知覚可能な色を示す着色剤を含む結果として、観察者の肉眼で知覚可能な色を示すインクである。望ましくは、基本的なインクセットは、CYMK色をあらわす4色インクで構成されている。しかし、基本的なインクセットは、これとは異なる色(例えば、ブルー、グリーン、レッド、バイオレット、オレンジ、白、黒)で構成されていてもよい。それぞれのインクは、異なるインク媒剤を利用していてもよく、同じインク媒剤を利用していてもよい。このインクセットのそれぞれの着色したインクの分散剤は、インクセットの全ての着色したインクについて、同じ分散剤でなければならない。また、このインクセットのそれぞれの着色したインクの分散剤の量は、望ましくは、着色したインク中に同じ量で存在する。
【0007】
インクセットの全ての着色したインクにおいて、同じ量の同じ顔料分散剤を用いることで、カスタムカラーを作成するためにこれらのインクを混合した際に、分散剤間の相互作用および/または意図せぬ顔料−分散剤相互作用をなくすことができる。
【0008】
本明細書のインクセットの硬化性インクは、それぞれ、インク媒剤を含む。いくつかの実施形態では、インク媒剤は、硬化性モノマーまたは硬化性オリゴマーを含む。
【0009】
用語「硬化性」は、例えば、重合させることが可能なインク媒剤の成分(例えば、モノマーまたはオリゴマー)、つまり、例えば、遊離ラジカル経路を含む重合および/または放射線感受性の光開始剤を用いることによって光開始されるような重合によって硬化させることが可能な成分を指す。
【0010】
したがって、例えば、用語「放射線硬化性」は、放射線源(光源および熱源を含み、開始剤が存在する状態または存在しない状態を含む)にさらされると硬化するすべての形態を包含することを意図している。
【0011】
適切な硬化エネルギー源(例えば、紫外線、電子線エネルギーなど)にさらされると、インクの硬化性成分および/または光開始剤がそのエネルギーを吸収し、吐出されたインク組成物を硬化した材料に変換する反応が始まる。インクの硬化性成分は、典型的には、硬化源にさらされている間に重合し、容易に架橋してポリマーネットワークを形成する官能基を含む。
【0012】
インク媒剤は、1種以上の反応性オリゴマー、1種以上の反応性モノマー、または1種以上の反応性オリゴマーと1種以上の反応性モノマーとの組み合わせを含んでいてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、インク媒剤は、少なくとも1つの反応性(硬化性)モノマーまたはオリゴマーと、場合により、1種以上のさらなる反応性(硬化性)モノマーおよび/または1種以上の反応性(硬化性)オリゴマーとを含む。インクの硬化性モノマーおよび/または硬化性オリゴマーは、例えば、粘度低下剤として、組成物を硬化させるときにはバインダーとして、接着促進剤として、架橋剤として、さまざまに機能してもよい。適切なモノマーおよび/またはオリゴマーは、低い分子量、低い粘度、低い表面張力を有していてもよく、適切な開始剤存在下、UV光のような放射線をあてると重合する官能基を含んでいてもよい。インク媒剤は、インクセットのインク同士で同じであってもよく、異なっていてもよく、したがって、硬化性モノマーおよび/または硬化性オリゴマーは、インクセットのインク同士で同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0013】
適切な放射線(例えば、UV)硬化性のモノマーおよびオリゴマーとしては、例えば、アクリル酸エステル、アクリル酸ポリエステル、アクリル酸エーテル、アクリル酸ポリエーテル、アクリル酸エポキシ、ウレタンアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。適切なアクリル酸モノマーの特定の例としては、モノアクリレート、ジアクリレート、1個以上のジアクリレートまたはトリアクリレートを含む多官能アルコキシル化アクリルモノマーまたはポリアルコキシル化アクリルモノマーが挙げられる。
【0014】
適切なモノマーは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、例えば、SR9003(Sartomer Co.,Inc.(エクストン、PA))である。他の適切な反応性モノマーは、例えば、Sartomer Co.,Inc.、Henkel Corp.、Radcure Specialtiesなどから同様に市販されている。適切なアクリル酸オリゴマーの特定の例としては、例えば、アクリル酸ポリエステルオリゴマー、例えば、CN2262(Sartomer Co.)、EB 812(Cytec Surface Specialties)、EB 810(Cytec Surface Specialties)、CN2200(Sartomer Co.)、CN2300(Sartomer Co.)など、アクリル酸ウレタンオリゴマー、例えば、EB270(UCB Chemicals)、EB 5129(Cytec Surface Specialties)、CN2920(Sartomer Co.)、CN3211(Sartomer Co.)など、アクリル酸エポキシオリゴマー、例えば、EB 600(Cytec Surface Specialties)、EB 3411(Cytec Surface Specialties)、CN2204(Sartomer Co.)、CN110(Sartomer Co.)など;ペンタエリスリトールテトラアクリレートオリゴマー、例えば、SR399LV(Sartomer Co.)などが挙げられる。
