転造加工方法
【課題】ワーク材質の変化や、ワーク材質のばらつきに対しても、良好な転造精度を得る。
【解決手段】ワーク諸元に対してねじ加工用ダイス21、23間距離を予め設定した前転造加工指令距離で複数の異なるワーク4を転造加工し測定した背分力の関数として平ダイス22、24間の距離を定めた後転造加工指令距離を予め設定し、前転造加工指令距離でワーク4をねじ加工用ダイス21、23で前転造加工し、かつ、背分力を測定し、測定した背分力から関数により後転造加工指令距離を求め、求めた後転造加工指令距離に平ダイス22、24間の距離を設定・補正してワークを後(仕上げ)転造加工する。
【解決手段】ワーク諸元に対してねじ加工用ダイス21、23間距離を予め設定した前転造加工指令距離で複数の異なるワーク4を転造加工し測定した背分力の関数として平ダイス22、24間の距離を定めた後転造加工指令距離を予め設定し、前転造加工指令距離でワーク4をねじ加工用ダイス21、23で前転造加工し、かつ、背分力を測定し、測定した背分力から関数により後転造加工指令距離を求め、求めた後転造加工指令距離に平ダイス22、24間の距離を設定・補正してワークを後(仕上げ)転造加工する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車やスプライン等の転造加工の転造加工精度向上に関し、特にインボリュートスプラインのオーバーピン径などの径寸法ばらつきの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸心に回転可能に支持されたワークを軸心対称に配置された一対のダイスで挟持し押圧しながらワーク外周にねじ、歯車、スプライン、セレーション等を塑性加工する転造加工方法が知られている。かかる転造加工においては、ダイス間の距離を正確に制御することにより、ワークの仕上げ寸法精度を確保している。例えば、特許文献1のものは、1対の平ダイス底面間距離をNC指令により補正動作できるNC補正機構の例が開示されており、転造精度に影響する平ダイス間の距離の補正をNC装置への補正値入力で行うことができ、平ダイス交換時の段取り替えが容易となる。また、ワークの転造幅が異なるワークに対しては、背分力変化を補正装置のサーボモータのエンコーダにより検出して平ダイス高さが一定になるよう補正できるとしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の転造盤は、背分力変化を補正装置のサーボモータのエンコーダにより検出する方式のため、背分力の変化の検出感度が悪い。そこで、検出精度を向上させるために、ねじ転造用回転ダイスの特許文献2のものでは、転造時の反力が顕著に反映されて歪みを生じる両ダイス間をつなぐテンションバーの歪みを歪みゲージで測定し、この測定値に基づき転造時の加重(背分力)を求め、さらに、この加重が適正加重になるように回転ダイス間の距離を制御して適正加重でねじ転造を行うようにしている。
【0004】
一方、一回の転造加工では、必ずしも形状や精度を確保できない場合がある。そこで、複数の転造盤を用いてワークを順次加工したり、一台の転造盤に複数の一対の転造平ダイスを軸方向に配置し、荒加工、中仕上げ加工、仕上げ加工の順に軸方向にワークの加工部位を移動させながら転造加工する(特許文献3)。しかし、設備が大きくなったり、複雑になる。そこで、特許文献4においては、ワークの両側に配置する一対の平ダイスの形状を中央の仕上げ歯群と、その両側の互いに左右対称な一対の食い付き兼逃げ歯群とで構成し、かかる平ダイスを1往復又は、数回往復動させ、各ダイスが各往復動死点に至った時点でその都度段階的に両ダイス間の間隔(距離)を狭めて両ダイスの移動ごとにワークの加工量を増加させて、転造加工を行っている。
【0005】
さらに、特許文献5においては、一定形状の歯形状の凹凸部の最高高さとなる仕上げ部と、高さが徐々に低くなる調整部と、高さが急勾配で低くなる逃げ部を対称に設けて、ワークが逃げ部に位置した時に徐々に平ダイス間の間隔(距離)を縮めながらワークを往復転造するようにしている。また、特許文献6の従来例の第6図乃至第8図では、セレーションを2回転造するのではなく、ねじ転造とセレーション転造を連続して行い、一度の転造でねじとセレーションの転造加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2553891号公報
【特許文献2】特開2003−285135号公報
【特許文献3】特公昭63−6296号公報
【特許文献4】特開昭58−157541号公報
【特許文献5】特開平10−118733号公報
【特許文献6】特開平4−187337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯車の精度は、一般に歯車の対称位置の歯溝に所定ピンを当接させ、ピン間の距離を測定するいわゆるオーバーピン径で測定し評価する。前述したいずれの場合にもこの精度を上げるために、往復転造したり、複合転造を行っている。また、転造ダイス間の距離を高精度に制御している。一方、転造加工されるワーク素材は、転造加工精度を上げるため、その材質は比較的均一な素材が用いられている。
【0008】
しかし、転造精度のさらなる向上が望まれる。また、ワーク材質もコスト等の理由から調達範囲が拡大され、ばらつきの大きい素材を使用しても良好な転造精度を要求されてきた。
【0009】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、より高い転造精度を得ることであり、また、ワーク材質の変化や、ワーク材質のばらつきに対しても、良好な転造精度を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者等は、かかるワーク材質と転造精度について、鋭意研究した結果、仕上げ転造にあたって単に転造ダイス間の距離を一定に制御するのみでは、安定した寸法を得られない。従来の平ダイス転造盤においては、平ダイスの底面間の距離は、通常オーバーピン径の調整機構により手作業で調整した後固定とされるため、被転造物の材料の硬さがばらつく場合に、転造荷重が増減するため、転造盤の弾性変形などにより転造加工中の平ダイスの底面間の距離も硬さに応じて増減し、加工されたインボリュートスプラインのオーバーピン径にばらつきが生じるということを知得した。即ち、転造精度のばらつきの原因が素材の硬さや粘りによる転造後のスプリングバックによるものであることを知得した。さらに、このスプリングバック量は転造時の背分力と密接な関係があることを知得した。
【0011】
この知得により本発明においては、軸心に回転可能に支持されたワークと、前記軸心対称に配置された一対のダイスと、を備えた転造盤において、前記一対のダイス間の距離が一定になるように制御し、かつ前記ワークを挟持しながら互いに逆方向に移動させ前記ワーク外周面を転造加工する転造加工方法であって、前記ワーク諸元に対して前記一対のダイス間距離を予め設定した前転造加工指令距離と、前記ワーク諸元に対して前記前転造加工指令距離で複数の異なるワークを転造加工し測定した背分力の関数として前記一対のダイス間の距離を定めた後転造加工指令距離と、を予め設定し、前記一対のダイス間の距離を前記前転造加工指令距離に設定して前記ワークを前転造加工し、かつ、前記前転造加工中の背分力を測定し、前記測定した背分力から前記関数により前記後転造加工指令距離を求め、前記一対のダイス間の距離を前記求めた後転造加工指令距離に設定して前記ワークを後転造加工する転造加工方法を提供することにより前述した課題を解決した。
【0012】
