説明

軸と回転体の締結構造

【課題】締結解除のための専用工具が不要で、ナットの回動操作のみで締結及び締結解除が可能な軸と回転体の締結構造を提供する。
【解決手段】軸端部にテーパ部1a及びおねじ部1bを有する軸1と軸1のテーパ部1aと同一のテーパ角のテーパ穴2aを有する歯車(回転体)2を軸1のおねじ部1bにナットを締め付けることにより締結する軸1と歯車(回転体)2の締結構造において、ナットには座面3a側につば3bを有するつば付きナット3を使用し、歯車(回転体)2はテーパ穴2aの小径側の端面に円筒状凹部2bを有し、つば付きナット3の座面3aが歯車(回転体)2の円筒状凹部2bの底面2dに当接し、つば付きナット3のつば3bは円筒状凹部2b内に装着された止め輪4の一側面と対向し、軸1のおねじ部1bにつば付きナット3を締め付けることにより軸1と歯車(回転体)2を締結するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸端部にテーパ部及びおねじ部を有する軸と軸のテーパ部と同一のテーパ角のテーパ穴を有する回転体を軸のおねじ部にナットを締め付けることにより締結する軸と回転体の締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸と回転体の締結構造として、軸端部にテーパ部及びおねじ部を有する軸と軸のテーパ部と同一のテーパ角のテーパ穴を有する歯車(回転体)を軸のおねじ部にナットを締め付けることにより締結するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−164134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特開平5−164134号公報に開示された軸と歯車(回転体)の締結構造においては、軸のおねじ部にナットを締め付けることにより歯車(回転体)のテーパ穴と軸のテーパ部との楔作用で締結するが、締結の解除の際はナットを緩めても軸から歯車(回転体)を引き抜く機構がないため、歯車(回転体)のテーパ穴と軸のテーパ部との間がロックし、軸から歯車(回転体)を引き抜くことが困難である。したがって、締結の解除の際に軸から歯車(回転体)を引き抜くための専用工具を必要とするという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、締結解除のための専用工具が不要で、ナットの回動操作のみで締結及び締結解除が可能な軸と回転体の締結構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、前記課題を解決するために、軸端部にテーパ部及びおねじ部を有する軸と該軸の前記テーパ部と同一のテーパ角のテーパ穴を有する回転体を前記軸の前記おねじ部にナットを締め付けることにより締結する軸と回転体の締結構造において、前記ナットには座面側につばを有するつば付きナットを使用し、前記回転体は前記テーパ穴の小径側の端面に円筒状凹部を有し、前記つば付きナットの座面が前記回転体の前記円筒状凹部の底面に当接し、前記つば付きナットの前記つばは前記円筒状凹部内に装着された止め輪の一側面と対向し、前記軸のおねじ部に前記つば付きナットを締め付けることにより前記軸と前記回転体を締結するものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、ナットには座面側につばを有するつば付きナットを使用し、回転体はテーパ穴の小径側の端面に円筒状凹部を有し、つば付きナットの座面が回転体の円筒状凹部の底面に当接し、つば付きナットのつばは円筒状凹部内に装着された止め輪の一側面と対向し、軸のおねじ部につば付きナットを締め付けることにより軸と回転体を締結するものであるので、つば付きナットの回動操作のみで締結及び締結解除が可能で、締結解除のための専用工具が不要となるという効果を有する。また、締結解除の後、つば付きナットは止め輪により回転体に対して抜け止めされているので、つば付きナットは散逸することがないという効果も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
軸端部にテーパ部及びおねじ部を有する軸と軸のテーパ部と同一のテーパ角のテーパ穴を有する歯車(回転体)を軸のおねじ部にナットを締め付けることにより締結する軸と歯車(回転体)の締結構造において、ナットには座面側につばを有するつば付きナットを使用し、歯車(回転体)はテーパ穴の小径側の端面に円筒状凹部を有し、つば付きナットの座面が歯車(回転体)の円筒状凹部の底面に当接し、つば付きナットのつばは円筒状凹部内に装着された止め輪の一側面と対向し、軸のおねじ部につば付きナットを締め付けることにより軸と歯車(回転体)を締結するものである。その実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0008】
本発明の実施例を図1,2,3に基づいて説明する。図1は本発明の実施例の締結構造の断面図である。図2は図1に示す締結構造に使用するつば付きナットの座面と反対側の側面図である。図3は図1に示す締結構造に使用するつば付きナットの座面側の側面図である。
【0009】