【0015】
少なくとも1つの放射線硬化性モノマーおよび/または放射線硬化性オリゴマーは、カチオン硬化性、ラジカル硬化性などであってもよい。
【0016】
硬化性モノマーおよび/または硬化性オリゴマーは、インク中に、例えば、インクの約20〜約90重量%、例えば、インクの約30〜約80重量%、またはインクの約50〜約70重量%の量で含まれている。
【0017】
また、インクは、インク媒剤に溶解すると、比較的狭い温度範囲で粘度が比較的急激に上昇してゲル状の挙動を示す、少なくとも1つのゲル化剤を含む。いくつかの実施形態では、ゲル化剤を含まないインクである、インク濃縮物を製造してもよい。ゲル化剤を、後でインク濃縮物と混合し、完全なインク配合物を製造してもよい。
【0018】
インク媒剤に任意の適切なゲル化剤を用いてもよい。ゲル化剤は、例えば、米国特許第7,279,587号に開示されているゲル化剤、例えば、下式の化合物から選択されてもよく、
【化1】

式中、
は、以下のとおりである。
【0019】
(i)1〜約12個の炭素原子、例えば、1〜4個の炭素原子、または1〜2個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキレン基(アルキレン基は、二価脂肪族基または二価アルキル基であると定義され、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換されているアルキレン基、置換されていないアルキレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アルキレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、
【0020】
(ii)5〜約14個の炭素原子、例えば、5〜12個の炭素原子、または5〜10個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリーレン基(アリーレン基は、二価芳香族基または二価アリール基であると定義され、置換されているアリーレン基、置換されていないアリーレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アリーレン基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、
【0021】
(iii)6〜約32個の炭素原子、例えば、6〜22個の炭素原子、または7〜22個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、二価アリールアルキル基であると定義され、置換されているアリールアルキレン基、置換されていないアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、または
【0022】
(iv)6〜約32個の炭素原子、例えば、6〜22個の炭素原子、または7〜22個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、二価アルキルアリール基であると定義され、置換されているアルキルアリーレン基、置換されていないアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)。
【0023】
ここで、置換されたアルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基の置換基は、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよく;
【0024】
およびR’は、互いにそれぞれ独立して、以下のものからなる群から選択される。
【0025】
(i)1〜約54個の炭素原子、例えば、1〜36個の炭素原子、または1〜24個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキレン基、
【0026】
(ii)5〜約14個の炭素原子、例えば、5〜10個の炭素原子、または6〜7個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリーレン基、
【0027】
(iii)6〜約32個の炭素原子、例えば、6〜22個の炭素原子、または7〜22個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリールアルキレン基、または
【0028】
(iv)6〜約32個の炭素原子、例えば、6〜22個の炭素原子、または7〜22個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキルアリーレン基。
【0029】