即ち、ワークの硬さや粘りが大きいと、背分力が大きくなり転造盤の変形も大きくなる。そのためワーク及び転造盤のダイス間距離等のスプリングバック量が大きくなる。一方、ワークの硬さや粘りが小さいと、背分力は小さく転造盤の変形も小さくなり、ワーク及び転造盤のダイス間距離等のスプリングバック量が小さくなる。このような関係に基づいて、後工程(例えば仕上げ転造)の転造を行う前に、前工程で背分力を測定し、平均より背分力が小さいときは、スプリングバック量は少ないのでダイス間距離を平均(標準)の場合より大きくする。また、平均より背分力が大きいときは、スプリングバック量が大きくなるので、ダイス間距離を平均の場合より小さくして仕上がり寸法を抑える。
【0013】
かかる、関係を予めそれぞれのワークについて一定のダイス間距離で転造加工し、そのときの背分力を測定して、前転造加工の背分力に対して、適切な精度を得られるような後転造加工のダイス間距離を求めておく。このデータを転造盤の制御装置に記憶させ、実際の転造加工においては、加工すべきワークを前転造加工し、前転造加工中に背分力を測定し、後転造加工のダイス間距離を制御して、スプリングバック量の影響を少なくする。
【0014】
なお、制御の容易さ、精度を確実にするためには、前転造は後転造での転造精度に直接影響のないような転造加工にすることが好ましい。また、転造加工の背分力の変化を、転造盤本体上に設けた歪センサで検出するようにし、ワークの硬さが変化する場合などの微小な背分力の変化を感度よく検出するのが好ましい。
【0015】
また、加工途中でのワークの取り外しは効率的でなく、精度も低下する。そこで、請求項2に記載の発明においては、前記前転造加工後にワークを取り外すことなく、同一転造盤上で前記後転造加工が行われる転造加工方法とした。
【0016】
より好ましくは、ねじ転造とインボリュートスプライン転造を同一ワークに転造する複合転造において、ねじ転造用平ダイスを前転造の平ダイスとして、転造荷重を検出するようにし、インボリュートスプライン用平ダイスを前記第2の平ダイスとして、オーバーピン径を自動調整するようにすればよい。そこで、請求項3に記載の発明においては、前記前転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位とが異なる転造加工方法を提供する。
【0017】
さらに、請求項4に記載の発明においては、前記前転造加工はねじ転造又は前記軸心直角方向溝転造加工であり、前記後転造加工は前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工である転造加工方法を提供する。
【0018】
すなわち、前転造加工としてのねじ転造は転造荷重が比較的小さく被加工物の硬さによる径寸法の変化が少ないためワーク1個毎の寸法補正は必要ではない。また、転造荷重(背分力)の変動が小さいためワーク硬さ変化による荷重の変化が感度よく検出できるので、スプライン等の転造に先立ち転造を行うと良い。ねじ転造で検出された背分力をもとに、後転造加工としてのスプライン用平ダイス間距離を補正する。スプライン転造加工では、転造荷重が比較的大きいためワークの硬度等により変化しやすいインボリュートスプラインのオーバーピン径をワーク1個毎に自動補正することができる。
【0019】
従来の往復又は複数回転造にあっては、ワークの同一部位を徐々に転造加工していく。そこで、請求項5に記載の発明においては、前記前転造加工で加工されるワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工されるワークの軸方向部位とが一部又は全部で同じ部位であり、前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工であって前記前転造加工指令距離よりも前記後転造加工指令距離が小さくされている転造加工方法とした。
【0020】
また、かかる転造方法は平ダイスの他、丸(回転)ダイス等にも応用できる。そこで、請求項6に記載の発明においては、前記一対のダイスは、前記軸心を中心に対称に回転可能にされた回転ダイスであって、前記一対のダイス間の距離は、前記一対の回転ダイスの回転軸間距離である転造加工方法とした。
【発明の効果】
【0021】
これにより、本発明おいては、転造加工において、前転造加工工程を設け、前転造加工での背分力を測定し、前転造の背分力に応じて予め設定されたダイス間距離で後転造加工のダイス間距離を都度制御(例えば、背分力が大きい場合はダイス間距離を小さく、小さい場合はダイス間距離を大きくする)するようにしたので、ワークの硬さ等のばらつきがあっても、スプリングバック等の影響を少なくし、精度の高い転造加工方法とすることができる。さらに、インボリュートスプライン転造において、ワークの硬度により変化しやすいインボリュートスプラインのオーバーピン径寸法を、ワーク1個毎に自動補正することが可能となり、ロット内のワーク硬度ばらつきの大きいワークの場合でも、安定したオーバーピン径寸法が得られる。
【0022】
請求項2に記載の発明においては、ワークを取り外すことなく、前転造加工での測定及び後転造加工でのダイス距離補正を自動的に行うので、作業も簡単で容易に精度の高い転造加工が可能となった。また、ねじとスプライン等を一度に転造する複合転造加工に適用でき応用性も高い(請求項3)。さらに、請求項4に記載の発明においては、前転造加工をねじ転造としワーク硬さ変化による荷重の変化が感度よく検出できるので、後転造加工の補正がより正確にでき、後転造加工精度が向上する。また、インボリュートスプライン等では比較的転造荷重が大きいためワークの硬度によりオーバーピン径が変化しやすいが、ねじ転造での荷重の大きさに応じてワーク1個毎に自動補正できるのでオーバーピン径寸法を安定化することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明においては、歯車転造を2回以上の工程で行い、前転造加工指令距離よりも後転造加工指令距離が小さくしたので、従来の1回転造を2回転造とし、あるいは往復又は複数回転造の制御に背分力を測定して、その結果により後転造加工のダイス間距離を変更するだけで、精度の高い転造加工が可能となった。さらに、請求項6に記載の発明においては、一対のダイスを回転ダイスとし、一対の回転ダイスの回転軸間距離としたので、従来機であっても容易に精度の高い転造加工を実現できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す、ねじとスプラインの複数の平ダイスを用いた転造盤の正面図である。
【図2】図1の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】図2のA矢視からみたワークの形状である。
【図5】平ダイスの正面図である。
【図6】本発明の第一の実施の形態を示す、(a)はねじ転造加工の背分力とねじの三針径との関係、(b)は加工された三針径とスプラインのオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。
【図7】本発明の第一の実施の形態である転造加工工程を示す正面図である。(a)はねじ転造加工開始、(b)はスプライン転造加工開始、(c)複合転造完了位置を示す。
【図8】本発明の第二の実施の形態を示す、一組の平ダイスを用いた転造盤の正面図である。
【図9】図8の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図である。