図1に示すように、本発明の実施例の締結構造は、後述するつば付きナット3を使用して、軸1の軸端部に歯車(回転体)2を締結するものである。
【0010】
軸1は軸端部にテーパ部1a及びおねじ部1bを有している。軸1の軸端部に締結される歯車(回転体)2は軸1のテーパ部1aと同一のテーパ角のテーパ穴2aを中心穴として有し、テーパ穴2aの小径側の端面に円筒状凹部2bを有し、円筒状凹部2bには、後述する止め輪4を装着するための止め輪用溝2cが形成されている。
【0011】
図2,3に示すように、締結に使用するつば付きナット3は、座面3a側につば3bを有し、座面3aと反対側の外周面には6個の工具係合面3cを形成している。この6個の工具係合面3cは汎用スパナが係合する工具係合部を構成している。なお、工具係合面3cは6個に限定されるものではなく、4個あるいは8個等の偶数個形成されていてもよい。また、つば付きナット3の中心には軸1のおねじ部1bと螺合するめねじ部3dが形成されている。
【0012】
次に、軸1と歯車(回転体)2の締結について説明する。まず、軸1のテーパ部1aに歯車(回転体)2のテーパ穴2aを挿入する。この状態で、つば付きナット3の座面3aが歯車(回転体)2の円筒状凹部2bの底面2dに当接するまでつば付きナット3のめねじ部3dを軸1のおねじ部1bにねじ込む。続いて、円筒状凹部2b内の止め輪用溝2cに止め輪4を装着する。なお、止め輪4は1箇所に切り欠きがあり、装着の際に外径が弾性的に縮径する。そして、この止め輪4の装着により、止め輪4の一側面とつば付きナット3のつば3bは対向している。次に、汎用スパナ(工具)でつば付きナット3を締め付けると、つば付きナット3の座面3aが歯車(回転体)2の円筒状凹部2bの底面2dを軸方向に押圧し、歯車(回転体)2のテーパ穴2aが軸1のテーパ部1aに押し込まれ、テーパ部1aとテーパ穴2aとの間の摩擦力によって歯車(回転体)2は軸1に締結される。
【0013】
次に、軸1と歯車(回転体)2の締結の解除について説明する。まず、汎用スパナ(工具)で、締め付け状態にあるつば付きナット3を逆回動して緩めると、つば付きナット3は軸方向に移動してつば付きナット3のつば3bが止め輪4の一側面に当接する。さらに、つば付きナット3を逆回動して緩めると、つば付きナット3のつば3bは止め輪4の一側面を押圧し、止め輪4を介して歯車(回転体)2は軸方向に移動する。その結果、軸1のテーパ部1aと歯車(回転体)2のテーパ穴2aとの間の摩擦力が解消し、軸1と歯車(回転体)2の締結が解除される。
【0014】
上記実施例によれば、ナットには座面3a側につば3bを有するつば付きナット3を使用し、歯車(回転体)2はテーパ穴2aの小径側の端面に円筒状凹部2bを有し、つば付きナット3の座面3aが歯車(回転体)2の円筒状凹部2bの底面2dに当接し、つば付きナット3のつば3bは円筒状凹部2b内に装着された止め輪4の一側面と対向し、軸1のおねじ部1bにつば付きナット3を締め付けることにより軸1と歯車(回転体)2を締結するものであるので、つば付きナット3の回動操作のみで締結及び締結解除が可能で、締結解除のための専用工具が不要となるという効果を有する。また、締結解除の後、つば付きナット3は止め輪4により歯車(回転体)2に対して抜け止めされているので、つば付きナット3は散逸することがないという効果も有する。
【0015】
なお、上記実施例では、回転体として歯車2の例を示したが、請求項1記載の発明においては、回転体は歯車に限定されるものではなく、スプロケット、プーリ、カム等の回転体にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の締結構造の断面図である。
【図2】図1に示す締結構造に使用するつば付きナットの座面と反対側の側面図である。
【図3】図1に示す締結構造に使用するつば付きナットの座面側の側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 軸
1a テーパ部
1b おねじ部
2 歯車(回転体)
2a テーパ穴
2b 円筒状凹部
2c 止め輪用溝
2d 円筒状凹部の底面
3 つば付きナット
3a 座面
3b つば
3c 工具係合面
3d めねじ部
4 止め輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸端部にテーパ部及びおねじ部を有する軸と該軸の前記テーパ部と同一のテーパ角のテーパ穴を有する回転体を前記軸の前記おねじ部にナットを締め付けることにより締結する軸と回転体の締結構造において、
前記ナットには座面側につばを有するつば付きナットを使用し、前記回転体は前記テーパ穴の小径側の端面に円筒状凹部を有し、前記つば付きナットの座面が前記回転体の前記円筒状凹部の底面に当接し、前記つば付きナットの前記つばは前記円筒状凹部内に装着された止め輪の一側面と対向し、前記軸のおねじ部に前記つば付きナットを締め付けることにより前記軸と前記回転体を締結することを特徴とする軸と回転体の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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