置換されたアルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基の置換基は、アルキルアリーレン基に関する上の記載と同じであり;
【0030】
およびR’は、互いにそれぞれ独立して、以下のいずれかである。
【0031】
(a)光開始基、例えば、下式の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される基、
【化2】

【0032】
下式の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される基、
【化3】

【0033】
下式の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される基、
【化4】

【0034】
下式のN,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される基、
【化5】

など、または、
【0035】
(b)以下の基である。
【0036】
(i)2〜100個の炭素原子、例えば、3〜60個の炭素原子、または4〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキル基(直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換されているアルキル基、置換されていないアルキル基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アルキル基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、
【0037】
(ii)5〜約100個の炭素原子、例えば、6〜60個の炭素原子、または7〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリール基(置換されているアリール基、置換されていないアリール基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アリール基に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、例えば、フェニルなど、
【0038】
(iii)6〜約100個の炭素原子、例えば、7〜60個の炭素原子、または8〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリールアルキル基(置換されているアリールアルキル基、置換されていないアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、例えば、ベンジルなど、または、
【0039】
(iv)6〜約100個の炭素原子、例えば、7〜60個の炭素原子、または8〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキルアリール基(置換されているアルキルアリール基、置換されていないアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、環状または非環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)のいずれかが、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在していてもよく、存在していなくてもよい)、例えば、トリルなど、ここで、置換されたアルキル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基の置換基は、例えば、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよく;
【0040】
但し、XおよびX’は、それぞれ互いに独立して、酸素原子であるか、式−NR−の基であり、ここで、Rは、以下のとおりである。
【0041】
(i)水素原子;
【0042】
(ii)直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環状の置換されているアルキル基、置換されていないアルキル基を含み、いずれかのヘテロ原子がアルキル基に存在してもよく、存在していなくてもよく、1〜約100個の炭素原子、例えば、2〜60個の炭素原子、または3〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキル基、
【0043】
(iii)置換されているアリール基、置換されていないアリール基を含み、いずれかのヘテロ原子がアリール基に存在してもよく、存在していなくてもよく、5〜約100個の炭素原子、例えば、6〜60個の炭素原子、または7〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリール基、
【0044】