【図10】本発明の第二の実施の形態を示す、前転造加工の背分力と後転造加工のオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。
【図11】本発明の第二の実施の形態である転造加工工程を示す正面図である。(a)は前転造加工開始、(b)は前転造加工完了、(c)は戻り工程、(d)は後転造加工完了位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第一の実施の形態について図を用いて説明する。図1は本発明の第一の実施の形態を示すねじとスプラインの複数の平ダイスを用いた平ダイス式転造盤の正面図であり、ねじ転造加工中の状態を示している。図2は図1の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図、図3は図2のA矢視図、図4は図2のA矢視からみたワークの形状、図5は平ダイスの正面図である。図4に示すように、ヘッドストック52と、対向して設けられた芯押し53との間に、ワーク(被加工物)4が保持され、軸心cに回転可能に支持されている。ワークの例はCVJであり、符号51はジョイントローラが入るカップ部である。図1に示すように、転造盤本体16には、軸心cに対して点対称に一対の複合平ダイス21乃至24が配置されている。
【0026】
複合平ダイスはねじ加工用ダイス21(23)及びスプライン加工用ダイス22(24)を一組として、左側のねじ加工用ダイス21及びスプライン加工用ダイス22は下方に、右側のねじ加工用ダイス23及びスプライン加工用ダイス24は上方に、軸心cに対して点対称の関係を保ち、ワーク4を挟持しながら逆方向に移動する。これにより、ねじ転造加工、インボリュートスプライン転造加工の順にワーク外周の転造加工が行われる。
【0027】
図5に示すように、平ダイス22は食付き歯部1、仕上げ歯部2、逃げ歯部3から構成されており、被加工物は食付き歯部から、仕上げ歯部、逃げ歯部を経て転造加工される。図1に示すように、ダイス21乃至24はそれぞれ移動テーブル19,20に固定され、移動テーブル19,20はコラム17,18のスライド上を図示しない駆動装置により互いに反対方向かつ平行に移動可能にされている。このとき転造加工により発生する力は、ワークを径方向に押しつぶす力の反力、すなわち平ダイスを底面に垂直に押す背分力27が最も大きい。
【0028】
図2、3に示すように、平ダイス21、22は、1組のくさび状部材7、8を介してテーブル19に固定され、一方のくさび部材8はサーボモータ10によりボールネジ9を回転させることにより、上下方向11に移動できるようにされている。すなわち、サーボモータに所定の回転指令を与えることにより、くさび部材8を所定量上下に移動し、くさび面を介して平ダイス21、22を水平方向13及び12に正確に移動させる。これにより、ダイス間の距離を制御できる。これにより、ねじの三針径寸法やスプラインのオーバーピン径(以下「OPD」と略す)寸法のねらい値等を変化させることができる。
【0029】
図1に示すように、転造盤16のコラム17,18は本体前面パネル26及び図示しない後面パネルにより強固に固定されている。前後面パネルはコラム17,18の剛性を増し、転造時の背分力に対向して位置を保持・確保する。前面パネル26には歪センサ25が取付けられており、加工中の背分力により、左右28方向に引っ張られて生じる歪を検出できるようにされている。この歪センサの出力は、背分力に比例する。この背分力は一対の平ダイス底面方向の力を検出することとほぼ同等となる。
【0030】
本第一の実施の形態ではかかる転造盤を用いて図4に示すようなCVJのアウターレースのワークのインボリュートスプライン14とねじ15を転造加工する。図6は、本発明の第一の実施の形態を示す、(a)はねじ転造加工の背分力とねじの三針径との関係、(b)は加工された三針径とスプラインのオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。図6(a)に示すように、歪センサ出力aのときの三針寸法をねらい寸法(規定寸法)に設定すると背分力の増加(ΔV)に対して、三針径寸法もほぼ比例して増加(Δd1)し、ワークのねじ三針径寸法と背分力とがほぼ直線関係にあることがわかる。これは、ワークのねじ三針径は、転造加工時のワークと平ダイス、転造盤の弾性変形の戻り量(スプリングバック量)の大小により決まり、スプリングバック量は転造加工時の背分力に比例すると考えられる。
【0031】
さらに、ねじ転造加工時と、スプライン転造加工時の、ダイス間距離を所定寸法で一定とした場合、ねじ三針径とスプラインOPDの関係は、図6(b)に示すように、ほぼ直線の比例関係となる。このときダイス間距離が一定であっても各寸法が変化するのは、ワーク間の硬さの微小な差によるものであり、硬いワークでは、スプリングバック量が大となるので、ねじ三針径とスプラインOPDともに大となり、柔らかいワークではその逆となる。
【0032】
以上のことから、ねじ転造加工時の歪センサ出力値を測定し、規定値との差がわかれば、ねじ三針径寸法のねらい寸法からの差異とともに、スプラインのOPD寸法のねらい寸法からの差異がわかることになる。すなわち、ねじ転造加工時の、歪センサ出力により、スプライン転造時に補正すべきOPD寸法の値を求めることができる。
【0033】
かかる考察を元に、図6から得られたねじ転造時の歪センサ出力、三針径寸法、スプラインOPD寸法の関係を用いて、ロット内でのワーク硬度ばらつきなどにより、転造加工中の背分力が変化する場合に、加工ワークのOPD寸法を一定に保ち、安定化させる方法について述べる。
【0034】
図7は、本発明の第一の実施の形態である転造加工工程を示す正面図で(a)はねじ転造加工開始、(b)はスプライン転造加工開始、(c)複合転造完了位置を示す。図7(a)に示すように左側のねじダイス21及びスプラインダイス22は図でみて下方、右側ねじダイス23及びスプラインダイス24は図でみて上方に移動し、ねじ部15を所定のダイス間距離で前転造加工し、図7(b)で示すように、ねじ転造終了位置で一旦停止する。このときの背分力、好ましくはねじ仕上げ歯部転造加工時の背分力を歪センサで取得する。
【0035】
次に、歪センサ出力値とねらい値との差、図6(a)のΔVからΔd1を求め、補正すべきスプラインのOPD寸法を図6(b)のΔd1に対応するΔd2を算出する。次に、左右各ダイスを、スプライン加工のための所定の追込み量に加え、補正すべきOPD寸法Δd2の1/2の量をさらに追い込む。
【0036】
さらに、ダイスを再度前進させ後転造加工を行い図7(c)に示す位置で転造加工を完了する。これにより、加工されたワークのスプラインOPD寸法は、ロット内のワーク硬さがばらついていても、ワーク毎のバラつきが少なく、安定した加工寸法となる。
【0037】
次に、本発明の第二の実施の形態について図を用いて説明する。図8は本発明の第二の実施の形態を示す、一組の平ダイスを用いた平ダイス式転造盤の正面図であり、転造加工中の状態を示している。図9は図8の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図である。前述した第一の実施の形態と同様な部分は同符号を付し説明の一部を省略する。平ダイス5は前述した図5に示すものと同様であり、食付き歯部1、仕上げ歯部2、逃げ歯部3から構成されており、ワークは食付き歯部から、仕上げ歯部、逃げ歯部を経て転造加工される。
【0038】