(iv)置換されているアリールアルキル基、置換されていないアリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、環状または非環状であってもよく、いずれかのヘテロ原子がアリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在してもよく、存在していなくてもよく、6〜約100個の炭素原子、例えば、7〜60個の炭素原子、または8〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アリールアルキル基、または
【0045】
(v)置換されているアルキルアリール基、置換されていないアルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖であってもよく、飽和または不飽和であってもよく、環状または非環状であってもよく、いずれかのヘテロ原子がアルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかに存在してもよく、存在していなくてもよく、6〜約100個の炭素原子、例えば、7〜60個の炭素原子、または8〜30個の炭素原子を有するが、炭素原子の数がこれらの範囲から外れていてもよい、アルキルアリール基。
【0046】
ここで、置換されたアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基の置換基は、例えば、ハロゲン原子、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、アゾ基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が一緒に接続して環を形成していてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、インクのゲル化剤は、以下の一般構造のアミドゲル化剤の混合物である。
【化6】

【0048】
インクは、ゲル化剤(gelling agentまたはgellant)を任意の適切な量で、例えば、インクの約1重量%〜約30重量%、例えば、インクの約2重量%〜約20重量%、例えば、インクの約5重量%〜約12重量%の量で含んでいてもよい。
【0049】
また、インクセットのインク媒剤は、ワックス、場合により、硬化性ワックスを含んでいてもよい。用語「ワックス」は、例えば、一般的にワックスと呼ばれる種々の天然材料、改質された天然材料、合成材料のうち任意のものを含む。ワックスは、望ましくは、室温、特定的には25℃で固体である。硬化性ワックスは、インクの他の成分と混和性であり、インクの他の硬化性成分(例えば、硬化性モノマーまたは硬化性オリゴマー)と重合するであろう、任意のワックス成分であってもよい。ワックスを含むことにより、吐出温度から冷却するにつれて、インクの粘度上昇を促進するであろう。
【0050】
硬化性ワックスの適切な例としては、例えば、硬化性基を含むワックス、または硬化性基を含むように官能基化されるワックスが挙げられる。硬化性基としては、例えば、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、オキセタンなどを挙げることができる。これらのワックスは、変換可能な官能基(例えば、カルボン酸またはヒドロキシル)が接続したワックスの反応によって合成してもよい。
【0051】
硬化性基で官能基化することが可能な、末端がヒドロキシルのポリエチレンワックスの適切な例としては、例えば、構造CH−(CH−CHOHを有する炭素鎖の混合物(鎖長nの混合物が存在する場合、平均鎖長は、約16〜約50の範囲であってもよい)、同様の平均鎖長を有する直鎖低分子量ポリエチレンが挙げられる。このようなワックスの適切な例としては、限定されないが、Mn(数平均分子量)が、それぞれ約375、460、550、700g/molに等しい、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、UNILIN(登録商標)700のような材料のUNILIN(登録商標)シリーズが挙げられる。これらのワックスは全て、Baker−Petroliteから市販されている。本明細書の望ましいワックスは、アクリル酸UNILINワックスである。
【0052】
ワックスは、インク組成物中に、例えば、インクの約1重量%〜約25重量%、例えば、インクの約2重量%〜約15重量%、または約3重量%〜約10重量%、または約4重量%〜約6重量%の量で含まれていてもよい。
【0053】
また、インク媒剤は、他の添加剤を含んでいてもよい。例えば、インク媒剤は、開始剤(例えば、硬化性モノマーおよび硬化性ワックスを含むインクの硬化性成分の重合を開始させる光開始剤)をさらに含んでいてもよい。開始剤は、インク媒剤に可溶性であるべきである。開始剤は、UVで活性化される光開始剤であってもよい。
【0054】
開始剤は、ラジカル開始剤であってもよい。ラジカル光開始剤の例としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンジルケトン、ヒドロキシルケトンモノマー、α−アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、CibaからIRGACURE(登録商標)およびDAROCUR(登録商標)の商標名で販売されているアシルホスフィン光開始剤、イソプロピルチオキサンテノンなど、およびこれらの混合物、これらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
開始剤は、カチオン開始剤であってもよい。適切なカチオン光開始剤の例としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、トリアリールスルホキソニウム塩、アリールオキシジアリールスルホニウム塩が挙げられる。
【0056】
インクに含まれる開始剤の合計量は、例えば、インクの約0.5〜約15重量%、例えば、約1〜約12重量%、または約2〜約10重量%であってもよい。
【0057】
インクセットの1つ以上のインクのインク媒剤は、さらなる任意要素の添加剤を含んでいてもよい。任意要素の添加剤としては、界面活性剤、入射するUV線を吸収し、これを熱エネルギーに変換して最終的には消散させる光安定化剤、酸化防止剤、画像の外観を高め、黄変を消すことができる蛍光発光剤、チキソトロピー剤、ぬれ防止剤、すべり剤、発泡剤、消泡剤、流動剤、他の非硬化性ワックス、油、可塑剤、バインダー、導電剤、防カビ剤、殺菌剤、有機および/または無機のフィラー粒子、異なる光沢レベルを作り出すか、または減らす薬剤であるレベリング剤、乳白剤、帯電防止剤、分散剤などを挙げることができる。インクは、安定化剤として、ラジカル捕捉剤、例えば、IRGASTAB UV 10(Ciba Specialty Chemicals,Inc.)を含んでいてもよい。また、インクは、貯蔵中のオリゴマー成分およびモノマー成分の重合を抑えるか、または少なくとも遅らせることによって、組成物を安定化させるために阻害剤(例えば、ヒドロキノン)を含んでいてもよく、これにより、組成物の貯蔵寿命が延びる。しかし、添加剤は、硬化速度に悪い影響を与える場合もあり、従って、任意要素の添加剤を用いて組成物を配合する場合には、注意をはらわなければならない。
【0058】
顔料をインク媒剤に分散させることが可能な場合に限り、インクセットの着色したインクに、顔料、顔料混合物などの任意の望ましい顔料または有効な顔料を用いてもよい。
【0059】
顔料は、インク中に、任意の適切な量で、例えば、インクの約0.1〜約25重量%、例えば、約0.5重量%、または約20%〜約1重量%、または約15重量%の量で含まれていてもよい。
【0060】
インクセットの着色したインクの分散剤として、インクセットの着色したインクで使用される種々の顔料に対して優れた吸着アフィニティを有する部分または基を有し、さらに、インク媒剤内に分散させることが可能な部分または基を有する分散剤が望ましい。インクセットの全ての着色したインクに適切な分散剤の選択は、分散剤/顔料の組み合わせが予想不可能な性質を有するため、当業者によって可能な試行錯誤による評価が必要な場合がある。
【0061】
分散剤の例として、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーが適している場合がある。特に望ましいブロックコポリマーは、例えば、アミノまたはアミノアクリレートのブロックAと、アクリレートブロックBとを含み、アクリレート部分が、分散剤を安定化させ、アミノ部分が顔料表面に十分に吸着しつつ、インク媒剤に十分に分散するようなアミノアクリレートブロックコポリマーである。本明細書で用いるのに適していることがわかっているブロックコポリマー分散剤の市販例は、DISPERBYK−2001(BYK Chemie GmbH)およびEFKA 4340(Ciba Specialty Chemicals)である。
【0062】
基本的なインクセットは、それぞれが同じ分散剤を含むか、または同じ分散剤の組み合わせを含む着色したインクで構成されなければならず、その結果、インクセットのそれぞれの着色したインク中の分散剤成分に違いはない。上述の任意の分散剤が、インクセットの着色したインク中で用いられてもよいが、インクセットのそれぞれの着色したインクは、同じ分散剤で構成されなければならない。
【0063】
さらに、インクセットのそれぞれの着色したインクは、望ましくは、インクセットの他の着色したインクと比較して、同じ合計量の分散剤を含む。分散剤は、インクセットのそれぞれの着色したインク中に、任意の適切な量で含まれていてもよい。例えば、分散剤は、顔料に対して約20〜約200重量%、例えば、顔料に対して約20〜約150重量%、顔料に対して約20〜100重量%の量でインクに加えられてもよい。
【0064】
顔料および分散剤は、顔料および分散剤の分散物としてインクに加えられてもよい。顔料分散物は、固形分の割合が約5〜約50%、例えば、約5〜約40%、または約10〜約40%であってもよい。
【0065】