図8に示すように、ワーク4は図示しない両センタ装置により保持されており、左側平ダイス5は図でみて下方に、右側ダイス6は上方に、センタcに対して点対称の関係を保ちながら移動することにより転造加工が行われる。平ダイス5,6は移動テーブル19、20に固定されており、移動テーブル19、20はコラム17、18のスライド上を図示しない駆動装置により互いに反対方向かつ平行に移動する。このとき転造加工により発生する力は、ワークを径方向に押しつぶす力の反力、すなわち平ダイスを底面に垂直に押す背分力30が最も大きい。
【0039】
図9に示すように、平ダイス5、6は、1組のくさび状部材7、8を介してテーブル19に固定され、一方のくさび部材8はサーボモータ10によりボールネジ9を回転させることにより、上下方向11に移動できるようにされている。すなわち、例えばNC指令によりサーボモータに所定の回転指令を与えることにより、くさび部材8を所定量上下に移動し、くさび面を介して平ダイス5及び6を図示でみて水平方向12に正確に移動させる。これにより、ダイス間の距離を制御できる。これにより、スプラインのOPD寸法のねらい値等を変化させることができる。
【0040】
図8に示すように、転造盤11の前面パネル26には歪センサ25が取付けられており、加工中の背分力により、左右30、31方向に引っ張られて生じる歪を検出できるようにされている。この歪センサの出力は、背分力に比例する。
【0041】
図10は、前転造加工の背分力(歪みセンサ出力)と後転造加工のオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。ワークを連続加工した際の、歪センサ出力とオーバーピン径寸法の関係を示す。図10に示すように、歪センサ出力aのときのOPD寸法をねらい寸法(規定寸法)に設定すると背分力の増加(ΔV)に対して、OPD寸法もほぼ比例して増加(Δd)し、ワークのOPD寸法と背分力とがほぼ直線関係にあることがわかる。これは、ワークのOPDは、転造加工時のワークと平ダイス、転造盤の弾性変形の戻り量(スプリングバック量)の大小により決まるが、スプリングバック量は転造加工時の背分力に比例すると考えられる。
【0042】
以上のことから、前転造加工時の歪センサ出力を測定し、規定値との差がわかれば、OPD寸法のねらい値からの差異がわかることになる。すなわち、後転造時の補正すべきOPD寸法の値を求めることができる。
【0043】
かかる考察を元に、図10で求められた、歪センサ出力とOPD寸法の関係を用いて、ロット内でのワーク硬度ばらつきなどにより、転造加工中の背分力が変化する場合に、加工ワークのOPD寸法を一定に保ち、安定化させる方法について述べる。
【0044】
図11は本発明の第二の実施の形態である転造加工工程を示す正面図で(a)は前転造加工開始、(b)は前転造加工完了、(c)は戻り工程、(d)は後転造加工完了位置を示す。図11(a)に示すように、左側ダイス5は図でみて下方、右側ダイス6は上方に移動し、図11(b)で示す仕上げ歯部2の終わり近くで一旦停止する。このとき仕上げ歯部で発生する背分力を歪センサ25で取得する。ここで、歪センサ出力値と規定値との差(ΔV)から、補正すべきOPD寸法(Δd)を図10の関係から算出する。
【0045】
次に、仕上げ歯部手前の図4(c)の位置まで左右ダイス5、6を後退させ停止する。この位置ではワークとダイスが若干逃げた状態になっているが、ここで、左右各ダイスを所定の追込み量に加え、補正すべきOPD寸法(Δd)の1/2の量をさらに追い込む。さらに、ダイスを再度前進させ、図11(d)の状態で転造加工を完了する。このとき、加工されたワークのOPD寸法は、ロット内のワーク硬さがばらついていても、ばらつきが少なく、安定した加工寸法となる。
【0046】
第二の実施の形態においては、一方向用の平ダイスを二回動作させて、背分力を測定するための前転造加工を行った後、ダイスを戻し、ダイス間距離を縮めて仕上げ転造加工を後転造加工として行い精度の向上を図った。同様に、前述した特許文献4又は特許文献5のようにダイス間距離を順次接近させながら往復転造する場合にも適用できる。この場合、後転造加工を最終仕上げ寸法とし、前転造加工を直前の加工にして、背分力を測定し、この背分力に応じて最終仕上げ寸法の補正をすればよい。さらに、特許文献3のように、複数の転造ダイスを並べて順次転造加工する場合も、後転造加工を最終仕上げダイスで行い、前転造加工を隣接する直前のダイスで加工にして、背分力を測定し、この背分力に応じて最終仕上げ寸法の補正をすればよい。このように従来の往復転造加工、複数回転造加工にも適宜適用できる。
【0047】
平ダイス及び平ダイス式転造盤について述べてきたが、前述した特許文献2のような回転(丸)ダイス及び回転ダイス式転造盤の場合も同様な加工が可能であることはいうまでもない。この場合は、最終仕上げ寸法時の回転ダイス軸間距離よりも大きな軸間距離で、前転造を行い同時に背分力を測定する。この背分力に応じて最終仕上げ時の回転ダイス軸間距離を補正し、後転造加工を行い仕上げ転造を行えばよい。その他については従来と同様であるので詳細な説明を割愛する。
【0048】
以上述べたように、複数回転造を行い、前転造加工での背分力に応じて、後転造加工で仕上げ転造寸法の補正をするようにしたので、ワーク硬度アップによりインボリュートスプライン等のオーバーピン径寸法が大となるのを抑制し、寸法変化を抑え、精度の高い歯を形成することができる。なお、一対の平ダイス間の距離は、NCプログラム等で、平ダイスのピッチ線間距離、あるいはオーバーピン間距離、あるいは一対の平ダイスが取り付けられる移動テーブル面間距離等適宜選択設定すればよい。
【符号の説明】
【0049】
4 ワーク
5、6、22、24 (平)ダイス
21、23 (ねじ加工用)ダイス
11、16 転造盤
c 軸心
ΔV 背分力(歪センサ出力)
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車やスプライン等の転造加工の転造加工精度向上に関し、特にインボリュートスプラインのオーバーピン径などの径寸法ばらつきの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸心に回転可能に支持されたワークを軸心対称に配置された一対のダイスで挟持し押圧しながらワーク外周にねじ、歯車、スプライン、セレーション等を塑性加工する転造加工方法が知られている。かかる転造加工においては、ダイス間の距離を正確に制御することにより、ワークの仕上げ寸法精度を確保している。例えば、特許文献1のものは、1対の平ダイス底面間距離をNC指令により補正動作できるNC補正機構の例が開示されており、転造精度に影響する平ダイス間の距離の補正をNC装置への補正値入力で行うことができ、平ダイス交換時の段取り替えが容易となる。また、ワークの転造幅が異なるワークに対しては、背分力変化を補正装置のサーボモータのエンコーダにより検出して平ダイス高さが一定になるよう補正できるとしている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の転造盤は、背分力変化を補正装置のサーボモータのエンコーダにより検出する方式のため、背分力の変化の検出感度が悪い。そこで、検出精度を向上させるために、ねじ転造用回転ダイスの特許文献2のものでは、転造時の反力が顕著に反映されて歪みを生じる両ダイス間をつなぐテンションバーの歪みを歪みゲージで測定し、この測定値に基づき転造時の加重(背分力)を求め、さらに、この加重が適正加重になるように回転ダイス間の距離を制御して適正加重でねじ転造を行うようにしている。
【0004】