硬化性転相インクは、室温で固体であるか、または固体様である。硬化性転相インクが、インクの吐出温度で、約50mPas未満、例えば、約30mPas未満、例えば、約3〜約30mPas、約5〜約20mPas、または約8〜約15mPasの粘度を有することが望ましい。したがって、インクは液体状態で吐出され、この状態は、吐出前にインクに熱を加えて溶融させることによって達成される。インクは、望ましくは、低温で、特に、約120℃未満、例えば、約50℃〜約110℃、または約60℃〜約110℃の温度で吐出される。したがって、インクは、理想的には、圧電式インクジェットデバイスで用いるのが適している。
【0066】
ゲル化剤がインク中で用いられる場合、インクがゲル状態を形成する温度は、インクの吐出温度よりも低い任意の温度であり、例えば、インクの吐出温度よりも約5℃以上低い任意の温度である。いくつかの実施形態では、ゲル状態は、約25℃〜約100℃、例えば、約40℃〜約80℃の温度で形成されてもよい。吐出温度から冷却すると、インクの粘度が迅速に大きく上昇し、この時点で、インクは液体状態であり、ゲル温度まで冷却すると、その時点で、インクはゲル状態である。粘度の上昇は、例えば、少なくとも約102.5倍の粘度上昇である。
【0067】
基本的なインクセットのそれぞれの着色したインクは、基本的なインクセットのそれぞれの着色したインクについて、分散剤が同じであり、分散剤の量が同じであれば、任意の望ましい方法または適切な方法によって調製されてもよい。例えば、それぞれの個々のインクの成分を一緒に混合した後、この混合物を、インクの融点付近またはそれより高い温度まで、例えば、約60℃〜約100℃の温度まで加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌した後、インクを周囲温度(例えば、約20℃〜約25℃)まで冷却してもよい。上述のように、顔料および分散剤は、望ましくは、他の成分から別個に混合され、製造中に分散物としてインクに加えられる。この製造は、インクが早すぎるタイミングで望ましくない熱重合を起こすであろう温度よりも低い温度で行うべきである。
【0068】
インクセットの着色したインクは、沈殿の問題もなく、互いに容易に混和し、したがって、基本的なインクセットの少なくとも2個の異なる色に着色したインクを混合することによって、硬化性転相インクのカスタムカラーを製造することができる。カスタムカラーは、望ましくは、インクセットのそれぞれのインクを溶融し、インクを一緒に混合することによって作成される。
【0069】
顔料転相インクを用いて印刷する際に、特定のカスタムカラーを望む顧客は、基本的なインクセットの異なるインクが、典型的には相溶性の問題をかかえており、混合したカスタムカラーは、インクセットのインクを単純に混合することによっては作ることができないため、インクが良好な分散性を示すように、典型的には、別個のカスタムカラーの配合物を開発しなければならなかった。本明細書で、異なる色の顔料転相インクは、基本的なインクセットのそれぞれの着色したインクにおいて、分散剤が同一であり、望ましくは、分散剤の量も同じであるため、互いに優れた相溶性を有している。
【0070】
本明細書のカスタムカラーを製造する方法は、製造すべきカスタムカラーが何であるかを決定することと、基本的なインクセットからの少なくとも2種類の硬化性転相インクを混合してカスタムカラーを製造する際の比率を決定することとを必要とする。次に、望ましいカスタムカラーの合計量に依存して、必要量の少なくとも2種類の硬化性転相インクを混合容器に供給する。少なくとも2種類の硬化性転相インクを、硬化性転相インクの融点または相転移温度付近の温度、またはこれらより高い温度まで、例えば、約60℃〜約100℃まで加熱し、次いで、混合し、インクを合わせ、カスタムカラーを達成する。次いで、カスタムカラーのインク組成物を周囲温度まで冷却するか、または冷却することなく、直接吐出させてもよい。
【0071】
本明細書のカスタムカラーは、インクセットの既知の基本色とは異なる任意の陰影または色であり、例えば、シアン、イエロー、マゼンタの基本色と、場合により、黒、および/またはレッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット、白と、場合により、黒である。カスタムカラーの異なる陰影または色は、インクセットの少なくとも2種類の着色したインクを混合することによって、または、インクセットの少なくとも1つの着色したインクと、インクセットの顔料を含まないインクとを混合することによって達成される。
【0072】
カスタムカラーの硬化性転相インクは、特定量の黒色の硬化性転相インクを含んでいてもよい。黒色インクの添加によって、カスタムカラーの硬化性転相インクの色が、暗くなる。したがって、混合物に含まれる黒色インクの量を多くすると、もっと暗い色のカスタムカラーの硬化性転相インクを作ることができるだろう。さらに、カスタムカラーの硬化性転相インクは、顔料を含まない硬化性転相インクを特定量含んでいてもよい。顔料を含まないインクを加えると、カスタムカラーの硬化性転相インクの色が明るくなる。したがって、混合物に含まれる顔料を含まないインクの量を多くすると、もっと明るい色のカスタムカラーの硬化性転相インクを作ることができるだろう。したがって、基本的なインクセットは、顔料を含まない(色がついていない)インクを含んでいてもよい。
【0073】
カスタムカラーを作るためのインクの混合は、インクジェットデバイスの外側でなされてもよい。例えば、混合は、製造箇所でなされてもよい。次いで、カスタムカラーの混合インクを、望ましい量で顧客に直接運搬してもよい。
【0074】
また、カスタムカラーの硬化性転相インクを製造する方法を、包装プロセスと同時に行ってもよい。この方法は、上述の方法と似ており、混合した状態のカスタムカラーを、液体状態でプリンターのカートリッジに入れる。次いで、カスタムカラーを含むインクカートリッジを顧客に提供してもよい。
【0075】
また、カスタムカラーの硬化性転相インクを製造する方法は、カスタムカラー硬化性転相インクをライン内で、オンデマンドで製造するように改変されたインク送達システムを用い、インクジェットデバイス自体の中で有益に行うことができる。改変されたインク送達システムは、混合チャンバを備えている。このライン内の方法は、基本的なインクセットから必要な2種類以上のインクを混合チャンバに導入することによって、オンデマンドでカスタムカラー硬化性転相インクを生成する。混合チャンバを加熱し、インクを混合し、カスタムカラーの硬化性インクを作成する。次いで、カスタムカラーの硬化性インクは、インクジェットデバイスを介し、基板に吐出するためのインクジェットヘッドに与えられる。
【0076】
カスタムカラーの硬化性インクが、インクジェットデバイス自体の中で製造される場合、利点が実現する。第1に、インクジェットデバイス内でカスタムカラーの硬化性インクを製造すると、ユーザーが、カスタムカラーインクを必要な量だけ作成することができ、この量は少量であってもよい。これと比較して、カスタムカラーを製造することができない他のインクジェットデバイスでは、インクは、ユーザーがバッチごとにカスタムカラーインクを製造する必要があり、これにより、使用しないインクの量が多くなる場合がある。第2に、このデバイスの混合チャンバ中の任意の使用しないカスタムカラーの硬化性インクを、基本的なインクセットの使用しないインクとさらに混合するか、または他の使用しないカスタムカラーインクとさらに混合し、デバイスで使用可能な黒色インクを製造してもよい。これによりインク廃棄物が減る。
【0077】
また、カスタムカラーの硬化性インク組成物を製造する方法は、インク濃縮物を用いることを含んでいてもよい。インク濃縮物は、本明細書で使用される場合、インク中にゲル化剤を含まないインクを指す。この方法は、上述の方法と似ているが、最終インクの代わりに、ゲル化剤を含まないインク濃縮物を用いる。少なくとも2種類のインク濃縮物を、上述の方法と同様の様式で合わせる。インク濃縮物を混合し、カスタムカラーインクの濃縮物を作成した後、ゲル化剤をインク濃縮物に加え、カスタムカラーインクを作成してもよい。後の段階でゲル化剤を加えることで、室温では液体またはペーストであるインク濃縮物を、ゲル化剤を含む濃縮物と比較して低温で混合することができ、それにより、インク生成プロセスにおいてエネルギー利用量が減る。
【0078】
本明細書に記載のインクを、基板に塗布し、画像を作成してもよい。インクを基板に塗布するために、インクが溶融する温度までインクを加熱する。次いで、溶融したインクを吐出してもよく、次いで、場合により、ゲル化および/または固化するまで冷却してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に記載の硬化性インクを与えることと;インクジェットを介し、硬化性インクを基板に塗布し、画像を作成することと;硬化性インクに硬化エネルギーをかけ、インクを硬化させることとを含む。インクを硬化させている間、硬化性モノマーと、硬化性ワックスとを、場合により、他の硬化性成分とともに重合させ、硬化した画像を作成する。
【0080】
いくつかの実施形態では、プリンターシステムにおいて色を交換する際に、印刷ヘッドおよび/またはインク送達経路を洗浄するために、顔料を含まない硬化性転相インクを使用してもよい。
【0081】
直接的な印刷インクジェットプロセスのための装置で、このインクを使用してもよい。また、本明細書に開示したインクを、例えば、ホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルト熱インクジェット印刷、ホットメルト連続流インクジェット印刷または偏向インクジェット印刷などのような他のホットメルト印刷プロセスで使用してもよい。また、本明細書に開示した転相インクを、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスで使用してもよい。
【0082】
または、上述のインクを間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で用いてもよく、溶融したインクの液滴を、記録基板上に画像パターンになるように放出するとき、この記録基板は中間転写体であり、次いで、画像パターンのインクを中間転写体から最終的な記録基板に転写する。
【0083】