一方、一回の転造加工では、必ずしも形状や精度を確保できない場合がある。そこで、複数の転造盤を用いてワークを順次加工したり、一台の転造盤に複数の一対の転造平ダイスを軸方向に配置し、荒加工、中仕上げ加工、仕上げ加工の順に軸方向にワークの加工部位を移動させながら転造加工する(特許文献3)。しかし、設備が大きくなったり、複雑になる。そこで、特許文献4においては、ワークの両側に配置する一対の平ダイスの形状を中央の仕上げ歯群と、その両側の互いに左右対称な一対の食い付き兼逃げ歯群とで構成し、かかる平ダイスを1往復又は、数回往復動させ、各ダイスが各往復動死点に至った時点でその都度段階的に両ダイス間の間隔(距離)を狭めて両ダイスの移動ごとにワークの加工量を増加させて、転造加工を行っている。
【0005】
さらに、特許文献5においては、一定形状の歯形状の凹凸部の最高高さとなる仕上げ部と、高さが徐々に低くなる調整部と、高さが急勾配で低くなる逃げ部を対称に設けて、ワークが逃げ部に位置した時に徐々に平ダイス間の間隔(距離)を縮めながらワークを往復転造するようにしている。また、特許文献6の従来例の第6図乃至第8図では、セレーションを2回転造するのではなく、ねじ転造とセレーション転造を連続して行い、一度の転造でねじとセレーションの転造加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2553891号公報
【特許文献2】特開2003−285135号公報
【特許文献3】特公昭63−6296号公報
【特許文献4】特開昭58−157541号公報
【特許文献5】特開平10−118733号公報
【特許文献6】特開平4−187337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
歯車の精度は、一般に歯車の対称位置の歯溝に所定ピンを当接させ、ピン間の距離を測定するいわゆるオーバーピン径で測定し評価する。前述したいずれの場合にもこの精度を上げるために、往復転造したり、複合転造を行っている。また、転造ダイス間の距離を高精度に制御している。一方、転造加工されるワーク素材は、転造加工精度を上げるため、その材質は比較的均一な素材が用いられている。
【0008】
しかし、転造精度のさらなる向上が望まれる。また、ワーク材質もコスト等の理由から調達範囲が拡大され、ばらつきの大きい素材を使用しても良好な転造精度を要求されてきた。
【0009】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、より高い転造精度を得ることであり、また、ワーク材質の変化や、ワーク材質のばらつきに対しても、良好な転造精度を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者等は、かかるワーク材質と転造精度について、鋭意研究した結果、仕上げ転造にあたって単に転造ダイス間の距離を一定に制御するのみでは、安定した寸法を得られない。従来の平ダイス転造盤においては、平ダイスの底面間の距離は、通常オーバーピン径の調整機構により手作業で調整した後固定とされるため、被転造物の材料の硬さがばらつく場合に、転造荷重が増減するため、転造盤の弾性変形などにより転造加工中の平ダイスの底面間の距離も硬さに応じて増減し、加工されたインボリュートスプラインのオーバーピン径にばらつきが生じるということを知得した。即ち、転造精度のばらつきの原因が素材の硬さや粘りによる転造後のスプリングバックによるものであることを知得した。さらに、このスプリングバック量は転造時の背分力と密接な関係があることを知得した。
【0011】
この知得により本発明においては、軸心に回転可能に支持されたワークと、前記軸心対称に配置された一対のダイスと、を備えた転造盤において、前記一対のダイス間の距離が一定になるように制御し、かつ前記ワークを挟持しながら互いに逆方向に移動させ前記ワーク外周面を転造加工する転造加工方法であって、前記ワーク諸元に対して前記一対のダイス間距離を予め設定した前転造加工指令距離と、前記ワーク諸元に対して前記前転造加工指令距離で複数の異なるワークを転造加工し測定した背分力の関数として前記一対のダイス間の距離を定めた後転造加工指令距離と、を予め設定し、前記一対のダイス間の距離を前記前転造加工指令距離に設定して前記ワークを前転造加工し、かつ、前記前転造加工中の背分力を測定し、前記測定した背分力から前記関数により前記後転造加工指令距離を求め、前記一対のダイス間の距離を前記求めた後転造加工指令距離に設定して前記ワークを後転造加工する転造加工方法を提供することにより前述した課題を解決した。
【0012】
即ち、ワークの硬さや粘りが大きいと、背分力が大きくなり転造盤の変形も大きくなる。そのためワーク及び転造盤のダイス間距離等のスプリングバック量が大きくなる。一方、ワークの硬さや粘りが小さいと、背分力は小さく転造盤の変形も小さくなり、ワーク及び転造盤のダイス間距離等のスプリングバック量が小さくなる。このような関係に基づいて、後工程(例えば仕上げ転造)の転造を行う前に、前工程で背分力を測定し、平均より背分力が小さいときは、スプリングバック量は少ないのでダイス間距離を平均(標準)の場合より大きくする。また、平均より背分力が大きいときは、スプリングバック量が大きくなるので、ダイス間距離を平均の場合より小さくして仕上がり寸法を抑える。
【0013】
かかる、関係を予めそれぞれのワークについて一定のダイス間距離で転造加工し、そのときの背分力を測定して、前転造加工の背分力に対して、適切な精度を得られるような後転造加工のダイス間距離を求めておく。このデータを転造盤の制御装置に記憶させ、実際の転造加工においては、加工すべきワークを前転造加工し、前転造加工中に背分力を測定し、後転造加工のダイス間距離を制御して、スプリングバック量の影響を少なくする。
【0014】
なお、制御の容易さ、精度を確実にするためには、前転造は後転造での転造精度に直接影響のないような転造加工にすることが好ましい。また、転造加工の背分力の変化を、転造盤本体上に設けた歪センサで検出するようにし、ワークの硬さが変化する場合などの微小な背分力の変化を感度よく検出するのが好ましい。
【0015】
また、加工途中でのワークの取り外しは効率的でなく、精度も低下する。そこで、請求項2に記載の発明においては、前記前転造加工後にワークを取り外すことなく、同一転造盤上で前記後転造加工が行われる転造加工方法とした。
【0016】
より好ましくは、ねじ転造とインボリュートスプライン転造を同一ワークに転造する複合転造において、ねじ転造用平ダイスを前転造の平ダイスとして、転造荷重を検出するようにし、インボリュートスプライン用平ダイスを前記第2の平ダイスとして、オーバーピン径を自動調整するようにすればよい。そこで、請求項3に記載の発明においては、前記前転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位とが異なる転造加工方法を提供する。
【0017】
さらに、請求項4に記載の発明においては、前記前転造加工はねじ転造又は前記軸心直角方向溝転造加工であり、前記後転造加工は前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工である転造加工方法を提供する。
【0018】
すなわち、前転造加工としてのねじ転造は転造荷重が比較的小さく被加工物の硬さによる径寸法の変化が少ないためワーク1個毎の寸法補正は必要ではない。また、転造荷重(背分力)の変動が小さいためワーク硬さ変化による荷重の変化が感度よく検出できるので、スプライン等の転造に先立ち転造を行うと良い。ねじ転造で検出された背分力をもとに、後転造加工としてのスプライン用平ダイス間距離を補正する。スプライン転造加工では、転造荷重が比較的大きいためワークの硬度等により変化しやすいインボリュートスプラインのオーバーピン径をワーク1個毎に自動補正することができる。
【0019】
従来の往復又は複数回転造にあっては、ワークの同一部位を徐々に転造加工していく。そこで、請求項5に記載の発明においては、前記前転造加工で加工されるワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工されるワークの軸方向部位とが一部又は全部で同じ部位であり、前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工であって前記前転造加工指令距離よりも前記後転造加工指令距離が小さくされている転造加工方法とした。
【0020】
また、かかる転造方法は平ダイスの他、丸(回転)ダイス等にも応用できる。そこで、請求項6に記載の発明においては、前記一対のダイスは、前記軸心を中心に対称に回転可能にされた回転ダイスであって、前記一対のダイス間の距離は、前記一対の回転ダイスの回転軸間距離である転造加工方法とした。
【発明の効果】
【0021】
これにより、本発明おいては、転造加工において、前転造加工工程を設け、前転造加工での背分力を測定し、前転造の背分力に応じて予め設定されたダイス間距離で後転造加工のダイス間距離を都度制御(例えば、背分力が大きい場合はダイス間距離を小さく、小さい場合はダイス間距離を大きくする)するようにしたので、ワークの硬さ等のばらつきがあっても、スプリングバック等の影響を少なくし、精度の高い転造加工方法とすることができる。さらに、インボリュートスプライン転造において、ワークの硬度により変化しやすいインボリュートスプラインのオーバーピン径寸法を、ワーク1個毎に自動補正することが可能となり、ロット内のワーク硬度ばらつきの大きいワークの場合でも、安定したオーバーピン径寸法が得られる。
【0022】
請求項2に記載の発明においては、ワークを取り外すことなく、前転造加工での測定及び後転造加工でのダイス距離補正を自動的に行うので、作業も簡単で容易に精度の高い転造加工が可能となった。また、ねじとスプライン等を一度に転造する複合転造加工に適用でき応用性も高い(請求項3)。さらに、請求項4に記載の発明においては、前転造加工をねじ転造としワーク硬さ変化による荷重の変化が感度よく検出できるので、後転造加工の補正がより正確にでき、後転造加工精度が向上する。また、インボリュートスプライン等では比較的転造荷重が大きいためワークの硬度によりオーバーピン径が変化しやすいが、ねじ転造での荷重の大きさに応じてワーク1個毎に自動補正できるのでオーバーピン径寸法を安定化することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明においては、歯車転造を2回以上の工程で行い、前転造加工指令距離よりも後転造加工指令距離が小さくしたので、従来の1回転造を2回転造とし、あるいは往復又は複数回転造の制御に背分力を測定して、その結果により後転造加工のダイス間距離を変更するだけで、精度の高い転造加工が可能となった。さらに、請求項6に記載の発明においては、一対のダイスを回転ダイスとし、一対の回転ダイスの回転軸間距離としたので、従来機であっても容易に精度の高い転造加工を実現できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す、ねじとスプラインの複数の平ダイスを用いた転造盤の正面図である。
【図2】図1の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】図2のA矢視からみたワークの形状である。
【図5】平ダイスの正面図である。
【図6】本発明の第一の実施の形態を示す、(a)はねじ転造加工の背分力とねじの三針径との関係、(b)は加工された三針径とスプラインのオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。
【図7】本発明の第一の実施の形態である転造加工工程を示す正面図である。(a)はねじ転造加工開始、(b)はスプライン転造加工開始、(c)複合転造完了位置を示す。
【図8】本発明の第二の実施の形態を示す、一組の平ダイスを用いた転造盤の正面図である。
【図9】図8の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図である。
【図10】本発明の第二の実施の形態を示す、前転造加工の背分力と後転造加工のオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。
【図11】本発明の第二の実施の形態である転造加工工程を示す正面図である。(a)は前転造加工開始、(b)は前転造加工完了、(c)は戻り工程、(d)は後転造加工完了位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第一の実施の形態について図を用いて説明する。図1は本発明の第一の実施の形態を示すねじとスプラインの複数の平ダイスを用いた平ダイス式転造盤の正面図であり、ねじ転造加工中の状態を示している。図2は図1の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図、図3は図2のA矢視図、図4は図2のA矢視からみたワークの形状、図5は平ダイスの正面図である。図4に示すように、ヘッドストック52と、対向して設けられた芯押し53との間に、ワーク(被加工物)4が保持され、軸心cに回転可能に支持されている。ワークの例はCVJであり、符号51はジョイントローラが入るカップ部である。図1に示すように、転造盤本体16には、軸心cに対して点対称に一対の複合平ダイス21乃至24が配置されている。
【0026】
複合平ダイスはねじ加工用ダイス21(23)及びスプライン加工用ダイス22(24)を一組として、左側のねじ加工用ダイス21及びスプライン加工用ダイス22は下方に、右側のねじ加工用ダイス23及びスプライン加工用ダイス24は上方に、軸心cに対して点対称の関係を保ち、ワーク4を挟持しながら逆方向に移動する。これにより、ねじ転造加工、インボリュートスプライン転造加工の順にワーク外周の転造加工が行われる。
【0027】
図5に示すように、平ダイス22は食付き歯部1、仕上げ歯部2、逃げ歯部3から構成されており、被加工物は食付き歯部から、仕上げ歯部、逃げ歯部を経て転造加工される。図1に示すように、ダイス21乃至24はそれぞれ移動テーブル19,20に固定され、移動テーブル19,20はコラム17,18のスライド上を図示しない駆動装置により互いに反対方向かつ平行に移動可能にされている。このとき転造加工により発生する力は、ワークを径方向に押しつぶす力の反力、すなわち平ダイスを底面に垂直に押す背分力27が最も大きい。
【0028】
図2、3に示すように、平ダイス21、22は、1組のくさび状部材7、8を介してテーブル19に固定され、一方のくさび部材8はサーボモータ10によりボールネジ9を回転させることにより、上下方向11に移動できるようにされている。すなわち、サーボモータに所定の回転指令を与えることにより、くさび部材8を所定量上下に移動し、くさび面を介して平ダイス21、22を水平方向13及び12に正確に移動させる。これにより、ダイス間の距離を制御できる。これにより、ねじの三針径寸法やスプラインのオーバーピン径(以下「OPD」と略す)寸法のねらい値等を変化させることができる。
【0029】