基板上に作成した後、基板の上の画像に硬化エネルギー(例えば、熱、または適切な波長、主に、インク開始剤が放射線を吸収してインクの硬化反応を開始させるような波長を有する放射線)をあてる。放射線をあてるのは、長時間である必要はなく、例えば、約0.05〜約10秒、さらには、例えば、約0.2〜約5秒であってもよい。これらの露光時間は、UVランプの下をインクが通る基板速度であらわされることが多い。インクの重合可能な成分を硬化させるための放射線は、例えば、キセノンランプ、レーザー光、D球またはH球を含む種々の可能な技術によって与えられてもよい。いくつかの実施形態では、硬化性成分の少なくとも75%が硬化した(重合および/または架橋した)とき、硬化は、実質的に終了し、インクはかなり硬くなり、それにより、耐引っかき性がかなり高まり、さらに、基板の透き通り量を十分に制御することもできる。
【0084】
実施例を以下に記載し、これらは、本開示を実施する際に利用可能な異なる組成物および条件の具体例である。全ての比率は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。しかし、本開示を、多くの種類の組成物を用いて実施することができ、上述の開示にしたがい、以下に指摘するように多くの異なる用途を有していてもよいことが明らかであろう。
【0085】
CYMシリーズの硬化性転相インクを表1にしたがって配合した。表1の顔料分散物は、同時係属中の出願番号第12/946,560号に記載されるように、顔料を、分散剤と、場合により、反応性希釈剤との中で、ボールミルで混合することによって調製される、シアン、マゼンタまたはイエローいずれかの濃縮物であるが、安定な分散物を調製するために、任意の適切なプロセスを用いてもよい。
【0086】
【表1】

ゲル化剤は、米国特許第7,279,587号の実施例VIIIに記載されるように調製された。
UNILIN 350−アクリレートは、米国特許第7,559,639号に記載されるように調製された。
顔料分散物は、Keoshkerianらに対する同時係属中の出願に記載されるように調製された。
【0087】
インクを表2に与えられている重量比で合わせ、マグネチックスターラーを用い、85℃〜90℃で数分間混合し、所定のカスタムカラーを得た。表2は、減法混色の原色の混合のみを記載しているが、この混合物は、達成可能な色域を効果的に上げるために、レッド、グリーン、ブルーとを混合した減法混色の原色を含んでいてもよい。
【0088】
【表2】

【0089】
得られた溶融混合したインクは、比較例のインクと同じ堅牢特性を示す。得られたインクは、1μmまで濾過することができ、高温でニュートン挙動を示し、85℃で吐出することができる。さらに、溶融混合したインクと、成分のインクについて、動的温度工程によるレオロジー曲線は、図1に示されるように、重なり合っていることが示されている。それぞれのインクについて、K−プルーフを行い、色特性を測定し、図2に示す。
【0090】
表2のグリーン3インクを、85℃でインクを吐出するように改変されたPhaser 860プリンターで紙に直接印刷し、吐出すると、堅牢性が高いことが観察された。グリーン3インクの色測定値を図2でデータ点としてプロットした。Phaser 860は、市販のXeroxプリンターである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクセットであって、複数の異なる色に着色した硬化性転相インクで構成され、このインクセットのそれぞれの着色したインクは、インク媒剤、ゲル化剤、顔料、分散剤で構成され、前記分散剤が、前記インクセットのそれぞれの着色したインクで同じである、インクセット。
【請求項2】
前記分散剤が、前記インクセットのそれぞれの着色したインクにおいて、同じ量で存在する、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記分散剤が、アミノアクリレートブロックコポリマーである、請求項1に記載のインクセット。
【請求項4】
基板の上に画像を作成する方法であって、
複数の硬化性インクで構成され、基本的なインクセットのそれぞれの着色したインクが、同じ分散剤を有するような、基本的なインクセットを与えることと、
前記基本的なインクセットの1種類以上のインクをインクジェットデバイスの印刷ヘッドに供給することと、
前記インクを加熱し、前記インクを望ましい画像パターンになるように基板の上に吐出することによって、前記印刷ヘッドから、1種類以上のインクを基板の上に印刷することと、
前記印刷したインクに硬化エネルギーをかけ、前記インクを硬化させることとを含む、方法。
【請求項5】
印刷すべき色を交換するときに、顔料を含まない硬化性転相インクを用い、印刷ヘッドおよび/または印刷ヘッドのインク送達経路をパージおよび/または洗浄する、請求項4に記載の画像を作成する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107235(P2012−107235A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242668(P2011−242668)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】