図1に示すように、転造盤16のコラム17,18は本体前面パネル26及び図示しない後面パネルにより強固に固定されている。前後面パネルはコラム17,18の剛性を増し、転造時の背分力に対向して位置を保持・確保する。前面パネル26には歪センサ25が取付けられており、加工中の背分力により、左右28方向に引っ張られて生じる歪を検出できるようにされている。この歪センサの出力は、背分力に比例する。この背分力は一対の平ダイス底面方向の力を検出することとほぼ同等となる。
【0030】
本第一の実施の形態ではかかる転造盤を用いて図4に示すようなCVJのアウターレースのワークのインボリュートスプライン14とねじ15を転造加工する。図6は、本発明の第一の実施の形態を示す、(a)はねじ転造加工の背分力とねじの三針径との関係、(b)は加工された三針径とスプラインのオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。図6(a)に示すように、歪センサ出力aのときの三針寸法をねらい寸法(規定寸法)に設定すると背分力の増加(ΔV)に対して、三針径寸法もほぼ比例して増加(Δd1)し、ワークのねじ三針径寸法と背分力とがほぼ直線関係にあることがわかる。これは、ワークのねじ三針径は、転造加工時のワークと平ダイス、転造盤の弾性変形の戻り量(スプリングバック量)の大小により決まり、スプリングバック量は転造加工時の背分力に比例すると考えられる。
【0031】
さらに、ねじ転造加工時と、スプライン転造加工時の、ダイス間距離を所定寸法で一定とした場合、ねじ三針径とスプラインOPDの関係は、図6(b)に示すように、ほぼ直線の比例関係となる。このときダイス間距離が一定であっても各寸法が変化するのは、ワーク間の硬さの微小な差によるものであり、硬いワークでは、スプリングバック量が大となるので、ねじ三針径とスプラインOPDともに大となり、柔らかいワークではその逆となる。
【0032】
以上のことから、ねじ転造加工時の歪センサ出力値を測定し、規定値との差がわかれば、ねじ三針径寸法のねらい寸法からの差異とともに、スプラインのOPD寸法のねらい寸法からの差異がわかることになる。すなわち、ねじ転造加工時の、歪センサ出力により、スプライン転造時に補正すべきOPD寸法の値を求めることができる。
【0033】
かかる考察を元に、図6から得られたねじ転造時の歪センサ出力、三針径寸法、スプラインOPD寸法の関係を用いて、ロット内でのワーク硬度ばらつきなどにより、転造加工中の背分力が変化する場合に、加工ワークのOPD寸法を一定に保ち、安定化させる方法について述べる。
【0034】
図7は、本発明の第一の実施の形態である転造加工工程を示す正面図で(a)はねじ転造加工開始、(b)はスプライン転造加工開始、(c)複合転造完了位置を示す。図7(a)に示すように左側のねじダイス21及びスプラインダイス22は図でみて下方、右側ねじダイス23及びスプラインダイス24は図でみて上方に移動し、ねじ部15を所定のダイス間距離で前転造加工し、図7(b)で示すように、ねじ転造終了位置で一旦停止する。このときの背分力、好ましくはねじ仕上げ歯部転造加工時の背分力を歪センサで取得する。
【0035】
次に、歪センサ出力値とねらい値との差、図6(a)のΔVからΔd1を求め、補正すべきスプラインのOPD寸法を図6(b)のΔd1に対応するΔd2を算出する。次に、左右各ダイスを、スプライン加工のための所定の追込み量に加え、補正すべきOPD寸法Δd2の1/2の量をさらに追い込む。
【0036】
さらに、ダイスを再度前進させ後転造加工を行い図7(c)に示す位置で転造加工を完了する。これにより、加工されたワークのスプラインOPD寸法は、ロット内のワーク硬さがばらついていても、ワーク毎のバラつきが少なく、安定した加工寸法となる。
【0037】
次に、本発明の第二の実施の形態について図を用いて説明する。図8は本発明の第二の実施の形態を示す、一組の平ダイスを用いた平ダイス式転造盤の正面図であり、転造加工中の状態を示している。図9は図8の平ダイスのダイス間距離を調整するテーブルの一方の側の模式図である。前述した第一の実施の形態と同様な部分は同符号を付し説明の一部を省略する。平ダイス5は前述した図5に示すものと同様であり、食付き歯部1、仕上げ歯部2、逃げ歯部3から構成されており、ワークは食付き歯部から、仕上げ歯部、逃げ歯部を経て転造加工される。
【0038】
図8に示すように、ワーク4は図示しない両センタ装置により保持されており、左側平ダイス5は図でみて下方に、右側ダイス6は上方に、センタcに対して点対称の関係を保ちながら移動することにより転造加工が行われる。平ダイス5,6は移動テーブル19、20に固定されており、移動テーブル19、20はコラム17、18のスライド上を図示しない駆動装置により互いに反対方向かつ平行に移動する。このとき転造加工により発生する力は、ワークを径方向に押しつぶす力の反力、すなわち平ダイスを底面に垂直に押す背分力30が最も大きい。
【0039】
図9に示すように、平ダイス5、6は、1組のくさび状部材7、8を介してテーブル19に固定され、一方のくさび部材8はサーボモータ10によりボールネジ9を回転させることにより、上下方向11に移動できるようにされている。すなわち、例えばNC指令によりサーボモータに所定の回転指令を与えることにより、くさび部材8を所定量上下に移動し、くさび面を介して平ダイス5及び6を図示でみて水平方向12に正確に移動させる。これにより、ダイス間の距離を制御できる。これにより、スプラインのOPD寸法のねらい値等を変化させることができる。
【0040】
図8に示すように、転造盤11の前面パネル26には歪センサ25が取付けられており、加工中の背分力により、左右30、31方向に引っ張られて生じる歪を検出できるようにされている。この歪センサの出力は、背分力に比例する。
【0041】
図10は、前転造加工の背分力(歪みセンサ出力)と後転造加工のオーバーピン径寸法との関係を表す特性図である。ワークを連続加工した際の、歪センサ出力とオーバーピン径寸法の関係を示す。図10に示すように、歪センサ出力aのときのOPD寸法をねらい寸法(規定寸法)に設定すると背分力の増加(ΔV)に対して、OPD寸法もほぼ比例して増加(Δd)し、ワークのOPD寸法と背分力とがほぼ直線関係にあることがわかる。これは、ワークのOPDは、転造加工時のワークと平ダイス、転造盤の弾性変形の戻り量(スプリングバック量)の大小により決まるが、スプリングバック量は転造加工時の背分力に比例すると考えられる。
【0042】
以上のことから、前転造加工時の歪センサ出力を測定し、規定値との差がわかれば、OPD寸法のねらい値からの差異がわかることになる。すなわち、後転造時の補正すべきOPD寸法の値を求めることができる。
【0043】
かかる考察を元に、図10で求められた、歪センサ出力とOPD寸法の関係を用いて、ロット内でのワーク硬度ばらつきなどにより、転造加工中の背分力が変化する場合に、加工ワークのOPD寸法を一定に保ち、安定化させる方法について述べる。
【0044】
図11は本発明の第二の実施の形態である転造加工工程を示す正面図で(a)は前転造加工開始、(b)は前転造加工完了、(c)は戻り工程、(d)は後転造加工完了位置を示す。図11(a)に示すように、左側ダイス5は図でみて下方、右側ダイス6は上方に移動し、図11(b)で示す仕上げ歯部2の終わり近くで一旦停止する。このとき仕上げ歯部で発生する背分力を歪センサ25で取得する。ここで、歪センサ出力値と規定値との差(ΔV)から、補正すべきOPD寸法(Δd)を図10の関係から算出する。
【0045】
次に、仕上げ歯部手前の図4(c)の位置まで左右ダイス5、6を後退させ停止する。この位置ではワークとダイスが若干逃げた状態になっているが、ここで、左右各ダイスを所定の追込み量に加え、補正すべきOPD寸法(Δd)の1/2の量をさらに追い込む。さらに、ダイスを再度前進させ、図11(d)の状態で転造加工を完了する。このとき、加工されたワークのOPD寸法は、ロット内のワーク硬さがばらついていても、ばらつきが少なく、安定した加工寸法となる。
【0046】
第二の実施の形態においては、一方向用の平ダイスを二回動作させて、背分力を測定するための前転造加工を行った後、ダイスを戻し、ダイス間距離を縮めて仕上げ転造加工を後転造加工として行い精度の向上を図った。同様に、前述した特許文献4又は特許文献5のようにダイス間距離を順次接近させながら往復転造する場合にも適用できる。この場合、後転造加工を最終仕上げ寸法とし、前転造加工を直前の加工にして、背分力を測定し、この背分力に応じて最終仕上げ寸法の補正をすればよい。さらに、特許文献3のように、複数の転造ダイスを並べて順次転造加工する場合も、後転造加工を最終仕上げダイスで行い、前転造加工を隣接する直前のダイスで加工にして、背分力を測定し、この背分力に応じて最終仕上げ寸法の補正をすればよい。このように従来の往復転造加工、複数回転造加工にも適宜適用できる。
【0047】
平ダイス及び平ダイス式転造盤について述べてきたが、前述した特許文献2のような回転(丸)ダイス及び回転ダイス式転造盤の場合も同様な加工が可能であることはいうまでもない。この場合は、最終仕上げ寸法時の回転ダイス軸間距離よりも大きな軸間距離で、前転造を行い同時に背分力を測定する。この背分力に応じて最終仕上げ時の回転ダイス軸間距離を補正し、後転造加工を行い仕上げ転造を行えばよい。その他については従来と同様であるので詳細な説明を割愛する。
【0048】
以上述べたように、複数回転造を行い、前転造加工での背分力に応じて、後転造加工で仕上げ転造寸法の補正をするようにしたので、ワーク硬度アップによりインボリュートスプライン等のオーバーピン径寸法が大となるのを抑制し、寸法変化を抑え、精度の高い歯を形成することができる。なお、一対の平ダイス間の距離は、NCプログラム等で、平ダイスのピッチ線間距離、あるいはオーバーピン間距離、あるいは一対の平ダイスが取り付けられる移動テーブル面間距離等適宜選択設定すればよい。
【符号の説明】
【0049】
4 ワーク
5、6、22、24 (平)ダイス
21、23 (ねじ加工用)ダイス
11、16 転造盤
c 軸心
ΔV 背分力(歪センサ出力)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心に回転可能に支持されたワークと、前記軸心対称に配置された一対のダイスと、を備えた転造盤において、前記一対のダイス間の距離が一定になるように制御し、かつ前記ワークを挟持しながら互いに逆方向に移動させ前記ワーク外周面を転造加工する転造加工方法であって、
前記ワーク諸元に対して前記一対のダイス間距離を予め設定した前転造加工指令距離と、前記ワーク諸元に対して前記前転造加工指令距離で複数の異なるワークを転造加工し測定した背分力の関数として前記一対のダイス間の距離を定めた後転造加工指令距離と、を予め設定し、
前記一対のダイス間の距離を前記前転造加工指令距離に設定して前記ワークを前転造加工し、かつ、前記前転造加工中の背分力を測定し、前記測定した背分力から前記関数により前記後転造加工指令距離を求め、前記一対のダイス間の距離を前記求めた後転造加工指令距離に設定して前記ワークを後転造加工するようにした転造加工方法。
【請求項2】
前記前転造加工後にワークを取り外すことなく、同一転造盤上で前記後転造加工が行われる請求項1記載の転造加工方法。
【請求項3】
前記前転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位とが異なる請求項1又は2記載の転造加工方法。
【請求項4】
前記前転造加工はねじ転造又は前記軸心直角方向溝転造加工であり、前記後転造加工は前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工である請求項1又は2又は3記載の転造加工方法。
【請求項5】
前記前転造加工で加工されるワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工されるワークの軸方向部位とが一部又は全部で同じ部位であり、前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工であって前記前転造加工指令距離よりも前記後転造加工指令距離が小さくされている請求項1又は2記載の転造加工方法。
【請求項6】
前記一対のダイスは、前記軸心を中心に対称に回転可能にされた回転ダイスであって、前記一対のダイス間の距離は、前記一対の回転ダイスの回転軸間距離である請求項1又は2又は5に記載の転造加工方法。
【請求項1】
軸心に回転可能に支持されたワークと、前記軸心対称に配置された一対のダイスと、を備えた転造盤において、前記一対のダイス間の距離が一定になるように制御し、かつ前記ワークを挟持しながら互いに逆方向に移動させ前記ワーク外周面を転造加工する転造加工方法であって、
前記ワーク諸元に対して前記一対のダイス間距離を予め設定した前転造加工指令距離と、前記ワーク諸元に対して前記前転造加工指令距離で複数の異なるワークを転造加工し測定した背分力の関数として前記一対のダイス間の距離を定めた後転造加工指令距離と、を予め設定し、
前記一対のダイス間の距離を前記前転造加工指令距離に設定して前記ワークを前転造加工し、かつ、前記前転造加工中の背分力を測定し、前記測定した背分力から前記関数により前記後転造加工指令距離を求め、前記一対のダイス間の距離を前記求めた後転造加工指令距離に設定して前記ワークを後転造加工するようにした転造加工方法。
【請求項2】
前記前転造加工後にワークを取り外すことなく、同一転造盤上で前記後転造加工が行われる請求項1記載の転造加工方法。
【請求項3】
前記前転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工される前記ワークの軸方向部位とが異なる請求項1又は2記載の転造加工方法。
【請求項4】
前記前転造加工はねじ転造又は前記軸心直角方向溝転造加工であり、前記後転造加工は前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工である請求項1又は2又は3記載の転造加工方法。
【請求項5】
前記前転造加工で加工されるワークの軸方向部位と、前記後転造加工で加工されるワークの軸方向部位とが一部又は全部で同じ部位であり、前記軸心に対して歯筋が平行又はやまば又ははすばの歯形状の転造加工であって前記前転造加工指令距離よりも前記後転造加工指令距離が小さくされている請求項1又は2記載の転造加工方法。
【請求項6】
前記一対のダイスは、前記軸心を中心に対称に回転可能にされた回転ダイスであって、前記一対のダイス間の距離は、前記一対の回転ダイスの回転軸間距離である請求項1又は2又は5に記載の転造加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−81491(P2012−81491A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228492(P2010−228492)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
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